JP3522232B2 - 誘電体層形成用低融点ガラスペーストおよび低融点ガラス - Google Patents

誘電体層形成用低融点ガラスペーストおよび低融点ガラス

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プラズマディスプ
レイパネルにおいて、透明電極とバス電極を被覆するた
めの誘電体層形成用低融点ガラスペーストおよび低融点
ガラスに関する。
【0002】
【従来の技術】プラズマディスプレイパネル(以下単に
PDPと称する。)は、大画面のフルカラー表示装置と
して注目されている。特に、3電極面放電型のAC型P
DPは、表示側の基板上に面放電を発生する複数の表示
電極対を誘電体層で被覆して形成し、背面側の基板上に
その表示電極対と直交するアドレス電極とそれを被覆す
る蛍光体層を形成した構成を特徴としている。そして、
表示電極対の一方を操作電極として順次アドレス電極と
の間で放電を発生させながら表示すべき映像を壁電荷の
かたちで書き込み、その後表示電極対の間に一斉に維持
電圧を印加して維持放電を発生させることを基本動作と
している。
【0003】この維持放電で発生した紫外線により3原
色の蛍光体層が、RGB(赤、緑、青)の蛍光色を発す
ることで、フルカラー表示が行われる。したがって、背
面側基板上の各蛍光体の発光色は表示側の基板上に形成
された表示電極対を通して出てくるための表示電極対と
しては透過濃度をなくすために透明電極材料が用いら
れ、さらにその抵抗値の低減のために金属バス電極を付
加した構成をとるのが普通である。
【0004】すなわち透明電極材料は、典型的にはIT
O(酸化インジウムIn23 と酸化スズSnO2の混
合物)で構成される半導体であり、その導電率は金属な
どに比較すると低い。その為、その導電性を高める為に
透明電極の上に細い金属導電層が付加される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで上記、透明電
極とバス電極を被覆する誘電体層は、通常、基板上に低
融点ガラス材料層を形成した後、例えば600℃程度の
高温で焼成することで形成される。この高温焼成工程
で、透明電極とその上に重ねたバス電極間との材料間の
イオン化傾向の違いにより、両電極間で電池効果が生じ
て、透明電極が薄くなる、或いは消失するという問題が
ある。透明電極が薄くなる、或いは、消失した場合に
は、表示電極対間での維持放電電圧が上昇し、PDPの
安定的な駆動が困難になる。本発明者等は先に特願平9
−038932において、誘電体材料に透明電極材料を
混合することで、透明電極の抵抗値の上昇を抑制するこ
とを提案した。しかしながら、透明電極材料の混合で
は、透明電極とバス電極の間の電池効果による透明電極
の問題は解決できず、局所的に透明電極が消失する問題
が残った。
【0006】かかる透明電極の消失の理由は必ずしも確
かではないが、誘電体層を高温で焼成している時に、透
明電極とバス電極の間で電池効果に起因した酸化還元反
応が発生し、透明電極材料が誘電体層に溶出するためと
推察される。そこで、本発明の目的は、上記問題点に鑑
み、プラズマディスプレイパネルの透明電極が局所的に
消失するのを防止することができる誘電体層形成用低融
点ガラスペーストおよび低融点ガラスを提供することに
ある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成する為
に、本発明は、放電空間を介して対向する一対の基板の
内の少なくとも一方の基板上に、透明電極とバス電極と
それを覆う誘電体層とを備えるプラズマディスプレイパ
ネルの誘電体層を形成するための低融点ガラスペースト
および低融点ガラスであって、PbO−SiO2−B2
3 −ZnO系またはPbO−SiO2 −B23−Z
nO−BaO系のガラスに、バス電極の主成分をなす金
属の酸化物を含ませてなることを特徴としている。さら
に透明電極の主成分をなす酸化物をも含ませてなること
を特徴としている。
【0008】具体的には、バス電極が銅を主成分とし、
誘電体層形成用低融点ペーストおよび低融点ガラスに酸
化銅を含ませてなる。
【0009】バス電極の主成分をなす金属の酸化物を誘
電体層形成用ペーストおよび低融点ガラスに含ませるこ
とにより、高温プロセスを経ても、透明電極が局所的に
消失することが防止される。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態の例に
ついて図面に従って説明する。しかしながら、かかる実
施の形態例が本発明の技術的範囲を限定するものではな
い。図1は、本発明の誘電体層形成用低融点ガラスペー
ストおよび低融点ガラスを適用する3電極面放電型のA
C型PDPの分解斜視図である。また、図2は、そのP
DPの断面図である。まず、両方の図を参照してその構
造について説明する。この例では、表示側のガラス基板
10の方向(図2に示した方向)に表示光が出ていく。
20は、背面側のガラス基板である。表示側のガラス基
板10上には、透明電極11とその上(図面中は下)に
形成された導電性の高いバス電極12からなるX電極1
3XとY電極13Yが形成され、それらの電極対は、誘
電体層14とMgOからなる保護層15で覆われてい
る。バス電極12は、透明電極11の導電性を補うため
に、X電極とY電極の反対側端部に沿って設けられる。
【0011】このバス電極12は、例えばクロム・銅・
クロムの三層構造のメタル電極である。また、透明電極
11は、通常は、ITO(INDIUM TIN OXIDE,酸化イン
ジウムIn23 と酸化スズSnO2 混合物)で構成さ
れ、十分な導電性を確保する為に、上記バス電極12が
付加される。透明電極は酸化スズ膜(ネサ膜)で形成さ
れる場合もある。また、誘電体層14は、通常、酸化鉛
を主成分とする低融点ガラス材料で形成され、より具体
的には、PbO−SiO2−B23 −ZnO系あるい
はPbO−SiO2 −B23 −ZnO−BaO系のガ
ラスである。
【0012】背面ガラス基板20上には、例えばシリコ
ン酸化膜からなる下地のパッシベーション膜21上に、
ストライプ状のアドレス電極A1,A2,A3が設けら
れ、誘電体層22で覆われている。また、これらのアド
レス電極Aは、それぞれ基板20上に形成されたストラ
イプ状の隔壁(リブ)23の間に位置している。この隔
壁23は、表示電極対方向に放電セルを分離する機能と
光のクロストークを防ぐ機能の二つの機能を有する。隣
接するリブ23毎に赤、青、緑の蛍光体24R,24
G,24Bがアドレス電極上及びリブ壁面を被覆するよ
うに塗り分けられている。
【0013】また、図2に示される通り、表示側基板1
0と背面側基板20とは約100μm程度のギャップを
保って組み合わされ、その間の空間25にはNe+Xe
の放電用の混合ガスが封入される。図3は、上記の3電
極面放電型のPDPのX,Y電極とアドレス電極との関
係を示すパネルの平面図である。X電極X1 X10は
横方向に並行して配列されかつ基板端部において共通接
続され、Y電極Y1Y10はX電極の間にそれぞれ設け
られかつ個別に基板端部に導出されている。これらの
X,Y電極はそれぞれ対になって表示ラインを形成し、
表示のための維持放電電圧が交互に印加される。尚、X
D1,XD2及びYD1,YD2はそれぞれ有効表示領
域の外側に設けられるダミー電極であり、パネルの周辺
部分の非線形性の特性を緩和する為に設けられている。
背面側基板20上に設けられるアドレス電極A1 A1
4は、X,Y電極と直交して設けられる。
【0014】X,Y電極はペアになって維持放電電圧が
交互に印加されるが、Y電極は情報を書き込む時のスキ
ャン電極としても利用される。アドレス電極は、情報を
書き込む時に利用され、情報に従ってアドレス電極とス
キャン対象のY電極との間でアドレスのためのプラズマ
放電が発生される。表示電極期間に維持放電圧が印加さ
れると、図2に矢印で示された通り、誘電体層14の表
面(実際には保護層15の表面)上にアドレス放電で蓄
積された電荷による電圧とが合わさって、維持放電が発
生する。そして、その発生したプラズマから発生する紫
外線が蛍光層22に照射されてそれぞれの色の光を発生
し、その光が図2に矢印で示された通り表示側の基板1
0上に出ていく。
【0015】上記した通り、透明電極11は、それ自体
導電性が余り高くない半導体層であるので、その側端縁
に金属のバス電極12が設けられる。したがって、透明
電極11の導電性が多少低くてもX電極13XとY電極
13Yの長手方向の抵抗は低く抑えられる。しかしなが
ら、前述したように誘電体層の形成プロセスにおいて、
透明電極が損傷すると、損傷部分においては他の部分に
比べてより高い放電電圧が要求され、全体としての安定
動作が困難となるわけである。
【0016】そこで、本発明の実施の形態例では、透明
電極11の損傷による導電性の低下を防ぐようにするた
めに、透明電極11とバス電極12に接して被覆する誘
電体層14を形成するために用いられる低融点ガラス材
料にバス電極の主成分の酸化物を含ませる。例えば、バ
ス電極12がクロム・銅・クロムの三層構造の場合は、
誘電体層14を形成するために用いられる低融点ガラス
材料の組成内に、酸化銅をドープさせる。その結果、そ
の後の高温の焼成工程を経ても、誘電体層14とバス電
極11との間の電池効果および酸化還元反応は防止さ
れ、透明電極の局所的な消失を避けることができる。
【0017】例えば、このようにバス電極12の主成分
が銅の場合にその酸化物を誘電体層形成用低融点ガラス
材料に混入しておくと、透明電極11およびバス電極1
2、そして誘電体層14における電池効果及び酸化還元
反応は防止される。即ち、バス電極の主成分の銅がイオ
ン化して誘電体層14側に一旦出た後、透明電極11の
表面に流れてIn23の還元反応を起こし、還元された
Inがさらにイオン化して、誘電体層14のガラス中に
溶けだし、穴があくという電池効果および酸化還元反応
があらかじめ誘電体層中にCuOおよびIn23 をガ
ラス組成の一部として添付しておくことで抑制されるも
のと考えられる。
【0018】図4から図7は、ITOからなる透明電極
11及びクロム・銅・クロムからなるバス電極12上
に、酸化銅と酸化インジウムを低融点ガラス材料に含有
させた低融点ガラス材料で形成した誘電体層14の観察
結果を示す図である。サンプルとして、透明電極に、酸
化インジウムIn23 と酸化スズSnO2を含むITO
を、バス電極に、クロムではさんだ銅を、誘電体層形成
用低融点ガラス材料に、透明電極の主成分である酸化イ
ンジウムを混合した上PbO−SiO2 −B23−Zn
O−BaO系のガラス組成を使用した。そして、そのガ
ラス組成内に1.0wt%の酸化銅をドープさせた例
(図4)、ガラス組成内に、0.5wt%の酸化銅をド
ープさせた例(図5)、同様に0.3wt%の酸化銅を
含ませた例(図6)、及び酸化銅を含有しない例(図
7)の4つのサンプルについて観察した。
【0019】ガラス組成内に酸化銅を含ませる為には、
例えば、酸化鉛を主成分とするガラス粉末に酸化銅の粉
末を混合し、1300℃程度の高温下で溶融する。これ
により、酸化銅は低融点ガラス組成に組み込まれる。そ
の後、溶融した状態から冷却し、粉末化し、溶剤とバイ
ンダによりペースト化してから、印刷、焼成を行う。焼
成温度は通常580℃乃至600℃程度であり、この工
程で低融点ガラス粉末は溶融し、誘電体層を形成する。
【0020】図4〜図7の観察結果から明らかな通り、
誘電体層形成用低融点ガラス材料に透明電極の主成分で
ある酸化インジウムのみ含み、酸化銅を含ませないサン
プルである図7では、誘電体層形成用低融点ガラス材料
の高温焼成工程をへた後では、符号30で示した黒点部
の如く、局所的に透明電極が消失していることがわか
る。それに対して、誘電体層形成用低融点ガラス材料に
透明電極の主成分である酸化インジウムを含み、かつ酸
化銅を含ませる図4〜図6では、誘電体層形成用低融点
ガラス材料の高温焼成工程をへても、透明電極の局所的
な消失は抑えられる。図7において、酸化銅をまったく
ドープしない場合には、符号30で示したように、1μ
m程度の穴が無数に発生している。それに対し、特に、
1.0wt%の酸化銅をドープした図4の場合は、透明
電極の消失、すなわち穴の発生はほぼ見受けられない。
また0.5wt%の酸化銅をドープした図5の場合に
も、ほぼ穴の発生は見受けられず、0.3wt%の酸化
銅をドープした図6の場合ですら、酸化銅をドープしな
い図7と比べると、穴の数が1/3以下に減少し、透明
電極の消失が抑制されている。上記の観察結果から、バ
ス電極12に接して被覆する誘電体層14を形成するた
めの低融点ガラス材料内に、透明電極の主成分及びバス
電極の主成分を含ませることが、焼成などの高温プロセ
スに対してバス電極を局所的に消失させない為に有効で
あることが理解される。
【0021】上記の実施の形態例では、バス電極材料と
して、酸化銅を主成分とするものを例に説明した。それ
以外の物質としては、バス電極の材料が、アルミ(A
l)、アルミ合金(Al Cu,Al Cr,Al C
u Mn等)、コバルト(Co)、銀(Ag)、モリブ
デン(Mo)、クロム(Cr)、タンタル(Ta)、タ
ングステン(W)、鉄(Fe)などといった材料であっ
ても同様の効果が期待できる。
【0022】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明によれば、プ
ラズマディスプレイパネルの透明電極とバス電極を被覆
する誘電体層において、バス電極の主成分をなす金属の
酸化物を誘電体層形成用低融点ガラスペーストおよび低
融点ガラス内に含ませることにより、透明電極が局所的
に消失することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用するPDPの分解斜視図である。
【図2】PDPの断面図である。
【図3】3電極面放電型のPDPのX,Y電極とアドレ
ス電極との関係を示すパネルの平面図である。
【図4】酸化銅を誘電体層形成用低融点ガラス材料に含
有させた時の本願の観察結果を示す図である。
【図5】酸化銅を誘電体層形成用低融点ガラス材料に含
有させた時の本願の別の観察結果を示す図である。
【図6】酸化銅を誘電体層形成用低融点ガラス材料に含
有させた時の本願の別の観察結果を示す図である。
【図7】酸化銅を誘電体層形成用低融点ガラス材料に含
有させない時の観察結果を示す図である。
【符号の説明】
10 第一の基板 11 透明電極 12 バス電極 14 誘電体層 20 第二の基板 A アドレス電極 25 放電空間
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 只木 進二 神奈川県川崎市中原区上小田中4丁目1 番1号 富士通株式会社内 (72)発明者 別井 圭一 神奈川県川崎市中原区上小田中4丁目1 番1号 富士通株式会社内 (56)参考文献 特開 平10−21836(JP,A) 特開 平10−112265(JP,A) 特開 平8−287834(JP,A) 特開 平10−241571(JP,A) 特開2001−35393(JP,A) 特開2001−39734(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01J 11/00 - 11/04 H01J 17/00 - 17/49 C03C 8/14

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】放電空間を介して対向する一対の基板の内
    の少なくとも一方の基板上に、透明電極とバス電極とそ
    れを覆う誘電体層とを備えるプラズマディスプレイパネ
    ルの前記誘電体層を形成するための低融点ガラス材料で
    あって、 PbO−SiO2−B23−ZnO系またはPbO−S
    iO2−B23−ZnO−BaO系のガラスに、前記バ
    ス電極の主成分をなす金属の酸化物及び前記透明電極の
    主成分をなす酸化物を含ませてなることを特徴とする誘
    電体層形成用低融点ガラスペースト。
  2. 【請求項2】請求項1または2において、前記バス電極
    が銅を主成分とし、前記ガラス組成に0.3〜1.0w
    t%の酸化銅が含まれてなることを特徴とする誘電体層
    形成用低融点ガラスペースト。
  3. 【請求項3】放電空間を介して対向する一対の基板の内
    の少なくとも一方の基板上に、透明電極とバス電極とそ
    れを覆う誘電体層とを備えるプラズマディスプレイパネ
    ルの前記誘電体層を形成するための低融点ガラスであっ
    て、 PbO−SiO2−B23−ZnO系またはPbO−S
    iO2−B23−ZnO−BaO系のガラスに、前記バ
    ス電極の主成分をなす金属の酸化物及び前記透明電極の
    主成分をなす酸化物を含ませてなることを特徴とする誘
    電体層形成用低融点ガラス。
  4. 【請求項4】請求項4または5において、前記バス電極
    が銅を主成分とし、前記ガラス組成に0.3〜1.0w
    t%の酸化銅が含まれてなることを特徴とする誘電体層
    形成用低融点ガラス。
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