JP3540972B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた操縦安定性を確保しながらタイヤ重量を軽減した空気入りタイヤに関する。
【0002】
【従来の技術、および発明が解決しようとする課題】
図3に乗用車用タイヤのビード部aを例示する如く、ビード部aには、リムRとの嵌合力を保つビードコアb、タイヤの骨格をなしかつ前記ビードコアbの廻りで折返されて係止されるカーカスc、このカーカスcの本体部c1と折返し部c2との間に介在して前記ビードコアbから半径方向外方にのびるビードエーペックスゴムe、およびビード部aの下方位置からリムフランジの上端高さ位置を越える範囲でビード外側面をなしリムフランジとの擦れによる損傷を防止するクリンチエーペックスゴムf等が配されている。
【0003】
そして従来、タイヤ横剛性を高め、優れた操縦安定性を充分に確保するために、前記ビードエーペックスゴムeを前記クリンチエーペックスゴムfよりも硬質のゴムで形成し、かつその高さheをクリンチエーペックスゴムfの高さhfよりも大な、通常タイヤ断面高さの0.4倍程度にまで高めることが行われている。
【0004】
これに対して近年、地球環境の保全、省エネルギー化などの観点から、タイヤの軽量化が強く望まれており、ビード部aにおいてもその改善が要求されている。しかしながら、従来のビード構造では、操縦安定性の確保のために、ビードエーペックスゴムeの高さheを現状以下に減じることは困難であり、タイヤ軽量化のための大きな妨げとなっていた。
【0005】
そこで本発明は、ビードエーペックスゴムの高さを減じるだけでなく、クリンチエーペックスゴムの高さを高め、しかもクリンチエーペックスゴムをビードエーペックスゴムよりも硬質のゴムで形成することを基本として、従来タイヤと同等若しくはそれ以上の優れた操縦安定性を確保した上で、軽量化を達成しうる空気入りタイヤの提供を目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本願請求項1の空気入りタイヤの発明は、トレッド部からサイドウォール部をへてビード部のビードコアに至る本体部にこのビードコアの廻りで折返される折返し部を設けたカーカス、前記ビードコアからカーカスの本体部と折返し部との間を通って半径方向外方にのびるビードエーペックスゴム、及びビード部の下方位置からリムフランジの上端高さ位置を越える範囲でビード外側面をなすクリンチエーペックスゴムとを有する空気入りタイヤであって、
前記ビードエーペックスゴムの半径方向外端のビードベースラインからの高さH1は、ビードベースラインからのタイヤ断面高さHTの0.25倍以下、
かつ前記クリンチエーペックスゴムの半径方向外端のビードベースラインからの高さH2は、前記高さH1より大しかも前記タイヤ断面高さHTの0.25〜0.5倍の範囲とするとともに、
前記クリンチエーペックスゴムのデュロメータA硬さHs2は65度〜90度であって前記ビードエーペックスゴムのデュロメータA硬さHs1より大とし、しかも前記折返し部の高さH4は、前記クリンチエーペックスゴムの高さH2よりも5 mm 以上大であることを特徴としている。
【0007】
また請求項2の発明では、前記クリンチエーペックスゴムは、前記ビード外側面での高さH3がリムフランジの上端高さHFより大かつ前記タイヤ断面高さHTの0.35倍以下とするとともに、このクリンチエーペックスゴムは、前記サイドウォール部において半径方向外端まで前記折返し部に接してのびることを特徴としている。
【0008】
また請求項3の発明では、前記折返し部の高さH3は、タイヤ断面高さHTの0.35〜0.65倍であることを特徴としている。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図示例とともに説明する。
図1は、本発明の空気入りタイヤ1(以下タイヤ1という)が正規リムRにリム組みされたリム組状態における子午断面であって、本例ではタイヤ1が乗用車用タイヤとして形成された場合を例示している。
【0010】
なお前記「正規リムR」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば "Design Rim" 、或いはETRTOであれば "Measuring Rim"を意味する。
【0011】
図1において、タイヤ1は、トレッド部2と、その両端からタイヤ半径方向内方にのびる一対のサイドウォール部3と、各サイドウオール部3の内方端に位置するビード部4とを具える。又タイヤ1には、前記ビード部4、4間に跨るトロイド状のカーカス6と、このカーカス6の外側かつトレッド部2の内方に位置するベルト層7とが配される。
【0012】
前記ベルト層7は、高弾性のベルトコードをタイヤ周方向に対して10゜〜35゜の角度で傾斜配列した2枚以上、本例では2枚のベルトプライ7A、7Bから形成される。各ベルトプライ7A、7Bは、ベルトコードがプライ間相互で交差するように向きを違えて配され、これによるコードのトライアングル構造によってベルト剛性を高め、トレッド部2の略全巾をタガ効果を有して補強する。ベルトコードとしては、スチールコード或いは、スチールに近い強度を有する例えば芳香族ポリアミド繊維、芳香族ポリエステル繊維等の高弾性繊維コードが好適に使用される。
【0013】
なお高速性能の改善のため、このベルト層7のタイヤ半径方向外側に、有機繊維コードをタイヤ周方向に、例えば螺旋状に巻回した周知のバンド層(図示しない)などを設けても良い。
【0014】
また前記カーカス6は、トレッド部2からサイドウォール部3をへてビード部4のビードコア5に至る本体部6aの両側に、前記ビードコア5の廻りで内側から外側に折り返されて係止される折返し部6bを有する。このカーカス6は、カーカスコードをタイヤ周方向に対して75〜90°の角度で配列した1枚以上、本例では1枚のカーカスプライ6Aからなるものを例示しており、カーカスコードとして、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、芳香族ポリアミド等の有機繊維コードが好適に使用できる。
【0015】
次に前記ビード部4には、図2に拡大して示すように、前記カーカスの本体部6aと折返し部6bとの間を通って前記ビードコア5からタイヤ半径方向外方に先細状にのびるビードエーペックスゴム8と、ビード部4の下方位置からリムフランジRFの上端高さ位置を越える範囲Yでビード外側面4Sをなすクリンチエーペックスゴム9とを設けている。
【0016】
前記ビードエーペックスゴム8は、その半径方向外端8eのビードベースラインBLからの高さH1を、タイヤ断面高さHT(図1に示す)の0.25倍以下に減じている。これによるゴムボリュウムの低下によって、図2に一点鎖線で示す如く、ビード部4がスリム化し軽量化が達成される。なお前記ビードエーペックス高さH1を、ビードベースラインBLからのリムフランジRFの上端高さHFよりも小に減じることは、ビード剛性およびビード強度を不十分とするほかタイヤ製造を難しくするため好ましくない。又0.25×HTを越える場合には、本願における軽量化のメリットが得られなくなってしまう。
【0017】
ここで、前記「ビードベースラインBL」とは、前記JATMA等の規格で定められるリム径を通るタイヤ軸方向線として定義し、前記「タイヤ断面高さHT」とは、前記リム組状態における、トレッド面上のタイヤ赤道点のビードベースラインBLからの高さとして定義する。
【0018】
又前記カーカス6の折返し部6bは、前記ビードエーペックスゴム8に沿って一旦凹円弧状で半径方向外側にのびるとともに、このビードエーペックスゴム8の外端8eからは、前記本体部6aに実質的に隣接して平行にのびる隣接部Gを形成している。
【0019】
本例では、前記折返し部6bの外端のビードベースラインBLからの高さH4を、タイヤ断面高さHTの0.35〜0.65倍とした所謂ハイターンアップ構造をなす場合を例示しており、この高さH4が0.35×HT未満では、本願発明においてもタイヤ横剛性を充分に確保することは難しくなる。逆に高さH4が0.65×HTを越えると、荷重負荷時の歪量が最も大きいタイヤ肩部に、前記折返し部6bの外端が位置する結果、コード端ルースの発生傾向となってしまう。なおカーカス6が複数のカーカスプライから形成される場合には、少なくとも1枚のカーカスプライを前記ハイターンアップ構造とする。
【0020】
又前記隣接部Gの形成は、前記折返し部6bをタイヤ変形時の応力のニュトラルラインに近づけるなど、この折返し部6bに作用する圧縮応力を緩和させる効果があり、カーカスコードの疲労破断損傷を抑制するなど耐久性向上にも期待できる。そのために、この隣接部Gの半径方向長さL1を前記タイヤ断面高さHTの0.15倍以上とすることが好ましい。
【0021】
次に、前記クリンチエーペックスゴム9は、ビード部4の下方位置からリフランジRFの上端高さ位置を越える範囲Yでは露出してビード外側面4Sをなし、従来と同様に、リムフランジRFとの擦れによる損傷を防止する。なお前記「下方位置」とは、ビードコア5の半径方向内面よりも半径方向内側の位置を意味し、本例では、その内端E1をビードベースラインBLの近傍に配している。
【0022】
詳しくは、前記クリンチエーペックスゴム9は、前記内端E1から前記折返し部6bに沿って半径方向外方にのび、その露出面9Sによって前記ビード外側面4Sを形成するとともに、サイドウォール部3をなす柔らかなサイドウォールゴム3Gと境界線10を介して接合している。
【0023】
なお本例では、前記ビード部4に、少なくともビード底面を覆ったのち前記折返し部6bに接して立上がるチェーファ11を設けており、チェーファ外端は例えば前記リムフランジRFの上端高さ位置近傍で終端している。このチェーファ11としては、繊維糸を用いたネット状の織布をゴム引きしたものが好適であるが、耐摩耗性ゴムのシートも用いうる。
【0024】
従って、クリンチエーペックスゴム9は、本例では、ビード部4においては、折返し部6bとの間で前記チェーファ11を狭持する一方、サイドウォール部3においては、その半径方向外端E2まで前記折返し部6bに接触しながら延在している。
【0025】
そして、本願発明においては、前記クリンチエーペックスゴム9にタイヤ横剛性の向上機能を付加させるために、クリンチエーペックスゴム9の外端E2のビードベースラインBLからの高さH2を前記ビードエーペックスゴム8の高さH1より大、しかも前記タイヤ断面高さHTの0.25〜0.50倍の範囲まで高めるとともに、このクリンチエーペックスゴム9のデュロメータA硬さHs2を65度〜90度かつ前記ビードエーペックスゴムのデュロメータA硬さHs1よりも大に設定している。
【0026】
なおデュロメータA硬さとは、JIS−K6253に基づくデュロメータータイプAによるゴム硬さを意味する。
【0027】
このような構成をとることによって、前記軽量化のためにビードエーペックスゴム8の高さH1を減じたことによるタイヤ横剛性の低下を、クリンチエーペックスゴム9が充分に補うことができ、操縦安定性を従来タイヤと同等若しくはそれ以上のレベルに高めることができるのである。
【0028】
ここで、前記クリンチエーペックスゴム9の高さH2が、ビードエーペックスゴム8の高さH1以下、又はタイヤ断面高さHTの0.25倍未満の場合、或いはクリンチエーペックスゴム9のデュロメータA硬さHs2が65度未満、又はビードエーペックスゴムのデュロメータA硬さHs1以下の場合には、横剛性を充分に補うことができず、操縦安定性を確保することが困難となる。逆に、前記クリンチエーペックスゴム9の高さH2がタイヤ断面高さHTの0.50倍を越えた場合、或いはクリンチエーペックスゴム9のデュロメータA硬さHs2が90度を超えた場合には、このクリンチエーペックスゴム9自体にクラックが発生しやすくなるなど耐久性を低下させる結果を招いてしまう。
【0029】
特に本例では、前述の如く、硬質のクリンチエーペックスゴム9がその外端E2に至るまで前記折返し部6bと接するため、カーカスコードとマッチングして剛性向上効果がより高く発揮され、しかもこのクリンチエーペックスゴム9がカーカスコードへの圧縮応力を軽減するためカーカスコードの破断損傷も抑制できる。なお、前記折返し部6bの高さH4が、前記クリンチエーペックスゴム9の高さH2以下の場合には、前記折返し部6b外端がクリンチエーペックスゴム9と接触してコード端ルースが発生しやすくなるなどの問題も生じる。そのために、前記高さH4を前記高さH2よりも5mm以上大とするのが良い。
【0030】
又クリンチエーペックスゴム9の露出面9S、即ち前記ビード外側面4Sでの高さH3は、サイドウオールゴム3GとリムフランジRFとの接触を確実に防止するために、リムフランジの上端高さHFより大とすることが好ましい。又ビード部4での発熱およびクラック等の耐久性の観点から、高さH3はタイヤ断面高さHTの0.35倍以下とするのが好ましい。
【0031】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【0032】
【実施例】
タイヤサイズが195/65R15であり図1に示す構成を有するタイヤを表1の仕様に基づき試作するとともに、各試供タイヤの横バネ定数、操縦安定性、およびタイヤ重量をそれぞれ測定し、その結果を表1に記載する。なお表1の仕様以外は全て同構成としている。
【0033】
(1)横バネ定数:
試供タイヤを、リム(15×6JJ)、内圧(200kPa)の条件下でリム組みし、荷重(4.41kN)を負荷した負荷状態における横バネ定数を測定した。
【0034】
(2)操縦安定性:
前記リム組したタイヤを、車輌(2000ccFF車)の全輪に装着し、タイヤテストコースのドライアスファルト路面上にて、ハンドル応答性、剛性感、グリップ等に関する特性をドライバーの官能評価により従来例を100とする指数で表示している。指数の大きい方が良好である。
【0035】
(3)タイヤ重量:
タイヤ1本当たりの重量を測定した。
【0036】
【表1】
【0037】
表1に示すように、実施例のタイヤは、横バネ定数が高く、従来タイヤ以上の優れた操縦安定性を確保しながら軽量化を達成しうるのが確認できる。
【0038】
【発明の効果】
本発明は叙上の如く構成しているため、従来タイヤと同等若しくはそれ以上の操縦安定性を確保した上で、軽量化を達成しうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のタイヤの断面図である。
【図2】そのビード部を拡大して示す断面図である。
【図3】従来技術を説明するタイヤyの断面図である。
【符号の説明】
2 トレッド部
3 サイドウォール部
4 ビード部
4S ビード外側面
5 ビードコア
6 カーカス
6a 本体部
6b 折返し部
8 ビードエーペックスゴム
9 クリンチエーペックスゴム
BL ビードベースライン
RF リムフランジ
Claims (3)
- トレッド部からサイドウォール部をへてビード部のビードコアに至る本体部にこのビードコアの廻りで折返される折返し部を設けたカーカス、前記ビードコアからカーカスの本体部と折返し部との間を通って半径方向外方にのびるビードエーペックスゴム、及びビード部の下方位置からリムフランジの上端高さ位置を越える範囲でビード外側面をなすクリンチエーペックスゴムとを有する空気入りタイヤであって、
前記ビードエーペックスゴムの半径方向外端のビードベースラインからの高さH1は、ビードベースラインからのタイヤ断面高さHTの0.25倍以下、
かつ前記クリンチエーペックスゴムの半径方向外端のビードベースラインからの高さH2は、前記高さH1より大しかも前記タイヤ断面高さHTの0.25〜0.5倍の範囲とするとともに、
前記クリンチエーペックスゴムのデュロメータA硬さHs2は65度〜90度であって前記ビードエーペックスゴムのデュロメータA硬さHs1より大とし、しかも前記折返し部の高さH4は、前記クリンチエーペックスゴムの高さH2よりも5 mm 以上大であることを特徴とする空気入りタイヤ。 - 前記クリンチエーペックスゴムは、前記ビード外側面での高さH3がリムフランジの上端高さHFより大かつ前記タイヤ断面高さHTの0.35倍以下とするとともに、このクリンチエーペックスゴムは、前記サイドウォール部において半径方向外端まで前記折返し部に接してのびることを特徴とする請求項1記載の空気入りタイヤ。
- 前記折返し部の高さH4は、タイヤ断面高さHTの0.35〜0.65倍であることを特徴とする請求項2記載の空気入りタイヤ。
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