JP3511546B2 - 鉄強化食用油脂類 - Google Patents
鉄強化食用油脂類Info
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Description
と鉄を配合してなる安定な鉄強化食用油脂類及びこの油
脂類を含有させた鉄強化食品に関する。さらに、本発明
は、このような安定な鉄強化食用油脂類の製造法に関す
る。本発明の鉄強化食用油脂類及びこれを含有させた鉄
強化食品は、保存中鉄に起因する食用油脂類の劣化がほ
とんどみられず安定であるので、鉄を強化した食材とし
て有用である。
ればならない栄養素の一つであり、日本人の鉄摂取量に
ついては、昭和50年以降、所要量の充足率 100%前後を
横這いで推移しているものの、性別や年齢によって不足
する場合もあるといわれている[平成6年、国民栄養の
現状] 。鉄は難吸収性であるため、高頻度に鉄欠乏症を
引き起す要因となる傾向にあるが、一方で鉄は難排泄性
であるため、往々にして鉄過剰症を引き起こす要因とも
なり、種々の生体障害の原因となる。したがって、鉄の
摂取に当たっては、毎日、毎食、あらゆる機会に適当量
の鉄を摂取することが望まれている。
り、鉄を強化した種々の食品や基本的な食材の提供が望
まれるところである。特に、食用油脂類や食用油脂類を
含有する食品に鉄を強化することは現在まで殆どなされ
ておらず、その実現が期待される分野である。また、一
般に食用油脂類は、食品中で口当たりを滑らかにする等
の食感を決定し、風味の面でも食品の美味しさを引き出
す最も重要な要因の一つとなっている点からも重要であ
る。
な問題がある。すなわち、食用油脂類は保存中や加熱処
理中に劣化し、風味の悪化や異臭の原因となる。したが
って、劣化した食用油脂類には商品価値が無く、食用油
脂類の劣化を防止するための対策は、食用油脂類を利用
する上で不可欠なものとなっている。食用油脂類を劣化
させる要因としては、光、空気、金属の存在等を挙げる
ことができるが、その中でも特に、銅、鉄、マンガン、
ニッケル等の重金属は食用油脂類の劣化を促進する。そ
のため、食用油脂類の精製技術においては、金属を除去
する工程が重要であると考えられている。また、食品中
に含まれている金属では銅が最も食用油脂類の酸化を促
進し、鉄がこれに次ぐといわれており、食品への鉄強化
に通常用いられる硫酸第一鉄やクエン酸鉄等の鉄化合物
は、食品中に含まれる食用油脂類の劣化を促進する。
食品に鉄を強化することは、鉄による食用油脂類の劣化
を防止することができない現状においては、鉄を強化し
た食用油脂類やこれを含有する食品を実用化するには至
っていない。なお、縮合リン酸塩とトコフェロールとの
相乗効果により、鉄を含有するマーガリンの劣化を防止
する方法が提案されている [青山ら, 油化学, vol.38,
p.72, 1989] 。しかし、この方法によっても鉄によるラ
ジカル生成を完全に抑制することはできず、必ずしも満
足できるものではなかった。
する劣化促進作用は、ヒドロペルオキシドの分解と分子
状酸素の活性化によるラジカル生成に起因することが知
られている。すなわち、鉄は自動酸化の第一段階のラジ
カル生成反応に関与し、その後、油脂類の自動酸化の連
鎖反応が進む。
類の劣化を防止する方法について、種々の抗酸化剤を使
用して検討を進めてきた。すなわち、油脂類に鉄及び種
々の抗酸化剤を添加した後に油脂類の温度を上げて強制
劣化を行うという試験を行ってきた。その中で、ラクト
フェリンを使用することにより、鉄による油脂類の劣化
促進作用は消失するという知見を得た。さらに、従来の
知見は、ラクトフェリンの抗酸化作用が認められる範囲
はラクトフェリン1分子当たり鉄2原子以内とされてい
たが、驚くべきことに、その範囲を遙かに上回る量の鉄
を含有させても鉄に起因する油脂類の劣化を阻止するこ
とができるという知見を得た。そして、ラクトフェリン
と鉄の混合物として鉄化合物を食用油脂類に添加したと
ころ、鉄が強化され、しかも劣化が防止され、安定に保
存することができる安定な鉄強化食用油脂類を得ること
ができることを見出した。したがって、本発明は、ラク
トフェリン類と鉄を添加してなる安定な鉄強化食用油脂
類を提供することを課題とする。また、本発明は、この
ような安定な鉄強化油脂類の製造法を提供することを課
題とする。さらに、本発明は、このような鉄強化油脂類
を含有させた安定な食品を提供することを課題とする。
抗酸化作用を示すことは知られていた[Hiroshi S. eta
l., Biosci. Biotech. Biochem., vol.56, pp.2079-208
0, 1992]。これによると、ラクトフェリン1分子当たり
鉄2原子が結合するという性質をラクトフェリンは有す
るので、ラクトフェリンが遊離の鉄を捕捉することによ
り起こるとされている。したがって、これまではラクト
フェリン1分子当たり3原子以上の鉄が存在する場合、
その効果は発現しないとされていた。また、これまでは
ラクトフェリンの抗酸化作用の試験は水系で行われるの
みであった。それに対して、本発明の安定な鉄強化食用
油脂類は、食用油脂類にラクトフェリン類と鉄化合物と
を個別に添加してラクトフェリン類と鉄とを配合すると
いう新しい試みにより得られたものである。すなわち、
本発明は、ラクトフェリン類と鉄化合物とをそれぞれ個
別に食用油脂類に添加してラクトフェリン類と鉄とが配
合されている安定な鉄強化食用油脂類に関する。
いずれか一方を先に食用油脂類に添加した後、他方を添
加してもよいし、また、ラクトフェリン類と鉄化合物と
を別々ではあるが、同時に食用油脂に添加してもよい。
本発明ではこれらの添加方法を個別に添加という。ま
た、本発明は、食用油脂類にラクトフェリン類を添加し
て分散し、次いで鉄化合物を添加して分散することより
なる、あるいは、ラクトフェリン類と鉄化合物を予め少
量の水に溶解し、食用油脂類に分散することよりなるラ
クトフェリンと鉄とが配合されている安定な鉄強化食用
油脂類の製造法に関する。なお、製造に際しては必要に
応じて乳化剤等を使用してもよい。さらに、本発明は、
このような食用油脂類を食品中に含有させてなる安定な
鉄強化食品に関する。
きるラクトフェリン類としては、哺乳類の乳等の分泌液
から分離されるラクトフェリンを例示することができる
が、血液や臓器等から分離されるトランスフェリンや卵
から分離されるオボトランスフェリン等も同様の特性を
有しており、ラクトフェリンと同様に使用することが可
能である。また、ラクトフェリン類は、完全に単離され
ている必要は無く、他の成分が含まれているものでも構
わない。さらに、遺伝子操作により、微生物、動物細
胞、トランスジェニック動物から生産されたラクトフェ
リン類も、安全性が保証されているものであれば使用す
ることが可能である。そして、ラクトフェリン類をタン
パク質分解酵素で分解したものを使用することもでき
る。
る鉄化合物としては、硫酸第一鉄、グルコン酸第一鉄、
乳酸鉄、クエン酸鉄、クエン酸第一鉄ナトリウム、クエ
ン酸鉄アンモニウム、ピロリン酸第一鉄、ピロリン酸第
二鉄、塩化第二鉄、硝酸第二鉄、硫酸第二鉄等を例示す
ることができる。
とのできる食用油脂類は、大豆油、菜種油、綿実油、ゴ
マ油、サフラワー油、オリーブ油、トウモロコシ油、シ
ソ油、月見草油等の植物油、あるいは、魚油、乳脂、豚
脂等の動物油等であり、これらの食用油脂類にラクトフ
ェリンと鉄を配合することにより、本発明の安定な鉄強
化食用油脂類とすることができる。
含有する食品は、マーガリン、バター、ドレッシング、
クリームあるいはカプセルのような強化栄養剤等であ
り、これらの食品を製造するに際しては、予めラクトフ
ェリンと鉄化合物とを添加配合した食用油脂類を原料と
しても良いし、食用油脂類を含有した食品を製造する過
程で、食用油脂類、ラクトフェリン、鉄化合物を別々に
添加配合しても良い。
ンE、ビタミンD等の脂溶性ビタミンに鉄を強化した鉄
強化ビタミンにも応用が可能であり、この鉄強化ビタミ
ンを含有する栄養剤や健康食品等を提供することも可能
である。
についての制限は特に無く、物理的に可能な量だけ鉄化
合物を食用油脂類に配合することが可能である。例え
ば、食用油脂類1kgに対して鉄化合物を鉄として 50g程
度まで配合することも可能であるが、鉄の食用油脂類中
での分散性を考慮すると、食用油脂1kgに対して鉄化合
物の配合量を鉄として 10g以下とすることが好ましい。
勿論、鉄の過剰摂取は避けなければならないということ
も考慮して鉄の配合量を決定する必要がある。また、ラ
クトフェリン類と鉄との配合割合は後記する試験例の結
果からみてラクトフェリン類1分子当り鉄3〜400 原子
の割合で配合することが望ましい。
とを個別に食用油脂類に添加配合することにより、安定
な鉄強化食用油脂類を得る。なお、食用油脂類へのラク
トフェリン類及び鉄化合物の添加配合方法については特
に限定されないが、好ましくは、食用油脂類にまずラク
トフェリン類を添加して分散し、次いで鉄化合物を添加
して分散させるか、ラクトフェリン類と鉄化合物を少量
の水溶液に溶解し、次いで食用油脂類に分散させればよ
い。また、分散化に際しては、ホモミキサーやウルトラ
ディスパーサー等を使用するとよい。
明する。
20kgに、ウシラクトフェリン450gを添加し、さらに、シ
ョ糖脂肪酸エステル(DKエステルF−20、第一工業製
薬製) を乳化剤として 225g 添加し、ホモミキサーで撹
拌してウシラクトフェリンをラード中に分散させた後、
塩化第二鉄6水和物260gを添加し、ホモミキサーで撹拌
して分散させて鉄強化ラードを製造した。
を水2リットルに溶解し、次いで、サフラワー白絞油
(日清製油製)20kgに添加し、ホモミキサーで撹拌して
分散させて鉄強化サフラワー白絞油を製造した。
がゼラチン45%、グリセリン22%、及び水33%であり、
組成がビタミンE35% (200IU)、ラクトフェリン7%、
硫酸第一鉄 7.5%、小麦胚芽油45.5%及び乳化剤5%で
ある原料から、打ち抜き法により 150mg用カプセル剤を
製造した。このようにして製造されたカプセル剤につい
て、3ヵ月保存後官能検査を行ったが、酸化による異臭
は全く感じなかった。
がゼラチン45%、グリセリン22%、及び水33%であり、
組成がβ−カロチン35% (2,000IU)、ラクトフェリン7
%、クエン酸鉄4%、小麦胚芽油50%及び乳化剤4%で
ある原料から、打ち抜き法により 200mg用カプセル剤を
製造した。このようにして製造されたカプセル剤につい
て、3ヵ月保存後官能検査を行ったが、酸化による異臭
は全く感じなかった。
%、大豆白絞油40%及びパーム油25%と乳化剤としてグ
リセリン脂肪酸エステル (エステル化度60) 0.5%とか
らなる油相に、脱脂粉乳1%及びラクトフェリン 0.8%
を添加し、混合した後、塩化第二鉄 0.4% (鉄0.07%相
当量) 、乳酸 0.1%及び水22.2%を添加し、混合して油
中水型乳化物を得た。この乳化物をマーガリン製造機で
冷却、固化及び練圧し、鉄強化マーガリン(本発明品)
を製造した。また、鉄無添加のマーガリンを対照品と
し、塩化第二鉄 0.4%のみを配合したマーガリンを比較
品とした。これらのマーガリンについて、15℃で保存試
験を行い、製造直後及び6ヵ月保存後の過酸化物価を測
定した。その結果を表1に示す。
いて、劣化が完全に抑制されていた。
した場合に生ずる食用油脂類の劣化防止について試験例
を示して説明する。
0.25マイクロモルを添加した後、塩化第二鉄6水和物を
0.25〜250.0 マイクロモルの範囲で添加し、乳化剤とし
てショ糖脂肪酸エステル(DKエステルF−20、第一工
業製薬製) 10mgを添加して、ウルトラディスパーサー
(ヤマト製) で分散させて試料を調製した。また、魚油
6.0gに塩化第二鉄6水和物を0.25〜250.0 マイクロモル
の範囲で添加し、乳化剤としてショ糖脂肪酸エステル
(DKエステルF−20、第一工業製薬製) 10mgを添加し
てウルトラディスパーサーで分散させた試料も調製し
た。このようにして調製した試料及び魚油のみの試料に
ついて油強制劣化試験を行った。なお、油強制劣化試験
はランシマット (メトローム製) 装置を使用し、測定温
度80℃で行った。また、各試料の自動酸化に対する安定
性の評価は、基準油脂分析試験法のCDM試験 (基準油
脂分析試験法 Cd2.4.28.2-93) に従い、酸化誘導期の長
さを測定することで行った。因みに、酸化誘導期が長い
ほど酸化安定性が高い。その結果を表2に示す。
二鉄0.25μmole 試料3:魚油6.0g+ラクトフェリン0.25μmole+塩化第
二鉄 2.5μmole 試料4:魚油6.0g+ラクトフェリン0.25μmole+塩化第
二鉄25.0μmole 試料5:魚油6.0g+ラクトフェリン0.25μmole+塩化第
二鉄 100.0μmole 試料6:魚油6.0g+ラクトフェリン0.25μmole+塩化第
二鉄 250.0μmole 試料7:魚油6.0g+塩化第二鉄0.25μmole 試料8:魚油6.0g+塩化第二鉄 2.5μmole 試料9:魚油6.0g+塩化第二鉄25.0μmole 試料10:魚油6.0g+塩化第二鉄 250.0μmole 試料11:魚油6.0g+DKエステルF-20 10mg
試料では、測定開始直後から激しい魚油の劣化が認めら
れたが、ラクトフェリンと塩化第二鉄6水和物を魚油に
添加した試料では、鉄無添加の試料と同様、魚油の劣化
を抑制することができた。また、ラクトフェリン1分子
当たり 400原子まで鉄を添加しても魚油の劣化をいちじ
るしく抑制することができることが判った。
に保存し、経時的にサンプリングを行って過酸化物価を
測定したところ、油強制劣化試験と同様の傾向が見られ
た。
一鉄を0.25〜250.0 マイクロモルの範囲で水300 μl に
溶解し、大豆油 (植田製油製) 6.0gに添加して、ウルト
ラディスパーサーで分散させた試料を調製した。また、
大豆油6.0gに硫酸第一鉄を0.25〜250.0 マイクロモルの
範囲で水 300μl に溶解したものを添加し、ウルトラデ
ィスパーサーで分散させた試料も調製した。さらに、試
料1として、水 300μl のみを添加して分散、調製し
た。このようにして調製した試料及び大豆油のみの試料
について油強制劣化試験を行った。なお、油強制劣化試
験はランシマット(メトローム製) 装置を使用し、測定
温度 120℃で行った。また、各試料の自動酸化に対する
安定性の評価は、基準油脂分析試験法のCDM試験 [基
準油脂分析試験法 Cd2.4.28.2-93] に従い、酸化誘導期
の長さを測定することで行った。その結果を表3に示
す。
第一鉄0.25μmole 試料3:大豆油6.0g+ラクトフェリン0.25μmole+硫酸
第一鉄 2.5μmole 試料4:大豆油6.0g+ラクトフェリン0.25μmole+硫酸
第一鉄25.0μmole 試料5:大豆油6.0g+ラクトフェリン0.25μmole+硫酸
第一鉄 100.0μmole 試料6:大豆油6.0g+ラクトフェリン0.25μmole+硫酸
第一鉄 250.0μmole 試料7:大豆油6.0g+硫酸第一鉄0.25μmole 試料8:大豆油6.0g+硫酸第一鉄 2.5μmole 試料9:大豆油6.0g+硫酸第一鉄25.0μmole 試料10:大豆油6.0g+硫酸第一鉄 250.0μmole
は、測定開始直後から激しい大豆油の劣化が認められた
が、ラクトフェリンと硫酸第一鉄を大豆油に添加した試
料では、鉄無添加の試料と同様、大豆油の劣化を抑制す
ることができた。また、ラクトフェリン1分子当たり 4
00原子まで鉄を添加しても大豆油の劣化をいちじるしく
抑制することができることが判った。
に保存し、経時的にサンプリングを行って過酸化物価を
測定したところ、油強制劣化試験と同様の傾向が見られ
た。
り、鉄を配合することによる劣化の問題があった食用油
脂類に鉄を安定に強化することができ、安定な鉄強化食
用油脂類を提供することができる。また、この安定な鉄
強化食用油脂類を含有させることにより、劣化の心配の
ない鉄強化食品も提供することができる。
Claims (4)
- 【請求項1】 ラクトフェリン類と鉄化合物とを液状食
用油脂類中に添加して調製される、ラクトフェリン類 1
分子当り鉄として 3 〜 400 原子の割合で配合されている安
定な鉄強化食用油脂類。 - 【請求項2】 液状食用油脂類にラクトフェリン類を添
加して分散し、次いで、鉄化合物を添加して分散するこ
とを特徴とする請求項1記載の安定な鉄強化食用油脂類
の製造法。 - 【請求項3】 ラクトフェリン類と鉄化合物を少量の水
に溶解し、次いで液状食用油脂類に添加して分散するこ
とを特徴とする請求項1記載の安定な鉄強化食用油脂類
の製造法。 - 【請求項4】 請求項1に記載の鉄強化食用油脂類を食
品中に含有せしめた安定な鉄強化食品。
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