JP3541716B2 - 内燃機関のフライホイール装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、トルク伝達を行なうとともに曲げ方向の振動を減衰するためのフレキシブルプレートをそなえた、内燃機関のフライホイール装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の内燃機関(エンジン)では、クランクシャフトの後端にフライホイールを取り付け、その慣性力を利用して軸トルクを平均化し回転の円滑化を図っている。ところが、高回転域において、クランク軸からフライホイールまでのマス−バネ系により、クランク軸後部からフライホイール部にかけて曲げ共振現象が生じる。この曲げ振動の共振振動数がエンジンの中・高回転域に存在すると不快な振動や騒音が発生することになり、ドライバに不快感を与えたり、クラッチ切れを悪化させたり、クランクシャフトのフライホイール取付部に大きな応力を生じさせることになる。
【0003】
そこで、近年では、図7に示すように、クランクシャフト95の後端にフレキシブルプレート91を装着し、フレキシブルプレート91を介してフライホイール94を装着したフライホイール装置が実用化されている。フレキシブルプレート91は、円周方向に剛性が高く半径方向には剛性が低い円盤状の部材であり、内周部をクランクシャフト95の後端に固定され外周部をフライホイール94に固定されている。このフレキシブルプレート91を装着することにより、フライホイール装置全体の曲げ剛性を低下させ、曲げ振動の共振現象を低回転域で発生させて中・高回転域でのエンジン振動・騒音,フライホイール振れ及びクランクシャフトの応力を抑制するようになっているのである。なお、92,93はアダプタプレートである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したフレキシブルプレート91をそなえたフライホイール装置の場合、フレキシブルプレート91の装着により中・高回転域での全体の振動・騒音,フライホイール振れ及びクランクシャフトの応力は抑制される反面、常用回転域で共振現象が生じてしまう。これによりフレキシブルプレート91に生じる応力は、特に、フレキシブルプレート91においてクランクシャフト95との取り付け部の境界部分に集中しやすく、疲労クラックが発生したり、また、取り付け面において磨耗(フレッチング)が生じたりする虞がある。
【0005】
これに対し、フレキシブルプレートの板厚を厚くして強度を向上させることも可能であるが、フライホイール装置全体の剛性も向上してしまい、振動・騒音の低減効果が小さくなってしまう。
また、特開平09−144813号公報に開示されているように、フレキシブルプレートとクランクシャフトとの間に材質の異なる2つの円盤状プレートを挟み、内周部をボルトでフレキシブルプレートとともにクランクシャフトに締結し、外周部はリベットでフレキシブルプレートと締結するようにした技術が提案されている。この技術は、フレキシブルプレートにたわみが生じたときに各プレート間に発生する摩擦により、フレキシブルプレートの振動を抑えるようにしたものである。
【0006】
しかしながら、この技術のようにプレートの両端を締結した場合には、各プレートは接触面ですべることなく一体にたわむことになり、振動エネルギを吸収できるほどの摩擦を期待することはできない。さらに、円盤状プレートの材質によっては、例えば、ゴム等の柔らかい材質の場合には、フレキシブルプレートをクランクシャフトに強く締結することができず、振動により緩みが生じたりする虞もある。また、金属のように硬い材質の場合には、フライホイール装置全体の剛性が向上してしまい、フレキシブルプレート付きフライホイール装置の装着効果が低減してしまう。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み創案されたもので、フレキシブルプレート付きフライホイール装置による振動・騒音の低減効果を損なうことなく、フレキシブルプレートの耐久性を確保できるようにした、内燃機関のフライホイール装置を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の内燃機関のフライホイール装置では、湾曲した断面形状を有する弾性変形可能な一対のダンピングプレートによって円周方向に剛性が高く径方向に剛性が低い円盤状のフレキシブルプレートを挟み、フレキシブルプレートの内周側部分をダンピングプレートとともにクランクシャフトの軸端に共締めするとともに、フレキシブルプレートの内周側部分よりも径方向外側の所定部分を一対のダンピングプレートの湾曲部により表裏から押圧しながら挟み込む。
【0009】
これにより、フレキシブルプレートの曲げ振動はダンピングプレートの湾曲部との間の摩擦抵抗によって抑制される。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1〜図4は本発明の一実施形態としての内燃機関のフライホイール装置を示すもので、図1はその構成を示す要部断面図である。また、図2は、本フライホイール装置にかかるダンピングプレートの構成について示す図である。
【0011】
図1に示すように、本フライホイール装置は、外周部にフライホイール7がボルト6によって固設されたフレキシブルプレート1を1対のダンピングプレート2,3で挟み込んだ構成になっている。ダンピングプレート2,3の内周側にはフレキシブルプレート1に設けられたボルト4用の挿通孔1aに対応するように挿通孔2a,3aが設けられている。これらの挿通孔1a,2a,3aの位置をクランクシャフト5の雌ねじ孔5aに合わせた上で、ボルト4を雌ねじ孔5aに螺入することにより、フレキシブルプレート1とダンピングプレート2,3とが一体にクランクシャフト5に共締めされるようになっている。
【0012】
ダンピングプレート2,3は、フレキシブルプレート1と同様の弾性変形可能な材質(例えば、SK5M等)で形成され、図1及び図2に示すように、取付け部21,31と複数の板バネ22,32とから構成されている。取付け部21,31は、上記の挿通孔2a,3aが設けられる部分であり、少なくともクランクシャフト5の径よりも大きく、かつ平面状に形成されており、ダンピングプレート2,3の締結時には、フレキシブルプレート1及びクランクシャフト5に密着するようになっている。
【0013】
一方、板バネ22,32は、取付け部21,31から均等な間隔で放射状に延びたプレートであり、その放射方向に延びる面はS字状に湾曲して形成され、それぞれ逆方向に凸となる2つの湾曲部23と24,33と34を有している。ダンピングプレート2,3とフレキシブルプレート1とを共締めする場合には、外周側の湾曲部24,34がフレキシブルプレート1を挟み込むように、内周側の湾曲部23,33を外側(フレキシブルプレート1とは逆側)に向け、外周側の湾曲部24,34を内側(フレキシブルプレート1側)に向けて配設するようになっている。
【0014】
したがって、ダンピングプレート2,3をフレキシブルプレート1を挟んでクランクシャフト5に締結したときには、外周側湾曲部24,34はフレキシブルプレート1に接触して外側方向の力を受けて変位し、板バネ22,32に撓みが生じることになる。この板バネ22,32に生じた撓みは、外周側湾曲部24,34をフレキシブルプレート1に押し付けるように作用し、フレキシブルプレート1と外周側湾曲部24,34の接触面25,35との間には、常に接触圧が発生した状態となっている。
なお、ダンピングプレート2,3にはリン酸塩皮膜処理等の表面処理が施されており、耐摩擦性の向上が図られている。
【0015】
本発明の一実施形態としての内燃機関のフライホイール装置は上述のごとく構成されているので、フレキシブルフライホイールAssyに曲げ振動が発生すると、フレキシブルプレート1を挟持するように接触するダンピングプレート2,3にもフレキシブルプレート1の撓みに応じて撓みが生じる。
【0016】
例えば、図3の断面図に示すように、フライホイール7の曲げ振動により、フレキシブルプレート1が鉛直面内で図3中時計回り方向に変形した場合(図3は変形を極端に示している)には、ダンピングプレート3の上部の板バネ32Aとダンピングプレート2の下部の板バネ22Bとは、フレキシブルプレート1に押されるようにして変形する。これにより、ダンピングプレート2,3の各板バネ22B,32Aのフレキシブルプレート1との接触面25B,35Aは、フレキシブルプレート1上を滑りながら外側へ移動する。このとき、接触面25B,35Aとフレキシブルプレート1との間には摩擦抵抗があるため、接触面25B,35Aのフレキシブルプレート1上での移動に伴う摩擦抵抗により摩擦熱が発生する。
【0017】
一方、ダンピングプレート3の下部の板バネ32Bとダンピングプレート2の上部の板バネ22Aとは、フレキシブルプレート1の時計方向への回転によりフレキシブルプレート1から受けていた押圧力が弱まることにより共締め前の初期位置に戻ろうと変形し、フレキシブルプレート1の変形に追随して時計回り方向に変形する。したがって、ダンピングプレート2,3の各板バネ22A,32Bのフレキシブルプレート1との接触面25A,35Bは、フレキシブルプレート1上を滑りながら内側へ移動することになり、この接触面25A,35Bとフレキシブルプレート1との間にも摩擦抵抗による摩擦熱が発生する。
【0018】
これは、フレキシブルプレート1が他の方向に曲げ変形した場合も同様であり、フレキシブルプレート1の曲げ変形にともないダンピングプレート2,3の接触面25,35とフレキシブルプレート1との間では摩擦抵抗に基づく摩擦熱が発生する。この摩擦熱は、フレキシブルプレート1の曲げ振動のエネルギが熱に変換されたものであり、このように曲げ振動のエネルギが摩擦熱に変換されていくことで、フレキシブルプレート1の振動レベルは抑制される。したがって、エンジンの回転数がフレキシブルプレート1の共振域に入った場合でも、図4に示すように、フレキシブルプレート1の振動の振幅は、ダンピングプレート2,3が装着された場合(図4中の実線参照)には、ダンピングプレート2,3が装着されない場合(図4中の一点鎖線参照)に比べて抑制される。
【0019】
このように、本内燃機関のフライホイール装置によれば、フレキシブルプレート1とダンピングプレート2,3との間の摩擦抵抗によりフレキシブルプレート1の振動を減衰させるようになっているので、フレキシブルプレート1の板厚を増加させることなく曲げ振動振幅を抑制することができ、その耐久性,信頼性の確保と振動,騒音の低減とがともに可能になるという利点がある。
【0020】
また、フレキシブルプレート1とクランクシャフト5との取付け部は、ダンピングプレート2,3の取付け部21,31が共締めされることにより当該取付け部の強度が向上されるという利点もある。さらに、フレキシブルプレート1は、クランクシャフト5との取付け部のみならず接触面25,35においてもダンピングプレート2,3と接触するようになっているので、曲げ変形にともなう応力のクランクシャフト5との取付け部への集中を緩和することができ、より耐久性を向上させることができるという利点もある。
【0021】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
例えば、上述の実施形態では、ダンピングプレート2,3はフレキシブルプレート1に対して対称に取り付けられるようになっているが、接触面25,35の周方向の位置は完全に一致している必要はなく、交互にずらして取り付けるようにしてもよい。また、径方向の接触位置についても同様であり、例えば、接触面25の方が接触面35よりも外周側に接触するようにしてもよく、その逆であってもよい。
以上のいずれの場合でも、フレキシブルプレートとダンピングプレートとの間での摩擦によりフレキシブルプレートの曲げ振動が減衰し、振動,騒音が低減されるとともに、耐久信頼性も確保される。
【0022】
また、ダンピングプレートの形状に関しても、上述の実施形態に限定されることなく、種々変形して実施すること可能であり、フレキシブルプレートの内周側部分をダンピングプレートとともにクランクシャフトの軸端に共締めするとともに、フレキシブルプレートの内周側部分よりも径方向外側の所定部分をダンピングプレートの湾曲部により表裏から挟み込めるような形状であればよい。
【0023】
例えば、図5に示すダンピングプレート70,75のように、取付け部71,76から放射状に延びる板バネ72,77に複数の湾曲を設けて、複数の接触面73,78,74,79によりフレキシブルプレート1を挟持するようにしてもよい。
さらに、図6に示すように、取付け部81と円環上の接触部82とをバネ部83により連結することによりダンピングプレート8を構成してもよい。つまり、バネ部83により接触部82をフレキシブルプレートに付勢して、接触部82がフレキシブルプレートに所定の面圧で接触するようにするのである。このような構成によれば、ダンピングプレートとフレキシブルプレートとの接触面が増大し、これにより摩擦抵抗も増大するので、フレキシブルプレートの振動の減衰をより大きくすることができるという利点がある。
【0024】
また、上述のように一対のダンピングプレートによりフレキシブルプレートを挟み込むのではなく、何れか一方の側にのみダンピングプレートを取り付けて共締めし、この一つのダンピングプレートによりフレキシブルプレートの共締めされた内周側部分よりも径方向外側の所定部分を押圧するようにしてもよい。このような構成でも、ダンピングプレートを装着しないフライホイール装置に比べて、曲げ振動の抑制が期待できる。
【0025】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の内燃機関のフライホイール装置によれば、フレキシブルプレートとダンピングプレートとの間の摩擦抵抗によりフレキシブルプレートの振動を減衰させるようになっているので、フレキシブルプレートの板厚を増加させることなく曲げ振動を抑制することができ、振動,騒音低減が図られるとともにその耐久性や信頼性も確保されるという利点がある。
【0026】
加えて、フレキシブルプレートにダンピングプレートが共締めされることにより、フレキシブルプレートのクランクシャフトへの取付け部分の曲げ変形によりフレキシブルプレートに発生する応力を低減することができ、さらにその耐久性や信頼性が確保されるという利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態としての内燃機関のフライホイール装置の構成を示す要部側断面図である。
【図2】本発明の一実施形態としての内燃機関のフライホイール装置にかかるダンピングプレートの構成を示す斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態としての内燃機関のフライホイール装置の作用効果を説明するための模式図である。
【図4】本発明の一実施形態としての内燃機関のフライホイール装置の作用効果を説明するための周波数と振幅の関係を示す図である。
【図5】本発明の一実施形態としての内燃機関のフライホイール装置にかかるダンピングプレートの変形例を示す要部側断面図である。
【図6】本発明の一実施形態としての内燃機関のフライホイール装置にかかるダンピングプレートの他の変形例を示す斜視図である。
【図7】従来の内燃機関のフライホイール装置の構成を示す側断面図である。
【符号の説明】
1 フレキシブルプレート
2,3 ダンピングプレート
21,31 取付け部
22,32 板バネ
23,33 湾曲部
24,34 湾曲部
25,35 接触面
4 ボルト
5 クランクシャフト
7 フライホイール
Claims (1)
- 所定の慣性モーメントを有するフライホイールと、円周方向に剛性が高く径方向に剛性が低い円盤状のフレキシブルプレートとをそなえ、該フライホイールを該フレキシブルプレートを介して該機関のクランクシャフトに固設する内燃機関のフライホイール装置において、
湾曲した断面形状を有する弾性変形可能な一対のダンピングプレートをそなえ、
該一対のダンピングプレートにより該フレキシブルプレートを挟み、該フレキシブルプレートの内周側部分を該ダンピングプレートとともに該クランクシャフトの軸端に共締めするとともに、
該フレキシブルプレートの該内周側部分よりも径方向外側の所定部分を該一対のダンピングプレートの湾曲部により表裏から押圧しながら挟み込む
ことを特徴とする、内燃機関のフライホイール装置。
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