JP3518111B2 - 窓 - Google Patents

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JP3518111B2
JP3518111B2 JP31230495A JP31230495A JP3518111B2 JP 3518111 B2 JP3518111 B2 JP 3518111B2 JP 31230495 A JP31230495 A JP 31230495A JP 31230495 A JP31230495 A JP 31230495A JP 3518111 B2 JP3518111 B2 JP 3518111B2
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喜之 山本
敬一朗 田辺
直治 藤森
進啓 太田
孝 築野
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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Sumitomo Electric Industries Ltd
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、高い透過特性、放
熱特性および耐熱性を有する放射線用、赤外光、紫外光
用などの窓材に関する。
【0002】
【従来の技術】シンクロトロン放射光(SOR光)など
の放射光実験装置に使用される窓材に代表される各種光
学窓材は、その透過光強度や、使用される環境が年々厳
しくなっている。そのため、窓材の機械的強度、放射性
に対する要求が今後さらに厳しくなることが予想され
る。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】各種透過窓材として用
いられる材料としては、例えば、Be、Al、Si、Z
nSeなどが挙げられが、これら窓材の熱伝導率は一般
的に小さい。これらの窓材に、大きなエネルギーの光を
照射すると、窓材自体の温度が上昇し、溶解、変質など
の問題が生じるので、使用できるエネルギー範囲が限ら
れていた。窓材の温度上昇防止のため、窓材の周囲から
冷却する等の対策が施されているが、充分ではなかっ
た。
【0004】
【課題を解決するための手段】そこで本発明者らは、以
上のような問題点に鑑み、より冷却効率の大きく、広い
範囲で透過特性の良好な窓材を得るべく鋭意研究を重
ね、窓の内部に直接冷媒を通すための流路を形成するこ
とにより従来の窓材よりも格段に放熱効率の向上した窓
材を得ることに成功した。
【0005】本発明は、熱伝導率が10W/cm・K以上
の高熱伝導性物質層が基材の上に配置され、かつ基材/
高熱伝導性物質層の界面部の高熱伝導性物質層側に冷却
用媒体を通過させるための流路を備えることを特徴とす
る窓材を提供する。さらに、本発明は、熱伝導率10W
/cm・K以上の高熱伝導性物質からなる板中に、冷却用
媒体を通過させるための1本以上の流路が埋め込まれて
いることを特徴とする窓材を提供する。
【0006】以下に、本発明の具体的な内容について詳
細に開示する。窓材の1つの形態においては、高熱伝導
性物質層が基材の上に積層されており、高熱伝導性物質
層と基材との界面に、冷媒を流すための溝が高熱伝導性
層側に形成されている。すなわち、導入される光線が窓
材を通過する際に発生する熱は、高熱伝導性物質層を温
度勾配が小さいまま伝えられ、物質層表面に形成された
溝を通過する冷媒によって効率よく除去される。
【0007】高熱伝導性物質層としては、熱伝導性は高
い方が窓温度を押さえることができ好ましい。その熱伝
導率は、高ければ高い程良いが、10W/cm・K以上あ
ることが適当である。この様な材質を持つ物質として
は、天然ダイヤモンド、高圧合成ダイヤモンド、および
気相合成ダイヤモンドが挙げられる。これらはいずれも
本発明における高熱伝導性物質層として適当であるが、
特に気相合成法により得られるダイヤモンドを利用する
と、比較的大面積の高熱伝導性物質層が安価に得ること
ができる。熱伝導率は、一般に温度依存性があり、上記
ダイヤモンドは、室温以上の温度領域では温度上昇と共
にその熱伝導率は低下する。上記のようなSOR光用の
窓材等に利用される場合、照射されるエネルギーが膨大
であるために、従来タイプの窓材では、それ自体の温度
も数百℃まで上昇してしまう。すると、上記ダイヤモン
ドを利用していても、その熱伝導率は大幅に低下するの
を免れない。しかし、本発明による窓材を利用すること
によって、放熱効果を大きく上げることが可能になるの
で、窓材自体の温度上昇を防ぎ、かつその熱伝導率も高
いまま維持することができる。高熱伝導性物質層の厚さ
は、少なくとも30μm以上、より好ましくは70μm以
上あることが好ましい。高伝導性物質層の厚さの上限
は、通常、10mm、例えば5mmである。
【0008】高熱伝導性物質層に存在する溝について
は、その深さは深いほど熱交換率は上昇するが、あまり
深すぎるとその機械強度が弱くなるので好ましくない。
具体的には、溝の深さ(c)は20μm以上、より好ま
しくは50μm以上である。溝の深さは、高熱伝導性物
質層の膜厚の90%以下、より好ましくは80%以下が
好ましい。また、溝の幅(a)は広いほど熱交換率は上
昇するが、そのかわり基材に接する部分の強度を保つた
めに溝の数が少なくなるために広すぎても逆に熱交換率
は悪くなる。一方、溝の間隔(b)についても幅と同様
なことがいえ、広すぎても狭すぎても良くない。溝の幅
および間隔は、20μm以上10mm以下、より好ましく
は40μm以上2mm以下、特に好ましくは50μm以上2
mm以下であることが望ましい。幅(a)と間隔(b)の
比(a/b)の範囲について、下限は、0.02、より
好ましくは0.04であり、一方、上限は、10、より
好ましくは5であることが望ましい。幅(a)と深さ
(c)の比(a/c)の範囲について、下限は、0.0
2、より好ましくは0.05であり、一方、上限は、5
0、より好ましくは25であることが望ましい(図7参
照)。
【0009】但し、最適な幅、間隔、深さについては、
窓材を透過する光に依存する。なお、溝の形状として
は、断面が長方形である必要はなく、半円形、半楕円形
やさらに複雑な形状をとりうる。また、1つの窓材中
で、上記のa, b, cの値が一定である必要はなく、上に
示した条件の中で変化させうる。溝によって占められる
高熱伝導性物質層の表面の割合は、高熱伝導性物質層の
表面の面積に対して、通常2〜75%、好ましくは10
〜50%である。溝の側面が高熱伝導性物質層表面に対
する鉛直線となす角度(テーパー角)は、30°以下であ
ることが好ましい。
【0010】この冷媒の通過するべき溝は、窓材の発熱
状態に応じて適宜形成することができる。最も発熱する
部分、あるいは最も低温であることが要求される部分が
最も効率的に冷却されるように溝を形成することが望ま
しい。具体的には、最も冷却したい部分に冷媒が最も多
く通過する様に溝を配置する。溝の断面形状を複雑に
し、溝の表面積を大きくすることによっても冷却効率を
上げることができる。また、冷媒の導入口付近は最も冷
媒の温度も低いので、冷却効率が高くなる。従って、窓
材の発熱量分布がほぼ均等である場合、中央部分が最も
温度が高くなるので、中央部に導入口を設け、そこから
螺旋状、あるいは放射線状に冷媒溝を配置すると効率的
でよい。
【0011】溝は、高熱伝導性物質層を形成した後に、
該物質層をレーザー加工(例えば、エキシマレーザーを
使用する)すること、エッチング法により加工すること
などによって形成することができる。
【0012】溝の表面に、厚さ1nm以上1μm以下の
非ダイヤモンドの炭素成分(例えば、グラファイト、非
結晶質カーボン)から成る層が存在してよい。非ダイヤ
モンド層は、非酸化雰囲気(例えば、不活性ガス雰囲
気)において、高熱伝導性物質層を1000〜1500
℃に30分〜10時間(例えば、1時間)加熱すること
によって、形成することができる(この場合には、溝以
外の高熱伝導性物質層の表面にも非ダイヤモンド層が形
成されるが、これは、研磨などによって除去することが
できる。)。非ダイヤモンド層の有無は、ラマン分光法
によって測定することが可能である。
【0013】溝の表面において、冷媒に対する濡れ性が
良好であることが好ましい。接触角は、通常65°以
下、より好ましくは60°以下であることが好ましい。
ダイヤモンドの表面には、水素原子が存在するので、こ
のままの状態では、水などの冷媒をはじく。そこで、水
素原子に代えて、酸素原子を含む親水基(例えば、OH
基)をつけることによってダイヤモンド層表面の親水性
を上げることができる。溝の表面の濡れ性の向上するに
は、例えば、酸化雰囲気(例えば、大気雰囲気)におい
て、500〜800℃で10分〜20時間アニールする
か、またはあるいは酸素または酸素を含む気体のプラズ
マで処理すればよい。溝を形成する方法として酸素プラ
ズマを使用する場合には、幾分親水性が上がっていると
考えられるが、さらに上記の濡れ性向上の操作を行って
よい。
【0014】さらに、溝の表面の冷媒に対する濡れ性を
改善する処理としては、上記の他、窒素、ホウ素あるい
は不活性ガス等を含むガス中でのプラズマ処理を挙げる
ことができる。
【0015】溝を形成した後に、高熱伝導性物質層を基
材に貼り合わせる。貼り合わせは、金属または接着剤な
どで行ってよい。金属層または接着剤層の厚さは、通常
0.01〜10μmである。あるいは貼り合わせは、金
属などの物質を使用せずに、高熱伝導性層を直接に基材
に付着させることによって行ってもよい。
【0016】基材としては、X線透過用窓であれば、B
e、Alなどを、赤外線透過用窓であれば、Si、Zn
Seなどを使用できる。基材は、板状であってよい。基
材の厚さは、通常0.1〜10mm、好ましくは0.5〜5
mmである。
【0017】冷媒としては、例えば、水、空気、不活性
ガス(例えば、窒素、アルゴンなど)、フルオロカーボ
ン、液体窒素、液体酸素、液体ヘリウムなどを使用す
る。本発明の窓材は、赤外線、紫外線、X線、SOR放
射光などのための透過窓として有用である。光を透過さ
せる場合に、窓材の入射光側には高熱伝導性物質層が位
置することが好ましいが、基材が位置してもよい。
【0018】さて、以下にこの冷媒の通過する溝を基材
と高熱伝導性物質との界面に有する窓材の製造方法につ
いて説明する。まず、基材に、冷媒通過溝を持つ高熱伝
導性物質層を接着して得る方法について示す。高熱伝導
性物質層となる物質を、所望の大きさに用意する。これ
に、冷媒が通過する溝を配置するには、レーザー光線を
利用した加工方法、選択的なエッチングなどが利用でき
る。レーザー加工は、物質表面にレーザー光線を集光す
ることによって物質の削除加工を行い、溝を表面に形成
する。この方法によれば、任意の配置の溝を得ることが
できる。高熱伝導性物質の表面に、十分なエネルギー密
度を持ったレーザー光線を集光し、物質を削除しながら
徐々に集光位置を移動させて溝を表面に形成する。レー
ザー光線としては、YAGレーザー、エキシマレーザー
などが利用できるが、特にエキシマレーザーはその加工
精度の点から、任意の深さ、配置の溝を再現性よく形成
することができ好ましい。
【0019】レーザー光の波長は、360nm以下、例
えば、190〜360nmの範囲であることが好まし
い。照射する光のエネルギー密度は、10〜1011W/
cm2である。パルス状レーザー光を用い、その1パルス
当たりのエネルギー密度が10-1J/cm2以上で、106
J/cm2以下の範囲とすることが好ましい。さらに、レ
ーザー発振器より発振される際のレーザー光の広がり角
度が10-2〜5x10-1mradとし、レーザー光の発
振スペクトルの半値幅を10-4〜1nmとすることが好
ましい。レーザー光のビーム断面におけるエネルギー分
布の均一性は10%以下であることが好ましい。パルス
レーザー光を円筒型レンズまたは円筒型ミラーにより集
光することによって、良好な加工の結果を得る。
【0020】このようなエキシマレーザーによる表面溝
加工において、適当な雰囲気中で加工を行うことによっ
て、ダイヤモンド表面の改質を行うことができ、冷媒と
の濡れ性をも改善することが可能となる。例えば、含ア
ミノ基化合物(例えばアンモニア、ヒドラジンなど)雰
囲気中において上記の加工を行うことによって、形成さ
れた溝の表面にアミノ基が導入され、親水性を向上させ
ることが可能である。
【0021】一方、エッチング法による表面溝加工は、
以下のように行うことができる。即ち、適当なマスクを
高熱伝導性物質層上に形成した後、マスクはエッチング
せず、高熱伝導性物質のみをエッチングする条件で処理
する。その後マスクを除去して、表面に溝を持った高熱
伝導性物質層が得られる。ダイヤモンド上にマスク材料
としてAl、あるいはSiO2を形成し、酸素あるいは酸
素を含むガスによりダイヤモンドを選択的にエッチング
することができると知られており(第53回応物学会予
稿集第二分冊第411頁参照)、この技術を利用してダ
イヤモンド上に溝加工ができる。また、酸素あるいは酸
素を含むガスの代わりに、窒素または水素を利用しても
よい。
【0022】こうして所望の溝を形成した高熱伝導性物
質層を、別途用意した基材に貼り付けすることにより、
非常に大きな放熱効率を有する窓材を得ることができ
る。基材には、別途上記層に設けた溝に通すべき冷却媒
体を導入する出入口を設けておく。
【0023】高熱伝導性物質層と基材との貼り付けは、
メタライズ処理によって、あるいは接着剤によって、行
うことができる。結合する2つの面を公知の方法でメタ
ライズ処理し、金属を溶融させることによって行ってよ
い。メタライズ処理で使用する金属の例は、Ti、P
t、Au、Sn、Pb、In、Agなどである。接着剤
(例えば、Ag/エポキシ系、Ag/ポリイミド系、A
u/エポキシ系)あるいはAg系ロウ剤、および他の接
着方法を使用してよい。
【0024】また、高熱伝導性物質層として、気相合成
法により合成されたダイヤモンドを利用する場合、溝を
形成するのにレーザー光線、エッチング法などによる加
工ではなく、マスクによる選択成長を使用することがで
きる。これは、例えば特開平1−104761号公報、
特開平1−123423号公報等に開示されている。基
材(例えば、Si、SiC、Cu、Mo、cBN等)の表面
に、マスク材を形成したい溝と対応する形状に配置して
おき、その上に気相合成法によりダイヤモンドを積層さ
せればよい。この時、50μm以上ダイヤモンドを成長
させることにより、ダイヤモンドがマスクの上部にも横
方向成長し、結果として全面を覆うようになる。その
後、基材を溶解などの方法で除去すれば、取り出される
ダイヤモンドは基材面側に溝を有している。マスクは、
Ti、SiO2、Mo等を公知の方法で形成すればよい。こ
の方法の利点は、ダイヤモンドを成長させた後に衝撃を
与える必要がないので、加工中の破損などが生じにくい
ことが挙げられる。
【0025】上記の方法において、マスクを形成する代
わりに、板状材料そのものを加工し、溝と対応する形状
に凸凹を設けておき、その上に気相合成法によりダイヤ
モンドを成長させることもできる。所望の厚さに成長さ
せた後、板状材料を除去すると、板状材料面側には溝を
有するダイヤモンド自立膜を得ることができる。板状材
料としては、例えば、Si、SiC、Moなどが挙げら
れる。
【0026】さらに、高熱伝導性物質層として気相合成
ダイヤモンドを使う場合には、上記の方法を発展させ、
接着の工程を省略することもできる。即ち、基材の上
に、まずマスクをつけ、その上に気相合成ダイヤモンド
を成長させた後、マスクのみを溶解する事により、基材
とダイヤモンドの界面のダイヤモンド側に冷媒の通過す
る溝を有する窓材を得ることができる。この方法によれ
ば、接着材を使用する必要がないため、窓材全体の放熱
効率をさらに上げることができる。このような基材とし
ては、Si、SiC、Cu、Moが好ましい。
【0027】前記のいずれの方法も高熱伝導性物質層/
基材の界面の高熱伝導性層側に溝を有する窓材の製造に
有効である。エッチングによる方法は、微細な溝を精度
良く形成することができる。レーザー加工による方法
は、その形成速度が速い。また、選択成長による方法
(マスクを使用する方法)は、比較的大きな溝を形成す
るのが容易である。
【0028】他の形態の窓材において、流路の上下方向
と横方向は、高熱伝導性物質によって包囲されている。
すなわち、導入される放射線が窓材を通過する際に発生
する熱は、高熱伝導性物質の中を温度勾配が小さいまま
伝えられ、流路を通過する冷媒によって効率よく除去さ
れる。
【0029】高熱伝導性物質としては、熱伝導性は高い
方が窓温度を押さえることができ好ましい。その熱伝導
率は、高ければ高い程良いが、10W/cm・K以上ある
ことが適当である。この様な材質を持つ物質としては、
天然ダイヤモンド、高圧合成ダイヤモンド、および気相
合成ダイヤモンドが挙げられる。これらはいずれも本発
明における高熱伝導性物質として適当であるが、特に気
相合成法により得られるダイヤモンドを利用すると、比
較的大面積の高熱伝導性物質が安価に得ることができ
る。熱伝導率は、一般に温度依存性があり、上記ダイヤ
モンドは、室温以上の温度領域では温度上昇と共にその
熱伝導率は低下する。
【0030】SOR光用の窓材等に利用される場合に、
照射されるエネルギーが膨大であるために、従来タイプ
の窓材では、それ自体の温度も数百℃まで上昇してしま
う。すると、上記ダイヤモンドを使用していても、その
熱伝導率は大幅に低下するのを免れない。しかし、本発
明の窓材を利用することによって、放熱効果を大きくす
ることが可能になるので、窓材自体の温度上昇を防ぎ、
かつ熱伝導率も高いまま維持することができる。
【0031】窓材の厚さは、30μm以上、より好まし
くは70μm以上であることが好ましい。窓材の厚さの
上限は、通常、10mm、例えば5mmである。高熱伝導性
物質は、半導電性または導電性であってもよいが、絶縁
性であることが好ましい。
【0032】流路については、典型的には、その断面形
状は長方形である。流路の高さは大きければ大きいほど
熱交換率は上昇するが、あまり大きすぎるとその機械強
度が弱くなるので好ましくない。具体的には、流路の高
さ(c)は20μm以上、より好ましくは50μm以上で
ある。流路の高さは、窓材の厚さの90%以下、より好
ましくは80%以下が好ましい。また、流路の幅(a)
は広いほど熱交換率は上昇するが、窓材の強度を保つた
めに流路の数が少なくなるために広すぎても逆に熱交換
率は悪くなる。一方、流路の間隔(b)についても幅と
同様なことがいえ、広すぎても狭すぎても良くない。流
路の幅および間隔は、20μm以上10mm以下、より好
ましくは40μm以上2mm以下、特に好ましくは50μm
以上2mm以下であることが望ましい。
【0033】幅(a)と間隔(b)の長さの比(a/
b)の範囲について、下限は、0.02、より好ましく
は0.04であり、一方、上限は、10、より好ましく
は5であることが望ましい。幅(a)と高さ(c)の長
さの比(a/c)の範囲について、下限は、0.02、
より好ましくは0.05であり、一方、上限は、50、
より好ましくは25であることが望ましい。
【0034】但し、最適な幅、間隔、高さについては、
窓材を透過する光に依存する。なお、流路の形状として
は、断面が長方形である必要はなく、半円形、半楕円形
やさらに複雑な形状をとりうる。また、1つの窓材中
で、上記のa, b, cの値が一定である必要はなく、上に
示した条件の中で変化させうる。流路によって占められ
る高熱伝導性物質層の表面の割合は、高熱伝導性物質層
の表面の面積に対して、通常2〜75%、好ましくは1
0〜50%である。流路の側面が高熱伝導性物質層表面
に対する鉛直線となす角度(テーパー角)は、30°以
下であることが好ましい。
【0035】流路は、窓材の発熱状態に応じて適宜形成
することができる。最も発熱する部分、あるいは最も低
温であることが要求される部分が最も効率的に冷却され
るように流路を形成することが望ましい。具体的には、
最も冷却したい部分に冷媒が最も多く通過する様に流路
を配置する。流路の断面形状を複雑にし、流路の表面積
を大きくすることによっても冷却効率を上げることがで
きる。また、冷媒の導入口付近は最も冷媒の温度も低い
ので、冷却効率が高くなる。従って、窓材の発熱量分布
がほぼ均等である場合、中央部分が最も温度が高くなる
ので、中央部に導入口を設け、そこから螺旋状、あるい
は放射線状に冷媒流路を配置すると効率的でよい。
【0036】流路の表面に、厚さ1nm以上1μm以下の
非ダイヤモンドの炭素成分(例えば、グラファイト、非
結晶質カーボン)から成る層が存在してよい。非ダイヤ
モンド層は、非酸化雰囲気(例えば、不活性ガス雰囲
気)において、高熱伝導性物質膜を1000〜1500
℃に30分〜10時間(例えば、1時間)加熱すること
によって、形成することができる(この場合には、流路
以外の窓の表面にも非ダイヤモンド層が形成されるが、
これは、研磨などによって除去することができる。)。
非ダイヤモンド層の有無は、ラマン分光法によって測定
することが可能である。
【0037】流路の表面において、冷媒に対する濡れ性
が良好であることが好ましい。接触角は、通常65°以
下、より好ましくは60°以下であることが好ましい。
ダイヤモンドの表面には、水素原子が存在するので、こ
のままの状態では、水などの冷媒をはじく。そこで、水
素原子に代えて、酸素原子を含む親水基(例えば、OH
基)をつけることによってダイヤモンド膜表面の親水性
を上げることができる。
【0038】流路の表面の濡れ性の向上するには、例え
ば、酸化雰囲気(例えば、大気雰囲気)において、50
0〜800℃で10分〜10時間アニールするか、また
はあるいは酸素または酸素を含む気体のプラズマで処理
すればよい。流路を形成する方法として酸素プラズマを
使用する場合には、幾分親水性が上がっていると考えら
れるが、さらに上記の濡れ性向上の操作を行ってよい。
【0039】さらに、流路の表面の冷媒に対する濡れ性
を改善する処理としては、上記の他、窒素、ホウ素ある
いは不活性ガス等を含むガス中でのプラズマ処理を挙げ
ることができる。
【0040】冷媒としては、例えば、水、空気、不活性
ガス(例えば、窒素、アルゴンなど)、フルオロカーボ
ン、液体窒素、液体酸素、液体ヘリウムなどを使用す
る。本発明の窓材に、高熱伝導性物質以外の膜[厚さ
0.1〜10mm、例えば、B、Be、Al、Cu、S
i、Ag、Ti、Fe、Ni、Mo、W、これらの合金
およびこれらの化合物(例えば、炭化物、窒化物)]を
はり合わせてもよい。X線透過用窓であれば、Be、A
lなどを、赤外線窓であれば、Si、ZnSeなどを使
用できる。本発明の窓材は、赤外線、紫外線、X線、S
OR放射光などのための透過窓として有用である。
【0041】さて、以下に、高熱伝導性物質が流路周囲
を包囲する窓材の製造方法について説明する。窓材は、
例えば、レーザー加工などにより、窓材の側面に直接に
穴をあけて流路を形成することによって形成できる。ま
た、窓材は、1枚の膜に溝を形成した後、他の膜を貼り
合わせることによっても形成できる。
【0042】前者の方法では、まず所望の形状の高熱伝
導性物質からなる板を用意し、この側面にレーザー光線
を集光することにより、穴加工を施し、高熱伝導性物質
板の内部に冷媒を通過させる流路を形成する。
【0043】第1高熱伝導性物質膜と第2高熱伝導性物
質膜との貼り合わせによって得る方法を以下に示す。第
1高熱伝導性物質膜には、流路になる溝が形成されてお
り、第2高熱伝導性物質膜には溝が形成されていない。
高熱伝導性物質からなる膜を所望の大きさに用意する。
第1高熱伝導性物質膜の片面に、完成時に内部に埋め込
まれるべき流路をレーザー光線による加工方法、選択的
なエッチングによる加工方法等によって形成する。
【0044】レーザー加工は、物質表面にレーザー光線
を集光することによって物質の削除加工を行い、溝を表
面に形成する。この方法によれば、任意の配置の流路を
得ることができる。高熱伝導性物質の表面に、十分なエ
ネルギー密度を持ったレーザー光線を集光し、物質を削
除しながら徐々に集光位置を移動させて溝を表面に形成
する。レーザー光線としては、YAGレーザー、エキシ
マレーザーなどが利用できるが、特にエキシマレーザー
はその加工精度の点から、任意の深さ、配置の流路を再
現性よく形成することができ好ましい。
【0045】レーザー光の波長は、360nm以下、例え
ば、190〜360nmの範囲であることが好ましい。照
射する光のエネルギー密度は、10〜1011W/cm2
ある。パルス状レーザー光を用い、その1パルス当たり
のエネルギー密度が10-1J/cm2以上で、106J/cm
2以下の範囲とすることが好ましい。さらに、レーザー
発振器より発振される際のレーザー光の広がり角度が1
-2〜5x10−1mradとし、レーザー光の発振ス
ペクトルの半値幅を10−4〜1nmとすることが好まし
い。レーザー光のビーム断面におけるエネルギー分布の
均一性は10%以下であることが好ましい。パルスレー
ザー光を円筒型レンズまたは円筒型ミラーにより集光す
ることによって、良好な加工の結果を得る。このような
エキシマレーザーによる表面溝加工において、適当な雰
囲気中で加工を行うことによって、ダイヤモンド表面の
改質を行うことができ、冷媒との濡れ性をも改善するこ
とが可能となる。例えば、含アミノ基化合物(例えばア
ンモニア、ヒドラジンなど)雰囲気中において上記の加
工を行うことによって、形成された溝の表面にアミノ基
が導入され、親水性を向上させることが可能である。
【0046】一方、エッチング法による流路形成は、以
下のように行うことができる。即ち、適当なマスクを高
熱伝導性物質膜上に形成した後、マスクはエッチングせ
ず、高熱伝導性物質のみをエッチングする条件で処理す
る。その後マスクを除去して、表面に溝を持った第1高
熱伝導性物質膜が得られる。ダイヤモンド上にマスク材
料としてAl、あるいはSiO2を形成し、酸素あるいは
酸素を含むガスによりダイヤモンドを選択的にエッチン
グすることができると知られており(第53回応物学会
予稿集第二分冊第411頁参照)、この技術を利用して
ダイヤモンド上に溝加工ができる。また、酸素あるいは
酸素を含むガスの代わりに、窒素または水素を利用して
もよい。
【0047】こうして所望の溝を形成した第1高熱伝導
性物質膜を、別途用意した第2高熱伝導性物質膜に貼り
付けすることにより、非常に大きな放熱効率を有する窓
を得ることができる。第2高熱伝導性物質膜には、別
途、流路に通すべき冷却媒体を導入する出入口を設けて
おいてよい。
【0048】第1高熱伝導性物質膜にのみ、溝を形成す
る方法を上記に示したが、第2高熱伝導性物質にも溝を
形成し、双方の溝を有する面同士を貼り合わせることも
できる。ただし、この場合には工程が複雑になるため、
第1高熱伝導性物質膜のみに溝を形成することが好まし
い。
【0049】第1高熱伝導性物質膜と第2高熱伝導性物
質膜との貼り付けは、メタライズ処理によって、あるい
は接着剤によって、行うことができる。結合する2つの
面を公知の方法でメタライズ処理し、金属を溶融させる
ことによって行ってよい。メタライズ処理で使用する金
属の例は、Ti、Pt、Au、Sn、Pb、In、Ag
などである。接着剤(例えば、Ag/エポキシ系、Ag
/ポリイミド系、Au/エポキシ系)あるいはAg系ロ
ウ剤、および他の接着方法を使用してよい。接着剤層の
厚さは、通常0.01〜10μmである。
【0050】また、高熱伝導性物質膜として、気相合成
法により合成されたダイヤモンドを利用する場合、溝を
形成するのにレーザー光線、エッチング法などによる加
工ではなく、マスクによる選択成長を使用することがで
きる。これは、例えば特開平1−104761号公報、
特開平1−123423号公報等に開示されている。基
材(例えば、Si、SiC、Cu、Mo、cBN等)の表面
に、マスク材を形成したい溝と対応する形状に配置して
おき、その上に気相合成法によりダイヤモンドを積層さ
せればよい。この時、50μm以上ダイヤモンドを成長
させることにより、ダイヤモンドがマスクの上部にも横
方向成長し、結果として全面を覆うようになる。その
後、基材を溶解などの方法で除去すれば、取り出される
ダイヤモンドは基材面側に溝を有している。マスクは、
Ti、SiO2、Mo等を公知の方法で形成すればよい。こ
の方法の利点は、ダイヤモンドを成長させた後に衝撃を
与える必要がないので、加工中の破損などが生じにくい
ことが挙げられる。
【0051】上記の方法において、マスクを形成する代
わりに、板状材料そのものを加工し、溝と対応する形状
に凸凹を設けておき、その上に気相合成法によりダイヤ
モンドを成長させることもできる。所望の厚さに成長さ
せた後、板状材料を除去すると、板状材料面側には溝を
有するダイヤモンド自立膜を得ることができる。板状材
料としては、例えば、Si、SiC、Moなどが挙げら
れる。
【0052】さらに、高熱伝導性物質膜として気相合成
ダイヤモンドを使う場合には、上記の方法を発展させ、
接着の工程を省略することもできる。即ち、ダイヤモン
ド膜の上に、まずマスクをつけ、その上に気相合成ダイ
ヤモンドを成長させた後、マスクのみを溶解する事によ
り、流路を有する窓を得ることができる。この方法によ
れば、接着材を使用する必要がないため、窓全体の放熱
効率をさらに上げることができる。
【0053】前記のいずれの方法も流路を有する窓の製
造に有効である。エッチングによる方法は、微細な溝を
精度良く形成することができる。レーザー加工による方
法は、その形成速度が速い。また、選択成長による方法
(マスクを使用する方法)は、比較的大きな溝を形成す
るのが容易である。
【0054】以下、添付図面を参照して、本発明を説明
する。図1は、本発明における溝付高熱伝導性物質層の
概念を示す平面図である。高熱伝導性物質層11には、
溝が形成されていない表面が櫛型状になるように、溝1
2が設けられている。図2は、本発明における窓材の正
面図である。窓材16は、高熱伝導性物質層11、基材
13および接着剤層15を有してなる。基材13には、
溝12と連絡する2つの冷媒出入口14が設けられてい
る。基材13における冷媒出入口14の大きさおよび数
は、特に限定されない。例えば、溝の両端に対応する基
材の部分のそれぞれに、冷媒出入口が存在してよい。
【0055】図3は、本発明における溝付高熱伝導性物
質層の概念を示す平面図である。高熱伝導性物質層21
には、ら旋状に溝22が形成されている。図4は、本発
明には含まれない比較例1の溝付Al層の概念を示す平
面図である。Al層31には、図1と同様の形状の溝3
2が形成されている。図5は、本発明には含まれない比
較例1における溝付Al層を使った窓材の正面図であ
る。窓材36は、Al層31、基材33および接着剤層
35を有してなる。基材33には、溝32と連絡する2
つの冷媒用出入口34が設けられている。
【0056】図6は、本発明には含まれない比較例2に
おける窓材の概念を示す側面図である。基材46は、溝
の形成されていないダイヤモンド層41、基材43およ
び接着剤層45を有してなる。図7は、本発明における
高熱伝導性物質層に形成される溝を示す断面図である。
溝12は、幅aおよび深さcを有しており、間隔bで形
成されている。
【0057】図8は、ダイヤモンドおよび非ダイヤモン
ド炭素のラマンスペクトルを示す。曲線aは、ダイヤモ
ンドのスペクトルであり、1333cm-1に強いピークを
有する。曲線bは、非ダイヤモンド炭素を多く含む物質
のスペクトルであり、ブロードな2つのピークを有す
る。図9は、高熱伝導性物質が流路周囲を包囲する本発
明の窓材を示す平面図である。窓材111には流路11
2が形成されており、流路112は窓材内部に埋め込ま
れている。
【0058】図10は、図9の窓材の正面図である。窓
111は、流路112が形成されている第1高熱伝導性
物質膜113、第2高熱伝導性物質膜114および接着
剤層115を有してなる。流路112は、2つの冷媒出
入口116に接続している。冷媒出入口116は、この
ような位置になくてもよく、第1高熱伝導性物質膜11
3または第2高熱伝導性物質膜114の主表面に設けら
れていてもよい。冷媒出入口の大きさおよび数は、特に
限定されない。
【0059】図11は、高熱伝導性物質が流路周囲を包
囲する本発明の別の窓材を示す平面図である。窓材12
1には、ら旋状に流路122が形成されている。図12
は、本発明における窓材に形成される流路を示す断面図
である。流路112は、幅aおよび高さcを有してお
り、間隔bで形成されている。
【実施例】以下、実施例により、具体的に本発明を開示
する。
【0060】実施例1 CVD、レーザー溝入れ、貼り付け:傷つけ処理をした
多結晶Si板(10mmx10mmx厚さ2mm)上に、マイク
ロ波プラズマCVD法によりダイヤモンドを成長させ
た。成長条件は、メタン1%−水素系で、圧力80Tor
r、板温度は900℃であった。400hrの成長の後、
成長面を研磨し、Si板を酸により溶解したところ、1
0mmx10mmx厚さ0.5mmのダイヤモンド自立膜を得
た。熱伝導率を測定したところ17.2W/cm・Kであ
った。
【0061】上記のようにして得たダイヤモンド自立膜
の片面に、KrFエキシマレーザーを線集光および点集
光し、図1の様な溝を形成した。溝の深さは約150μ
m、幅約500μm、間隔は約400μmであった。両者
にTi、PtおよびAuを蒸着した後、Auを溶融する
ことにより、溝付ダイヤモンドをBe板(10mmx10
mmx厚さ1mm)上に接着し、窓材を形成した。Ti/P
t/Au/Pt/Ti層の厚さは0.1μmであった。B
eには、あらかじめダイヤモンドの溝に導入する冷媒の
出入口(直径:400μm)を設けてある(図2)。以上
のようにして作製した窓材の流路に、冷媒としてフルオ
ロカーボン(フロン112)(液温25℃)を供給した。
これをSORビームラインの窓材として耐久試験を行っ
た。挿入した光源のストレージリングの運転エネルギー
は500MeVであった。試験中窓材を透過するSOR
ビームの強度に変化はなかった。窓材にSORビームを
20時間透過させた後、窓材を取り出して観察したとこ
ろ、全く変質はみられなかった。
【0062】実施例2 高圧合成、溝入れレーザー、貼り付け:高温高圧下で合
成したIb型ダイヤモンド(8mm×8mm×厚さ0.6mm、
熱伝導率18.3W/cm・K)を用いて、実施例1と同様
に溝入りダイヤ/Be窓材を作製した。但し、ダイヤモ
ンドに形成する溝は、ArFエキシマレーザーを使用
し、深さ約200μm、幅約350μm、間隔約400μ
mであった(図3)。こうして作製した溝入りダイヤ/B
e窓材の溝に、実施例1と同様にフルオロカーボン(フ
ロン112)(液温25℃)を供給した。実施例1と同様
にSORビームを透過させたが、窓材には変化は見られ
なかった。
【0063】比較例1 Al、溝有り:Al板(10mmx10mmx0.5mm、熱伝
導率2.4W/cm・K)の片面に、上記実施例1と同様に
KrFエキシマレーザーを使用して、光線を線集光して
溝を形成した(図4)。溝の深さは約150μm、幅は約
500μm、間隔は約400μmであった。この溝付Al
板を、Be板上に接着して窓材を形成した。Be板に
は、あらかじめAl板の溝に導入する冷媒の出入口を設
けてある(図5)。以上のようにして作製した窓材の溝
に、フルオロカーボン(フロン112)(液温25℃)を
供給した。実施例1と同様にSORビームを窓材に透過
させた。20時間後に窓材を取り出したが、部分的に溶
融しかけているところがあった。
【0064】比較例2 CVD、溝なし:実施例1と同様に、気相合成ダイヤ1
0mmx10mmx0.35mmの自立膜(熱伝導率17.2W
/cm・K)を作製した。これに、溝を形成することな
く、Be膜に接着して窓材を形成した(図6)。窓材に
25℃の空気を吹き付けながら、実施例1と同様にSO
Rビームを透過させた。20時間後に窓材を取り出した
が、窓材が温度上昇によりグラファイト化していること
が確認された。
【0065】比較例3 CVD、溝細すぎ:実施例1と同様に、気相合成ダイヤ
10mmx10mmx0.5mmの自立膜(熱伝導率17.2W
/cm・K)を作製した。これに、KrFエキシマレーザー
を利用して、光線を線集光して溝を形成した。溝の深さ
は約150μm、幅は10μm、間隔は990μmであっ
た。この溝付ダイヤモンドを、Be板(10mmx10mm
x厚さ1mm)上に接着し、窓材を形成した。Be板に
は、あらかじめCVDダイヤの溝に導入する冷媒の出入
口を設けてあった。窓材の溝に、フルオロカーボン(フ
ロン112)(液温25℃)を供給した。実施例1と同様
にSORビームを透過させた。20時間後に窓材を取り
出したが、窓材が部分的に黒変していた。
【0066】実施例3 Be板に代えてSi板(10mm x 10mm x 1mm)を
用いる以外は、実施例1と同様の手順を繰り返して、ダ
イヤ/Si窓材を製造した。窓材の溝に、冷媒のフルオ
ロカーボン(フロン112)(水温25℃)を導入した。
波長10.6μm、出力8kWの赤外線を窓材に透過させ
た。試験中、窓材を透過する赤外線の強度には変化がな
かった。20時間後に窓材を取り出して観察したとこ
ろ、全く変質はみられなかった。
【0067】実施例4 実施例1と同様にして、図1の様な溝入ダイヤモンドを
得た。これを600℃で大気中30分間アニールした
後、実施例1と同様にBe基材上に貼り付けた。こうし
て作製した窓材の溝に冷媒としてフルオロカーボン(フ
ロン112、液温25℃)を供給した。実施例1と同様
にSORビームを透過させたが、窓材に変化は見られな
かった。
【0068】実施例5 実施例1と同様にして、図1のような溝入ダイヤモンド
を得た。これを1200℃で真空中30分間アニールし
た。この試料に対し、ラマンスペクトル測定を行ったと
ころ、図8のbに示すように非ダイヤモンド成分を示す
ピークがみられた。実施例1と同様にBe基材上に貼り
付けた。こうして作製した窓材の溝に冷媒としてフルオ
ロカーボン(フロン112、液温25℃)を供給した。
実施例1と同様にSORビームを透過させたが、窓材に
変化は見られなかった。
【0069】実施例6 CVD、レーザー流路入れ、貼り付け:傷つけ処理をし
た多結晶Si基材(10mmx10mmx厚さ2mm)を2枚用
意し、その上にマイクロ波プラズマCVD法によりダイ
ヤモンドを成長させた。成長条件は、メタン1%−水素
系で、圧力80Torr、基材温度は900℃であった。
1枚は250hr、もう1枚は200hrの成長の後、
成長面を研磨し、Si基材を酸により溶解したところ、
10mm x 10mm x 厚さ0.3mmおよび10mmx 10
mm x 0.15mmの2枚のダイヤモンド自立膜を得た。
熱伝導率を測定したところ、それぞれ17.2W/cm・
K(厚さ0.3mmのもの、第1ダイヤモンド自立膜)お
よび16.9W/cm・K(厚さ0.15mmのもの、第2ダ
イヤモンド自立膜)であった。
【0070】上記のようにして得た第1ダイヤモンド自
立膜(厚さ0.3mmのダイヤモンド自立膜)の片面に、
KrFエキシマレーザーを線集光および点集光し、図9
の様な溝を形成した。溝の深さは約150μm、幅は約
500μm、間隔は約400μmであった。両者にTi、
PtおよびAuを蒸着により積層した後、Auを溶融す
ることにより、第1ダイヤモンド自立膜を第2ダイヤモ
ンド自立膜に接着し、窓材を作製した(図9および図1
0)。Ti/Pt/Au/Pt/Ti層の厚さは0.1
μmであった。基板は、基板の側面から冷媒を注入、排
出できるような出入口を有した。以上のようにして作製
した窓材の流路に、冷媒としてフルオロカーボン(フロ
ン112)(液温25℃)を供給した。これをSORビー
ムラインの窓材として耐久試験を行った。挿入した光源
のストレージリングの運転エネルギーは500MeVで
あった。試験中窓材を透過するSORビームの強度に変
化はなかった。窓材にSORビームを20時間透過させ
た後、窓材を取り出して観察したところ、全く変質はみ
られなかった。
【0071】実施例7 高圧合成、流路入れレーザー、貼り付け:高温高圧下で
合成したIb型ダイヤモンド[第1ダイヤモンド自立膜
(8mm×8mm×厚さ0.4mm、熱伝導率18.3W/cm・
K)および第2ダイヤモンド自立膜(8mm×8mm×厚さ
0.2mm、熱伝導率18.3W/cm・K)を用いて、実施
例6と同様に流路入りダイヤ窓を作製した。但し、第1
ダイヤモンド自立膜に形成する流路は、ArFエキシマ
レーザーを使用し、深さ約200μm、幅約350μm、
間隔約400μmであり、図11に示すようなものであ
った。第2ダイヤモンド自立膜には、流路に導入する冷
媒の出入口として、2箇所に穴をKrFエキシマレーザ
ーを点集光して加工した。以上のようにして作製した窓
材の流路に、冷媒としてフルオロカーボン(フロン11
2)(液温25℃)を供給した。これをSORビームライ
ンの窓材として耐久試験を行った。挿入した光源のスト
レージリングの運転エネルギーは500MeVであっ
た。試験中窓材を透過するSORビームの強度に変化は
なかった。窓材にSORビームを20時間透過させた
後、窓材を取り出して観察したところ、全く変質はみら
れなかった。
【0072】比較例4 Al、流路あり:第1Al自立膜(10mm x 10mm
x 厚さ0.5mm、熱伝導率2.4W/cm・K)の片面に
実施例6と同様にKrFエキシマレーザーを使用して、
溝を形成した。溝の深さは約150μm、幅は約500
μm、間隔は約400μmであった。第1Al自立膜を第
2Al自立膜(10mm x 10mm x 厚さ0.3mm、熱
伝導率2.4W/cm・K)と接着し、流路を有する窓材
を得た。以上のようにして作製した窓材の流路に、フル
オロカーボン(液温25℃)を供給した。実施例6と同様
にSORビームを窓材に透過させた。20時間後に窓材
を取り出したが、部分的に溶融しかけているところがあ
った。
【0073】比較例5 CVD、流路なし:実施例6と同様に、気相合成ダイヤ
10x10x0.45mmの自立膜(熱伝導率17.2W/c
m・K)を作製した。これに、実施例6と同様にSORビ
ームラインにセットし、SORビームを透過させた。2
0時間後に窓材を取り出したところ、窓材が温度上昇に
よりグラファイト化していることが確認された。
【0074】比較例6 CVD、流路細すぎ:実施例6と同様に、気相合成によ
って、第1ダイヤモンド自立膜(10mmx10mmx0.3
mm、熱伝導率17.2W/cm・K)および第2ダイヤモン
ド自立膜(10mm x 10mm x 0.15mm、熱伝導率
17.2W/cm・K)を作製した。第1ダイヤモンド自
立膜に、KrFエキシマレーザーを利用して、図9に示
すように、光線を線集光して溝を形成した。溝の深さは
約150μm、幅は10μm、間隔は990μmであっ
た。この溝付第1ダイヤモンド自立膜を、第2ダイヤモ
ンド自立膜に接着し、ダイヤモンド窓材を作成した。窓
材の流路に、フルオロカーボン(フロン112)(液温
25℃)を供給した。実施例6と同様にSORビームを
透過させた。20時間後に窓材を取り出したが、窓材が
部分的に黒変していた。
【0075】実施例8 大気アニール:実施例6と同様にして、第1ダイヤモン
ド自立膜および第2ダイヤモンド自立膜を得た。第1ダ
イヤモンド自立膜を、大気炉にセットし、600℃、3
0分間大気中でアニールした。この後、実施例6と同様
に、第2ダイヤモンド自立膜を貼り付け、ダイヤモンド
窓を得た。こうして作製した窓材の流路に、冷媒の水
(温度25℃)を導入した。実施例6と同様にSORビ
ームを窓材に通過させた。試験中、窓材を透過するSO
Rビームの強度には変化が認められなかった。20時間
後に窓材を取り出して観察したところ、全く変質はみら
れなかった。
【0076】実施例9 真空アニール:実施例6と同様にして、第1ダイヤモン
ド自立膜および第2ダイヤモンド自立膜を得た。第1ダ
イヤモンド自立膜を、真空炉にセットし、1200℃、
30分間真空中でアニールした。この自立膜に対し、ラ
マンスペクトル測定を行ったところ、図8のbに示すよ
うに非ダイヤモンド成分を示すピークがみられた。この
後、実施例6と同様に、第2ダイヤモンド自立膜を貼り
付け、ダイヤモンド窓材を得た。こうして作製した窓材
の流路に、冷媒の水(温度25℃)を導入した。実施例
6と同様にSORビームを窓材に通過させた。試験中、
窓材を透過するSORビームの強度には変化は認められ
なかった。20時間後に窓材を取り出して観察したとこ
ろ、全く変質はみられなかった。
【0077】
【発明の効果】本発明による窓材は、高い放熱特性と透
過特性を持っている。特に、これまでの窓材では対応が
困難であった高輝度の光線を透過させる窓として利用す
る場合に、大きな効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明における溝付高熱伝導性物質層の概念
を示す平面図。
【図2】 本発明における窓材の正面図。
【図3】 本発明における溝付高熱伝導性物質層の概念
を示す平面図。
【図4】 本発明には含まれない比較例1の溝付Al層
の概念を示す平面図。
【図5】 本発明には含まれない比較例1における溝付
Al層を使った窓材の正面図。
【図6】 本発明には含まれない比較例2における従来
型窓材の概念を示す側面図。
【図7】 本発明における高熱伝導性物質層に形成され
る溝を示す断面図。
【図8】 ダイヤモンドおよび非ダイヤモンド炭素のラ
マンスペクトル。
【図9】 高熱伝導性物質が流路を包囲する本発明の窓
材の平面図。
【図10】 図9の窓材の正面図。
【図11】 高熱伝導性物質が流路を包囲する本発明の
別の窓材の平面図。
【図12】 本発明の窓材に形成される流路を示す断面
図。
【符号の説明】
11、21、41…高熱伝導性物質層 31…Al層 12、22、32…冷媒通過用の溝 13、33、43…基材 14、34…冷媒出入口 15、35、45…接着層 16、36、46…窓材 111、112…窓材 112、122…冷媒通過用の流路 113…第1高熱伝導性膜 114…第2高熱伝導性膜 115…接着層 116…冷媒出入口
フロントページの続き (72)発明者 太田 進啓 兵庫県伊丹市昆陽北一丁目1番1号 住 友電気工業株式会社伊丹製作所内 (72)発明者 築野 孝 兵庫県伊丹市昆陽北一丁目1番1号 住 友電気工業株式会社伊丹製作所内 (56)参考文献 特開 平3−170033(JP,A) 特開 平4−286988(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G21K 5/00 H05H 13/00

Claims (11)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱伝導率が10W/cm・K以上の高熱伝
    導性物質層が基材の上に配置され、かつ基材/高熱伝導
    性物質層の界面部の高熱伝導性物質層側に冷却用媒体を
    通過させるための流路を備えており、冷却用媒体を通過
    させるための流路の表面が、冷却用媒体に対する濡れ性
    を向上させるように処理されていることを特徴とする窓
    材。
  2. 【請求項2】 高熱伝導性物質層がダイヤモンドである
    ことを特徴とする請求項1に記載の窓材。
  3. 【請求項3】 ダイヤモンドが気相合成法により作製さ
    れたことを特徴とする請求項2に記載の窓材。
  4. 【請求項4】 冷却用媒体を通過させるための流路の深
    さが、50μm以上、高熱伝導性物質層の厚さの90%
    以下であることを特徴とする請求項1に記載の窓材。
  5. 【請求項5】 冷却用媒体を通過させるための流路の幅
    が、20μm以上10mm以下であることを特徴とする請
    求項1に記載の窓材。
  6. 【請求項6】 冷却用媒体を通過させるための流路の間
    隔が、20μm以上10mm以下であることを特徴とする
    請求項1に記載の窓材。
  7. 【請求項7】 冷却用媒体を通過させるための流路の幅
    (a)と間隔(b)の比が、0.02≦(a/b)≦10であるこ
    とを特徴とする請求項1に記載の窓材。
  8. 【請求項8】 冷却用媒体を通過させるための流路が、
    窓材の中央部から外周部へ螺旋状あるいは放射線状に配
    置されていることを特徴とする請求項1に記載の窓材。
  9. 【請求項9】 高熱伝導性物質層の厚さが30μ m 以上
    である請求項1に記載の窓材
  10. 【請求項10】 熱伝導率10W/cm・K以上の高熱伝
    導性物質から成る板中に、冷却用媒体を通過させるため
    の1本以上の流路が埋め込まれており、冷却用媒体を通
    過させるための流路の表面が、冷却用媒体に対する濡れ
    性を向上させるように処理されていることを特徴とする
    窓材。
  11. 【請求項11】 高熱伝導性物質からなる板の厚さが3
    0μ m 以上である請求項10に記載の窓材
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