JP3541548B2 - 電磁波漏洩防止フィルタ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は電磁波漏洩防止フィルタに係り、画像表示部からの電磁波を光学フィルタで遮蔽するものに関する。
【0002】
【従来の技術】
映像表示装置に使用されるガス放電表示パネル、例えば、プラズマディスプレイパネル(PDP)は、電極間の放電により内部に封入されているガスの分子を励起し(具体的にはキセノンガスとネオンガスとを混合し、キセノンガスの分子の励起を助ける)、発生する紫外線で内部に塗布されている蛍光物質を励起し、可視光領域の光を発光させ、映像を表示するのであるが、この放電等により電磁波が発生し、僅かではあるが外部に電磁波が漏洩する。この電磁波の漏洩防止のため、PDPの前面にPDPの発する近赤外線領域の波長を遮断するために配設される光学フィルタに電磁波漏洩防止機能を設けている。この機能は、例えば、光学フィルタの基材であるアクリル等の合成樹脂板面に導電体を網目状に形成したもの(導電メッシュと記す)を配設することにより達成される。導電メッシュは、漏洩を防止すべき周波数範囲をカバーし、かつ、映像光の妨げにならないように導電メッシュの格子の導体幅および導体間隔を最適に設定し、PDPの筺体に導電メッシュを接続して電磁波により誘起される電荷を接地すると共に、PDPの画素の行列とメッシュの導体とが重なって映像光を妨げることのないようにメッシュの向きを図5に示す如く斜めに設定する。
【0003】
ところで、PDPはライトイレーズ(新たな映像データを各画素に書込むため一旦全画素のデータを一斉に消去する)のための所要の周期で約350Vのパルスを電極間に印加する。フィルタはPDPの前面に近接して配設されるため、PDPの前面ガラスとフィルタとが容量結合した状態となり、上記ライトイレーズのためのパルス電圧が結合容量を通じてフィルタの導電メッシュに上記所要の周期で電荷が生成される。この電荷は、接地回路のインピーダンスにより導電メッシュと接地との間に瞬時的に電圧(実測によれば最大約140V)が生成されるが、接地に導通して導電メッシュの電圧は0Vとなる。一方、この瞬時的な電圧(約140V)は、図6に示すように、導電メッシュ12の格子で囲まれた部分41(アクリル系の粘着剤が存在する)に電荷が帯電し、導電メッシュ12の電圧が0Vとなった後もこの電荷が残る。帯電部分は導電メッシュ12と至近距離にあるため耐電圧を越え、導電メッシュ12の電圧が0Vに下がると同時にこの電荷が導電メッシュ12に向かって瞬時に放電(スパーク)する。この放電は、AC(交流)駆動型のPDPで、例えば、映像信号がNTSC方式の場合、1フィールドに6サブフィールドを設けて駆動するようにした場合、導電メッシュ12の電圧発生の繰り返し(所要)周期は約360Hz(60フィールド×6サブフィールド=360Hz)であり、放電も約360Hzで繰り返され、スパーク音が異常音として聞こえる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような点に鑑み、PDPの電磁波漏洩防止のため光学フィルタ面に形成する導電メッシュの格子内に、ライトイレーズのためPDPに印加されるパルス電圧により誘起される電荷を帯電しないようにし、帯電電荷の放電による異常音の発生を防止することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上述の課題を解決するため、PDP(画像表示部)の前面に配設する光学フィルタに光透過性のある導電メッシュを配設し、導電メッシュ上に光散乱・反射防止フィルムを粘着し、光散乱・反射防止フィルム上に透明な帯電防止層を設け、帯電防止層側をPDPに対向させてPDPの前面に取付けるようにした電磁波漏洩防止フィルタを提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明による電磁波漏洩防止フィルタでは、無色透明で耐衝撃性を有するアクリルあるいはポリカーボネート等の合成樹脂にPDPの発光色を補正するための顔料を適宜に混合し、PDPの発する近赤外領域の線スペクトルを吸収するための近赤外線吸収層を設けてフィルタ基台とし、外面側に外光反射防止処理層すなわちAR(Anti-Reflection )コート層(ARフィルム)を設けて外光の反射を防止し、内面側(PDP側)に導電メッシュを配設してPDPより放射される電磁波の外部への漏洩を防止し、導電メッシュ上に光散乱処理すなわちAG(Anti-Glare)処理(防眩処理)、およびAR処理したフィルムを粘着し、このAG・ARフィルム上に帯電防止剤を塗布して帯電防止を行い、電磁波漏洩防止フィルタを構成する。導電メッシュはPDPの筺体に接続し、PDPからの電磁波を導電メッシュで電流に変換し、アースに導通する。
【0007】
【実施例】
以下、図面に基づいて本発明による電磁波漏洩防止フィルタの実施例を詳細に説明する。図1は本発明による電磁波漏洩防止フィルタを取付けた状態の一例の概要図、図2は本発明による電磁波漏洩防止フィルタの一実施例の要部側断面図、図3および図4はそれぞれ本発明による電磁波漏洩防止フィルタの他の実施例の要部側断面図、図5は導電メッシュの説明図、図6は導電メッシュの拡大図である。
【0008】
図1において、1はPDP、2は電磁波漏洩防止フィルタ(以降、フィルタと略す)、3は筺体前部、4は筺体後部である。フィルタ2の周縁部に取付金具7を当接し、この取付金具7をネジ6で筺体前部3の取付ボス5に締付け、フィルタ2を筺体前部3に取付ける。PDP1は、取付ボス8を介してネジ9により筺体後部4に固定し、筺体後部4を筺体前部3に取付けることにより、PDP1の周縁部を取付金具7に当接させ、取付金具7をフィルタ2に強く接触させ、フィルタの周縁部に導出されている後述する導電メッシュと密に接触するようにする。取付ボス5、筺体前部3の内面、筺体後部4の内面および取付ボス8等は表面に導電処理加工を行い、これにより、導電メッシュをPDP1の背面の金属部(アース)に接続し、PDPより放射される電磁波により導電メッシュ12に誘起される電荷をアースに導通する。
【0009】
図2において、11はフィルタ基台、12はフィルタ基台11の1面に配設した導電メッシュ、13は帯電防止層、14は帯電防止層13を導電メッシュ12上に粘着するための粘着剤である。フィルタ基台11は、無色透明で耐衝撃性を有する合成樹脂、例えば、アクリルあるいはポリカーボネートに、PDPの発光色を補正するための赤色成分を吸収する選択吸収フィルタ用の顔料を混合し、青色発光用の蛍光物質が青色の他に僅かに発光する赤色成分を吸収するようにする。これに、図示しない近赤外線吸収フィルタ層を設け、PDPより放出される近赤外領域(800nm 〜1000nm)の線スペクトルを吸収し、周辺に設置される赤外線リモートコントロール装置あるいは光通信機器の動作に支障を生じないようにする。
【0010】
導電メッシュ12は、例えば、フィルタ基台11の表面にレジスト層を介して銅等の金属を所要の厚み(例えば、0.1 μm )に無電解メッキし、その上にニッケル等の金属を所要の厚み(例えば、100 Å)に無電解メッキし、その上にフォトレジストし、紫外線を照射してメッシュ導体部以外のレジストを除去し、エッチングにより導電メッシュを生成する。そして、可視光線をよく透過し、かつ、30MHz〜130MHzの周波数範囲の電磁波を遮蔽するように、PDPの画面サイズおよび画素のピッチ等を勘案し、例えば、図6に示すように導体幅(15μm )および導体間隔(127 μm )に設定し、上記周波数範囲の電磁波を遮蔽するようにし、図5に示すようにメッシュの向きを斜め45°に傾斜させ、PDP1の画素の行・列(縦横)にメッシュが重なって映像の邪魔にならないようにする。なお、導電メッシュ12は、合成樹脂のメッシュ織物に高導電率の金属である銅または銅ニッケル等を無電解メッキして金属織布とし、フィルタ基台11に粘着する、あるいはフィルタ基台11を2枚に分割して層間に挟持するようにしてもよい。金属織布はメッシュの細さ(すなわち導体幅)に限界があるので小口径のPDPには不向きであるが、40〜50型等の大口径の場合に有効である。あるいは、上述のようにメッシュではなく、銀あるいは金等の金属をスパッタして光を透過する薄膜を形成するか、または、フィルタ基台をガラス材で構成し、酸化錫等の金属を真空蒸着して光を透過する薄膜を形成するようにしてもよい。
【0011】
帯電防止層13は、導電性金属酸化物、例えば、酸化錫およびアンチモンを混合して微粒子化したものを所要の溶液、例えば、純水、アルコールおよび界面活性剤の混合溶液で溶解し、無色透明なフィルムにスプレーにより塗布する、あるいはバーコート法で塗布し、表面抵抗約10の6乗オーム/平方cm程度に生成したもので、フィルタ基台11の導電メッシュ12上にアクリル系の粘着剤14により粘着し、導電メッシュ12の格子間に電荷が帯電されにいようにする。
【0012】
図3は、前記帯電防止層13をAG・ARフィルム22上に形成し、フィルタ基台11の外面側(図の下方)にARフィルム21を粘着した例である。AG・ARフィルム22は、無色透明なフィルムの表面に微細な凹凸を形成し、照明器具等からの光を乱反射させて散乱させ、ぎらつきを防止すると共にPDPの映像と重なって画面が見にくくならないようにし、これに屈折率の異なる材料からなる膜を複数枚重ねて蒸着する、あるいはフッ素樹脂を塗布して膜を形成し、入射した光を複雑に屈折させて入射した方向に戻りにくいようにする。また、ARフィルム21は、例えば、透明フィルムの表面に屈折率の異なる材料からなる膜を複数枚重ねて蒸着する、あるいはフッ素樹脂を塗布して膜を形成し、フィルタ体内に入射した光を複雑に屈折させて前方に戻りにくくし、外光の反射による映像のコントラストの低下を防止する。
【0013】
図4は、図3のAG・ARフィルム22の表面をプライマコート処理した後、上記帯電防止層13を形成するようにした例である。これは、AG・ARフィルム22のAR処理のためフッ素樹脂を塗布したものの場合、フッ素樹脂膜により帯電防止剤がはねられ良好な付着状態が得られないため、事前にAG・ARフィルム22の面に界面活性剤を塗布(プライマコート処理)するものである。その他は図3と同じである。
【0014】
帯電防止層13がない場合、前述した如く、PDP1のライトイレーズにより導電メッシュ12に約140Vの電荷が誘起され、導電メッシュ12の格子で囲まれた部分41(アクリル系の粘着剤が存在する)にこの電荷が帯電され、導電メッシュ12の電荷が取付金具7を介してアースに流れ0Vとなった後も、光学フィルタ2は高絶縁体のため図6に示すようにこの電荷が残り、0Vとなった導電メッシュ12に向かって放電するが、PDP1と導電メッシュ12との間に帯電防止層を設けることによりPDP1と導電メッシュ12との間に電極を介挿した状態となり、上記140VはPDP1〜帯電防止層13間の容量と帯電防止層13〜導電メッシュ12間の容量とで分圧(容量比に反比例した電圧比)され、導電メッシュ12に誘起される電荷は上記140Vより低い値、すなわち、放電不可の電圧に低下し、放電は行われなくなり、異常音は生じないものとなる。
【0015】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明による電磁波漏洩防止フィルタによれば、PDPの電磁波漏洩防止のため光学フィルタに設ける導電メッシュとPDPとの間に帯電防止層を設けたので、ライトイレーズのためPDPに印加されるパルス電圧により導電メッシュに電荷が誘起されてもその電圧は低い値となり、放電は行われず、異常音を発生しないものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による電磁波漏洩防止フィルタを取付けた状態の概要図である。
【図2】本発明による電磁波漏洩防止フィルタの一実施例の要部側断面図である。
【図3】本発明による電磁波漏洩防止フィルタの他の実施例の要部側断面図である。
【図4】本発明による電磁波漏洩防止フィルタの他の実施例の要部側断面図である。
【図5】本発明による電磁波漏洩防止フィルタの導電メッシュの説明図である。
【図6】本発明による電磁波漏洩防止フィルタの導電メッシュの部分拡大図である。
【符号の説明】
1 PDP
2 電磁波漏洩防止フィルタ
7 取付金具
11 フィルタ基台
12 導電メッシュ
13 帯電防止層
14 粘着剤
21 ARフィルム
22 AG・ARフィルム
31 プライマコート処理
Claims (6)
- 画像表示部の前面に配設する光学フィルタに光透過性のある導電メッシュを配設し、導電メッシュ上に光散乱・反射防止フィルムを粘着し、光散乱・反射防止フィルム上に透明な帯電防止層を設け、帯電防止層側を画像表示部に対向させて画像表示部の前面に取付けるようにした電磁波漏洩防止フィルタ。
- 前記帯電防止層は、前記光散乱・反射防止フィルム上に透明な帯電防止剤を塗布して形成したものでなる請求項1記載の電磁波漏洩防止フィルタ。
- 前記帯電防止層は、前記光散乱・反射防止フィルム面に界面活性剤の塗布による前処理を行い、透明な帯電防止剤を塗布して形成したものでなる請求項1記載の電磁波漏洩防止フィルタ。
- 前記光学フィルタは、無色透明な合成樹脂のフィルタ基台に画像表示部の発光色の補正機能および画像表示部の発する近赤外領域の線スペクトル遮断機能を設けたものでなり、1面に前記導電メッシュ、光散乱・反射防止フィルムおよび帯電防止層を設けるようにした請求項1、請求項2または請求項3記載の電磁波漏洩防止フィルタ。
- 前記光学フィルタの他面に光反射防止層を設け、外光の反射を防止するようにした請求項4記載の電磁波漏洩防止フィルタ。
- 前記導電メッシュを画像表示部の筺体に接続し、画像表示部からの電磁波により誘起される電荷(電圧)を接地するようにした請求項1、請求項2、請求項3、請求項4または請求項5記載の電磁波漏洩防止フィルタ。
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