JP3533617B2 - 屋根改修構造 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 【０００１】 【産業上の利用分野】本願発明は建築、構築物の既存屋
根を新規屋根で改修するための構造に関するものであ
り、さらに詳しくは、長尺状の金属薄板からなる補強材
を既存屋根の棟にて屈曲させて、既存建物を構成する互
いに平行な軒桁同士を連結して既存建物の強度を向上さ
せた後に新規屋根を形成する屋根改修構造に関するもの
である。 【０００２】 【従来の技術】従来、この種の屋根改修構造としては、
古くなった既存の屋根をすべて撤去して、既存の垂木や
野地板等の屋根下地に新規屋根を形成する構造や、既存
屋根材上に直に、もしくは、新規垂木等の屋根下地やル
ーフィング等の防水シートを介して新規屋根材を取り付
ける構造が一般的であった。 【０００３】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな改修構造では古くなった既存屋根材と新規屋根材を
交換することや、傷んだ既存屋根材上に新規屋根材を形
成して、既存屋根を隠蔽することの技術思想のみであ
り、古くなった建物の既存の屋根下地、躯体、あるいは
既存屋根材を補強し、強度を向上させる技術思想は全く
考慮に入れられていなかった。このため、改修後の建物
の屋根下地や躯体には負担が係り、強度的に弱く、特に
耐震性に極端に劣り、地震等の発生で新規屋根材が脱落
したり、屋根下地、躯体の破損、建物の崩壊等の被害が
発生することもあった。 【０００４】 【課題を解決するための手段】本願発明はこのような欠
点を除去するため、既存の屋根を新規屋根材で改修する
前に、既存の躯体を補強する補強材を既存屋根材上か
ら、もしくは既存屋根材を撤去した後に、長尺状の金属
薄板からなる補強材を既存屋根の棟にて屈曲させて平行
する軒桁同士を連結し、かつ補強材は既存屋根の棟にて
交差するように配し、補強材を覆うように新規屋根を形
成する屋根改修構造を提案するものである。 【０００５】 【実施例】以下に図面を用いて本願発明に係る屋根改修
構造の一実施例について詳細に説明する。図１、図２は
既存屋根材上からの上記改修構造の一例を示す斜視図、
図３は同部分拡大図、図４は同部分拡大断面図である。
Ａは既存屋根、Ｂは屋根下地、Ｃは軒桁、Ｄは棟木、Ｅ
は母屋、Ｆは垂木、Ｈは補強材、Ｊは新規屋根材であ
る。 【０００６】既存屋根Ａは図３、図４に詳しく示すよう
に、例えば野地板ａ、ルーフィングｂ、既存屋根材ｃ等
からなるものであり、屋根下地Ｂは軒桁Ｃ、棟木Ｄ、母
屋Ｅ、垂木Ｆ等から構成されているものである。 【０００７】既存屋根材ｃは図に示すように、屋根下地
Ｂの外側面に施工された一般的屋根材からなるものであ
り、例えば図に示すような新生瓦の他に、平葺き屋根
材、段葺き屋根材、アスファルトシングル等の板状の屋
根材を重ね張りしたものや、瓦葺き屋根材、瓦棒葺き屋
根材等からなるものである。 【０００８】補強材Ｈは図６に示すように、例えば幅狭
の長尺薄板状の鋼材からなり、棟部Ｄにて屈曲し互いに
平行する軒桁Ｃを連結し、屋根下地Ｂおよび既存屋根Ａ
の強度を向上するものである。 【０００９】補強材Ｈは、既存屋根材ｃを撤去せずに改
修を行う際は図３、図４に示すように既存屋根材ｃ上か
ら既存屋根材ｃ、ルーフィングｂ、および野地板ａを介
して軒桁Ｃ、棟木Ｄ、母屋Ｅ、垂木Ｆのいずれか、ある
いは垂木Ｆが軒桁Ｃ、棟木Ｄ、母屋Ｅのいずれかと交差
する箇所に、釘、スクリュービス、テクス、アンカー、
アンカーボルト等の固定具αを用いて固定し、軒方向に
対して斜めに取り付けることにより古くなった既存屋根
Ａおよび屋根下地Ｂの強度を向上するものである。 【００１０】なお、１本の補強材Ｈは互いに平行する軒
桁Ｃを連結するものであり、取付けの際の長手方向の両
端部の固定は、大きな強度を得られることから、軒桁Ｃ
が垂木Ｆと交差する箇所にて行うことが好ましい。補強
材Ｈは２本一対で用い、図５に示すように棟部Ｇにて屈
曲、交差し、固定具αで２本の補強材Ｈを一挙に固定す
る。補強材Ｈの屈曲は、固定を強力にすることから、垂
木Ｆが真下に存在する箇所にて行うことが好ましい。補
強材Ｈは、例えば対角に位置する軒桁Ｃと垂木Ｆが交差
する箇所を、棟部Ｇを経て最短距離で連結するように配
置するものである。 【００１１】Ｊは新規屋根材であり、例えば図７
（ａ）、（ｂ）に示すような段葺き状の屋根材を使用す
ることができる。ここで使用する新規屋根材Ｊは、金属
板（カラー鋼板、銅板、アルミニウム板、チタン板、ス
テンレス板、サンドイッチ鋼板、クラッド鋼板等）等を
ロール成形、プレス成形、押出成形等によって形成した
ものである。 【００１２】さらに説明すると、新規屋根材Ｊは長尺板
状であり、その幅方向一端部を化粧面１の下側、すなわ
ち、裏面２側に略コ字状に屈曲して段差化粧面３と差込
縁４とを形成した雄型連結部６としたもので、化粧面１
と段差化粧面３と差込縁４とから略コ字状の引っかけ溝
５を形成したものである。 【００１３】また、化粧面１の他端には化粧面１の上側
に屈曲して断面略Ｕ字状に形成した、差込縁４と嵌合す
る嵌合溝７と、嵌合溝７の先端をコ字状に折り返した嵌
合縁８と、嵌合縁８の先端を下方に屈曲すると共に化粧
面１と略平行で外方にＬ字状に屈曲して延長した固定片
９を形成した雌型連結部１０を形成したものである。 【００１４】さらに、化粧面１の長手方向の両側端縁を
それぞれ裏面２側にハゼ状に屈曲した連結片１１を形成
したものである。なお、図７（ａ）では長手方向の強度
の強化と、外部からの雨水等が毛細管現象により内部に
浸入することを防止する意味で嵌合溝７と差込縁４にそ
れぞれ凹条１２を形成している。 【００１５】なお、化粧面１、段差化粧面３等にリシン
を施して、落雪防止や滑り止め、意匠性の向上を図るこ
ともできる。 【００１６】また、Ｋは裏打材であり、図８に示すよう
に長尺板状からなるものである。また、裏打材Ｋは既存
屋根材ｃ上に多数枚重合して敷設することによって、新
規屋根材Ｊをバックアップし、屋根上の作業、積雪のよ
うに荷重が加えられても新規屋根材Ｊの変形を防止する
と共に、断熱層、調湿層、防火層、防音層として機能す
るものである。 【００１７】裏打材Ｋの素材としてはシージングボー
ド、シージングインシュレーションボート、プラスチッ
クフォーム（ウレタンフォーム、ヌレートフォーム、フ
ェノールフォーム等）パーチクルボード、木質複合板、
木毛セメント板、コンポージットパネル（コンパネ）、
石膏ボード、ＡＬＣ板、等からなるものである。 【００１８】さらに説明すると、裏打材Ｋは水平方向で
は端面を当接すると共に、図４に示すように、軒から棟
方向では下段の裏打材Ｋ₁ に長尺側面を重ね合わせ、階
段状とすると共に既存屋根材ｃとの間に三角形状の空隙
βを形成するように固定するものである。この空隙βは
新鮮な空気等の流通路として機能させることができ裏打
材Ｋが有する断熱材、防音材、調湿材等の機能をさらに
助長させると共に、結露を防止して屋根下地Ｂ、既存屋
根材ｃ、新規屋根材Ｊの腐食防止に寄与するものであ
る。 【００１９】Ｉはアスファルトルーフィング等からなる
防水シートであり、必要に応じて既存屋根材ｃ上に敷設
し、構造の防水性を強化するものである。 【００２０】図９は新規屋根材Ｊ同士の長手方向を接続
する継手材Ｌであり、新規屋根材Ｊと同様な種類の素材
を同等な成形法により形成したものであり、敷目板Ｍと
嵌合板Ｎの２部材から形成したものである。 【００２１】すなわち、敷目板Ｍは図９（ｂ）に示すよ
うに、新規屋根材Ｊの裏面２と当接すると共に、嵌合板
Ｎを装着する敷目部１３と、敷目部１３の下辺を裏面側
に屈曲した馳部１４と、必要に応じて敷目部１３の上辺
を表面側に屈曲して形成した雨返部１５とから形成した
ものであり、かつ、図９（ａ）のイ−イ線端面図である
図９（ｄ）に示すように、幅方向において、両側縁を表
面側に折り返し、その先端を再び折り返して壺状とした
係止部１６と、係止部１６の両側縁を延長した延長部１
７と、延長部１７の先端を表面側に折り返して形成した
延長舌片１８とから構成されたものである。 【００２２】なお、この端面形状は敷目部１３のみなら
ず、馳部１４から雨返部１５にかけてほぼ同一とするこ
とが可能である。すなわち敷目板Ｍはロールフォーミン
グ等により連続的に成形することも可能であり、コスト
を下げた生産ができるものである。また図６では、上下
方向の連結の強化のために、馳部１４の略中央部分を延
長して馳舌片１４ａを形成している。 【００２３】嵌合板Ｎは図９（ｃ）に示すように、底面
１９の左右側辺を折り返して係止舌片２０を形成して出
合い袋状とした断面形状のものであり、図９（ｄ）に示
すように新規屋根材Ｊの化粧面１の両側縁に設けた連結
片１１を嵌合、係止するものである。（なお、図９
（ｄ）では新規屋根材Ｊを点線で示した。）さらに説明
すると嵌合板Ｎは敷目板Ｍの敷目部１３において、図９
（ｄ）に示すように、両端を係止部１６によって係止さ
れることによって一体化するものである。 【００２４】また、継手材Ｌとして図１０に示すような
構成のものを使用することもできる。すなわち、（ｂ）
図に示すような敷目板Ｍ、（ｃ）図に示すような嵌合板
Ｎ、（ｄ）図に示すパッキング体Ｏとからなるものであ
り、特に敷目板Ｍを合成樹脂材から形成しコストダウン
を図った継手材Ｌの例である。 【００２５】ここで、本願発明に係る屋根改修構造の施
工方法の一実施例について簡単に説明する。ここでは、
新生瓦葺きの既存屋根Ａ上に対し、段葺き用の新規屋根
材Ｊを用いた施工を行うものとする。先ず、既存屋根Ａ
の棟を取り去った後に、図１１に示すように、新生瓦か
らなる既存屋根材ｃ上において補強材Ｈを、平行する軒
桁Ｃ同士を連結するように配し、釘等の固定具αによっ
て既存屋根材ｃ、ルーフィングｂ、野地板ａを介して軒
桁Ｃ、棟木Ｄ、母屋Ｅ、垂木Ｆのいずれか、あるいは垂
木Ｆが軒桁Ｃ、棟木Ｄ、母屋Ｅと交差する箇所にて固定
する。なお、図５に示すように、補強材Ｈ同士が交差す
る棟部Ｇに関しては、１つの固定具αで垂木Ｆおよび棟
木Ｄに一挙に固定することもできる。 【００２６】また、補強材Ｈは、例えば既存屋根Ａの軒
の４隅の対角線上に配し、両端の固定された箇所を最短
距離にて連結する。補強材Ｈの両端の固定された箇所を
最短距離で連結するのは、補強材Ｈに弛みを生じず、２
本の補強材を既存屋根Ａの該中心にて重合した部分にて
まとめて固定できるため強度上好ましい上、補強材Ｈが
最小限の長さで済むものである。 【００２７】次に、図１２に示すように、必要に応じて
補強材Ｈ上に既存屋根材ｃの全範囲を覆うように防水シ
ートＩを敷設し、そして図４に示す下段の裏打材Ｋ₁ を
防水シートＩ上に敷設すると共に、下段に位置する裏打
材Ｋ₁ 上に下段の屋根材Ｊ₁を載置し、屋根材Ｊ₁ の固
定片９上から釘等の固定具αで裏打材Ｋ₁ を介して既存
屋根Ａに固定する。 【００２８】次に上段の裏打材Ｋ₂ の一端部を下段の屋
根材Ｊ₁ の固定片９上に載置すると共に、下段の屋根材
Ｊ₁ の嵌合溝７内に上段の屋根材Ｊ₂ の差込縁４を嵌
合、係止し、上段の裏打材Ｋ₂ 上に上段の屋根材Ｊ₂ が
載置される。これらの作業を順次軒方向から棟方向まで
行うことにより、既存屋根上に新規屋根を形成するもの
である。 【００２９】また、図１３の斜視図、図１４の断面図に
示されるように、既存屋根材ｃを撤去した後に新規屋根
を形成する場合について説明する。ここでは、段葺きの
新規屋根材Ｊを用いた施工を行うものとする。まず、必
要に応じてルーフィングｂを残して既存屋根材ｃを撤去
し、図１５に示すように、野地板ａ上に補強材Ｈを釘等
の固定具αによって、野地板ａを介して軒桁Ｃ、棟木
Ｄ、母屋Ｅ、垂木Ｆのいずれか、あるいは垂木Ｆが軒桁
Ｃ、棟木Ｄ、母屋Ｅと交差する箇所に軒方向に対して斜
めに、平行する軒桁Ｃを連結し、かつ棟部Ｇにて補強材
Ｈ同士が交差するように取り付ける。 【００３０】次に、図１６に示すように、補強材Ｈ上に
必要に応じて防水シートＩを野地板ａの全面を覆うよう
に敷設した後、上述した新生瓦葺きの既存屋根Ａ上に対
する段葺きの新規屋根材Ｊを用いた施工と同様に、新規
屋根を形成するものである。 【００３１】以上説明したのは、本願発明に係る屋根改
修構造の一実施例であり、図１７〜図２１に示すような
改修構造としたり、改修のための部材を用いることもで
きる。 【００３２】図１７は本願発明の施工方法によって瓦葺
きの既存屋根Ａに段葺きの新規屋根材Ｊで改修した例、
図１８は瓦棒葺きの既存屋根Ａに段葺きの新規屋根材Ｊ
で改修した例である。図示しないが既存屋根Ａが瓦棒葺
き屋根である場合には、新規屋根材Ｊを取り付ける際、
ベニヤ合板等の板材を下地として補強材Ｈ上から敷設す
ることができる。なお、図示しないが、同様の工法にて
既存屋根Ａとしての平葺き屋根、段葺き屋根に段葺き屋
根、瓦棒葺き屋根、瓦屋根、新生瓦屋根等を新規屋根材
Ｊとして用いて改修することができる。また、図示しな
いが、既存屋根材ｃを撤去した後に形成する新規屋根と
しても種類を問わず、段葺き屋根、瓦棒葺き屋根、瓦屋
根、新生瓦屋根等を施工することができる。 【００３３】図１９、２０は補強材Ｈのその他の例を示
すものである。図１９（ａ）は両側部に舌片２１を設
け、施工の安全性と強度を向上させた例、図１９（ｂ）
は強度の向上と同時に固定具αを用いる際のガイドとし
ての機能を有する凸部２２を表面側に設けた例、図１９
（ｃ）は波状に成形して強度と意匠性を向上させた例で
ある。 【００３４】また、図２０（ａ）はエンボス加工を施し
て強度と意匠性、滑り止めの効果を向上させた例、図２
０（ｂ）は複数回折り返して強度を向上させた例であ
る。なお、図示しないが補強材Ｈの表面、もしくは両面
にリシンを施して、接触する部材との滑り止め、および
意匠性の向上を図ることもできる。 【００３５】なお、図２１は補強材Ｈの配置のその他の
例を示す説明図である。（ａ）は補強材Ｈを配設した
後、さらに既存屋根Ａの一つの面の対角線を交差するよ
うに補強材Ｈ₁ を配した構造、（ｂ）は屋根下地Ｂの外
郭に補強材Ｈ₁ を配した構造、（ｃ）は２対の補強材Ｈ
を配した構造であり、いずれも補強力を向上させた構造
としたものである。 【００３６】 【発明の効果】以上説明したように本願発明に係る屋根
改修構造によれば、従来の欠点を解決し、既存の躯
体、既存の屋根下地、既存屋根材の強度を補強する補強
材を、配設するので、建物全体の強度を向上させ、地震
に強い構造となる新規屋根材は既存の屋根下地に直接
固定されるので、容易には脱落しない。補強材を屋根
の棟を介して平行する軒桁同士を連結するので、既存屋
根全体を一挙に補強でき、軒と棟と連結する補強に比し
て強度が高い。等の特徴、効果がある。

【図面の簡単な説明】 【図１】本願発明に係る既存屋根を撤去しない屋根改修
構造の一実施例を示す斜視図である。 【図２】本願発明に係る既存屋根を撤去しない屋根改修
構造の一実施例を示す斜視図である。 【図３】本願発明に係る既存屋根を撤去しない屋根改修
構造の一実施例を示す部分図である。 【図４】本願発明に係る既存屋根を撤去しない屋根改修
構造の一実施例を示す部分断面図である。 【図５】本願発明に係る既存屋根を撤去しない屋根改修
構造における軒部の施工例を示す説明図である。 【図６】補強材の一例を示す説明図である。 【図７】新規屋根材の一例を示す説明図である。 【図８】新規屋根として使用する裏打材の例を示す説明
図である。 【図９】継手材の一例を示す説明図である。 【図１０】継手材の一例を示す説明図である。 【図１１】本願発明に係る既存屋根を撤去しない屋根改
修構造の施工方法の説明図である。 【図１２】本願発明に係る既存屋根を撤去しない屋根改
修構造の施工方法の説明図である。 【図１３】本願発明に係る既存屋根を撤去する屋根改修
構造の一実施例を示す斜視図である。 【図１４】本願発明に係る既存屋根を撤去する屋根改修
構造の一実施例を示す断面図である。 【図１５】本願発明に係る既存屋根を撤去する屋根改修
構造の施工方法の説明図である。 【図１６】本願発明に係る既存屋根を撤去する屋根改修
構造の施工方法の説明図である。 【図１７】本願発明に係る既存屋根を撤去しない屋根改
修構造の一実施例を示す斜視図である。 【図１８】本願発明に係る既存屋根を撤去しない屋根改
修構造の一実施例を示す斜視図である。 【図１９】補強材の例を示す説明図である。 【図２０】補強材の例を示す説明図である。 【図２１】補強材の配置例である。 【符号の説明】 α 固定具 β 空隙 Ａ 既存屋根 Ｂ 屋根下地 Ｃ 軒桁 Ｄ 棟木 Ｅ 母屋 Ｆ 垂木 Ｇ 棟部 Ｈ 補強材 Ｉ 防水シート Ｊ 新規屋根材 Ｋ 裏打材 Ｌ 継手材 Ｍ 敷目板 Ｎ 嵌合板 Ｏ パッキング体 ａ 野地板 ｂ ルーフィング ｃ 既存屋根材 １ 化粧面 ２ 裏面 ３ 段差化粧面 ４ 差込縁 ５ 引っかけ溝 ６ 雄型連結部 ７ 嵌合溝 ８ 嵌合縁 ９ 固定片 １０ 雌型連結部 １１ 連結片 １２ 凹条 １３ 敷目部 １４ 馳部 １４ａ 馳舌片 １５ 雨返部 １６ 係止部 １７ 延長部 １８ 延長舌片 １９ 底面 ２０ 係止舌片 ２１ 舌片 ２２ 凸部 ２３ ガイド部

Claims (1)

1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項１】 既存の各種屋根材上から、もしくは既存
   屋根材を撤去した後に、長尺状の金属薄板からなる補強
   材を既存屋根の棟にて屈曲させて平行する軒桁同士を連
   結し、かつ該補強材は既存屋根の棟にて交差するように
   配し、該補強材上に新規屋根を形成したことを特徴とす
   る屋根改修構造。