JP3524536B2 - 癌の診断、モニタリング、ステージング、イメージングおよび処置のための新規方法 - Google Patents

癌の診断、モニタリング、ステージング、イメージングおよび処置のための新規方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】発明の属する技術分野 本発明の一部は、癌、特に肺癌の検出、診断、モニタリ
ング、ステージング、予後判定、イメージングおよび処
置のための新規に開発されたアッセイに関する。
【0002】背景技術 肺癌は、米国で男性女性両方における2番目に最も多い
種類の癌であり、両方の性における癌による死の最も多
い原因である。肺癌は、肺に由来する原発性腫瘍、また
は、腸管または乳房などの他の器官から播種された二次
性腫瘍に結果することができる。原発性肺癌は、小細胞
肺癌、非小細胞肺癌および中皮腫の3つの主要な種類に
分かれる。小細胞肺癌は、癌細胞が独特のエンバクの形
状をしているため、「エンバク細胞」肺癌とも呼ばれて
いる。非小細胞肺癌には3つの種類がある。これらは、
同様な挙動を示し、処置に対して小細胞肺癌とは異なる
反応をするために共にまとめられている。3つの種類と
は、扁平上皮癌、腺癌および大細胞癌である。扁平上皮
癌は、最も多い種類の肺癌である。それは、気道を裏打
ちする細胞に由来する。腺癌も気道を裏打ちする細胞に
由来する。しかしながら、腺癌は、粘液(痰)を産生す
る特殊な種類の細胞に由来する。大細胞肺癌は、細胞が
顕微鏡下で見たときに大きく丸く見えるためにこのよう
に命名された。中皮腫は、胸膜と呼ばれる肺の被膜を冒
す珍しい種類の癌である。中皮腫はしばしばアスベスト
への暴露により生ずる。
【0003】二次性肺癌は、体内のどこか別の部位(例
えば乳房または腸管)で発生し、肺に播種された癌であ
る。二次性肺癌の処置の選択は、該癌がどこで発生した
かに依存する。換言すると、乳房から播種された癌は、
乳癌の処置に反応し、腸管から播種された癌は腸癌の処
置に反応するはずである。癌のステージは、癌がどの程
度まで播種されたかを示す。ステージングは、処置がし
ばしば癌のステージによって決定されるので重要であ
る。ステージングは、非小細胞肺癌と小細胞肺癌で異な
る。
【0004】非小細胞癌は4つのステージに分けること
ができる。ステージIはリンパ節に癌がない、極めて局
在化した癌である。ステージIIの癌は罹患肺の上部の
リンパ節に播種されている。ステージIIIの癌は、癌
が発生した部位の近傍に播種されている。これは、胸
壁、肺の被膜(胸膜)、胸部の中央(縦隔)またはその
他のリンパ節であることができる。ステージIVの癌
は、体の他の部位に播種されている。
【0005】小細胞肺癌は疾患の進行のかなり早期に播
種されるので、小細胞肺癌は、2つの群にのみ分けられ
る。これらは、癌が1つの肺および近傍のリンパ節にし
か見ることができない限局型の疾患、および、癌が肺の
外側の胸部、または、体の他の部位に播種された進展型
の疾患である。さらに、播種がスキャンで明白でない場
合でさえ、いくつかの癌細胞はそこを離れ、血流または
リンパ系を通じて移動していると考えられる。したがっ
て、安全のために、小細胞肺癌は、二次性癌が見られて
も見られなくとも、それらが播種されたものとして処置
することが好ましい。極めて早期の場合を除き、手術は
小細胞肺癌の処置に通常は用いられないため、ステージ
ングは、いくつかの他の種類の癌でのようには重要では
ない。放射線治療を伴うまたは伴わない化学療法がしば
しば使われる。最初に行なわれたスキャンおよびテスト
は、患者が処置にどれだけ反応したかを見るために後に
用いられる。
【0006】肺癌の検出、診断、モニタリング、ステー
ジングおよび予後判定のために用いられる手順は、患者
の予後に関してきわめて重要である。例えば、早期の肺
癌と診断された患者の5年生存率は、遠隔転移した肺癌
と診断された患者の生存率に比べ、一般的に大変大き
い。早期肺癌の検出に関してより高感度で特異的な新し
い診断方法が明らかに必要とされている。肺癌患者は最
初の治療の後、および、アジュバント療法の期間中、治
療への反応を決定し、転移の持続性疾患または再発性疾
患を検出するために、緊密にモニタリングされる。肺
癌、その再発および進行の検出に関してより高感度で特
異的な肺癌マーカーが明らかに必要とされている。
【0007】肺癌の管理におけるその他の重要なステッ
プは、患者の疾患のステージを決定すること、すなわ
ち、ステージング(病期分類)である。ステージの決定
は、潜在的な予後判定価値を有しており、最適な治療の
設計のために基準を提供する。一般的に、肺癌の病理学
的ステージングは、臨床ステージングよりも好まれる
が、これは前者がより正確な予後判定を与えるからであ
る。しかしながら、臨床ステージングは、病理学的評価
のために組織を採取する侵襲的な手順に依存しないた
め、もしそれが病理学的ステージングと同程度に正確な
ものであれば、好ましいだろう。細胞、組織または体液
において、異なる浸潤ステージ間を差別化できる新しい
マーカーを検出することにより肺癌のステージングを改
善することができるだろう。
【0008】本明細書に参照として組込まれている米国
特許第5,877,290号および米国特許第5,83
7,498号は、ヒトスタニウス小体、スタニオカルシ
ンポリペプチドおよびこのポリペプチドをコードする核
酸配列を開示している。また、このポリペプチドを電解
質異常および骨吸収の亢進による異常の処置などの治療
目的に用いる方法も開示されている。
【0009】本明細書でLng108と呼んでいるこの
ポリペプチドおよびこのポリペプチドをコードする核酸
が、癌の診断用マーカーであることが現在見出されてい
る。したがって、本発明では、Lng108を介した癌
の検出、診断、モニタリング、ステージング、予後判
定、in vivoでのイメージングおよび処置のための方法
が提供されている。Lng108は、中でも、配列番号
1または2のポリヌクレオチド配列を含む遺伝子により
発現される天然のタンパク質に関する。それによりコー
ドされるポリペプチドのアミノ酸配列を推測したもの
を、配列番号3に記述した。本明細書で「Lng10
8」はまた、遺伝コードの縮重により、配列番号1また
は2に比べて異なる核酸配列を含むが、同じタンパク質
をコードしているポリヌクレオチドも意味する。別の側
面では、本明細書で用いるLng108により意味され
るものは、配列番号1または2を含む遺伝子によりコー
ドされる天然のmRNAを意味し、または、配列番号1
または2を含む現在の遺伝子、または、配列番号1また
は2のアンチセンス配列にストリンジェントな条件下で
ハイブリダイズすることが可能なポリヌクレオチドのレ
ベルに関し得る。
【0010】本発明のその他の目的、特徴、利点および
側面は、以下の説明により当業者に明らかになるだろ
う。しかしながら、以下の説明および具体例は、本発明
の好ましい態様を示しているが、ただ説明のためにのみ
与えられていると理解されるべきである。本開示発明の
精神および範囲内の様々な変化および変更は、以下の説
明を読み、本開示の他の部分を読むことにより、当業者
に容易に明らかになるだろう。
【0011】本発明の概要 これらおよびその他の目標のため、本発明の目的は、細
胞、組織または体液におけるLng108のレベルを、
正常ヒト対照の好ましくは同種の細胞、組織または体液
におけるLng108のレベルと比較した場合の変化を
分析することにより癌の存在を診断するための方法を提
供することであって、ここでは患者におけるLng10
8レベルの正常ヒト対照に対する変化が癌に関係してい
る。
【0012】転移を有するとは知られていない癌を有す
る患者において、転移している癌を有する疑いのあるヒ
ト患者を特定し、このような患者からの細胞、組織また
は体液試料をLng108について分析し、このような
細胞、組織または体液におけるLng108のレベルを
正常ヒト対照の好ましくは同種の細胞、組織または体液
におけるLng108のレベルと比較することにより、
転移性の癌を診断する方法がさらに提供され、ここでは
患者におけるLng108のレベルの正常ヒト対照に対
する増加が転移した癌に関係している。
【0013】また本発明により、癌を有するヒトにおい
て、癌を有するヒト患者を特定し、このような患者から
の細胞、組織または体液試料をLng108について分
析し、このような細胞、組織または体液におけるLng
108のレベルを正常ヒト対照の好ましくは同種の細
胞、組織または体液におけるLng108のレベルと比
較することにより、癌をステージングする方法も提供さ
れ、ここでは患者におけるLng108のレベルの正常
ヒト対照に対する増加が進行している癌に関係し、そし
て、Lng108レベルの減少が消退しているまたは寛
解期にある癌に関係している。
【0014】さらに、ヒト患者における癌を、転移の開
始についてモニタリングする方法が提供される。該方法
は、転移を有するとは知られていない癌を有するヒト患
者を特定し、このような患者からの細胞、組織または体
液試料をLng108について定期的に分析し、このよ
うな細胞、組織または体液におけるLng108のレベ
ルを正常ヒト対照の好ましくは同種の細胞、組織または
体液試料におけるLng108のレベルと比較すること
を含み、ここでは患者におけるLng108のレベルの
正常ヒト対照に対する増加が転移した癌に関係してい
る。
【0015】さらに、ヒト患者における癌のステージの
変化を、該患者のLng108レベルを調べることによ
りモニタリングする方法が提供される。該方法は、癌を
有するヒト患者を特定し、このような患者からの細胞、
組織または体液試料をLng108について定期的に分
析し、このような細胞、組織または体液におけるLng
108のレベルを正常ヒト対照の好ましくは同種の細
胞、組織または体液試料におけるLng108のレベル
と比較することを含み、ここで患者におけるLng10
8のレベルの正常ヒト対照に対する増加が進行している
癌に関係し、そして、Lng108のレベルの減少が消
退しているまたは寛解期にある癌に関係する。
【0016】さらに、癌のイメージングおよび処置に用
いるためのLng108を標的にした新しい治療剤の設
計方法が提供される。例えば、1つの態様では、Lng
108を標的にした抗体またはこのような抗体の断片な
どの治療剤は、疾患または状態を検出または診断する目
的で、患者におけるLng108の局在を検出またはイ
メージ化するために用いることができる。このような抗
体は、ポリクローナル、モノクローナルまたはオムニク
ローナル(omniclonal)であることができ、または分子
生物学的技術により調することができる。ここで、そ
して、本明細書を通じて用いる場合、「抗体」という用
語はまた、SELEXと呼ばれる当業者によく知られた
in vitroでの進化手順(evolution protocol)により誘導
されたものなどのアプタマーおよび一本鎖オリゴヌクレ
オチドを含むこととする。抗体は、放射性同位体および
常磁性金属を含むがこれらに限定されない様々な検出可
能な標識で標識することができる。また、Lng108
の濃度および/または活性を減少させる小分子および抗
体などの治療剤を、Lng108の発現を特徴とする疾
患の処置に用いることができる。このような剤は、本明
細書の教示に従い容易に同定することができる。
【0017】本発明のその他の目的、特徴、利点および
側面は、以下の説明により当業者に明らかになるだろ
う。しかしながら、以下の説明および具体例は、本発明
の好ましい態様を示しているが、ただ説明のためにのみ
与えられていると理解されるべきである。本開示発明の
精神および範囲内の様々な変化および変更は、以下の説
明を読み、本開示の他の部分を読むことにより、当業者
に容易に明らかになるだろう。
【0018】本発明は、Lng108のレベルを正常ヒ
ト対照におけるLng108のレベルと比較することに
より、癌の検出、診断、モニタリング、ステージング、
予後判定、in vivoでのイメージングおよび処置のため
の量的および質的な診断アッセイおよび診断方法に関す
る。Lng108は、中でも、配列番号1または2のポ
リヌクレオチド配列を含む遺伝子により発現される天然
のタンパク質に関する。それによりコードされるポリペ
プチドのアミノ酸配列を推測したものを、配列番号3に
記述した。本明細書で「Lng108」はまた、遺伝子
コーディングの縮重により、配列番号1または2とは異
なる核酸配列を含むが、同じタンパク質をコードしてい
るポリヌクレオチドも意味する。別の側面では、本明細
書で用いるLng108により意味されるものは、配列
番号1または2を含む遺伝子によりコードされる天然の
mRNAを意味し、または、配列番号1または2を含む
現在の遺伝子、または、配列番号1または2のアンチセ
ンス配列にストリンジェントな条件下でハイブリダイズ
することが可能なポリヌクレオチドのレベルに関し得
る。このようなレベルは好ましくは、細胞、組織および
/または体液のうちの少なくとも1つにおいて測定し、
正常および異常レベルの決定を含む。したがって、例え
ば、正常対照の体液、細胞または組織試料に比較したL
ng108の過剰発現を診断するための本発明による診
断アッセイは、肺癌を含む癌の存在を診断するのに用い
てもよい。Lng108は、本発明の方法においては単
独で測定しても、または、より好ましくは、他の癌の診
断マーカーと組合せて測定してもよい。したがって、本
発明の方法は、Lng108と同様に他の癌マーカーの
レベルの測定と組合せて使うことが好ましい。本発明に
有用な、Lng108以外の他の癌マーカーは、当業者
に知られており、テストする癌に依存するだろう。
【0019】Lng108の検出は、肺癌において特に
有用である。しかしながら、このマーカーはまた、他の
種類の癌の診断、予後判定、ステージング、イメージン
グおよび処置にも有用である。
【0020】診断アッセイ 本発明は、細胞、組織または体液におけるLng108
のレベルの、正常ヒト対照からの好ましくは同種の細
胞、組織または体液におけるLng108のレベルと比
較した場合の変化を分析することにより、肺癌を含む癌
の存在を診断する方法を提供し、ここで患者におけるL
ng108のレベルの正常ヒト対照に対する増加が癌の
存在に関係している。本発明を限定することなく、量的
診断アッセイにおいては、通常、テストした患者が癌を
有することを示す陽性結果は、細胞、組織または体液に
おけるLng108などの癌マーカーのレベルが、正常
ヒト対照の好ましくは同じ細胞、組織または体液におけ
るより、少なくとも2倍高い、最も好ましくは5倍高い
結果である。
【0021】本発明はまた、まだ転移していない癌を有
する患者において、転移性の肺癌を含む転移性の癌を診
断する方法も提供する。本発明の方法では、転移した可
能性のある(しかし、事前に転移したことが知られてい
ない)癌を有する疑いのある患者を特定する。これは、
当業者に知られた様々な手段によって達成される。本発
明において、細胞、組織または体液におけるLng10
8の存在を決定することは、転移していない癌と転移し
た癌とを区別するのに特に有用である。既存の技術は、
転移した癌と転移していない癌とを区別することが困難
であり、適切な処置の選択はしばしばこうした知識に依
存している。
【0022】本発明では、ヒト患者の細胞、組織または
体液において測定された癌マーカーレベルの1つはLn
g108である。ヒト患者におけるレベルは、正常ヒト
対照の好ましくは同種の細胞、組織または体液における
Lng108レベルと比較される。つまり、観察された
癌マーカーが血清中のLng108である場合、このレ
ベルは好ましくは正常ヒト対照の血清中のLng108
レベルと比較される。ヒト患者におけるLng108の
正常ヒト対照に対する増加は、転移した癌と関係してい
る。
【0023】本発明を限定することなく、量的診断アッ
セイにおいては、通常、テストしたまたはモニタリング
した患者の癌が転移したことを示す陽性結果は、細胞、
組織または体液におけるLng108などの癌マーカー
のレベルが、正常ヒト対照の好ましくは同じ細胞、組織
または体液におけるより、少なくとも2倍高い、最も好
ましくは5倍高い結果である。ここで用いる正常ヒト対
照は、癌のないヒト患者および/または患者からの非癌
性試料を含む。転移の診断またはモニタリングの方法に
おいて、正常ヒト対照はまた、転移していない肺癌など
の癌を有することが信頼できる方法で決定されたヒト患
者からの試料を含むことが好ましいだろう。
【0024】ステージング 本発明はまた、ヒト患者において癌をステージングする
方法も提供する。該方法は、癌を有するヒト患者を特定
し、このような患者の細胞、組織または体液試料をLn
g108について分析することを含む。測定したLng
108のレベルは、次に、正常ヒト対照の好ましくは同
種の細胞、組織または体液におけるLng108レベル
と比較され、ここでヒト患者におけるLng108のレ
ベルの正常ヒト対照に対する増加が進行している癌に関
係し、そして、Lng108のレベルの減少が消退して
いるまたは寛解期にある癌に関係する。
【0025】モニタリング さらに提供されるのは、ヒト患者における癌を、転移の
開始についてモニタリングする方法である。該方法は、
転移を有するとは知られていない癌を有するヒト患者を
特定し、このような患者からの細胞、組織または体液を
Lng108について定期的に分析し、そして、このよ
うな細胞、組織または体液におけるLng108のレベ
ルを正常ヒト対照の好ましくは同種の細胞、組織または
体液におけるLng108のレベルと比較することを含
み、ここで患者におけるLng108のレベルの正常ヒ
ト対照に対する増加が転移した癌に関係する。
【0026】本発明によりさらに提供されるのは、癌の
ステージの変化をモニタリングする方法である。該方法
は、癌を有するヒト患者を特定し、このような患者から
の細胞、組織または体液をLng108について定期的
に分析し、そしてこのような細胞、組織または体液にお
けるLng108のレベルを正常ヒト対照の好ましくは
同種の細胞、組織または体液におけるLng108のレ
ベルと比較することを含み、ここで患者におけるLng
108のレベルの正常ヒト対照に対する増加がステージ
の進行している癌に関係し、そして、Lng108のレ
ベルの減少がステージの後退しているまたは寛解期にあ
る癌に関係する。
【0027】このような患者を転移の開始についてモニ
タリングする場合は、定期的に、そして好ましくは年4
回を基礎に行なう。しかしながら、癌、特定の患者、お
よび癌のステージによってはより高頻度に、または、よ
り低頻度に行なってもよい。
【0028】予後判定テストおよび臨床試験のモニタリ
ング ここに記載した方法は、さらに、Lng108のレベル
の増加に関係する疾患または異常を有するかまたは進行
させる危険がある対象を特定するための予後判定アッセ
イに用いることができる。本発明は、テスト試料がLn
g108が検出されたヒト患者から得られたものである
方法を提供する。正常ヒト対照に比較して高いレベルの
Lng108の存在は、該ヒト患者が癌、特に肺癌を進
行させる危険があるという診断である。
【0029】Lng108の発現または活性を減少させ
る治療剤の有効性はまた、臨床試験でのヒト患者、また
は、ヒト細胞などにおけるin vitroのスクリーニングア
ッセイおけるLng108の発現レベルを分析すること
によりモニタリングできる。このように、遺伝子発現パ
ターンは、ヒト患者、または、場合によっては細胞の、
テストされた剤への生理学的反応を示すマーカーとして
利用できる。
【0030】遺伝子の損傷または突然変異の検出 本発明の方法は、Lng108における遺伝子損傷また
は突然変異を検出し、それにより遺伝子損傷を有するヒ
トが癌の危険を有するか、または、癌、特に肺癌を有す
るか決定することにも用いることができる。遺伝子の損
傷は、例えば、Lng108からの1個または2個以上
のヌクレオチドの欠失および/または付加および/また
は置換の存在、Lng108の染色体再構成の存在、L
ng108の異常修飾(ゲノムDNAのメチル化パター
ンなど)、Lng108のmRNA転写物の非野生型ス
プライシングパターンの存在、Lng108の対立遺伝
子の欠失、および/またはLng108タンパク質の不
適切な翻訳後修飾の存在を確認することにより検出でき
る。Lng108におけるこのような損傷を検出する方
法は、当業者に知られている。
【0031】アッセイ技術 ヒト由来の試料において、本発明のLng108などの
遺伝子発現レベルを決定するのに用いることができるア
ッセイ技術は当業者によく知られている。このようなア
ッセイ方法は、ラジオイムノアッセイ、逆転写酵素PC
R(RT‐PCR)アッセイ、免疫組織化学アッセイ、
in situハイブリダイゼーションアッセイ、結合蛋白競
合アッセイ、ウェスタンブロット分析、ELISAアッ
セイおよびプロテオミクスアプローチ(proteomic appr
oache)を含む。これらの中で、ELISAが、生物学
的液体における遺伝子の発現タンパク質の診断に好まれ
ることが多い。
【0032】もし商業的に容易に入手できない場合、E
LISA分析は、最初に、Lng108に特異的な抗
体、好ましくはモノクローナル抗体の調を含む。さら
に、一般的に、Lng108に特異的に結合するレポー
ター抗体が調される。レポーター抗体は、放射性試
薬、蛍光試薬または例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ
酵素またはアルカリホスファターゼなどの酵素試薬など
の検出可能な試薬に付着している。
【0033】ELISAを行なう場合、Lng108に
特異的な抗体は、例えばポリスチレンディッシュなど
の、抗体を結合する固形支持体上でインキュベートされ
る。次に、ディッシュ上の任意の遊離タンパク質結合部
位(free protein binding sites)は、ウシ血清アルブ
ミンなどの非特異的タンパク質とインキュベートするこ
とにより被覆される。次に、分析される試料は、Lng
108がポリスチレンディッシュに付着した特異抗体に
結合する時間中、ディッシュ内でインキュベートされ
る。非結合試料はバッファーで洗い流される。Lng1
08を特異的に指向し、西洋ワサビペルオキシダーゼな
どの検出可能な試薬を連結したレポーター抗体がディッ
シュ内に設置され、該レポーター抗体がLng108に
結合した任意のモノクローナル抗体に結合する。次に非
付着レポーター抗体が洗い流される。比色基質を含むペ
ルオキシダーゼ活性のための試薬が、次にディッシュに
加えられる。Lng108抗体に連結した、固定化した
ペルオキシダーゼが着色反応産物を産生する。所定の時
間内に発生した色素の量は、試料中のLng108タン
パク質の量に比例している。量的な結果は、通常標準曲
線を参照して得られる。
【0034】競合アッセイもまた用いることができ、そ
こでは、Lng108の特異抗体が固形支持体に付着し
ており、標識したLng108および患者またはヒト対
照に由来する試料が固形支持体上を通過する。固形支持
体に付着した検出標識量を試料中のLng108の量に
相関させることができる。
【0035】Lng108の核酸配列の全てまたは一部
をハイブリダイゼーションプローブとして用いた核酸法
(nucleic acid method)もまた、肺癌を含む癌のマー
カーとしてのLgn108のmRNAを検出するのに用
いることができる。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、
およびリガーゼ連鎖反応(LCR)および核酸配列をも
とにした増幅(NASABA)などのその他の核酸法
を、様々な悪性腫瘍を診断およびモニタリングするため
の悪性細胞の検出に用いることができる。例えば、逆転
写酵素PCR(RT‐PCR)は、特定のmRNA集団
の存在を、何千ものその他のmRNA種の複雑な混合物
の中で検出するために用いることができる強力な技術で
ある。RT‐PCRにおいては、1種類のmRNAが、
酵素である逆転写酵素を用いて最初に相補DNA(cD
NA)に逆転写され、次に該cDNAが標準的なPCR
反応と同様に増幅される。このように、RT‐PCR
は、増幅により、単一種のmRNAの存在を明らかにす
ることができる。したがって、該mRNAがそれを産生
する細胞に高度に特異的である場合、RT‐PCRは、
特定の種類の細胞の存在を同定するのに用いることがで
きる。
【0036】固形支持体に配列(つまりグリッド化(gr
idding))されたクローンまたはオリゴヌクレオチドへ
のハイブリダイゼーションは、その遺伝子の発現の検出
および発現レベルの定量の両方に用いることができる。
この手法では、Lng108遺伝子をコードするcDN
Aが基材に固定される。基材は、ガラス、ニトロセルロ
ース、ナイロンまたはプラスチックを含むがこれらに限
定されない任意の好適な種類であってもよい。Lng1
08遺伝子をコードするDNAの少なくとも一部を基材
に付着させ、次に、当該組織から単離したRNAまたは
RNAのコピーである相補DNA(cDNA)であって
もよい検体とインキュベートする。基材に結合したDN
Aと検体とのハイブリダイゼーションは、検体またはハ
イブリッド検出用の二次分子を放射性標識または蛍光標
識することを含むがこれらに限定されないいくつかの手
段で検出し定量することができる。遺伝子の発現レベル
の定量は、検体からの信号の強度を、既知の標準から決
定したレベルと比較することによってなされる。標準
は、標的遺伝子のin vitroでの転写、収量の定量化、そ
して、この材料を用いて標準曲線を作成することにより
得ることができる。
【0037】プロテオミクスアプローチでは、2次元電
気泳動が当業者によく知られた技術である。血清などの
試料からの個別のタンパク質の単離は、通常ポリアクリ
ルアミドゲル上での、タンパク質の異なる特性による配
列決定的な分離(sequentialseparation)を用いて達成
される。最初に、タンパク質は電流を用いて大きさによ
り分離される。電流は全てのタンパク質に均等に作用
し、それにより、小さいタンパク質は大きいタンパク質
よりもゲル上で早く移動する。第2次元では、第1次元
に対して直角に電流をかけ、タンパク質を大きさに基づ
いてではなく、各タンパク質が有する特定の電荷に基づ
いて分離する。異なる配列の2つのタンパク質で大きさ
および電荷の両方に関して同一なものは存在しないた
め、2次元分離の結果は、各タンパク質が固有のスポッ
トを占有する正方形のゲルとなる。該スポットの化学的
プローブまたは抗体プローブによる分析、またはそれに
引き続くタンパク質のマイクロシーケンスにより、所定
のタンパク質の相対的な存在度を明らかにし、試料中の
タンパク質の同定をすることができる。
【0038】上記のテストは、組織生検材料および検死
解剖材料を含む患者から得られた様々な細胞、体液およ
び/または組織抽出物(ホモジネートまたは可溶化した
組織)に由来する試料について行なうことができる。本
発明に有用な体液は、血液、尿、唾液または任意のその
他の体分泌物またはそれらの派生物を含む。血液は、全
血、血漿、血清、または任意の血液の派生物を含む。
【0039】Lng108の in vivo でのターゲティン
グ/癌治療 Lng108の同定はまた、癌、そして特に肺癌のイメ
ージングおよび処置のための新しい治療法の合理的な設
計にとって有用である。例えば、1つの態様では、Ln
g108に特異的に結合する抗体を作製し、癌を患って
いる疑いのある患者にin vivoで用いることができる。
Lng108に特異的に結合する抗体は、癌を有する疑
いのある患者に、診断および/または治療の目的で、注
射することができる。このように、本発明の他の側面
は、このような処置を要するヒト患者において、該患者
に有効な量の抗体を投与することにより肺癌の発症を予
防し、そして、肺癌を処置するための方法に関する。
「有効な量」とは、外科切除のための腫瘍の縮小または
腫瘍の消滅をもたらすために、腫瘍上に発現した標的抗
原に結合するのに必要な抗体の量または濃度を意味す
る。該抗体のLng108への結合は、このようなLn
g108を発現している癌細胞の死をもたらすと考えら
れる。in vivoでの診断のための抗体の調および使用
は当該分野でよく知られている。たとえば、インジウム
−111で標識した抗体−キレーターが、癌胎児性抗原
を発現している腫瘍のラジオイムノシンチグラフィーに
よるイメージングでの使用に関して記述されている(Su
merdon et al. Nucl. Med. Biol. 1990 17:247-254)。
特にこれらの抗体‐キレーターは、再発性の結腸直腸癌
を有する疑いのある患者において腫瘍を検出するのに用
いられた(Griffin et al. J. Clin. Onc. 1991 9:631-
640)。磁気共鳴イメージングで用いる標識としての常
磁性イオンを有する抗体もまた記述されている(Lauffe
r, R.B. Magnetic Resonance in Medicine 1991 22:339
-342)。Lng108に対する抗体も同様に用いること
ができる。Lng108に特異的に結合する標識された
抗体を、癌を有する疑いのある患者に、該患者の疾患の
状態の診断またはステージングの目的で注射することが
できる。用いる標識は、用いるイメージングの様式に応
じて選択できる。例えば、インジウム‐111、テクネ
チウム‐99mまたはヨウ素‐131などの放射性標識
は、平面スキャンまたはシングルフォトン断層撮影に用
いることができる。フッ素‐18(Fluorine−
18)などのポジトロン放出標識をポジトロン断層撮影
に用いることができる。ガドリニウム(III)または
マンガン(II)などの常磁性イオンを磁気共鳴イメー
ジングに用いることができる。標識の局在性は、癌の播
種の決定を可能にする。また、器官または組織内の標識
の量により、その器官または組織における癌の存在また
は欠如を決定することができる。
【0040】in vivoでの方法に用いることができる抗
体は、ポリクローナル、モノクローナルおよびオムニク
ローナル抗体、および分子生物学的技術により調した
抗体を含む。SELEXと呼ばれる、当業者によく知ら
れた進化手順に由来するものなどの抗体断片およびアプ
タマーおよび一本鎖オリゴヌクレオチドもまた用いるこ
とができる。
【0041】スクリーニングアッセイ 本発明はまた、Lng108タンパク質に結合する調節
物質、または、Lng108タンパク質の発現または活
性に関して調節効果を有する調節物質を同定する方法も
提供する。Lng108タンパク質の発現または活性を
減少させる調節物質は、癌、特に肺癌の処置に有用と思
われる。このようなスクリーニングアッセイは、当業者
に知られており、細胞に基づくアッセイおよび細胞を用
いないアッセイを含むが、これらに限定されない。
【0042】コンピューターイメージングによりLng
108の領域に特異的に結合すると予測された小分子も
また、癌のイメージングおよび処置に用いるために設計
し、合成し、そしてテストすることができる。さらに、
分子のLng108への結合能力を調査することにより
潜在的な抗癌剤について、分子ライブラリーをスクリー
ニングすることができる。ライブラリーにおいて、Ln
g108に結合できると同定された分子は、癌、特に肺
癌の処置に用いるためのさらなる評価への重要な候補で
ある。好ましい態様では、これらの分子は、細胞におけ
るLng108の発現および/または活性を下方調節す
ることができる。
【0043】養子免疫療法およびワクチン 癌の養子免疫療法は、抗腫瘍反応性を有する免疫細胞を
腫瘍保有宿主に投与し、該細胞が直接または間接に、定
着した腫瘍の消退を誘導することを目的とする治療的手
法に関する。リンパ球、特にTリンパ球の移入はこの部
類に該当し、国立癌研究所(National Cancer Institut
e)(NCI)の研究者は、いくつかのヒトの癌の処置
に、末梢血リンパ球または、皮下リンパ節の生検からの
T細胞を培養した腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の自家輸
血を用いた(Rosenberg, S. A.,米国特許第4,69
0,914号、1987年9月1日発行;Rosenberg,
S. A., et al., 1988, N. England J. Med. 319:1676-1
680)。
【0044】本発明は、ヒトにおける原発性および転移
性の癌の予防および/または処置のための、熱ショック
タンパク質(hsp)の非共有複合体(non-covalent c
omplexes)を含むまたは含まない抗原性のLng108
タンパク質に対して感作したマクロファージを用いた養
子免疫療法の組成物および方法に関する。Lng108
の抗原性または免疫原性は、Lng108タンパク質ま
たはその断片の、抗体を産生し、または、ナイーブなエ
フェクター細胞を感作し、次いで抗原(またはエピトー
プ)を発現する標的細胞を溶解する能力により容易に確
認された。
【0045】癌細胞は、その定義から、異常であり、正
常な組織に存在しないために免疫系が外来性と認識する
タンパク質を含んでいる。しかしながら、免疫系はしば
しばこの異常を無視するようであり、腫瘍の攻撃に失敗
する。癌細胞により産生された外来性のLng108タ
ンパク質は、それらの存在を明らかにするのに用いるこ
とができる。Lng108は腫瘍抗原と呼ばれる短い断
片に崩壊し、細胞表面に現れる。これらの腫瘍抗原は、
クラスIおよびIIの2つの種類があるMHCと呼ばれ
る分子により細胞表面に支持または提示される。MHC
クラスI分子に関する腫瘍抗原は細胞傷害性T細胞に認
識されるが、抗原‐MHCクラスII複合体は、ヘルパ
ー細胞と呼ばれるT細胞の2番目のサブセットにより認
識される。これらの細胞は、腫瘍の成長を遅延または停
止させるサイトカインを分泌し、他の種類の白血球であ
るB細胞が、腫瘍細胞に対する抗体を産生するのを補助
する。
【0046】養子免疫療法では、T細胞またはその他の
抗原提示細胞(APC)は、体の外(ex vivo)で、腫
瘍特異的Lng108抗原を用いて刺激される。刺激さ
れた細胞は、次に患者へ自家輸血され、そこで癌細胞を
攻撃する。研究により、細胞傷害性T細胞とヘルパーT
細胞の両方を用いた方が、どちらか一方のサブセットだ
けを用いるのに比べはるかに有効であることが示され
た。さらに、米国特許第5,985,270号に記載さ
れているように、APCを刺激するためにLng108
抗原は熱ショックタンパク質と複合体化してもよい。
【0047】APCは、マクロファージ、樹状細胞、B
リンパ球およびこれらの組合せを含むがこれらに限定さ
れない、当業者に知られたこれらの抗原提示細胞の中か
ら選択することができ、好ましくはマクロファージであ
る。好ましい使用においては、細胞はその個体の自家細
胞であり、リンパ球、マクロファージまたはその他のA
PCなどの自家免疫細胞が、養子移植のための免疫細胞
のドナーとして誰を選択するかという問題を回避するた
めに用いられる。自家免疫細胞の使用によって回避でき
るその他の問題は、移植片対宿主病であり、これは処置
に失敗すると致命的となることがある。
【0048】遺伝子治療を伴う養子免疫療法では、従来
の遺伝子治療と同様にLng108のDNAをエフェク
ター細胞に導入することができる。これにより、エフェ
クター細胞の腫瘍細胞に対する細胞傷害性を、それらを
抗原性タンパク質を産生するように操作しているために
向上することができ、それにより養子免疫療法の改善が
もたらされる。この発明のLng108抗原は、癌ワク
チンの成分としてもまた有用である。ワクチンは、免疫
刺激量(immunogenically stimulatory amount)のLn
g108抗原を含む。免疫刺激量とは、レシピエント
に、癌、特に肺癌の改善または処置のために所望する免
疫反応を惹起することが可能な抗原の量のことをいう。
有効な量は、当業者によく知られた標準的な手順により
経験的に決定してもよい。
【0049】Lng108抗原は、例えば抗体および/
または細胞媒介性の所望する種類の免疫反応を誘導する
ための多くの任意のワクチン製剤に提供されてもよい。
このような製剤は当該分野に知られており、米国特許第
5,585,103号に記載されているような製剤を含
むが、それらに限定されない。免疫反応を刺激するのに
用いられる本発明のワクチン製剤はまた、薬学的に許容
し得るアジュバントを含むことができる。
【0050】 本発明を、以下の例でさらに説明する。当該例は、特定
の態様の参照により単に本発明を説明するためだけに提
供される。この例示は、本発明のある特定の側面を説明
するが、該開示発明の限定を記述するものでも、また、
その範囲を制限するものでもない。本明細書に記載され
た実験は、詳細に記載されている場合を除き、当業者に
よく知られ、定法となっている標準的な技術を用いて行
なった。定法による分子生物学的技術は、Sambrook et
al., MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 2nd E
d.; Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spri
ng Harbor, N.Y. (1989)などの標準的な実験手引書に記
載されている通りに行なった。
【0051】遺伝子発現の相対定量 蛍光Taqmanプローブによるリアルタイム定量PC
Rは、Taq DNAポリメラーゼの5’−3’ヌクレ
アーゼ活性を用いた定量検出システムである。この方法
は、5’レポーター色素および下流側の3’消光色素で
ラベルされた内部蛍光オリゴヌクレオチドプローブ(in
ternal fluorescent oligonucleotide probe)(Taq
man)を用いる。PCR中、Taq DNAポリメラ
ーゼの5’−3’ヌクレアーゼ活性はレポーターを放出
し、その蛍光はModel 7700 Sequence Detection System
(PE Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)の
レーザー検出器で検出できる。
【0052】反応に加えたRNA試料の量を標準化し、
逆転写酵素の効率を正規化するのに内在性対照の増幅を
用いた。シクロフィリン、グリセルアルデヒド−3−リ
ン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)または18Sリボ
ソームRNA(rRNA)のいずれかをこの内在性対照
として用いた。調査した全試料間の相対定量を計算する
ために、1つの試料の標的RNAレベルを比較結果(キ
ャリブレータ)の基礎として用いた。「キャリブレー
タ」に関する定量は、標準曲線法または比較法を用いて
得ることができる(User Bulletin #2: ABI PRISM 7700
Sequence Detection System)。
【0053】正常および癌組織の各例における標的遺伝
子の組織分布およびレベルを調査した。全RNAを、正
常組織、癌組織、および癌とその対応する隣接組織から
抽出した。次に、逆転写酵素により第一鎖cDNAを調
し、各標的遺伝子に特異的なプライマーおよびTaq
manプローブを用いてポリメラーゼ連鎖反応を行っ
た。結果をABI PRISM 7700 Sequence Detectorで分析し
た。無名数は、キャリブレータ組織と比較した特定の組
織における標的遺伝子の相対発現レベルである。発現分
析に用いたプライマーは、 5’ TCTAGGTCAGCCCCCGAATC 3’(配列番号4);および 5’ CCTCCAATTCCCCCTTAAACTT 3’(配列番号5)を含
む。
【0054】表1に示した無名数は、12の異なる正常
組織におけるLng108(クローンID 954287;遺伝
子ID 21300とも呼ばれる)の相対発現レベルである。す
べての数値は正常筋肉(キャリブレータ)と比較してあ
る。これらのRNA試料は、異なる個体からの特定組織
のプール試料に由来する、商業的に入手可能なプールで
ある。
【0055】
【表1】
【0056】表1の発現の相対レベルによると、Lng
108のmRNAが分析した12種類の組織すべてで発
現していることが分かる。Lng108の発現レベル
は、肺で比較的高く、脳、肝臓、小腸および精巣で低
く、そして、腎臓、乳腺および子宮で中程度だった。こ
れらの結果は、Lng108のmRNAの発現が肺組織
に限定されておらず、分析したすべての種類の組織に広
く発現されていることを証明している。表1の無名数
は、異なる個体からの特定組織の試料プールを分析して
得た。これらを単一の個体の組織試料から得たRNAに
由来する表2の無名数と比較することはできない。
【0057】表2に示した無名数は、48組の対応試料
と、卵巣の2つの癌組織および卵巣の2つの正常/正常
隣接組織におけるLng108の相対発現レベルを示し
ている。すべての数値は正常筋肉(キャリブレータ)と
比較してある。対応ペアは、特定組織の癌試料からのm
RNAと、同一個体のその同一組織についての正常隣接
組織からのmRNAにより形成した。
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】 0=陰性
【0061】対応試料の分析では、肺組織での発現レベ
ルがより高かった。肺での発現以外に、Lng108は
また、その他のテストした14種類の組織すべてで発現
していた。これらの結果は、Lng108は肺でより多
く発現しているが、また、分析したその他の種類の組織
にも発現していることを確認するものであり、正常プー
ル試料パネルで得た結果(表1)と合致する。
【0062】さらに、mRNAの発現レベルを、癌試料
と同一個体からの同系の正常隣接組織とで比較した。こ
の比較は、癌のステージの特異性についての指標を提供
する(例えば、正常隣接組織に比較した、癌試料におけ
るmRNAの高い発現レベル)。表2は、21の肺癌組
織のうち14(67%)で、Lng108が、それぞれ
の正常隣接組織に比べ過剰発現していることを示してい
る。Lng108の正常隣接組織に対する過剰発現はま
た、他の癌試料でも見出される(膀胱、結腸、子宮内
膜、腎臓、肝臓、乳房、卵巣、前立腺、小腸、精巣およ
び子宮)。これらの結果は、全体として、テストした4
8の癌組織のうち36(75%)が、正常隣接組織に比
べLng108を過剰発現していることを示している。
したがって、多くの異なる組織種におけるmRNAの発
現、そして、テストしたすべての癌対応試料の75%に
おいて観察された過剰発現は、Lng108が肺癌の診
断マーカー、および一般的な癌の診断マーカーであるこ
とを示している。
【配列表】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI A61P 35/00 A61P 35/00 35/04 35/04 G01N 33/15 G01N 33/15 Z 33/50 33/50 Z // G01N 33/53 33/53 D (72)発明者 マシーナ,ロベルト エー. アメリカ合衆国 カリフォルニア州 95136、サン ホセ、クレッセンド ア ベニュー 4118 (72)発明者 チェン,セイ−ユ アメリカ合衆国 カリフォルニア州 94404、フォスター シティー、ミラ ストリート 160 (72)発明者 スン,ヨンミン アメリカ合衆国 カリフォルニア州 95128、サン ホセ、エス.ウィンチェ スター ブルバード 869、アパートメ ント 260 (56)参考文献 特表 平9−511140(JP,A) 米国特許5747264(US,A) 米国特許5837498(US,A) 国際公開96/15147(WO,A1) Peng Liang,Differ ential Display and Cloning of Messen ger RNAs from Huma n Breast Cancer ve rsus Mammary Epith elia,CANCER RESEAR CH,1992年12月15日,vol.52, p.6966−6968 Molecular and Cel lular Endocrinolog y,1995年,vol.112,241−247 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 33/574 A61K 39/00 A61K 39/395 A61K 45/00 A61P 35/00 A61P 35/04 G01N 33/15 G01N 33/50 G01N 33/53

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Lng108を含む癌用診断マーカーで
    あって、患者から得た細胞、組織または体液において決
    定された該診断マーカーのレベルの、正常ヒト対照から
    得た細胞、組織または体液において決定された該診断マ
    ーカーのレベルに対する増加が癌の存在に関係してい
    る、前記診断マーカー。
  2. 【請求項2】 Lng108が、Lng108ポリヌク
    レオチドおよびLng108ポリペプチドからなる群よ
    り選択される、請求項1に記載の診断マーカー。
  3. 【請求項3】 癌が肺癌である、請求項1または2に記
    載の診断マーカー。
  4. 【請求項4】 患者における癌の存在を診断する方法で
    あって、 (a)患者から得た細胞、組織または体液におけるLn
    g108のレベルを決定すること、および (b)決定したLng108のレベルと、正常ヒト対照
    から得た細胞、組織または体液におけるLng108の
    レベルとを比較することを含み、該患者の決定したLn
    g108レベルの正常ヒト対照に対する増加が癌の存在
    に関係している、前記方法。
  5. 【請求項5】 患者における癌の転移を診断する方法で
    あって、 (a)転移したことが知られていない癌を有する患者を
    特定すること、 (b)該患者から得た細胞、組織または体液の試料にお
    けるLng108のレベルを決定すること、および (c)決定したLng108レベルと、正常ヒト対照
    ら得た細胞、組織または体液におけるLng108のレ
    ベルとを比較することを含み、該患者の決定したLng
    108レベルの正常ヒト対照に対する増加が転移した癌
    に関係している、前記方法。
  6. 【請求項6】 癌を有する患者における癌のステージン
    グの方法であって、 (a)癌を有する患者を特定すること、 (b)該患者から得た細胞、組織または体液の試料にお
    けるLng108のレベルを決定すること、および (c)決定したLng108レベルと、正常ヒト対照
    ら得た細胞、組織または体液におけるLng108のレ
    ベルとを比較することを含み、該患者の決定したLng
    108レベルの正常ヒト対照に対する増加が進行してい
    る癌に、そして決定したLng108レベルの低下が消
    退している癌または寛解期の癌に関係している、前記方
    法。
  7. 【請求項7】 患者において、転移の開始について癌を
    モニタリングする方法であって、 (a)転移したことが知られていない癌を有する患者を
    特定すること、 (b)該患者から得た細胞、組織または体液の試料にお
    けるLng108のレベルを定期的に決定すること、お
    よび (c)定期的に決定したLng108レベルと、正常ヒ
    ト対照から得た細胞、組織または体液におけるLng1
    08のレベルとを比較することを含み、該患者の任意の
    定期的に決定したLng108レベルの正常ヒト対照に
    対する増加が転移した癌に関係している、前記方法。
  8. 【請求項8】 Lng108のレベルが、Lng108
    に特異的に結合する抗体を用いて決定される、請求項4
    〜7のいずれかに記載の方法。
  9. 【請求項9】 抗体が、放射性試薬、蛍光試薬または酵
    素試薬に付着している、請求項8に記載の方法。
  10. 【請求項10】 Lng108が、Lng108ポリヌ
    クレオチドおよびLng108ポリペプチドからなる群
    より選択される、請求項4〜9のいずれかに記載の方
    法。
  11. 【請求項11】 癌が肺癌である、請求項4〜10のい
    ずれかに記載の方法。
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