JP3541432B2 - 積層型熱交換器、その製造方法及びその洩れ検査方法 - Google Patents

積層型熱交換器、その製造方法及びその洩れ検査方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は流体通路を金属薄板の積層構造により形成する積層型熱交換器に関するもので、特に流体通路内を流れる内部流体同志で熱交換を行う副熱交換部を有する積層型熱交換器に関する。
【0002】
【従来の技術】
本出願人は、特開平5−196321号公報において、流体通路内を流れる内部流体同志で熱交換を行う副熱交換部を有する積層型熱交換器を提案している。
上記公報記載のものは、具体的には冷凍サイクルの蒸発器として適用されるものであって、通常の冷媒−空気間の熱交換をおこなう主熱交換部の他に、蒸発器入口側の冷媒と蒸発器出口側の冷媒とを熱交換させて、主熱交換部の入口タンク内に流入する冷媒の乾き度を小さくする、副熱交換部(冷媒−冷媒熱交換部)を設けている。
【0003】
この副熱交換部の作用により主熱交換部の入口タンク内に流入する冷媒の乾き度を大幅に小さくして、入口タンク内における冷媒が液単相に近い状態にすることにより、入口タンクから多数のチューブに冷媒を分配する際に、各チューブに均一に液冷媒を分配できる。しかも、各チューブ内面が液冷媒で覆われた状態となり、チューブ内面での熱伝達率が向上し、これらのことが相まって蒸発器の冷却性能を向上できるものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、本発明者らの実験検討によれば、上記公報記載のものでは、その製造に際して、副熱交換部(冷媒−冷媒熱交換部)を持つことに起因する冷媒内部洩れという特有の問題が生じることが分かった。すなわち、性能向上の心臓部となる副熱交換部(冷媒−冷媒熱交換部)にてろう付け不良等が生じると、蒸発器の入口側冷媒と出口側冷媒とが直接混合してしまう状態、つまり、副熱交換部の冷媒通路相互間での冷媒洩れ(以下内部洩れという)が発生することがある。この内部洩れが一旦発生すると、蒸発器の冷却性能が低下するのみならず、この蒸発器を用いた空調用冷凍サイクルが制御不能になる場合もある。
【0005】
ところで、蒸発器の入口側と出口側は本来、主熱交換部の冷媒通路を介して連通しているので、上記内部洩れの発生状態と、主熱交換部の冷媒通路を介した正規の連通状態との区別ができないので、上記内部洩れの有無を従来確認することができなかった。
本発明は上記点に鑑みてなされたもので、流体通路内を流れる内部流体同志で熱交換を行う副熱交換部を有する積層型熱交換器において、内部洩れの有無を的確に検知できるようにすることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するため、
請求項1記載の発明では、流体通路内を流れる内部流体と前記流体通路の外部を流れる外部流体とを熱交換させる主熱交換部と、
前記主熱交換部の流体通路の入口側に流入する内部流体と、前記主熱交換部の流体通路の出口側から流出する内部流体とを熱交換させる副熱交換部とを有し、
前記主及び副熱交換部の流体通路は金属薄板の積層構造により形成されており、
前記副熱交換部において、前記主熱交換部の流体通路の入口部及び出口部の少なくとも一方に対向する部位に、この入口部もしくは出口部を閉塞可能な検査治具を挿入するための治具挿入穴が設けられており、
この治具挿入穴には、この穴を密封するための密封部材が装着されているという技術的手段を採用する。
【0007】
請求項2記載の発明では、冷媒通路内を流れる冷媒と前記冷媒通路の外部を流れる被冷却流体とを熱交換させる主熱交換部と、
前記主熱交換部の冷媒通路の入口側に流入する冷媒と、前記主熱交換部の冷媒通路の出口側から流出する冷媒とを熱交換させる副熱交換部とを有し、
前記主及び副熱交換部の冷媒通路は金属薄板の積層構造により形成されており、
前記副熱交換部において、前記主熱交換部の冷媒通路の入口部及び出口部の少なくとも一方に対向する部位に、この入口部もしくは出口部を閉塞可能な検査治具を挿入するための治具挿入穴が設けられており、
この治具挿入穴には、この穴を密封するための密封部材が装着されているという技術的手段を採用する。
【0008】
請求項3記載の発明では、請求項1記載の積層型熱交換器の製造方法であって、
前記副熱交換部において、前記主熱交換部の流体通路の入口部及び出口部の少なくとも一方に対向する部位に、この入口部もしくは出口部を閉塞可能な検査治具を挿入するための治具挿入穴を設ける治具挿入穴加工工程と、
前記主熱交換部と、前記副熱交換部とを、金属薄板の積層構造からなる所定構造に仮組付する組付工程と、
前記所定構造に仮組付された副熱交換部及び主熱交換部からなる組付体を炉中にて一体ろう付けするろう付け工程と、
このろう付け後に、前記治具挿入穴から検査治具を挿入して、この検査治具により前記主熱交換部の流体通路の入口部もしくは出口部を閉塞するとともに、前記治具挿入穴が外部へ開口するのを前記検査治具により遮断する治具挿入工程と、
前記副熱交換部の流体通路内に洩れ検査用の流体を封入し、前記副熱交換部の流体通路相互間の内部洩れの有無を検査する洩れ検査工程と、
この洩れ検査を実施後に、前記治具挿入穴に密封部材を装着して、前記治具挿入穴を密封する治具挿入穴密封工程と、を備えるという技術的手段を採用する。
【0009】
請求項4記載の発明では、流体通路内を流れる内部流体と前記流体通路の外部を流れる外部流体とを熱交換させる主熱交換部と、
前記主熱交換部の流体通路の入口側に流入する内部流体と、前記主熱交換部の流体通路の出口側から流出する内部流体とを熱交換させる副熱交換部とを有し、
前記主及び副熱交換部の流体通路は金属薄板の積層構造により形成されており、
前記副熱交換部において、前記主熱交換部の流体通路の入口部及び出口部の少なくとも一方に対向する部位に、この入口部もしくは出口部を閉塞可能な検査治具を挿入するための治具挿入穴が設けられている積層型熱交換器において、
前記副熱交換部の流体通路相互間の内部洩れを検査する検査方法であって、
前記副熱交換部の前記治具挿入穴から検査治具を挿入して、この検査治具により前記主熱交換部の流体通路の入口部もしくは出口部を閉塞するとともに、前記治具挿入穴が外部へ開口するのを前記検査治具により遮断する治具挿入工程と、
前記副熱交換部の流体通路内に洩れ検査用の流体を封入し、前記副熱交換部の流体通路相互間の内部洩れの有無を検査する洩れ検査工程と、を備えるという技術的手段を採用する。
【0010】
請求項5記載の発明では、流体通路内を流れる内部流体と前記流体通路の外部を流れる外部流体とを熱交換させる主熱交換部と、
前記主熱交換部の流体通路の入口側に流入する内部流体と、前記主熱交換部の流体通路の出口側から流出する内部流体とを熱交換させる副熱交換部とを有し、
前記主及び副熱交換部の流体通路は金属薄板の積層構造により形成されており、
前記副熱交換部において、前記主熱交換部の流体通路の入口部及び出口部の少なくとも一方に対向する部位に、この入口部もしくは出口部を閉塞可能な検査治具を挿入するための治具挿入穴が設けられている積層型熱交換器において、
前記副熱交換部及び前記主熱交換部の流体洩れを検査する検査方法であって、
前記副熱交換部の流体通路及び主熱交換部の流体通路内に洩れ検査用の流体を封入し、前記副熱交換部及び前記主熱交換部の流体通路から外部への流体洩れの有無を検査する外部洩れ検査工程と、
前記副熱交換部の前記治具挿入穴から検査治具を挿入して、この検査治具により前記主熱交換部の流体通路の入口部もしくは出口部を閉塞するするとともに、前記治具挿入穴が外部へ開口するのを前記検査治具により遮断する治具挿入工程と、
前記副熱交換部の流体通路内に洩れ検査用の流体を封入し、前記副熱交換部の流体通路相互間の内部洩れの有無を検査する内部洩れ検査工程と、を備えるという技術的手段を採用する。
【0011】
【発明の作用効果】
請求項3〜5記載の発明によれば、上記技術的手段を有しているため、主熱交換部の流体通路(冷媒通路)と副熱交換部の流体通路(冷媒通路)との連通状態を検査治具により遮断して、副熱交換部の流体通路相互間の内部洩れの検査を確実に実施できる製造方法、検査方法を提供できる。
【0012】
また、請求項1、2記載の発明では、上記内部洩れの検査を良好に実施できる積層型の熱交換器、蒸発器を提供できる。
【0013】
【実施例】
以下、本発明を図に示す実施例について説明する。図1は本発明熱交換器を冷媒蒸発器として適用した自動車用空調装置の冷凍サイクルを示しており、1は圧縮機で、電磁クラッチ2を介して自動車用エンジン(駆動源、図示せず)により駆動されるものである。3は凝縮器で、圧縮機1から吐出された高温、高圧のガス冷媒を冷却ファン(図示せず)の送風空気と熱交換して冷却し、凝縮するものである。 4は凝縮器3で凝縮した液冷媒を溜めて液冷媒のみをサイクル下流側へ導出する受液器、5は冷媒の減圧手段を構成する温度作動式膨張弁、6は本発明による積層型の冷媒蒸発器である。
【0014】
この蒸発器6は、冷媒通路7a内を流れる冷媒と前記冷媒通路7aの外部を流れる空調用送風空気(被冷却流体)とを熱交換させる主熱交換部7と、
この主熱交換部7の冷媒通路7aの入口側に流入する冷媒と、前記主熱交換部7の冷媒通路7aの出口側から流出する冷媒とを熱交換させる副熱交換部8とを有している。
【0015】
ここで、副熱交換部8において、8aは前記主熱交換部7の冷媒通路7aの入口側に流入する冷媒が流れる冷媒通路を示し、8bは前記主熱交換部7の冷媒通路7aの出口側から流出する冷媒が流れる冷媒通路を示す。従って、副熱交換部8は冷媒−冷媒熱交換部を構成することになる。一方、主熱交換部7は送風空気から冷媒が吸熱して蒸発する冷媒蒸発部(冷媒−空気熱交換部)を構成することになる。
【0016】
9は副熱交換部8の入口側冷媒通路8aと主熱交換部7の冷媒通路7aの入口部との間に蛇行状に形成された微小断面積の冷媒通路で、一般にキャピラリチューブと称されている減圧手段の役割を果たす。但し、この冷媒通路9による減圧度合いは膨張弁5の減圧度合いよりも小さく設定されているので、この冷媒通路9は補助減圧手段として作用するものであって、副熱交換部8における入口側冷媒通路8aの冷媒温度と、出口側冷媒通路8bの冷媒温度との間に、高低の差をつけて、両通路8a、8b間の熱交換を良好に行わせるものである。
【0017】
10は定圧弁で、冬季の如く冷凍サイクル熱負荷が著しく低下して、その前後の圧力差が設定値以下になると、開弁して受液器4からの液冷媒を所定量減圧して直接主熱交換部7の冷媒通路7aの入口に流入させるものである。
冬季の低負荷条件時には、膨張弁5の弁開度が微小となって、冷媒流量が小となり、かつ車室内空気を循環させる内気循環モードでは、小流量の冷媒が比較的高温の内気から吸熱して、主熱交換部7の出口冷媒温度が入口冷媒温度より高くなってしまうことがある。その結果、副熱交換部8で、主熱交換部7の出口冷媒により入口側冷媒を加熱するという不具合が生じる。
【0018】
そこで、このような低負荷条件下では、前記定圧弁10を開弁して、上記不具合の発生を防止するようにしてある。
前記主及び副熱交換部7、8及び微小冷媒通路9は金属薄板の積層構造により形成されており、その具体的構造は基本的には特開平5−196321号公報と同じでよいので、以下積層構造の概略を図2、3により説明すると、主熱交換部7では、金属薄板7b、具体的にはアルミニュウム心材の両面にろう材をクラッドした両面クラッド材を所定形状に成形して、これを2枚1組として多数組積層した上で、ろう付けにより接合することにより多数の冷媒通路7aを並列に形成するものである。
【0019】
この多数の冷媒通路7aはそれぞれ上方でUターンするU形状のものであり、この各U形状の冷媒通路7aの入口部及び出口部はそれぞれ通路下方部に形成された入口側タンク部7c、出口側タンク部7dの開口部にて相互にコア奥行き方向で連通するようになっている。また、主熱交換部7では、隣接する冷媒通路7aの外面側相互の間隙にコルゲートフィン(フィン手段)11を接合して空気側の伝熱面積の増大を図るようになっている。
【0020】
同様に、副熱交換部8においても、金属薄板8c、具体的にはアルミニュウム心材の両面にろう材をクラッドした両面クラッド材を所定形状に成形して、これを多数枚積層してろう付けにより接合することにより、この多数枚の積層構造の金属薄板8cの間に、前記入口側冷媒通路8aと、出口側冷媒通路8bを交互に形成するようになっている。
【0021】
ここで、副熱交換器8の端板12には配管コネクタ部材13が接合されるようになっており、この配管コネクタ部材13には、膨張弁5で減圧された気液2相冷媒が流入する入口管13aと、蒸発器6から圧縮機1側へ吸入されるガス冷媒が流出する出口管13bと、微小冷媒通路9の下流側を定圧弁10の下流側に接続する接続管13cとが配設されている。
【0022】
そして、この入口管13aからの冷媒は、金属薄板8cの上部に形成された、入口側冷媒通路8aの入口側タンク部8dに流入するようになっており、この入口側タンク部8dはそれ自身の開口部にてコア奥行き方向に連通している。一方、金属薄板8cの下部に入口側冷媒通路8aの出口側タンク部8eが形成されており、この出口側タンク部8eもそれ自身の開口部にてコア奥行き方向に連通している。そして、上部の入口側タンク部8dから下部の出口側タンク部8eに向かって、入口側冷媒通路8aが蛇行状に形成されている。
【0023】
また、前記した微小冷媒通路9も、主熱交換部7のうち最も副熱交換部8寄りの金属薄板7bと、主、副両熱交換部7、8の中間に介在された肉厚の中間プレート14との間に形成されるようになっている。
入口側冷媒通路8aの出口側タンク部8eから流出した冷媒は次に微小冷媒通路9を通過した後、主熱交換部7の入口側タンク部7cに流入し、ここから主熱交換部7の各冷媒通路7aをUターン状に流れ、その後出口側タンク部7dに集合するようになっている。
【0024】
この出口側タンク部7dに集合した冷媒は、副熱交換部8の金属薄板8cの下部に形成された、出口側冷媒通路8bの入口側タンク部8fに流入するようになっており、この入口側タンク部8fはそれ自身の開口部にてコア奥行き方向に連通している。一方、金属薄板8cの上部に出口側冷媒通路8bの出口側タンク部8gが形成されており、この出口側タンク部8gもそれ自身の開口部にてコア奥行き方向に連通している。そして、下部の入口側タンク部8fから上部の出口側タンク部8gに向かって、出口側冷媒通路8bが蛇行状に形成されている。
【0025】
副熱交換部8において、入口側冷媒通路8aと出口側冷媒通路8bは多数枚積層された金属薄板8cの表裏両側に交互に形成されている。出口側冷媒通路8bの出口側タンク部8gから冷媒は配管コネクタ部材13の出口管13bへ流出する。15は主熱交換部7の端板である。
次に、図4により本発明の要部をなす副熱交換部8の内部洩れ(入口側冷媒通路8aと出口側冷媒通路8bとの区画接合部8hにろう付け不良等により隙間が生じて、冷媒が洩れる状態をいう)を検査するための構成を説明する。16は前記中間プレート14に設けられた、断面円弧状の円形打ち出し部を有する冷媒入口穴で、図7に示すように主熱交換部7の入口側タンク部7cに直接連通するものである。
【0026】
微小冷媒通路9を出た冷媒は一旦、中間プレート14の副熱交換部8側に形成された通路(図示せず)に流入し、この通路から前記冷媒入口穴16を経て入口側タンク部7cへ流入するようになっている。従って、本例では冷媒入口穴16が請求項1〜5における主熱交換部の流体(冷媒)通路の入口部を構成している。
【0027】
一方、副熱交換部8の端板12においては、上記冷媒入口穴16に対向する部位に穴12aが開けられており、この端板12の穴12aに検査治具17の取付座18が一体に接合されている。この取付座18は雌ねじ18aを有し、この雌ねじ18aにより、上記冷媒入口穴16を閉塞可能な検査治具17を挿入できる大きさを持った治具挿入穴19を設定している。
【0028】
上記検査治具17は、雄ねじ17aを外周部に形成した本体17bを有し、この本体17bには前記冷媒入口穴16を閉塞するように円錐状に形成された弁体17cと、この弁体17cに一体に結合された軸部17dが軸方向に移動可能に保持されている。
17eは弁体17cを外方側へ押圧するスプリング、17f、17gはシール用Oリング(シール部材)で、取付座18に検査治具17を装着したときに取付座18の治具挿入穴19を検査治具17により密封するためのものである。Oリング17gは本体17bの鍔状部17hの端面に配置されており、また他のOリング17fは本体17bの中心穴17iに配置されている。
【0029】
検査治具17としては、図4、5に示すスプリング17eにより弁体17cを冷媒入口穴16に押圧する形式のものの他に、図7に示すように弁体17cを軸部17dを介して本体17bに一体に連結し、本体17bの雄ねじ17aを取付座18の雌ねじ18aにねじ込むことにより、弁体17cを冷媒入口穴16の内周面に押し当てて、冷媒入口穴16を閉塞する形式のものであってもよい。
【0030】
図6において、20は治具挿入穴19を密封するための密封部材をなす蓋体で、雄ねじ20aを有し、この雄ねじ20aにより蓋体20は取付座18の雌ねじ18aに脱着可能に取付けられる。また、蓋体20は鍔状部20bを有し、この鍔状部20bの上端面にシール用Oリング(シール部材)20cを配置している。
【0031】
次に、上記構成において本実施例の冷媒蒸発器の製造方法及び冷媒洩れの検査方法について説明する。
本実施例では、蒸発器6をアルミニュウムの一体ろう付けで製造するようにしてあるので、冷間鍛造、切削加工等の必要な厚肉部品である配管コネクタ部材12及び取付座20、さらにはろう材の不要なコルゲートフィン11を除く他の薄板形状の部品はすべてろう材を両面クラッドしたアルミニュウム両面クラッド材から成形されている。厚肉部品の配管コネクタ部材12、取付座20及びコルゲートフィン11はろう材をクラッドしてないアルミニュウムベア材で成形している。
【0032】
以下製造方法を工程順に説明する。
1.主熱交換部7及び副熱交換部8のそれぞれ個別の組付工程
主熱交換部7においては、まず、入口タンク部7c、出口タンク部7dのバーリング形状部7e(図7参照)をかしめて口拡することによりコルゲートフィン11を挟む2つの金属薄板7b、7bを一体化して、これらの三者11、7b、7bを1ユニットしておく。しかるのち、端板15と、前記1ユニット化した金属薄板7b、7b及びコルゲートフィン11と、微小冷媒通路9を形成する金属薄板7bを図2、3に示すごとき形態に積層して、主熱交換部7の組付を終える。
【0033】
副熱交換部8においては、前述の冷媒入口穴16を予め加工した中間プレート14、金属薄板8c、及び端板12を図2、3に示す形態に積層するとともに、治具挿入穴19を設定する雌ねじ18aを加工した取付座18及び配管コネクタ部材13を端板12に組付けて、副熱交換部8の組付を終える。
2.蒸発器6全体の組付工程
上記のように、それぞれ個別に組付けられた主熱交換部7と副熱交換部8とを、主熱交換部7が下方、その上方に副熱交換部8が位置するように、この両者7、8を積層して、この両者7、8の積層組付体を縦方向の組付治具により保持して、蒸発器6全体の積層状態を維持する。
3.蒸発器6全体の一体ろう付け工程
縦方向の組付治具により上記両熱交換部7、8の積層状態を維持しながら、この組付体を真空炉中に搬入して、アルミニュウムクラッド材のろう材融点以上に加熱して、組付体各部の接合部分をろう付けにより一体に接合し、蒸発器6全体を一体構造にする。
4.冷媒の外部洩れ検査工程
蒸発器6の外部への開口部は、図2、3、4に示す配管コネクタ部材13の入口管13a、出口管13b、接続管13c及び取付座18の治具挿入穴19の4箇所あるので、これらの開口部のうち1つを残して、他の3つの開口部を閉塞する。例えば、入口管13aのみ開口しておき、他の開口部はすべて適宜の盲蓋で閉塞しておく。但し、治具挿入穴19は蓋体20にて図6に示すように閉塞する。
【0034】
次に、蒸発器6を密閉室内に搬入し、入口管13aに洩れ検査用流体(例えばヘリウムガス)の供給装置を接続して、この検査用流体を所定圧力に加圧して入口管13aから蒸発器6の主、副両熱交換部7、8の冷媒通路7a、8a、8b内に供給し、蒸発器6外への流体洩れ(密閉室内への流体洩れ)の有無を検査する。
5.冷媒の内部洩れ検査工程
副熱交換部8においてろう付け不良等により入口側冷媒通路8aと出口側冷媒通路8bとが直接連通する状態が内部洩れ(図1の矢印Xはこの内部洩れを模式的に示す)であり、この内部洩れによる連通状態と、入口側冷媒通路8aと出口側冷媒通路8bとが主熱交換部7の冷媒通路7aを介した正規の連通状態は、蒸発器6の本来の構成のままでは区別することができない。
【0035】
そこで、本例では、主熱交換部7の冷媒通路7aの入口部を閉鎖(図1のY部はその閉鎖部を示す)することにより、冷媒の内部洩れの検査を可能としている。すなわち、冷媒の外部洩れ検査工程で装着した蓋体20を取付座18から取り外して、その代わりに検査治具17の先端の弁体17cを取付座18の治具挿入穴19から副熱交換部8内に挿入し、検査治具17の雄ねじ17aを取付座18の雌ねじ18aにねじ込む。
【0036】
図5はこのねじ込みが終了した状態であり、この状態では、鍔状部17hのOリング17gが取付座18の端面に圧着して、この端面部分のシールを行う。また、中心穴17i部分のシールはOリング17fによって行われる。これと同時に、弁体17cが冷媒入口穴16の内周面に圧着してこの冷媒入口穴16を閉鎖する。この閉鎖部分は図1の閉鎖部Yに対応する。
【0037】
そして、接続管13cは適宜の盲蓋で閉塞し、出口管13bは開口したままにしておく。
しかるのち、蒸発器6を密閉室内に搬入し、入口管13aに洩れ検査用流体(例えばヘリウムガス)の供給装置を接続して、この検査用流体を所定圧力に加圧して入口管13aから蒸発器6の副熱交換部8の入口側冷媒通路8a内に供給し、副熱交換部8の入口側冷媒通路8aから出口側冷媒通路8bへの流体洩れ(出口管13bを通して密閉室内への流体洩れ)の有無を検査する。
【0038】
つまり、図1の矢印Xのような内部洩れがあるときは、出口管13bを通して密閉室内へ流体が洩れてくるので、内部洩れの発生を検知できる。
ここで、内部洩れの検査は、本例のように外部洩れを実施した後に行うことが重要である。なぜならば、内部洩れの検査は、本例とは逆に外部洩れの実施前に行うと、内部洩れ検査時に密閉室内に洩れ出た流体が、内部洩れによるものか、外部洩れによるものか判別できないからである。
【0039】
6.蓋体装着工程
外部洩れ検査及び内部洩れ検査により、洩れなしと判定された良品については、検査治具17を取付座18から取り外して、その代わりに蓋体20を図6に示すように取付座20にねじ込みで装着し、Oリング20cが取付座18の端面に弾性的に圧着することにより、この端面部分をシールして、取付座18のねじ部分から外部へ冷媒が洩れることを確実に防ぐ。
【0040】
以上により蒸発器6の骨格構造の製造を終了でき、この後は表面処理等の仕上げを行うことにより、蒸発器6の製造を完了できる。
なお、上述の例では、密封部材である蓋体20をねじにより脱着可能に取付座18に装着しているので、蒸発器6使用後でも、蓋体20を取り外して、検査治具17により冷媒入口穴16を閉鎖することにより、何回も内部洩れの検査を実施できるが、内部洩れの検査を製造工程時に行うだけでよい場合は蓋体20をねじ込み等の脱着可能な手段で取付座18に装着せず、かしめ、ろう付け等の手段で蓋体20を取付座18側に一体に固着するようにしてもよい。
【0041】
また、上述の例では、主熱交換部7の冷媒通路7aの入口部(冷媒入口穴16)を検査治具17で閉鎖して、入口管13aから検査用流体を加圧して供給するようにしたが、主熱交換部7の冷媒通路7aの出口部(冷媒入口穴16の代わりに冷媒出口穴を中間プレート12に設置する)を検査治具17で閉鎖して、出口管13bから検査用流体を加圧して供給するようにして、内部洩れの検査を行うことも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明蒸発器を含む冷凍サイクル図である。
【図2】本発明蒸発器の一実施例を示す斜視図である。
【図3】図2の蒸発器の分解斜視図である。
【図4】図2、3の蒸発器において、検査治具挿入前の状態を示す要部断面図である。
【図5】図2、3の蒸発器において、検査治具挿入後の状態を示す要部断面図である。
【図6】図2、3の蒸発器において、検査治具の代わりに蓋体を装着した状態を示す要部断面図である。
【図7】検査治具の他の例を示す図で、検査治具挿入後の状態を示す要部断面図である。
【符号の説明】
6 蒸発器
7 主熱交換部
7a 冷媒通路
7b 金属薄板
8 副熱交換部
8a 入口側冷媒通路
8b 出口側冷媒通路
8c 金属薄板
16 冷媒入口穴(入口部)
17 検査治具
19 治具挿入穴
20 蓋体(密封部材)

Claims (5)

  1. 流体通路内を流れる内部流体と前記流体通路の外部を流れる外部流体とを熱交換させる主熱交換部と、
    前記主熱交換部の流体通路の入口側に流入する内部流体と、前記主熱交換部の流体通路の出口側から流出する内部流体とを熱交換させる副熱交換部とを有し、
    前記主及び副熱交換部の流体通路は金属薄板の積層構造により形成されており、
    前記副熱交換部において、前記主熱交換部の流体通路の入口部及び出口部の少なくとも一方に対向する部位に、この入口部もしくは出口部を閉塞可能な検査治具を挿入するための治具挿入穴が設けられており、
    この治具挿入穴には、この穴を密封するための密封部材が装着されていることを特徴とする積層型熱交換器。
  2. 冷媒通路内を流れる冷媒と前記冷媒通路の外部を流れる被冷却流体とを熱交換させる主熱交換部と、
    前記主熱交換部の冷媒通路の入口側に流入する冷媒と、前記主熱交換部の冷媒通路の出口側から流出する冷媒とを熱交換させる副熱交換部とを有し、
    前記主及び副熱交換部の冷媒通路は金属薄板の積層構造により形成されており、
    前記副熱交換部において、前記主熱交換部の冷媒通路の入口部及び出口部の少なくとも一方に対向する部位に、この入口部もしくは出口部を閉塞可能な検査治具を挿入するための治具挿入穴が設けられており、
    この治具挿入穴には、この穴を密封するための密封部材が装着されていることを特徴とする積層型蒸発器。
  3. 請求項1記載の積層型熱交換器の製造方法であって、
    前記副熱交換部において、前記主熱交換部の流体通路の入口部及び出口部の少なくとも一方に対向する部位に、この入口部もしくは出口部を閉塞可能な検査治具を挿入するための治具挿入穴を設ける治具挿入穴加工工程と、
    前記主熱交換部と、前記副熱交換部とを、金属薄板の積層構造からなる所定構造に仮組付する組付工程と、
    前記所定構造に仮組付された副熱交換部及び主熱交換部からなる組付体を炉中にて一体ろう付けするろう付け工程と、
    このろう付け後に、前記治具挿入穴から検査治具を挿入して、この検査治具により前記主熱交換部の流体通路の入口部もしくは出口部を閉塞するとともに、前記治具挿入穴が外部へ開口するのを前記検査治具により遮断する治具挿入工程と、
    前記副熱交換部の流体通路内に洩れ検査用の流体を封入し、前記副熱交換部の流体通路相互間の内部洩れの有無を検査する洩れ検査工程と、
    この洩れ検査を実施後に、前記治具挿入穴に密封部材を装着して、前記治具挿入穴を密封する治具挿入穴密封工程と、を備えることを特徴とする積層型熱交換器の製造方法。
  4. 流体通路内を流れる内部流体と前記流体通路の外部を流れる外部流体とを熱交換させる主熱交換部と、
    前記主熱交換部の流体通路の入口側に流入する内部流体と、前記主熱交換部の流体通路の出口側から流出する内部流体とを熱交換させる副熱交換部とを有し、
    前記主及び副熱交換部の流体通路は金属薄板の積層構造により形成されており、
    前記副熱交換部において、前記主熱交換部の流体通路の入口部及び出口部の少なくとも一方に対向する部位に、この入口部もしくは出口部を閉塞可能な検査治具を挿入するための治具挿入穴が設けられている積層型熱交換器において、
    前記副熱交換部の流体通路相互間の内部洩れを検査する検査方法であって、
    前記副熱交換部の前記治具挿入穴から検査治具を挿入して、この検査治具により前記主熱交換部の流体通路の入口部もしくは出口部を閉塞するとともに、前記治具挿入穴が外部へ開口するのを前記検査治具により遮断する治具挿入工程と、
    前記副熱交換部の流体通路内に洩れ検査用の流体を封入し、前記副熱交換部の流体通路相互間の内部洩れの有無を検査する洩れ検査工程と、を備えることを特徴とする積層型熱交換器の洩れ検査方法。
  5. 流体通路内を流れる内部流体と前記流体通路の外部を流れる外部流体とを熱交換させる主熱交換部と、
    前記主熱交換部の流体通路の入口側に流入する内部流体と、前記主熱交換部の流体通路の出口側から流出する内部流体とを熱交換させる副熱交換部とを有し、
    前記主及び副熱交換部の流体通路は金属薄板の積層構造により形成されており、
    前記副熱交換部において、前記主熱交換部の流体通路の入口部及び出口部の少なくとも一方に対向する部位に、この入口部もしくは出口部を閉塞可能な検査治具を挿入するための治具挿入穴が設けられている積層型熱交換器において、
    前記副熱交換部及び前記主熱交換部の流体洩れを検査する検査方法であって、
    前記副熱交換部の流体通路及び主熱交換部の流体通路内に洩れ検査用の流体を封入し、前記副熱交換部及び前記主熱交換部の流体通路から外部への流体洩れの有無を検査する外部洩れ検査工程と、
    前記副熱交換部の前記治具挿入穴から検査治具を挿入して、この検査治具により前記主熱交換部の流体通路の入口部もしくは出口部を閉塞するするとともに、前記治具挿入穴が外部へ開口するのを前記検査治具により遮断する治具挿入工程と、
    前記副熱交換部の流体通路内に洩れ検査用の流体を封入し、前記副熱交換部の流体通路相互間の内部洩れの有無を検査する内部洩れ検査工程と、を備えることを特徴とする積層型熱交換器の洩れ検査方法。
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