JP3510654B2 - 板状塩基性亜鉛塩結晶体の製造方法 - Google Patents

板状塩基性亜鉛塩結晶体の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、粒子形態が板状の塩基
性亜鉛塩結晶体の製造方法に関し、特に広い範囲の紫外
線遮蔽剤および隠蔽剤としての化粧料および白色顔料等
に用いる板状酸化亜鉛の出発原料ならびに光学材料とし
ての板状硫化亜鉛粉末等の出発原料となる板状塩基性亜
鉛塩結晶体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】亜鉛化合物の板状結晶体の製造方法に関
する先行技術としては、たとえば特開昭53−8269
8号公報、特公昭54−40478号公報、特公昭55
−25133号公報および特公昭54−19237号公
報などが挙げられる。
【0003】特開昭53−82698号公報では、酸性
の亜鉛塩溶液にアルカリを添加し、酸性領域から結晶体
の析出を開始し、酸性領域たとえばpH4.0〜6.5
の範囲の条件下で結晶体の析出を完結させる「水酸化亜
鉛板状結晶体の製造方法」が開示されている。
【0004】また、特公昭54−40478号公報で
は、硫酸亜鉛と尿素の混合溶液を50〜100℃の範囲
内で加熱し、酸性領域たとえばpH4.0〜6.5の範
囲の条件下で結晶体を析出させる「水酸化亜鉛板状結晶
体の製造方法」が開示されている。
【0005】また特公昭55−25133号公報では、
硫酸亜鉛と硝酸亜鉛の混合溶液にアンモニアガスを接触
吸収させ、酸性領域たとえばpH4.0〜6.5の範囲
の条件下で結晶体を析出させる「塩基性硫酸亜鉛板状結
晶体の製造方法」が開示されている。
【0006】また特公昭54−19237号公報では、
硫酸イオンを含む酸性の亜鉛塩溶液を50℃以上の温度
に保持しながら、アンモニウムイオンまたはアンモニウ
ムイオンを発生する化合物の水溶液を滴下しながら結晶
体を析出する「水酸化亜鉛板状結晶体の製造方法」が開
示されている。
【0007】前記先行技術はそれぞれの明細書中におい
て亜塩化合物の板状結晶体を製造する場合、アルカリ領
域からの析出では、ピラミッド状もしくは針状晶しか得
られず、あるいはZn(NO32を弱アルカリで加水分
解することにより板状結晶が得られるが、このようにし
て得られる結晶体は1μm以下の非常に小さな薄片の凝
集物を形成する上、複雑な製造工程と生成条件の微妙な
制御を必要とし、工業的に用途を見出し得るものでない
と教示している。
【0008】また、前記特公昭54−40478号公報
の明細書中において、SO4 塩以外を用いた場合は、板
状結晶を得ることができないと教示されている。
【0009】また、前記特公昭55−25133号公報
の明細書中において、出発溶液にアンモニア水を加えた
場合反応が速すぎ、所望の粒径が得られないと教示して
いる。
【0010】以上のように亜鉛化合物の板状結晶体を製
造する場合、アルカリ側から塩基性亜鉛塩を析出する方
法においては、板状結晶が得にくく、またZn(N
32を弱アルカリで加水分解する方法およびアンモニ
ア水を用いる方法では、1μm以下の微粒結晶しか得ら
れない。このため亜鉛化合物の板状結晶体を製造する場
合は、従来は酸性領域からの析出に限られていた。
【0011】また前述の先行技術のうち特公昭54−1
9237号公報では、アンモニウムイオンまたはアンモ
ニウムイオンを発生する化合物の水溶液を滴下する際
に、その滴下速度と温度を調整することで析出する結晶
体の粒径を制御する方法が開示されているが、他の先行
技術は概ね粒径が100μm、厚さ10μmの主に配向
性酸化亜鉛粉末や板状蛍光体等の光学用材料としての原
料の取得を目的とした製造方法であり、このような厚さ
のものを焼成し、酸化亜鉛として化粧料に用いる場合は
可視光透過性が低く透明感は少なく、かつ、肌に対する
触感性も悪く、用途が限られる。
【0012】また近年オゾンホールによる地上に到達す
る太陽光紫外線量の増加は皮膚の老化、皮膚ガンの増大
など生物に悪影響を与えるのみならず、工業製品、食品
等の紫外線劣化の増大を促し、この問題解決が重要な課
題となってきている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】 本発明の目的は、可
視光の透過性および紫外線遮蔽能に優れた薄片板状酸化
亜鉛粉末の原材料または、比較的厚みを必要とする配向
性酸化亜鉛粉末や板状蛍光体、その他工業用等の原材料
に適した所望の粒径を有する板状塩基性亜鉛塩結晶体を
任意に製造する方法を提供することである。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は、アンモニア水
もしくは炭酸アンモニウム溶液またはこれらの混合物
に、反応温度20〜25℃、pHを6.4〜7.0の範
囲内にあるように制御しながら酸性の亜鉛塩を含む溶液
を滴下し、スラリーを生成する第1工程と、第1工程で
得られたスラリーを80〜150℃、1〜3時間の範囲
内で加熱処理する第2工程とからなることを特徴とする
板状塩基性亜鉛塩結晶体の製造方法である。
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】さらに本発明は、前記第1工程で用いる酸
性の亜鉛塩を含む溶液が、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜
鉛もしくは酢酸亜鉛またはこれらの2種以上の混合物の
溶液であることを特徴とする。
【0019】さらに本発明は、前記第1工程で用いる酸
性の亜鉛塩を含む溶液が、亜鉛塩の他にアルミニウム塩
または鉄塩を亜鉛原子1モルに対しアルミニウム原子ま
たは鉄原子0.5モル以下の割合で含有することを特徴
とする。
【0020】
【作用】本発明に従えば、第1工程としてアンモニア水
もしくは炭酸アンモニウム溶液またはこれらの混合物な
どのアンモニウム溶液に酸性の亜鉛塩を含む溶液を滴下
反応させ、スラリーを生成する過程においてpH6.4
〜7.0の範囲内で制御する。次いで第2工程として、
第1工程で得られたスラリーを、80〜150℃、1〜
3時間、その溶液の沸点温度の範囲内で加熱処理を行
う。
【0021】前記第1工程においてpH9.5を上回る
場合は、前記第2工程での加熱処理によって結晶が成長
せず1μm以下の微細な結晶が凝集した状態でしか得ら
れない。また、pHを低下させるに従い大粒径の結晶が
得られるが、pH6近辺より低下するに従い大粒径の結
晶と数μm以下の凝集した結晶が混在する確率が高くな
る。また第2工程において、滴下終了後50℃を下回る
温度のままでは得られる結晶は差し渡し径が1μm以下
の小さな薄片が過度に凝集物を形成している状態であ
る。
【0022】前記第1工程のpHの制御範囲を6.4〜
7.0とすることにより収率低下を抑制することができ
る。
【0023】また本発明に従えば、前記第1工程の温度
を20〜25℃に制御することにより、前記第2工程で
の加熱処理において凝集が解かれる速度が速くなる。
【0024】また本発明に従えば、前記第2工程の加熱
処理を80〜150℃の温度で行うことにより、結晶の
成長度合いを促進する。
【0025】また本発明に従えば、前記第1工程で用い
る酸性の亜鉛溶液を、種々変えることにより析出する結
晶体の形状のみならず粒径も制御することができる。
【0026】また本発明に従えば、前記第1工程で用い
る酸性の亜鉛溶液にアルミニウム塩または鉄塩を添加す
ることによって、機械的強度に優れ、薄片が実質的に破
壊されることを防ぐことができ、用途によっては好まし
い。
【0027】
【実施例】以下に、実施例により本発明をさらに詳細に
説明するが本発明は以下の実施例のみに限定されるもの
ではない。
【0028】なお、実施例において板状酸化亜鉛粉末の
平均粒径はレーザー回折式粒度分布測定装置(SALD
−1100/島津製作所製)、厚みは電子顕微鏡(日本
電子製)で測定した。
【0029】実施例 1 第1工程としてレフラックスコンデンサー付のフラスコ
に5mol/Lのアンモニア水140ml(25℃)を
投入し、0.75mol/L硫酸亜鉛710ml溶液
(25℃)を徐々に添加したところpHが約11のとこ
ろから白濁が始まった。添加終了後、さらに約0.5時
間撹拌しpHを測定したところ6.6だった。次いで第
2工程として、該析出物含有スラリーを常圧下95℃で
3時間加熱熟成することにより六角板状塩基性硫酸亜鉛
結晶体が得られた。前記析出処理後の溶液を濾過洗浄等
の処理により分離して得た本結晶体の粒径を表1に示
す。
【0030】実施例 2 第1工程として、レフラックスコンデンサー付のフラス
コに5mol/Lのアンモニア水140ml(25℃)
を投入し、0.75mol/L硫酸亜鉛590mlとA
23として8.0%の硫酸アルミニウム1.7gの混
合溶液(25℃)を徐々に添加後、さらに約0.5時間
撹拌しpHを測定したところ7.0であった。以下、第
2工程は実施例1と同様に処理して六角板状塩基性硫酸
亜鉛結晶体を得た。実施例1と同様に処理して得た本結
晶体の粒径を表1に示す。
【0031】実施例 3 実施例2と同様にして得られた第1工程でのスラリー
を、第2工程としてガラス製オートクレーブに移し変え
150℃にて3時間加熱処理することにより六角板状塩
基性硫酸亜鉛結晶体が得られた。実施例1と同様に処理
して得た本結晶体の粒径を表1に示す。
【0032】実施例 4 第1工程としてレフラックスコンデンサー付のフラスコ
に1.37mol/Lの炭酸アンモニウム溶液276m
l(20℃)を投入し3.14mol/L硫酸亜鉛溶液
200ml(20℃)を徐々に添加後、さらに約1時間
撹拌しpHを測定したところ6.4であった。次いで、
第2工程として該析出物含有スラリーを常圧下80℃で
3時間加熱熟成したところ三角、六角および楕円形の板
状塩基性硫酸亜鉛結晶体が得られた。実施例1と同様に
処理して得た本結晶体の粒径を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】比較例 1 第1工程として、レフラックスコンデンサー付のフラス
コに10mol/Lのアンモニア水140ml(25
℃)を投入し撹拌しながら1.5mol/L硫酸亜鉛溶
液445mlとFe23として15.6%の硫酸第2鉄
1.6gの混合溶液(25℃)を徐々に添加したとこ
ろ、pHが約11のところから白濁が始まった。添加終
了後、さらに約0.5時間撹拌しpHを測定したところ
7.9であった。次いで、第2工程として該析出物含有
スラリーを常圧下60℃で5時間加熱熟成することによ
り六角板状塩基性硫酸亜鉛結晶体が得られた。本実施例
1と同様に処理して得た本結晶体の粒径を表1に示す。
【0035】比較例 2 アンモニア水に硫酸亜鉛と硫酸第2鉄の混合溶液を反応
させたスラリーを、常圧下95℃で3時間加熱熟成した
以外はすべて比較例1と同様にして得られた板状塩基性
硫酸亜鉛結晶体の粒径を表1に示す。
【0036】比較例 3 第1工程としてレフラックスコンデンサー付のフラスコ
に10mol/Lのアンモニア水140ml(25℃)
を投入し1.5mol/L硫酸亜鉛340mlとAl2
3として8.0%の硫酸アルミニウム2gの混合溶液
(25℃)を徐々に添加後、さらに約1時間撹拌しpH
を測定したところ9.1であった。以下、第2工程は実
施例1と同様に処理して得られた板状塩基性硫酸亜鉛結
晶体の粒径を表1に示す。
【0037】比較例 4 第1工程としてレフラックスコンデンサー付のフラスコ
に5.0mol/Lのアンモニア水140ml(10
℃)を投入し0.75mol/L硫酸亜鉛840mlと
Al23として8.0%の硫酸アルミニウム1gの混合
溶液(10℃)を徐々に添加し、さらに約1時間撹拌を
実施した。次いで、第2工程として常圧下90℃で1時
間加熱熟成しスラリーを室温まで冷却しpHを測定した
ところ5.9であった。したがって、該スラリーに同ア
ンモニア水80mlを追加し、pHを7.8に調整した
後、新たに常圧下90℃で3時間加熱熟成したところ六
角板状塩基性硫酸亜鉛結晶体が得られた。実施例1と同
様に処理して得た本結晶体の粒径を表1に示す。
【0038】比較例 5 第1工程としてレフラックスコンデンサー付のフラスコ
に6.5mol/Lのアンモニア水140ml(25
℃)を投入し2.0mol/L硝酸亜鉛溶液220ml
(25℃)を徐々に添加後、さらに約1時間撹拌しpH
を測定したところ6.7であった。次いで、第2工程と
して該析出物含有スラリーを常圧下60℃で3時間加熱
熟成したところ四角ないし菱形の板状塩基性硝酸亜鉛結
晶体が得られた。実施例1と同様に処理して得た本結晶
体の粒径を表1に示す。
【0039】比較例 6 第1工程としてアンモニア水(25℃)に硫酸亜鉛と硫
酸アルミニウムの混合溶液(25℃)を添加、反応後、
第2工程において加熱熟成せずして5時間撹拌した他は
比較例1と同様に処理したところ微細粒子が密に凝集し
形状も判別できなかった。
【0040】比較例 7 第2工程での加熱熟成を45℃で3時間実施した他は比
較例1と同様に処理したところ若干結晶が成長していた
が密に凝集していた。
【0041】比較例 8 第1工程としてレフラックスコンデンサー付のフラスコ
に10mol/Lのアンモニア水140ml(25℃)
を投入し撹拌しながら1.5mol/L硫酸亜鉛溶液2
80mlとAl23として8.0%の硫酸アルミニウム
1gの混合溶液(25℃)を徐々に添加後、さらに約
0.5時間撹拌しpHを測定したところ9.8であっ
た。以下、第2工程として実施例1と同様の処理をして
板状酸化亜鉛を得たところ微細粒子が密に凝集し形状も
判別できなかった。
【0042】参考例 実施例2で得た薄片板状塩基性亜鉛塩結晶体を酸化性雰
囲気に900℃で0.5時間焼成した板状酸化亜鉛の直
線透過率による380nmと600nmの吸光度を表2
に示した。
【0043】
【表2】 ここで直線透過率による吸光度の測定は、板状酸化亜鉛
0.18gをシリコンオイル(KS−62F/信越化学
製)1.02gとメノウ乳鉢でよく混合し、この混合物
を脱脂ポリプロピレンフィルム(厚さ50μm)にドク
ターブレード法にて25μmの厚みに塗布し自記分光光
度計(島津製作所製)を用いて吸光度を測定した。
【0045】表2において、380nmは紫外線領域を
表し、600nmは可視光領域を表している。380n
mの欄においては、紫外線の遮蔽性を表しており、60
0nmでの吸光度は化粧料等として用いた場合に問題と
なる透明感のレベルを表している。
【0046】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、アンモニ
ア溶液へ酸性の亜鉛塩溶液を滴下する過程においてpH
を6.4〜7.0に制御しているので第2工程での加熱
処理によって結晶が成長せず1μm以下の微細の結晶が
凝集した状態を示すこともなく、また大粒径の結晶と数
μm以下の凝集した結晶が混在する確率も少なくなる。
【0047】第1工程においてアンモニア溶液へ酸性の
亜鉛溶液を滴下する過程において、pHを6.4〜7.
0の範囲内に制御するので母液中の亜鉛溶存量が増加す
ることによって生じる収率低下を防止することができ
る。
【0048】また本発明によれば、第1工程においてア
ンモニア溶液へ酸性の亜鉛溶液を滴下する過程において
20〜25℃の温度雰囲気で制御するので第2工程にお
ける加熱処理時に凝集が解かれる速度が速くなる。
【0049】また本発明によれば、第2工程における加
熱処理を80〜150℃の温度条件で1〜3時間、行う
ので、析出する結晶体の結晶の成長度合いを促進するこ
とができる。
【0050】また本発明によれば、第1工程において用
いる酸性の亜鉛溶液の種類を変えることによって、析出
する結晶体の形状のみならず粒径も制御することができ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C01G 1/00 - 23/08

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アンモニア水もしくは炭酸アンモニウム
    溶液またはこれらの混合物に、 反応温度20〜25℃、pHを6.4〜7.0の範囲内
    にあるように制御しながら酸性の亜鉛塩を含む溶液を滴
    下し、スラリーを生成する第1工程と、 第1工程で得られたスラリーを80〜150℃、1〜3
    時間の範囲内で加熱処理する第2工程とからなることを
    特徴とする板状塩基性亜鉛塩結晶体の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記第1工程で用いる酸性の亜鉛塩を含
    む溶液が、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛もしくは酢酸
    亜鉛またはこれらの2種以上の混合物の溶液であること
    を特徴とする請求項1記載の板状塩基性亜鉛塩結晶体の
    製造方法。
  3. 【請求項3】 前記第1工程で用いる酸性の亜鉛塩を含
    む溶液が、亜鉛塩の他にアルミニウム塩または鉄塩を亜
    鉛原子1モルに対しアルミニウム原子または鉄原子0.
    5モル以下の割合で含有することを特徴とする請求項1
    記載の板状塩基性亜鉛塩結晶体の製造方法。
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