JP3539880B2 - コンクリート型枠転写仕上工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コンクリート表面に多彩感のある凹凸模様を形成する方法に関するものである。
【0002】
【従来技術】
近年、コンクリート製の建造物、構造物の無味乾燥さを廃し、町並みの景観向上を行うことが強く求められている。このような目的からコンクリート表面に、塗装によって色彩や模様を付与することが行われているが、町並みの景観として見た場合には、依然として立体感に欠け、遠距離から目視した場合には平面的な印象が否めない。
【0003】
一方、このような平面的な印象を打破するために、凹凸模様が付与された化粧型枠を使用する、コンクリートの流し込み工法も行われている。これは、コンクリート構造物等の新設時に押さえ型枠とコンクリート打設空間との間に、コンクリート打設面側に凹凸のレリーフ模様を形成した化粧型枠を予め設置し、コンクリートの打設、脱型後、その表面に凹凸模様を転写させる方法である。また、この方法は、既設のコンクリート構造物等においても、その表面に化粧型枠と押さえ型枠を設置することで、凹凸模様が付与された構造物等への改修が可能となるものである。
【0004】
以上のようにしてコンクリート表面に凹凸を形成した後に、塗装を施して仕上げるのが通常であるが、最近は工期の短縮のため、化粧型枠の内側全面、すなわちコンクリート打設空間の面に、色材を被膜化させておき、コンクリートの脱型時に、化粧型枠側からコンクリート凹凸表面側に色材被膜が転写するようにした、色彩と凹凸模様の同時付与工法も行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、コンクリートの型枠流し込みによる凹凸の形成方法においては、コンクリートの流動性の不良や、気泡の混入、脱型時に化粧型枠とコンクリートとの肌別れの悪さ等によって、脱型コンクリート表面に欠損部を生じることがあり、この部分には色材被膜が転写されず、最終的に脱型したコンクリート構造物等の表面において、欠損部のみに色材被膜が形成されないため、かえって美観を損ねる結果となった。
また、非欠損部においても、色材被膜が完全に転写されなかったり、転写された色材被膜が手で擦ると脱落したり、経時的に剥離する場合があった。これに対して、色材被膜としてコンクリート中の余剰水やアルカリによって溶解し、コンクリート硬化と共に、その表面に含浸して色彩を付与する方法も行われているが、コンクリート表面の各部位によって含浸具合が異なり、色彩むらを生じることが多かった。
したがって、本発明が解決しようとする課題は、コンクリート打設時の各種の問題によって、脱型後のコンクリートに欠損部が生じていても美観を損ねず、コンクリート表面を手で擦ったり、時間が経過しても色材被膜が剥離、脱落しない、コンクリート型枠転写仕上げ方法を得ることである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
このような課題を解決するために、本発明者はコンクリート化粧型枠の内面に、特定の脱型剤を塗付し、さらに色材被膜を形成する塗料組成物中の、骨材の物性を特定し、また、化粧型枠内面における色材被膜の形成方法を特定することによって、手で擦っても、経時的にも剥離脱落し難い色材塗膜を表面に転写し、欠損部の目立たないコンクリート型枠転写仕上げ方法を見出したものである。すなわち、
1.化粧型枠の凹凸形成した表面に、脱型剤被膜を形成した後に、合成樹脂、顔料、粒子径0.5〜5mmの骨材を含有し、骨材含有量が40〜80重量%、下記条件での粘度が100〜500Pa・sである色材被膜形成用塗料組成物を、形成される模様の平均直径が5〜40mmとなるように散布状に塗付し、乾燥硬化後に化粧型枠としてこれを使用することを特徴とするコンクリート型枠転写仕上工法。
粘度:BH型粘度計、6番スピンドルを使用し、2rpm時における見掛けの粘度(Pa・s:2回転目の指針値)である。
【0007】
【発明の実施の態様】
本発明の色材被膜形成用塗料組成物における合成樹脂としては、被膜形成が可能なバインダー機能を有するものであれば特に限定されることがなく、溶剤系、水系を問わず使用することが可能である。
溶剤系の樹脂成分としては、アクリル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、アクリルシリコン系樹脂、エポキシ系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、石油樹脂、ケイ素系樹脂、フッ素系樹脂等があげられる。このうち、耐水性や耐候性等に優れることから、アクリル系樹脂、アクリルスチレン系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、アクリルシリコン系樹脂、フッ素系樹脂が好ましく使用される。
水系の樹脂成分としては、エマルションとしては、重合性不飽和二重結合を有するモノマーをエマルション重合して得られるもの、または、予め合成した樹脂を、水系分散媒に分散剤を使用して分散したものの何れでもよく、さらに粉末型のエマルションでもよい。但し、粉末型の場合は、使用時に水の添加が必須となる。
【0008】
これらのエマルションの種類は、ポリ酢酸ビニル系、ポリアクリル酸エステル系、アクリル−スチレン共重合体系、エチレン−酢酸ビニル共重合体系、酢酸ビニル−アクリル共重合体系、エチレン−塩化ビニル共重合体系、酢酸ビニル−ベオバ共重合体、エポキシ系エマルション、ウレタン系エマルション等のうちの少なくとも1種以上からなるものである。
【0009】
次に顔料としては、通常塗料に用いられる着色顔料、体質顔料であれば特に限定されないが、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、カーボンブラック、酸化第二鉄(ベンガラ)、クロム酸鉛(モリブデートオレンジ)、黄鉛、黄色酸化鉄、オーカー、群青、コバルトグリーン等の無機系顔料、アゾ系、ナフトール系、ピラゾロン系、アントラキノン系、ペリレン系、キナクリドン系、ジスアゾ系、イソインドリノン系、ベンゾイミダゾール系、フタロシアニン系、キノフタロン系等の有機顔料、重質炭酸カルシウム、クレー、カオリン、タルク、沈降性硫酸バリウム、炭酸バリウム、ホワイトカーボン、珪藻土等の体質顔料があげられる。
【0010】
また、骨材として、天然石の粉砕物や着色骨材等も使用することができる。例えば、大理石、御影石、蛇紋岩、花崗岩、蛍石、寒水石、長石、珪石、珪砂等の粉砕物、陶磁器・セラミック粉砕物、ガラス粉砕物、ガラスビーズ、樹脂粉砕物、樹脂ビーズ、金属粒等やそれらの表面を着色コーティングしたもの等があげられる。
【0011】
これらの骨材は、その粒子径が0.5〜5mmである。このとき0.5mmより小さいと、セメントへの食いつきが悪くなり、5mmより大きいと、吹き付け時の飛散が多く、被塗面につきにくくなる。また、その骨材含有量は塗料組成物全体の40〜80重量%である。このとき40重量%より少ないと、骨材の充填による引っ掛かりがなくなるため、セメントへの食いつきが悪くなり、80重量%より多いと、色材被膜形成用組成物中で、相対的に合成樹脂量が少なくなるため、化粧型枠の凹凸面に色材被膜形成用組成物を塗装した際に、散布した色材被膜の玉吹き模様の飛散が大きく、化粧型枠の凹凸面に付着しにくくなってしまう。
【0012】
本発明で使用する色材被膜形成用組成物中には、この他に一般的に塗料に添加する各種添加剤を適宜配合することが可能である。例えば、可塑剤、防腐剤、防黴剤、消泡剤、レベリング剤、顔料分散剤、沈降防止剤、たれ防止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などがあげられる。
【0013】
本発明では、コンクリート型枠流し込み工法の際に、押さえ型枠とコンクリート打設空間との間に、コンクリート打設面側に凹凸のレリーフ模様を形成した化粧型枠を予め設置し、コンクリートの打設、脱型後、その表面に凹凸模様を転写させる方法において、予め化粧型枠の表面に脱型剤を塗付しておき、さらに前述の色材被膜形成用塗料組成物を散布状に塗付乾燥しておくものである。
【0014】
脱型剤としては、色材被膜形成用塗料組成物が塗付乾燥後に、化粧型枠に付着して脱型時に化粧型枠から離れないようになるのを防止すると共に、打設するコンクリートスラリー中の水分が、化粧型枠に浸透するのを防止する撥水効果を発揮するものであり、脱型時に化粧型枠と硬化コンクリートとの肌分かれを良好にするものである。したがって、このような効果を有するものであれば特に限定されないが、例えば、パラフィンロウ、シリコーン化合物、または、シリコーン残基を含む高分子化合物が用いられる。
【0015】
色材被膜形成用塗料組成物は、コンプレッサーや、エアレス式、スクイズ式、スネーク式、ピストン式、プランジャ式等の圧送機を用いて塗装を行う。このときのスプレー圧や塗装機具、およびチップ口径は適宜に調整すればよいが、色材被膜形成用塗料組成物が、散布状に塗装されることが必要である。また、色材被膜形成用塗料組成物は、その粘度が100〜500Pa・s、散布状に形成される模様の平均直径が、5〜40mmとなるように調整することで、流し込まれたコンクリートが、散布状模様を包むように充填され、かつ散布状模様中の骨材が比較的表面に配置されるため、コンクリートへの食いつきによって付着性がより高まる結果、本発明の効果を最も良好に発揮することが可能となる。
【0016】
ここで色材被膜形成用塗料組成物の粘度は、BH型粘度計、6番スピンドルを使用し、2rpm時における見掛けの粘度(Pa・s:2回転目の指針値)である。BH型粘度計は、JIS
K 7117 「液状の樹脂の回転粘度計による粘度試験方法」附属書 粘度計に規定するSA型粘度計に属するものであり、スピンドル番号、回転数、換算乗数は、附属書表1のSA型粘度計によるものと同一である。
【0017】
化粧型枠は、コンクリート表面に凹凸模様を付与するために十分な強度を有した凹凸模様を有したものであれば特に限定されるものではないが、硬質ポリウレタンフォーム、硬質イソシアヌレートフォーム、フェノールフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリウレタンエラストマー等があげられる。また、化粧型枠は、コンクリート打設時の圧力に耐えうるものであるならば、押さえ型枠として使用することも可能である。
【0018】
本発明では、色材被膜形成用塗料組成物中の骨材含有量と骨材粒子径を特定することにより、化粧型枠内に散布状に塗装された粒状の模様が、打設されたコンクリートと化粧型枠との界面において、コンクリート側に良好に転写されるものである。このとき一般的な、コンクリートの水/セメント比、セメントや砂の粒子径の範囲において、図1のように、散布状の玉吹き模様表面に存在する骨材との間に、最適な噛み合わせ状態が形成され、さらに脱型剤の効果もあいまってコンクリート硬化後には、コンクリート側への密着性が非常に高まった状態が形成されている。したがって、脱型後においてもコンクリート表面における粒状模様は、手で擦っても脱落せず、さらに複数色の色材被膜形成用塗料組成物を使用した場合には、コンクリート色の背景に粒状模様が散布された多彩調模様が形成されることになる。この粒状多彩模様によって、コンクリートの欠損が部分的に生じていても、適度にカムフラージュされ、外観状は違和感の無い仕上がりとなる。
【0019】
本発明は、前述のような新設のコンクリート表面のみならず、既設のコンクリート表面においても、化粧型枠を用いてコンクリートを打設する場合には、適用可能である。
【0020】
【実施例】
以下、実施例、比較例をもって本発明の効果を示す。
(試験体作製)
パラフィンロウを溶融し、この溶融槽に、表面凹凸模様を形成した化粧型枠を浸漬し、含浸させる方法により、脱型剤による表面処理を行う。脱型剤が乾燥後に、表1に示した原料を使用して、表2の配合により製造した色材被膜形成用組成物を、塗付量0.5〜1.0kg/m2で口径10mmのスタッコガンを用い、コンプレッサー圧力450kPaで、模様の平均直径が30mmとなるように散布状に吹き付け、1週間乾燥養生した。
このようにして作製した化粧型枠を、2組の隙間20cmで対向する押さえ型枠の一方に密着するように配置し、化粧型枠の凹凸面ともう一方の押さえ型枠の間に、コンクリートを充填し、28日間室温で放置する。その後、コンクリートを化粧型枠から脱型し、その表面状態を観察した。
【0021】
【表1】
【0022】
【表2】
【0023】
(評価方法)
(1)化粧型枠への色材被膜形成用組成物の付着性
前述の化粧型枠への色材被膜形成用組成物の塗装時において、散布状玉吹き模様の化粧型枠表面への付着性について、吹き付けた際に化粧型枠表面にスムースに付着するものを◎、化粧型枠表面にて跳ね返り、飛散するものを×として評価した。結果を表3に示した。
(2)非転写部の発生状況
脱型したコンクリートの表面を目視にて観察し、色材被膜形成用組成物の散布状模様が、転写されていない部分がないかどうかについて確認した。全て転写されているものを◎、一部非転写部があるが、散布模様によって目立たないものを○、非転写部が多く非常に目立つものを×とした。結果を表3に示した。
(3)手による摩擦抵抗性
脱型したコンクリートの表面を手で擦り、色材被膜形成用組成物の散布状模様が取れるかどうかを確認した。模様が全く取れないものを◎、模様が擦れ落ちてしまうものを×とした。結果を表3に示した。
【0024】
【表3】
【0025】
(実施例1)
本発明の規定する数値範囲内の色材被膜形成用組成物を使用した工法であり、かつ、色材被膜形成用組成物の粘度や、形成される模様が特に好ましい範囲の平均直径であるため、化粧型枠への色材被膜形成用組成物の付着性、非転写部の発生状況、手による摩擦抵抗性の何れにおいても良好な結果となった。
【0026】
(実施例2〜実施例3)
色材被膜形成用組成物の粘度が、本発明の規定する数値範囲内であるため、化粧型枠への色材被膜形成用組成物の付着性、非転写部の発生状況、手による摩擦抵抗性の何れにおいても良好な結果となった。
【0027】
(実施例4〜実施例5)
色材被膜形成用組成物によって形成される散布模様の平均直径が、本発明で規定するより好ましい範囲から外れているため、非転写部が若干発生したが、模様が散布状となっているため、目視では概ね意識されない状態であった。
【0028】
(比較例1)
色材被膜形成用組成物中の骨材として、本発明の規定する粒子径より小さいものを用いたため、コンクリートとの食いつきが悪く、非転写部が多数発生し、転写部分についても手による摩擦で擦れ落ちてしまった。
【0029】
(比較例2)
色材被膜形成用組成物中の骨材として、本発明の規定する粒子径より大きいものを用いたため、化粧型枠に色材被膜形成用組成物を塗装した際に、化粧型枠表面にて跳ね返り飛散する結果、化粧型枠上に模様が残らず、脱型したコンクリート表面は模様がまばらにしか形成されなかった。
【0030】
(比較例3)
色材被膜形成用組成物中の骨材量が、本発明の規定する量より少ないものを用いたため、散布模様表面に比較的樹脂が多く分布し、コンクリートとの食いつきが悪くなるため、非転写部が多数発生し、転写部分についても手による摩擦で擦れ落ちてしまった。
【0031】
(比較例4)
色材被膜形成用組成物中の骨材量が、本発明の規定する量より多いものを用いたため、相対的に樹脂が少なくなり、化粧型枠に色材被膜形成用組成物を塗装し、脱型したコンクリート表面に転写された模様は、手で擦ると骨材がばらばらになり擦れ落ちてしまった。
【0032】
【発明の効果】
本発明は、化粧型枠を使用してコンクリート表面に凹凸模様を形成させる工法において、予め化粧型枠側に形成した色材被膜を、凹凸形成と共にコンクリート側に転写させるにあたり、従来の工法において、コンクリート欠損部や非転写部が生じて、仕上りが非常に悪くなるのに対して、色材被膜形成用組成物中の骨材粒径と含有量を規定し、化粧型枠内面に散布状に塗付することにより、図1のように、コンクリートと該骨材との噛み合いが最適状態となり、図2のような、骨材の噛み合いが不適当な場合のように、脱型時に色材被膜が剥離したり、手で擦った場合に脱落する等の問題がない。また、色材被膜を多色とした場合には、コンクリート色を背景にした色材被膜の多彩模様が形成され、無味乾燥なコンクリート表面の美観向上に効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の工法の効果を示す概略図
【図2】骨材の噛み合い効果が不適切な場合の状態を示す概略図
【符号の説明】
A 化粧型枠
B 色材被膜
C コンクリート
D 脱型剤
E 骨材の噛み合い効果が不適切な色材被膜
Claims (1)
- 化粧型枠の凹凸形成した表面に、脱型剤被膜を形成した後に、合成樹脂、顔料、粒子径0.5〜5mmの骨材を含有し、骨材含有量が40〜80重量%、下記条件での粘度が100〜500Pa・sである色材被膜形成用塗料組成物を、形成される模様の平均直径が5〜40mmとなるように散布状に塗付し、乾燥硬化後に化粧型枠としてこれを使用することを特徴とするコンクリート型枠転写仕上工法。
粘度:BH型粘度計、6番スピンドルを使用し、2rpm時における見掛けの粘度(Pa・s:2回転目の指針値)
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JP36996598A JP3539880B2 (ja) | 1998-12-25 | 1998-12-25 | コンクリート型枠転写仕上工法 |
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