JP3508244B2 - 圧電磁器組成物およびその製造方法 - Google Patents

圧電磁器組成物およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は10MHz以上の高周波
に対応可能で耐熱衝撃性に優れると同時に共振周波数の
温度特性の良好な厚みすべりエネルギー閉込めモードの
圧電磁器共振子に適した圧電磁器組成物およびその製造
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来この種の圧電磁器組成物は、チタン
酸鉛やジルコン酸鉛を主成分とし、副成分として種々の
添加物を添加したものが知られている。チタン酸鉛は、
キュリー温度が高く(470℃)、誘電率の小さい(〜
170)圧電材料であるが、単成分では焼結が極めて困
難で、緻密な焼結体が得られていなかった。
【0003】そこで、特開昭48−30097号公報に
示されているように、チタン酸鉛に、少量のLa23
MnO2を同時に添加することにより、空孔率1.5%
程度の緻密なチタン酸鉛磁器を得ることができる。しか
し、このチタン酸鉛磁器に圧電性を付与するためには、
分極条件が180〜200℃の高温下で6.0〜8.0
kV/mm以上の印加電圧と厳しく、分極中に絶縁破壊
を起こしやすく歩留りが低いという問題点を有してい
た。
【0004】厚みすべりエネルギー閉込めモードを使用
した圧電共振子は一般的にチタン酸ジルコン酸鉛系磁器
が用いられ、図1に示す構造を有している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】PZT系圧電材料を1
0MHz以上の高周波領域で厚みすべりエネルギー閉込
めモード共振子として使用する場合120μm以下の厚
みに研磨加工する必要があるが、割れ等により良好な歩
留りは期待できなかった。また、誘電率が高いため高周
波で使用した場合に、素子の入出力インピーダンスが低
下し、外部回路とのインピーダンス整合に問題があっ
た。
【0006】一方PT系圧電材料では周波数定数N15
大きく、誘電率が小さく、機械的品質係数が大きいとい
った特徴があり厚みすべりエネルギー閉込めモード共振
子としたときに優れた特性が期待できることに着目し
た。
【0007】本発明は、10MHz以上の高周波領域に
対応でき、耐熱衝撃性に優れ、共振周波数の温度係数が
小さく、高い共振応答レベルを有する厚みすべりエネル
ギー閉込めモード共振素子に適した圧電磁器組成物を提
供することを目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明の圧電磁器組成物は、一般式(化3)で表さ
れる主成分に、副成分として少なくとも0.1〜1.2
重量%のMnO2を含有させたものを焼結させた後、1
30〜180℃の温度範囲において、3.3〜6.0k
V/mmの直流電界を15分以上印加して分極処理した
ことを特徴とするものである。
【0009】
【化3】
【0010】
【作用】上記構成によると、Pbの一部をLa,Ca
で、Tiの一部をSn,Nbで置換することにより、分
極条件を緩和しても、飽和分極できるようになるため、
分極中の絶縁破壊を防ぎ、歩留りを高めることができ
る。ここでLaは圧電磁器の焼結性を向上させ、Caは
温度特性を改善し、Sn,Nbは焼結温度を低くするこ
とができるとともに、分極しやすくするという効果を有
する。
【0011】また、MnO2は磁器の焼結性を向上させ
るという効果を有する。その結果、10MHz以上の高
周波領域に対応でき、耐熱衝撃性に優れ、共振周波数の
温度係数が小さく、高い共振応答レベルを有する厚みす
べりエネルギー閉込めモード共振素子を得ることができ
る。
【0012】
【実施例】以下本発明の実施例について具体的に説明す
る。
【0013】原料としてPbO,TiO2,MnO2,S
nO2,Nb25,La23,CaCO3,Cr23,F
23,CoO,NiO,Al23を(表1)、(表
2)の組成となるように正確に秤量し、ボールミルによ
りよく混合した。
【0014】
【表1】
【0015】
【表2】
【0016】なお素原料としてはPb34,MnCO3
のように分解してPbO,MnO2を生成するものでも
良い。次に前記混合物を850℃の温度で仮焼し、さら
にボールミルにより粉砕した。これを乾燥した後、結合
剤としてポリビニールアルコール水溶液を加え、造粒し
た後、1ton/cm2の圧力で加圧成形し、直径20
mm−厚み7mmの円柱状成形体を得た。これを閉炉中
で1230〜1270℃の温度で3時間焼成することに
より得られた円柱状圧電磁器を高さ方向に精密研磨し、
高さを5.1mmとした後、焼結体密度を測定し、つい
で上下面に銀電極を焼き付け、120〜200℃のシリ
コーンオイル中で、3.0〜6.5kV/mmの直流電
界を10〜30分間印加し分極処理した。ついで分極方
向に厚み0.5mmでスライス後、厚み方向精密研磨に
より厚みを0.18mmに圧電磁器2を仕上げた後、共
振銀電極1を蒸着、ついで分極方向に0.8mm幅で切
断し、図1に示した5.1×0.80×0.18mmの
厚みすべりエネルギー閉込めモード共振素子を得た。こ
れより誘電率ε11/ε0、電気機械結合係数K15、厚み
すべり基本波の山谷比[20×log10(反共振インピ
ーダンス/共振インピーダンス)]、
【0017】
【外1】
【0018】による共振周波数の変化率を測定した。測
定結果は磁器焼成温度(密度最大)とともに(表3)、
(表4)にまとめた。
【0019】
【表3】
【0020】
【表4】
【0021】(表3)、(表4)から明らかなように
(化3)のx,y,zの範囲内にある試料No.1−1,
1−4,1−5,1−9,1−10,1−11,1−1
3,3,4,7,8,12,13,17,18のものは
誘電率が300以下と低く、共振周波数の熱衝撃による
変化率が−0.2%以下と小さく、共振周波数温度係数
が−60ppm/℃以内と比較的小さく、共振応答レベ
ルが山谷比で60dB以上と高くなっている。また共振
周波数温度係数に着目すると本発明の請求項2および請
求項3の範囲内にある試料No.20−1,20−4,2
0−5,20−9,20−10,20−13,21,2
2,23,24,25−1,25−4,25−5,25
−9,25−10,25−13のものは本発明の請求項
1および請求項2の範囲内にある試料よりも小さくなっ
ておりCr23,Fe23,CoO,NiO,Al23
のうち少なくとも1種を添加することにより共振周波数
温度特性が−30ppm/℃以内に改善されていること
が分かる。
【0022】(表3)、(表4)で本発明の範囲外の試
料には*印を付したが、本発明の範囲外の磁器組成を有
する試料No.2,5,6,9,10,11,14,1
5,16,19のものはいずれも焼結が不十分であった
り、耐熱衝撃性が低かったり、共振周波数温度特性が悪
かったり、誘電率が高く高周波領域での使用に不利であ
ったり等の不具合が少なくとも1つ以上あった。また試
料No.26,30のものは磁器組成の副成分がMnO2
外にCr23,Fe23,CoO,NiO,Al23
うち少なくとも1種を加えたものであるが添加量が適正
範囲から外れているため共振周波数温度係数が改善され
ていなかったり、分極できないという不具合を有してい
た。
【0023】また本発明の範囲外の条件で分極処理を施
したNo.1−2,1−3,1−6,1−7,1−8,1
−12,20−2,20−3,20−6,20−7,2
0−8,20−11,20−12,25−2,25−
3,25−6,25−7,25−8,25−11,25
−12のものはいずれも分極が未飽和で、共振子の応答
レベルが低かったり、熱衝撃が加わったときの共振周波
数の変化が大きい等の不具合が少なくとも1つ以上あっ
た。
【0024】ここで圧電磁器組成を本発明の請求の範囲
に限定した理由を以下に説明する。xについてはx<
0.03の場合焼結性が低下し圧電特性が低下すること
およびx>0.12の場合キュリー温度が低下し耐熱衝
撃性が低下することから本発明の範囲から除外した。
【0025】yについてはy<0.02の場合共振周波
数温度特性が悪化し、y>0.08の場合には誘電率が
300以上となり高周波領域での使用に不利となるため
本発明の範囲から除外した。
【0026】zについてはz<0.01の場合磁器の焼
成温度を低下させて焼結性を向上させるPb(Sn1/3
Nb2/3)O3の効果が得られないため圧電性が低下し、
またz>0.10の場合誘電率が大きくなり高周波領域
での使用に不利となると同時にキュリー温度が低下し耐
熱衝撃性が低下することから本発明の範囲から除外し
た。
【0027】副成分としてのMnO2添加量について
0.1重量%以下では耐熱衝撃性が低下するため、1.
2重量%以上では高電界における比抵抗が低下し分極処
理が困難となるため本発明の範囲から除外した。
【0028】本発明においては上記の添加物以外に、さ
らにCr23,Fe23,CoO,NiO,Al23
うち少なくとも1種を適量添加すれば、さらに優れた特
性を有する圧電磁器組成物が得られることを見いだし
た。
【0029】共振周波数の温度係数はCr23,Fe2
3,CoO,NiO,Al23のうち少なくとも1種
を0.02〜0.50重量%添加することにより著しく
低下する。例えば(表4)に示す磁器組成物では共振周
波数温度係数は30ppm/℃以下と小さいものになっ
ている。ここでこれらの添加物の添加量を上記範囲に限
定したのは以下の理由による。
【0030】添加量0.02%以内では共振周波数の温
度特性を改善する効果が得られず添加量を0.50重量
%以上とした場合にはCr23,Fe23,CoO,N
iOでは高電界における比抵抗が低下し分極処理が困難
となるため、Al23では焼結性が低下し圧電特性の低
下が顕著となるため本発明の範囲から除外した。
【0031】次に分極条件を上記のものに限定した理由
を記載する。前述したように従来のPT系磁器は分極条
件が非常に厳しく、絶縁破壊等で歩留りが低いという問
題があったが、本発明の磁器組成物についてはPbの一
部をLa,Caで、Tiの一部をSn,Nbで置換して
いるため分極条件を緩和しても飽和分極できるようにな
った。
【0032】分極温度については(表3)、(表4)に
示したように130℃以下では分極が未飽和で共振子の
応答レベルが低下すると同時に熱衝撃が加わったときの
共振特性の変化が大きいため、180℃以上では磁器の
比抵抗が減少し高電界が印加できなくなるため本発明の
範囲から除外した。
【0033】分極電圧についても(表3)、(表4)に
示したように3.3kV/mm以下であれば分極未飽和
であり、熱衝撃が加わったときに脱分極しやすく、それ
にともない共振特性の変化が大きいため本発明の範囲か
ら除外した。
【0034】分極時間についても(表3)、(表4)に
示したように15分以内であれば上記温度、印加電圧条
件であっても磁器組成によっては未飽和のものがあり、
共振子の応答レベルが低下すると同時に熱衝撃が加わっ
たときの共振特性の変化が大きいため本発明の範囲から
除外した。
【0035】
【発明の効果】以上、本発明の圧電磁器組成物は、誘電
率、共振周波数の熱衝撃による変化率、共振周波数温度
係数が小さく、共振応答レベルが高いので、例えば、1
0MHz以上の高周波領域に対応でき、耐熱衝撃性に優
れ、共振周波数の温度係数が小さく、高い共振応答レベ
ルを有する厚みすべりエネルギー閉込めモード共振素子
を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】一般的な厚みすべりエネルギー閉込めモード共
振子の斜視図
【符号の説明】
2 圧電磁器
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C04B 35/46 H01L 41/187 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式(化1)で表される基本組成物
    に、副成分として少なくとも0.1〜1.2重量%のM
    nO2を添加含有させた圧電磁器組成物。 【化1】
  2. 【請求項2】 副成分としてさらに、Cr23,Fe2
    3,CoO,NiO,Al23のうち少なくとも1種
    を0.02〜0.50重量%添加含有させた請求項1記
    載の圧電磁器組成物。
  3. 【請求項3】 一般式(化2)で表される基本組成物
    に、副成分として少なくとも0.1〜1.2重量%のM
    nO2を添加して成形し、焼成後、130〜180℃の
    温度範囲において、3.3〜6.0kV/mmの直流電
    界を15分以上印加して分極を行う圧電磁器組成物の製
    造方法。 【化2】
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