JP3542331B2 - Zn−Al合金めっき線の製造装置並びに製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はZn−Al合金めっき線の製造装置並びに製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
Zn−Al合金めっき線は、Znめっき線に比べて耐久性が高いため、例えば、河川や海岸の護岸工事に使用されている金網製の籠マット等のように、環境の厳しいところで利用されている。
そして、Zn−Al合金めっき線のめっき表面は滑らかで、表面粗度が中心線平均粗さRaで0.5μm程度(図6参照)の所謂滑面になっているため、加工性に優れている反面、籠マットとして利用された場合、水に濡れることで籠マット表面が滑り易い状態になり、歩き難くて施工時の安全性に問題がある等の指摘がある。
本発明者は、従来の製法が、金属線表面の溶融金属を水冷して凝固させることにより、表面が滑らかな滑面からなるめっき表面に仕上げていることに注目し、そして、溶融金属が凝固する速度が速いことに着目して、この溶融金属の凝固速度を遅くコントロールすることで、滑り難さと加工性の双方を達成可能であることを知見したものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
解決しようとする課題は、第1には、めっき表面から滑り性が失われていて、水に濡れても滑り難いめっき表面特性を有し、しかも、加工性を維持して、めっき層にクラックや剥離がないZn−Al合金めっき線を、効率良く経済的に安価に製造することが可能なZn−Al合金めっき線の製造装置並びに製造方法を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記した課題を達成するため、Zn−Al合金めっき線の製造装置では、溶融めっき槽における金属線の出口に無酸化性ガスが供給されるガス絞り部を設けて、このガス絞り部を経て引き上げられる金属線の進行方向に沿い複数の強制風冷装置を、この各強制風冷装置により金属線表面の溶融金属が間欠的に風冷されて凝固するように、上下に間隔を保ち配設し、前記強制風冷装置は、水冷を含まず、冷却空気による風冷または冷却空気にミストを混入させた風冷のうち両者またはどちらか一方を行なうもののみからなることを特徴とする表面粗度が中心線平均粗さRaで1.5〜20μmであるZn−Al合金めっき線の製造装置とした。
また本発明のZn−Al合金めっき線の製造装置では、各強制風冷装置が、金属線の進行方向と略平行に流れる冷却空気の気流内で、金属線表面の溶融金属を強制冷却可能にしてあることを特徴とする。
本発明のZn−Al合金めっき線の製造方法では、溶融めっき槽出口に設けられた無酸化性ガスが供給されるガス絞り部で、金属線の表面に付着した溶融金属を所定の厚みに絞りつつ金属線を引き上げ、その直後に、金属線の進行方向に沿い配設してある上下の複数の各強制風冷装置を通過させて、各強制風冷装置において金属線表面の溶融金属を、金属線の進行方向と略平行に流れる冷却空気の気流内で個々に強制冷却することにより、水冷を用いず、冷却空気による風冷または冷却空気にミストを混入させた風冷のうち両者またはどちらか一方のみを用いて金属線表面の溶融金属を間欠的に風冷して凝固させることで表面粗度が中心線平均粗さRaで1.5〜20μmであるめっき表面に仕上げるようにしたことを特徴とする。
【0005】
本発明における装置並びに方法により製造される金属線は鉄線または鋼線等の金属線であり、そして、Zn−Al合金めっき線のめっき表面は、水に濡れても滑り難い働きを有するざら面状であれば良く、具体的には、めっき表面の表面粗度は中心線平均粗さRaが1.5〜20μmであり、この表面粗度が下限の1.5μmに満たない場合には、雨に濡れた際に依然として滑り性が保たれていて滑り易く、上限の20μmを越えるとめっき表面のざら状がひどくなって外観が悪化してしまうことで、籠マット等の構成部材として実用的でなくなる。
Zn−Al合金めっき層部のAl含有率は、望ましくは8〜30%であり、8%に満たない場合は、前記した表面粗度からなるざら面状を得にくくなり、Alが30%を越えた場合には、曲げ加工時にめっき層部にクラックが入る等して加工性が劣り易くなる。また、めっき表面がざら面状であることにより、表面積が大きくなって腐蝕減量が平滑状のめっき表面のものよりも約2倍程度になるため、Zn−Al合金めっき層部のめっき付着量は600〜800g/m2であることが望ましく、耐蝕性を保ち、めっき層部にクラックが発生し難くて加工性の問題もない。
そして、ざら面状のめっき表面は、間欠的に風冷されることで形成されるものであるが、冷却空気のみによる風冷であっても良いし、冷却空気を主にしながら若干のミスト(水分)が混入している風冷であっても良く、また、冷却空気による風冷と、若干のミスト(水分)が混入している冷却空気による風冷とが規則的或いは不規則に行なわれる等の組み合わせであっても良く、いずれであっても良い。これにともない、複数の強制風冷装置は、冷却空気を供給する強制風冷装置のみによる組み合わせの態様、冷却空気と若干のミスト(水分)を混合状態で供給する強制風冷装置のみによる組み合わせの態様、これらの両装置の組み合わせによる態様のいずれかになる。
各強制風冷装置における風冷長さ(上下長さ)は、風冷効果が発揮される範囲になり、金属線の線速等を考慮して適宜設定される。また、各強制風冷装置の上下間隔は、各強制風冷装置による風冷効果が個々に発揮される範囲になる。また、風冷が個別に行なわれてそれぞれの風冷効果を得られる限りにおいて、金属線が通り抜ける管は連続しているタイプのものであっても良い。
【0006】
【発明の実施の形態】
図1および図2には本発明の製造装置により製造されるZn−Al合金めっき線の1形態を例示しており、Zn−Al合金めっき線1は、Zn−Al合金めっき層部2におけるめっき表面2aをざら面状に形成してある。このめっき表面2aは、金属線表面の溶融金属を間欠的に風冷して凝固させることで形成している。そして、めっき表面2aの表面粗度は、中心線平均粗さRaが1.5〜20μmであり、水に濡れても滑り難い微細な凹凸状を呈している。
【0007】
図3〜図5には本発明のZn−Al合金めっき線の製造装置における実施の1形態を例示しており、このZn−Al合金めっき線製造装置10は、溶融めっき槽11における金属線の出口に無酸化性ガスが供給されるガス絞り部12を設けて、このガス絞り部12を経て引き上げられる金属線の進行方向に沿い複数の強制風冷装置13を、この各強制風冷装置13により金属線表面の溶融金属が間欠的に風冷されて凝固するように、上下に間隔を保ち配設してある。
【0008】
溶融めっき槽11は、ガス絞り部12内における線材立上り部のめっき浴面に無酸化性ガスを供給可能に形成していて、無酸化性ガスで浴面の酸化を防止して、酸化物が金属線に付着するのを防いでいる。この無酸化性ガスとしての都市ガス或いは天然ガスを原料とする発熱型雰囲気ガスとは、理論混合比よりもやや少ない空気比の混合ガスを燃焼させて得られる雰囲気ガスで、加熱及び触媒を通じて得られる吸熱型とは異なり、外から熱を加えなくても燃焼が継続するものである。例えば、発熱型ガスの組成は、CO2:9%、CO:4〜5%、H2:4〜5%、N2:80%とし、露点が−40℃以下になるまで冷凍して吸湿したものである。また、このガスの組成は、N2、C3H8、C4H10等の無酸化性ガスであっても良い。
【0009】
そして、ガス絞り部7の上方には上中下各段の強制風冷装置13を夫々配設していて、金属線がシンカーローラ14とトップローラー15に導かれてZn−Al合金めっき浴11aからガス絞り部12を経て下段の強制風冷装置13そして中段の強制風冷装置13さらに上段の強制風冷装置13を順に通過する過程で間欠的に風冷されて、めっき外観がざら面状を呈するめっき表面2aにZn−Al合金めっき処理されるように形成してある。
【0010】
各強制風冷装置13は、フラスコ状の圧力室13aと、その上端開口部に連設された通風筒13bからなり、この通風筒13bにはスリット13cが上端開口から根元まで配設されていて、圧力室13aには中心軸に沿って金属線が通過する内筒13dを貫設していると共に、側壁には冷却空気供給管13eを接続している。
冷却空気供給管13eにはミスト供給管13fが接続していて、Zn−Al合金めっき層部2の凝固がトップローラ15までに完了しない場合は、必要に応じて水のミストを冷却空気流13hに供給可能にして、凝固がトップローラ15に至る前に完了するようにしてある。また、圧力室13aの上端開口には、内筒13dと外周壁との間に整流板13gが設けられており、圧力室13aから通風筒13bへ吹き込まれた20〜60℃の温度の冷却空気流13hは、整流板13gを通過して金属線と平行に流れるように整流されると共に風速15〜40m/sに整えられ、この金属線と平行に流れる各段の整流された冷却空気流13hにより、金属線のZn−Al合金めっき層部2の外形を乱すことなく周囲から均等に冷やして、間欠的に緩やかに冷却して、溶融金属の垂れ落ちを阻止しつつ、最終的に上段の強制空冷装置13における冷却空気流13hでZn−Al合金めっき層部2を凝固点まで冷却することで、ざら面状のめっき表面1aに仕上げられるようにしてある。冷却空気の温度及び風速は、それらのセンサー及び制御要素を通じて制御・管理可能にしてある。
【0011】
次に、本発明のZn−Al合金めっき線の製造方法について、前記した図3の製造装置による図1のZn−Al合金合金めっき線1の製造例で説明する。
溶融めっき槽11出口に設けられた無酸化性ガスが供給されるガス絞り部12で、金属線の表面に付着した溶融金属を所定の厚みに絞りつつ、この金属線を52m/分の線速で引き上げ、その直後に、上中下の各段の強制風冷装置13を通過させて、各強制風冷装置13において金属線表面の溶融金属を、金属線の進行方向と略平行に流れる温度が40℃で風速が25m/sの冷却空気流13hによる気流内で個々に強制冷却する。すなわち、下段の強制風冷装置13による第1次風冷、中段の強制風冷装置13による第2次風冷、上段の強制風冷装置13による第3次風冷の順に間欠的に風冷することにより、金属線表面の溶融金属を緩やかに凝固させることで、めっき表面2aがざら面状のZn−Al合金めっき線1を製造している。
【0012】
【発明の効果】
A.請求項1により、めっき表面から滑り性が失われていて、水に濡れても滑り難いめっき表面特性を有し、しかも、加工性を維持して、Zn−Al合金めっき層部にクラックや剥離がないZn−Al合金めっき線を、効率良く経済的に安価に製造可能である。
それにより、Zn−Al合金めっき線は、河川や海岸の護岸工事に使用されている金網製の籠マットの上蓋等に好適であり、水に濡れても滑らずに歩き易く、施工中の作業時はもとより、施工後にも安全性が保たれて有用である。
B.請求項3により、滑り難いめっき表面特性を有していて、しかも、加工性が良くて、Zn−Al合金めっき層部にクラックや剥離がないZn−Al合金めっき線を、効率良く経済的に安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造装置により製造されるZn−Al合金めっき線の1形態を例示している断面図。
【図2】めっき表面の拡大図。
【図3】本発明のZn−Al合金めっき線の製造装置における実施の1形態を例示している概略図。
【図4】強制風冷装置の拡大縦断面図。
【図5】図4の(5)−(5)拡大横断面図。
【図6】従来のZn−Al合金めっき線におけるめっき表面の拡大図。
【符号の説明】
1 Zn−Al合金めっき線
2 Zn−Al合金めっき層部
2a めっき表面
10 Zn−Al合金めっき線製造装置
11 溶融めっき槽
11a Zn−Al合金めっき浴
12 ガス絞り部
13 強制風冷装置
13a 圧力室
13b 通風筒
13c スリット
13d 内筒
13e 冷却空気供給管
13f ミスト供給管
13g 整流板
13h 冷却空気流
14 シンカーローラ
15 トップローラー
Claims (3)
- 溶融めっき槽における金属線の出口に無酸化性ガスが供給されるガス絞り部を設けて、このガス絞り部を経て引き上げられる金属線の進行方向に沿い複数の強制風冷装置を、この各強制風冷装置により金属線表面の溶融金属が間欠的に風冷されて凝固するように、上下に間隔を保ち配設し、
前記強制風冷装置は、水冷を含まず、冷却空気による風冷または冷却空気にミストを混入させた風冷のうち両者またはどちらか一方を行なうもののみからなることを特徴とする表面粗度が中心線平均粗さRaで1.5〜20μmであるZn−Al合金めっき線の製造装置。 - 各強制風冷装置が、金属線の進行方向と略平行に流れる冷却空気の気流内で、金属線表面の溶融金属を強制冷却可能にしてあることを特徴とする請求項1記載のZn−Al合金めっき線の製造装置。
- 溶融めっき槽出口に設けられた無酸化性ガスが供給されるガス絞り部で、金属線の表面に付着した溶融金属を所定の厚みに絞りつつ金属線を引き上げ、その直後に、金属線の進行方向に沿い配設してある上下の複数の各強制風冷装置を通過させて、各強制風冷装置において金属線表面の溶融金属を、金属線の進行方向と略平行に流れる冷却空気の気流内で個々に強制冷却することにより、水冷を用いず、冷却空気による風冷または冷却空気にミストを混入させた風冷のうち両者またはどちらか一方のみを用いて金属線表面の溶融金属を間欠的に風冷して凝固させることで表面粗度が中心線平均粗さRaで1.5〜20μmであるめっき表面に仕上げるようにしたことを特徴とするZn−Al合金めっき線の製造方法。
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