JP3535247B2 - 液体封入式防振装置 - Google Patents

液体封入式防振装置

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JP3535247B2
JP3535247B2 JP33833394A JP33833394A JP3535247B2 JP 3535247 B2 JP3535247 B2 JP 3535247B2 JP 33833394 A JP33833394 A JP 33833394A JP 33833394 A JP33833394 A JP 33833394A JP 3535247 B2 JP3535247 B2 JP 3535247B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、内部に封入された流体
(液体)の流動作用に基づいて防振効果の得られるよう
にした液体封入式の防振装置に関するもであり、特に、
オリフィスを通じて液体の導入される副室を、第一副室
及び第二副室の二つの副室からなるようにするととも
に、これら各副室に導入される液体の状態に差異をもた
せ、これによって、低動バネ特性と高減衰特性とが得ら
れるようにした液体封入式の防振装置に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】防振装置のうち、特に、自動車用のエン
ジンマウント等にあっては、動力源であるところのエン
ジンが、アイドリング運転の状態から最大回転速度まで
の間、種々の状況下で使用されるため、防振装置として
は広い範囲の周波数に対応できるものでなければならな
い。一般に、エンジンマウントとしての防振装置は、エ
ンジンの爆発燃焼に起因するトルク変動を対象としたア
イドリング振動、あるいはエンジンとエンジンマウント
との共振現象を対象としたシェーク等の振動を遮断する
ことを目的に、系の設定(チューニング)が行なわれて
いる。しかしながら、これらの振動を防振(遮断)する
ためには、バネ定数を選定することによって共振現象を
避けるようにする場合と、共振現象を避けることは難し
いので、減衰係数を大きくすることによって車体側への
振動伝播を遮断するようにする場合とが考えられる。こ
れら複数の条件に対応させるため、副室を二つ設けると
ともに、オリフィスも二種類用意し、これによってアイ
ドリング振動とエンジンシェークとに対処するようにし
た液体封入式の防振装置が、すでに案出されており、例
えば特開平4−25634号公報等により公知となって
いる。
【0003】ところで、この公知のものは、副室を二つ
設けるために、仕切板、ゴム材等からなる弾性隔壁、及
びダイヤフラム等の部品(部材)が必要とされる。そし
て、これら三つの部材を、複雑な組付(組立)工程を経
ることによって組付けねばならないという問題点があ
る。また、当該公知のものは、エンジンアイドリング振
動及びエンジンシェーク等、比較的低周波数の振動、例
えば10Hzないし30Hz程度の振動の遮断に寄与す
るものである。しかしながら、最近の自動車、特に乗用
車においては、これら周波数域の振動よりも高周波数域
(100Hzないし600Hz)の振動である、こもり
音等のエンジンノイズに関する振動・騒音が問題とされ
ている。これらの比較的高周波数域の振動遮断を図るた
めには、これら周波数域において低動バネ定数(低動バ
ネ特性)を形成させる必要がある。この低動バネ特性が
得られるようにするため、上記主室内の液圧上昇を回避
するための弾性隔膜を有する液体封入式のマウント装置
が、すでに開発されており、例えば特開平2−1294
27号公報により公知となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、この公知の
ものは、一部にオリフィスを形成する仕切板を2枚設
け、この仕切板の一方側(上方側)に大きな開口部を設
けるとともに、この開口部のところに、上記弾性隔膜を
設けるようにした構成からなるものである。従って、こ
の公知のものは、二枚の仕切板、及び低動バネ特性を形
成させるための弾性隔膜、更にはダイヤフラムと、多く
の部品を必要とするものであり、組立工程が煩雑になる
という問題点を有する。これらの問題点を解決するため
に、部品点数の少ない構成からなる液体封入式の防振装
置を提供しようとするのが、本発明の目的(課題)であ
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明においては次のような手段を講ずることとし
た。すなわち、振動体側に連結される上部連結金具と、
車体側のメンバ等に連結される下部連結金具と、これら
両連結金具の間にあって、上記振動体からの振動を遮断
するインシュレータと、当該インシュレータに対して直
列に設けられ、かつ、非圧縮性流体(液体)の封入され
る主室及び副室と、これら主室と副室との間において液
体を流通させるオリフィスと、上記主室と副室との間を
仕切る一枚の仕切板と、圧縮性流体である空気の導入さ
れる空気室と、当該空気室と上記副室との間を仕切る
枚の円盤状の弾性仕切り部材とから成り、この弾性仕切
り部材の底面部はダイヤフラムから成り、上記弾性仕切
り部材の外周部は取付け用のフランジから成る液体封入
式の防振装置に関して、上記弾性仕切り部材の底面部
に、上方に突出し、上記弾性仕切り部材の径方向に沿う
直線状の仕切壁を形成するとともに、この仕切壁と上記
フランジのところにインサート金具を埋設し、上記仕切
壁を下方から支持することなく上記仕切壁の上面を上記
仕切り板の下面に密着させて、上記仕切壁で上記副室を
第一副室と第二副室とに仕切るようにした構成を採るこ
ととした。
【0006】また、このような構成において、上記第一
副室と空気室との間を仕切る第一ダイヤフラムの膜厚を
薄く形成するとともに、上記第二副室と上記空気室との
間を仕切る第二ダイヤフラムの膜厚を厚く形成し、更
に、上記第一副室と上記主室との間を連結する第一オリ
フィスを、上記第二副室と上記主室との間を連結する第
二オリフィスよりも、その有効断面積を小さく設定する
とともに長さを長く設定するようにした構成を採ること
とした。
【0007】また、上記二つの副室を、一枚の仕切板
と、これに対応する一枚の弾性仕切部材とにて形成させ
るものにおいて、上記第一副室と空気室との間を仕切る
第一ダイヤフラムの膜厚を薄く形成するとともに、当該
第一副室へ上記主室から連結される第一オリフィスを、
当該第一副室の周りに約半円周状に設け、一方、上記第
二副室と空気室との間を仕切る第二ダイヤフラムの膜厚
を厚く形成するとともに、このような構成からなる第二
副室と上記主室との間に設置される仕切板の一部に、大
きな面積を有する開口部を設けることとした構成を採る
こととした。
【0008】
【作用】上記構成を採ることにより、本発明においては
次のような作用を呈することとなる。すなわち、振動体
側(図示せず)からの振動は、上記上部連結金具を介し
てゴム材等からなるインシュレータに伝播される。これ
によって、当該インシュレータは振動あるいは変位をし
て、上記入力振動の大部分を吸収あるいは遮断する。従
って、大半の振動は、このインシュレータのところで遮
断されることとなるが、一部のものは、当該インシュレ
ータのところでは吸収され得ずに、車体側に伝播される
場合がある。そこで、本発明においては、このインシュ
レータの部分では吸収され得なかった成分(周波数)の
振動を、当該インシュレータの下方部に設けられた主室
及び副室等の液室、更には空気室等の作用により、吸収
あるいは遮断させようとするものである。
【0009】まず、エンジンアイドリング振動に対する
防振作用について説明する。この場合の対象となる振動
数(周波数)は30Hz付近である。そこで、この場
合、当該周波数域(約30Hz)での動バネ定数を低く
する必要がある。そのため、まず、主室と副室との間の
液体の流動抵抗をできるだけ少なくする必要がある。そ
こで、例えば、図1に示す如く、上記主室と第二副室と
の間にて液体を流動させるオリフィス(第二オリフィ
ス)の有効断面積を比較的大きく採る必要がある。これ
によって、当該第二オリフィス内における液体の流動抵
抗が減少することとなり、上記主室と第二副室との間の
液体の流動作用が円滑になる。すなわち、上記インシュ
レータの変位及び上記液体の流動運動によって特定され
る動バネ定数は低くなり、特に、30Hz付近が最小の
値となる。また、当該第二オリフィス内を液体が流動す
ることによってある程度の減衰も得られる。これらの結
果、本発明においては、エンジンアイドリング時の振動
が吸収あるいは遮断されることとなる。
【0010】次に、エンジン自体とサスペンション機構
等のバネ下質量との間の共振現象によって生ずるエンジ
ンシェークに対する防振作用について説明する。この場
合の対象となる振動数(周波数)は10Hz付近であ
る。この10Hz前後の周波数の振動に対しては、これ
と共振させることはエンジンマウント自体の構造上困難
であるので、この場合には、減衰係数を高くすることに
よって、振動の遮断を図ることが行なわれる。従って、
本発明においては、オリフィス(第一オリフィス)にお
ける液体の流動に関する有効断面積を小さくして、流動
抵抗を大きくし、これによって高減衰特性が得られるよ
うにする。そのため、図1及び図3において、オリフィ
ス(第一オリフィス)の有効断面積を小さくし、かつ、
長さを長く採るとともに、当該第一オリフィスを介して
上記主室から液体の導入される第一副室の容積変化を円
滑にするため、当該第一副室の一部を成す第一ダイヤフ
ラムの膜厚を薄く設定することとしている。これによっ
て、主室内の液体が上記第一副室内へ流動する際に、液
体の流動抵抗が増加し、その結果、高減衰係数が得られ
ることとなる。この高減衰特性の作用により、10Hz
前後のエンジンシェークに対しては、その振動が抑えら
れることとなる。すなわち、エンジンシェークに対する
制振作用が発揮されることとなる。
【0011】このように、本発明、特に、請求項2記載
のものにおいては、有効断面積及びその長さの異なる二
種類のオリフィスを設けるとともに、これら各オリフィ
スの連結される各副室を、それぞれ特性の異なる第一副
室と第二副室とからなるようにしたので、エンジンアイ
ドリング振動とエンジンシェークとの二つの振動を遮断
することができることとなる。
【0012】次に、比較的高周波数域の振動によっても
たらされる、こもり音の遮断作用について、請求項3記
載の発明を基に説明する。この場合、対象となる振動数
(周波数)は、100Hzないし600Hz程度の比較
的高周波数域である。そこで、この場合には、低動バネ
定数(低動バネ特性)を形成させることによって振動遮
断を図ろうとするものである。そのため、図3に示す如
く、第二副室と主室との間を仕切る仕切板の一部に大き
な開口部を設けるとともに、この開口部に対応する第二
副室の底面部に、弾性隔膜からなる第二ダイヤフラムを
設けることとする。これによって、インシュレータを介
して上記主室内に100Hzないし600Hzの比較的
高周波数域の振動が入力された場合、主室内の液体は、
上記開口部から第二副室内へと流動する。そして、当該
第二副室の底面部に設けられた第二ダイヤフラムを振動
させる。すなわち、上記主室及び第二副室内の液体は液
体共振をすることとなる。これによって、上記主室内の
液圧上昇が抑えられることとなり、上記高周波数域の振
動に対して、低動バネ定数が形成されることとなる。そ
の結果、当該高周波数域の振動に起因する、こもり音の
遮断が行なわれることとなる。
【0013】
【実施例】本発明の第一の実施例(第一実施例)につい
て、図1及び図2を基に説明する。本実施例の構成は、
図1に示す如く、エンジン等の振動体に連結される上部
連結金具91と、車体側のメンバ等に連結される下部連
結金具99と、これら両連結金具91、99の間に設け
られるものであって、上記振動体からの大変位(大振
幅)の振動を遮断するインシュレータ5と、当該インシ
ュレータ5に対して直列に設けられ、かつ、非圧縮性流
体(液体)の封入される主室6並びに第一副室71及び
第二副室72と、これら主室6と各副室71、72との
間において液体を流通させる半円周状の形態からなる第
一オリフィス31及び第二オリフィス32と、上記主室
6と上記各副室71、72との間を仕切る仕切板2と、
空気等の圧縮性流体の導入される空気室8と、当該空気
室8と上記各副室71、72との間を仕切るとともに上
記各副室71、72の底面部を形成する弾性仕切部材1
と、からなることを基本とするものである。
【0014】このような基本構成において、上記第一副
室71及び第二副室72を形成する仕切板2及び弾性仕
切部材1は、図1及び図2に示すような構成からなるも
のである。すなわち、仕切板2は、図2に示す如く、鋼
板あるいはプラスチック材等からなるものであって、基
本的には円盤状の形態から成るものである。そして、そ
の左半分側には、第一副室71の一部を形成するハット
プロフィル部26が設けられているとともに、右半分側
には第二副室72の一部を形成する平板状のディスク部
27が設けられている構成からなるものである。また、
その中央部には、図2に示す如く、上記第一副室71と
第二副室72との間を仕切る役目を果たす堰25が設け
られているとともに、周縁部にはフランジ部28が形成
されており、更に、当該周縁部28の一部には、ほぼ対
称形を成す位置に、上記第一オリフィス31への流通口
を成す第一ポート21、及び第二オリフィス32への流
通口を成す第二ポート22が設けられている構成となっ
ている。なお、このような構成において、上記第二ポー
ト22の径は、上記第一ポート21の径よりも大きめに
形成されている。
【0015】上記構成からなる仕切板2に対応して、上
記第一副室71及び第二副室72等を形成することとな
る弾性仕切部材1は、図1及び図2に示す如く、ゴム材
等の弾性体からなるものであって、基本的には、上記仕
切板2と対を成すように形成された円盤状の形態からな
るものである。このような基本形態からなるものにおい
て、上記仕切板2の堰25の部分と対応するように、中
央部には仕切壁15が設けられているとともに、当該仕
切壁15を挟んで、その左半分側には第一副室71及び
第一オリフィス31が設けられており、その右半分側に
は第二副室72及び第二オリフィス32が設けられてい
る構成となっている(図2参照)。
【0016】なお、このような構成において、上記第一
副室71の底面部には、第一ダイヤフラム11が設けら
れているとともに、第二副室72の底面部には第二ダイ
ヤフラム12が設けられている構成となっている。そし
て、第一ダイヤフラム11の方が、第二ダイヤフラム1
2よりも、その膜厚が数段薄くなるように設定されてい
るものである。また、このような構成からなる各副室7
1、72の外周部には、それぞれ第一オリフィス31及
び第二オリフィス32が設けられている構成となってい
る。なお、これら各オリフィス31、32は、具体的に
は、図2に示す如く、例えば、第一オリフィス31は、
上記仕切板2の第一ポート21に対応する位置から始ま
って(スタートして)、上記第一副室71の外周を約半
周するように設けられているものであり、最終的には、
上記第一副室71へ連通するように形成されているもの
である。また、第二オリフィス32は、上記仕切板2の
第二ポート22に対応する位置から始まって、上記第二
副室72の外周を約半周するように設けられているもの
であり、最終的には、上記第二副室72へ連通するよう
に形成されているものである。
【0017】このような構成からなる上記第一オリフィ
ス31は、上記第二オリフィス32よりも、その有効断
面積は小さく設定されているが、その長さは長く設定さ
れている。すなわち、第一オリフィス31は、細く、か
つ、長く設定されており、第二オリフィス32は、短
く、かつ、太く設定されているものである。なお、この
ような構成において、上記仕切壁15及び左右のオリフ
ィス31、32のところには、図1に示す如く、これら
各部を補強するためのインサート金具19が設けられて
いる構成となっている。これによって、上記各オリフィ
ス31、32及び各副室71、72周りのシール性が確
保されることとなる。
【0018】これら構成からなる仕切板2と弾性仕切部
材1とが、図1に示す如く、それぞれのフランジ部2
8、18のところで重ね合わされて、更には、下部連結
金具99及びホルダ95と共にカシメ固定、あるいはク
リンチ固定等されることによって、第一副室71及び第
二副室72、更には第一オリフィス31及び第二オリフ
ィス32等が形成されるようになっているものである。
そして更に、これら仕切板2及び弾性仕切部材1を挟ん
で、その上方部には、主室6、インシュレータ5、及び
上部連結金具91等が設けられ、更に、下方部には、空
気室8、及び下部連結金具99等が設けられ、これらに
よって、液体封入式の防振装置が形成されるようになっ
ている。
【0019】次に、このような構成からなる本実施例の
作用等について説明する。まず、エンジンアイドリング
振動に対する防振作用について説明する。この場合の対
象となる振動数(周波数)は30Hz付近である。そこ
で、この場合、当該周波数域(約30Hz)での動バネ
定数を低くする必要があるため、まず、図1における主
室6と副室、特に第二副室72との間の液体の流動抵抗
をできるだけ少なくする。そこで、例えば、図2に示す
如く、上記主室6と第二副室72との間の液体を流動さ
せる第二オリフィス32の有効断面積を大きく採るとと
もに、その長さも比較的短く採っている。
【0020】従って、本実施例においては、図1及び図
2に示す如く、当該第二オリフィス32内における液体
の流動抵抗が減少することとなり、上記主室6と第二副
室72との間における液体の流動作用が円滑になる。す
なわち、上記インシュレータ5の変位及び上記液体の流
動運動によって特定される動バネ定数は低くなり、特
に、30Hz付近が最小の値となる。また、当該第二オ
リフィス32内を上記液体が流動することによって、あ
る程度の減衰力も得られる。これらの結果、本実施例に
おいては、エンジンアイドリング時の振動が吸収あるい
は遮断されることとなる。
【0021】次に、エンジン自体とサスペンション機構
等のバネ下質量との間の共振現象によって生ずるエンジ
ンシェークに対する防振作用について説明する。この場
合の対象となる振動数(周波数)は10Hz付近であ
る。この10Hz前後の周波数の振動に対しては、これ
と共振させることはエンジンマウント自体の構造上困難
であるので、この場合には、減衰係数を高くすることに
よって振動の遮断を図ることとする。従って、本実施例
においては、図2に示す如く、第一オリフィス31にお
ける液体の流動に関する流動抵抗を大きくし、これによ
って高減衰特性が得られるようにする。そのため、図1
及び図2において、第一オリフィス31の有効断面積を
小さくすると共に、その長さも比較的長く採ることとし
ている。これによって、主室6と第一副室71との間に
おける液体の流動抵抗が増加し、その結果、減衰係数が
高くなる。なお、当該第一副室71の一部を形成する第
一ダイヤフラム11は、その膜厚が非常に薄く設定され
ているので第一副室71の容積変化がしやすくなってい
る。その結果、動バネ定数はあまり上がらない。これら
高減衰特性の作用等により、10Hz前後の振動である
エンジンシェークは制振されることとなる。
【0022】次に、本発明の第二の実施例(第二実施
例)について説明する。本実施例の構成は、図3及び図
4に示す如く、基本的には、上記第一実施例のものと同
じである。異なるところは、本実施例のものが、100
Hzないし600Hz程度の比較的高周波数域の振動で
ある、いわゆる、こもり音の遮断を対象としていること
による点である。すなわち、図3及び図4に示す如く、
主室6から流体の導入を受けて、種々の特性を発揮する
第一副室71及び第二副室72等の構成において、その
一部に、上記第一実施例のものとは異なっている点があ
ることである。これら各部の具体的構成について、図3
及び図4を基に説明する。本実施例の構成は、基本的に
は円盤状の形態からなるものであって、左半分側にハッ
トプロフィル部26を有する仕切板2と、当該仕切板2
と対を成すものであって、上記第一副室71及び第二副
室72を形成する、同じく円盤状の弾性仕切部材1とか
らなるものである。
【0023】このような基本構成において、上記仕切板
2は、上記第一実施例のものと同様、鋼板あるいはプラ
スチック材等にて形成されているものである。また、そ
の中央部には、上記第一副室71と第二副室72との間
を仕切る堰25が設けられていると共に、周縁部を形成
するフランジ部28の一部には、主室6への開口部を成
すものであって、上記第一オリフィス31への連通口を
成す第一ポート21が設けられている構成となってい
る。このような構成において、本実施例のものにおける
特徴は、右半分の第二副室72に対応するところに、主
室6への大きな開口を成す開口部29が設けられている
ことである。この開口部29を通じて、上記主室6から
の液体が、大量に第二副室72内へ導入されるようにな
っているものである(図3参照)。
【0024】このような構成からなる仕切板2と対を成
すように設けられる弾性仕切部材1は、第一実施例のも
のと同様、ゴム材等の弾性体から成るものであり、全体
的に円盤状の形態からなるものである。そして、中央部
には、上記仕切板2の堰25と対応するように仕切壁1
5が設けられている構成となっている。そして更に、当
該仕切壁15を挟んで、その左半分側には、第一副室7
1及び当該第一副室71の外周部に半円周状に形成され
た第一オリフィス31が設けられているとともに、その
右半分側には半円状の第二副室72が設けられている構
成となっている。そして、当該第二副室72の上方部に
は、上記仕切板2の開口部29が設けられるようになっ
ているものである。なお、このような構成において、左
半分側に設けられる上記第一オリフィス31は、そのス
タートの位置は、上記仕切板2の第一ポート21の位置
と合致するように設定されているとともに、その最終点
は、図4に示す如く、上記第一副室71に連通するよう
になっているものである。
【0025】また、このような構成からなる本弾性仕切
部材1の底面部は、図3及び図4に示す如く、第一副室
71側に設けられた膜厚の薄い第一ダイヤフラム11
と、第二副室72側に設けられた比較的膜厚の厚い第二
ダイヤフラム12とからなるものである。これによっ
て、左半分側に形成される第一副室71は、第一オリフ
ィス31を介して導入される主室6からの液体によっ
て、その室内の容積変化が円滑に行なわれるようになっ
ているものである。また、第二副室72側は、上記大き
な開口部29を介して上記主室6と連通状態となってお
り、高周波の液体振動によって、大きなエネルギーが上
記第二ダイヤフラム12に伝播されることとなるので、
この液体振動に応じて上記ダイヤフラム12が変形する
よう、比較的厚めの隔膜にて形成されている。
【0026】これら構成からなる仕切板2と弾性仕切部
材1とが、図3に示す如く、それぞれのフランジ部2
8、18のところで重ね合わされて、更には、下部連結
金具99及びホルダ95と共にカシメ固定、あるいはク
リンチ固定されることによって、第一副室71及び第二
副室72、更には第一オリフィス31等が形成されるよ
うになっているものである。そして更に、これら仕切板
2及び弾性仕切部材1を挟んで、その上下に、主室6、
空気室8、あるいはインシュレータ5等が設置されるこ
とによって、液体封入式の防振装置が形成されるように
なっている。
【0027】次に、このような構成からなる本実施例の
作用等について説明する。本実施例のものは、主に、1
00Hzないし600Hz程度の高周波数域の振動遮断
を対象としているものである。これら高周波数の振動
は、減衰係数を高めることによって制振することは困難
であるので、これら振動に対する動バネ定数を低くする
ことによって、系への振動伝達を遮断するようにしてい
るものである。すなわち、図3において、振動体からの
比較的高周波数の振動が、上部連結金具91、インシュ
レータ5を介して主室6内の液体へと伝播されると、当
該液体への振動は、上記開口部29を通って第二副室7
2の液体に伝播される。そして、この振動エネルギーは
弾性隔膜からなる第二ダイヤフラム12に伝播され、当
該第二ダイヤフラム12を変位(変形)させる。これに
よって、上記高周波数の振動は、主室6内の液体及び第
二副室72内の液体を液体共振させることによって吸収
される。その結果、主室6内の液圧を上昇させることが
無く、これら高周波数域の入力振動に対して、低動バネ
定数(低動バネ特性)を形成させることができるように
なる。この低動バネ定数の形成により、100Hzない
し600Hz程度の比較的高周波数域の振動に起因す
る、いわゆる、こもり音を、本防振装置のところで遮断
することができるようになる。
【0028】なお、本実施例においても、その左半分側
には、図3及び図4に示す如く、第一副室71と、当該
第一副室71と上記主室6との間を連結する第一オリフ
ィス31が設けられていることより、この第一オリフィ
ス31を流動する液体の流動抵抗により、高減衰係数
(高減衰特性)が得られるようになっているので、この
高減衰特性の作用により、10Hz前後の低周波数の振
動であるエンジンシェークが抑え込まれることとなる。
【0029】
【発明の効果】本発明によれば、振動体側に連結される
上部連結金具と、車体側のメンバ等に連結される下部連
結金具と、これら両連結金具の間にあって、上記振動体
からの振動を遮断するインシュレータと、当該インシュ
レータに対して直列に設けられ、かつ、非圧縮性流体
(液体)の封入される主室及び副室と、これら主室と副
室との間において液体を流通させるオリフィスと、上記
主室と副室との間を仕切る仕切板と、圧縮性流体である
空気の導入される空気室と、当該空気室と上記副室との
間を仕切るダイヤフラム等からなる液体封入式の防振装
置において、上記副室を第一の副室(第一副室)と第二
の副室(第二副室)との二つの副室からなるようにし、
これら二つの副室、及びこれら二つの副室の、それぞれ
を形成する二つのダイヤフラムを、一枚の仕切板と、当
該仕切板に対向する一枚の弾性仕切部材とにて形成する
こととしたので、副室、及びダイヤフラム、更にはオリ
フィス等を、少ない部品(部材)にて形成することがで
きるようになり、組立工程及び部品の管理が簡略化され
るようになった。その結果、製造コストの低減化及び管
理コストの低減化を図ることができるようになった。
【0030】また、第一副室と空気室との間を仕切る第
一ダイヤフラムの膜厚を薄く形成するとともに、第二副
室と空気室との間を仕切る第二ダイヤフラムの膜厚を厚
く形成し、更に、上記第一副室と上記主室との間を連結
する第一オリフィスを、上記第二副室と上記主室との間
を連結する第二オリフィスよりも、その有効断面積を小
さくするとともに、その長さを長く設定することとした
ので、エンジンシェークに対しては、高減衰特性を発揮
させることにより当該振動を抑え込むことができるよう
になるとともに、アイドリング振動に対しては、低動バ
ネ特性を発揮させることにより、これら二つの振動の遮
断を図ることができるようになった。
【0031】また、上記構成に代わって、上記第一副室
と空気室との間を仕切る第一ダイヤフラムの膜厚を薄く
形成するとともに、当該第一副室へ上記主室から連結さ
れる第一オリフィスを、当該第一副室の周りに、ほぼ半
周にわたって設け、一方、上記第二副室と空気室との間
を仕切る第二ダイヤフラムの膜厚を厚く形成するととも
に、このような構成からなる第二副室と上記主室との間
に設置される仕切板の一部に、大きな面積を有する開口
部を設けることとした構成を採ることとしたので、低周
波数の振動であるエンジンシェークに対しては上記第一
オリフィスの作用により高減衰特性を発揮させることに
よって、当該振動を抑えるとともに、高周波数域の振動
であるこもり音に対しては、上記第二副室内の液体を液
体共振させることによって低動バネ特性を形成させるこ
とができるようになり、これによって、こもり音の遮断
を図ることができるようになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明及びその第一実施例の全体構成を示す縦
断面図である。
【図2】本発明及びその第一実施例の主要部を成す、仕
切板及び弾性仕切部材の全体構成を示す展開斜視図であ
る。
【図3】本発明にかかる第二実施例の全体構成を示す縦
断面図である。
【図4】本発明にかかる第二実施例の主要部を成す、仕
切板及び弾性仕切部材の全体構成を示す展開斜視図であ
る。
【符号の説明】
1 弾性仕切部材 11 第一ダイヤフラム 12 第二ダイヤフラム 15 仕切壁 18 フランジ部 19 インサート金具 2 仕切板 21 第一ポート 22 第二ポート 25 堰 26 ハットプロフィル部 27 ディスク部 28 フランジ部 31 第一オリフィス 32 第二オリフィス 5 インシュレータ 6 主室 71 第一副室 72 第二副室 8 空気室 91 上部連結金具 95 ホルダ 99 下部連結金具

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 振動体側に連結される上部連結金具と、
    車体側のメンバ等に連結される下部連結金具と、これら
    両連結金具の間にあって、上記振動体からの振動を遮断
    するインシュレータと、当該インシュレータに対して直
    列に設けられ、かつ、非圧縮性流体の封入される主室及
    び副室と、これら主室と副室との間において液体を流通
    させるオリフィスと、上記主室と副室との間を仕切る
    枚の仕切板と、圧縮性流体である空気の導入される空気
    室と、当該空気室と上記副室との間を仕切る一枚の円盤
    状の弾性仕切り部材とから成り、この弾性仕切り部材の
    底面部はダイヤフラムから成り、上記弾性仕切り部材の
    外周部は取付け用のフランジから成る液体封入式の防振
    装置において、上記弾性仕切り部材の底面部に、上方に
    突出し、上記弾性仕切り部材の径方向に沿う直線状の仕
    切壁を形成するとともに、この仕切壁と上記フランジの
    ところにインサート金具を埋設し、上記仕切壁を下方か
    ら支持することなく上記仕切壁の上面を上記仕切り板の
    下面に密着させて、上記仕切壁で上記副室を第一副室と
    第二副室とに仕切るようにした構成から成ることを特徴
    とする液体封入式防振装置。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の液体封入式防振装置にお
    いて、上記第一副室と空気室との間を仕切る第一ダイヤ
    フラムの膜厚を薄く形成するとともに、上記第二副室と
    空気室との間を仕切る第二ダイヤフラムの膜厚を厚く形
    成し、更に、上記第一副室と上記主室との間を連結する
    第一オリフィスを、上記第二副室と上記主室との間を連
    結する第二オリフィスよりも、その有効断面積を小さく
    設定するとともに長さを長く設定することとした構成か
    らなることを特徴とする液体封入式防振装置。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の液体封入式防振装置にお
    いて、上記第一副室と空気室との間を仕切る第一ダイヤ
    フラムの膜厚を薄く形成するとともに、当該第一副室へ
    上記主室から連結される第一オリフィスを、当該第一副
    室の周りに設け、一方、上記第二副室と空気室との間を
    仕切る第二ダイヤフラムの膜厚を厚く形成するととも
    に、このような構成からなる第二副室と上記主室との間
    に設置される仕切板の一部に、大きな面積を有する開口
    部を設けることとした構成からなることを特徴とする液
    体封入式防振装置。
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