JP3539134B2 - ブレーキ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両を制動するブレーキ装置に関するものであり、特に、ブレーキ操作中にブレーキシリンダ液圧をマスタシリンダ液圧より増圧可能なブレーキ装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
上記ブレーキ装置は一般に、(a) ブレーキペダル等、運転者により操作されるブレーキ操作部材と、(b) そのブレーキ操作部材の操作に基づいて液圧を発生させるマスタシリンダと、(c) ブレーキ操作部材の操作力を助勢してマスタシリンダに出力するブースタと、(d) マスタシリンダと液通路により接続され、その液通路から供給される液圧に基づいてブレーキを作動させるブレーキシリンダを有し、車輪の回転を抑制するブレーキとを含むように構成される。ブースタには、
▲1▼ 負圧源に連通した負圧室と、ブレーキ操作部材の操作に基づいて負圧室と大気とに選択的に連通させられる変圧室との差圧によって操作力を助勢するバキュームブースタと、▲2▼ ブレーキ操作部材の操作に基づいて高圧源と低圧源とに選択的に連通させられるパワー液圧室の液圧によって操作力を助勢する液圧ブースタとがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段,作用および効果】
この種のブレーキ装置の一つとして、本出願人は先に次のようなものを開発した。それは、さらに、(e) ブレーキ操作部材の操作力と操作ストロークとの少なくとも一方である操作状態量を検出する操作状態量検出手段と、(f) ブレーキ操作中であって、検出された操作状態量が基準値に到達したときに、ブレーキシリンダの液圧をマスタシリンダの液圧より増圧することを開始する増圧装置とを含むブレーキ装置である。
【0004】
しかしながら、本出願人はその後の研究により、この開発ブレーキ装置には、ブースタの作動応答遅れが原因となり、ブレーキ操作部材の操作力または操作ストロークの変化速度が速い急ブレーキ操作時に増圧開始が正規の時期に行われないという問題があることに気がついた。以下、このことを具体的に説明する。
【0005】
バキュームブースタにおいては、ブレーキ操作の操作力または操作ストロークが増加させられると、変圧室が負圧室から遮断される一方、大気に連通させられ、大気から空気が変圧室に導入され、それにより、変圧室の圧力が大気圧に向かって上昇する。しかし、操作力等の増加に応じて直ちに空気が変圧室に導入されるわけではなく、時間がかかる。そのため、バキュームブースタは、操作力等の増加に素早く応答して作動することができない。このように、バキュームブースタには、操作力等の増加に対する作動応答遅れが存在するのである。
【0006】
例えば、操作力Fの増加がゆっくり行われる通常ブレーキ操作時には、図16に実線グラフ▲1▼で示すように、バキュームブースタの助勢限界前においては、操作力Fの増加に比例してマスタシリンダ液圧PM が増加する。これに対して、操作力Fの増加が素早く行われる急ブレーキ操作時には、2つの破線グラフ▲2▼,▲3▼でそれぞれ示すように、マスタシリンダ液圧PM の増加に遅れが生じ、操作力Fの増加がゆっくり行われる場合におけるより大きい操作力Fの下でバキュームブースタが助勢限界に到達することになる。そして、このような傾向は操作力Fの増加速度が速いほど強められる。破線グラフ▲3▼は、破線グラフ▲2▼におけるより操作力Fの増加速度が速い場合を示している。
【0007】
このようにバキュームブースタには作動応答遅れが存在するのであり、これに対して、液圧ブースタにも同様に作動応答遅れが存在するが、その程度はバキュームブースタほどに顕著ではないのが普通である。
【0008】
以上要するに、バキュームブースタであれ液圧ブースタであれ、ブースタには作動応答遅れが存在するのであるが、このような作動遅れが存在するにもかかわらず、増圧装置を、操作力等が固定値である基準値に到達したときに増圧を開始するように設計する場合には、操作力等の増加速度が速いときと遅いときとで、増圧が開始されるときのブースタの作動状態が異なってしまう。例えば、ブースタが助勢限界に到達したときに増圧を開始する目的の下に基準値が設定され、かつ、その基準値が、通常ブレーキ操作のみを想定して固定値として設定された場合には、通常ブレーキ操作時には、図17に二点鎖線グラフ▲4▼で示すように、ブースタが助勢限界に到達したときにちょうど増圧が開始されるのに対して、急ブレーキ操作時には、2つの破線グラフ▲5▼,▲6▼で示すように、ブースタが助勢限界に到達しないうちに増圧が開始されてしまう。
【0009】
以上の説明から明らかなように、この開発ブレーキ装置には、急ブレーキ操作時に増圧開始が正規の時期に行われないという問題があるのである。
【0010】
本発明は以上の事情を背景としてなされたものであり、その課題は、通常ブレーキ操作時であるか急ブレーキ操作時であるかを問わず、増圧開始時期が正規化されるブレーキ装置を提供することにある。
【0011】
この課題は下記態様のブレーキ装置によって解決される。なお、以下の説明において、本発明の各態様を、それぞれに項番号を付して請求項と同じ形式で記載する。各項に記載の特徴を組み合わせて採用することの可能性を明示するためである。
【0012】
(1) 運転者により操作されるブレーキ操作部材と、
そのブレーキ操作部材の操作に基づいて液圧を発生させるマスタシリンダと、
前記ブレーキ操作部材の操作力を助勢して前記マスタシリンダに出力するブースタと、
前記マスタシリンダと液通路により接続され、その液通路から供給される液圧により作動するブレーキシリンダを有し、車輪の回転を抑制するブレーキと
を含むブレーキ装置において、
前記ブレーキ操作部材の操作力と操作ストロークとの少なくとも一方である操作状態量を検出する操作状態量検出手段と、
検出された操作状態量が基準値に到達したときに、前記ブレーキシリンダの液圧を前記マスタシリンダの液圧より増圧することを開始する増圧装置であって、前記基準値を、前記操作状態量の変化速度が大きい場合において小さい場合におけるより大きくなるように変化させる基準値変更手段を含む増圧装置と
を設けたことを特徴とするブレーキ装置(請求項1)。
このブレーキ装置においては、増圧開始時期を決める基準値が操作状態量の変化速度を考慮して変化させられ、具体的には、操作状態量の変化速度が大きい場合において小さい場合におけるより大きくなるように変化させられる。操作状態量の変化速度に応じ、ブースタの作動応答遅れに見合った量で基準値が増加させられるのであり、それにより、増圧開始が、操作状態量の変化速度が大きい場合において小さい場合におけるより容易には行われなくなり、その結果、操作状態量を介してブースタの作動状態を間接に監視するブレーキ装置でありながら、ブースタの作動状態が正しく検出されることになるのである。したがって、このブレーキ装置によれば、通常ブレーキ操作時であるか急ブレーキ操作時であるかを問わず、増圧開始時期が正規化されるという効果が得られる。
このブレーキ装置においては、増圧が、操作状態量の変化速度の大小にかかわらず、ブースタが同じ作動状態に到達したときに開始される。したがって、このブレーキ装置によれば、通常ブレーキ操作時であるか急ブレーキ操作時であるかを問わず、増圧開始時期が正規化されるという効果が得られる。
このブレーキ装置において、基準値と比較される「操作状態量」は操作力としたり、操作ストロークとしたりすることができる。また、基準値は、操作力の変化速度に基づいて変化させられても、操作ストロークの変化速度に基づいて変化させられてもよい。
また、このブレーキ装置において「基準値」は、後述のように、ブースタが助勢限界に到達したときに操作状態量が取る大きさに設定したり、ブースタが助勢限界前のある作動状態を取る時期に操作状態量が取る大きさに設定することができる。
(2) 前記基準値が、前記ブースタが助勢限界に到達したときに前記操作状態量が取る大きさを有する (1) 項に記載のブレーキ装置(請求項)。
このブレーキ装置においては、ブースタが助勢限界に到達したときに操作状態量が基準値に到達するため、ブースタの助勢限界後にブレーキシリンダ液圧がマスタシリンダ液圧より増圧される。したがって、このブレーキ装置によれば、助勢限界の前後を問わず、安定したブレーキの効きが実現され、車両の制動性能が向上するという効果が得られる。
(3) 前記増圧装置が、前記操作状態量の変化速度の大小にかかわらず、前記ブースタが同じ作動状態に到達したときに増圧を開始するものである(1) 項または (2) 項に記載のブレーキ装置。
(4) 前記増圧装置が、(a) 前記液通路の途中に設けられ、前記マスタシリンダとブレーキシリンダとの間における作動液の双方向の流れを許容する第1状態と、少なくともブレーキシリンダからマスタシリンダに向かう作動液の流れを阻止する第2状態とを含む複数の状態に切り換わる制御弁と、(b) 前記液通路のうちその制御弁と前記ブレーキシリンダとの間に吐出側が接続され、吸入側から作動液を汲み上げて吐出側に吐出するポンプとを含み、それら制御弁とポンプとの共同によって前記ブレーキシリンダ液圧の高さを制御するものである(1) ないし(3) 項のいずれかに記載のブレーキ装置。
(5) 前記マスタシリンダが、マスタシリンダハウジングに加圧ピストンが摺動可能に嵌合され、それにより、それらマスタシリンダハウジングと加圧ピストンとの間に加圧室が形成された構成とされ、さらに、その加圧室と前記ポンプの吸入側とを互いに連通させるとともに、作動液を加圧室からポンプの吸入側に液圧を低下させないで導入する作動液導入通路を含む(4) 項に記載のブレーキ装置。
このブレーキ装置によれば、ブレーキ操作中にマスタシリンダに発生した液圧を有効に利用してブレーキシリンダの増圧を行い得る。
(6) 前記制御弁が、前記液通路に設けられた圧力制御弁であって、前記ポンプから作動液が吐出されている状態では、圧力制御弁よりブレーキシリンダ側の第2液圧がマスタシリンダ側の第1液圧より高いがその差が目標差圧以下であれば前記第2状態に切り換わり、第2液圧が第1液圧より高くかつその差が目標差圧より大きくなろうとすれば前記第1状態に切り換わることにより、第2液圧を第1液圧より高くかつその差が目標差圧と等しくなるように制御する圧力制御弁を含む(4) または(5) 項に記載のブレーキ装置。
このブレーキ装置によれば、マスタシリンダ液圧を基準にしてブレーキシリンダ液圧の高さが相対的に制御されるため、圧力制御弁の目標差圧制御なしでもマスタシリンダ液圧の変化すなわち運転者の意思の変化がブレーキシリンダ液圧に反映されるという効果が得られる。
(7) 前記圧力制御弁が、前記液通路におけるマスタシリンダ側とブレーキシリンダ側との間における作動液の流通状態を制御する弁子および弁座と、それら弁子および弁座の少なくとも一方に、それら弁子と弁座との相対移動を制御するために作用する磁気力を発生させる磁気力発生手段とを有し、その磁気力に基づいて前記液通路のうちブレーキシリンダ側とマスタシリンダ側との差圧が変化する電磁式圧力制御弁を含み、前記増圧装置が、前記磁気力を制御して前記差圧を変化させる磁気力制御装置を含む(6) 項に記載のブレーキ装置。
(8) 前記増圧装置が、(a) 前記検出された操作状態量に基づき、前記ブースタが異常であるか否かを判定するブースタ異常判定装置と、(b) 前記基準値を、前記ブースタが異常であると判定された場合においてそうでない場合におけるより小さくなるように変化させる基準値変更手段とを含む(1) ないし(7) 項のいずれかに記載のブレーキ装置。
このブレーキ装置によれば、同じ操作状態量検出手段を用いて増圧開始の要否判定とブースタの異常判定との双方を行い得、各判定を別々の検出手段を用いて行う場合に比較して、装置コストを容易に削減し得るという効果が得られる。また、このブレーキ装置においては、増圧開始時期を決める基準値が、ブースタが異常である場合において正常である場合におけるより小さくされ、その結果、増圧開始が容易に行われることとなる。したがって、このブレーキ装置によれば、増圧開始がブースタの異常時において正常時におけるより早期に行われ、それにより、ブースタの異常に起因したブレーキ作動力の低下が抑制されるという効果も得られる。
(9) 前記ブースタ異常判定装置が、(a) 車体減速度を検出する車体減速度検出手段と、(b) 前記ブースタが助勢限界に到達しておらず、かつ、前記検出された車体減速度を前記検出された操作状態量で割り算したブレーキ効き係数がしきい値より小さい場合に前記ブースタが異常であると判定する判定手段とを含む(8) 項に記載のブレーキ装置。
ブレーキの効きの程度は、車体減速度を操作状態量で割り算することによって取得できる。また、ブースタが異常となったために正常な助勢を行うことができない状況では、ブレーキの効きが低下する。かかる知見に基づき、このブレーキ装置においては、検出された車体減速度を検出された操作状態量で割り算したブレーキ効き特性係数がしきい値より小さい場合にブースタが異常であると判定される。
このブレーキ装置において「車体減速度検出手段」は、車体減速度を直接に検出する形式としたり、後述のように、車両における複数個の車輪の車輪速に基づく推定車速の時間的変化勾配として間接に検出する形式とすることができる。
(10)運転者により操作されるブレーキ操作部材と、
そのブレーキ操作部材の操作に基づいて液圧を発生させるマスタシリンダと、
前記ブレーキ操作部材の操作力を助勢して前記マスタシリンダに出力するブースタと、
前記マスタシリンダと液通路により接続され、その液通路から供給される液圧により作動するブレーキシリンダを有し、車輪の回転を抑制するブレーキと
を含むブレーキ装置において、
前記ブレーキ操作部材の操作力と操作ストロークとの少なくとも一方である操作状態量を検出する操作状態量検出手段と、
前記マスタシリンダまたはブレーキシリンダの液圧を検出する液圧センサと車体減速度を検出する車体減速度検出手段との少なくとも一方と、
検出された操作状態量が基準値に到達したときに、前記ブレーキシリンダの液圧を前記マスタシリンダの液圧より増圧することを開始する増圧装置であって、前記基準値が、前記ブースタが助勢限界に到達しておらず、かつ、前記検出された液圧または車体減速度を前記検出された操作状態量で割り算したブレーキ効き係数がしきい値より小さい場合においてそうでない場合におけるより小さくなるように変化する増圧装置と
を設けたことを特徴とするブレーキ装置。
このブレーキ装置によれば、同じ操作状態量検出手段を用いて増圧開始の要否判定とブースタの異常判定との双方を行い得、各判定を別々の検出手段を用いて行う場合に比較して、装置コストを容易に削減し得るという効果が得られる。また、このブレーキ装置においては、増圧開始時期を決める基準値が、ブースタが異常である場合において正常である場合におけるより小さくされ、その結果、増圧開始が容易に行われることとなる。したがって、このブレーキ装置によれば、増圧開始がブースタの異常時において正常時におけるより早期に行われ、それにより、ブースタの異常に起因したブレーキ作動力の低下が抑制されるという効果も得られる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のさらに具体的ないくつかの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0014】
図1には、本発明の一実施形態であるブレーキ装置が示されている。このブレーキ装置は、4輪車両に搭載されるものであって、ブレーキ操作力を助勢するブースタとしてバキュームブースタを備えている。
【0015】
このブレーキ装置は、さらに、アンチロック制御装置と効き特性制御装置とを備えている。アンチロック制御装置は、車輪スリップ制御装置の一例として、車両制動時に各輪のロック傾向が過大となることを防止する装置である。このアンチロック制御装置は、ポンプを有し、そのポンプにより作動液をブレーキ回路内において還流させる。これに対して、効き特性制御装置は、バキュームブースタに助勢限界があることを考慮し、車両制動時に車体減速度が操作力に対して助勢限界の前後を問わず同じ勾配で増加するようにそれら操作力と車体減速度との関係であるブレーキの効き特性を制御する装置である。この効き特性制御装置は、上記ポンプを利用して作動する。すなわち、ポンプがアンチロック制御装置と効き特性制御装置とに共用されているのである。
【0016】
図において符号10がブレーキ操作部材としてのブレーキペダルである。ブレーキペダル10はバキュームブースタ(以下、単に「ブースタ」という。)12を介してマスタシリンダ14に連携させられている。
【0017】
ブースタ12は、よく知られているように、負圧源としての車両のエンジン吸気管と常時連通した負圧室と、その負圧室と大気とに選択的に連通させられる変圧室との差圧によるパワーピストンの作動力によって操作力を助勢する。負圧室と変圧室と大気との間における空気の流通状態は、よく知られているように、ブレーキペダル10と連動する入力部材とパワーピストンとの相対変位に基づいて作動するコントロールバルブ機構(エアバルブ,バキュームバルブ,コントロールバルブ,コントロールバルブスプリング等を含む)により制御される。
【0018】
マスタシリンダ14は、よく知られているように、マスタシリンダハウジングに2個の加圧ピストンが互いに直列に摺動可能に嵌合されたタンデム式であり、ブースタ12の出力に基づいてそれら2個の加圧ピストンが作動することにより、各加圧ピストンの前方に形成された各加圧室にそれぞれ等しい高さの液圧を発生させる。一方の加圧室に、左前輪FLのブレーキを作動させるブレーキシリンダと右後輪RRのブレーキを作動させるブレーキシリンダが接続され、他方の加圧室に、右前輪FRのブレーキを作動させるブレーキシリンダと左後輪RLのブレーキを作動させるブレーキシリンダが接続されている。ブレーキは、液圧に基づく作動力によって摩擦材を車輪と共に回転する回転体の摩擦面に押し付けることにより、車輪の回転を抑制する形式(ディスク式,ドラム式等)とされている。
【0019】
すなわち、このブレーキ装置は互いに独立した2つのブレーキ系統が互いにダイヤゴナルに構成されたダイヤゴナル2系統式なのである。それら2つのブレーキ系統は構成が互いに共通するため、一方のブレーキ系統のみを代表的に文章および図によって説明し、他方のブレーキ系統の説明を省略する。
【0020】
マスタシリンダ14は主通路18により左前輪FLのブレーキシリンダ20と右後輪RRのブレーキシリンダ20とにそれぞれ接続されている。主通路18は、マスタシリンダ14から延び出た後に二股状に分岐させられており、1本の基幹通路24と2本の分岐通路26とが互いに接続されて構成されている。各分岐通路26の先端にブレーキシリンダ20が接続されている。
【0021】
基幹通路24の途中には制御弁としての圧力制御弁30が設けられている。圧力制御弁30は、主通路18におけるブレーキシリンダ20側の液圧をマスタシリンダ14側の液圧に対して相対的に制御するものであり、具体的には、ポンプ40から作動液が吐出されている状態では、ブレーキシリンダ液圧がマスタシリンダ液圧より高いがその差圧が目標差圧以下であれば、ポンプ40からマスタシリンダ14へ向かう作動液の流れを阻止し、ブレーキシリンダ液圧がマスタシリンダ液圧より高くかつその差圧が目標差圧より大きくなろうとすれば、ポンプ40からマスタシリンダ14へ向かう作動液の流れを許容することにより、ブレーキシリンダ液圧をマスタシリンダ液圧より高くかつその差圧が目標差圧となるように制御するものである。
【0022】
この圧力制御弁30は、本実施形態においては、ブレーキシリンダ20とマスタシリンダ14との差圧を電磁的に制御する形式とされている。この圧力制御弁30は具体的には、図2に示すように、図示しないハウジングと、主通路18におけるマスタシリンダ側とブレーキシリンダ側との間における作動液の流通状態を制御する弁子70およびそれが着座すべき弁座72と、それら弁子70および弁座72の相対移動を制御する磁気力を発生させるソレノイド74とを有している。
【0023】
この圧力制御弁30においては、ソレノイド74が励磁されない非作用状態(OFF状態)では、スプリング76の弾性力によって弁子70が弁座72から離間させられ、それにより、主通路18においてマスタシリンダ側とブレーキシリンダ側との間での双方向の作動液の流れが許容され、その結果、ブレーキ操作が行われれば、ブレーキシリンダ液圧がマスタシリンダ液圧と等圧で変化させられる。このブレーキ操作中、弁子70には、弁座72から離間する向きに力が作用するため、ソレノイド74が励磁されない限り、マスタシリンダ液圧すなわちブレーキシリンダ液圧が高くなっても、弁子70が弁座72に着座してしまうことはない。すなわち、圧力制御弁30は常開弁なのである。
【0024】
これに対し、ソレノイド74が励磁される作用状態(ON状態)では、ソレノイド74の磁気力によりアーマチュア78が吸引され、そのアーマチュア78と一体的に移動する可動部材としての弁子70が固定部材としての弁座72に着座させられる。このとき、弁子70には、ソレノイド74の磁気力に基づく吸引力F1 と、ブレーキシリンダ液圧とマスタシリンダ液圧との差に基づく力F2 とスプリング76の弾性力F3 との和とが互いに逆向きに作用する。力F2 の大きさは、ブレーキシリンダ液圧とマスタシリンダ液圧との差と、弁子70がブレーキシリンダ液圧を受ける実効受圧面積との積で表される。
【0025】
ソレノイド74が励磁される作用状態(ON状態)であって、ポンプ40の吐出圧すなわちブレーキシリンダ液圧がそれほど増加せず、
2 ≦F1 −F3
なる式で表される関係が成立する領域では、弁子70が弁座72に着座し、ポンプ40からの作動液がマスタシリンダ14に逃げることが阻止され、ポンプ40の吐出圧が増加し、ブレーキシリンダ20にマスタシリンダ液圧より高い液圧が発生させられる。これに対し、ポンプ40の吐出圧すなわちブレーキシリンダ液圧がさらに増加し、
2 >F1 −F3
なる式で表される関係が成立しようとする領域では、弁子70が弁座72から離間し、ポンプ40からの作動液がマスタシリンダ14に逃がされ、その結果、ポンプ40の吐出圧すなわちブレーキシリンダ液圧がそれ以上増加することが阻止される。このようにしてブレーキシリンダ20には、スプリング76の弾性力F3 を無視すれば、マスタシリンダ液圧に対してソレノイド吸引力F1 に基づく差圧分高い液圧が発生させられることになる。
【0026】
また、この圧力制御弁30は、図3にグラフで表されているように、ソレノイド吸引力F1 の大きさがソレノイド74の励磁電流Iの大きさに応じてリニアに変化するように設計されている。
【0027】
図1に示すように、圧力制御弁30にはバイパス通路82が設けられており、そのバイパス通路82の途中にチェック弁84が設けられている。万が一、ブレーキペダル10の操作時に圧力制御弁30内の可動部材に生ずる流体力によって圧力制御弁30が閉じることがあっても、マスタシリンダ14からブレーキシリンダ20へ向かう作動液の流れが確保されるようにするためである。圧力制御弁30にはさらに、それに並列にリリーフ弁86も設けられている。ポンプ40による吐出圧が過大となることを防止するためである。
【0028】
前記各分岐通路26の途中には常開の電磁開閉弁である増圧弁90が設けられ、開状態でマスタシリンダ14からブレーキシリンダ20へ向かう作動液の流れを許容する増圧状態を実現する。各増圧弁90にはバイパス通路92が接続され、各バイパス通路92には作動液戻り用のチェック弁94が設けられている。各分岐通路26のうち増圧弁90とブレーキシリンダ20との間の部分からリザーバ通路96が延びてリザーバ98に至っている。各リザーバ通路96の途中には常閉の電磁開閉弁である減圧弁100が設けられ、開状態でブレーキシリンダ20からリザーバ98へ向かう作動液の流れを許容する減圧状態を実現する。リザーバ98は、ハウジングにリザーバピストン104が実質的に気密かつ摺動可能に嵌合されて構成されるとともに、その嵌合によって形成されたリザーバ室106において作動液を弾性部材としてのスプリング108によって圧力下に収容するものである。
【0029】
リザーバ98は吸入通路110によって前記ポンプ40の吸入側に接続され、ポンプ40の吐出側は吐出通路114によって主通路18のうち圧力制御弁30と増圧弁90との間の部分に接続されている。吸入通路110にはチェック弁である吸入弁116、吐出通路114にはチェック弁である吐出弁118がそれぞれ設けられている。吐出通路114にはさらに、絞りとしてのオリフィス120と固定ダンパ122とがそれぞれ設けられており、それらにより、ポンプ40の脈動が軽減される。
【0030】
ところで、効き特性制御の実行中には、ポンプ40がリザーバ98から作動液を汲み上げ、その作動液を各ブレーキシリンダ20に吐出することによって各ブレーキシリンダ20が増圧されるが、アンチロック制御が実行されていない限り、リザーバ98に汲み上げるべき作動液が存在しないのが普通であり、効き特性制御の実行を確保するためには、アンチロック制御の実行の有無を問わず、リザーバ98に作動液を補給することが必要となる。そのため、本実施形態においては、基幹通路24のうちマスタシリンダ14と圧力制御弁30との間の部分から延びてリザーバ98に至る補給通路130が設けられている。
【0031】
しかし、この補給通路130により常時マスタシリンダ14とリザーバ98とを互いに連通させたのでは、ブレーキペダル10が操作されても、リザーバ98においてリザーバピストン104がボトミングした後でないとマスタシリンダ14が昇圧できず、ブレーキの効き遅れが生じる。そのため、補給通路130の途中に流入制御弁140が設けられている。
【0032】
流入制御弁140は、マスタシリンダ14からリザーバ98への作動液の補給が必要であるときには開状態となり、マスタシリンダ14からリザーバ98への作動液の流れを許容し、一方、マスタシリンダ14からリザーバ98への作動液の補給が必要ではないときには閉状態となり、マスタシリンダ14からリザーバ98への作動液の流れを阻止し、マスタシリンダ14による昇圧を可能とする。
【0033】
本実施形態においては、流入制御弁140が常閉の電磁開閉弁とされている。また、本実施形態においては、マスタシリンダ14から作動液を導入することが必要である場合であるか否かの判定が、アンチロック制御中、リザーバ98においてポンプ40により汲み上げるべき作動液が存在しないか否かの判定とされ、また、その作動液の存否判定が、増圧弁90が増圧状態にある時間の積算値と、減圧弁100が減圧状態にある時間の積算値とがそれぞれ演算されるとともに、それら増圧時間と減圧時間とに基づいてリザーバ98における作動液の残量が推定されることにより、行われる。
【0034】
図4には、ブレーキ装置の電気的構成が示されている。ブレーキ装置は、CPU,ROMおよびRAMを含むコンピュータを主体とするECU(電子制御ユニット)200を備えている。ROMにブレーキ効き特性制御ルーチン(図5および図6にフローチャートで表されている)およびアンチロック制御ルーチン(図示しない)が記憶されており、それらルーチンがCPUによりRAMを使用しつつ実行されることにより、効き特性制御とアンチロック制御とがそれぞれ実行される。
【0035】
ECU200の入力側には、操作力センサ202および車輪速センサ204が接続されている。操作力センサ202は、ブレーキペダル14の操作力を検出し、操作力の大きさを規定する操作力信号を出力する。車輪速センサ204は、各輪毎に設けられ、各輪の車輪速を検出し、各車輪の車輪速を規定する車輪速信号を出力する。
【0036】
一方、ECU200の出力側には、前記ポンプ40を駆動するポンプモータ210が接続され、そのポンプモータ210にモータ駆動信号が出力される。ECU200の出力側にはさらに、前記圧力制御弁30のソレノイド74,増圧弁90および減圧弁100の各ソレノイド212および流入制御弁140のソレノイド214も接続されている。圧力制御弁30のソレノイド74には、ソレノイド74の磁気力をリニアに制御するための電流制御信号が出力され、一方、増圧弁90および減圧弁100の各ソレノイド212と流入制御弁140のソレノイド214とにはそれぞれ、各ソレノイド212,214をON/OFF駆動するためのON/OFF駆動信号が出力される。
【0037】
ここで、ECU200による効き特性制御を説明するが、まず、概略的に説明する。
【0038】
ブースタ12は、ブレーキペダル10の操作力Fがある値まで増加すると、変圧室の圧力が大気圧まで上昇し切ってしまい、助勢限界に達する。助勢限界後は、ブースタ12は操作力Fを助勢することができないから、何ら対策を講じないと、図7にグラフで表されているように、ブレーキの効きが低下する。かかる事実に着目して効き特性制御が行われるのであり、具体的には、図8にグラフで表されているように、ブースタ12が助勢限界に達した後には、ポンプ40を作動させてマスタシリンダ液圧PM より差圧ΔP(ブレーキシリンダ液圧PB のマスタシリンダ液圧PM に対する増圧量)だけ高い液圧をブレーキシリンダ20に発生させ、それにより、ブースタ12の助勢限界の前後を問わず、ブレーキの効きを安定させる。
【0039】
本実施形態においては、ブースタ12が助勢限界に到達したか否かが、操作力センサ202により検出された操作力Fが基準値F0 に到達したか否かによって判定される。基準値F0 は、ブースタ12が助勢限界に到達したときに操作力Fが取ることが予想される大きさとされている。ただし、ブースタ12には作動応答遅れが存在する。そこで、本実施形態においては、基準値F0 が、操作力Fの変化速度である操作力変化速度RFに応じて大きさが変化する可変値とされている。
【0040】
操作力Fを時間tと共に通常の速度で増加させる通常ブレーキ操作時には、操作力Fが図9に実線グラフ▲1▼で示すように増加し、それに応答してマスタシリンダ液圧PM が実線グラフ▲2▼で示すように増加する。その実線グラフ▲2▼において折れ点がブースタ12の助勢限界点である。これに対して、操作力Fを時間tと共に通常の速度より速い速度で増加させる急ブレーキ操作時には、操作力Fが破線グラフ▲3▼で示すように増加し、それに応答してマスタシリンダ液圧PM が同図において破線グラフ▲4▼で示すように増加する。それらグラフから明らかなように、急ブレーキ操作時には通常ブレーキ操作時におけるより、マスタシリンダ液圧PM の操作力Fに対する変化速度が遅く、同じ大きさの操作力Fに対応するマスタシリンダ液圧PM が低くなる。したがって、通常ブレーキ操作のみを想定して前記基準値F0 を固定値として設定したのでは、通常ブレーキ操作時には、二点鎖線グラフ▲5▼で示すように、ブースタ12が実際に助勢限界に到達したときにちょうどポンプ40によるブレーキシリンダ20の増圧が開始されるのに対し、急ブレーキ操作時には、二点鎖線グラフ▲6▼で示すように、ブースタ12が実際に助勢限界に到達しないうちに、ポンプ40によるブレーキシリンダ20の増圧が開始されてしまう。急ブレーキ操作時には、助勢限界点と増圧開始点とが互いに一致しないのである。
【0041】
そこで、本実施形態においては、通常ブレーキ操作時であるか急ブレーキ操作時であるかを問わず、図10に示すように、ブースタ12が実際に助勢限界に到達したときに、ポンプ40によるブレーキシリンダ20の増圧が開始されるように、基準値F0 が操作力変化速度RFに応じて大きさが変化するようにされているのである。
【0042】
そして、具体的には、図11に示すように、操作力変化速度RFが0近傍、すなわち、判定値RF0 以下である通常ブレーキ操作時には、複数の大きさのうちの最小値F0(MIN)とされる。これに対して、通常ブレーキ操作時におけるより操作力変化速度RFが大きい急ブレーキ操作時には、操作力変化速度RFに応じて増加する複数の可変値F0(1),F0(2),・・・,F0(MAX)のうち操作力変化速度RFの今回値に対応する可変値F0(n)(n:1以上MAX値以下の整数)とされる。それら操作力変化速度RFの大きさと可変値F0(n)の大きさとの関係は、各操作力変化速度RFでブレーキ操作を行った場合に操作力Fがブースタ12が助勢限界に到達したときに取る大きさを実験的に取得することによって設定されている。
【0043】
以上概略的に説明した効き特性制御の内容を図5および図6のブレーキ効き特性制御ルーチンに基づいて具体的に説明する。
【0044】
本ルーチンは、運転者によりイグニションスイッチがOFF位置からON位置に操作された後、一定時間T0 毎に繰り返し実行される。各回の実行時にはまず、ステップS1(以下、単に「S1」で表す。他のステップについても同じとする。)において、操作力センサ202から操作力信号が取り込まれる。次に、S2において、その操作力信号に基づいて操作力Fの今回値が演算されるとともに、その今回値からそれの前回値(RAMに記憶されている)が引き算されることにより、操作力Fの変化量の絶対値が操作力変化速度RFとして演算される。その後、S3において、その操作力変化速度RFが判定値RF0 より大きいか否かが判定される。急ブレーキ操作時であるか否かが判定されるのである。今回は、通常ブレーキ操作時であるため、操作力変化速度RFが判定値RF0 より大きくはないと仮定すれば、判定がNOとなり、S4において、基準値F0 が前記最小値F0(MIN)とされる。これに対して、今回は、急ブレーキ操作時であるため、操作力変化速度RFが判定値RF0 より大きいと仮定すれば、S3の判定がYESとなり、S5において、基準値F0 が最小値F0(MIN)より大きい前記可変値F0(n)とされる。可変値F0(n)と操作力変化速度RFとの関係(図11)がROMに記憶されており、操作力変化速度RFの今回値に応じ、かつ、その関係に従って可変値F0(n)の今回値が決定されるのである。
【0045】
いずれの場合にも、その後、S6において、S2において演算された操作力Fの今回値が、S4またはS5において決定された基準値F0 以上であるか否かが判定される。ブースタ12が助勢限界に到達したか否かが判定されるのである。今回は、操作力Fの今回値が基準値F0 以上ではないと仮定すれば、判定がNOとなり、S7において、圧力制御弁30のソレノイド74にそれをOFFする信号が出力され、S8において、流入制御弁140のソレノイド214にそれをOFFにする信号が出力され、S9において、ポンプモータ210にそれをOFFする信号が出力される。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0046】
これに対し、今回は、操作力Fの今回値が基準値F0 以上であると仮定すれば、S6の判定がYESとなり、S10以下において、増圧制御が行われる。具体的には、まず、S10において、操作力Fの今回値に基づき、ブレーキシリンダ液圧PB をマスタシリンダ液圧PM より増圧すべき量、すなわち、マスタシリンダ14とブレーキシリンダ20との目標差圧ΔPが決定される。ROMには、図12にグラフで示すように、操作力Fの今回値の基準値F0 からの増分ΔFと目標差圧ΔPとの関係が記憶されており、その関係に従って目標差圧ΔPの今回値が決定されるのである。その関係は、ブースタ12の助勢限界後に、ブレーキシリンダ液圧PB が操作力Fに対して助勢限界前と同じ勾配でリニアに増加する関係が実現されるように設定されている。
【0047】
その後、S11において、決定された目標差圧ΔPに応じ、圧力制御弁30のソレノイド74に供給すべき電流値Iが決定される。目標差圧ΔPとソレノイド電流値Iとの関係がROMに記憶されており、その関係に従って目標差圧ΔPに対応するソレノイド電流値Iが決定されるのである。続いて、S12において、圧力制御弁30のソレノイド74に、決定されたソレノイド電流値Iで電流が供給されることにより、圧力制御弁30が制御される。その後、S13において、流入制御弁140が制御される。
【0048】
このS13の詳細が流入制御弁制御ルーチンとして図6にフローチャートで表されている。
【0049】
まず、S61において、現在アンチロック制御の実行中であるか否かが判定される。実行中ではないと仮定すれば判定がNOとなり、S62において、流入制御弁140のソレノイド214にそれをONする信号、すなわち、流入制御弁140を開かせるための信号が出力される。これにより、作動液がマスタシリンダ14から補給通路130を経てポンプ40に導入可能な状態となる。以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0050】
これに対し、現在アンチロック制御の実行中であると仮定すればS61の判定がYESとなり、S63において、リザーバ98においてポンプ40により汲み上げるべき作動液として存在する作動液の量の推定演算、すなわち,リザーバ残量の推定演算が行われる。続いて、S64において、推定されたリザーバ残量が0であるか否か、すなわち、リザーバ98においてポンプ40により汲み上げるべき作動液が存在しないか否かが判定される。今回はリザーバ残量が0ではないと仮定すれば、判定がNOとなり、S65において、流入制御弁140のソレノイド214にそれをOFFする信号、すなわち、流入制御弁140を閉じさせるための信号が出力される。一方、今回はリザーバ残量が0であると仮定すれば、S64の判定がYESとなり、S62において、流入制御弁140にそれを開かせるための信号が出力される。いずれの場合も、以上でこの流入制御弁制御ルーチンの一回の実行が終了する。
【0051】
なお付言すれば、この流入制御弁制御ルーチンにつき、リザーバ98における作動液の残量を直接センサにより検出する改良を加えることができる。残量は例えば、リザーバ98におけるリザーバピストン104に永久磁石を一体的に移動可能に設け、それに近接してセンサとしてのリードスイッチを設けることにより検出することができる。
【0052】
その後、図5のS14において、ポンプモータ210にそれをONする信号が出力される。それにより、ポンプ40によりリザーバ98から作動液が汲み上げられ、作動液が各ブレーキシリンダ20に吐出され、その結果、各ブレーキシリンダ20にマスタシリンダ液圧PM より目標差圧ΔPだけ高い液圧が発生させられる。以上でこのブレーキ効き特性制御ルーチンの一回の実行が終了する。
【0053】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、操作力センサ202が「操作状態量検出手段」を構成し、また、圧力制御弁30,ポンプ40およびポンプモータ210(アクチュエータ部)とECU200(制御部)とが「増圧装置」を構成しているのである。また、ECU200のうち図5のS1〜S5を実行する部分が「基準値変更手段」を構成しているのである。
【0054】
別の実施形態を説明する。ただし、本実施形態は、先の実施形態と共通する点が多く、異なるのはブレーキ効き特性制御ルーチンのみであるため、以下、そのルーチンのみを詳細に説明し、他の部分については同一の符号を使用することによって詳細な説明を省略する。
【0055】
図13には、ブレーキ効き特性制御ルーチンがフローチャートで表されている。まず、S101〜S105が、先の実施形態におけるS1〜S5と同様に実行される。次に、S106において、ブースタ12の負圧室に十分な強さの負圧が発生しないという異常がブースタ12に発生しているか否かが判定される。この異常判定は、ブースタ12が異常である場合にはブレーキの効きが低下するという事実と、ブレーキの効きの程度は、車体減速度Gを操作力Fで割り算することによって取得できるという事実とに基づいて行われる。
【0056】
このS106の詳細がブースタ異常判定ルーチンとして図14にフローチャートで表されている。まず、S201において、RAMに設けられている異常フラグが1であるか否かが判定される。異常フラグは、ブレーキペダル14の操作を検出する図示しないブレーキスイッチの出力信号に基づき、ブレーキ操作の開始毎に0に初期化される。今回は、異常フラグが0であると仮定すれば、判定がNOとなり、S202において、前記操作力信号に基づいて操作力Fが演算される。その後、S203において、演算された操作力FがS104またはS105において決定された基準値F0 より小さいか否かが判定される。基準値F0 以上である場合には、判定がNOとなり、本ルーチンの一回の実行が直ちに終了し、基準値F0 より小さい場合には、判定がYESとなり、S204以下の移行する。
【0057】
ブースタ12が助勢限界に到達した後にはブースタ12が正常であってもブレーキの効きが低下する。そのため、ブレーキの効きの程度を監視するだけでは、ブースタ12が正常であるが助勢限界に到達した場合とブースタ12が異常である場合とを区別することができない。そこで、ブースタ12が助勢限界に到達した可能性がある場合には、本ルーチンの実質的な実行が省略されるのである。
【0058】
S204においては、車体減速度Gが演算される。本実施形態においては、前記アンチロック制御ルーチンの実行により、車輪速センサ204により検出された各輪の車輪速に基づき、4輪分の車輪速のうち最大のものが真の車速に最も近いという事実を前提として推定車速が演算されるようになっており、このS204においては、RAMから推定車速が取り込まれるとともに、その推定車速の時間微分値として車体減速度Gが演算される。図15には、車輪速の検出から車体減速度Gの演算までの過程が機能ブロック図で示されている。各輪の車輪速センサ204の出力側が推定車速演算手段220の入力側に接続され、その推定車速演算手段220の出力側が車体減速度演算手段222の入力側に接続されている。そして、ECU200のうちこのS204を実行する部分が車体減速度演算手段222に対応している。
【0059】
その後、S205において、ブレーキの効きの程度を表すブレーキ効き係数Kが演算される。ブレーキ効き係数Kは、演算された車体減速度Gを演算された操作力Fで割り算することによって演算される。続いて、S206において、演算されたブレーキ効き係数Kがしきい値K0 より小さいか否かが判定される。ブースタ12が異常であることに起因してブレーキの効きが不足しているか否かが判定される。今回は、ブレーキ効き係数Kがしきい値K0 より小さいと仮定すれば、S207において、ブースタ12が異常であると判定され、S208において、異常フラグが1にされる。これに対して、今回は、ブレーキ効き係数Kがしきい値K0 より小さくはないと仮定すれば、判定がNOとなり、S209において、ブースタ12が正常であると判定され、S210において、異常フラグが0とされる。いずれの場合にも、以上で本ルーチンの一回の実行が終了する。
【0060】
なお、異常フラグが1とされた後には、S201の判定がYESとなり、S202〜S210がスキップされ、それにより、ブースタ12の異常判定結果が今回のブレーキ操作の終了まで維持される。
【0061】
その後、図13のS107において、S106においてブースタ12が異常であると判定されたか否かが判定される。今回は、異常であると判定されたと仮定すれば、判定がYESとなり、S108において、基準値F0 の大きさが0とされる。ポンプ40による増圧がブレーキ操作の開始と共に開始され、それにより、ブースタ12の異常に起因したブレーキの効き低下が補われるようになっているのである。これに対して、今回は、ブースタ12が正常であると判定されたと仮定すれば、S107の判定がNOとなり、S108がスキップされる。
【0062】
いずれの場合にも、その後、S109〜S117が先の実施形態におけるS6〜S14と同様にして実行される。
【0063】
なお付言すれば、ブースタ12が助勢限界に到達したか否かの判定は、マスタシリンダ液圧PM を用いて行うことが可能であり、そのようにした場合には、その判定結果がブースタ12の作動応答遅れの影響を受けずに済む。しかし、マスタシリンダ液圧PM のみによっては、ブースタ12の異常を判定することができない。これに対して、操作力Fや操作ストロークSによれば、車体減速度Gと共同することにより、ブースタ12の異常を判定可能となる。操作力Fや操作ストロークSはブースタ12への入力であり、一方、車体減速度Gはブースタ12からの出力であって、それら入力と出力との関係が分かれば、ブースタ12の作動状態を判定可能であるからである。以上要するに、操作力Fや操作ストロークSを用いる場合には、ブースタ12の異常判定を行い得るという利点がある反面、ブースタ12の作動応答遅れの影響を受けてしまうという欠点があるのであるが、本実施形態においては、基準値F0 をその作動応答遅れの程度に応じて変化させることにより、欠点が解消されているのである。
【0064】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、操作力センサ202が「操作状態量検出手段」を構成し、また、圧力制御弁30,ポンプ40およびポンプモータ210(アクチュエータ部)とECU200(制御部)とが「増圧装置」を構成しているのである。また、ECU200のうち図13のS101〜S105を実行する部分が「基準値変更手段」を構成しているのである。
【0065】
以上、本発明のいくつかの実施形態を図面に基づいて詳細に説明したが、それらの他にも、特許請求の範囲を逸脱することなく、当業者の知識に基づいて種々の変形,改良を施した形態で本発明を実施することができるのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態であるブレーキ装置を示す系統図である。
【図2】図1における圧力制御弁30の構造および作動を説明するための正面断面図である。
【図3】図2の圧力制御弁におけるソレノイド励磁電流Iとソレノイド吸引力F1 との関係を示すグラフである。
【図4】上記ブレーキ装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図5】図4におけるECU200のコンピュータのROMに記憶されているブレーキ効き特性制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】図5におけるS13の詳細を流入制御弁制御ルーチンとして示すフローチャートである。
【図7】バキュームブースタを備えた一般的なブレーキ装置における操作力Fとブレーキシリンダ液圧PB との関係を示すグラフである。
【図8】上記実施形態であるブレーキ装置における効き特性制御の原理を説明するためのグラフである。
【図9】増圧開始時期を決める基準値F0 を通常ブレーキ操作のみを想定して固定値として設定した場合の操作力Fとマスタシリンダ液圧PM と増圧開始点との関係を説明するためのグラフである。
【図10】上記実施形態における操作力Fとマスタシリンダ液圧PM と増圧開始点との関係を説明するためのグラフである。
【図11】上記実施形態における操作力変化速度RFと基準値F0 との関係を示すグラフである。
【図12】上記実施形態における操作力Fの基準値F0 からの増分ΔFと目標差圧ΔPとの関係を示すグラフである。
【図13】本発明の別の実施形態であるブレーキ装置のECUのコンピュータのROMに記憶されているブレーキ効き特性制御ルーチンを示すフローチャートである。
【図14】図13におけるS106の詳細をブースタ異常判定ルーチンとして示すフローチャートである。
【図15】上記実施形態において車輪速センサを用いて車体減速度が演算される過程を示すブロック図である。
【図16】本出願人が先に開発したブレーキ装置における操作力Fとマスタシリンダ液圧PM との関係が通常ブレーキ操作時と急ブレーキ操作時とで変化する様子を示すグラフである。
【図17】上記開発ブレーキ装置において上記関係が変化することに起因して増圧開始点が変化する様子を示すグラフである。
【符号の説明】
10 ブレーキペダル
12 バキュームブースタ
14 マスタシリンダ
20 ブレーキシリンダ
30 圧力制御弁
40 ポンプ
200 ECU
202 操作力センサ

Claims (2)

  1. 運転者により操作されるブレーキ操作部材と、
    そのブレーキ操作部材の操作に基づいて液圧を発生させるマスタシリンダと、
    前記ブレーキ操作部材の操作力を助勢して前記マスタシリンダに出力するブースタと、
    前記マスタシリンダと液通路により接続され、その液通路から供給される液圧により作動するブレーキシリンダを有し、車輪の回転を抑制するブレーキと
    を含むブレーキ装置において、
    前記ブレーキ操作部材の操作力と操作ストロークとの少なくとも一方である操作状態量を検出する操作状態量検出手段と、
    検出された操作状態量が基準値に到達したときに、前記ブレーキシリンダの液圧を前記マスタシリンダの液圧より増圧することを開始する増圧装置であって、前記基準値を、前記操作状態量の変化速度が大きい場合において小さい場合におけるより大きくなるように変化させる基準値変更手段を含む増圧装置と
    を設けたことを特徴とするブレーキ装置。
  2. 前記基準値が、前記ブースタが助勢限界に到達したときに前記操作状態量が取る大きさを有するものである請求項1に記載のブレーキ装置。
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