JP3541587B2 - 電動車椅子の後輪懸架装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動車椅子の後輪懸架装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
電動車椅子の後輪懸架装置に関して、従来、クッションユニットをスイングアーム上に有するトレーリングアーム式のもの、車軸の長さ方向中心がスイングの中心になる車軸式のもの、あるいは、折り畳み式の電動車椅子で見られるフレームの捩れを利用したフレーム変形式のものなどがある。
【0003】
前記トレーリングアーム式のものは、図8および図9に示すように、電動車椅子aの車体フレームbには、一端部で後輪cの車軸c1を軸支するスイングアームdの他端部が揺動可能に支持され、かつ、スイングアームdと車体フレームbとの間にはクッションユニットeが介装されており、後輪cの上下動をスイングアームdの揺動に変換してクッションユニットeでその動作を吸収する。モータおよびギアなどの駆動ユニットfは、スイングアームd上の後輪c近傍に配設される(例えば実開昭57−197925号公報参照)。なお、符号gはシート、hは前輪である。また、iはバッテリーであって車体フレームbの側部フレーム間に配置される。
【0004】
前記車軸式のものは、図10(a)に示すように、後輪cを両端部で回動自在に支持する車軸c1に対して、その長さ方向中心位置を揺動支点jとして車体フレームbに支持するものであって、図10(b)に示すように、支点jを中心に垂直面内で左右に回転し揺動する。
【0005】
フレーム変形式のものは、図11(a)および同(b)に示すように、前フレームkおよび後フレームmによって左右の側部フレームnを前後で連結するようになっており、使用しないときには、前フレームkおよび後フレームmの回動軸k1,m1で折って、図11(c)に示すように車体全体を折り畳むことができるものである。このフレーム変形式のものにおいては、図11(d)に示すように、左右の後輪cの路面から受ける衝撃は、前記回動軸k1,m1等を支点とした車体フレーム全体の捩れとして吸収される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の電動車椅子の後輪懸架装置においては、次のような問題点がある。前記スイングアームdを有するトレーリングアーム式のものは、スイングアームdが車体中央の左右両側部を占有するため、図12に示すように、後輪懸架装置の占めるスペースS2が大きく、電装品等の配置に際して限られたスペースでの有効利用ができない。また、後輪懸架専用のスイングアームdを有するため、構成部品の点数も多い。また、図13(a)に示すように、後輪cの車軸c1よりも前方にクッションユニットeを配置していることから、図13(b)に示す後輪cの後方にクッションユニットeを配置したものに比べ、クッションユニットeのバネのストロークが短くかつ後輪cの上下動が大きくなり、緩衝精度のバラツキが大きくなってしまう。
【0007】
また、前記車軸c1の中心部を揺動中心とする車軸式のものは、旋回時、傾斜路等での横方向への踏ん張りが効きにくく、左右方向への安定性能が劣るものである。また、左右の後輪cが独立して懸架されていないため、左右の後輪cが同時に路面から力を受けたときは、車軸c1が回動せず左右の後輪cを同時に緩衝することができない不都合もある。
【0008】
さらに、前記フレーム変形式のものにあっては、走行中、路面の凹凸に合わせて左右の側部フレームnが動いてしまうため、搭乗者の乗車姿勢が影響されるという不具合が生ずる。また、このフレーム変形式のものにおいても、左右の後輪cを同時に緩衝することができない。
【0009】
本発明は、前記従来の問題点を解消するべくなされたものであって、車体のスペース使用効率の向上および緩衝精度の向上を図ると共に部品点数を削減し、かつ、左右の後輪の走行安定性を良好にし、さらに左右の後輪を同時に緩衝可能とした電動車椅子の後輪懸架装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するため次の構成を有する。
すなわち、請求項1の発明は、車体の左右側部を前後に延びる左右一対の側部フレームの前端部と後端部をブリッジフレームで連結して梯子状に形成した車体フレームと、シートを車体フレームに取り付けるものであって上端部に後方に向かって突出する手押しグリップバーを有する背もたれを後端部に設けたシートフレームと、キャスターにより回動自在になっている左右の前輪と、個別に駆動ユニットを備えてそれぞれ独自に駆動可能な左右の後輪と、この駆動ユニットに電力を供給し前記シートフレーム下方の車体フレーム中央部に配設した電源バッテリーとを備えた電動車椅子において、左右後輪の駆動ユニットは、駆動モータと、この駆動モータの駆動力を後輪に伝達する動力伝達機構と、この動力伝達機構を収納するギアケースとから主になり、前記ギアケースは、その前後方向中央部の左右方向外側に車軸を突設して後輪を回転自在に支持する一方、この車軸よりも前方のギアケースの内側に駆動モータを配設し、車体フレームを形成する左右の側部フレーム後端部に設けた揺動軸にギアケースの前端部を上下揺動可能に取り付けると共に、平面視コの字形状に形成され前記車体フレームの後部から後上方に向けて突設するリアキャリングバーに上端を支持されたクッションユニットの下端を前記ギアケース側面に取り付けたことを特徴とする電動車椅子の後輪懸架装置である。
【0013】
請求項1記載の発明によれば、左右の後輪をそれぞれ保持する各ギアケースが揺動するため、ギアケースがスイングアームとして機能するようになる。よって、従来のようなスイングアーム専用の部品が無い分、車体中央の左右両側部のスペースが懸架装置で占有されなくなり、車体中央のスペースの有効利用が可能となるため、車体のスペース使用効率が向上する。
【0014】
また、左右の後輪が独立懸架されると共に左右の後輪がそれぞれ独自のクッションユニットで緩衝されるので、左右の後輪の走行安定性を良好にすることができかつ左右の後輪を同時に緩衝することもできる。
【0015】
また、前記キャリングバーにクッションユニットの上端を取付け、下端をギアケースの側面に取り付けたので、クッションユニット専用のブラケット等を上下両端部において不要にでき、更なる部品点数の削減が図れる。
【0016】
また、スイングアームとして機能するギアケースにおいて、揺動中心軸、後輪の車軸およびクッションユニットの順にそれらが前後に並ぶため、クッションユニットのストロークを長く後輪の上下動を小さく設定することができ、緩衝精度を向上させることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
図1〜図4は本発明の実施形態に係る電動車椅子の後輪懸架装置の説明図であって、図1は電動車椅子の側面図、図2は電動車椅子の背面図、図3は駆動ユニット周辺の側面図、図4は駆動ユニット周辺の平面図である。また、図5〜図7は電動車椅子の概略図であって、図5は斜視図、図6は平面図、図7は側面図である。
【0018】
図1に示すように、本実施形態に係る電動車椅子の車体フレームは、車体左右側端部に位置しかつ前輪2および後輪4にわたるように前後に延びる左右一対の側部フレーム6を有する。両側部フレーム6の前端部、後端部では、平面視で梯子形状にブリッジフレーム8f,8rで連結されている。また、両側部フレーム6間であって車体中央部には、電源バッテリーやメインコントローラ等を収容する電装品ケース10が配設される。また、後側のブリッジフレーム8rには、車体を持ち上げて運ぶときなどに握られる平面視略コの字形のリアキャリングバー12aの左右両端部が固着されており、このリアキャリングバー12aは、側面視でブリッジフレーム8rから後上方に向けて突出している。なお、左右の側部フレーム6の前端側面にも、略コの字状のフロントキャリンバー12bが突設されている。
【0019】
車体フレームの上部には、図1に示すように、シート14aを車体フレームに取り付けるシートフレーム14が前端部14bを支点に前方に向けて回動可能に載置されている。また、左右一対の前輪2はキャスター2aにより回動自在になった追従輪であって、両側部フレーム6の前端部に上下方向に向いて固定された支持パイプ14cに軸支される。さらに、両側部フレーム6の前端部には乗員が足を乗せるフートレスト16が設けられ、シートフレーム14の後端部には背もたれ14dが設けられる(14d1は手押し用グリップバーである)。シートフレーム14の上部の左右には、アームレスト14eが立設され、一方のアームレスト14e前方には、後輪4の駆動を制御して、電動車椅子の発進、停止、操舵を行うジョイスティックコントロールノブスイッチ14fが配置される。
【0020】
車体後下部の左右両側には、図2および図3に示すように、左右一対の駆動ユニット18が配設される。各駆動ユニット18は、駆動モータ20と、駆動モータ20の駆動力を後輪4に伝達する動力伝達機構(図示略)を収納するギアケース22とから主に構成され、後輪懸架装置は、このギアケース22とクッションユニット24とを有してなる。
【0021】
左右の各ギアケース22は、図2に示すように後輪4の内側近傍に配置されており、図1に示すようにその略中央部にて後輪4の車軸4aを回転自在に保持する。また、ギアケース22の前端部は、側部フレーム6の後端部に突設されたブラケット26に揺動軸28を介して揺動自在に取り付けられる。クッションユニット24は、図2に示すように、オイルダンパ等の緩衝器24aとコイルスプリング24bとを合わせ持つ棒状のもので、ギアケース22後部の内側近傍で略鉛直方向に沿って配設される。クッションユニット24上端部は、図2に示すように前記キャリングバー12aの側部外面に取付けボルト30で固着される一方、その下端部は、ギアケース22の後下部の内側面に取付けボルト32・ナット34で固着されている。これにより、左右の後輪4は、それぞれ独自のギアケース22およびクッションユニット24によって互いに独立して懸架され、走行時には、揺動するギアケース22によってクッションユニット24を伸縮させながら路面の凸凹に合わせて上下動する。
【0022】
なお、各ギアケース22の内側面には、図2および図3に示すように、搭乗者用クラッチレバー36および介助者用クラッチレバー38を一体的に備えたクラッチレバー40が回動自在に取り付けられている。介助者用クラッチレバー38については、それらの後端部同士がベルト42によって左右に連結されており、介助者は、このベルト42を足で操作することにより、左右の駆動ユニット18におけるクラッチ手段(図示略)を同時に操作することができる。
【0023】
以上のように構成された電動車椅子の概略図を図5〜図7に示す。図5からわかるように、本実施形態においては、車体後部に配置されスイングアームとしても機能するギアケース22に後輪4が保持されると共に、その後輪4の後方位置でギアケース22がクッションユニット24によって支持されている。これにより、後輪懸架装置の占めるスペースS1は、図6に二点鎖線で示すように、車体後部の左右両側部に集中し、左右の後輪4の内側周辺のみとなるため、従来に比して占有スペースが大幅に減る。特に車体中央の左右両側部のスペースが広く空くため、電装品の設置スペースを多く取れる。例えば、前記電装品ケース10をスイングアームの無い分従来よりも幅広に形成し、この電装品ケース10内において、図6に示すように、中央のバッテリー収納部Aに対し左右一側にバッテリーチャージャーBを他側にメインコントローラCを配設することができる。また、左右のクッションユニット24をそれぞれ左右のギアケース22に近接させたので、左右のクッションユニット24間を介助者の足元スペースとして広く形成することができる。
【0024】
また、本実施形態では、揺動軸28と後輪4の車軸4aとを近づけることにより、スイングアームとして機能するギアケース22を強度上有利に構成することができる。
【0025】
また、クッションユニット24の上下両端部をそれぞれリアキャリングバー12aおよびギアケース22に取り付けることで、クッションユニット専用のブラケット等も上下両端部において不要にできる。したがって、スイングアーム専用の部品と共にクッションユニットの取り付け部材も削減することができるので、従来に比して部品点数を大幅に削減し、電動車椅子を安価に構成することができる。
【0026】
また、後輪4を左右独立して懸架したので、左右の後輪4の走行安定性を良好にすることができる。それと共に、左右の後輪4がそれぞれ独自のクッションユニット24で緩衝されるため、左右の後輪4を同時に緩衝することもできる。
【0027】
さらに、図7に示すように、スイングアームとなるギアケース22において、揺動軸(揺動中心軸)28、後輪4の車軸4aおよびクッションユニット24の順にそれらを前後に配置したので、クッションユニット24のストロークについては長く、後輪4の上下動については小さく設定できる。また、クッションユニット24を緩衝器24a付きのものとしたことからも、緩衝精度(入力に対する作動量および動作の円滑さ)をより一層向上させることができる。
【0028】
【発明の効果】
以上説明した通り本発明によれば、ギアケースをスイングアームとして兼用することにより、車体中央のスペースを有効利用できるため、車体のスペース使用効率を向上させることができる。また、左右の後輪の走行安定性を良好にすることができると共に左右の後輪を同時に緩衝することもできる。また、スイングアーム専用の部品を無くすと共にクッションユニット専用の取付け部材も不要にできるので、大幅な部品点数の削減を図ることができる。また、クッションユニットのストロークを長く後輪の上下動を小さく設定できるので、緩衝精度を向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係る電動車椅子の側面図である。
【図2】本実施形態に係る電動車椅子の背面図である。
【図3】本実施形態に係る駆動ユニット周辺の側面図である。
【図4】本実施形態に係る駆動ユニット周辺の平面図である。
【図5】本実施形態に係る電動車椅子を概略的に示す斜視図である。
【図6】本実施形態に係る電動車椅子を概略的に示す平面図である。
【図7】本実施形態に係る電動車椅子を概略的に示す側面図である。
【図8】従来例の電動車椅子の斜視図である。
【図9】従来例の電動車椅子を概略的に示す斜視図である。
【図10】他の従来例の電動車椅子を概略的に示す図であって、(a)は斜視図、(b)は後輪懸架装置の正面図である。
【図11】さらに別の従来例の電動車椅子を概略的に示す図であって、(a)は斜視図、(b)は車体の分解斜視図、(c)は折り畳んだ状態の斜視図、(d)は車体フレームが捩れた状態の斜視図である。
【図12】従来例の電動車椅子を概略的に示す平面図である。
【図13】電動車椅子の後輪懸架装置を概略的に示す図であって、(a)は従来例の側面図、(b)は後輪の後方にクッションユニットを配置した場合の側面図である。
【符号の説明】
4 後輪
4a 車軸
6 側部フレーム
8r ブリッジフレーム
12a リアキャリングバー
18 駆動ユニット
20 駆動モータ
22 ギアケース
24 クッションユニット
28 揺動軸(揺動中心軸に相当)

Claims (1)

  1. 車体の左右側部を前後に延びる左右一対の側部フレームの前端部と後端部をブリッジフレームで連結して梯子状に形成した車体フレームと、シートを車体フレームに取り付けるものであって上端部に後方に向かって突出する手押しグリップバーを有する背もたれを後端部に設けたシートフレームと、キャスターにより回動自在になっている左右の前輪と、個別に駆動ユニットを備えてそれぞれ独自に駆動可能な左右の後輪と、この駆動ユニットに電力を供給し前記シートフレーム下方の車体フレーム中央部に配設した電源バッテリーとを備えた電動車椅子において、
    左右後輪の駆動ユニットは、駆動モータと、この駆動モータの駆動力を後輪に伝達する動力伝達機構と、この動力伝達機構を収納するギアケースとから主になり、
    前記ギアケースは、その前後方向中央部の左右方向外側に車軸を突設して後輪を回転自在に支持する一方、この車軸よりも前方のギアケースの内側に駆動モータを配設し、車体フレームを形成する左右の側部フレーム後端部に設けた揺動軸にギアケースの前端部を上下揺動可能に取り付けると共に、平面視コの字形状に形成され前記車体フレームの後部から後上方に向けて突設するリアキャリングバーに上端を支持されたクッションユニットの下端を前記ギアケース側面に取り付けたことを特徴とする電動車椅子の後輪懸架装置。
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