JP3542639B2 - 液体散布装置の散液頭部 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、液体を散布する液体散布装置の散液頭部に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば、各種野菜や草花等を露地栽培する畑や蔬菜園、ビニルハウス、果樹園、芝生や草花等が植えられた公園や庭園等の灌水、或いは道路等の散水等に用いられる散水装置としてスプリンクラーが知られている。
【0003】
一般に、スプリンクラーは、散水を所望する散水領域の中心部に立設され、回転自在に設けられたスプリンクラー頭部(以下、ヘッドと称する)に形成されたノズル(孔)から水を噴射すると共に、上記ヘッドに取り付けられた羽根にノズルから噴射された水を当て、その衝撃力で該ヘッドを一定方向に回転させながら同心円状に広範囲に散水するようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の散水装置であるスプリンクラーのヘッドでは、散水領域がスプリンクラーを中心とした同心円状(ドーナツ型)になる。従って、例えば散水を所望する散水領域が長方形や正方形等の矩形の場合には、これら領域の隅部に散水することができない。また、スプリンクラーは、広範囲に散水可能ではあるが、スプリンクラー近傍に散水できないという問題点を有している。
【0005】
尚、散水されない領域が生じないようにするためには、散水領域の一部が互いに重なるようにして複数のスプリンクラーを設置しなければならないので、スプリンクラーを効率的に設置できないという別の問題点を生じる。
【0006】
従って、任意の形状および大きさの散布領域の全面にわたってほぼ均一に隈無く液体を散布することができるヘッド、即ち、液体散布装置の散液頭部が求められている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の液体散布装置の散液頭部は、上記の課題を解決するために、液体散布装置の立ち上がり管に設けられた散液頭部であって、上記散液頭部は、上に凸な略半球状に形成されると共に、液体を散布領域に散布可能な複数の孔を有しており、上記孔は、略半球面の頂部で互いに交差すると共に該半球面に沿って略放射状に延びる複数本の仮想線上に形成されており、かつ、同一仮想線上に形成される孔は、上記頂部から離れるに従いその直径が大きくなるように穿設されていることを特徴としている。
【0008】
【作用】
上記の構成によれば、散液頭部が有する複数の孔は、略半球面の頂部で互いに交差すると共に該半球面に沿って略放射状に延びる複数本の仮想線上に形成されている。このため、液体の飛距離を半球面上における孔の穿設位置で自在に設定することができると共に、例えば、上記複数本の仮想線の半球面上における形成パターンを適宜変更することにより、散布領域の形状や大きさに応じて液体を散布することが可能となる。また、同一仮想線上に形成される孔は、上記頂部から離れるに従いその直径が大きくなるように穿設されている。このため、散布領域の全面にわたって液体をほぼ均一に隈無く散布することが可能となる。
【0009】
これにより、任意の形状および大きさの散布領域の全面にわたって液体をほぼ均一に隈無く散布することが可能となる。また、効率的に設置できるので、散布領域全体における液体散布装置の配置数を、スプリンクラーと比較して少なくすることができる。
【0010】
【実施例】
本発明の一実施例について図1ないし図4に基づいて説明すれば、以下の通りである。尚、以下の説明においては、液体散布装置によって散布される液体が水である場合、即ち、液体散布装置を散水装置として使用する場合を例に挙げることとする。
【0011】
本実施例にかかる液体散布装置としての散水装置は、図3に示すように、通水管10より導水される立ち上がり管11を備えている。上記の立ち上がり管11は、散水を所望する土壌等(散布領域)の任意の位置に立設されている。立ち上がり管11の上端部には、取り付け治具12を介して散水頭部(散液頭部)1が着脱自在に取り付けられている。尚、取り付け治具12は、散水頭部1のネジ部1b(後述する)に対応する図示しないネジ部(雌ネジ)を有している。
【0012】
図1および図2に示すように、散水頭部1は、上に凸な略半球状に形成された半球部1aと、取り付け治具12に取り付けるためのネジ部(雄ネジ)1bと、これら半球部1aおよびネジ部1bを連設する連設部1cとからなっている。尚、本発明において略半球状とは、半球部1aの縦断面(図1において紙面に垂直な方向の切断面)の形状が、略半円弧状若しくは略半楕円の弧状であることを示すものとする。
【0013】
連設部1cは、散水頭部1本体を取り付け治具12に着脱し易いように、散水頭部1を上方から見たとき(図1)の形状が例えば正八角形となるように形成されている。半球部1aには、土壌等に散水可能な複数の孔2…が形成されている。尚、孔2…の個数は、特に限定されるものではない。また、散水頭部1の大きさは、特に限定されるものではない。
【0014】
上記の孔2…は、半球部1aの頂部3で互いに交差すると共に該半球部1aの表面(略半球面)に沿って略放射状に延びる複数本の仮想線9…(図1中、便宜上、3本の仮想線のみを二点鎖線で記すこととし、残りの仮想線は省略する)上に形成されている。また、1本の仮想線9上に形成される孔2…は、上記頂部3から離れるに従いその直径が大きくなるように穿設されている。
【0015】
但し、1本の仮想線9上に形成される孔2…は、頂部3から離れるに従いその直径が順次大きくなるように穿設されていてもよく、また、幾つかの隣接する孔2…同士の直径が互いに等しくなるように穿設されていてもよい。つまり、1本の仮想線9上に形成される孔2…は、頂部3に最も近接している孔2の直径よりも、頂部3から最も離れている孔2の直径の方が大きくなるように穿設されていればよい。
【0016】
尚、図1に示す散水頭部1における仮想線9…のパターン、即ち、孔2…の穿設パターンは、散水を所望する土壌等の形状が正方形である場合の一例を示している。従って、孔2…の穿設パターンは、図1に例示したパターンにのみ限定されるものではない。また、孔2…の直径を上記のように設定する理由については後述する。
【0017】
散水頭部1の材質は、特に限定されるものではないが、耐候性や耐衝撃性、耐薬品性等に優れた材質が好ましく、例えば、金属や合成樹脂、合成ゴムが好適である。金属としては、例えば、ステンレスが挙げられる。合成樹脂としては、例えば、高密度ポリエチレン、中低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、アクリロニトリル−ブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)等、或いは、エンジニアリングプラスチック、各種強化プラスチック等が挙げられる。これら材質は、例えば、散水頭部1、即ち、散水装置の用途等に応じて適宜選択される。
【0018】
散水頭部1の製造方法は、特に限定されるものではないが、安価で量産性に優れた方法が好ましく、例えば、材質が金属の場合にはプレス加工法が好適であり、また、材質が合成樹脂や合成ゴムの場合には射出成形法が好適である。
【0019】
上記孔2…の穿設方法は、特に限定されるものではないが、安価で量産性に優れた方法が好ましく、例えば、いわゆるレーザ穿孔やドリル穿孔が好適である。
【0020】
上記の立ち上がり管11は土壌等の任意の位置に固定可能であるが、上記孔2…の半球部1aにおける穿設位置や、孔2…の穿設パターンが容易となるように、土壌等の中央部若しくは隅部等に固定することが好ましい。
【0021】
一般に、水滴は、速度の二乗に比例する抗力を受けて空気中を飛ぶことが判っており、従って、孔2から散水される水滴は、水圧および孔2の直径が一定の場合、孔2の仰角を凡そ30°に設定したときに最も遠くまで飛ぶ。また、水滴は、飛距離が大きくなるに従い拡散するので、その散水面積が広がる。即ち、水圧および孔2の直径が一定の場合、孔2の仰角が大きくなるに従い散水面積が狭くなるので、単位面積当たりの散水量が多くなる。従って、単位面積当たりの散水量を散水領域全体でほぼ一定とするためには、例えば頂部3から離れた位置に穿設される孔2、即ち、仰角の小さな孔2の直径を、頂部3近傍に穿設される孔2、即ち、仰角の大きな孔2の直径よりも大きくする必要がある。
【0022】
上記孔2…の直径は、特に限定されるものではないが、 0.1mm以上、2mm以下に形成することが好ましい。孔2…の直径を上記の大きさに形成することにより、孔2…から散水される水滴が小さくなると共に、上記水滴によって土壌等の表面が受ける衝撃が小さくなる。従って、水滴の跳ね返り等を生じることなく、穏やかに散水することが可能となる。孔2…の直径が 0.1mmよりも小さいと、孔2…から散水される水滴が小さくなり過ぎ、霧状となる割合が大きくなるので遠くに飛ばなくなる。また、単位面積あたりの散水量が小さくなり過ぎるので、土壌等に充分に散水することができなくなる。一方、孔2…の直径が2mmよりも大きいと、水滴が極端に大きくなり過ぎ、上記水滴によって土壌等の表面が受ける衝撃が大きくなると共に、水滴の跳ね返り等が生じ、穏やかに散水することが難しくなる。
【0023】
本実施例における孔2…の直径は、例えば、図1に示す閉曲線(図中、便宜上、閉曲線を一点鎖線で記す)8aの内側に位置するものが 0.4mm、閉曲線8aの外側かつ閉曲線8bの内側に位置するものが 0.5mm、閉曲線8bの外側かつ閉曲線8cの内側に位置するものが 0.6mm、閉曲線8cの外側かつ閉曲線8dの内側に位置するものが 0.7mm、閉曲線8eの内側に位置するものが 0.8mmに設定されている。勿論、孔2…の穿設パターンや、各々の孔2…の直径は、上記例示の穿設パターンや直径に限定されるものではない。
【0024】
尚、散水頭部1、即ち、孔2…にかかる水圧は、特に限定されるものではない。例えば、通水管10を一般の水道管に直結した場合には、上記水圧は凡そ1kg/cm2〜2kg/cm2程度になる。また、水圧を所定範囲内、例えば1kg/cm2〜5kg/cm2、好ましくは1kg/cm2〜2kg/cm2の範囲内で任意に変更させることが可能なポンプ、減圧弁、止水栓等を用いることにより、孔2…にかかる水圧を適宜調節してもよい。
【0025】
以上のように、本実施例にかかる散水装置の散水頭部1は、半球部1aが上に凸な略半球状に形成されると共に、複数の孔2…を有しており、上記孔2…は、半球部1aの頂部3で互いに交差すると共に該半球部1aの表面に沿って略放射状に延びる複数本の仮想線9…上に形成されており、かつ、1本の仮想線9上に形成される孔2…は、上記頂部3から離れるに従いその直径が大きくなるように穿設されている。
【0026】
従って、水滴の飛距離を孔2…の穿設位置で自在に設定することができる。また、例えば、孔2…の穿設パターンを適宜変更することにより、土壌等の形状や大きさに応じて散水することが可能となると共に、土壌等の全面にわたってほぼ均一に隈無く散水することが可能となる。これにより、任意の形状および大きさの散水領域の全面にわたってほぼ均一に隈無く散水することが可能となる。また、効率的に設置できるので、散水領域全体における散水装置の配置数を、スプリンクラーと比較して少なくすることができる。
【0027】
次に、本実施例にかかる散水頭部1の散水量について、具体例を挙げて説明する。尚、散水を所望する土壌を所定面積の正方形とし、この土壌の中心部に立ち上がり管11を立設して土壌に隈無く散水する場合を想定した。従って、孔2…の穿設パターンおよび直径を、上記例示の穿設パターンおよび直径(図1)に設定した。そして、散水頭部1の半球部1aの直径を5cm、水量を約17L/min.、孔2…にかかる水圧を約2kg/cm2とした。
【0028】
散水量は、土壌に升形状の測定箱を並べ、散水頭部1から一時間散水した後、上記各測定箱に溜まった水の量を測定した。上記の条件にて測定した散水量を、図4に示すように、横軸を立ち上がり管11からの距離、縦軸を散水量としてグラフに示した。散水頭部1の散水量は、曲線(a)となった。
【0029】
一方、比較用散水頭部を作成し、この比較用散水頭部についても散水量を測定した。上記の比較用散水頭部は、孔の直径を全て互いに同一に設定した以外は、散水頭部1と同一の構成および条件とした。また、比較用散水頭部の孔の総開口面積は、散水頭部1の孔2…の総開口面積と等しくなるように設定した。比較用散水頭部の散水量は、曲線(b)となった。
【0030】
上記のグラフから明らかなように、散水頭部1は、散水領域の全面にわたってほぼ均一に隈無く散水可能であることがわかる。これに対し、比較用散水頭部は、立ち上がり管11近傍の散水量が多く、立ち上がり管11から遠ざかるに従い、散水量が少なくなっている。このため、比較用散水頭部は、均一な散水が不可能であることがわかる。
【0031】
尚、本実施例においては、正方形の土壌に隈無く散水することが可能な散水頭部1を例に挙げたが、散水頭部1によって散水可能な土壌の形状は、勿論、上記例示の正方形に限定されるものではなく、例えば、長方形やその他の多角形、円形、楕円形等、任意の形状とすることができる。また、散水可能な土壌の大きさも任意の大きさとすることができる。孔2…の穿設パターンと直径との組み合わせは、土壌の形状や散水量等に応じて適宜変更すればよい。
【0032】
上記構成の散水頭部1を備えた散水装置は、例えば各種野菜や草花等を露地栽培する畑や蔬菜園、ビニルハウス、果樹園、芝生や草花等が植えられた公園や庭園等の灌水、或いは道路等の散水等に好適に用いられる。
【0033】
尚、上記の実施例においては、液体散布装置を散水装置として使用する場合を例に挙げて説明したが、本発明にかかる液体散布装置により散布される液体は、勿論、上記の水に限定されるものではない。例えば、液体散布装置を農業や施設園芸等に供することにより、殺虫剤や殺菌剤等の農薬、液体肥料等を好適に散布することができる。また、散水することにより液体散布装置を、塩害の防除設備や、茶園等の凍霜害の防除設備としても使用可能である。
【0034】
【発明の効果】
本発明の液体散布装置の散液頭部は、以上のように、散液頭部は、上に凸な略半球状に形成されると共に、液体を散布領域に散布可能な複数の孔を有しており、上記孔は、略半球面の頂部で互いに交差すると共に該半球面に沿って略放射状に延びる複数本の仮想線上に形成されており、かつ、同一仮想線上に形成される孔は、上記頂部から離れるに従いその直径が大きくなるように穿設されている構成である。
【0035】
これにより、任意の形状および大きさの散布領域の全面にわたって液体をほぼ均一に隈無く散布することが可能となる。また、効率的に設置できるので、散布領域全体における液体散布装置の配置数を、スプリンクラーと比較して少なくすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例における散液頭部としての散水頭部の平面図である。
【図2】上記散水頭部の正面図である。
【図3】上記散水頭部を備えた液体散布装置としての散水装置の概略の正面図である。
【図4】上記散水頭部の散水量を示すグラフである。
【符号の説明】
1 散水頭部(散液頭部)
1a 半球部
2 孔
3 頂部
9 仮想線
11 立ち上がり管
12 取り付け治具
Claims (1)
- 液体散布装置の立ち上がり管に設けられた散液頭部であって、
上記散液頭部は、上に凸な略半球状に形成されると共に、液体を散布領域に散布可能な複数の孔を有しており、
上記孔は、略半球面の頂部で互いに交差すると共に該半球面に沿って略放射状に延びる複数本の仮想線上に形成されており、かつ、同一仮想線上に形成される孔は、上記頂部から離れるに従いその直径が大きくなるように穿設されていることを特徴とする液体散布装置の散液頭部。
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