JP3539587B2 - 体積位相型ホログラム及びその作製方法 - Google Patents
体積位相型ホログラム及びその作製方法 Download PDFInfo
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、体積位相型ホログラム及びその作製方法に関し、特に、体積位相型ホログラム記録材料表面に微細な凹凸を設けることにより、回折光を部分的に散乱させて視野角を広くするようにしたものに関する。
【0002】
【従来の技術】
体積位相型のホログラムは、その特性である角度・波長選択性を利用して、ホログラムコンバイナー、ホログラムカラーフィルター等、種々の用途に利用されている。
【0003】
【発明の解決しようとする課題】
しかしながら、この体積位相型のホログラムの角度・波長選択性は、裏を返せば、ホログラムの設計角度・波長以外には著しく回折効率が落ち、回折光が見える範囲である視野角が極めて限定されるという問題点を有している。特に、近年開発されてきたデュポン社を始めとする各社の製品である乾式現像が可能なフォトポリマー材料(液体による現像処理を必要としないで、入射光量に応じた屈折率変調を得ることができるもの。ただし、露光後に紫外線照射、加熱等の増感処理を行うのが普通。)は、従来の湿式現像を必要とする銀塩材料、重クロム酸ゼラチン材料等の湿式材料に比べて、体積位相型ホログラム記録材料としては比較的安定なものである。その結果として得られる体積位相型ホログラムも、角度・波長選択性が相対的に良く、上記の視野角が限定されると言う問題点が顕著になっていた。
【0004】
本発明はこのような従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、視野角を簡単な手段で広げた体積位相型ホログラム及びその作製方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、体積位相型ホログラム自身の表面に微細な凹凸を形成することにより、回折光を部分的に散乱させて視野角を広くするようにしたものである。
【0006】
すなわち、視度角を広げるためには、ホログラム材料からの光束出射面を平面でなく変調のかかった凹凸表面にすればよい。これにより回折光の出射角度が部分的に相違し、視野角の広角化が図れる。
【0007】
すなわち、図1に概念図を示すように、同図(a)のように、ホログラム記録材料1の表面2が従来のように平面であると、材料1中の位相干渉縞から回折された光線3はミクロ的には平行に出射して行く。この場合は、図2(a)に示すように、記録されたホログラム9から再生される像等が見える角度範囲は、記録時の条件で決まる狭い範囲に限定されてしまう。
【0008】
これに対して、図1(b)のように、ホログラム記録材料1の表面4を図示のように微細凹凸面(例えば、マット面)とすると、材料1中の位相干渉縞から回折された光線3は、その凹凸度合に応じた割合で、本来の進む方向から部分的に離れて散乱して出射して行く。このため、図2(b)に示すように、記録されたホログラム10から再生される像等が見える角度範囲(視野角)は、同図(a)の場合に比べて広がる。
【0009】
このような視野角の広がった体積位相型ホログラムの作製方法には、大きく分けて2通り考えられる。
その第1は、図3(a)に示すように、ホログラム記録材料1が表面に凹凸を有するフィルム11、12で挟まれている場合であり、図3(b)に示すように、表面に微細凹凸を有するフィルム11、12で挟まれたままの状態でホログラム記録材料1に両側から相互に反対方向に進む物体光と参照光を入射させて直接体積位相型ホログラム記録を行い、その両面のフィルム11、12を剥離することにより、記録されたホログラム表面に微細凹凸形状が残り、図3(c)のような本発明の視野角が広がった体積位相型ホログラム10を作製することが可能である。
【0010】
その第2は、図4(a)に示すように、ホログラム記録材料1が表面が平面の通常のフィルム13、14で挟まれている場合であり、この場合は、図4(b)に示すように、好ましくは少なくとも再生の時の回折光が出射する側のフィルム14を剥離し、その代わりに表面に微細凹凸を有するガラス板等の透明基材15を貼り付けてから、ホログラム記録材料1に両側から相互に反対方向に進む物体光と参照光を入射させて体積位相型ホログラム記録を行い、その両面のフィルム13、透明基材15を剥離することにより、記録されたホログラム表面に微細凹凸形状が型押しされて残り、図4(c)のような本発明の視野角が広がった体積位相型ホログラム10を作製することができる。
【0011】
また、上記の両方の方式を併用しても作製可能である。さらに、体積位相型ホログラム10は透過型、反射型の何れでもよい。
【0012】
なお、特に透過型の場合は、回折後の光を散乱するために出射面側に微細凹凸を設けることが好ましい。しかし、入射面の角度選択性を緩くするために、その入射面側に微細凹凸を設けることも有効である。また、微細凹凸を有する表面は、ホログラム記録材料と屈折率の異なる材料で保護するようにすることも有効である。
【0013】
上記のような本発明の体積位相型ホログラムは、各種ホログラム製品に用いることができる。以下に例示する。
・絵柄を記録したホログラム
視野角を広角化できるため、明るく奥行きのあるホログラム像を得ることができる。
【0014】
・ブレーキランプ等のホログラムを利用した表示灯
ホログラム表示灯では、体積位相型ホログラムで後続車方向に光源からの光中の特定の色(例えば、赤)の光を回折させる構成のため、波長選択性が必要であるが、それと同時に角度選択性が強くなりすぎてしまう。したがって、表示灯を観察する際にその視野角が極めて限定されてしまうという問題があったが、本発明を利用することにより、視野角を広角化できる。
【0015】
・ヘッドアップディスプレイ等のホログラムコンバイナー
ホログラムコンバイナーでは、波長選択性が必要であるが(例えば、緑)、それと同時に角度選択性が強くなりすぎてしまう。したがって、表示像を観察する際にその視野角が極めて限定されてしまうという問題があったが、本発明を利用することにより、視野角を広角化できる。
【0016】
・波長分散ホログラムプリズム、ホログラムカラーフィルター等の波長分散機能を利用したホログラム
以上と同様に視野角を広角化できる。
【0017】
以上の説明から明らかなように、本発明の体積位相型ホログラムは、体積位相型ホログラムが記録されているホログラム記録材料の少なくとも一方の表面に微細な凹凸が形成されていることを特徴とするものである。
【0018】
この場合、微細な凹凸は、ホログラムからの回折光を部分的に散乱して視野角を広くするように形成されているものである。
【0019】
ホログラム記録材料としては、乾式現像が可能なフォトポリマー材料からなるのが望ましい。
【0020】
なお、微細な凹凸が形成されたホログラム記録材料表面は、ホログラム記録材料と屈折率の異なる透明材料で保護するようにしてもよい。
【0021】
また、本発明の体積位相型ホログラムの作製方法は、少なくとも一方の透明板あるいは透明フィルムがその表面に微細な凹凸を有する2枚の透明板あるいは透明フィルムにより、前記の微細な凹凸を有する面で接するように、挟まれたホログラム記録材料に、直接物体光と参照光を入射させて体積位相型ホログラム記録を行い、少なくとも前記の一方の透明板あるいは透明フィルムを剥離することを特徴とする方法である。
【0022】
もう1つの体積位相型ホログラムの作製方法は、両面が平面のホログラム記録材料に、表面に微細な凹凸を有する透明板あるいは透明フィルムを前記の微細な凹凸を有する面で接するように貼り付けてなるホログラム記録材料に、物体光と参照光を入射させて体積位相型ホログラム記録を行い、前記の透明板あるいは透明フィルムを剥離することを特徴とする方法である。
【0023】
【作用】
本発明においては、体積位相型ホログラムが記録されているホログラム記録材料の少なくとも一方の表面に微細な凹凸が形成されるので、ホログラムからの回折光が部分的に散乱してその出射角度が部分的に相違し、視野角の広角化を図ることができる。
【0024】
【実施例】
以下、本発明の体積位相型ホログラムの作製方法及びそれにより得られた体積位相型ホログラムのいくつかの実施例について詳細に説明する。
〔実施例1〕
2つの平面支持フィルムで狭持されたフォトポリマーからなるホログラム記録フィルム(オムニデックス352:デュポン社製)から一方の支持フィルムを剥離し、その面に片面がマット面になっているPETフィルムをそのマット面で接触するようにラミネートした。このホログラム記録フィルムを感光材料として、アルゴンレーザーを光源としてデニュシュークホログラム(リップマンタイプのホログラム)を撮影した。撮影後、PETフィルムを剥離して、紫外線を100J/cm2 だけ照射し、120℃で2時間加熱して片面にPETフィルムのマット面を型押しした体積位相型ホログラムを得た。その結果、マット面のPETフィルムを使用しないものに比較して、視野角の広い明るいホログラムが得られた。
【0025】
〔実施例2〕
2つの平面支持フィルムで狭持されたフォトポリマーからなるホログラム記録フィルム(オムニデックス352:デュポン社製)から一方の支持フィルムを剥離し、スリガラス面を表面に有し画像が記録されたホログラム原版上にラミネートした。この層構成で、アルゴンレーザーを光源としてホログラム複製を行った。撮影後、ホログラム原版を剥離して、紫外線を100J/cm2 だけ照射し、120℃で2時間加熱し、スリガラス面を型押しした面上に、ホログラム記録フィルムとは屈折率の異なる粘着剤シートをラミネートし、保護した。その結果、平面ホログラム原版から複製したものと比較して、視野角の広い明るいホログラムが得られた。
【0026】
〔実施例3〕
2つの平面支持フィルムで狭持されたフォトポリマーからなるホログラム記録フィルム(オムニデックス352:デュポン社製)から一方の支持フィルムを剥離し、スリガラス面を表面に有する回折効率が略50%の透過型ホログラムが記録されたホログラム原版上にラミネートした。この層構成で、アルゴンレーザーを光源としてホログラム複製を行った。撮影後、ホログラム原版を剥離して、紫外線を100J/cm2 だけ照射し、120℃で2時間加熱し、スリガラス面を型押しした面上に、ホログラム記録フィルムとは屈折率の異なる粘着剤シートをラミネートし、保護した。その結果、平面ホログラム原版から複製したものと比較して、観察角度による回折効率の低下が低減された明るいホログラムが得られた。
【0027】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の体積位相型ホログラム及びその作製方法によると、体積位相型ホログラムが記録されているホログラム記録材料の少なくとも一方の表面に微細な凹凸が形成されるので、ホログラムからの回折光が部分的に散乱してその出射角度が部分的に相違し、視野角の広角化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の体積位相型ホログラムの基本原理を説明するための概念図である。
【図2】本発明により視野角が広がる様子を説明するための図である。
【図3】本発明の体積位相型ホログラムの第1の作製方法を説明するための図である。
【図4】本発明の体積位相型ホログラムの第2の作製方法を説明するための図である。
【符号の説明】
1…ホログラム記録材料
2…ホログラム記録材料の平面表面
3…回折光線
4…ホログラム記録材料の微細凹凸表面
9…従来の体積位相型ホログラム
10…本発明の体積位相型ホログラム
11、12…表面に凹凸を有するフィルム
13、14…表面が平面のフィルム
15…表面に微細凹凸を有するガラス板等の透明基材
Claims (6)
- 体積位相型ホログラムが記録されているホログラム記録材料の少なくとも一方の表面に微細な凹凸が形成されていることを特徴とする体積位相型ホログラム。
- 前記の微細な凹凸が、ホログラムからの回折光を部分的に散乱して視野角を広くするように形成されていることを特徴とする請求項1記載の体積位相型ホログラム。
- 前記ホログラム記録材料が、乾式現像が可能なフォトポリマー材料からなることを特徴とする請求項1又は2記載の体積位相型ホログラム。
- 前記の微細な凹凸が形成されたホログラム記録材料表面が、前記ホログラム記録材料と屈折率の異なる透明材料で保護されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項記載の体積位相型ホログラム。
- 少なくとも一方の透明板あるいは透明フィルムがその表面に微細な凹凸を有する2枚の透明板あるいは透明フィルムにより、前記の微細な凹凸を有する面で接するように、挟まれたホログラム記録材料に、直接物体光と参照光を入射させて体積位相型ホログラム記録を行い、少なくとも前記の一方の透明板あるいは透明フィルムを剥離することを特徴とするホログラム記録材料の少なくとも一方の表面に微細な凹凸が形成されてなる体積位相型ホログラムの作製方法。
- 両面が平面のホログラム記録材料に、表面に微細な凹凸を有する透明板あるいは透明フィルムを前記の微細な凹凸を有する面で接するように貼り付けてなるホログラム記録材料に、物体光と参照光を入射させて体積位相型ホログラム記録を行い、前記の透明板あるいは透明フィルムを剥離することを特徴とするホログラム記録材料の少なくとも一方の表面に微細な凹凸が形成されてなる体積位相型ホログラムの作製方法。
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