JP3525849B2 - 耐衝突性に優れた鋼材およびその製造方法 - Google Patents
耐衝突性に優れた鋼材およびその製造方法Info
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Description
物に使用される鋼材およびその製造方法に関し、特に船
舶の衝突時等の損害抑制に効果がある高い一様伸びを有
する、耐衝突性に優れた鋼材およびその製造方法に関す
るものである。
油流出による環境汚染が問題となっている。これらの事
故による油流出を防止するために、船殻の二重構造化等
の船体構造面からの取り組みは行われているが、般体用
鋼材については十分な対応策が検討されていない。その
中でも、船体用鋼材面からの取り組みとして、衝突時の
エネルギーを鋼材自体に多く吸収させることが提案され
ているが、未だ十分な実用段階には達していない。
方法としては、鋼板の組織をフェライト主体とし、かつ
フェライト相を強化する技術が特開平10-306340号公報
に提案されている。この技術は、フェライト分率Fが8
0%以上であり、かつフェライトの硬さHについては下
限値(H≧400−2.6×F)が規定することを特徴
としている。
技術が特開平11-246935号公報に提案されている。この
技術は、C、Si、Mn、Alを含有し、さらに必要に
応じて強化元素を含有し、鋼板の少なくとも板厚の1/
8以上の表裏層に面積率で1.0〜20%の残留γを含
むというものである。
ギー吸収を、鋼材の強度(降伏応力と破断応力の平均)と
全伸びの積として評価している。そのため、強度と全伸
びの両者の向上により吸収エネルギーの増加を図ってい
る。
術で用いられている全伸びによる吸収エネルギーの評価
は、必ずしも船体構造の安全性の評価に繋がるとはかぎ
らず、耐衝突性を議論する場合には相応しくない。すな
わち、引張試験における標点距離とは比べものにならな
い長大なスパンで防撓材に支えられている船体外板の伸
び変形を評価するには、試験片形状の影響を受ける局部
伸びを含んだ全伸びの評価は適していない。そこで、衝
突時の吸収エネルギーを考える場合には、船体外板の伸
び特性と相関が高いと判断される一様伸びで評価する必
要がある。
らず、例えば、特開平10-306340号公報記載の技術で
は、フェライト粒径が5μm以下で、フェライトの硬さ
は実施例(同公報、表2)ではHv160〜190であり高めと
なっている。そのため、全伸び(同表のEL)でも23〜32
%であり、一様伸びはこれより高くなり得ないので、せ
いぜい10〜20数%程度に止まるものと推定される。
の技術では、組織に残留γを含むようにするため合金元
素が添加されており、実施例の鋼は炭素等量(Ceq)が
高いか、Siが高い鋼種となっている。例えば同公報の表
1を見ると、鋼種AではCeqを計算すると約0.38であり、
鋼種B〜FではSiが0.55〜1.94%であり、いずれも高めと
なっている。
接性に関する試験結果が、全く開示されていない。な
お、同公報で衝撃吸収エネルギーというのは、表2のEL
×(YP+TS/2)であり、全伸びと強度の積のことである。
そこで、これらの鋼種の材質について、通常の厚鋼板の
材質から考えると、Siが高めの鋼種は靭性が低く、Ceq
が高めの鋼種は溶接性に問題があると推測される。
求から必要な降伏応力が決められており、使用する部位
に応じて鋼材の強度等級が変更されるため必要以上の強
度は特に必要とされないこと、および強度を向上させる
ためには合金元素の添加等によるコスト上昇や溶接性の
劣化を生じるため、強度増加による吸収エネルギーの向
上は好ましくない。以上の観点から、船舶の衝突時のエ
ネルギー吸収性能に優れた鋼材は未だ開発されていない
のが実状である。
て合金元素の添加等によるコス卜の増加や、船体構造設
計の変更なしに、衝突時のエネルギー吸収能を増加させ
ることが可能な耐衝突性に優れた鋼材およびその製造方
法を提供することを目的とする。
より解決される。第1の発明は、鋼組成が重量%でCeq
≦0.36%を満たし、組織がフェライト相と硬質相からな
り、前記フェライト相の相分率が60%以上、硬さがHv15
0以下、平均粒径が5μm以上であり、かつ前記硬質相の
アスペクト比の平均または前記硬質相が連なった硬質相
バンドのアスペクト比の平均が2以上であることを特徴
とする耐衝突性に優れた鋼材である。ただし、 Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15 (1) であり、元素記号は含有量(重量%)を表す。
究を重ねた結果、なされたものであり、通常の船体用鋼
材とほぼ同じ成分で、耐衝突性に優れた、すなわち一様
伸び性に優れた鋼材およびその製造方法を提供する。す
なわち、強度を低下させることなく、一様伸びを向上さ
せるために、軟質相であるフェライトと硬質相であるベ
イナイト、セメンタイト、マルテンサイト等の2相以上
の組織からなる鋼を用い、それぞれの相の機械的性質を
最適化するとともに、その組み合わせを最適化してい
る。
組成について説明する。まず、ミクロ組織については次
のようになる。
る。硬質相は、ベイナイト、パーライト、マルテンサイ
ト等のフェライト相に比べて硬度の高い組織により構成
される。
る。フェライト相分率が60%以上で、十分な一様伸びが
得られるため、フェライト相分率を60%以上とする。
フェライト相の硬さがHvで150以下で一様伸びが優れる
ため、Hvで150以下とする。
低下する。特に平均結晶粒径が5μm未満になると一様伸
びが急激に劣化するため、5μm以上とする。
ドのアスペクト比の平均が2以上 硬質相単体または硬質相が連なったバンドのアスペクト
比が一定値を境に、一様伸びが向上する。ここで、硬質
相バンドというのは、硬質相の中で互いに連結している
一塊りの集合のことを言う。また、アスペクト比は、硬
質相バンドの板厚方向の寸法に対する圧延方向の寸法の
比率のことを言う。後述のように、これらの硬質相また
は硬質相バンドのアスペクト比の平均が2以上で一様伸
びが優れるため、2以上とする。
量Ceqを次のように規定する。 Ceq: 0.36%以下 Ceqは高いほど強度が上がり、フェライトの強度も高く
なるため一様伸びが低下し、0.36%を超えると一様伸び
の低下が著しい。また、Ceqは溶接熱影響部の靭性の指
標で、0.36%を超えた場合、大入熱溶接の熱影響部靭性
が劣化する。このため、Ceqは0.36%以下とする。ここ
で、 Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15 (1) である。
C:0.05〜0.16%、Si:0.1〜0.5%、Mn:0.8〜1.6%、S
ol.Al:0.002〜0.07%を含み、残部が実質的に鉄および
不可避不純物からなることを特徴とする第1の発明の耐
衝突性に優れた鋼材である。
分組成を規定したものである。以下、個々の化学成分の
限定理由について説明する。
の効果が十分でなく、0.16%を超えるとフェライト主体
の組織が得られず一様伸びが劣化するため、0.05〜0.16
%とする。
るが、0.1%未満ではその効果が不十分で、0.5%を超え
ると延性を劣化させるため、0.1〜0.5%とする。
の効果が不十分で、1.6%以上含有するとフェライト主
体の組織が得られないため、0.8〜1.6%とする。
合はその効果が十分でなく、0.07%を超えて含有すると
鋼材の表面疵が発生し易くなるため、0.002〜0.07%添
加する。第3の発明は、鋼組成として、第2の発明の鋼
組成にさらに重量%でTi:0.003〜0.03%を含有するこ
とを特徴とする耐衝突性に優れた鋼材である。
り靭性をより向上させる。Ti は圧延加熱時あるいは溶
接時、TiNを生成し、オーステナイト粒径を微細化し、
母材靭性ならびに溶接熱影響部の靭性を向上させる。そ
の添加量が、0.003%未満ではその効果が十分でなく、
0.03%を超えて添加すると溶接熱影響部の靭性を劣化さ
せるため、Tiの添加量を0.003〜0.03%とする。第4の
発明は、鋼組成として、第2または第3の発明の鋼組成
に、さらに重量%で、Nb:0.005〜0.05%を含有するこ
とを特徴とする耐衝突性に優れた鋼材。
加する。その添加量が0.005%未満ではその効果が十分
でなく、0.05%を超えると溶接熱影響部の靭性を劣化さ
せるため、Nbの添加量を0.005〜0.05%とする。
第4の発明の鋼組成に、さらに重量%で、Cr:0.1〜0.5
%、Mo:0.02〜0.3%、V:0.01〜0.08%、Cu:0.1〜0.6
%の1種以上を含有することを特徴とする耐衝突性に優
れた鋼材である。
o、V、Cuを単独添加あるいは複合添加する。
ると溶接性および溶接影響部の靭性が劣化するため、添
加する場合は0.1〜0.5%とする。
えると溶接性および溶接熱影響部の靭性が著しく劣化す
るため、添加する場合は0.02〜0.3%とする。
では著しく靭性が劣化するため、添加する場合は0.01〜
0.08%とする。
えて添加するとCu割れの懸念が高まるため、添加する場
合は0.1〜0.6%とする。
第5の発明の鋼組成に、さらに重量%で、Ni:0.1〜0.5
%を含有することを特徴とする耐衝突性に優れた鋼材で
ある。
加する。Niの添加量が0.1%未満ではその効果が十分で
なく、0.5%を超えると鋼材コストの上昇が著しいた
め、Niの添加量を0.1〜0.5%とする。第7の発明は、第
1ないし第6の発明の鋼組成を有する鋼素材を加熱後、
Ar3以上850℃以下の温度域で累積圧下率50%以上の圧延
を行ない、その後鋼材平均温度が(Ar3-100)℃以上Ar3以
下の範囲で鋼材平均冷却速度Vc℃/秒がVc<10かつ冷却
時間T秒がT≧30/Vc の関係を満たす条件で第1段の冷
却を行い、鋼材平均温度(Ar3-100)℃以上から10℃/秒以
上の鋼材平均冷却速度で、鋼材平均温度が300℃以上600
℃以下の範囲まで第2段の冷却を行なうことを特徴とす
る耐衝突性に優れた鋼材の製造方法である。
に関するもので、特に圧延条件と冷却条件を規定してい
る。以下、個々の条件について説明する。
50%以上の累積圧下率 変態後の硬質相のアスペクト比を大きくするため、また
靭性を向上させるため、オーステナイトの未再結晶温度
域であるAr3以上850℃以下の温度域で加工歪を導入す
る。累積圧下率については、50%以上で、硬質相のアス
ペクト比が2以上となり易いことと、変態後のフェライ
ト結晶粒径が十分微細化して靭性向上が図られる。従っ
て、圧延中の累積圧下率をAr3以上850℃以下の温度域で
50%以上とする。なお、Ar3は、例えば、Ar3=910-310C
-80Mn-20Cu-15Cr-55Ni-80Mo(℃、元素記号は重量%)
として求められる。
冷却時間T≧30/Vc 第1段の冷却は、フェライト相の相分率、硬さ、粒径を
所定のものにするため制御する。そのためには、鋼材平
均冷却速度Vc℃/秒に対して、冷却時間Tが30/Vc秒未満
であるとフェライト変態が十分に進行しないためフェラ
イト分率が60%に満たない。また冷却速度Vcが10℃/秒
を超えると、 Cのフェライト相からオーステナイト相へ
の拡散が十分に進行せず、フェライト相の硬さがHv150
以下にならない。従って、VcとTはT≧30/Vcおよび Vc<
10の関係を満たすものとする。
上記冷却条件で冷却すると、第2段の冷却条件を如何に
変更しても所定の強度を得ることが出来なくなってしま
うことから、(Ar3-100)℃以上とする。なお、冷却の開
始に関しては、冷却速度を制御する必要のある温度域は
変態の始まるAr3以下であるが、冷却開始はAr3を超える
温度であってもかまわない。要するに、(Ar3-100)℃以
上Ar3以下の温度範囲で、上記の冷却条件で冷却すれば
よい。
面温度、冷却条件等が与えられた場合に、シミュレーシ
ョン計算等により求められたものを用いることができ
る。
温度から10℃/秒以上の冷却速度で300℃〜600℃まで冷
却 第2段の冷却は、硬化相の強度の向上により所定の強度
を確保するために制御する。冷却開始温度は、低いほど
強度が低下し、鋼材平均温度が(Ar3-100)℃未満になる
と所定の強度が得られなくなるため、(Ar3-100)℃以上
とする。冷却速度は、速いほど強度が向上するが、鋼材
平均冷却速度で10℃/秒未満では所定の強度が得られな
いので、10℃/秒以上とする。冷却終了温度は、低いほ
ど強度が向上するが、300℃未満まで冷却すると延靭性
が劣化する。逆に、600℃を超える温度で冷却を停止す
ると所定の強度が得られないので、冷却終了温度を300
℃以上600℃以下とする。
組成を有する鋼素材を加熱後、Ar3以上850℃以下の温度
域で累積圧下率50%以上の圧延を行ない、その後鋼材平
均温度がAr3以上から(Ar3-80)℃以上(Ar3-30)℃以下の
範囲まで鋼材平均冷却速度10℃/秒以上で第1段の冷却
を行い、鋼材平均温度が(Ar3-100)℃以上(Ar3-30)℃以
下の範囲で30秒以上放冷し、鋼材平均温度が(Ar3-100)
℃以上から10℃/秒以上の鋼材平均冷却速度で鋼材平均
温度が300℃以上600℃以下の範囲まで第2段の冷却を行
なうことを特徴とする耐衝突性に優れた鋼材の製造方法
である。
し第6の発明の鋼材の製造方法に関するもので、圧延条
件と冷却条件を規定している。以下、個々の条件につい
て説明する。 圧延条件: Ar3以上850℃以下の温度域で50%以上の累
積圧下率
態後の硬質相のアスペクト比を大きくすること、および
靭性を向上させることを目的としている。圧延条件の限
定理由は、前述の第7の発明に同じである。
0)〜(Ar3-30)℃まで冷却速度10℃/秒以上 第1段の冷却は、それに続く放冷により、フェライト相
の相分率、硬さ、粒径を所定のものにするため行なう。
このため、冷却中はなるべく変態が起こらないように冷
却する。冷却温度域は、鋼材平均の温度が変態が開始す
る前のAr3以上の温度から開始し、放冷中に変態の制御
が行い易い(Ar3-80)℃以上(Ar3-30)℃以下の温度範囲ま
でとする。冷却速度は、鋼材平均冷却速度で10℃/秒未
満であると、変態が進行して放冷中の変態制御が難しく
なるため、10℃/秒以上とする。
3-30)℃の温度範囲で30秒以上 放冷は、フェライト相の相分率、硬さ、粒径を所定のも
のにするため行なう。放冷温度域については、鋼材平均
温度が(Ar3-100)℃未満ではフェライト変態を進行させ
るのに長時間を要し、(Ar3-30)℃を超える温度ではフェ
ライトの変態率が60%に達しない。従って、放冷温度域
を(Ar3-100)℃以上(Ar3-30)℃以下とする。放冷時間に
ついては、30秒未満であるとフェライト変態が十分に進
行しないためフェライト分率が60%に満たず、またCの
フェライト相からオーステナイト相への拡散が十分に進
行せずフェライト相の硬さがHv150以下にならない。従
って、放冷時間を30秒以上とする。
温度から10℃/秒以上の冷却速度で300℃〜600℃まで冷
却 第2段の冷却は、前述の第7の発明と同様、硬化相の強度
の向上により所定の強度を確保するために制御する。冷
却条件の限定理由は、前述の第7の発明に同じである。
については、第7の発明とは方法が異なるが、冷却の効
果は同等である。
ぼ同じ成分で、耐衝突性に優れた、すなわち一様伸び性
に優れた鋼材およびその製造方法を提供する。製造に当
たっては、上記の鋼組成、製造方法に基づき、組織制御
を行う。例えば、通常の転炉や電炉等で所定の鋼組成の
鋼を溶製し、連続鋳造等により得られた鋳片をそのまま
あるいは冷却後、圧延を行う。圧延においては、圧延条
件あるいは冷却条件を調節して鋼材の組織制御を行い、
目標の複合組織を得る。この場合、上記第7または第8
の発明の製造方法を用いることにより、組織制御を容易
に実施することができる。
なく、一様伸びを向上させるために、軟質相であるフェ
ライトと硬質相であるベイナイト、セメンタイト、マル
テンサイト等の2相以上の組織からなる鋼とする。な
お、この鋼材の組織は、それぞれの相の機械的性質を最
適化するとともに、その組み合わせを最適化することを
基本方針に検討を行なう中で得られたものであり、以下
の知見に基づいている。
は、軟質相が主に延靭性向上の役割を担い、硬質相が主
に強度向上の役割を担う。そこで、まず一様伸びを向上
させるために軟質相であるフェライト相の性質を検討し
た。一様伸びは軟質材ほど優れていることは明らかであ
るが、他に硬質相が存在する場合は、両相の差がある程
度大きい方が軟質相への歪の集中が大きくなり、一様伸
びに対する軟質相の寄与が大きくなる。硬質相として比
較的強度の低いベイナイト相を考えた場合、フェライト
相への歪集中を大きくするためには、フェライト相の硬
度をHv150以下にしなければならない。
ど低下するため、複相鋼のフェライト結晶粒径の影響を
調査したところ、平均結晶粒径が5μm以下になると急速
に一様伸びが低下することを確認した。ここで、局部伸
びは結晶粒径の影響を比較的受けないため、結晶粒径の
減少による全伸びの低下は、一様伸びの低下に比べ相対
的に小さいことも確認した。よって、このことからも、
延性を評価する場合には、一様伸びと全伸びを区別して
考える必要がある。
の関係を検討したところ、フェライト相の分率が高いほ
ど一様伸びの向上が見られ、特にフェライト相分率が60
%以上で、一様伸びに優れることを見出した。このよう
にフェライト相分率を所定割合確保するには、冷却条件
を適切に調節すればよい。
Tの影響については次のようになる。冷却速度Vcが小さ
い場合は、相平衡が律速となりある温度以下にならない
とフェライト変態率が60%にならない。そこでこの場合
は、冷却時間Tを十分にとり、フェライト変態が進むよ
う温度降下させる必要がある。一方、Vcが大きい場合
は、相平衡としては相変態に必要な温度域に速やかに温
度低下する。この場合、冷却速度 Vcが大きいほど相変
態の駆動力が大きくなるので、冷却時間Tは短くてよ
い。但し、ある程度原子が拡散し、相変態が進行する時
間が必要であるため、Tには下限がある。
却時間Tが満たすべき関係として、T>30/Vcが得られ
た。実際には、冷却速度Vcは鋼板の板厚や冷却設備によ
り、冷却時間Tは設備配置等により、それぞれある範囲
に限定されるが、上記の不等式の範囲であればそれぞれ
任意に設定可能である。
討したところ、硬質相の分率が40%以下の場合は、組織
分率の影響は小さく、硬質相の形状が大きく影響するこ
とを見出した。形状の影響としては、硬質相が鋼材の圧
延方向に伸展した形状の方が等軸状の場合よりも一様伸
びを向上させることを見出した。ただし、硬質相が各々
孤立分散した形で存在しているときは、個々の硬質相が
ある程度伸展した形状をしていなければ効力を発揮する
ことはできないが、硬質相が連続した形で存在している
場合には、個々の硬質相が伸展した形をしていなくて
も、バンド状組織としてある程度の長さを有していれば
効力を発揮する。
の圧延方向と直角方向の両方で達成されることも同時に
知見した。
図1に示す。図1(a)は、硬質相のアスペクト比が単独
で2以上の場合の組織である。このように伸展した硬質
相は、伸展したオーステナイトを低温変態させれば容易
に得られる。図1(b)は、硬質相のアスペクト比が単独
では2未満であるが、連結した状態で2以上の場合の組織
である。図1(c)は、硬質相のアスペクト比が2未満で連
結していない場合の組織である。
ナイト未再結晶温度域の累積圧下率だけでなく、鋳造条
件や未再結晶温度域を越える温度での圧延条件にも影響
を受ける場合がある。
た。強度は、硬質相の強度と分率に大きく影響を受ける
が、鋼の成分組成が一定の場合は、たとえ組織が変化し
ても、製造条件の選択により、強度をほぼ一定に制御で
きることを確認した。すなわち、硬質相の分率を比較的
大きくしたい場合には、圧延後の水冷温度を高めにした
り冷却速度を低目にして硬質相の強度を低目とすること
により、一方、硬質相の分率を比較的小さくしたい場合
には、逆に圧延後の水冷温度を低目にしたり冷却速度を
高目にして硬質相の強度を高くすることにより、強度を
一定に保つことが可能である。
分率が小さい場合には、フェライト相から変態時に排出
され硬質相に濃化する炭素濃度が高くなり、硬質相がよ
り硬化し易くなるという原理から、比較的容易に達成さ
れる。また、冷却速度の制御方法は、所定の条件を満た
せば放冷でもかまわないが、保温する場合は鋼材の上に
断熱カバーを設けたり、冷却速度を上げる場合には水冷
することが考えられる。
は、靭性も重要な機械的性質の一つであるが、本発明が
対象にしているフェライト主体の組織の鋼材において
は、靭性は主にフェライト結晶粒径の影響を受けるた
め、望ましくは結晶粒径を40μm以下にすることが必要
である。結晶粒径の制御は、圧延工程で圧下率を一定値
以上にすること等により可能である。
例に用いた供試鋼の成分を示す。表示しない残部は、実
質的に鉄および不可避不純物よりなる。表1における鋼
種A〜Hは請求項2〜6のいずれかに記載の発明を満足する
成分組成の鋼で、鋼種IとJはCeqが発明の範囲外となっ
ている。これらの鋼組成を有する鋳片を加熱後、板厚13
〜32mの鋼板に圧延して冷却した。表2に製造条件を示
す。
より観察し、フェライト相と硬質相の分率、フェライト
の結晶粒径、硬質相のアスペクト比を測定した。フェラ
イト相の硬さはマイクロビッカース硬度計により測定し
た。
を求めた。引張試験は、全厚のJIS1B号試験片を、鋼板
の圧延方向と直角の方向に採取して試験した。一様伸び
は、最大応力時の伸びとして評価した。衝撃試験は、JI
S 4号標準試験片を、圧延方向と平行に、かつ表層に寄
せて(鋼材の表面と試験片の端面との間隔が2mm以下)
採取して試験した。靭性は、vTsにより評価した。表3に
鋼板のミクロ組織および機械的特性を示す。
上記表1の鋼種A〜Hを用いた製造例で、本発明による発
明材である。いずれもTSが500MPa級で、一様伸びが23%
以上の優れた特性が得られている。また、鋼番1〜16に
ついては、YSは360MPa以上、vTsは-40℃より低く、いず
れも目標特性とするYS≧355MPa、TS≧500MPa、一様伸び
≧22%、vTs≦-40℃を満足している。
れている比較材である。
次のようになる。鋼番17は、硬質相のアスペクト比が2
に満たないため、一様伸びが劣っている。鋼番18は、フ
ェライト相分率が小さく、またフェライト結晶粒径が小
さいため、一様伸びが劣っている。なお、鋼番18の硬質
相のアスペクト比は、硬質相分率が高く、硬質相が網目
状に連結した箇所が多く、評価不能である。
発明の範囲内であるが、後述のように製造条件が不適切
なため機械的性質が劣る。鋼番22と鋼番28は、Ceqが高
いため、フェライト相の硬度が高く、一様伸びが劣って
いる。鋼番23,24は、フェライト相分率が低いため、一
様伸びが劣っている。鋼番26は、フェライト相分率が低
く、またフェライトの硬さが高いため、一様伸びが劣っ
ている。鋼番27は、フェライト相の硬さが高いため、一
様伸びが劣っている。
観点から説明すると、次のようになる。(組織について
も繰り返しになるが記しておく。)鋼番17は、オーステ
ナイト未再結晶域での圧下率が小さかったため、硬質相
のアスペクト比が2に満たず、一様伸びが劣っている。
鋼番18は、第l段の冷却速度と冷却時間が低くかつ短い
ため、フェライト相分率が小さく、またフェライト結晶
粒径が小さくなり、一様伸びが劣っている。
たため、強度が低い。鋼番20と25は、第2段の冷却速度
が低かったため、強度が低い。鋼番21は、第2段の冷却
の終了温度が高かったため、強度が低い。鋼番23,24
は、第1段冷却の終了温度が適切でないため(それぞ
れ、高すぎ、低すぎ)、フェライト相分率が低くなり、
一様伸びが劣っている。鋼番26は、第1段冷却と第2段
冷却の間の放冷時間が短かったため、フェライト相分率
が低く、またフェライトの硬さが高くなり、一様伸びが
劣っている。鋼番27は、第2段の冷却の終了温度が低か
ったため、フェライト相の硬さが高くなり、一様伸びが
劣っている。
ぼ同じ成分で、軟質相であるフェライトと硬質相の2相
以上の組織からなる鋼を用い、それぞれの相の機械的性
質を最適化し、その組み合わせを最適化することによ
り、一様伸びが高く耐衝突性に優れた鋼材を得ることが
可能である。その結果、現状用いられている鋼材に対し
て合金元素の添加等によるコストの増加なしに、船舶の
衝突時のエネルギー吸収性能に優れた鋼材が提供可能
で、産業上その効果は極めて大きい。また、大型タンカ
ーの座礁や衝突による油流出を防止するという観点か
ら、環境保護の効果も極めて大きい。
Claims (8)
- 【請求項1】 鋼組成が重量%でCeq≦0.36%を満た
し、組織がフェライト相と硬質相からなり、前記フェラ
イト相の相分率が60%以上、硬さがHv150以下、平均粒
径が5μm以上であり、かつ前記硬質相のアスペクト比の
平均または前記硬質相が連なった硬質相バンドのアスペ
クト比の平均が2以上であることを特徴とする耐衝突性
に優れた鋼材。ただし、 Ceq=C+Mn/6+(Cr+Mo+V)/5+(Ni+Cu)/15 (1) であり、元素記号は含有量(重量%)を表す。 - 【請求項2】 鋼組成として、重量%で、C:0.05〜0.1
6%、Si:0.1〜0.5%、Mn:0.8〜1.6%、Sol.Al:0.002
〜0.07%を含み、残部が実質的に鉄および不可避不純物
からなることを特徴とする請求項1記載の耐衝突性に優
れた鋼材。 - 【請求項3】 鋼組成として、請求項2記載の鋼組成に
さらに重量%でTi:0.003〜0.03%を含有することを特
徴とする耐衝突性に優れた鋼材。 - 【請求項4】 鋼組成として、請求項2または請求項3
の発明の鋼組成に、さらに重量%で、Nb:0.005〜0.05
%を含有することを特徴とする耐衝突性に優れた鋼材。 - 【請求項5】 鋼組成として、請求項2ないし請求項4
記載の鋼組成に、さらに重量%で、Cr:0.1〜0.5%、M
o:0.02〜0.3%、V:0.01〜0.08%、Cu:0.1〜0.6%の1
種以上を含有することを特徴とする耐衝突性に優れた鋼
材。 - 【請求項6】 鋼組成として、請求項2ないし請求項5
記載の鋼組成に、さらに重量%で、Ni:0.1〜0.5%を含
有することを特徴とする耐衝突性に優れた鋼材。 - 【請求項7】 請求項1ないし請求項6記載の鋼組成を
有する鋼素材を加熱後、Ar3以上850℃以下の温度域で累
積圧下率50%以上の圧延を行ない、その後、鋼材平均温
度が(Ar3-100)℃以上Ar3以下の範囲で鋼材平均冷却速度
Vc℃/秒がVc<10かつ冷却時間T秒がT≧30/Vc の関係を
満たす条件で第1段の冷却を行い、鋼材平均温度(Ar3-1
00)℃以上から10℃/秒以上の鋼材平均冷却速度で、鋼材
平均温度が300℃以上600℃以下の範囲まで第2段の冷却
を行なうことを特徴とする耐衝突性に優れた鋼材の製造
方法。 - 【請求項8】 請求項1ないし請求項6記載の鋼組成を
有する鋼素材を加熱後、Ar3以上850℃以下の温度域で累
積圧下率50%以上の圧延を行ない、その後、鋼材平均温
度がAr3以上から(Ar3-80)℃以上(Ar3-30)℃以下の範囲
まで鋼材平均冷却速度10℃/秒以上で第1段の冷却を行
い、鋼材平均温度が(Ar3-100)℃以上(Ar3-30)℃以下の
範囲で30秒以上放冷し、鋼材平均温度が(Ar3-100)℃以
上から10℃/秒以上の鋼材平均冷却速度で鋼材平均温度
が300℃以上600℃以下の範囲まで第2段の冷却を行なう
ことを特徴とする耐衝突性に優れた鋼材の製造方法。
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