JP3518508B2 - スキンパスミルの圧延方法 - Google Patents

スキンパスミルの圧延方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、スキンパスミルの
圧延方法に関し、具体的には、被圧延材を挟んで被圧延
材幅方向両側の圧下を相違させるレベリング(片圧下)
制御に関するもので、特に、オペレータサイドとドライ
ブサイドのミル剛性差の顕著な低圧延荷重域でもその効
果が高く、圧延中の被圧延材の蛇行を抑制する際に用い
るのに好適な、スキンパスミルの圧延方法に関する。
【0002】
【従来の技術】スキンパスミルは、調質圧延機とも呼ば
れ、例えば熱間圧延後の鋼帯(熱延鋼帯)の形状を矯正
したり、冷間圧延、更には焼鈍後の鋼帯(冷延鋼帯)に
硬度付与したりする目的で、金属帯に冷間にて圧下率数
%の軽圧下を加える圧延機である。
【0003】スキンパスミルラインは図1に示すような
ものが代表的である。スキンパスミルライン100は、
大きく分けて、ペイオフリール1、溶接機2、スキンパ
スミル3、テンションリール4、シャー5、制御装置6
から構成され、その他に、レベラー7、ピンチロール
8、ブライドルロール9などが適宜配置されてなる。更
に、スキンパスミル3は、ワークロール20、バックア
ップロール21、圧上装置30などによって構成されて
いる。尚、スキンパスミル3を天地逆にした構造として
もよく、この場合は、圧上装置は圧下装置にとってかわ
られる。
【0004】かかる構成になるスキンパスミルライン1
00では、溶接機2によって、先行金属帯と後行金属帯
を接合(溶接が代表的)し、連続した金属帯とした上で次
々と圧延していき、接合点を挟んだ前後部を切除して、
先行金属帯と後行金属帯を分離して巻き取る、という操
業形態を取っている。
【0005】スキンパスミル3の圧下方式(圧下機構が
下に設置されていて、ワークロール20とバックアップ
ロール21を押し上げる図1のような方式の場合は、圧
上方式と呼ばれることもあるが、該場合も含めて本発明
では、以下、圧下と称する。)は、多くの場合、油圧が
使われる。
【0006】このようなスキンパスミルでは、ワークロ
ール20の開度(前出図1の例では上ロールの位置は零
調時に固定してしまうので、実質的には下ワークロール
の圧下位置)を制御対象たる操作量とするのが適正なの
か、それとも圧延時の荷重を制御対象たる操作量とする
のが適正なのか、という問題が起こる。
【0007】材質の制御、即ち被圧延金属帯(以下、被
圧延材と称する)の形状矯正、硬度付与といった目的上
は、圧延時の荷重を制御対象とするのが原理的に当を得
ている。
【0008】しかしながら、接合点を破断させずに円滑
にスキンパスミルを通過させるにはどうするか、という
問題が起こる。接合点のスキンパスミル通過時も、接合
点ではない定常部分と同様に、圧延時の荷重を制御対象
としていると、接合点に過大な力が加わって接合が破断
したりする場合がある。
【0009】そこで、接合点に関しては、定常部分とは
異なった圧延の仕方をしており、該部分の圧下を広げて
(該部分の板厚を局部的に厚くして)、接合点に過大な
力が加わって接合が破断するのを抑制しながら圧延する
ようにしている。また、接合点の圧下によるワークロー
ルへのキズ入りを防止する為、接合点に関して、ロール
ギャップを金属帯に接触しない位置まで広げることもあ
る。ちなみに、このような圧下制御の様子を模式的に示
すと図2のようになる。
【0010】定常部分に対して行うような、圧延時の荷
重を制御対象とする制御方法を、特に定圧制御と称して
いる。これに対し、図2のように接合点を挟んで局部的
に行う例でいえば、上下ワークロールの開度(前出図1
の例では上ワークロールの位置は零調時に固定してしま
うので、実質的には下ワークロールの圧下位置)を制御
対象とする制御方法を、特に定位制御と称している。
【0011】このようなスキンパスミルにおいて圧延中
の被圧延材に蛇行が発生する場合がある。蛇行がひどく
なると、被圧延材がスキンパスミルのオペレータサイ
ド、あるいはドライブサイドにせり寄る。ひどい場合に
は被圧延材が破断してしまって、長時間スキンパスミル
の操業が停止してしまう危険性がある。蛇行の主たる原
因は、次のように推定されている。
【0012】図3を示しながら説明すると、被圧延材1
0の圧延中に圧延機に作用する圧延荷重が、圧延機のハ
ウジング40を構成する複数の支柱42に均等に分散し
たとしても、個々の支柱はそっくり同じに作られている
わけではないため、圧延荷重作用時に個々の支柱間、更
には被圧延材10を挟んでオペレータのいる側(以下、
オペレータサイド(Op)と称する)42Aと、駆動装
置のある側(以下、ドライブサイド(Dr)と称する)
42Bで支柱に伸び差があるからである。図3におい
て、20Aは上ワークロール、20Bは下ワークロール
である。
【0013】更に詳しく述べると、圧延荷重作用時に、
オペレータサイドのハウジング支柱42Aとドライブサ
イドのハウジング支柱42Bに伸び差があると、図4
(B)に示すように、ハウジング支柱の伸びが小さい側
(図4(B)では右側)の板厚が薄く、ハウジング支柱
の伸びが大きい側(図4(B)では左側)の板厚が厚く
なるため、これが被圧延材10の圧延長手方向への伸び
差につながって、図4(D)に示す如く、板厚が薄い側
が長手方向によく伸び、板厚が厚い側が比較的長手方向
の伸びが小さくなることから、板厚が薄い側から厚い側
(図4(D)では左側)に向かって被圧延材10が曲が
り、蛇行する。図4(A)(C)は、それぞれ図4
(B)(D)に対応する正常な状態を示したものであ
る。
【0014】このような問題を解決するべく、特開平7-
24515では、溶接点後の後行被圧延材の圧延を開始する
に際し、まずオペレータサイドとドライブサイドの圧下
を同時平行的に締め込んでいき、被圧延材を上下ワーク
ロールで挟圧し、その挟圧荷重が所定荷重に達したとこ
ろで、圧下の同時平行的締め込みを停止し、しかる後、
両サイドの油圧圧下の油柱長を個別に記憶した上で、定
圧制御に切り替えて所定荷重を維持するようにして圧延
をすすめるやり方を提示しており、しかも圧延中、常時
両サイドの油柱長偏差を監視して、該油柱長偏差が所定
値以上になった時点で、両サイドの油柱長を、前記記憶
した油柱長に戻すように制御することで、オペレータサ
イドとドライブサイドの圧下位置が極度に異ならないよ
うにし、被圧延材の蛇行を抑制しようとしている。
【0015】また、特開平11-333509では、スキンパス
ミルの入側に蛇行検出器を設けて、蛇行を抑制するよう
制御することが提案されている。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】ところが、前述のよう
な、特開平7-24515や特開平11-333509は、いずれも満足
できるものではなかった。なぜならば、特開平7-24515
のようなやり方では、オペレータサイドとドライブサイ
ドのハウジングの伸び差が、あらゆる荷重作用域に対し
て完全には補償されない、という問題があった。これ
は、更に詳しく述べると、スキンパスミルのハウジング
が、硬質広幅の最大負荷材の圧延にも耐えられる耐荷重
強度で作られているにもかかわらず、多くの被圧延材
は、そのような最大荷重よりもずっと低い圧延荷重にし
かならないため、このような低荷重域では、オペレータ
サイドとドライブサイドのハウジングの伸び差が、そう
でない荷重域に比べ、際立って大きい、という特性を持
つことに起因する。
【0017】また、特開平11-333509のような方法にお
いても、蛇行検出器の設置費用がかかる問題や、制御の
応答性が十分に早くできない問題のほか、制御モデルの
チューニングに非常に手間と時間がかかる、という問題
があった。
【0018】本発明は、前記従来の問題点を解決するべ
くなされたもので、蛇行検出器を設けることなく、スキ
ンパスミルにおける圧延中の被圧延材の蛇行を確実に抑
制することを課題とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明は、スキンパスミ
ルの圧延に際して、予めレベリングの適正量を圧延荷重
に対する関数として記憶しておき、圧延時に圧延荷重を
測定して、該関数を用いてレベリング目標値を計算して
設定し、実際にその設定値を目標にレベリング量を制御
することにより、前記課題を解決したものである。
【0020】又、上下バックアップロールの組み合わせ
を固定し、該組に合わせごとに前記関数を持つようにし
たものである。
【0021】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明の
実施形態を詳細に説明する。
【0022】前述のように、低荷重域ではオペレータサ
イドとドライブサイドのハウジングの伸び差が、そうで
ない荷重域に比べ、際立って大きい。なお、前出のハウ
ジングの伸び差のほかに、ワークロールやバックアップ
ロールのプロフィルの微妙な調整差や、スキンパスミル
の機械的なガタ、機械的な摩擦の微妙な調整差なども被
圧延材の蛇行に影響を及ぼすことがあるため、今後これ
らも含めて、ハウジングの伸び差と称することにする。
真のハウジングの伸び差に含まれないものも、ハウジン
グの伸び差に計算上カウントして、実際に、これから述
べる制御を行っても何ら差し支えないからである。
【0023】本発明では、このハウジングの伸び差を補
償して、被圧延材をまっすぐ蛇行せずに通板するように
制御する。
【0024】該補償制御により、ウエッジに起因して圧
延時に作用する圧延荷重が高くなる(板厚が厚くなる)
側の上下ワークロール開度を狭め、逆に圧延荷重が低く
なる(板厚が薄くなる)側を広げるように補償制御する
ことを、以下レベリングと称し、具体的にオペレータサ
イドとドライブサイドで圧下用アクチュエータ長あるい
は圧下位置差に何μmの差をつけるか、その操作量のこ
とをレベリング設定値と称することにする。
【0025】レベリング設定値は、図5に示すように、
低荷重域で際立って大きい(マイナスで示されている
が、大きさは絶対値で見る)。その理由は、前述のよう
に、低荷重域ではオペレータサイドとドライブサイドの
ハウジングの伸び差が、そうでない荷重域に比べ、際立
って大きいことと、表裏の関係にあるからである。
【0026】本発明が適用されるスキンパスミルライン
は、前出図1に示すようなものが代表的である。その設
備構成は前述した通りである。
【0027】本発明では、前出の図5に示すような、被
圧延材をまっすぐ蛇行せずに通板できるレベリングの適
正量の圧延荷重に対する関数を制御装置6内に記憶して
おき、一方、圧延中にリアルタイムで圧延荷重を測定し
て前記関数を索引し、該当するレベリング適正量をレベ
リング設置値として設定し、実際にその設定値を目標に
リアルタイムに圧下用アクチュエータを制御する。
【0028】圧延荷重を測定するには、図示しないロー
ドセルを使用するか、圧下用アクチュエータ内の圧力セ
ンサ(図示せず)の検出値より、圧延荷重に換算する
か、いずれの方法によってもよい。
【0029】なお、本発明において、先行被圧延材と後
行被圧延材の接合点近傍、それに接合点近傍を除いた定
常部での圧下の動作制御は、特開平7-24515のようなや
り方を大筋では踏襲する。即ち、接合点通過後、後行被
圧延材の圧延を開始するに際し、まずオペレータサイド
とドライブサイドの圧下を同時平行的に締め込んでい
き、被圧延材を上下ワークロールで挟圧し、その挟圧荷
重が所定荷重に達したところで、圧下の同時平行的締め
込みを停止し、しかる後、両サイドの油圧圧下の油柱長
を個別に記憶した上で、定圧制御に切り替えて所定荷重
を維持するようにして圧延をすすめ、圧延中、常時両サ
イドの油柱長偏差を監視して、該油柱長偏差が所定値以
上になった時点で、両サイドの油柱長を、次に述べる所
定の油柱長に変更するように制御する。
【0030】ここで、本発明が特開平7-24515のような
やり方に対し、構成付加している特徴的なことは、油柱
長偏差が所定値以上になった時点で、両サイドの油柱長
を、前記記憶した油柱長に戻すのではなく、その戻して
いく過程で、圧延荷重の実績に追随しつつリアルタイム
に、相当するレベリング適正量を関数によって求め、実
際にオペレータサイド、ドライブサイドの油柱長の差に
反映するように制御し、制御中のオペレータサイド、ド
ライブサイドの油柱長の平均値が、前述の圧延開始時に
記憶した際のオペレータサイド、ドライブサイドの油柱
長の平均値に戻るまで、その制御を継続することであ
る。該平均値に戻ったら、再び定圧制御に切替える。
【0031】ここで、話は変わるが、更に、上下のバッ
クアップロールの組み合わせを固定し、該組み合わせご
とに前記関数をもつようにすることが好ましい。通常、
どこのスキンパスミルでも、ロール研削中の代替や、ロ
ール割損事故発生時の予備として、ワークロールやバッ
クアップロールを数組用意して操業しているが、バック
アップロールを違うものに交換して操業すると、レベリ
ングの適正量が変わってしまうことが経験的に知られて
いる。
【0032】これは、バックアップロール毎に、チョッ
ク(軸受箱:図示せず)の圧下用アクチュエータとの機
械的な当たりや、チョックとバックアップロール軸との
機械的な当たり、それにチョック内のベアリングはじめ
機械系各部のガタ、といった量が微妙に異なっているた
め、と推定している。
【0033】そこで、本発明では、好ましい実施形態と
して、上下のバックアップロールの組み合わせを固定
し、該組み合わせごとに前記関数を持つようにすること
を推奨する。
【0034】なお、本発明は、狭義の圧下装置のみなら
ず、図1に示すような圧上装置にも適用できることは明
らかである。
【0035】
【実施例】板厚1.2〜6.0mm、板幅600〜19
00mmのサイズの低炭素鋼の熱延鋼帯を3000本ず
つスキンパスミルで圧延した場合の、被圧延材の蛇行ト
ラブル発生率を、従来例と本発明例で比較し、図6に示
した。更に、上下のバックアップロールの組み合わせを
ある組み合わせに固定し、その組み合わせ特有のレベリ
ング適正量の圧延荷重に対する関数でレベリング設定値
を設定し、その設定値を目標に実際に制御したものを、
そうでないものと効果の違いがわかるように、本発明例
2とし、バックアップロールの上下組み合わせを固定し
ないものを本発明例1とした。その結果、従来例で蛇行
トラブル発生率10%であったものが、本発明例1では
0.2%、本発明例2では0.1%に低下することが確
認できた。
【0036】
【発明の効果】本発明によれば、スキンパスミルでの圧
延において、予めレベリングの適正量を圧延荷重に対す
る関数として記憶しておき、圧延時に圧延荷重を測定し
て、該関数を用いてレベリング目標値を計算して設定
し、実際にその設定値を目標にレベリング量を制御する
ようにしたから、圧延中の被圧延材の蛇行を抑制するこ
とができるようになった。本発明は、特に、オペレータ
サイドとドライブサイドのミル剛性差の顕著な低圧延荷
重域で効果が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】スキンパスミルラインの全体概観を示す図
【図2】定位制御を説明するための図
【図3】圧延中の被圧延材に蛇行が発生するメカニズム
を説明するための、圧延機ハウジングの斜視図
【図4】同じく、被圧延材を圧延している状態の正面図
及び圧延機出側の平面図
【図5】レベリング設定値の荷重域による違いを説明す
るための図
【図6】本発明の実施の効果を示す図
【符号の説明】
1…ペイオフリール 2…溶接機 3…スキンパスミル 4…テンションリール 5…シャー 6…制御装置 7…レベラー 8…ピンチロール 9…ブライドルロール 10…被圧延材 20、20A、20B…ワークロール 21…バックアップロール 30…圧上装置 40…ハウジング 42…ハウジング支柱 42A…ハウジング支柱(オペレータサイド) 42B…ハウジング支柱(ドライブサイド) 100…スキンパスミルライン

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】予めレベリングの適正量を圧延荷重に対す
    る関数として記憶しておき、圧延時に圧延荷重を測定し
    て、 該関数を用いてレベリング目標値を計算して設定し、 実際にその設定値を目標にレベリング量を制御すること
    を特徴とするスキンパスミルの圧延方法。
  2. 【請求項2】上下のバックアップロールの組み合わせを
    固定し、該組み合わせごとに前記関数を持つことを特徴
    とする請求項1に記載のスキンパスミルの圧延方法。
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