JP3193235B2 - ダイヤモンド−タングステン複合膜付部材の製造方法 - Google Patents

ダイヤモンド−タングステン複合膜付部材の製造方法

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JP3193235B2 JP17823594A JP17823594A JP3193235B2 JP 3193235 B2 JP3193235 B2 JP 3193235B2 JP 17823594 A JP17823594 A JP 17823594A JP 17823594 A JP17823594 A JP 17823594A JP 3193235 B2 JP3193235 B2 JP 3193235B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ダイヤモンド−タング
ステン複合膜付部材の製造方法に関するもので、特に、
加工用切削工具,スリッターナイフ等の産業用刃物、各
種の摺動部品、糸道,ガイドブッシュ等の耐摩耗部材、
各種測定機器用部品、精密加工用刃物、医療用器具、各
種電子素子、電子部品用放熱板等に最適なダイヤモンド
−タングステン複合膜付部材の製造方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来技術】ダイヤモンド等の超硬質材料は、従来大規
模な超高圧プレス装置により作成していたが、気相合成
法(CVD)によれば、これらの材料が簡便な方法によ
り得られることから、気相合成法によるダイヤモンド等
の超硬質材料は、今後、広範囲にわたる応用が期待され
ている(特開昭60−54995号公報等参照)。
【0003】しかし、CVDによるダイヤモンド等の超
硬質膜は、例えば鉄系合金には全く付着しない。また、
窒化珪素や超硬合金からなる母材でも密着性が不十分で
剥がれが生じやすいという問題がある。そこでこの対策
としてシリコン基板上にダイヤモンド膜を形成し、しか
る後に、シリコン基板を除去し、ダイヤモンド膜を切り
出して超硬工具からなる母材にろう付けする事が提案さ
れている。
【0004】
【発明が解決しようとする問題点】しかしながら、上記
ダイヤモンド膜を直接母材にろう付けする方法では、ダ
イヤモンドとろう材(例えば、Ag,Au−Sn等)と
の濡れ性が低いため、ダイヤモンド膜と母材との接合強
度が低く、例えば、短時間でダイヤモンド膜が母材から
脱落するという問題があった。また、この方法ではダイ
ヤモンドを厚くコーティングする必要があるため、結晶
粒子の大きさにバラツキがあり、性能のバラツキが大き
いという問題があった。
【0005】そこで、ダイヤモンド膜と母材とを強固に
密着させることができれば、ダイヤモンド膜が広い範囲
で使用可能となり性能改善が期待できる。しかし、現状
では、上記のように母材との密着性を向上するには限界
があり、これらダイヤモンド等の超硬質膜が形成された
工具は未だ実用化されていないのが現状である。
【0006】しかも、膜厚が厚いダイヤモンド膜を生成
する必要があったため、厚いダイヤモンド膜を生成する
ためのコスト(例えば電力費、装置費、製造に要する時
間)が増大し、総合的にみて従来のダイヤモンド膜を母
材に直接成膜する方法に対する優位性が認められなかっ
た。
【0007】即ち、本発明は、母材との接合強度を向上
することができるダイヤモンド−タングステン複合膜付
部材の製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
【問題点を解決するための手段】本発明者等は、上記問
題点を鋭意検討した結果、CVD法により作成されたダ
イヤモンド質結晶の空隙中に、CVD法により金属タン
グステン及び炭化タングステンのうち少なくとも一種を
充填したダイヤモンド−タングステン複合膜を、接合膜
を介して母材にろう付けすることにより、母材との接合
強度を向上することができることを見出し、本発明に到
った。
【0009】即ち、本発明のダイヤモンド−タングステ
ン複合膜付部材の製造方法は、基板の表面に、CVD法
によりダイヤモンド及びダイヤモンド状炭素のうち少な
くとも一種からなる緻密膜を形成した後、該緻密膜上
に、CVD法によりダイヤモンド及びダイヤモンド状炭
素のうち少なくとも一種からなるダイヤモンド質結晶を
形成し、このダイヤモンド質結晶間の空隙中にCVD法
により金属タングステン及び炭化タングステンのうち少
なくとも一種を充填させて、前記基体の表面にダイヤモ
ンド−タングステン複合膜を形成した後、該複合膜の表
面に、金属タングステン及び炭化タングステンのうち少
なくとも一種からなる接合膜を形成し、この接合膜面
を、部材を構成する母材にろう付けして前記基板を除去
するか、或いは、前記基板を除去した後前記接合膜面を
前記母材にろう付けする製造方法である。
【0010】本発明におけるダイヤモンド状炭素とは、
非常に緻密で高硬度であり、結晶粒界が見られず、規則
的な結晶構造を有する結晶質ダイヤモンドとは異なる構
造の炭素を意味する。また、ダイヤモンド及びダイヤモ
ンド状炭素のうち少なくとも一種からなるダイヤモンド
質結晶は、CVD(化学的気相合成法)により生成さ
れ、それ自体結晶粒子間に空隙を有するもので、その気
孔率は、5〜80%であり、膜厚は、1〜500μmで
あることが望ましい。
【0011】また、本発明のダイヤモンド−タングステ
ン複合膜付部材の製造方法は、ダイヤモンド質結晶間の
空隙中に金属タングステンまたは炭化タングステンを充
填することにより緻密化を図るものである。尚、炭化タ
ングステンとしてはWCやW2 Cが挙げられる。
【0012】また、上記ダイヤモンド−タングステン複
合膜をろう付けする母材としては、例えば、WCとコバ
ルト(Co)と周期律表第4a,5a,6a族元素の炭
化物,窒化物または炭窒化物とからなる超硬合金や、T
iCまたはTiCNとニッケル(Ni)またはCoと周
期律表第4a,5a,6a族元素の炭化物,窒化物また
は炭窒化物とからなるサーメットや、炭化ケイ素(Si
C)とホウ素と炭素とからなる炭化珪素質焼結体や、S
3 4 またはSiCと希土類元素酸化物とからなる炭
化珪素或いは窒化珪素質焼結体から構成されている。ま
た、母材は、鉄系合金,Ni系,Co系合金,ハイスな
どであっても良い。
【0013】本発明により得られたダイヤモンド−タン
グステン複合膜は、ダイヤモンド及びダイヤモンド状炭
素のうち少なくとも一種と、金属タングステン及び炭化
タングステンのうち少なくとも一種からなるものである
が、このダイヤモンド−タングステン複合膜の少なくと
も一つの断面で金属タングステン,炭化タングステンが
網目状構造を形成するように、ダイヤモンド質結晶の間
の空隙を充填している。
【0014】尚、ダイヤモンド質結晶は柱状に析出する
場合や粒子状に析出する場合がある。図1に網目状構造
を示す。図2,3に示すように網目状構造の一部を形成
する構造でも良い。図4に柱状のダイヤモンド質結晶の
隙間を金属タングステン,炭化タングステンが充填して
いる状態を示す。図1,2,3,4で符号1はダイヤモ
ンド質結晶、符号2は金属タングステン,炭化タングス
テン相である。
【0015】本発明により得られたダイヤモンド−タン
グステン複合膜付部材は、図5に示すようにダイヤモン
ド−タングステン複合膜3を母材4にろう付けしてなる
ものであるが、ダイヤモンド−タングステン複合膜3と
母材4との間に、図6に示すように、金属タングステ
ン,炭化タングステンのうち少なくとも一種からなる接
合膜5が介在していることが望ましい。接合膜5の膜厚
は0.3〜1000μmであることが望ましい。
【0016】尚、母材と反対側のダイヤモンド−タング
ステン複合膜の表面には、図7に示すように、ダイヤモ
ンド及びダイヤモンド状炭素のうち少なくとも一種から
なる緻密膜7を0.2μm以上の厚みで形成しても良
い。この場合には、耐摩耗性、熱伝導性を向上すること
ができる。
【0017】そして、図8に示すように、ダイヤモンド
−タングステン複合膜3と母材4との間に接合膜5を形
成するとともに、母材4と反対側のダイヤモンド−タン
グステン複合膜3の表面に、ダイヤモンド及びダイヤモ
ンド状炭素のうち少なくとも一種からなる緻密膜7を形
成することが望ましい。
【0018】本発明のダイヤモンド−タングステン複合
膜付部材の製造は、図4に示したようにシリコン等から
なる基板8の表面に、CVD法によりダイヤモンド及び
ダイヤモンド状炭素のうち少なくとも一種からなるダイ
ヤモンド質結晶1を形成し、このダイヤモンド質結晶1
の間の空隙中にCVD法により金属タングステン及び炭
化タングステンのうち少なくとも一種を充填させて、基
板8の表面にダイヤモンド−タングステン複合膜3を形
成し、このダイヤモンド−タングステン複合膜3を母材
にろう付けしてシリコン等の基板8を除去するか、或い
は、シリコン等の基板8を除去した後ダイヤモンド−タ
ングステン複合膜3を母材にろう付けすることにより行
われる。
【0019】また、ダイヤモンド−タングステン複合膜
3をシリコン等からなる基板8に生成した後、このダイ
ヤモンド−タングステン複合膜3の表面に、金属タング
ステン及び炭化タングステンのうち少なくとも一種から
なる接合膜5を形成し、この後、接合膜5を母材4にろ
う付けしてシリコン等の基板8を除去するか、或いは、
シリコン等の基板8を除去した後接合膜5を母材4にろ
う付けすることにより行われる。
【0020】
【作用】本発明の製造方法では、母材との接合強度が良
好なダイヤモンド−タングステン複合膜付部材を容易に
得ることができる。また、本発明の製造方法により得ら
れたダイヤモンド−タングステン複合膜付部材では、タ
ングステン,炭化タングステンがダイヤモンド質結晶を
包み込む事になり、ダイヤモンド質結晶とタングステ
ン,炭化タングステンとの接合強度が向上し、複合膜自
体の強度,靱性を向上することができる。
【0021】また、ダイヤモンド−タングステン複合膜
を母材にろう付けすると、タングステン,炭化タングス
テンとろう材(例えば、Ag,Au−Sn等)との濡れ
性が良好であるため、複合膜と母材との接合強度が向上
し、長時間の使用に耐えることができる。
【0022】さらに、ダイヤモンド−タングステン複合
膜と母材との間に、金属タングステン及び炭化タングス
テンのうち少なくとも一種からなる接合膜を介在させる
ことにより、複合膜と母材との接合強度をさらに向上す
ることができる。また、ダイヤモンド−タングステン複
合膜の表面にダイヤモンドからなる緻密膜を形成するこ
とにより、耐摩耗性,熱伝導性,硬度等の特性を向上す
ることができる。
【0023】また、ダイヤモンドとタングステン,炭化
タングステンとは熱膨張率が近似しているので複合膜中
の内部応力を抑制することができ、また、CVD法によ
るタングステン,炭化タングステンの生成温度が低いた
めにダイヤモンドが分解することがない。
【0024】
【実施例】本発明のダイヤモンド−タングステン複合膜
付部材の製造方法を図面を用いて詳細に説明する。
【0025】図5は、本発明により得られたダイヤモン
ド−タングステン複合膜付部材を示すもので、母材4
は、例えば、WCとコバルト(Co)と周期律表第4
a,5a,6a族元素の炭化物,窒化物または炭窒化物
とからなる化合物から構成されている。この母材4の表
面には、ダイヤモンド−タングステン複合膜3がろう付
けされている。
【0026】ダイヤモンド−タングステン複合膜3は、
図4に示すように、先ず、公知の材料よりなる基板8に
CVD法によりダイヤモンド質結晶を成膜する。この時
の、これらの膜を成膜する基板8は、例えば、シリコ
ン,カーボン,チタン等の金属或いは窒化珪素、炭化珪
素等のセラミックス、炭素、ガラス等から形成され、任
意に選択できるが、成膜初期に於ける核生成の容易さや
後の工程における基板8の除去の容易さからシリコンか
らなる基板8が適している。
【0027】成膜にはマイクロ波プラズマCVD,熱フ
ィラメントCVD,ECRプラズマCVD、プラズマジ
ェット法など公知の方法が用いられるが、少なくとも一
部の工程で核生成密度を低くして、ダイヤモンド質結晶
1の間に隙間を生じさせることが重要である。このよう
なダイヤモンド質結晶1を成膜するには、例えば、EC
RプラズマCVD法では、装置内にSi基板を設置し、
最大強度2KGの磁場を印加するとともにマイクロ波出
力3〜5KW、基体温度700℃以下、装置内圧力0.
05〜0.5Torrの条件で成膜を行うことにより得
られる。尚、反応ガスはCH4 、CO2 、H2 を用い、
メタンの濃度は5%以下とする。また、基体温度、導入
ガス量、炉内圧力を調整することにより隙間のある膜を
作製することができる。
【0028】また、ダイヤモンド質結晶1からなる多孔
質膜の厚さや結晶構造(純粋なダイヤモンドやダイヤモ
ンド状炭素の割合)についても、基体温度、ガス濃度な
どにより任意に選択できる。性能と生産性との兼ね合い
からダイヤモンド−タングステン複合膜3の膜厚は0.
3〜100μmが適当である。
【0029】尚、最初に公知の方法で緻密なダイヤモン
ド膜をコーティングしたあと、ダイヤモンドの粒界をエ
ッチングして隙間を生じさせてもよい。エッチングは各
種の方法が用いられるが、例えば、Si基板上に成膜し
た緻密なダイヤモンド膜をO2 100%、0.1Tor
r、マイクロ波出力1KWのECRプラズマ中に設置
し、30分間エッチングを行う。その他のコーティング
方法を用いた場合でも、コーティングにより緻密なダイ
ヤモンド膜又はダイヤモンドとダイヤモンド状炭素との
混合膜を作製した後、炉内に微量の酸素または酸化性ガ
ス(CO2 など)を導入すれば、ダイヤモンドの粒界ま
たはダイヤモンド状炭素が選択的にエッチングされ、粒
子間に隙間のある膜が生成できる。
【0030】また、最初に公知の方法で緻密なダイヤモ
ンド膜をコーティングしたあと、コーティング条件を変
更して粒子間に隙間を生じさせてもよい。この場合に
は、複合膜の表面に本発明の緻密膜を形成することがで
きる。
【0031】そして、図4に示すように、上記のように
して作製した、ダイヤモンド質結晶1の隙間に、CVD
によりタングステン,炭化タングステン2を充填する。
【0032】タングステンを充填するには、ダイヤモン
ド質結晶1を成膜した上記基板8を化学的気相合成(C
VD)装置内に収容し、このCVD装置内を温度250
〜1200℃に保持し、CVD装置内にハロゲン化タン
グステンと水素からなる混合ガスを導入する。必要に応
じて上記混合ガスにアルゴンやヘリウム等からなる不活
性ガスを添加しても良い。ハロゲン化タングステンとし
ては、室温で蒸気圧の高い六フッ化タングステンを用い
るのが最も好適である。また、炭化タングステンを充填
するには、上記混合ガスに炭素源として炭化水素ガスを
添加する。炭化水素ガスとしては、メタン、アセチレ
ン、ベンゼン等を挙げることができる。
【0033】尚、微細な隙間を生じさせたダイヤモンド
膜にタングステンを侵入させるためには、ダイヤモンド
質結晶1を成膜した基板8を収容した上記CVD装置内
の圧力を低圧に保持した状態で、ハロゲン化タングステ
ンと水素からなる混合ガスを導入することが望ましい。
上記CVD装置内圧力は、性能と生産性との兼ね合いか
ら1〜760Torrが好適である。
【0034】次いで、ダイヤモンド−タングステン複合
膜3のマスキングを行いシリコン等からなる基板8を酸
等で溶解除去する。基体8は機械的に剥離しても良い。
これにより、ダイヤモンド−タングステン複合膜3が得
られる。次にこれをレーザー等で所定形状にカットし、
その後に、図5に示したように、ダイヤモンド−タング
ステン複合膜3を母材4に銀ろう、もしくはその他のろ
う材でろう付けし、接合する。ろう付け終了後最終的な
加工を行い、本発明のダイヤモンド−タングステン複合
膜付部材を得る。シリコン等の基板の除去はダイヤモン
ド−タングステン複合膜3を母材4にろう付けした後行
っても良い。
【0035】以上のように構成されたダイヤモンド−タ
ングステン複合膜付部材では、タングステン,炭化タン
グステンがダイヤモンド質結晶1を包み込む事になり、
ダイヤモンド質結晶1とタングステン2との接合強度が
向上し、複合膜3自体の強度を向上することができる。
また、タングステン,炭化タングステン2とろう材(例
えば、Ag,Au−Sn等)との濡れ性が良好であるた
め、複合膜3と母材4との接合強度が向上し、長時間の
使用に耐えることができる。
【0036】しかも、ダイヤモンドとタングステン,炭
化タングステンとは熱膨張率が近似しているので複合膜
3の内部応力を抑制することができ、またタングステ
ン,炭化タングステンの生成温度が低いためにダイヤモ
ンドが分解することがない。
【0037】本発明の他の実施例を図6を用いて説明す
る。
【0038】図6は、本発明により得られたダイヤモン
ド−タングステン複合膜付部材を示すもので、ダイヤモ
ンド−タングステン複合膜3と母材4との間には、金属
タングステン及び炭化タングステンのうち少なくとも一
種からなる接合膜5が介在されている。
【0039】この接合膜5は、以下のようにして形成さ
れる。先ず、基板8の表面に形成されたダイヤモンド−
タングステン複合膜3に、タングステン,炭化タングス
テンの少なくとも一種からなる膜を成膜する。成膜に際
しては公知の方法が使用できる。例えば、Wを成膜する
例について説明すると、ダイヤモンド−タングステン複
合膜3の付着した基板8を化学的気相合成装置内に収容
し、この化学的気相合成装置内を温度250〜1200
℃に保持し、気相含浸装置内に混合したWF6+H2 ガス
を導入することにより、ダイヤモンド−タングステン複
合膜3の表面に、Wからなる膜が形成される。WF6
2 ガスと同時にArガスやHeガス等の不活性ガスを
導入しても良い。WとCからなる膜を成膜する場合に
は、H2,WF6 のガスと同時にメタン,アセチレン,
ベンゼン等の炭素源となるガスを反応炉に導入する。タ
ングステンと炭素との化合物とは、WCやW2 C等があ
る。接合膜5の厚さは後の工程での取扱の容易さや強度
の関係から0.1〜5mm程度が好ましい。
【0040】このように、ダイヤモンド−タングステン
複合膜3と母材4との間に、金属タングステン及び炭化
タングステンのうち少なくとも一種からなる接合膜5を
介在させることにより、複合膜3と母材4との接合強度
を上記実施例よりもさらに向上することができる。
【0041】尚、本発明によれば、接合膜5を、その複
合膜3側に炭化タングステン膜を形成して構成しても良
い。接合膜5の複合膜3側に炭化タングステン膜を形成
するには、例えば、複合膜3を形成した後、WF6 +H
2 ガスと同時にメタン,アセチレン,ベンゼン等の炭素
源となるガスを反応炉に導入して炭化タングステン膜を
形成し、その後、WF6 +H2 ガスを反応炉内に導入す
ることにより形成される。このようにすれば、接合膜5
と複合膜3からなる多層膜の強度が高くなり性能が向上
するだけでなく、複合膜3と接合膜5との密着性が向上
する。
【0042】また、図7に示すように、母材4と反対側
のダイヤモンド−タングステン複合膜3の表面に、ダイ
ヤモンド及びダイヤモンド状炭素のうち少なくとも一種
からなる緻密膜7を0.2μm以上の厚みで形成しても
良い。この場合には耐摩耗性および熱伝導性を向上する
ことができる。緻密膜7の厚さは、耐摩耗性向上のため
には2〜10μm、熱伝導性向上のためには10〜10
0μm程度が良い。
【0043】本発明者等は、本発明の効果を確認すべ
く、ダイヤモンド−タングステン複合膜を、必要に応じ
てWやWとCの化合物からなる接合膜を介して、超硬合
金からなる母材にろう付けする実験を行った。そして、
母材との接合時におけるろう付け歩留りを測定するとと
もに、ダイヤモンド−タングステン複合膜が取り付けら
れた工具により切削試験を行った。図9は、この工具を
示す。図9において、符号4は超硬合金からなる母材
(工具本体)を示すもので、この母材4には、本発明の
ダイヤモンド−タングステン複合膜3が、Agろうによ
りろう付けされている。複合膜3と母材4との間には接
合膜5が形成され、複合膜3の表面には、ダイヤモンド
からなる緻密膜7が形成されている。
【0044】ろう付け歩留りの試験は、ろう付けをアル
ゴンガス中、短時間の加熱により行い、10個の工具に
おいてろう材の付着の完全さなどを外観からチェック
し、完全なものの割合を求めることにより行った。
【0045】また、切削試験は、5個の工具を用い、ア
ルミニウム−シリコン合金を、切り込み2mm、送り
0.2mm、切削速度400mm/minで切削して、
切削後の複合膜の剥離をチェックした。これらの結果を
表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】尚、表1におけるa部厚さ、b部厚さ、c
部厚さとは、図10に示すように、それぞれ緻密膜7、
ダイヤモンド−タングステン複合膜3、接合膜5の厚み
をいう。また、表1において網目構造の有無とは、図1
の構造を有するか否かを示すものである。尚、網目構造
は図2,図3に示すものであっても良い。
【0048】表1により、本発明品はろう付け歩留りや
切削後における剥離も良好であった。試料No.18は複
合膜を形成するのにダイヤモンド状炭素を用い、他の試
料はダイヤモンドを用いた。また、試料No.19は複合
膜を形成するのに炭化タングステンを用い、他の試料は
タングステンを用いた。さらに、試料No.20は接合膜
が炭化タングステンであり、試料No.18,21は、接
合膜をW膜とWC膜により構成したものであり、他の試
料はタングステンである。また、試料No.1は緻密膜が
ダイヤモンド状炭素であり、他の試料はダイヤモンドを
用いた。
【0049】尚、試料No,23はダイヤモンド膜を超硬
合金からなる基体にコーティングした例である。
【0050】図11に、本発明により得られたダイヤモ
ンド−タングステン複合膜付部材をダイスに適用した図
を示す。
【0051】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明によれば、母
材との接合強度を向上することができるダイヤモンド−
タングステン複合膜付部材を容易に得ることができる。
また、本発明により得られた複合膜付部材では、タング
ステン,炭化タングステンがダイヤモンド質結晶を包み
込む事になり、ダイヤモンド質結晶とタングステン,炭
化タングステンとの接合強度が向上し、複合膜自体の強
度,靱性を向上することができるとともに、複合膜と母
材との接合強度が向上し、長時間の使用に耐えることが
できる。さらに、複合膜と母材との間に、金属タングス
テン及び炭化タングステンのうち少なくとも一種からな
る接合膜を介在させることにより、複合膜と母材との接
合強度をさらに向上することができる。
【0052】また、ダイヤモンド−タングステン複合膜
の表面にダイヤモンドからなる緻密膜を形成することに
より、耐摩耗性等の特性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明により得られたダイヤモンド−タングス
テン複合膜の一断面における網目状構造を示す図であ
る。
【図2】本発明により得られたダイヤモンド−タングス
テン複合膜の一断面における網目状構造の一部を形成す
る構造を示す図である。
【図3】本発明により得られたダイヤモンド−タングス
テン複合膜の一断面における網目状構造の一部を形成す
る構造を示す図である。
【図4】ダイヤモンド質結晶の間に金属タングステン,
炭化タングステンが充填されている状態を示す斜視図で
ある。
【図5】ダイヤモンド−タングステン複合膜付部材を示
す図である。
【図6】ダイヤモンド−タングステン複合膜付部材と母
材との間に接合膜を形成した図である。
【図7】ダイヤモンド−タングステン複合膜の表面に緻
密膜を形成した図である。
【図8】ダイヤモンド−タングステン複合膜付部材と母
材との間に接合膜を形成し、ダイヤモンド−タングステ
ン複合膜の表面に緻密膜を形成した図である。
【図9】本発明により得られたダイヤモンド−タングス
テン複合膜付部材を工具に適用した状態を示す斜視図で
ある。
【図10】図9のダイヤモンド−タングステン複合膜近
傍を拡大して示す図である。
【図11】本発明により得られたダイヤモンド−タング
ステン複合膜付部材をダイスに適用した図である。
【符号の説明】
1・・・ダイヤモンド質結晶 2・・・タングステン,炭化タングステン 3・・・ダイヤモンド−タングステン複合膜 4・・・母材 5・・・接合膜 7・・・緻密膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 石橋 孝幸 山口県宇部市大字沖宇部5253番地 セン トラル硝子株式会社 宇部研究所内 (72)発明者 徳永 敦之 山口県宇部市大字沖宇部5253番地 セン トラル硝子株式会社 宇部研究所内 審査官 今村 亘 (56)参考文献 特開 平6−184750(JP,A) 特開 平6−79503(JP,A) 特開 平7−237996(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23P 15/28 B23B 27/14 C23C 16/00 - 16/56

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】基板の表面に、CVD法によりダイヤモン
    ド及びダイヤモンド状炭素のうち少なくとも一種からな
    る緻密膜を形成した後、該緻密膜上に、CVD法により
    ダイヤモンド及びダイヤモンド状炭素のうち少なくとも
    一種からなるダイヤモンド質結晶を形成し、このダイヤ
    モンド質結晶間の空隙中にCVD法により金属タングス
    テン及び炭化タングステンのうち少なくとも一種を充填
    させて、前記基体の表面にダイヤモンド−タングステン
    複合膜を形成した後、該複合膜の表面に、金属タングス
    テン及び炭化タングステンのうち少なくとも一種からな
    る接合膜を形成し、この接合膜面を、部材を構成する母
    材にろう付けして前記基板を除去するか、或いは、前記
    基板を除去した後前記接合膜面を前記母材にろう付けす
    ることを特徴とするダイヤモンド−タングステン複合膜
    付部材の製造方法。
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