JP3524537B2 - 癌の診断、モニタリング、ステージング、イメージングおよび処置のための新規方法 - Google Patents

癌の診断、モニタリング、ステージング、イメージングおよび処置のための新規方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】発明の属する技術分野 本発明の一部は、癌、特に卵巣癌の検出、診断、モニタ
リング、ステージング、予後判定、イメージングおよび
処置のための新規に開発されたアッセイに関する。
【0002】背景技術 女性において、婦人科の癌は悪性腫瘍の4分の1以上を
占める。卵巣肉腫は極めて多く見られる婦人科の癌であ
る。女性のおよそ70人に1人は、その生涯の内に卵巣
癌を発症し、1995年には14,500人が卵巣癌で
死亡したと推定されている。実際、卵巣癌は、雌性生殖
系のその他の癌に比べてより多くの死をもたらす。
【0003】卵巣癌は、何らの顕著な症状をもたらさな
いことが多い。いくつかの可能な警告信号は、40歳を
超える女性における液体の蓄積による腹部の肥大または
はっきりしない消化器系の不調(違和感、ガス貯留また
は膨満)を含む。膣からの異常出血はまれである。定期
的な、完全な内診が卵巣癌の検出に重要である。パパニ
コロー検査は卵巣癌を検出しない。40歳を超える女性
には、毎年の内診が推奨される。
【0004】癌の検出、診断、モニタリング、ステージ
ングおよび予後判定のために用いられる手順は、患者の
予後に関してきわめて重要である。早期に診断された患
者の5年生存率は、遠隔転移した癌と診断された患者の
生存率より、一般的に大変大きい。早期癌の検出に関し
てより高感度で特異的な新しい診断方法が明らかに必要
とされている。癌患者は最初の治療の後、および、アジ
ュバント療法の期間中、治療への反応を決定し、持続性
疾患または再発性疾患または転移を検出するために、緊
密にモニタリングされる。したがってまた、癌の再発の
検出に関してより高感度で特異的な癌マーカーが明らか
に必要とされている。
【0005】癌の管理におけるその他の重要なステップ
は、患者の疾患のステージを決定すること、すなわちス
テージング(病期分類)である。ステージの決定は、潜
在的な予後判定価値を有しており、最適な治療の設計の
ために基準を提供する。一般的に、癌の病理学的ステー
ジングは、臨床ステージングよりも好まれるが、これは
前者がより正確な予後判定を与えるからである。しかし
ながら、臨床ステージングは、病理学的評価のために組
織を採取する侵襲的な手順に依存しないため、もしそれ
が病理学的ステージングと同程度に正確なものであれ
ば、好ましいだろう。細胞、組織または体液において、
異なる浸潤ステージ間を差別化できる新しいマーカーを
検出することにより癌のステージングを改善することが
できるだろう。
【0006】本明細書においてOvr107と呼ばれる
新しいマーカーが、様々な癌、そして特に卵巣癌の診
断、モニタリング、ステージング、イメージングおよび
処置に用いられるものとして同定された。従って、本発
明は、Ovr107を介した癌の検出、診断、モニタリ
ング、ステージング、予後判定、in vivoでのイメージ
ングおよび処置のための新たな方法に関する。Ovr1
07は、中でも、配列番号1のポリヌクレオチド配列を
含む遺伝子により発現される天然のタンパク質に関す
る。本明細書で「Ovr107」はまた、遺伝コードの
縮重により、配列番号1に比べて異なる核酸配列を含む
が、同じタンパク質をコードしているポリヌクレオチド
も意味する。別の側面では、本明細書で用いるOvr1
07により意味されるものは、配列番号1を含む遺伝子
によりコードされる天然のmRNAを意味し、または、
配列番号1を含む遺伝子自体、または、配列番号1のア
ンチセンス配列にストリンジェントな条件下でハイブリ
ダイズすることが可能なポリヌクレオチドのレベルに関
し得る。
【0007】本発明のその他の目的、特徴、利点および
側面は、以下の説明により当業者に明らかになるだろ
う。しかしながら、以下の説明および具体例は、本発明
の好ましい態様を示しているが、ただ説明のためにのみ
与えられていると理解されるべきである。本開示発明の
精神および範囲内の様々な変化および変更は、以下の説
明を読み、本開示の他の部分を読むことにより、当業者
に容易に明らかになるだろう。
【0008】本発明の概要 これらおよびその他の目標のため、本発明の目的は、O
vr107を含む癌の診断マーカーを提供することにあ
る。さらに、細胞、組織または体液におけるOvr10
7のレベルを、正常ヒト対照の好ましくは同種の細胞、
組織または体液におけるOvr107のレベルと比較し
た場合の変化を分析することにより癌の存在を診断する
ための方法が提供され、ここでは患者におけるOvr1
07レベルの正常ヒト対照に対する変化が癌に関係して
いる。
【0009】転移を有するとは知られていない癌を有す
る患者において、転移している癌を有する疑いのあるヒ
ト患者を特定し、このような患者からの細胞、組織また
は体液試料をOvr107について分析し、このような
細胞、組織または体液におけるOvr107のレベルを
正常ヒト対照の好ましくは同種の細胞、組織または体液
におけるOvr107のレベルと比較することにより、
転移性の癌を診断する方法がさらに提供され、ここでは
患者におけるOvr107のレベルの正常ヒト対照に対
する増加が転移した癌に関係している。
【0010】また本発明により、癌を有するヒトにおい
て、癌を有するヒト患者を特定し、このような患者から
の細胞、組織または体液試料をOvr107について分
析し、このような細胞、組織または体液におけるOvr
107のレベルを正常ヒト対照の好ましくは同種の細
胞、組織または体液におけるOvr107のレベルと比
較することにより、癌をステージングする方法も提供さ
れ、ここでは患者におけるOvr107のレベルの正常
ヒト対照に対する増加が進行している癌に関係し、そし
て、Ovr107レベルの減少が消退しているまたは寛
解期にある癌に関係している。
【0011】さらに、ヒト患者における癌を、転移の開
始についてモニタリングする方法が提供される。該方法
は、転移を有するとは知られていない癌を有するヒト患
者を特定し、このような患者からの細胞、組織または体
液をOvr107について定期的に分析し、このような
細胞、組織または体液におけるOvr107のレベルを
正常ヒト対照の好ましくは同種の細胞、組織または体液
におけるOvr107のレベルと比較することを含み、
ここでは患者におけるOvr107のレベルの正常ヒト
対照に対する増加が転移した癌に関係している。
【0012】さらに、ヒト患者における癌のステージの
変化を、該患者のOvr107レベルを調べることによ
りモニタリングする方法が提供される。該方法は、癌を
有するヒト患者を特定し、このような患者からの細胞、
組織または体液をOvr107について定期的に分析
し、このような細胞、組織または体液におけるOvr1
07のレベルを正常ヒト対照の好ましくは同種の細胞、
組織または体液におけるOvr107のレベルと比較す
ることを含み、ここで患者におけるOvr107のレベ
ルの正常ヒト対照に対する増加が進行している癌に関係
し、そして、Ovr107のレベルの減少が消退してい
るまたは寛解期にある癌に関係する。
【0013】さらに、癌のイメージングおよび処置に用
いるためのOvr107を標的にした新しい治療剤の設
計方法が提供される。例えば、1つの態様では、Ovr
107を標的にした抗体またはこのような抗体の断片な
どの治療剤は、疾患または状態を検出または診断する目
的で、患者におけるOvr107の局在を処置、検出ま
たはイメージ化するために用いることができる。この態
様において、検出された標識抗体の量が正常組織に比べ
増加している場合は、腫瘍の転移または成長の指標とな
る。このような抗体は、ポリクローナル、モノクローナ
ルまたはオムニクローナル(omniclonal)であることが
でき、または分子生物学的技術により調することがで
きる。ここで、そして、本明細書を通じて用いる場合、
「抗体」という用語はまた、SELEXと呼ばれる当業
者によく知られたin vitroでの進化手順(evolution pro
tocol)により誘導されたものなどのアプタマーおよび一
本鎖オリゴヌクレオチドを含むこととする。抗体は、放
射性同位体および常磁性金属を含むがこれらに限定され
ない様々な検出可能な標識で標識することができる。ま
た、Ovr107の濃度および/または活性を減少させ
る小分子および抗体またはそれらの断片などの治療剤
を、Ovr107の過剰発現を特徴とする疾患の処置に
用いることができる。このような剤は、本明細書の教示
に従い容易に同定することができる。
【0014】本発明のその他の目的、特徴、利点および
側面は、以下の説明により当業者に明らかになるだろ
う。しかしながら、以下の説明および具体例は、本発明
の好ましい態様を示しているが、ただ説明のためにのみ
与えられていると理解されるべきである。本開示発明の
精神および範囲内の様々な変化および変更は、以下の説
明を読み、本開示の他の部分を読むことにより、当業者
に容易に明らかになるだろう。
【0015】発明の説明 本発明は、なかでも、Ovr107のレベルを正常ヒト
対照におけるOvr107のレベルと比較することによ
り、癌の検出、診断、モニタリング、ステージング、予
後判定、in vivoでのイメージングおよび処置のための
量的および質的な診断アッセイおよび診断方法に関す
る。Ovr107は、中でも、配列番号1のポリヌクレ
オチド配列を含む遺伝子により発現される天然のタンパ
ク質に関する。本明細書で「Ovr107」はまた、遺
伝子コーディングの縮重により、配列番号1または2と
は異なる核酸配列を含むが、同じタンパク質をコードし
ているポリヌクレオチドも意味する。別の側面では、本
明細書で用いるOvr107により意味されるものは、
配列番号1を含む遺伝子によりコードされる天然のmR
NAを意味し、または、配列番号1または2を含む遺伝
子自体、または、配列番号1のアンチセンス配列にスト
リンジェントな条件下でハイブリダイズすることが可能
なポリヌクレオチドのレベルに関し得る。このようなレ
ベルは好ましくは、細胞、組織および/または体液のう
ちの少なくとも1つにおいて測定し、正常および異常レ
ベルの決定を含む。したがって、例えば、正常対照の体
液、細胞または組織試料に比較したOvr107の過剰
発現を診断するための本発明による診断アッセイは、卵
巣癌を含む癌の存在を診断するのに用いることができ
る。Ovr107は、本発明の方法においては単独で測
定しても、または、より好ましくは、他の癌の診断マー
カーと組合せて測定してもよい。したがって、本発明の
方法は、Ovr107と同様に他の癌マーカーのレベル
の測定と組合せて使うことが好ましい。本発明に有用
な、Ovr107以外の他の癌マーカーは、当業者に知
られており、テストする癌に依存するだろう。
【0016】Ovr107の検出は、卵巣癌において特
に有用である。しかしながら、このマーカーはまた、他
の種類の癌の診断、予後判定、ステージング、イメージ
ングおよび処置にも有用である。
【0017】診断アッセイ 本発明は、ヒト患者からの細胞、組織または体液におけ
るOvr107のレベルの、正常ヒト対照からの好まし
くは同種の細胞、組織または体液におけるOvr107
のレベルと比較した場合の変化を分析することにより、
卵巣癌を含む癌の存在を診断する方法を提供し、ここで
患者におけるOvr107のレベルの正常ヒト対照に対
する増加が癌の存在に関係している。本発明を限定する
ことなく、量的診断アッセイにおいては、通常、テスト
した患者が癌を有することを示す陽性結果は、細胞、組
織または体液におけるOvr107などの癌マーカーの
レベルが、正常ヒト対照の好ましくは同じ細胞、組織ま
たは体液におけるより、少なくとも2倍高い、最も好ま
しくは5倍高い結果である。
【0018】本発明はまた、まだ転移していない癌を有
する患者において、転移性の卵巣癌を含む転移性の癌を
診断する方法も提供する。本発明の方法では、転移した
可能性のある(しかし、事前に転移したことが知られて
いない)癌を有する疑いのある患者を特定する。これ
は、当業者に知られた様々な手段によって達成される。
例えば、卵巣癌においては、患者は通常、従来の検出方
法に従って卵巣癌と診断されている。本発明において、
細胞、組織または体液におけるOvr107の存在を決
定することは、転移していない癌と転移した癌とを区別
するのに特に有用である。既存の技術は、転移した癌と
転移していない癌とを区別することが困難である。しか
しながら、適切な処置の選択はしばしばこうした知識に
依存している。
【0019】本発明では、ヒト患者の細胞、組織または
体液において測定された癌マーカーレベルの1つはOv
r107である。ヒト患者におけるレベルは、正常ヒト
対照の好ましくは同種の細胞、組織または体液における
Ovr107レベルと比較される。つまり、観察された
癌マーカーが血清中のOvr107である場合、このレ
ベルは好ましくは正常ヒト対照の血清中のOvr107
レベルと比較される。ヒト患者におけるOvr107の
正常ヒト対照に対する増加は、転移した癌と関係してい
る。
【0020】本発明を限定することなく、量的診断アッ
セイにおいては、通常、テストしたまたはモニタリング
した患者の癌が転移したことを示す陽性結果は、細胞、
組織または体液におけるOvr107などの癌マーカー
のレベルが、正常ヒト対照の好ましくは同じ細胞、組織
または体液におけるより、少なくとも2倍高い、最も好
ましくは5倍高い結果である。ここで用いる正常ヒト対
照は、癌のないヒト患者および/または患者からの非癌
性試料を含む。転移の診断またはモニタリングの方法に
おいて、正常ヒト対照は、転移する前の同一の患者から
の試料など、転移していない卵巣癌などの癌を有するこ
とが信頼できる方法で決定されたヒト患者からの試料を
含むことが好ましい。
【0021】ステージング 本発明はまた、ヒト患者において癌をステージングする
方法も提供する。該方法は、癌を有するヒト患者を特定
し、このような患者の細胞、組織または体液試料をOv
r107について分析することを含む。測定したOvr
107のレベルは、次に、正常ヒト対照の好ましくは同
種の細胞、組織または体液におけるOvr107レベル
と比較され、ここでヒト患者におけるOvr107のレ
ベルの正常ヒト対照に対する増加が進行している癌に関
係し、そして、Ovr107のレベルの減少が消退して
いるまたは寛解期にある癌に関係する。
【0022】モニタリング さらに提供されるのは、ヒト患者における癌を、転移の
開始についてモニタリングする方法である。該方法は、
転移を有するとは知られていない癌を有するヒト患者を
特定し、このような患者からの細胞、組織または体液を
Ovr107について定期的に分析し、そして、このよ
うな細胞、組織または体液におけるOvr107のレベ
ルを正常ヒト対照の好ましくは同種の細胞、組織または
体液におけるOvr107のレベルと比較することを含
み、ここで患者におけるOvr107のレベルの正常ヒ
ト対照に対する増加が転移した癌に関係する。
【0023】本発明によりさらに提供されるのは、癌の
ステージの変化をモニタリングする方法である。該方法
は、癌を有するヒト患者を特定し、このような患者から
の細胞、組織または体液をOvr107について定期的
に分析し、そしてこのような細胞、組織または体液にお
けるOvr107のレベルを正常ヒト対照の好ましくは
同種の細胞、組織または体液におけるOvr107のレ
ベルと比較することを含み、ここで患者におけるOvr
107のレベルの正常ヒト対照に対する増加がステージ
の進行している癌に関係し、そして、Ovr107のレ
ベルの減少がステージの後退しているまたは寛解期にあ
る癌に関係する。
【0024】このような患者を転移の開始についてモニ
タリングする場合は、定期的に、そして好ましくは年4
回を基礎に行なう。しかしながら、癌、特定の患者、お
よび癌のステージによってはより高頻度に、または、よ
り低頻度に行なってもよい。
【0025】予後判定テストおよび臨床試験のモニタリ
ング ここに記載した方法は、さらに、Ovr107のレベル
の増加に関係する疾患または異常を有するかまたは進行
させる危険がある対象を特定するための予後判定アッセ
イに用いることができる。本発明は、テスト試料がOv
r107が検出されたヒト患者から得られたものである
方法を提供する。正常ヒト対照に比較して高いレベルの
Ovr107の存在は、該ヒト患者が癌、特に卵巣癌を
進行させる危険があるという診断である。
【0026】Ovr107の発現または活性を減少させ
る治療剤の有効性はまた、臨床試験でのヒト患者、また
は、ヒト細胞などにおけるin vitroのスクリーニングア
ッセイおけるOvr107の発現レベルを分析すること
によりモニタリングできる。このように、遺伝子発現パ
ターンは、ヒト患者、または、場合によっては細胞の、
テストされた剤への生理学的反応を示すマーカーとして
利用できる。
【0027】遺伝子の損傷または突然変異の検出 本発明の方法は、Ovr107における遺伝子損傷また
は突然変異を検出し、それにより遺伝子損傷を有するヒ
トが癌の危険を有するか、または、癌、特に卵巣癌を有
するか決定することにも用いることができる。遺伝子の
損傷は、例えば、Ovr107からの1個または2個以
上のヌクレオチドの欠失および/または付加および/ま
たは置換の存在、Ovr107の染色体再構成の存在、
Ovr107の異常修飾(ゲノムDNAのメチル化パタ
ーンなど)、Ovr107のmRNA転写物の非野生型
スプライシングパターンの存在、Ovr107の対立遺
伝子の欠失、および/またはOvr107タンパク質の
不適切な翻訳後修飾の存在を確認することにより検出で
きる。本発明のOvr107におけるこのような損傷を
検出する方法は、当業者に知られている。
【0028】アッセイ技術 ヒト由来の試料において、本発明のOvr107などの
遺伝子発現レベル(タンパク質レベルを含む)を決定する
のに用いることができるアッセイ技術は当業者によく知
られている。このようなアッセイ方法は、ラジオイムノ
アッセイ、逆転写酵素PCR(RT‐PCR)アッセ
イ、免疫組織化学アッセイ、in situハイブリダイゼー
ションアッセイ、結合蛋白競合アッセイ、ウェスタンブ
ロット分析、ELISAアッセイおよびプロテオミクス
アプローチ(proteomic approache)、2次元ゲル電気
泳動(2D電気泳動)および質量分析またはタンパク質相
互作用プロファイリングなどのゲルに基づかないアプロ
ーチを含む。これらの中で、ELISAが、生物学的液
体における遺伝子の発現タンパク質の診断に好まれるこ
とが多い。
【0029】もし商業的に容易に入手できない場合、E
LISA分析は、最初に、Ovr107に特異的な抗
体、好ましくはモノクローナル抗体の調を含む。さら
に、一般的に、Ovr107に特異的に結合するレポー
ター抗体が調される。レポーター抗体は、放射性試
薬、蛍光試薬または例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ
酵素またはアルカリホスファターゼなどの酵素試薬など
の検出可能な試薬に付着している。
【0030】ELISAを行なう場合、Ovr107に
特異的な抗体は、例えばポリスチレンディッシュなど
の、抗体を結合する固形支持体上でインキュベートされ
る。次に、ディッシュ上の任意の遊離タンパク質結合部
位(free protein binding sites)は、ウシ血清アルブ
ミンなどの非特異的タンパク質とインキュベートするこ
とにより被覆される。次に、分析される試料は、Ovr
107がポリスチレンディッシュに付着した特異抗体に
結合する時間中、ディッシュ内でインキュベートされ
る。非結合試料はバッファーで洗い流される。Ovr1
07を特異的に指向し、西洋ワサビペルオキシダーゼな
どの検出可能な試薬を連結したレポーター抗体がディッ
シュ内に設置され、該レポーター抗体がOvr107に
結合した任意のモノクローナル抗体に結合する。次に非
付着レポーター抗体が洗い流される。比色基質を含むペ
ルオキシダーゼ活性のための試薬が、次にディッシュに
加えられる。Ovr107抗体に連結した、固定化した
ペルオキシダーゼが着色反応産物を産生する。所定の時
間内に発生した色素の量は、試料中のOvr107タン
パク質の量に比例している。量的な結果は、通常標準曲
線を参照して得られる。
【0031】競合アッセイもまた用いることができ、そ
こでは、Ovr107の特異抗体が固形支持体に付着し
ており、標識したOvr107および患者またはヒト対
照に由来する試料が固形支持体上を通過する。固形支持
体に付着した検出標識量を試料中のOvr107の量に
相関させることができる。
【0032】本発明のOvr107の核酸配列の全てま
たは一部をハイブリダイゼーションプローブとして用い
た核酸法(nucleic acid method)もまた、卵巣癌を含
む癌のマーカーとしてのOvr107のmRNAを検出
するのに用いることができる。ポリメラーゼ連鎖反応
(PCR)、およびリガーゼ連鎖反応(LCR)および
核酸配列をもとにした増幅(NASABA)などのその
他の核酸法を、様々な悪性腫瘍を診断およびモニタリン
グするための悪性細胞の検出に用いることができる。例
えば、逆転写酵素PCR(RT‐PCR)は、特定のm
RNA集団の存在を、何千ものその他のmRNA種の複
雑な混合物の中で検出するために用いることができる強
力な技術である。RT‐PCRにおいては、1種類のm
RNAが、酵素である逆転写酵素を用いて最初に相補D
NA(cDNA)に逆転写され、次に該cDNAが標準
的なPCR反応と同様に増幅される。このように、RT
‐PCRは、増幅により、単一種のmRNAの存在を明
らかにすることができる。したがって、該mRNAがそ
れを産生する細胞に高度に特異的である場合、RT‐P
CRは、特定の種類の細胞の存在を同定するのに用いる
ことができる。
【0033】固形支持体に配列(つまりグリッド化(gr
idding))されたクローンまたはオリゴヌクレオチドへ
のハイブリダイゼーションは、その遺伝子の発現の検出
および発現レベルの定量の両方に用いることができる。
この手法では、Ovr107遺伝子をコードするcDN
Aが基材に固定される。基材は、ガラス、ニトロセルロ
ース、ナイロンまたはプラスチックを含むがこれらに限
定されない任意の好適な種類であってもよい。Ovr1
07遺伝子をコードするDNAの少なくとも一部を基材
に付着させ、次に、当該組織から単離したRNAまたは
RNAのコピーである相補DNA(cDNA)であって
もよい検体とインキュベートする。基材に結合したDN
Aと検体とのハイブリダイゼーションは、検体またはハ
イブリッド検出用の二次分子を放射性標識または蛍光標
識することを含むがこれらに限定されないいくつかの手
段で検出し定量することができる。遺伝子の発現レベル
の定量は、検体からの信号の強度を、既知の標準から決
定したレベルと比較することによってなされる。標準
は、標的遺伝子のin vitroでの転写、収量の定量化、そ
して、この材料を用いて標準曲線を作成することにより
得ることができる。
【0034】プロテオミクスアプローチでは、2次元電
気泳動が当業者によく知られた技術である。血清などの
試料からの個別のタンパク質の単離は、通常ポリアクリ
ルアミドゲル上での、タンパク質の異なる特性による配
列決定的な分離(sequentialseparation)を用いて達成
される。最初に、タンパク質は電流を用いて大きさによ
り分離される。電流は全てのタンパク質に均等に作用
し、それにより、小さいタンパク質は大きいタンパク質
よりもゲル上で早く移動する。第2次元では、第1次元
に対して直角に電流をかけ、タンパク質を大きさに基づ
いてではなく、各タンパク質が有する特定の電荷に基づ
いて分離する。異なる配列の2つのタンパク質で大きさ
および電荷の両方に関して同一なものは存在しないた
め、2次元分離の結果は、各タンパク質が固有のスポッ
トを占有する正方形のゲルとなる。該スポットの化学的
プローブまたは抗体プローブによる分析、またはそれに
引き続くタンパク質のマイクロシーケンスにより、所定
のタンパク質の相対的な存在度を明らかにし、試料中の
タンパク質の同定をすることができる。
【0035】上記のテストは、組織生検材料および検死
解剖材料を含む患者から得られた様々な細胞、体液およ
び/または組織抽出物(ホモジネートまたは可溶化した
組織)に由来する試料について行なうことができる。本
発明に有用な体液は、血液、尿、唾液または任意のその
他の体分泌物またはそれらの派生物を含む。血液は、全
血、血漿、血清、または任意の血液の派生物を含む。
【0036】Ovr107のin vivoでのターゲティン
グ/癌治療 Ovr107の同定はまた、癌、そして特に卵巣癌のイ
メージングおよび処置のための新しい治療法の合理的な
設計にとって有用である。例えば、1つの態様では、O
vr107に特異的に結合する抗体を作製し、癌を患っ
ている疑いのある患者にin vivoで用いることができ
る。Ovr107に特異的に結合する抗体は、癌を有す
る疑いのある患者に、診断および/または治療の目的
で、注射することができる。in vivoでの診断のための
抗体の調および使用は当該分野でよく知られている。
たとえば、インジウム−111で標識した抗体−キレー
ターが、癌胎児性抗原を発現している腫瘍のラジオイム
ノシンチグラフィーによるイメージングでの使用に関し
て記述されている(Sumerdon et al. Nucl. Med. Biol.
1990 17:247-254)。特にこれらの抗体‐キレーター
は、再発性の結腸直腸癌を有する疑いのある患者におい
て腫瘍を検出するのに用いられた(Griffin et al. J.
Clin. Onc. 1991 9:631-640)。磁気共鳴イメージング
で用いる標識としての常磁性イオンを有する抗体もまた
記述されている(Lauffer, R.B. Magnetic Resonance i
n Medicine 1991 22:339-342)。Ovr107に対する
抗体も同様に用いることができる。Ovr107に特異
的に結合する標識された抗体を、癌を有する疑いのある
患者に、該患者の疾患の状態の診断またはステージング
の目的で注射することができる。用いる標識は、用いる
イメージングの様式に応じて選択できる。例えば、イン
ジウム‐111、テクネチウム‐99mまたはヨウ素‐
131などの放射性標識は、平面スキャンまたはシング
ルフォトン断層撮影に用いることができる。フッ素‐1
8(Fluorine−18)などのポジトロン放出標
識をポジトロン断層撮影に用いることができる。ガドリ
ニウム(III)またはマンガン(II)などの常磁性
イオンを磁気共鳴イメージングに用いることができる。
標識の局在性は、癌の播種の決定を可能にする。また、
器官または組織内の標識の量により、その器官または組
織における癌の存在または欠如を決定することができ
る。
【0037】癌、そして特に卵巣癌と診断された患者に
とって、Ovr107に特異的に結合する抗体の注射も
また、治療上有益なことがある。抗体は単独でその治療
効果を発揮するかもしれない。あるいは、該抗体を薬
剤、毒素または放射性核種などの細胞毒性剤と結合さ
せ、その治療効果を増強することができる。モノクロー
ナル抗体薬剤は、当該分野において、例えばGarnett an
d Baldwin, Cancer Research 1986 46:2407-2412により
記載されている。また、様々な癌の治療のために毒素を
結合したモノクローナル抗体を使用することは、Pastan
et al. Cell 198647:641-648により記載されている。
イットリウム−90標識モノクローナル抗体が、正常組
織への毒性を制限しながら腫瘍に送達される用量を最大
化することが記載されている(Goodwin and Meares Canc
er Supplement 1997 80:2675-2680)。銅−67、ヨウ素
−131およびレニウム−186を含むがそれらに限定
されないその他の細胞毒性放射性核種もまた、Ovr1
07に対する抗体の標識に用いることができる。
【0038】in vivoでの方法に用いることができる抗
体は、ポリクローナル、モノクローナルおよびオムニク
ローナル抗体、および分子生物学的技術により調した
抗体を含む。SELEXと呼ばれる、当業者によく知ら
れた進化手順に由来するものなどの抗体断片およびアプ
タマーおよび一本鎖オリゴヌクレオチドもまた用いるこ
とができる。
【0039】スクリーニングアッセイ 本発明はまた、Ovr107タンパク質に結合する調節
物質、または、Ovr107タンパク質の発現または活
性に関して調節効果を有する調節物質を同定する方法も
提供する。Ovr107タンパク質の発現または活性を
減少させる調節物質は、癌の処置に有用と思われる。こ
のようなスクリーニングアッセイは、当業者に知られて
おり、細胞に基づくアッセイおよび細胞を用いないアッ
セイを含むが、これらに限定されない。
【0040】コンピューターイメージングによりOvr
107の領域に特異的に結合すると予測された小分子も
また、癌のイメージングおよび処置に用いるために設計
し、合成し、そしてテストすることができる。さらに、
分子のOvr107への結合能力を調査することにより
潜在的な抗癌剤について、分子ライブラリーをスクリー
ニングすることができる。ライブラリーにおいて、Ov
r107に結合できると同定された分子は、癌の処置に
用いるためのさらなる評価への重要な候補である。好ま
しい態様では、これらの分子は、細胞におけるOvr1
07の発現および/または活性を下方調節することがで
きる。
【0041】養子免疫療法およびワクチン 癌の養子免疫療法は、抗腫瘍反応性を有する免疫細胞を
腫瘍保有宿主に投与し、該細胞が直接または間接に、定
着した腫瘍の消退を誘導することを目的とする治療的手
法に関する。リンパ球、特にTリンパ球の移入はこの部
類に該当し、国立癌研究所(National Cancer Institut
e)(NCI)の研究者は、いくつかのヒトの癌の処置
に、末梢血リンパ球または、皮下リンパ節の生検からの
T細胞を培養した腫瘍浸潤リンパ球(TIL)の自家輸
血を用いた(Rosenberg, S. A.,米国特許第4,69
0,914号、1987年9月1日発行;Rosenberg,
S. A., et al., 1988, N. England J. Med. 319:1676-1
680)。
【0042】本発明は、ヒトにおける癌の予防および/
または処置のための、熱ショックタンパク質(hsp)
の非共有複合体(non-covalent complexes)を含むまた
は含まない抗原性のOvr107タンパク質に対して感
作したマクロファージを用いた養子免疫療法の組成物お
よび方法に関する。Ovr107の抗原性または免疫原
性は、Ovr107タンパク質またはその断片の、抗体
を産生し、または、ナイーブなエフェクター細胞を感作
し、次いで抗原(またはエピトープ)を発現する標的細
胞を溶解する能力により容易に確認された。
【0043】癌細胞は、その定義から、異常であり、正
常な組織に存在しないために免疫系が外来性と認識する
タンパク質を含んでいる。しかしながら、免疫系はしば
しばこの異常を無視するようであり、腫瘍の攻撃に失敗
する。癌細胞により産生された外来性のOvr107タ
ンパク質は、それらの存在を明らかにするのに用いるこ
とができる。Ovr107は腫瘍抗原と呼ばれる短い断
片に崩壊し、細胞表面に現れる。これらの腫瘍抗原は、
クラスIおよびIIの2つの種類があるMHCと呼ばれ
る分子により細胞表面に支持または提示される。MHC
クラスI分子に関する腫瘍抗原は細胞傷害性T細胞に認
識されるが、抗原‐MHCクラスII複合体は、ヘルパ
ー細胞と呼ばれるT細胞の2番目のサブセットにより認
識される。これらの細胞は、腫瘍の成長を遅延または停
止させるサイトカインを分泌し、他の種類の白血球であ
るB細胞が、腫瘍細胞に対する抗体を産生するのを補助
する。
【0044】養子免疫療法では、T細胞またはその他の
抗原提示細胞(APC)は、体の外(ex vivo)で、腫
瘍特異的Ovr107抗原を用いて刺激される。刺激さ
れた細胞は、次に患者へ自家輸血され、そこで癌細胞を
攻撃する。研究により、細胞傷害性T細胞とヘルパーT
細胞の両方を用いた方が、どちらか一方のサブセットだ
けを用いるのに比べはるかに有効であることが示され
た。さらに、米国特許第5,985,270号に記載さ
れているように、APCを刺激するためにOvr107
抗原は熱ショックタンパク質と複合体化してもよい。
【0045】APCは、マクロファージ、樹状細胞、B
リンパ球およびこれらの組合せを含むがこれらに限定さ
れない、当業者に知られたこれらの抗原提示細胞の中か
ら選択することができ、好ましくはマクロファージであ
る。好ましい使用においては、細胞はその個体の自家細
胞であり、リンパ球、マクロファージまたはその他のA
PCなどの自家免疫細胞が、養子移植のための免疫細胞
のドナーとして誰を選択するかという問題を回避するた
めに用いられる。自家免疫細胞の使用によって回避でき
るその他の問題は、移植片対宿主病であり、これは処置
に失敗すると致命的となることがある。
【0046】遺伝子治療を伴う養子免疫療法では、従来
の遺伝子治療と同様にOvr107のDNAをエフェク
ター細胞に導入することができる。これにより、エフェ
クター細胞の腫瘍細胞に対する細胞傷害性を、それらを
抗原性タンパク質を産生するように操作しているために
向上することができ、それにより養子免疫療法の改善が
もたらされる。この発明のOvr107抗原は、癌ワク
チンの成分としてもまた有用である。ワクチンは、免疫
刺激量(immunogenically stimulatory amount)のOv
r107抗原を含む。免疫刺激量とは、レシピエント
に、癌の改善または処置のために所望する免疫反応を惹
起することが可能な抗原の量のことをいう。有効な量
は、当業者によく知られた標準的な手順により経験的に
決定してもよい。
【0047】Ovr107抗原は、例えば抗体および/
または細胞媒介性の所望する種類の免疫反応を誘導する
ための多くの任意のワクチン製剤に提供されてもよい。
このような製剤は当該分野に知られており、米国特許第
5,585,103号に記載されているような製剤を含
むが、それらに限定されない。免疫反応を刺激するのに
用いられる本発明のワクチン製剤はまた、薬学的に許容
し得るアジュバントを含むことができる。
【0048】 本発明を、以下の例でさらに説明する。当該例は、特定
の態様の参照により単に本発明を説明するためだけに提
供される。この例示は、本発明のある特定の側面を説明
するが、該開示発明の限定を記述するものでも、また、
その範囲を制限するものでもない。本明細書に記載され
た実験は、詳細に記載されている場合を除き、当業者に
よく知られ、定法となっている標準的な技術を用いて行
なった。定法による分子生物学的技術は、Sambrook et
al., MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, 2nd E
d.; Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spri
ng Harbor, N.Y. (1989)などの標準的な実験手引書に記
載されている通りに行なった。
【0049】遺伝子発現の相対定量 蛍光Taqmanプローブによるリアルタイム定量PC
Rは、Taq DNAポリメラーゼの5’−3’ヌクレ
アーゼ活性を用いた定量検出システムである。この方法
は、5’レポーター色素および下流側の3’消光色素で
ラベルされた内部蛍光オリゴヌクレオチドプローブ(in
ternal fluorescent oligonucleotide probe)(Taq
man)を用いる。PCR中、Taq DNAポリメラ
ーゼの5’−3’ヌクレアーゼ活性はレポーターを放出
し、その蛍光はModel 7700 Sequence Detection System
(PE Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)の
レーザー検出器で検出できる。
【0050】反応に加えたRNA試料の量を標準化し、
逆転写酵素の効率を正規化するのに内在性対照の増幅を
用いる。シクロフィリン、グリセルアルデヒド−3−リ
ン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)または18Sリボ
ソームRNA(rRNA)のいずれかをこの内在性対照
として用いる。調査した全試料間の相対定量を計算する
ために、1つの試料の標的RNAレベルを比較結果(キ
ャリブレータ)の基礎として用いた。「キャリブレー
タ」に関する定量は、標準曲線法または比較法を用いて
得ることができる(User Bulletin #2: ABI PRISM 7700
Sequence Detection System)。
【0051】正常および癌組織の各例について標的遺伝
子の組織分布およびレベルを評価した。全RNAを、正
常組織、癌組織、および癌とその対応する隣接組織から
抽出した。次に、逆転写酵素により第一鎖cDNAを調
し、各標的遺伝子に特異的なプライマーおよびTaq
manプローブを用いてポリメラーゼ連鎖反応を行っ
た。結果をABI PRISM 7700 Sequence Detectorで分析し
た。無名数は、キャリブレータ組織と比較した特定の組
織における標的遺伝子の相対発現レベルである。発現分
析に用いたプライマーは、 リバース:5'-CCCAATAGCGGAAGTCGATCT-3'(配列番号
2) フォワード:5'-CACTCCCAGCCAGTCCAGAT-3'(配列番号
3) Ovr107プローブ:5'-AATCTGCTCCGGCCCTGGTCTT-3'
(配列番号4)を含む。
【0052】表1に示した無名数は、12の異なる正常
組織におけるOvr107(クローンID 817834;遺伝
子ID 403869とも呼ばれる)の相対発現レベルである。
すべての数値は正常膵臓(キャリブレータ)と比較して
ある。これらのRNA試料は、異なる個体からの特定組
織のプール試料に由来する、商業的に入手可能なプール
である。
【0053】
【表1】
【0054】表1の発現の相対レベルによると、Ovr
107が分析した全ての正常組織で発現していることが
分かる。胃が38.59と最も高い相対発現レベルを示
し、肝臓が0.08で最も低い発現値を示した。表1の
無名数は、異なる個体からの特定組織の試料プールを分
析して得た。これらを単一の個体の組織試料から得たR
NAに由来する表2の無名数と比較することはできな
い。
【0055】表2に示した無名数は、47組の対応試料
におけるOvr107の相対発現レベルを示している。
すべての数値は正常膵臓(キャリブレータ)と比較して
ある。対応ペアは、特定組織の癌試料からのmRNA
と、同一個体のその同一組織についての正常隣接組織か
らのmRNAにより形成した。さらに、12の対応して
いない癌試料(卵巣由来)および14の対応していない正
常試料(卵巣由来)もテストした。
【0056】
【表2】
【0057】
【表3】
【0058】
【表4】
【0059】表1および表2は合わせて、合計15の異
なる種類の組織からの132の試料を示している。表2
に示すように、分析した14の異なる組織からの120
の試料全てがOvr107の発現を示していた(発現値
>0.00)。
【0060】さらに、mRNAの発現レベルを、対応し
ていない卵巣試料を除き、癌試料と同一個体からの同系
の正常隣接組織とで比較した。この比較は、癌の特異性
についての指標を提供する(例えば、正常隣接組織に比
較した、癌試料におけるmRNAの高い発現レベル)。
表2は、分析した47の対応試料のうち35(卵巣1、
膵臓、前立腺、小腸1および2、精巣、子宮1、2およ
び4、膀胱、子宮内膜1、4、5、6、7および10、
腎臓2、3および4、肝臓2、肺2、3、4および5、
乳腺1、2、3および4、結腸1、2、4および5、お
よび、胃3、4および5)(74%)でOvr107が過
剰発現していることを示している。
【0061】対応していない卵巣試料については、12
の癌試料のうち11(92%)が、対応していない正常卵
巣試料の中央値(1.82)よりも高いOvr107の発
現値を示し、12のうち10(83%)が正常卵巣で見ら
れた最高値よりも高い発現値を示した。つまり、広範な
組織分布に加え、大半の癌試料において正常試料に比べ
mRNAが過剰発現していることは、Ovr107が卵
巣癌だけでなく、癌一般のマーカーであることを示すも
のである。
【配列表】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI A61P 35/00 A61P 35/00 G01N 33/15 G01N 33/15 Z 33/50 33/50 Z (72)発明者 カッファーキー,ロバート アメリカ合衆国 カリフォルニア州 95134、サン ホセ、エラン ビレッジ レーン 350、アパートメント 218 (72)発明者 ルー,シン チーアン アメリカ合衆国 カリフォルニア州 94041、マウンテン ビュー、#3、チ キータ アベニュー 465 (72)発明者 レシポン,ハーヴ アメリカ合衆国 カリフォルニア州 94115、サン フランシスコ、フォーチ ュナ アベニュー 85 (72)発明者 スン,ヨンミン アメリカ合衆国 カリフォルニア州 95128、サン ホセ、エス.ウィンチェ スター ブルバード 869、アパートメ ント 260 (56)参考文献 特開 平11−313681(JP,A) 国際公開98/35985(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 33/574 A61K 39/00 A61K 39/395 A61K 45/00 A61K 49/00 A61P 35/00 G01N 33/15 G01N 33/50

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Ovr107を含む癌用診断マーカー。
  2. 【請求項2】 Ovr107が、Ovr107ポリヌク
    レオチドおよびOvr107ポリペプチドからなる群よ
    り選択される、請求項1に記載の診断マーカー。
  3. 【請求項3】 Ovr107ポリヌクレオチドが、配列
    番号1を含む、請求項2に記載の診断マーカー。
  4. 【請求項4】 患者における癌の存在を診断する方法で
    あって、 (a)患者から得た細胞、組織または体液におけるOv
    r107レベルを決定すること、および (b)決定したOvr107レベルと、正常ヒト対照か
    ら得た細胞、組織または体液におけるOvr107レベ
    ルとを比較することを含み、該患者の決定したOvr1
    07レベルの正常ヒト対照に対する変化が癌の存在に関
    係している、前記方法。
  5. 【請求項5】 患者における癌の転移を診断する方法で
    あって、 (a)転移したことが知られていない癌を有する患者を
    特定すること、 (b)該患者から得た細胞、組織または体液の試料にお
    けるOvr107レベルを決定すること、および (c)決定したOvr107レベルと、正常ヒト対照
    ら得た細胞、組織または体液におけるOvr107レベ
    ルとを比較することを含み、該患者の決定したOvr1
    07レベルの正常ヒト対照に対する増加が転移した癌に
    関係している、前記方法。
  6. 【請求項6】 癌を有する患者における癌のステージン
    グの方法であって、 (a)癌を有する患者を特定すること、 (b)該患者から得た細胞、組織または体液の試料にお
    けるOvr107レベルを決定すること、および (c)決定したOvr107レベルと、正常ヒト対照か
    ら得た細胞、組織または体液におけるOvr107レベ
    ルとを比較することを含み、該患者の決定したOvr1
    07レベルの正常ヒト対照に対する増加が進行している
    癌に、そして決定したOvr107レベルの低下が消退
    している癌または寛解期の癌に関係している、前記方
    法。
  7. 【請求項7】 患者において、転移の開始について癌を
    モニタリングする方法であって、 (a)転移したことが知られていない癌を有する患者を
    特定すること、 (b)該患者から得た細胞、組織または体液の試料にお
    けるOvr107レベルを定期的に決定すること、およ
    び (c)定期的に決定したOvr107レベルと、正常ヒ
    ト対照から得た細胞、組織または体液におけるOvr1
    07レベルとを比較することを含み、該患者の任意の定
    期的に決定したOvr107レベルの正常ヒト対照に対
    する増加が転移した癌に関係している、前記方法。
  8. 【請求項8】 Ovr107に特異的に結合する抗体。
  9. 【請求項9】 放射性試薬、蛍光試薬または酵素試薬に
    付着している、請求項8に記載の抗体。
  10. 【請求項10】 Ovr107が、Ovr107ポリヌ
    クレオチドおよびOvr107ポリペプチドからなる群
    より選択される、請求項8または9に記載の抗体。
  11. 【請求項11】 Ovr107レベルが、請求項8〜1
    0のいずれかに記載の抗体を用いて決定される、請求項
    4〜7のいずれかに記載の方法。
  12. 【請求項12】 Ovr107が、Ovr107ポリヌ
    クレオチドおよびOvr107ポリペプチドからなる群
    より選択される、請求項4、5、6、7または11のい
    ずれかに記載の方法。
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