JP3538984B2 - 塩素化有機化合物の分解方法 - Google Patents

塩素化有機化合物の分解方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、塩素化有機化合物
の分解方法に関するものであり、詳しくは、都市ごみや
産業廃棄物などの燃焼に伴って発生するダイオキシン等
の塩素化有機化合物を、バナジウム及びモリブデンを含
む酸化物触媒に接触させて分解する方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】都市ごみや産業廃棄物などの燃焼排ガス
中には、通常ダイオキシンやその前駆体と考えられる芳
香族塩素化合物などの塩素化有機化合物が含有されてい
る。一般に塩素化有機化合物は程度の差はあるが、毒性
が強く、特にダイオキシンは動植物に対して催奇性など
の著しい悪影響を与える程の猛毒であり、燃焼排ガス中
のその含有量を極力減少させることが必要である。その
ため、このダイオキシン等の塩素化有機化合物の除去法
が、例えば活性炭吸着法、熱分解法、或いは接触分解法
等種々提案されている。その中で、接触分解法は500
℃以下の条件で処理を行うことが出来る優れた方法であ
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来提
案された接触分解法における触媒は、燃焼排ガス中に含
まれている窒素酸化物、硫黄酸化物、重金属ヒューム等
の不純物に対し、耐久性が欠けると言う問題がある。ま
た、従来の白金やパラジウムを用いる触媒は高価であ
る。
【0004】本発明は、上記のような実情に鑑みなされ
たものであり、その目的は、不純物に対して耐久性があ
り、かつ比較的安価な触媒を使用した経済的に有利な塩
素化有機化合物の分解方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明の要旨
は、塩素化有機化合物を含有するガスを100〜50
0℃の温度において、1〜15vol%の酸素の存在
下、チタニアを担体とし、これに対し2〜40wt%の
バナジウム酸化物と0.3〜40wt%のモリブデン酸
化物とを担持してなり、かつバナジウム酸化物に対する
モリブデン酸化物の重量比が0.1〜1である酸化物触
媒と接触させることを特徴とする塩素化有機化合物の分
解方法に存する。
【0006】
【発明の実施の形態】以下、本発明の構成について詳細
に説明する。本発明で処理の対象とする排ガスとして
は、例えば都市ごみや産業廃棄物などの燃焼排ガス等が
挙げられる。このような燃焼排ガスには、通常、2,
3,7,8−テトラクロロジベンゾダイオキシン、2,
3,4,7,8−ペンタクロロジベンゾフランで代表さ
れるダイオキシン類が10〜40ng/Nm3 含まれて
いる。更に、これらダイオキシン類の前駆体であるモノ
クロロベンゼン、ジクロロベンゼン又はo−クロロフェ
ノール、クロロベンゾフラン等の塩素化有機化合物も含
まれている。
【0007】本発明においては、塩素化有機化合物の分
解触媒として、バナジウム及びモリブデンを含む酸化物
触媒を使用する。このような酸化物触媒は、特に硫黄酸
化物に対する耐被毒性に優れている。酸化物触媒は、通
常、担体に担持して使用されるが、その担体としては、
シリカ、アルミナ、珪藻土等を使用することも出来る
が、チタニア(TiO2 )を使用するのが好ましい。特
に、燃焼排ガス中に硫黄酸化物が含まれている場合に
は、チタニアを用いるのが好ましい。
【0008】バナジウム酸化物の担持量は担体に対し、
通常0.5〜50wt%、好ましくは2〜40wt%で
ある。また、モリブデン酸化物の担持量は担体に対し、
通常0.1〜50wt%、好ましくは0.3〜40wt
%である。更に、バナジウム酸化物に対するモリブデン
酸化物の含有量は、通常0.1〜1重量倍、好ましくは
0.1〜0.7重量倍である。
【0009】触媒の大きさ及び形状は、一般に、原料性
状、ダストの有無、ガス量、反応器の大きさ等により決
定される。そして、触媒の形状としては、円柱状、球
状、ハニカム状、板状などが挙げられる。円柱状または
球状の担持触媒を調製する場合、例えば、I)蓚酸水溶
液に五酸化バナジウム(V2 5 )及びパラモリブデン
酸アンモニウム((NH4 6 〔Mo7 24〕・22H
2 O)を溶解し、II)この混合水溶液中に例えば円柱状
または球状の成形担体を3〜10時間含浸し、III)液切
りし、IV)40〜150℃で3〜50時間乾燥後、V)
空気気流中、空間速度(以下SVと略称する)100〜
2000h-1、温度450〜650℃の条件下にて焼成
する方法を用いることができる。
【0010】また、ハニカム状又は板状の担持触媒を調
製する場合は、所望形状の基材上にまず担体成分をコー
ティングし、その上で、この担体成分に上記と同様の方
法で触媒成分を担持する方法を用いることができる。図
1に担体としてチタニアを用いたハニカム状の触媒の調
製方法を例示する。基材の材質は特に限定されるもので
はないが、格子状などの押出成形品にはコージェライト
等が使用され、コルゲート品にはアルミナ、シリカ等の
無機繊維などが使用される。コーティングすべきチタニ
アをスラリーとして使用する場合は、通常粘結性のある
チタニアゾルをチタニア粉末とともに分散させたスラリ
ーを用いるのが好ましい。しかしながら、担持量が少量
の場合は、チタニア粉末を水溶液に分散させたスラリー
のみでもよい。
【0011】バナジウム酸化物の原料としては、特に限
定されないが、五酸化バナジウム(V2 5 )粉末を使
用することが好ましい。これを蓚酸水溶液に溶解してバ
ナジウム担持用液とする。モリブデン酸化物の原料につ
いても特に限定されないが、パラモリブデン酸アンモニ
ウムが好ましく、これを熱水または蓚酸水溶液等に溶解
してモリブデンの担持用液とする。担持用液は、沈殿生
成や反応等の不都合がない限り、原料を混合して調製し
ても、また調製後の担持用液を混合して使用してもよ
い。
【0012】バナジウム担持用液とモリブデン担持用液
とを別々に使用する場合の担持方法としては、先ず、例
えばバナジウム担持用液に担体を含浸後、乾燥し、焼成
してV2 5 担持触媒を調製し、次にモリブデン担持用
液に前記のV2 5 担持触媒を含浸後、乾燥し、焼成す
る方法を採用することが出来る。ハニカム触媒のような
形状の触媒を製造する場合は、上記のようにハニカムを
構成する基材上にチタニア等の担体成分及び触媒成分を
担持する方法の他に、担体成分と触媒成分もしくはその
原料とを成形助剤とともに混練した後に、押出成形法等
の成形法によりハニカム状等の所望の形状に賦形しても
よい。
【0013】ハニカム触媒等の基材を用いた触媒におい
て、担体成分としてチタニアの他に、例えばシリカ(S
iO2 )やアルミナ(Al2 3 )等を併用してもよい
が、その際のチタニアの量は、製造後の触媒重量中の3
0wt%以上とするのがよい。また、担体成分及び触媒
成分の合計量は、製造後の触媒重量の5〜70wt%、
好ましくは10〜50wt%とするのがよい。
【0014】本発明においては、上記の様に調製して得
られた触媒を使用し、100〜500℃、好ましくは1
50〜400℃の温度において、0.5〜25vol
%、好ましくは1〜15vol%の酸素の存在下、塩素
化有機化合物を分解する。温度が100℃未満では分解
反応が起きにくく、500℃を超えると分解は進行する
が、熱消費量が多く、触媒の耐久性にも支障を来す恐れ
が大きい。
【0015】分解時の圧力は、ゲージ圧で通常0〜9k
g/cm2 、好ましくは0.01〜5kg/cm2 であ
る。また、SVは、通常100〜50000h-1、好ま
しくは1000〜20000h-1である。上記の接触分
解前のガス中にアンモニアガスを導入すると塩素化物の
除去と同時に窒素化合物の分解も可能である。更に、処
理対象のガス中に多少の水分が含まれていても塩素化物
の分解には影響がなく、従ってこのような点からも、本
発明における触媒は実用上好ましい。
【0016】塩素化有機化合物の処理は、通常、燃焼排
ガスをバグフィルターに通して粉塵などを除去した後に
行われ、分解処理後の排出ガスはアルカリ洗浄塔により
酸性ガスを除去した後、大気に放出する。ただし、粉
塵、重金属が少ない燃焼排ガスの場合は、バグフィルタ
ーによる前処理を省略することも出来る。
【0017】
【実施例】以下、本発明を実施例により更に詳細に説明
するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施
例により限定されるものではない。 実施例1 <触媒調製>チタニア粉20.7重量部、チタニアゾル
32.7重量部および1.0wt%硝酸水溶液150重
量部をボールミルに入れ、回転数100rpmで24時
間処理し、固体分濃度16.2wt%のチタニアスラリ
ーを調製した。このチタニアスラリーに、基材として、
有効表面積20.5cm2 /cm3 、開孔率73%、セ
ル数205セル/inch2 、容積30mlのセラミッ
ク繊維状ハニカム(ニチアス社製)を浸漬した後、空気
ブローを行った。そして、この浸漬および空気ブローを
3回繰り返し、前記のハニカム基材にチタニアをコーテ
ィングしてチタニア担体を製造した。次いで、150℃
で一夜乾燥後、700℃で3時間焼成した。
【0018】水100mlに五酸化バナジウム20g、
パラモリブデン酸アンモニウム4.9g及び蓚酸46g
を溶解した水溶液(担持用液)に上記のコーティングで
得たチタニア担体を室温で3時間浸漬し、液切り後、6
0℃で5時間、120℃で一夜それぞれ乾燥し、更に5
00℃で3時間焼成した。この様にして調製した触媒
(触媒A)の組成は、V2 5 6.9wt%、MoO3
1.4wt%、TiO234.0wt%、残部はハニカ
ム基材であった。
【0019】<活性試験>ガラス製反応器に上記の触媒
30ccを充填し、常圧固定床流通反応装置で活性試験
を行った。触媒固定床の寸法は、縦26mm、横26m
m、高さ44mmであった。原料ガス組成は、モノクロ
ロベンゼン(MCB)100ppm、一酸化窒素(N
O)100ppm、O2 10vol%、残りはN2 であ
った。この原料ガスをSV5000h-1で通しながら昇
温し、200℃、250℃、300℃、350℃、40
0℃の各温度で1時間保持した後、反応装置通過ガスを
マイクロシリンジでサンプリングし、ガスクロマトグラ
フィー法で分析した。分析法は絶対検量線法で行った。
結果を表−1に示す。なお、表−1中の各記号の意義は
表−3に示す通りである。
【0020】実施例2 実施例1において、原料ガスにアンモニアを100pp
m加えたこと以外は、実施例1と同様な方法で触媒の活
性試験を行った。結果を表−1に示す。 実施例3 実施例1において、N2 ガスの一部を水分に代えること
により水分含有量を12vol%とした原料ガスを使用
し、温度200℃における試験の前に150℃の試験を
行ったこと以外は実施例1と同様にして触媒の活性試験
を行った。結果を表−1に示す。
【0021】実施例4 実施例1において、バナジウム及びモリブデン担持用液
中のバナジウム及びモリブデンの濃度を変えたこと以外
は実施例1と同様な方法によって触媒(触媒B)を調製
した。得られた触媒の組成は、V2 5 6.6wt%、
MoO3 5.2wt%、TiO2 32.9wt%であっ
た。この触媒を用いて、温度200℃における試験の前
に150℃の試験を行ったこと以外は実施例1と同様に
して触媒の活性試験を行った。結果を表−1に示す。
【0022】比較例1 実施例1において、パラモリブデン酸アンモニウムを使
用せず、五酸化バナジウムを単独で使用して実施例1と
同様な方法でモリブデンを含まない触媒(触媒C)を調
製した。得られた触媒の組成は、V2 5 8.8wt
%、TiO2 37.1wt%であった。この触媒につい
て実施例1と同様な方法で触媒の活性試験を行った。結
果を表−1に示す。
【0023】比較例2 比較例1の触媒(触媒C)を使用し、原料ガスにアンモ
ニアを100ppm加えたこと以外は実施例1と同様な
方法で触媒の活性試験を行った。結果を表−1に示す。 比較例3 比較例1の触媒(触媒C)を使用し、実施例1において
2 ガスの一部を水分に代えることによって水分含有量
が12vol%の原料ガスを用いたこと以外は実施例1
と同様な方法で触媒の活性試験を行った。結果を表−1
に示す。
【0024】実施例5 実施例1の触媒(触媒A)を使用し、都市ゴミ焼却炉の
排ガスの処理試験を行った。試験装置としては、実施例
1と同様の活性試験装置を使用し、ポリ塩化ジベンゾダ
イオキシン類(PCDDs)118.4ng/Nm3
ポリ塩化ジベンゾフラン類(PCDFs)902ng/
Nm3 及び窒素酸化物(いわゆるNOX)75ppmを
含有する排ガスを、温度200℃で触媒Aの充填層をS
V3000h -1で通過させることにより、ガス中の塩素
化有機化合物及びNOXの分解を連続的に行った。処理
後の排ガスの分析は実施例1と同様にして行った。
【0025】処理後の排ガス中の塩素化有機化合物とN
OXとの含有量及び分解率を表−2に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
【表3】 (表−3) A :V2 5 6.9wt%、MoO3 1.4wt% TiO2 34.0wt% B :V2 5 6.6wt%、MoO3 5.2wt% TiO2 32.9wt% C :V2 5 8.8wt%、TiO2 37.1wt% MCB:モノクロロベンゼン
【0029】上記の実施例1〜4から明らかな様に、バ
ナジウム及びモリブデンを含む混合酸化物触媒により、
モノクロルベンゼンの分解反応(脱塩素化反応)が起こ
ることが判る。また、実施例5より、燃焼排ガス中で特
に問題となるダイオキシン等の塩素化有機化合物の分解
も効率的に行われることが判る。また、アンモニアを導
入すると、窒素酸化物も同時に除去可能である。上記の
効果はバナジウム酸化物触媒単独よりも、本発明方法に
用いるバナジウム・モリブデン混合酸化物触媒のほうが
高い。
【0030】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明方法の、低コ
ストでしかも不純物に耐久性のある、バナジウムとモリ
ブデンとを含む混合酸化物触媒を使用することにより、
社会的に問題になっている都市ごみや産業廃棄物などの
燃焼排ガス中のダイオキシン等の有害な塩素化有機化合
物の除去に有効な方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】チタニア担持触媒の調製工程の一例を示すフロ
ーチャート図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B01D 53/86 B01J 23/28

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 塩素化有機化合物を含有するガスを
    00〜500℃の温度において、1〜15vol%の酸
    素の存在下、チタニアを担体とし、これに対し2〜40
    wt%のバナジウム酸化物と0.3〜40wt%のモリ
    ブデン酸化物とを担持してなり、かつバナジウム酸化物
    に対するモリブデン酸化物の重量比が0.1〜1である
    酸化物触媒と接触させることを特徴とする塩素化有機化
    合物の分解方法。
  2. 【請求項2】 酸化物触媒が、ハニカム状又は板状の基
    体上に形成されたチタニア担体にバナジウム酸化物及び
    モリブデン酸化物を担持してなることを特徴とする請求
    項1記載の分解方法。
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