JP3541125B2 - アルカリ現像型光硬化性導電性ペースト組成物及びそれを用いて電極形成したプラズマディスプレイパネル - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと略称する)の前面基板に精細な電極回路を形成するのに有用なアルカリ現像型光硬化性導電性ペースト組成物及びそれを用いて電極形成したPDPに関するものである。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
PDPはプラズマ放電による発光を利用して映像や情報の表示を行う平面ディスプレイであり、パネル構造、駆動方法によってDC型とAC型に分類される。PDPによるカラー表示の原理は、リブ(隔壁)によって離間された前面ガラス基板と背面ガラス基板に形成された対向する両電極間のセル空間(放電空間)内でプラズマ放電を生じさせ、各セル空間内に封入されているHe、Xe等のガスの放電により発生する紫外線で背面ガラス基板内面に形成された蛍光体を励起し、3原色の可視光を発生させるものである。各セル空間は、DC型PDPにおいては格子状のリブにより区画され、一方、AC型PDPにおいては基板面に平行に列設されたリブにより区画されるが、いずれにおいてもセル空間の区画は、リブによりなされている。以下、添付図面を参照しながら簡単に説明する。
【0003】
図1は、フルカラー表示の3電極構造の面放電方式PDPの構造例を部分的に示している。前面ガラス基板1の下面には、放電のための透明電極3a又は3bと該透明電極のライン抵抗を下げるためのバス電極4a又は4bとから成る一対の表示電極2a、2bが所定のピッチで多数列設されている。これらの表示電極2a、2bの上には、電荷を蓄積するための透明誘電体層5(低融点ガラス)が印刷、焼成によって形成され、その上に保護層(MgO)6が蒸着されている。保護層6は、表示電極の保護、放電状態の維持等の役割を有している。
一方、背面ガラス基板7の上には、放電空間を区画するストライプ状のリブ(隔壁)8と各放電空間内に配されたアドレス電極(データ電極)9が所定のピッチで多数列設されている。また、各放電空間の内面には、赤(10a)、青(10b)、緑(10c)の3色の蛍光体膜が規則的に配されている。フルカラー表示においては、前記のように赤、青、緑の3原色の蛍光体膜10a、10b、10cで1つの画素が構成される。
上記PDPでは、一対の表示電極2aと2bの間に交流のパルス電圧を印加し、同一基板上の電極間で放電させるので、「面放電方式」と呼ばれている。また、放電により発生した紫外線は背面基板7の蛍光体膜10a、10b、10cを励起し、発生した可視光を前面基板1の透明電極3a、3bを透して見る構造となっている(反射型)。
【0004】
前記バス電極4a、4bの形成は、従来、Cr−Cu−Crの3層を蒸着やスパッタリングにより成膜した後、フォトリソグラフィー法でパターニングが行われてきた。しかし、工程数が多く高コストとなるため、最近では、銀ペースト等の導電性ペーストをスクリーン印刷した後、焼成する方法、あるいは150μm以下の線幅とするためには、感光性導電性ペーストを塗布し、パターンマスクを通して露光した後、現像し、次いで焼成する方法が行われている。
しかしながら、上記焼成工程を経るため、必然的にバス電極4a、4bに反り(カール)が生じ易くなる。特に皮膜の厚さが厚くなる程、このような問題が生じ易くなる。バス電極4a、4bに反りが生じた場合、反った部分の誘電体層の厚みが薄くなるため、ショートし易くなるという問題が発生する。
【0005】
ところで、最近、PDPの前面基板においては、画面のコントラストを向上させるために、バス電極を形成する際、表示側となる下層に導電性の劣る黒色導電性ペーストを印刷し、その上に導電性の良い銀ペーストの白層を印刷し、白黒二層構造の電極を形成することがよく行われる。このように白黒2種類の導電性ペーストを用いて電極を形成する場合、基板との密着性低下や、基板と黒層との間及び黒層と白層との間の層間剥離が発生し易くなり、電極の反り(カール)が生ずるという問題点が発生していた。
【0006】
本発明は、上記のような問題を解決すべくなされたものであり、その目的は、導電性ペースト組成物が乾燥、露光、現像、焼成の各工程において基板に対して安定した密着性を有すると共に優れた焼成性を有し、焼成後の基板への密着性、層間の密着性に優れ、カールの発生を抑制できる、アルカリ水溶液により現像可能な光硬化性導電性ペースト組成物を提供することにある。
さらに本発明の目的は、このような光硬化性導電性ペースト組成物から高精細の電極回路、特に前面基板に形成されるバス電極の下層(黒層)電極回路を形成したPDPを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明によれば、アルカリ現像型光硬化性導電性ペースト組成物が提供され、その基本的な第一の態様は、(A)カルボキシル基を有する樹脂、(B)光重合性モノマー、(C)光重合開始剤、(D)シラノール基を有する合成アモルファスシリカ微粉末、及び(E)導電性粉末を含有することを特徴としており、また第二の態様は、上記各成分に加えて、(F)耐熱性黒顔料を含有することを特徴としており、さらに第三の態様は、上記(A)〜(E)成分あるいはさらに(F)成分に加えて、(G)ガラスフリット及び(H)安定剤を含有することを特徴としている。本発明の組成物は、ペースト状形態であってもよく、また予めフィルム状に成膜したドライフィルムの形態であってもよい。
さらに本発明によれば、前面基板と背面基板に形成された対向する電極を有し、前面基板に透明電極とバス電極とからなる表示電極が列設されているプラズマディスプレイパネルにおいて、上記バス電極の下層電極回路が、上記のような光硬化性導電性ペースト組成物の焼成物から形成されていることを特徴とするPDPが提供される。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、前記したような問題について鋭意研究の結果、カルボキシル基を有する樹脂と導電性粉末を組み合わせて含有するアルカリ現像型光硬化性導電性ペースト組成物に、シラノール基を有する合成アモルファスシリカを添加すると、乾燥、露光、現像、焼成の各工程において基板に対して安定した密着性を示すと共に、焼成後の基板への密着性に優れ、カールの発生を大巾に抑制できることを見い出した。従って、このような光硬化性導電性ペースト組成物を、PDP前面基板に形成される黒白二層構造のバス電極の黒層の材料として用いた場合、バス電極は黒層が基板と白層の間に挟持されたサンドイッチ構造を有するため、黒層が密接する基板や白層との密着性に優れ、基板と黒層との間及び黒層と白層との間の剥離やカールの発生を抑制できる。
【0009】
上記作用を奏する理由は未だ充分に解明されてはいないが、焼成前においては、合成アモルファスシリカ表面のシラノール基の水素原子と基板として用いられるガラス基板や樹脂のカルボキシル基の酸素原子との水素結合や、シラノール基の電気的に陰性の酸素原子と導電性粉末の電気的に陽性の金属との間のクーロン力により、基板との密着性に優れた緻密な塗膜が形成され、焼成後においては、合成アモルファスシリカがガラス基板と導電性粒子との間の隙間及び導電性粒子間の隙間に入り込んでそれらの接着強度を増大させているものと推測される。また、このような作用を奏するためには、合成アモルファスシリカはできるだけ小さな一次粒子径を有することが望ましく、またその比表面積はできるだけ大きい方が好ましい。
ところで、アモルファスシリカとしては、合成アモルファスシリカの他に天然のアモルファスシリカも存在する。また、結晶性シリカも存在する。しかしながら、上記のような効果は、これら天然アモルファスシリカや結晶性シリカを用いた場合には得られない。上記のような効果が、合成アモルファスシリカをカルボキシル基含有樹脂と導電性粉末を組み合わせて含有する導電性ペースト組成物に添加した場合に得られる特有のものである、ということは驚くべきことであった。
【0010】
また、PDPの前面基板にバス電極を形成する場合、前記したように基板に密着される黒層の材料として本発明の光硬化性導電性ペースト組成物を用いれば充分であり、白層としては合成アモルファスシリカを添加していない光硬化性導電性ペーストを用いることが好ましい。この理由は、一般にアモルファス、結晶性の如何を問わず、シリカを添加した導電性ペースト組成物から形成される導体層の導電性は低下し易いからである。この理由から、PDP前面基板のバス電極形成用の導電性ペースト組成物には、通常、シリカは添加されていない。前記したように、バス電極の導電性は主として白層によって確保され、黒層は画像のコントラスト付与が主目的となっている。従って、本発明の光硬化性導電性ペースト組成物をバス電極の黒層形成材料として用いても、バス電極の本来の作用を何ら損うものではなく、逆に層間剥離やカール発生の防止といった効果が得られる。
しかしながら、白層形成用の光硬化性導電性ペースト組成物に、それから形成される導体層の導電性にそれ程悪影響を及ぼさない程度の少量の合成アモルファスシリカを添加することは差し支えない。このことは、背面ガラス基板に形成されるアドレス電極についても言える。
【0011】
以下、本発明の光硬化性導電性ペースト組成物の各成分について説明する。
まず、前記カルボキシル基を有する樹脂(A)としては、それ自体がエチレン性不飽和二重結合をするカルボキシル基含有感光性樹脂及びエチレン性不飽和二重結合を有さないカルボキシル基含有樹脂のいずれも使用可能である。好適に使用できる樹脂(オリゴマー及びポリマーのいずれでもよい)としては、以下のようなものが挙げられる。
(1)(a)不飽和カルボン酸と(b)不飽和二重結合を有する化合物の共重合体にエチレン性不飽和基をペンダントとして付加させることによって得られるカルボキシル基含有感光性樹脂
(2)(c)グリシジル基と不飽和二重結合を有する化合物と(b)不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、(a)不飽和カルボン酸を反応させ、生成した2級の水酸基に(d)多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂
(3)(e)不飽和二重結合を有する酸無水物と(b)不飽和二重結合を有する化合物の共重合体に、(f)水酸基と不飽和二重結合を有する化合物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂
(4)(g)エポキシ化合物と(h)不飽和モノカルボン酸を反応させ、生成した2級の水酸基に(d)多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂
(5)(b)不飽和二重結合を有する化合物とグリシジル(メタ)アクリレートの共重合体のグリシジル基に、(i)1分子中に1つのカルボキシル基を有し、エチレン性不飽和結合を持たない有機酸を反応させ、生成した2級の水酸基に(d)多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂
(6)(j)水酸基含有ポリマーに(d)多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂
(7)(j)水酸基含有ポリマーに(d)多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂に、(c)グリシジル基と不飽和二重結合を有する化合物をさらに反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂
【0012】
前記(1)のカルボキシル基含有感光性樹脂は、不飽和カルボン酸(a)と不飽和二重結合を有する化合物(b)の共重合体のカルボキシル基の一部に、充分な光硬化深度が得られる程度にまで光硬化性を向上させる割合で、例えばグリシジル(メタ)アクリレートを反応させ、該グリシジル(メタ)アクリレートの不飽和二重結合を側鎖に導入した樹脂である。上記共重合体の一方のモノマー成分である不飽和カルボン酸(a)の有するカルボキシル基の一部は未反応のまま残存するため、得られるカルボキシル基含有感光性樹脂は、アルカリ水溶液に対して可溶性である。そのため、このような樹脂を含有する導電性ペースト組成物から形成した皮膜は、選択的露光後にアルカリ水溶液により安定した現像が可能となる。
【0013】
前記不飽和カルボン酸(a)の具体的な例としては、アクリル酸、メタアクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、ビニル酢酸、又はこれらの酸無水物、さらには、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水ピロメリット酸などの酸無水物と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類などの水酸基を有する不飽和化合物との反応生成物等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でもアクリル酸及び/又はメタアクリル酸(以外、これらを総称する場合、(メタ)アクリル酸という)が好ましい。また、本明細書中で(メタ)アクリレートとは、アクリレートとメタアクリレートを総称する用語である。
【0014】
前記不飽和二重結合を有する化合物(b)の具体例としては、スチレン、クロロスチレン、α−メチルスチレン;置換基としてメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、アミル、2−エチルヘキシル、オクチル、カプリル、ノニル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、シクロヘキシル、イソボルニル、メトキシエチル、ブトキシエチル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル等を有する(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールのモノ(メタ)アクリレート又はポリプロピレングリコールのモノ(メタ)アクリレート;酢酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、アクリロニトリル、ビニルエーテル類、もしくはイソブチレン等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの化合物の中でも、好ましくは、スチレン、α−メチルスチレン、低級アルキル(メタ)アクリレート、イソブチレンが用いられ、特に樹脂の熱分解性の点からはメチルメタアクリレートが好ましい。
【0015】
エチレン性不飽和基を有するペンダントとしては、ビニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基などがある。このようなペンダントを前記共重合体に付加させる方法は、共重合体のカルボキシル基に、グリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物や(メタ)アクリル酸クロライドを付加反応させる方法が一般的である。
ここでいうグリシジル基を有するエチレン性不飽和化合物や(メタ)アクリル酸クロライドとしては、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレート、α−エチルグリシジル(メタ)アクリレート、クロトニルグリシジルエーテル、クロトン酸グリシジルエーテル、イソクロトン酸グリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸クロライド、アリルクロライド、メタアリルクロライドや、下記式(1)〜(4)で示される化合物などが挙げられる。これらの中でもグリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【化1】
【0016】
前記(2)のカルボキシル基含有感光性樹脂は、(c)分子中にグリシジル基と不飽和二重結合を有する化合物と前記(b)不飽和二重結合を有する化合物の共重合体のエポキシ基に、充分な光硬化深度が得られる程度にまで光硬化性を向上させる割合で、前記(a)不飽和カルボン酸のカルボキシル基を反応させ、該不飽和カルボン酸の不飽和二重結合を側鎖に導入すると共に、上記付加反応で生成した2級の水酸基に(d)多塩基酸無水物をエステル化反応させ、側鎖にカルボキシル基を導入した樹脂である。
【0017】
上記分子中にグリシジル基と不飽和二重結合を含有する化合物(c)の具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、α−メチルグリシジル(メタ)アクリレートや、前記式(1)〜(4)で示される化合物などが挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
一方、多塩基酸無水物(d)の具体例としては、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水アジピン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水イタコン酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0018】
前記(3)のカルボキシル基含有感光性樹脂は、(e)不飽和二重結合を有する酸無水物と前記(b)不飽和二重結合を有する化合物の共重合体の酸無水物基の一部に、充分な光硬化深度が得られる程度にまで光硬化性を向上させる割合で、(f)水酸基と不飽和二重結合を有する化合物の水酸基を反応させてハーフエステルとし、該化合物(f)の不飽和二重結合を側鎖に導入した樹脂である。
【0019】
前記不飽和二重結合を有する酸無水物(e)の具体的な例としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、さらには無水ピロメリット酸と2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類などの水酸基を有する不飽和化合物との部分反応生成物等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ポリマーを安定して合成できる無水マレイン酸が好ましい。
【0020】
水酸基と不飽和二重結合を有する化合物(f)の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;(メタ)アクリレートにカプロラクトンを反応させたモノマー、(メタ)アクリレートにポリカプロラクトンオリゴマーを反応させたマクロモノマー等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記したようなカルボキシル基含有感光性樹脂(1)〜(3)は、光硬化性、焼成性に優れると共に、後述する安定剤の効果を損うことはなく、組成物の保存安定性に寄与する。
【0021】
前記(4)のカルボキシル基含有感光性樹脂は、(g)エポキシ化合物のエポキシ基に、充分な光硬化深度が得られる程度にまで光硬化性を向上させる割合で、(h)不飽和モノカルボン酸のカルボキシル基を反応させ、例えばエポキシアクリレートを生成させると共に、上記付加反応で生成した2級の水酸基に前記(d)多塩基酸無水物をエステル化反応させ、側鎖にカルボキシル基を導入した樹脂である。このようなカルボキシル基含有感光性樹脂は、光硬化性に優れると共に、バックボーンポリマーのエポキシアクリレートは疎水性を示す。従って、該樹脂を含有する光硬化性導電性ペースト組成物を用いた場合、エポキシアクリレートの疎水性が有利に利用され、光硬化しにくいパターン深部の耐現像性が向上する。その結果、現像及び露光工程における条件設定の余裕度が広がり、量産時の歩留りを向上できると共に、焼成後のパターンエッジのカール発生を大幅に低減でき、高アスペクト比、高精細な電極回路を形成できる。
なお、焼成時の熱により解重合し易いアクリル系共重合樹脂を上記カルボキシル基含有感光性樹脂と混合し、それによって導電性ペースト組成物の焼結温度を下げ、また、使用する全樹脂中の二重結合濃度を調整することもできる。
【0022】
前記エポキシ化合物(g)としては、全ゆるエポキシ樹脂が使用可能であるが、代表的な例としては、ビスフェノールA型、水添ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、ビスフェノールS型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、ビスフェノールAのノボラック型、ビフェノール型、ビキシレノール型、N−グリシジル型等の公知慣用のエポキシ化合物や、市販品として好適なものとしてはダイセル社製EHP−3150等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
不飽和モノカルボン酸(h)の具体例としては、アクリル酸、メタアクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ケイ皮酸、α−シアノケイ皮酸、β−スチリルアクリル酸、β−フルフリルアクリル酸等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0024】
前記エポキシ化合物(g)と不飽和モノカルボン酸(h)の反応は、エポキシ基の当量数/カルボキシル基の当量数が0.8〜1.2、好ましくは0.9〜1.05となる割合で行うことが好ましい。エポキシ基の当量数/カルボキシル基の当量数が0.8未満では、不飽和モノカルボン酸が残るため臭気の問題があり、一方、上記当量数が1.2を越えた場合、エポキシ基が多く残るため、多塩基酸無水物を反応させる段階でゲル化し易くなるので好ましくない。また、生成した2級の水酸基に対する多塩基酸無水物の反応比率は、最終的に得られる樹脂の酸価が好ましくは30〜160mgKOH/gの範囲内となるように調整する。一般には、エポキシ化合物と不飽和モノカルボン酸の反応で生成する水酸基1当量に対し、多塩基酸無水物の当量が0.3以上、好ましくは0.5以上である。
【0025】
前記(5)のカルボキシル基含有樹脂は、前記(b)不飽和二重結合を有し、水酸基や酸性基を持たないアルキル(メタ)アクリレート、置換もしくは非置換スチレンなどの化合物とグリシジル(メタ)アクリレートを主鎖とする共重合体のグリシジル基に、(i)1分子中に1つのカルボキシル基を有し、エチレン性不飽和結合を持たない有機酸を反応させ、生成した2級のOH基に前記(d)多塩基酸無水物を付加反応させて得られる樹脂である。この樹脂におけるカルボキシル基の導入は、上記共重合体のペンダントのグリシジル基に有機酸を反応させることによって生成し、かつ主鎖近傍に位置する2級の水酸基に、多塩基酸無水物を付加反応させて行われるものであるため、カルボキシル基は側鎖の主鎖近傍部位に結合しており、主鎖と側鎖の立体的障害により塩基性の導電性粒子との接触が制御される。その結果、導電性粒子と共にこのようなアルカリ可溶性のカルボキシル基含有樹脂を含有する組成物は、優れた保存安定性を示し、保存中に粘度の変化やゲル化を殆ど生ずることはない。
【0026】
前記1分子中に1つのカルボキシル基を有し、エチレン性不飽和二重結合を持たない有機酸(i)としては、酢酸、プロピオン酸、n−酪酸、イソ−酪酸、n−ジメチル酪酸、エチル酪酸、ヘキサン酸、2−メチルペンタン酸、2−エチルペンタン酸、ヘプタン酸、2−メチルヘプタン酸、ラウリン酸、ステアリン酸、n−ヘプタデカン酸など、炭素数2〜17のアルキルカルボン酸、あるいは置換もしくは非置換安息香酸、(R)、(S)−2−フェニルプロピオン酸、(R)−フェニルイソプロピオン酸、2−フェニル酪酸、4−フェニル酪酸等の芳香族基含有アルキルカルボン酸などが挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
前記(6)のカルボキシル基含有樹脂は、(j)水酸基含有ポリマーに酸性度の比較的弱い前記(d)多塩基酸無水物を反応させてカルボキシル基を導入した樹脂である。このようなカルボキシル基含有樹脂は、親水性基(カルボキシル基、水酸基)を有するため、基板に対する良好な濡れ性を示し、また高温において容易に熱分解し、これを含有する導電性ペースト組成物は乾燥、露光、現像、焼成の各工程において基板に対する安定した密着性や良好な保存安定性を示し、しかも焼成性にも優れている。
【0028】
一方、前記(7)のカルボキシル基含有感光性樹脂は、前記カルボキシル基含有樹脂(6)のカルボキシル基に、充分な光硬化深度が得られる程度にまで光硬化性を向上させる割合で、前記(c)グリシジル基と不飽和二重結合を有する化合物のエポキシ基を反応させ、該化合物(c)の不飽和二重結合を側鎖に導入した樹脂である。このようなカルボキシル基含有感光性樹脂は、光硬化性に優れ、多量の導電性粉末と共に配合してペースト組成物を構成しても、充分な光硬化深度を示す。また、焼成性に優れると共に、後述する安定剤の効果を損うことはなく、組成物の保存安定性向上に寄与する。
【0029】
前記水酸基含有ポリマー(j)としては、オレフィン系水酸基含有ポリマー、アクリル系ポリオール、ゴム系ポリオール、ポリビニルアセタール、スチレンアリルアルコール系樹脂、セルロースなどを用いることができる。
オレフィン系水酸基含有ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン等を主鎖とし、主鎖又は側鎖に水酸基を有する樹脂を用いることができ、また、アリルアルコールとエチレン又はブタジエンの共重合物などを用いることができる。
【0030】
アクリル系ポリオールの具体例としては、三菱レイヨン(株)製のLR2507、LR2516、LR257、LR989、LR2536、LR532、LR598、LR566、LR286、LR511、LR2528等が挙げられ、ゴム系ポリオールの具体例としては三井石油化学(株)製のユニストールP901、クラレ(株)製のクラプレンLIR−506、TL−20、TH−1TH−21、TH−31、クラポールP−510、クラポールP−15610、クラポールP−5010、等が挙げられ、また、スチレンアリルアルコール樹脂の具体例としてはモンサント(株)製のRJ100、RJ101、アーコケミカル(株)製のSAA100、SAA101等が挙げられる。
【0031】
ポリビニルアセタールとしては、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルホルマール等を用いることができ、積水化学工業(株)製のエスレックBMS,エスレックBLS,エスレックBHS、エスレックBLSH、エスレックBMSH等が挙げられる。
【0032】
セルロースとしては、セルロース、セルロースの水酸基の一部をエステル化したアセチルセルロース、ニトロセルロースをはじめ、プロピオン酸、酪酸、リン酸、硫酸、フタル酸等の酸のセルロースエステルが挙げられる。また酸を混合した混合エステルも用いることができる。さらにセルロースエーテルとして、セルロースの水酸基の一部をエーテル化したメチルセルロース、エチルセルロース、ベンジルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
【0033】
使用する水酸基含有ポリマー(j)としては、上記以外のいかなるポリマーも使用可能であるが、水酸基価が50〜250(KOH)mg/gのものが好ましい。
なお、信越化学工業(株)製のヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、セルロースアセテートヘキサヒドロフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースヘキサヒドロフタレート等は、そのままカルボキシル基含有樹脂(6)として使用できる。
【0034】
前記したようなカルボキシル基含有感光性樹脂及びカルボキシル基含有樹脂は、単独で又は混合して用いてもよいが、いずれの場合でもこれらは合計で組成物全量の5〜50重量%の割合で配合することが好ましい。これらのポリマーの配合量が上記範囲よりも少な過ぎる場合、形成する皮膜中の上記樹脂の分布が不均一になり易く、充分な光硬化性及び光硬化深度が得られ難く、選択的露光、現像によるパターニングが困難となる。一方、上記範囲よりも多過ぎると、焼成時のパターンのよれや線幅収縮を生じ易くなるので好ましくない。
【0035】
また、上記カルボキシル基含有感光性樹脂及びカルボキシル基含有樹脂としては、それぞれ重量平均分子量1,000〜100,000、好ましくは5,000〜50,000、及び酸価20〜150mgKOH/g、好ましくは40〜100mgKOH/gを有し、かつ、カルボキシル基含有感光性樹脂の場合、その二重結合当量が350〜2,000、好ましくは400〜1,500のものを好適に用いることができる。
上記樹脂の分子量が1,000より低い場合、現像時の導電性皮膜の密着性に悪影響を与え、一方、100,000よりも高い場合、現像不良を生じ易いので好ましくない。また、酸価が20mgKOH/gより低い場合、アルカリ水溶液に対する溶解性が不充分で現像不良を生じ易く、一方、150mgKOH/gより高い場合、現像時に導電性皮膜の密着性の劣化や光硬化部(露光部)の溶解が生じるので好ましくない。
さらに、感光性樹脂の二重結合当量が350よりも小さい場合、焼成時に残渣が残り易くなり、一方、2,000よりも大きい場合、現像時の作業余裕度が狭く、また光硬化時に高露光量を必要とするので好ましくない。
【0036】
本発明において光重合性モノマー(B)は、組成物の光硬化性の促進及び現像性を向上させるために用いる。光重合性モノマー(B)としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート,2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリウレタンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド変性トリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート及び上記アクリレートに対応する各メタクリレート類;フタル酸、アジピン酸、マレイン酸、イタコン酸、こはく酸、トリメリット酸、テレフタル酸等の多塩基酸とヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとのモノ−、ジ−、トリ−又はそれ以上のポリエステルなどが挙げられるが、特定のものに限定されるものではなく、またこれらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの光重合性モノマーの中でも、1分子中に2個以上のアクリロイル基又はメタクリロイル基を有する多官能モノマーが好ましい。
【0037】
このような光重合性モノマー(B)の配合量は、前記カルボキシル基を有する樹脂(A)100重量部当り20〜100重量部が適当である。光重合性モノマー(B)の配合量が20重量部未満の場合、組成物の充分な光硬化性が得られ難くなり、一方、100重量部を超えて多量になると、皮膜の深部に比べて表面部の光硬化が早くなるため硬化むらを生じ易くなる。
【0038】
前記光重合開始剤(C)の具体例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル等のベンゾインとベンゾインアルキルエーテル類;アセトフェノン、2,2−ジメトキシー2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシー2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン等のアセトフェノン類;2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等のアミノアセトフェノン類;2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン等のアントラキノン類;2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;アセトフェノンジメチルケタール、ベンジルジメチルケタール等のケタール類;ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;又はキサントン類;(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、エチル−2,4,6−トリメチルベンゾイルフェニルフォスフィネイト等のフォスフィンオキサイド類;各種パーオキサイド類などが挙げられ、これら公知慣用の光重合開始剤を単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらの光重合開始剤(C)の配合割合は、前記カルボキシル基を有する樹脂(A)100重量部当り1〜30重量部が適当であり、好ましくは、5〜20重量部である。
【0039】
また、上記のような光重合開始剤(C)は、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、ペンチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の三級アミン類のような光増感剤の1種あるいは2種以上と組み合わせて用いることができる。
さらに、より深い光硬化深度を要求される場合、必要に応じて、可視領域でラジカル重合を開始するチバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製イルガキュア784等のチタノセン系光重合開始剤、ロイコ染料等を硬化助剤として組み合わせて用いることができる。
【0040】
前記シラノール基を有する合成アモルファスシリカ微粉末(D)の具体例としては、日本アエロジル(株)製のAEROSIL(登録商標)50、130、200、200V、200CF、200FAD、300、300CF、380、OX50、TT600、MOX80、MOX170、COK84、日本シリカ工業(株)製のNipsil(登録商標)AQ、AQ−S、VN3、LP、L300、N−300A、ER−R、ER、RS−150、ES、NS、NS−T、NS−P、NS−KR、NS−K、NA、KQ、KM、DS等が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、一次粒子径が5〜50nm、比表面積が50〜500m2/gのものが好ましい。
これら合成アモルファスシリカ微粉末(D)の配合割合は、前記カルボキシル基を有する樹脂(A)100重量部当り0.1〜50重量部の範囲が好ましい。合成アモルファスシリカ微粉末の配合割合が上記範囲よりも少な過ぎると、前記したような密着性付与効果が充分でなく、一方、上記範囲よりも過剰に添加すると、硬化物の導電性をかなり低下させたり、導電性ペーストとしての流動性を損うので好ましくない。
【0041】
本発明に用いる導電性粉末(E)としては、比抵抗値が1×103 Ω・cm以下の導電性粉末であれば幅広く用いることができ、銀(Ag)、金(Au)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、錫(Sn)、鉛(Pb)、亜鉛(Zn)、鉄(Fe)、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)などの単体とその合金の他、酸化錫(SnO2 )、酸化インジウム(In2 O3 )、ITO(Indium Tin Oxide)、酸化ルテニウム(RuO2 )などを用いることができる。これらは単独で又は2種類以上の混合粉として用いることができる。
【0042】
前記導電性粉末(E)の形状は球状、フレーク状、デンドライト状など種々のものを用いることができるが、光特性、分散性を考慮すると球状のものを用いることが好ましい。また、平均粒径としては、解像度の点から20μm以下のもの、好ましくは5μm以下のものを用いることが好ましい。また、導電性金属粉の酸化防止、組成物内での分散性向上、現像性の安定化のため、特にAg、Ni、Alについては脂肪酸による処理を行うことが好ましい。脂肪酸としては、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアリン酸等が挙げられる。
【0043】
導電性粉末(E)の配合量は、前記カルボキシル基を有する樹脂(A)、光重合性モノマー(B)、光重合開始剤(C)及び合成アモルファスシリカ微粉末(D)の合計量を100重量部としたときに50〜2,000重量部となる割合が適当である。導電性粉末の配合量が50重量部未満の場合、導体回路の線幅収縮や断線を生じ易くなり、一方、2,000重量部を超えて多量に配合すると、光の透過を損ない、組成物の充分な光硬化性が得られ難くなる。
【0044】
白金黒や酸化ルテニウムの粉末など、導電性粉末自体が黒色の場合、それを含有する導電性ペースト組成物はそのままバス電極の黒層形成用に用いることができる。しかしながら、大部分の導電性粉末は灰色であるので、その場合には、Fe、Co、Cu、Cr、Mn、Alの1種又は2種類以上を主成分として含む金属酸化物からなる黒色顔料(F)を添加することができる。
【0045】
本発明の組成物では、焼成後の導体回路の密着性向上のため、導電性粉末(E)100重量部に対して50重量部以下、好ましくは1〜10重量部のガラスフリット(G)を添加できる。ガラスフリット(G)としては、ガラス転移点(Tg)300〜500℃、ガラス軟化点(Ts)400〜600℃のものが好ましい。また、解像度の点からは、平均粒径20μm以下、好ましくは5μm以下のガラスフリットを用いることが好ましい。
上記のようなガラスフリット(G)を光硬化性導電性ペースト組成物に添加することにより、露光・現像後の皮膜は600℃以下で容易に焼成可能となり、特にPDPの電極形成に有用である。
【0046】
ガラスフリットとしては、酸化鉛、酸化ビスマス、又は酸化亜鉛を主成分とするガラス粉末が好適に使用できる。
酸化鉛を主成分とするガラス粉末の好ましい例としては、酸化物基準の重量%で、PbOが48〜82%、B2 O3 が0.5〜22%、SiO2 が3〜32%、Al2 O3 が0〜12%、BaOが0〜10%、ZnOが0〜15%、TiO2 が0〜2.5%、Bi2 O3 が0〜25%の組成を有し、軟化点が420〜590℃である非結晶性フリットが挙げられる。
【0047】
酸化ビスマスを主成分とするガラス粉末の好ましい例としては、酸化物基準の重量%で、Bi2 O3 が35〜88%、B2 O3 が5〜30%、SiO2 が0〜20%、Al2 O3 が0〜5%、BaOが1〜25%、ZnOが1〜20%の組成を有し、軟化点が420〜590℃である非結晶性フリットが挙げられる。
【0048】
酸化亜鉛を主成分とするガラス粉末の好ましい例としては、酸化物基準の重量%で、ZnOが25〜60%、K2 Oが2〜15%、B2 O3 が25〜45%、SiO2 が1〜7%、Al2 O3 が0〜10%、BaOが0〜20%、MgOが0〜10%の組成を有し、軟化点が420〜590℃である非結晶性フリットが挙げられる。
【0049】
光硬化性導電性ペースト組成物に多量の導電性粉末や低融点ガラスフリットを配合した場合、得られる組成物の保存安定性が悪く、ゲル化や流動性の低下により塗布作業性が悪くなる傾向がある。
従って、本発明の組成物では、組成物の保存安定性向上のため、導電性粉末やガラスの成分である金属あるいは酸化物粉末との錯体化あるいは塩形成などの効果のある化合物を、安定剤(H)として添加することが好ましい。安定剤(H)としては、無機酸、有機酸、リン酸化合物(無機リン酸、有機リン酸)などの酸が挙げられる。このような安定剤は、前記ガラスフリット(G)100重量部当り0.1〜5重量部の割合で添加することが好ましい。
【0050】
無機酸としては、硝酸、硫酸、塩酸、ホウ酸等が挙げられる。
また、有機酸としては、ギ酸、酢酸、アセト酢酸、クエン酸、イソクエン酸、アニス酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、アゼライン酸、チリック酸、パレリック酸、カプロン酸、イソカプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ウンデカン酸、ラウリル酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキン酸、ベヘン酸、ベヘニン酸、シュウ酸、マロン酸、エチルマロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、ピルビン酸、ピペロニル酸、ピロメリット酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、酒石酸、レブリン酸、乳酸、安息香酸、イソプロピル安息香酸、サリチル酸、イソカプロン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、アクリル酸、メタクリル酸、チグリン酸、エチルアクリル酸、エチリデンプロピオン酸、ジメチルアクリル酸、シトロネル酸、ウンデセン酸、ウンデカン酸、オレイン酸、エライジン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、フェニル酢酸、ケイ皮酸、メチルケイ皮酸、ナフトエ酸、アビエチン酸、アセチレンジカルボン酸、アトロラクチン酸、イタコン酸、クロトン酸、ソルビン酸、バニリン酸、パルミチン酸、ヒドロキシケイ皮酸、ヒドロキシナフトエ酸、ヒドロキシ酪酸、ビフェニルジカルボン酸、フェニルケイ皮酸、フェニル酢酸、フェニルプロピオル酸、フェノキシ酢酸、プロピオル酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、ベラトルム酸、ペラルゴン酸、ベンジル酸、エナント酸、エライジン酸、エルカ酸、オキサロコハク酸、オキサロ酢酸、オクタン酸、カプリル酸、没食子酸、マンデル酸、ミリスチン酸、メサコン酸、メチルマロン酸、メリト酸、ラウリン酸、リシノール酸、リノール酸、リンゴ酸、等が挙げられる。
【0051】
無機リン酸としては、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、オルトリン酸、二リン酸、トリポリリン酸、ホスホン酸、等が挙げられる。
また、有機リン酸としては、リン酸メチル、リン酸エチル、リン酸プロピル、リン酸ブチル、リン酸フェニル、リン酸ジメチル、リン酸ジエチル、リン酸ジブチル、リン酸ジプロピル、リン酸ジフェニル、リン酸イソプロピル、リン酸ジイソプロピル、リン酸nブチル、亜リン酸メチル、亜リン酸エチル、亜リン酸プロピル、亜リン酸ブチル、亜リン酸フェニル、亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジブチル、亜リン酸ジプロピル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸イソプロピル、亜リン酸ジイソプロピル、亜リン酸nブチルー2−エチルヘキシルヒドロキシエチリレンジホスホン酸、アデノシン三リン酸、アデノシンリン酸、モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジ(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、ジ(2−アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、エチルジエチルホスホノアセテート、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブチルピロホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、ジエチレングリコールアシッドホスフェート、(2−ヒドロキシエチル)メタクリレートアシッドホスフェート等が挙げられる。
【0052】
その他の酸として、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ナフタリンスルホン酸、エタンスルホン酸、ナフトールスルホン酸、タウリン、メタニル酸、スルファニル酸、ナフチルアミンスルホン酸、スルホ安息香酸、スルファミン酸等のスルホン酸系の酸も用いることができる。
以上に列挙したような安定剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0053】
本発明においては、組成物を希釈することによりペースト化し、容易に塗布工程を可能とし、次いで乾燥させて造膜し、接触露光を可能とさせるために、適宜の量の有機溶剤を配合することができる。具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどの酢酸エステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのアルコール類;オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油系溶剤が挙げられ、これらを単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0054】
本発明の光硬化性導電性ペースト組成物は、さらに必要に応じて、シリコーン系、アクリル系等の消泡・レベリング剤、皮膜の密着性向上のためのシランカップリング剤、等の他の添加剤を配合することもできる。さらにまた、必要に応じて、導電性金属粉の酸化を防止するための公知慣用の酸化防止剤や、保存時の熱的安定性を向上させるための熱重合禁止剤、焼成時における基板との結合成分としての金属酸化物、ケイ素酸化物、ホウ素酸化物などの微粒子を添加することもできる。
【0055】
本発明の光硬化性導電性ペースト組成物は、予めフィルム状に成膜されている場合には基板上にラミネートすればよいが、ペースト状組成物の場合、スクリーン印刷法、バーコーター、ブレードコーターなど適宜の塗布方法で基板、例えばPDPの前面基板となるガラス基板に塗布し、次いで指触乾燥性を得るために熱風循環式乾燥炉、遠赤外線乾燥炉等で例えば約60〜120℃で5〜40分程度乾燥させて有機溶剤を蒸発させ、タックフリーの塗膜を得る。その後、選択的露光、現像、焼成を行って所定のパターンの電極回路を形成する。
【0056】
露光工程としては、所定の露光パターンを有するネガマスクを用いた接触露光及び非接触露光が可能であるが、解像度の点からは接触露光が好ましい。露光光源としては、ハロゲンランプ、高圧水銀灯、レーザー光、メタルハライドランプ、ブラックランプ、無電極ランプなどが使用される。露光量としては50〜1000mJ/cm2 程度が好ましい。
【0057】
現像工程としてはスプレー法、浸漬法等が用いられる。現像液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、珪酸ナトリウムなどの金属アルカリ水溶液や、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアミン水溶液、特に約1.5重量%以下の濃度の希アルカリ水溶液が好適に用いられるが、組成物中のカルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基がケン化され、未硬化部(未露光部)が除去されればよく、上記のような現像液に限定されるものではない。また、現像後に不要な現像液の除去のため、水洗や酸中和を行うことが好ましい。
【0058】
焼成工程においては、現像後の基板を空気中又は窒素雰囲気下で約400〜600℃の加熱処理を行い、所望の導体パターンを形成する。またこの時、焼成工程の前段階として、約300〜500℃に加熱してその温度で所定時間保持し、有機物を除去する工程を入れることが好ましい。
【0059】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が下記実施例に限定されるものでないことはもとよりである。なお、「部」及び「%」とあるのは、特に断りがない限り全て重量基準である。
【0060】
合成例:
温度計、攪拌機、滴下ロート、及び還流冷却器を備えたフラスコに、メチルメタクリレートとメタクリル酸を0.76:0.24のモル比で仕込み、溶媒としてジプロピレングリコールモノメチルエーテル、触媒としてアゾビスイソブチロニトリルを入れ、窒素雰囲気下、80℃で2〜6時間攪拌し、樹脂溶液を得た。この樹脂溶液を冷却し、重合禁止剤としてメチルハイドロキノン、触媒としてテトラブチルホスホニウムブロミドを用い、グリシジルメタクリレートを、95〜105℃で16時間の条件で、上記樹脂のカルボキシル基1モルに対し0.12モルの割合の付加モル比で付加反応させ、冷却後取り出した。
上記反応により生成した樹脂Aの重量平均分子量は約10,000、酸価は59mgKOH/g、二重結合当量は950であった。なお、得られた共重合樹脂の重量平均分子量の測定は、(株)島津製作所製ポンプLC−6ADと昭和電工(株)製カラムShodex(登録商標)KF−804、KF−803、KF−802を三本つないだ高速液体クロマトグラフィーにより測定した。
【0061】
上記合成例にて得られた樹脂Aを用い、下記に示す組成比にて配合し、攪拌機により攪拌後、3本ロールミルにより練肉してペースト化を行った。
なお、ガラスフリットとしては、PbO 60%、B2 O3 20%、SiO2 15%、Al2 O3 5%を粉砕し、熱膨張係数α300 =70×10-7/℃、ガラス転移点445℃、平均粒径1.6μmとしたものを使用した。
【0062】
上層(白)用導電性ペースト:
樹脂A 100.0部
ペンタエリスリトールトリアクリレート 50.0部
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−
(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン 5.0部
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 80.0部
銀粉 450.0部
ガラスフリット 22.0部
リン酸 0.2部
【0063】
下層(黒)用導電性ペースト:
組成物例1
樹脂A 100.0部
ペンタエリスリトールトリアクリレート 50.0部
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−
(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン 10.0部
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 80.0部
銀粉 150.0部
合成アモルファスシリカ微粉末
(日本アエロジル(株)製、AEROSIL200;
1次粒子の平均径約12nm、BET法による
比表面積200±25m2 /g) 20.0部
黒顔料 150.0部
【0064】
組成物例2
樹脂A 100.0部
ペンタエリスリトールトリアクリレート 50.0部
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−
(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン 10.0部
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 80.0部
銀粉 150.0部
合成アモルファスシリカ微粉末
(日本アエロジル(株)製、AEROSIL200) 20.0部
ガラスフリット 22.0部
リン酸 0.2部
黒顔料 150.0部
【0065】
組成物例3
樹脂A 100.0部
ペンタエリスリトールトリアクリレート 50.0部
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−
(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン 10.0部
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 80.0部
酸化ルテニウム粉 300.0部
合成アモルファスシリカ微粉末
(日本アエロジル(株)製、AEROSIL200) 20.0部
ガラスフリット 22.0部
リン酸 0.2部
【0066】
比較組成物例1
樹脂A 100.0部
ペンタエリスリトールトリアクリレート 50.0部
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−
(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン 10.0部
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 80.0部
銀粉 150.0部
黒顔料 150.0部
【0067】
比較組成物例2
樹脂A 100.0部
ペンタエリスリトールトリアクリレート 50.0部
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−
(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン 10.0部
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 80.0部
銀粉 150.0部
ガラスフリット 22.0部
リン酸 0.2部
黒顔料 150.0部
【0068】
比較組成物例3
樹脂A 100.0部
ペンタエリスリトールトリアクリレート 50.0部
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−
(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン 10.0部
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 80.0部
酸化ルテニウム粉 300.0部
ガラスフリット 22.0部
リン酸 0.2部
【0069】
比較組成物例4
樹脂A 100.0部
ペンタエリスリトールトリアクリレート 50.0部
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−
(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン 10.0部
ジプロピレングリコールモノメチルエーテル 80.0部
銀粉 150.0部
天然結晶性シリカ
((株)龍森製、クリスタライト5X) 20.0部
黒顔料 150.0部
【0070】
前記組成物例1〜3及び比較組成物例1〜4を用い、ガラス基板上に300メッシュのポリエステルスクリーンを用いて全面に塗布した。次に、熱風循環式乾燥炉を用い、90℃で20分間乾燥して指触乾燥性の良好な被膜を形成した。
次いで、前記上層(白)用導電性ペーストを用い、上記被膜上に300メッシュのポリエステルスクリーンを用いて全面に塗布した。次に、熱風循環式乾燥炉を用い、90℃で20分間乾燥して指触乾燥性の良好な二層の被膜を形成した。
その後、ライン/スペース=50/100μmとなるネガフィルムを用い、光源をメタルハライドランプとし、組成物上の積算光量が500mJ/cm2 となるように露光した。その後、液温30℃の1wt%Na2 CO3 水溶液を用いて現像を行い、水洗した。最後に、空気中にて昇温し、450℃で30分間放置後、さらに昇温し、空気中にて550℃で30分間焼成して基板を作製した。
【0071】
得られた各基板について、現像後のライン形状、焼成後のライン形状、密着性、パターンエッジのカールについて評価した。各特性の評価方法は以下のとおりである。
(1)現像後のライン形状
現像後のライン形状は、現像まで終了したパターンを顕微鏡で観察し、ラインに不規則なばらつきがなく、よれ等がないかどうかで評価した。評価基準は以下のとおりである。
○:不規則なばらつきがなく、よれ等がない。
△:若干不規則なばらつき、よれ等がある。
×:不規則なばらつき、よれ等がある。
【0072】
(2)焼成後のライン形状
焼成後のライン形状は、焼成まで終了したパターンを顕微鏡で観察し、ラインに不規則なばらつきがなく、よれ等がないかどうかで評価した。評価基準は以下のとおりである。
○:不規則なばらつきがなく、よれ等がない。
△:若干不規則なばらつき、よれ等がある。
×:不規則なばらつき、よれ等がある。
【0073】
(3)密着性
密着性はセロハン粘着テープによるピーリングを行い、パターンの剥離がないかどうかで評価した。評価基準は以下のとおりである。
○:パターンの剥離が基材と下層との間及び下層と上層との間に共にない。
△:若干パターンの剥離が基材と下層との間及び下層と上層との間にある。
×:パターンの剥離が基材と下層との間及び下層と上層との間にある。
【0074】
(4)パターンエッジのカール
パターンエッジのカールは、表面粗さ計でパターンエッジの表面粗さを測定し評価した。評価基準は以下のとおりである。
○:エッジカールがほとんどない。
△:若干エッジカールがある。
×:エッジカールがひどい。
【0075】
各特性についての評価結果を表1に示す。
【表1】
【0076】
【発明の効果】
以上のように、本発明のアルカリ現像型光硬化性導電性ペースト組成物は、乾燥、露光、現像、焼成の各工程において基板に対して安定した密着性を有すると共に優れた焼成性を有するので、焼成後の基板への密着性、層間の密着性に優れた高精細な導体パターンを形成できると共に、パターンエッジのカールの発生が殆どない。
また、PDPの電極回路、特に前面基板に形成されるバス電極の下層(黒層)電極回路の作製にあたり、フォトリソグラフィー技術により容易に大面積に高精細の電極回路を作業性良く形成でき、しかも600℃以下での焼成工程でも十分に使用でき、歩留りの大幅な向上を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】面放電方式のAC型PDPの部分分解斜視図である。
【符号の説明】
1 前面ガラス基板
2a,2b 表示電極
3a,3b 透明電極
4a,4b バス電極
5 透明誘電体層
6 保護層
7 背面ガラス基板
8 リブ
9 アドレス電極
10a,10b,10c 蛍光体膜
Claims (8)
- (A)カルボキシル基を有する樹脂、(B)光重合性モノマー、(C)光重合開始剤、(D)シラノール基を有する合成アモルファスシリカ微粉末、及び(E)導電性粉末を含有することを特徴とするアルカリ現像型光硬化性導電性ペースト組成物。
- さらに(F)耐熱性黒顔料を含有することを特徴とする請求項1に記載の組成物。
- さらに(G)ガラスフリット及び(H)安定剤を含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の組成物。
- 前記合成アモルファスシリカ微粉末(D)は、一次粒子径が5〜50nmであり、比表面積が50〜500m2 /gである請求項1乃至3のいずれか一項に記載の組成物。
- 前記カルボキシル基を有する樹脂(A)は、重量平均分子量1,000〜100,000及び酸価20〜150mgKOH/gを有する請求項1乃至4のいずれか一項に記載の組成物。
- 前記カルボキシル基を有する樹脂(A)は、重量平均分子量1,000〜100,000及び酸価20〜150mgKOH/gを有し、かつエチレン性不飽和二重結合を有し、その二重結合当量が350〜2,000である請求項1乃至4のいずれか一項に記載の組成物。
- フィルム状に成形されている請求項1乃至6のいずれか一項に記載の組成物。
- 前面基板と背面基板に形成された対向する電極を有し、前面基板に透明電極とバス電極とからなる表示電極が列設されているプラズマディスプレイパネルにおいて、前記バス電極の下層電極回路が、前記請求項1乃至7のいずれか一項に記載のアルカリ現像型光硬化性導電性ペースト組成物の焼成物から形成されていることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
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