JP3537019B2 - 車体パネルのブレージング方法 - Google Patents

車体パネルのブレージング方法

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内 五十八 竹
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、自動車ボディの組
立てにおいて、車体パネルの継ぎ目部分を平滑化して車
体の外観を向上させるために施される車体パネルのブレ
ージング方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】自動車ボディの組立てに際して、例えば
図3に示すように、ルーフパネルRとリヤフェンダーパ
ネルF,ルーフパネルRとピラーパネルPなどの車体パ
ネルをスポット溶接などにより溶接したのち、これらパ
ネル材同士の重ね合わせ部分を平滑にしてパネルの一体
感を増し、車体の外観を向上させるためにパネルの継ぎ
目部Jをブレージングによって埋めるようにしている。
なお、自動車ボディの組立てにおけるこのようなブレー
ジングについては、例えば1991年9月1日に社団法
人自動車技術会から発行された「自動車技術ハンドブッ
ク〈第4分冊〉」の第153〜155頁に記載されてい
る。
【0003】しかし、ブレージングによってパネルに急
激な温度変化が発生するため、ブレージング近傍部に熱
歪みによる変形が生じることがあり、このような場合に
は、叩き出しなどによって矯正作業を行う必要がある。
【0004】そこで、例えば特開平8−267230号
公報(特願平7−76609)には、パネル材のブレー
ジング近傍部を誘導加熱装置を用いて加熱することによ
り、ブレージング周辺部における温度分布の不均衡を解
消し、もって熱歪みの発生を防止するブレージング方法
が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記公
報に記載されたしたブレージング方法においては、誘導
加熱によってパネル材を加熱している関係上、実際の車
体組み立てラインで採用するには、搬送されてくる車体
ごとに誘導加熱装置を取付け、温度管理をしながらブレ
ージングを行わなければならないので、作業者の負担が
増すと共に、やけど等の可能性があるという問題点があ
った。また、誘導加熱装置は、車体パネルに押し当てる
ことによってパネルが加熱される構造となっており、車
種ごとに形状が異なるため、多車種混流の組み立てライ
ンにおいては、車種ごとに加熱装置を選択して取り換え
ねばならず、それぞれの形状に応じた装置を準備してお
かねばならないので、設備投資が多額なものとなるとい
う問題点があり、このような問題点を解決することが従
来のブレージング方法において車体パネルを予熱(加
熱)する場合の課題となっていた。
【0006】
【発明の目的】本発明は、従来の車体パネルのブレージ
ング方法における上記課題に着目してなされたものであ
って、組み立てライン上を搬送されてくる車体ごとに加
熱装置を取付けることなく、車体パネルの継ぎ目部、す
なわちブレージング部を所定温度に予熱したのち、ブレ
ージングを施すことができ、多車種混流の車体組み立て
ラインにも無理なく適用することができる車体パネルの
ブレージング方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1に係わ
る車体パネルのブレージング方法は、連続、あるいは間
欠的に搬送される車体の外殻を構成するパネルの継ぎ目
部にブレージングを施すに際し、ブレージング作業位置
の上流側に配設した熱風ヒータにより当該パネルの継ぎ
目部を予熱し、次いで熱風ヒータの下流側のブレージン
グ作業位置で継ぎ目部にブレージングを施す構成とした
ことを特徴としており、このような車体パネルのブレー
ジング方法の構成を前述した従来の課題を解決するため
の手段としている。
【0008】また、本発明に係わる車体パネルのブレー
ジング方法の実施態様として請求項2に係わるブレージ
ング方法においては、継ぎ目部の予熱に際して、熱風ヒ
ータからの熱風により継ぎ目部に付着した油などの有機
物を燃焼させる構成とし、同じく実施態様として請求項
3に係わる車体パネルのブレージング方法においては、
パネルの最高加熱温度が180℃以下であると共に、継
ぎ目部のパネル温度が50〜80℃の温度範囲に低下し
たときにブレージングを施す構成とし、請求項4に係わ
る車体パネルのブレージング方法においては、車体の種
類に応じて熱風ヒータの熱風吹出し口を移動させる構成
とし、車体パネルのブレージング方法におけるこのよう
な構成を前述した従来の課題を解決するための手段とし
たことを特徴としている。
【0009】
【発明の効果】本発明の請求項1に係わる車体パネルの
ブレージング方法においては、車体パネルの継ぎ目部に
ブレージングを施すに際して、車体組み立てラインにお
けるブレージング作業位置の上流側に配設した熱風ヒー
タによってブレージング部、すなわち車体パネルの継ぎ
目部を加熱したのちブレージングを施すようにしている
ので、非接触で車体パネルを加熱することができ、車体
ごとに加熱装置を取り換えたり、車体ごとに異なる加熱
装置を多数用意したりすることなく、組み立てライン上
を搬送されてくる車体パネルのブレージング部を効率的
に加熱することができ、ブレージングによる車体パネル
の変形を防止することができるという極めて優れた効果
がもたらされる。
【0010】本発明に係わる車体パネルのブレージング
方法の実施態様として請求項2に係わるブレージング方
法においては、継ぎ目部の加熱と同時に、熱風ヒータか
ら吹出される熱風によって当該継ぎ目部に付着したごみ
や防錆油などの有機物を燃焼させるようにしているの
で、これらの燃焼や分解ガスに基づくブレージング金属
のピンホール発生を防止することができ、同じく実施態
様として請求項3に係わるブレージング方法において
は、パネル材の最高加熱温度が180℃以下であって、
継ぎ目部におけるパネル温度が50〜80℃の温度範囲
に低下したときにブレージングを開始するようにしてい
るので、パネルの熱歪みを確実に防止することができ、
請求項4に係わるブレージング方法においては、車体の
種類に応じて熱風ヒータの熱風吹出し口を移動させるよ
うにしているので、車種によってブレージング位置が相
違したとしても、それぞれの車体パネルを効率的に予熱
して、歪みのないブレージングが可能になると共に、モ
デルチェンジにも容易に対応することができるいう極め
て優れた効果がもたらされる。
【0011】
【発明の実施の形態】図1および図2は、本発明に係わ
る車体パネルのブレージング方法の一実施形態を説明す
るためのものであって、図1は本発明に係わる車体パネ
ルのブレージング方法を適用した車体組み立てラインに
おけるブレージング工程のレイアウトを示す平面図であ
る。
【0012】図1に示すように、ブレージング工程は、
予熱ステージIとブレージングステージIIからなり、予
熱ステージIには、搬送路の左右位置にそれぞれ5基の
熱風ヒータ1が配置されていると共に、ブレージングス
テージIIには、搬送路の左右位置にそれぞれ1基の溶接
ロボット2が配設されており、この溶接ロボット2,2
によって、搬送されてくる車体の外板パネルの左右両側
にミグブレージングが施されるようになっている。
【0013】前工程において、アンダーボデーにボデー
サイド,ルーフなどが取付けられ、増打ちによって車体
強度を付与された車体Bは、当該ブレージング工程に搬
入され、車体Bが予熱ステージIに到達すると、図2に
示すように、左右の熱風ヒータ1がそれぞれ車種に応じ
た距離だけ車体Bに接近し、熱風吹出し口1aから吹出
される熱風により、例えばルーフパネルRとリヤフェン
ダーパネルFの間の継ぎ目部Jの近傍位置が加熱され、
同時に、この熱風によって継ぎ目部Jに付着した防錆油
やごみなどが燃焼する。
【0014】このときの車体パネルの加熱温度として
は、請求項3に記載したように、最高加熱温度が180
℃以下であって、この温度に加熱されたパネルの温度
が、車体Bが予熱ステージIからブレージングステージ
IIに移動する間に50〜80℃の温度範囲に低下し、こ
の温度域でブレージングを施すようになすことが望まし
い。これは、パネルの加熱温度が180℃を超えた場合
には、パネル材に熱歪みが生じやすくなることによる。
また、パネル材の温度が80℃を超えているときにブレ
ージングを行うと、とけこみが増大して巣穴が発生しや
すくなると共に、ブレージングのアークによってブレー
ジングの開始点においてパネルに孔があいてしまうよう
な不具合が発生しやすくなることによる。パネル材温度
が50℃に満たないときにブレージングを行うと、とけ
こみが劣化して仕上げ時にブレージング金属が脱落しや
すくなったり、スパッタが発生しやすくなって塗装品質
の劣化を引き起こしたりすることによる。
【0015】なお、パネル温度をこのように制御するに
は、予熱ステージI(熱風ヒータ)からブレージングス
テージII(ブレージング作業位置)までの距離(車体の
移動時間)を考慮して、熱風ヒータから吹き出される熱
風の温度や熱風ヒータの作動時間(熱風ヒータの設置
数)を車種に応じて調整することによって行う。
【0016】また、ブレージング金属部に発生するピン
ホールに対するごみや防錆油などの悪影響を排除する観
点から、ブレージングが施される継ぎ目部に付着した防
錆油などの異物を燃焼させるためには、熱風ヒータから
吹き出す熱風の温度を300℃以上に設定することが望
ましい。
【0017】車体パネルの継ぎ目部Jが所定時間加熱さ
れ、所定の温度に加熱されたら、熱風ヒータ1の作動を
停止し、熱風ヒータ1を後退させることによって熱風吹
出し口1aを車体Bから離間させ、次に搬入される車体
の加熱に備える。なお、図2においては、熱風ヒータ1
を車体Bに対して水平方向に移動可能に配設したものを
示したが、熱風ヒータ1をさらに上下方向にも移動する
ようにできることは言うまでもない。
【0018】車体パネルの継ぎ目部部Jの加熱を終えた
車体Bは、搬送路に沿って図中左側に搬送され、ブレー
ジングステージIIにおいて、両側に配設された溶接ロボ
ット2,2によって、継ぎ目部Jにミグブレージングが
施される。
【0019】ブレージングを終えた車体Bは、次工程に
搬送され、ブレージング金属の余盛部がグラインダやサ
ンダによって削除され、両パネルR,Fの継ぎ目部分が
平滑に仕上げられる。
【0020】
【実施例】この実施例においては、熱風ヒータ1の熱風
温度を約350℃に設定し、搬送路上を移動する車体B
のルーフパネルRとリヤフェンダーパネルFの間の継ぎ
目部Jに対して約40秒間熱風を吹き付けることによっ
て当該部分のパネルを加熱した。
【0021】この結果、継ぎ目部Jにおけるパネル温度
は約150℃にまで達し、加熱を停止したのち約3分後
に車体BがブレージングステージIIに到達したときに
は、パネル温度が約70℃に低下していた。
【0022】そして、この温度において、溶接ロボット
2,2によって継ぎ目部Jにミグブレージングを施した
結果、パネルの変形やブレージング部のピンホールが大
幅に減少することが判明した。
【0023】すなわち、このような加熱条件を採用する
ことによって車体パネルの予熱を行ったのちブレージン
グを施した場合、ピンホール発生に基づくサンダ掛けの
工数、およびパネル変形に基づく叩き出しの工数が、熱
風ヒータ1の導入前に較べて、それぞれ半分以下に減少
することが確認された。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる車体パネルのブレージング方法
を適用した車体組み立てラインの一例を示す概略平面図
である。
【図2】熱風ヒータによる車体パネルの予熱状況を示す
概略説明図である。
【図3】(a) 車体のブレージング適用箇所を示す車
体パネルの側面図である。 (b) 図3(a)に示した車体パネルの背面図であ
る。 (c) ブレージング適用箇所の形状を示す車体パネル
の断面図である。
【符号の説明】 1 熱風ヒータ 1a 熱風吹出し口 II ブレージングステージ(ブレージング作業位置) B 車体 R ルーフパネル(車体パネル) F リヤフェンダーパネル(車体パネル) J 継ぎ目部(ブレージング部)
フロントページの続き (72)発明者 竹 内 五十八 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日 産自動車株式会社 内 (56)参考文献 特許3327441(JP,B2) 特許2682507(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 31/02

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 連続、あるいは間欠的に搬送される車体
    の外殻を構成するパネルの継ぎ目部にブレージングを施
    すに際し、ブレージング作業位置の上流側に配設した熱
    風ヒータにより当該パネルの継ぎ目部を予熱し、次いで
    熱風ヒータの下流側のブレージング作業位置で継ぎ目部
    にブレージングを施すことを特徴とする車体パネルのブ
    レージング方法。
  2. 【請求項2】 継ぎ目部の予熱に際して、熱風ヒータか
    らの熱風により継ぎ目部に付着した油などの有機物を燃
    焼させることを特徴とする請求項1記載の車体パネルの
    ブレージング方法。
  3. 【請求項3】 パネルの最高加熱温度が180℃以下で
    あると共に、継ぎ目部のパネル温度が50〜80℃の温
    度範囲に低下したときにブレージングを施すことを特徴
    とする請求項1または請求項2記載の車体パネルのブレ
    ージング方法。
  4. 【請求項4】 車体の種類に応じて熱風ヒータの熱風吹
    出し口を移動させることを特徴とする請求項1ないし請
    求項3のいずれかに記載の車体パネルのブレージング方
    法。
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