JP3134378B2 - ダイヤモンド被覆硬質材料 - Google Patents

ダイヤモンド被覆硬質材料

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JP3134378B2
JP3134378B2 JP03205042A JP20504291A JP3134378B2 JP 3134378 B2 JP3134378 B2 JP 3134378B2 JP 03205042 A JP03205042 A JP 03205042A JP 20504291 A JP20504291 A JP 20504291A JP 3134378 B2 JP3134378 B2 JP 3134378B2
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直也 大森
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、極めて高い耐磨耗性を
もつ硬質材料に関するもので、切削工具、耐摩工具、電
子部品、機械部品などに利用されるダイヤモンド被覆硬
質材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ダイヤモンドは極めて硬度が高く、化学
的に安定し、高い熱伝導率特性、音波伝搬速度をはじめ
とする数多くの優れた特性を持っているため、この特性
を生かした硬質材料、あるいはダイヤモンドおよび/ま
たはダイヤモンド状炭素被覆硬質材料として、 Al、Al−Si合金などの軽合金や、プラスチッ
ク、ゴム、グラファイトなどを切削加工する際に用いる
スローアウェイチップ、ドリル、マイクロドリル、エン
ドミル、ルーターなどの切削工具、 ボンディングツールや、プリンタヘッド、ダイス、
熱間加工用ガイドローラーや製管用ロールなどをはじめ
とする各種耐摩工具、 放熱板をはじめとする各種機械部品、 スーピーカーをはじめとする各種振動板、 各種電子部品、 電着砥石などの各種研磨加工用砥石、 などが広く実用に供されている。
【0003】人工ダイヤモンドの製造法のうち、気相よ
りダイヤモンド被覆層を形成する方法としては、マイク
ロ波プラズマCVD法、RF−プラズマCVD法、EA
−CVD法、誘磁場マイクロ波プラズマCVD法、RF
熱プラズマCVD法、DCプラズマCVD法、DCプラ
ズマジェットCVD法、フィラメント熱CVD法、燃焼
法等数多くの方法が知られており、ダイヤモンド被覆硬
質材料製造の有力な方法である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、ダイヤモン
ド被覆硬質材料の多くは基材とダイヤモンド被覆層の密
着強度が不足しているため、ダイヤモンド被覆層が剥離
することにより寿命にいたる場合が多い。この大きな原
因として、以下のことが考えられている。 (1)ダイヤモンドは、あらゆる物質と中間層を持たな
いため、他の物質との濡れ性が悪い。 (2)基材とダイヤモンドの熱膨張係数の違いにより、
ダイヤモンド被覆層と基材との境界面に熱残留応力が発
生し、ダイヤモンド被覆層が剥離しやすくなる。 (3)コバルト、ニッケルなどの炭素固溶金属上には、
ダイヤモンドの同位体であるグラファイトが優先的に生
成しやすく、このため、ダイヤモンド被覆時の初期ダイ
ヤモンド核発生密度が低くなる。
【0005】高い密着強度をもつダイヤモンド被覆硬質
材料を得るべく、 a)ダイヤモンドと同じ熱膨張係数を持った基材を選択
する方法:例えば特開昭61−291493号号公報に
提案される、Si3 4 を主成分とする焼結体やSiC
を主成分とする焼結体を基材とする方法、 b)基材表面のダイヤモンド被覆層形成に悪影響を及ぼ
す金属をエッチングにより除去し、基材表面のダイヤモ
ンド核の発生密度を高める方法:例えば特開平1−20
1475号公報に提案される、超硬合金の表面を酸溶液
にてエッチングし、Co 金属成分を除去し、ダイヤモン
ド核のグラファイト化を抑制する方法、特開昭61−1
24573号公報に提案される、ダイヤモンド砥粒また
は砥石により基材表面に傷付け処理を行い、基材表面で
のダイヤモンド核発生密度を向上させる方法、などが知
られている。
【0006】しかし、窒化珪素、炭化珪素を基材とした
場合、前述の(2)の問題は解決するが、硬質材料その
ものの強度が不足し、破損する場合がある。また、エッ
チングを行った場合、結合相の除去により硬質分散相が
欠落しやすく、このため、ダイヤモンド被覆層がその土
台である硬質分散相ごと剥離するため、現状ではその密
着強度はやはり不足である。本発明は上述の問題点に鑑
み、優れた靱性と密着強度を持つダイヤモンド被覆硬質
材料を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、ダイヤモ
ンドと基材を強力に固定するために、ダイヤモンド粒が
結合相により固定されている状態を強制的に作ることに
着目し、研究、実験を重ね、成功した。これにより、ダ
イヤモンドの基材からの離脱は生じなくなり、基材の耐
磨耗性は飛躍的に向上した。すなわち、本発明は結合相
と硬質分散相からなる硬質材料を基材とし、少なくとも
該基材表面にダイヤモンドが存在し、該ダイヤモンドが
該基材より加熱処理を経てしみだした結合相により
材に固定されてなるダイヤモンド被覆硬質材料を提供す
る。また、本発明は結合相と硬質分散相からなる硬質材
料を基材とし、少なくとも該基材表面にダイヤモンドが
存在し、該ダイヤモンドが該基材より加熱処理を経てし
みだした結合相により基材に固定されてなるダイヤモ
ンド被覆硬質材料の表面に更にダイヤモンドが被覆され
てなるダイヤモンド被覆硬質材料をも提供する。本発明
の特に好ましい硬質材料としては超硬合金又はサーメッ
トが挙げられる。
【0008】本発明のダイヤモンド被覆硬質材料を得る
具体的方法の一例を説明すると、図1に示すように基材
としての硬質材料の表面にダイヤモンド粒を載置し、基
材を1250℃以上、望ましくは1300℃以上の温度
に加熱すれば、基材より液相がしみだし、ダイヤモンド
粒と接触する。この状態にて冷却すれば、ダイヤモンド
粒が結合相により固定された状態をつくり出すことがで
きる。尚、ダイヤモンド粒は上記のように基材表面に置
いてもよいし、気相より基材表面に合成してもよい。こ
のとき載置するダイヤモンド粒は、被覆が必要な表面に
1〜98%の面積割合にて行なうことが望ましい。これ
は、1%未満の場合には耐磨耗性の向上なく、また98
%を越えると結合相のしみだしが少なく、ダイヤモンド
粒と基材との結合力が低下するためである。基材表面に
載置するダイヤモンド粒のサイズは 直径0.1μm以
上で効果が得られるが、0.5〜10μmが望ましい。
また、この載置したダイヤモンド粒の少なくとも1/5
の表面積が結合相により固定されることが望ましい。上
記加熱処理の本発明における一般的条件としては、例え
ば温度1250℃〜1450℃、真空または窒素ガス等
不活性ガス雰囲気下で行なうことが挙げられる。特に、
加熱処理を500気圧以上のできるだけ高い静水圧下に
て行った場合、ダイヤモンド−結合相のさらなる良好な
結合が得られた。本発明のダイヤモンド被覆硬質材料の
断面を光学顕微鏡および電子顕微鏡により観察したとこ
ろ、表面近傍の結合相に固定されたダイヤモンド粒の存
在が確認された。
【0009】本発明のダイヤモンド硬質被覆材料を得る
具体的方法の他の例として、気相よりダイヤモンド粒を
基材表面に合成する場合の一般的方法としては従来の技
術の欄で説明したと同様の熱フィラメントCVD法、マ
イクロ波プラズマCVD法を始めとする各種の公知技術
を用いることができる。原料ガスとしては、各種炭化水
素化合物を水素ガス、窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴ
ンガス等の希釈用ガスとともに用いるのが一般的であ
る。炭化水素化合物ガスの濃度および基材温度を制御す
ることにより、任意のダイヤモンド粒のサイズ、載置面
積を得ることができる。本発明のダイヤモンド被覆硬質
材料の表面に、更に気相よりダイヤモンド被覆層を形成
すると、ダイヤモンド粒は基材表面のダイヤモンド粒上
に優先的に生成し、被覆層となった場合、強固に基材と
結合する。また、この場合には表面はすべてダイヤモン
ドとなるため、更に高い耐磨耗性を得ることができた。
表面被覆ダイヤモンド層の気相合成も、例えば熱フィラ
メントCVD法、マイクロ波プラズマCVD法を始め従
来公知のいずれの手段によってもよい。また、本発明の
ダイヤモンド粒載置を気相合成法を用いて行なう場合、
初期のダイヤモンド粒載置から加熱処理、ダイヤモンド
層被覆にいたる工程を一連のプロセスとして行えるとい
う工業的メリットがある。なお、ダイヤモンド被覆層の
層厚に関しては、0.1μm以下では被覆層による耐磨
耗性などの諸性能の向上が認められず、また100μm
以上の被覆層を形成した場合でも、もはや大きな性能の
向上は認められないため、0.1μm〜100μmが望
ましい。
【0010】本発明に用いる基材は結合相と硬質分散層
からなる硬質材料を用いるが、具体的には超硬合金およ
びサーメットが好ましく、特に好ましい例として下記の
組成のものが挙げられる。 1.結合相形成成分としてCo 0.5〜30%(重量
%、以下同じ)を含有し、硬質分散相形成成分としてW
C(炭化タングステン)と不可避成分からなる組成を有
するWC基超硬合金。 2.結合相形成成分としてCo 0.5〜30%を含有
し、残部が硬質分散相形成成分として、(i)WCと、
Wを除く元素の周期律表の4a、5aおよび6a族金属
またはこれらの炭化物、窒化物または炭窒化物のうちの
1種以上との固溶体と(ii)不可避不純物からなる組成
を有するWC基超硬合金。 3.結合相形成成分としてCo 0.5〜30%を含有
し、硬質分散相形成成分として、Wを除く元素の周期律
表の4a、5aおよび6a族金属の炭化物、窒化物また
は炭窒化物、ならびにこれらのWCを含む2種以上の固
溶体のうちの1種以上 0.2〜40%を含有し、残り
が硬質分散相形成成分としてWCと不可避不純物からな
る組成を有するWC基超硬合金。 4.結合相形成成分としてCo 0.5〜30%を含有
し、硬質分散相形成成分として、Wを除く元素の周期律
表の4a、5aおよび6a族金属の炭化物、窒化物また
は炭窒化物、ならびにこれらのWCを含む2種以上の固
溶体のうちの1種以上 0.2〜40%を含有し、残り
が硬質分散相形成成分としてWCと、Wを除く元素の周
期律表の4a、5aおよび6a族金属またはこれらの炭
化物、窒化物または炭窒化物のうちの1種以上との固溶
体と不可避不純物からなる組成を有するWC基超硬合
金。 5.硬質分散相としてTiを炭化物、窒化物および炭窒
化物換算で50〜80%、Tiを除く周期律表第IVa、
Va、VIa族元素を炭化物換算で40%以下を含有し、
結合相としてFe系金属を1〜40%含有するサーメッ
ト。上記の組成は一般的な範囲で例示したものであり、
特に好ましいとした意味は、分散硬質相と結着樹脂との
バランスがこれらの範囲では良好であり、基材との高い
強度が保たれるからである。
【0011】ここまではダイヤモンド被覆層を中心に説
明したが、本発明はダイヤモンド状炭素およびこれらの
複層を被覆した場合にも全く同様の効果がある。さら
に、これらの被覆層がホウ素、窒素を含んだ場合でも同
じである。
【0012】
【実施例】次に、本発明を実施例により具体的に説明す
るが、本発明はこれに限定されるものではない。 実施例1 母材として、表−1の組成の混合粉末を成型、焼結し、
形状が内接円:12.7mmφ、厚み:3.18mm、
コーナーR:0.8mm、逃げ角:20°のSEGN4
22の形状を持ったタングステン基超硬合金製スローア
ウェイチップに加工した。表−2に示した方法でダイヤ
モンド粒を表面に設け、さらに表−2に示した条件にて
熱処理を行い、冷却は真空にて行なうことにより本発明
ダイヤモンド被覆硬質材料を作成した。なお、ダイヤモ
ンド被覆層を気相より析出させる場合、公知の熱フィラ
メントCVD法またはマイクロ波プラズマCVD法を用
いた。このようにして本発明のダイヤモンド被覆切削チ
ップ1〜24を作成した。ここでダイヤモンド粒の占め
る面積とは、ダイヤモンド粒を設置した後、表面を電子
顕微鏡により拡大観察し、膜を設けようとした面積のう
ち、ダイヤモンド粒の占める面積の割合である。13〜
24のサンプルには、更に表面にダイヤモンド被覆層
を、公知の熱フィランメントCVD法またはマイクロ波
プラズマCVD法を用い、表−2に示した層厚にて設け
た。本実施例において、基材の表面に析出した被覆層
は、ラマン分光分析法によって、ダイヤモンドの特徴で
ある1333cm-1にピークが存在することを確認し
た。また、比較のため、同一形状で、表−2に示した比
較超硬チップ1〜2およびこれらに直接ダイヤモンド被
覆層を設けた比較チップ3〜4を準備した。表−2中A
は熱フィラメントCVD法による場合を、Bはマイクロ
波プラズマCVD法による場合を意味する。
【0013】これらの切削チップを用いて、 被削材 : Al−18重量%Si合金(ブロック材) 切削速度: 700m/min 送り : 0.3mm/rev. 切込み : 2.0mm の条件にて断続切削を行い、1分後および20分後の逃
げ面摩耗量、切り刃の摩耗状態を観察した結果を表−2
に示した。この結果、ダイヤモンド被覆面積を100%
とした3および14のサンプルは、やや効果が低いもの
の、その他は従来の超硬チップに比べて、高い耐磨耗性
を示した。なお、表−2にいう真空とは10-3Torr以下
をいう。
【表1】
【0014】
【表2】
【表3】
【表4】
【0015】実施例2 母材として、表−3の組成の混合粉末を成型、焼結し、
形状が、内接円:9.525mm、厚み:3.18m
m、コーナーR:0.4mm、逃げ角:20°のJIS
−TEGN321の形状を持ったサーメット基スーアウ
ェイチップに加工した。このチップを、表─4に示した
方法でダイヤモンド粒を表面に設け、更に表−4に示し
た条件にて熱処理を行い、冷却は真空中にて行い、本発
明のダイヤモンド被覆硬質材料を作成した。なお、ダイ
ヤモンドを気相より析出させる場合、公知の熱フィラン
メントCVD法を用いた。このようにして本発明ダイヤ
モンド被覆切削チップ1〜24を作成した。ここでダイ
ヤモンド粒の占める面積とは、ダイヤモンド粒を設置し
た後、表面を電子顕微鏡により拡大観察し、膜を設けよ
うとした面積のうち、ダイヤモンド粒の占める面積の割
合である。12〜24のサンプルには、更に表面にダイ
ヤモンド被覆層を、公知の熱フィランメントCVD法を
用い、表−4に示した層厚にて設けた。本実施例におい
て、基材の表面に析出した被覆層は、ラマン分光分析法
によって、ダイヤモンドの特徴である1333cm-1
ピークが存在することを確認した。また、比較のため、
同一形状で、表−4に示した比較超硬チップ1〜2およ
びこれらに直接ダイヤモンド被覆層を設けた比較チップ
3〜4を準備した。
【0016】これらの切削チップを用いて、 被削材 : Al−18重量%Si合金(丸棒) 切削速度: 800m/min 送り : 0.15mm/rev. 切込み : 0.5mm の条件にて連続切削を行い。2分後および30分後の逃
げ面摩耗量、切り刃の摩耗状態を観察した結果を表−4
に示した。この結果、ダイヤモンド被覆面積を100%
とした2および12のサンプルはやや効果が低いもの
の、その他は従来の超硬チップに比べて、高い耐磨耗性
を示した。
【表5】
【0017】
【表6】
【表7】
【0018】
【発明の効果】本発明ダイヤモンド被覆硬質材料におい
ては、従来のダイヤモンド被覆硬質材料と比べると、い
ずれも良好な耐剥離性を持ち、さらにダイヤモンドを被
覆したものは、基材とダイヤモンド被覆層の密着強度は
優れ、更に高い耐磨耗性を持つことがわかる。本実施例
では、切削工具の場合を挙げて説明したが、TABツー
ル、キャピラリーなどの耐摩工具または耐摩用治具、プ
リンタヘッド等各種機械部品および砥石などに応用した
場合も、良好な結果が得られることは十分に予想でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のダイヤモンド被覆硬質材料を説明する
概略図である。
【符号の説明】
1 基材 2 硬質分散相 3 結合相 4 ダイヤモンド粒 5 ダイヤモンド膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 14/06 C23C 16/27 C04B 41/87 C30B 29/04 B23B 27/00 B23P 15/28

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 結合相と硬質分散相からなる硬質材料を
    基材とし、少なくとも該基材表面にダイヤモンドが存在
    し、該ダイヤモンドが該基材より加熱処理を経てしみだ
    した結合相により該基材に固定されてなるダイヤモンド
    被覆硬質材料。
  2. 【請求項2】 請求項1記載のダイヤモンド被覆硬質材
    料の表面に更にダイヤモンドが被覆されてなるダイヤモ
    ンド被覆硬質材料。
  3. 【請求項3】 硬質材料が超硬合金であることを特徴と
    する請求項1または請求項2に記載のダイヤモンド被覆
    硬質材料。
  4. 【請求項4】 硬質材料がサーメットであることを特徴
    とする請求項1又は請求項2に記載のダイヤモンド被覆
    硬質材料。
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