JP3539311B2 - タンデム圧延機のスタンド間張力の制御方法及び装置 - Google Patents

タンデム圧延機のスタンド間張力の制御方法及び装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タンデム圧延機のスタンド間張力の制御方法及び装置に係り、特に、板厚変動を抑制してスタンド間張力を制御することが可能な、タンデム圧延機におけるスタンド間張力の制御方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
タンデム圧延機の板厚とスタンド間張力の制御に際して、最終スタンドの板厚を所要の値に制御する代表的な板厚制御方法としては、出側自動板厚制御(AGC)がある。これは、図1に示す如く、最終(例えば第n)スタンド12n出側 の板厚を放射線厚み計等の板厚計20を用いて測定し、その偏差に応じて前段(例えば第n−1)スタンド12n-1のロール周速を操作するものである。即ち、 出側板厚が目標板厚よりも大きい場合には、前段スタンドのロール周速を減少せしめ、逆に小さい場合には、ロール周速を増加させる。
【0003】
図において、10は被圧延材、14はワークロール、Mはワークロール駆動モータ、18はバックアップロール、22は出側速度AGC装置、24は張力計、26は張力制御装置、28は圧下装置である。
【0004】
一方、スタンド間張力の制御に関しては、タンデム圧延機においては、圧下装置28でスタンドの圧下位置を修正することによって、圧下を操作したスタンドの前方張力が変化する。具体的には、圧下を締めると、その前方張力が減少し、圧下を緩めるとその前方張力が増大するが、板厚や圧下を操作したスタンドの後方張力に対しては大きな影響を与えないことから、図1に破線で示すような、この特性を利用した圧下によるスタンド間張力制御(圧下ATRもしくはATLと称する)が一般に用いられている。
【0005】
なお、ATRとは、オートマチックテンションレギュレータの略で、スタンド間張力が所定の上下限範囲内にあるときに、目標張力になるようにロール速度を制御する装置である。又、ATLとは、オートマチックテンションリミッタの略で、スタンド間張力が上限値を超えるか、下限値を下回ったときに、スタンド間張力が所要の範囲内に入るようにロール速度を制御する装置である。
【0006】
その他のスタンド間張力制御方法として、図1に実線で示す如く、該スタンド間の上流側のスタンドのロール周速を修正することによっても、該スタンド間の張力を変化させることができる(速度ATRもしくはATLと称する)。即ち、該スタンド間の上流側のスタンドのロール周速を増加させると当該スタンド間の張力が減少し、逆にロール周速を減少させると張力は増加する。但し、このようなスタンドのロール周速操作は、板厚に対して大きな影響を及ぼし、前記の板厚制御と干渉を引き起こす。
【0007】
そこで、従来の板厚及びスタンド間張力の制御は、板厚制御をロール周速の変更によって実施すると共に、スタンド間張力制御を主に該スタンド間の後段側の圧下を操作する圧下ATRもしくはATLによって行い、干渉を回避しつつ、板厚とスタンド間張力の両方を所望の値に制御する方法が主流である。このとき、ロール周速を操作してスタンド間張力を制御する速度ATRもしくはATLは、板破断や絞りを回避する最終手段として用いられ、後段スタンドの圧下操作によっても該スタンド間張力が所望の範囲に制御できない場合、もしくは、圧下操作が許されない場合に、出側板厚が変動することを容認した上で実施する。ここで、速度ATRもしくはATLが実施される場合には、板厚制御によるロール周速操作を停止して、板厚制御と張力制御が干渉するのを防止しなければならない。
【0008】
なお、速度ATRもしくはATLが動作している場合であっても、条件次第では板厚制御が共存可能な場合があり、これに関しては、例えば特開昭51−83041に記載されている方法がある。この方法は、タンデム圧延機においてロール周速を操作してスタンド間の張力制御を行っている場合でも、板厚偏差の極性を判別して、板厚制御によるロール周速操作が張力制御によるロール周速操作と同一方向になる場合には、互いの干渉を回避できるものとして、板厚制御を続行することにより、オフゲージ部を短くするようにしたものである。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開昭51−83041の方法によっても、板厚制御とスタンド間張力制御を非干渉化しているわけではなく、部分的に改善するのに留まっているのが実態であり、このように、速度ATRもしくはATLを実行する際には、ほとんどの場合、板厚変動を伴うことが避けられない。
【0010】
速度ATRもしくはATLが必須であって、板厚変動が激しいタンデム圧延機の操業形態として、最終スタンドにダルロールを適用した圧延操業がある。これは、最終スタンドに中心線平均粗さRa=0.2〜0.8μm程度の粗面加工を施したワークロールを使用し、板面を粗度の高い状態に仕上げる操業形態であるが、この圧延方法においては、最終スタンドと、その1つ手前のスタンドで構成されるスタンド間張力を、最終スタンドの圧下操作(圧下ATRもしくはATL)によって修正することがほとんどできない。これは、板面にダル目を付けるために、ダル圧延時の最終スタンドの圧下率が1〜5%と通常の圧延の場合に比べて非常に小さく、且つ圧下率の変更がほとんどできないことが主な要因である。この場合の最終スタンド手前のスタンド間張力制御は、前段側のロール周速を操作することによって行うことが主体となる。ダル圧延を実施する場合、圧延速度の変化など圧延状態が推移するのに伴って発生する張力変動と板厚変動の両方を、最終スタンド1つ手前のスタンドのロール周速操作によって制御しようと動作することから、図2に示す如く、板厚制御によるロール周速操作を一時中断して、板厚制御と張力制御が干渉するのを防止しなければならない頻度が極端に増加し、その結果として、最終スタンドに粗面加工を施さない通常のワークロールを用いる場合に比べて、特に速度ATRもしくはATLの動作頻度が多い先端部で板厚精度が悪くなり、オフゲージの長大化が避けられなかった。
【0011】
一方、特開平3−47613には、図3に示す如く、ダルロール30が用いられた第nスタンド12nの板厚を制御するために、第n−1スタンド12n-1のロール速度を修正して、第nスタンドと第n−1スタンド間の張力を修正する場合に、前記張力が制限値を外れたときには、第n〜(n−1)スタンド間張力による切換装置32で出側速度AGC装置22による制御先をA側からB側に切換えて、第n−2スタンドのロール速度を修正することが記載されている。
【0012】
図において、34は荷重計、36は荷重制御装置である。
【0013】
しかしながら、第nスタンド出側の板厚を制御するのに、第n−2スタンドのロール速度を修正していたのでは、距離が離れているために、応答性が極端に低下する。更に、出側速度AGC装置22の制御先がB側に切換っている時に、張力制御による(n−1)スタンド速度操作が行われると、やはり出側板厚が変動する等の問題点を有していた。
【0014】
図4に5スタンドの制御例を示す。A部に示す如く、第4〜第5スタンド間速度ATLによる第4スタンド速度補正出力は、板厚を無視して張力を制御しようとするので、速度ATLが働くと必ず板厚を乱してしまう。この速度ATLが乱した板厚は、B部に示す如く、速度AGC第3スタンド出力が修正しに行くものの、制御ゲインが低く、修正に時間を要する。D部に示す別の制御例においても、速度AGC第3スタンド速度補正出力は速度ATL第4スタンド速度補正出力による外乱(板厚変動)を打ち消すので精一杯であり、E部に示す如く板厚が大きく変動する。
【0015】
本発明は、前記従来の問題点を解消するべくなされたもので、第nスタンドと第n−1スタンド間の張力を、板厚に大きな影響を及ぼすことなく、所要の範囲に的確に制御することを課題とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明は、タンデム圧延機のスタンド間張力の制御に際して、第nスタンドと第n−1スタンド間の張力を所要の範囲に制御する方法において、第n−1スタンドのロール速度の修正方向と、第n−2スタンドのロール速度の修正方向を逆方向とするようにして、前記課題を解決したものである。
【0017】
又、前記第n−2スタンドのロール速度の修正と同時に、第n−1スタンドのロール圧下位置を前記ロール速度の修正に応じて修正するようにしたものである。
【0018】
又、タンデム圧延機のスタンド間張力の制御装置において、第nスタンドと第n−1スタンド間の被圧延材の張力を測定するための張力計と、前記張力計の測定値に基づいて、第n−1スタンドのロール速度補正値を出力する張力制御装置と、前記第n−1スタンドのロール速度補正値の正負を反転させて、第n−2スタンドのロール速度補正値を演算する板厚補償装置と、を有したものである。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態の例を詳細に説明する。
【0020】
本発明の第1実施形態は、図5に示す如く、第5スタンドにダルロール30が用いられた、5スタンドのタンデムミルに本発明を適用したもので、第4〜5スタンド間速度ATLによる第4スタンド速度補正量に応じて、第3スタンドの速度を逆方向に操作し、速度ATLが動作することによって変化することが予想される板厚を前段(第3)スタンドで補正するための、極性反転器42及び利得調整用アンプ44を含む、板厚補償装置40を追加したものである。
【0021】
ここで、キースタンドは、最終(第5)スタンドであり、第5スタンドのロール速度は一定値に固定されている。ミル全体は、単一スタンドの速度の操作があっても、それよりも上流側のスタンドの速度比は保存したまま動作させるサクセシブ動作によって制御されている。
【0022】
本実施形態におけるライン速度変更時の全体的な制御状態を図6に、加速時の詳細を図7に示す。このように、速度ATL分の補正量を、極性を逆にして第3スタンドに加えることで、オンゲージになるまでの時間を短くすることができる。
【0023】
次に、特開平3−47613による制御に本発明を適用した本発明の第2実施形態を図8に示す。
【0024】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、張力制御装置26の出力により、第n−2スタンド12n-2のロール速度の修正方向を第n−1スタンド12n-1のロール速度の修正方向と逆方向に修正するための、極性反転器42及び利得調整用アンプ44を含む板厚補償装置40が付加されている。
【0025】
次に、特開平6−154829で出願人が提案した板厚・張力制御方法に適用した本発明の第3実施形態を図9に示す。
【0026】
本実施形態においては、張力制御装置26から第4スタンド124の速度制御 装置504への補正出力に応じて、板厚補償装置40で、これと極性が逆の補正 を第3スタンド123の速度制御装置503に行うようにしている。
【0027】
図において、16は中間ロール、52は板厚実績、張力実績等のプロセスデータを用いて、ファジー理論により板厚制御と張力制御の干渉度合いをダイナミットに推定・評価し、得られた干渉度に応じて干渉を小さくするために、張力不感帯の変更、更に、干渉材を用いて、前段及び前々段スタンド速度への制御出力配分を変更し、干渉を排除するための板厚・張力協調制御装置である。
【0028】
次に、前記の第1実施形態に対して更に請求項2に記載した内容を付加したことを特徴とする第4の実施形態を図10に示す。
【0029】
第1の実施形態においては、第4〜5スタンド間速度ATLによる第4スタンド速度補正量に応じて、第3スタンドの速度を逆方向に操作することによって板厚の変動を抑制しているが、この第3スタンドの速度操作は、第3〜4スタンド間の張力を変動せしめ、ともすると許容される張力範囲を越えてしまう可能性がある。そこで、本実施形態においては、第1の実施形態に加えて、第3スタンドの速度を修正した操作量に応じて、これによる張力変動を打ち消すように、第4スタンドの圧下を動作させるものである。
【0030】
本実施形態においては、第3スタンドの速度を操作することによて発生することが予想される第3〜4スタンド間の張力変動を、板厚に大きな影響を与えることなくフィードフォワード的に取除くことが可能であるから、44に示す利得調整用アンプのゲインに対する制限を緩和することができる。
【0031】
【発明の効果】
本発明によれば、スタンド間張力を適正範囲に修正するための上流側スタンドのロール周速操作によって発生することが避けられない板厚変動を、更に1スタンド上流側のロール周速を逆方向に補正することによって最小限に抑えることができる。
【0032】
更に、張力を制御しようとしているスタンド間の上流スタンドの圧下位置を同時に操作することによって、上流側のスタンド間張力の変動をフィードフォワード的に取り除くことができる。
【0033】
本発明は、特に、最終スタンドにダルロールを適用した場合に大きな効果を発揮し、板厚精度を大きく向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の板厚制御とスタンド間張力制御の組合せの例を示すブロック線図
【図2】図1の制御により干渉が発生している状態を示すタイムチャート
【図3】特開平3−47613で提案された制御を示すブロック線図
【図4】同じく制御例を示すタイムチャート
【図5】本発明の第1実施形態を示すブロック線図
【図6】第1実施形態の全体的な制御状態を示すタイムチャート
【図7】同じくライン速度加速時の詳細を示すタイムチャート
【図8】特開平3−47613による制御に本発明を適用した第2実施形態を示すブロック線図
【図9】特開平6−154829に適用した本発明の第3実施形態を示すブロック線図
【図10】本発明の第1実施形態に、更に請求項2に記載した内容を付加した、本発明の第4実施形態を示すブロック線図
【符号の説明】
10…被圧延材
12…スタンド
14…ワークロール
M…ワークロール駆動モータ
20…板厚計
22…出側AGC装置
24…張力計
26…張力制御装置
28…圧下装置
30…ダルロール
32…切換装置
40…板厚補償装置
42…極性反転器
44…利得調整用アンプ
50…速度制御装置
52…板厚・張力協調制御装置

Claims (3)

  1. タンデム圧延機のスタンド間張力の制御に際して、第nスタンドと第n−1スタンド間の張力を所要の範囲に制御する方法において、
    第n−1スタンドのロール速度の修正方向と、第n−2スタンドのロール速度の修正方向を逆方向とすることを特徴とする、タンデム圧延機のスタンド間張力の制御方法。
  2. 前記第n−2スタンドのロール速度の修正と同時に、第n−1スタンドのロール圧下位置を前記ロール速度の修正に応じて修正することを特徴とする、請求項1記載のタンデム圧延機のスタンド間張力の制御方法。
  3. タンデム圧延機のスタンド間張力の制御装置において、
    第nスタンドと第n−1スタンド間の被圧延材の張力を測定するための張力計と、
    前記張力計の測定値に基づいて、第n−1スタンドのロール速度補正値を出力する張力制御装置と、
    前記第n−1スタンドのロール速度補正値の正負を反転させて、第n−2スタンドのロール速度補正値を演算する板厚補償装置と、
    を有することを特徴とする、タンデム圧延機のスタンド間張力制御装置。
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