JP3507603B2 - 食品のための分散安定用組成物 - Google Patents

食品のための分散安定用組成物

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JP3507603B2
JP3507603B2 JP29498395A JP29498395A JP3507603B2 JP 3507603 B2 JP3507603 B2 JP 3507603B2 JP 29498395 A JP29498395 A JP 29498395A JP 29498395 A JP29498395 A JP 29498395A JP 3507603 B2 JP3507603 B2 JP 3507603B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は食品のための分散安
定用組成物に関し、詳しくは微生物由来のセルロースを
微粒子化したものを含有する食品のための分散安定用組
成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、食品用の分散安定剤としては、増
粘剤やゲル化剤が主に使用されているが、これらは食品
の粘度を増加させたり、食品中の成分と反応してゲルを
形成したりして、食品の物性を変化させ、食品の品質に
影響を与えることが問題となっている。そのため、食品
の粘度を増加させず、食品中の成分と反応しない分散安
定剤の開発が望まれていた。このような要望に応えるも
のとして、食品中の成分との反応性が弱く、粘度も低い
植物由来のセルロースが挙げられる。例えば、カルシウ
ム強化牛乳では、添加したカルシウム粒子の分散性を改
良するために、植物由来のセルロースが使用されてお
り、牛乳本来のさらりとした食感を保ちながら、カルシ
ウム粒子の分散性の改良を可能にしている。また、ココ
ア粒子のように粒子径が大きい場合には、増粘剤やゲル
化剤では十分に安定した分散状態が得られないため、懸
濁安定性に優れた植物由来のセルロース製剤が広く使用
されている。
【0003】しかし、植物由来のセルロースは添加量が
多くなると、舌にざらつき感を与えるため、一定量以上
の添加が困難で、分散安定効果が不十分であるという課
題を抱えている。そこで、酸分解して得られた植物由来
の結晶性セルロースに機械的な処理を実施して粒子径を
小さくする方法(特開平3−163135号公報)が開
発され、平均粒子径が3μm以下の微粒子セルロースが
製造できるようになった。これにより、舌のざらつき感
は改良されたが、食感の改良は不十分であり、依然とし
て添加量は限られていた。
【0004】一方、微生物由来のセルロースについて
は、静置培養によって得られたものを高圧ホモゲナイザ
ーにより機械的に離解させて、平均粒子径が44μmの
微粒子セルロースが製造できることが知られている(Fo
od Hydrocolloid 6 (6) 493-501 (1992)) 。また、この
ような機械的な離解物の用途として、飲料等の水性食品
に用いることが特開昭62−83854号公報に開示さ
れており、例えばココア粉末では30分後でも沈澱を生
じない最低添加濃度は0.1%であり、フレンチドレッ
シングでは乳化1日後でも均一な乳化を得るためには、
最低添加濃度は1.0%必要であることが指摘されてお
り、植物由来のセルロース製剤と同程度の分散安定性を
示すことが明らかにされている。また、静置培養によっ
て得られた微生物セルロースを化学的処理と物理的処理
とを組み合わせて処理し、乾燥することによって、0.
01〜0.1μmの粒子径の微細な微生物セルロースを
製造する方法も開示されている(特公平5−27653
号公報、同5−80484号公報)が、これらの方法で
得られる微生物セルロースは棒状で結晶性のものであ
り、微生物セルロース特有の網目構造が失われたもので
ある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、低粘
度で十分な分散安定性を有し、かつ実用的な濃度で用い
た場合でも舌のざらつきを感じさせない食品のための分
散安定用組成物を開発することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、植物由来
のセルロースが分散安定性を有するのは、植物セルロー
スのフィブリルの網目構造に分散させたい物質が捕捉さ
れるために、粒子の沈降や油液分離を容易に起こさない
ものと推定した。一方、微生物由来のセルロースは植物
由来のセルロースよりもフィブリルが細かく、緻密な網
目構造をとることが知られている。従って、微生物セル
ロースはその網目構造中に多量の物質を捕捉することが
でき、しかも安定に保持できる可能性があることに着目
した。本発明者らは以上のような着眼をもとに、各種の
方法で微生物セルロースのサンプルを調製し、それらの
分散安定性を詳細に検討した。その結果、微生物セルロ
ースは少量の使用でも高い分散安定性を示すことを見出
したが、粘度が高く、食感に影響を与えることが問題で
あった。
【0007】そこで、分散安定性を低下させず、粘度の
みを低下させる方法について鋭意検討した結果、粘度と
セルロース粒子径が相関しており、粒子径が大きいほど
粘度が増加することを見出した。このことは、微生物セ
ルロースの粒子径を小さくすることにより、粘度が顕著
に低下する可能性を示唆している。既に、微生物セルロ
ースに対して化学的処理と物理的処理を併用することに
より、粒子径の著しく低下した微細結晶微生物セルロー
スが製造できることが指摘されている。しかし、この処
理方法で得られる微生物セルロースは特有の網目構造が
失われたものであり、網目構造に由来する分散安定性は
期待できない。本発明者らは、網目構造を保持したまま
で、微生物セルロースの粒子径を小さくするため、各種
の公知の物理的な処理方法を検討したが、平均粒子径が
数十ミクロン以下の粒子に微細化することは困難であっ
た。
【0008】そのため、化学的な処理方法や酵素処理法
により微生物セルロースの粒子径を小さくすることを検
討した。その結果、含水率95%以上のゲル状態の微生
物セルロースを4〜7N程度の硫酸や塩酸などの鉱酸で
加熱分解する方法が微粒子化に有効であり、この処理方
法で得られる微生物セルロースは、粘度も低下してお
り、かつ分散安定性も向上することを見出した。
【0009】しかし、該微粒子化微生物セルロースを乾
燥したものでは、良好な分散安定性が得られないことも
明らかになった。これは、微生物セルロースを含水状態
で乾燥させると、フィブリル間にあった水分がなくなる
ことで、それまで接触できなかったフィブリル間でも水
素結合が形成され、網目構造が壊れるためである。ま
た、このようにフィブリル間に形成された水素結合は強
固なため、乾燥物を再度、水に懸濁しても水素結合が解
消されないため、元の網目構造に復帰できず、結果的に
分散安定性が得られないと考えられる。
【0010】すなわち本発明は、アセトバクター属細菌
由来のセルロースを4〜7Nの鉱酸で分解して得られ、
平均粒子径が10μm以下で、かつ積算体積90%の粒
子径が0.1μm以上である微粒子化微生物セルロース
を含有することを特徴とする食品のための分散安定用組
成物に関する。また、本発明はアセトバクター属細菌由
来のゲル状セルロースを、4〜7 Nの鉱酸で110〜1
30℃にて分解することを特徴とする上記組成物の製造
方法に関する。さらに、本発明は上記微粒子化微生物セ
ルロースを含有する組成物を、食品に対して該微粒子化
微生物セルロースを乾燥重量で0.01〜0.2%の割
合で添加してなる分散安定性が改善された食品に関す
る。
【0011】
【発明の実施の形態】以下に本発明を詳細に説明する。
本発明に用いる微生物セルロースは、セルロース生産菌
であるアセトバクター属に由来するものである。この
生物を既知の方法、例えば特開平3−157402号公
報,特開平5−308986号公報に記載されている方
法に従って培養することによって、目的とする微生物セ
ルロースを製造することができる。以下に、微生物セル
ロースを製造するための諸条件について説明する。
【0012】微生物セルロース生産菌であるアセトバク
ター属細菌としては、例えばアセトバクター・パスツリ
アヌス ATCC10245株,アセトバクター・エス
ピー DA(FERMP−12924)株,アセトバク
ター・キシリナム ATCC23768株,同 ATC
C23769株,同 ATCC10821株等を挙げる
ことができる。
【0013】微生物セルロースを産生させるための培地
としては、通常の細菌を培養する一般的な培地を用いれ
ばよく、上記微生物が増殖して目的とする微生物セルロ
ースを生産することができるものであればよい。例え
ば、Hestrin-Schramm 培地が好適に用いられる。また、
培地に熱失活させたセルラーゼ製剤を添加したり、酢酸
等のカルボン酸またはその塩を添加するなどして微生物
セルロースの生産性を向上させることも可能である。培
養は通常の条件で行えばよく、pH5〜9,培養温度2
0〜40℃の範囲が適当であり、微生物セルロースが十
分に産生されるまで続ける。培養方法は、通気攪拌培
養,静置培養,攪拌培養,通気培養のいずれでもよい
が、特に通気攪拌培養が好ましい。通気攪拌培養を行う
場合の条件は、例えば特開平7−39386号公報に記
載されているように、培養槽に供給する酸素濃度は1〜
100%、好ましくは21〜80%であればよく、培養
はフラスコでもジャーファーメンターでも可能である。
【0014】生産された微生物セルロースは、希アルカ
リ溶液に浸漬するなどの通常の方法で除蛋白質処理をし
たのち、水洗や弱酸溶液への浸漬により残存するアルカ
リを除いて精製することができる。精製された微生物セ
ルロースは、そのままではゲル状であるが、鉱酸で処理
することにより、微粒子化することができる。鉱酸によ
って微粒子化する場合の条件は、ゲル状の精製された微
生物セルロースを乾燥重量で0.3%程度となるような
懸濁液を調製し、該懸濁液に硫酸,塩酸,リン酸等を最
終濃度で4〜N、好ましくは5〜6Nとなるように添
加し、110〜130℃、好ましくは120℃で5〜2
0分間、好ましくは10〜15分間加熱すればよい。
【0015】上記の処理が微生物セルロースの微粒子化
に有効であったかどうかは、上記処理物の粒子径を測定
し、粒度分布を解析することにより容易に判定できる。
例えば、堀場製作所製のレーザー回析/散乱式粒度分布
測定装置LA−910により容易に粒子径を測定でき
る。なお、測定条件は常法を用いたが、分散処理として
1.0分間の超音波処理を行った。本発明における平均
粒子径とはメジアン径のことであり、積算体積90%の
粒子径とは粒子の全体積を積算した値を100%とした
時に、粒子径の大きい方から体積を積算した値が90%
となるような粒子径を指す。本発明により得られる微粒
子化微生物セルロースの粒度分布の1例を、後記調製例
1における図3により説明すると、その粒子径は0.2
μm付近と10μm付近を極大とする2つの領域に分布
しており、全体の平均粒子径は10μm以下で、かつ積
算体積90%の粒子径が0.1μm以上である。本発明
の微粒子化微生物セルロースは、一般的に舌へのざらつ
き感が緩和されると言われる数ミクロン以下の微細粒子
の割合が大幅に高まり、単位重量当りの全粒子の表面積
が大きくなるため、微生物セルロースが低濃度でも有効
である。その結果、食品への添加量が少量で済むため、
官能的にも好ましい。
【0016】また、微粒子化微生物セルロースの1.0
%(重量%)の水懸濁液を調製し、B型粘度計にて20
℃で測定したときの粘度は、処理前の16800cps
から644cps以下の低粘度になっている。
【0017】以上に述べた方法で調製した微粒子化微生
物セルロースを食品の分散安定剤として使用するときの
食品に対する添加量は、通常の場合、食品あたり乾燥重
量換算で0.01〜0.2%、好ましくは0.05〜
0.1%が適当である。この範囲(食品あたり乾燥重量
換算で0.01〜0.2%)で添加すれば、良好な分散
安定性が得られ、官能的にも舌のざらつき感は全くな
い。しかし、添加量がこの範囲を下回ると、吸湿,潮解
性および風味の改善効果が少なく、逆に上回ると、ざら
つきを感じたり、水不溶成分の増加により食品に悪影響
を与える。また、上記の範囲で使用した場合は、粘度測
定の結果でも、粘度の上昇は認められず、増粘作用やゲ
ル形成も認められない。
【0018】本発明の分散安定用組成物の対象となる食
品に制限はないが、好ましい食品としては飲料,油分含
有食品,調味料などがあり、例えばカルシウム強化飲
料,ココア飲料,コーヒー飲料,ドレッシング,たれな
どに対して好適に用いることができる。
【0019】
【実施例】次に、本発明を調製例および実施例により詳
しく説明するが、本発明はこれらによって制限されるも
のではない。 調製例1 微粒子化微生物セルロースの調製 ヘストリン−シュラム培地(HS培地、D−グルコース
2.0g,バクトペプトン(ディフコ社製)0.5g,
酵母エキス0.5g,クエン酸0.115g,リン酸水
素二ナトリウム0.27g,蒸留水100ml、pH
6.0)200mlを500ml容三角フラスコに分注
し、加圧殺菌せずに70℃で5分間の加温だけ行い、そ
のままアセトバクター・パストリアヌス ATCC10
245株を植菌し、30℃で7日間静置培養を行った。
【0020】培養終了後、培養液表面に生成した微生物
セルロースを濾過により取り出し、1%NaOH水溶液
に浸漬し、室温で24時間除蛋白質処理を行い、次いで
1%酢酸溶液に浸漬し、中和処理を行った。その後、十
分に水洗して、静置培養による微生物セルロース(水分
含有量98%)を調製した。また、同様の培地67.5
mlを300ml容スパイラルバッフルフラスコに分注
し、培養条件を28℃,振幅2cm,回転速度180r
pmの回転振盪で4日間培養を行った。培養終了後、培
地中に生成した微生物セルロースを濾過により取り出
し、1%NaOH水溶液中で110℃,20分間処理し
て菌体等を除去し、その後十分水洗して、通気攪拌培養
による微生物セルロース(水分含有量98%)を調製し
た。
【0021】次に、これらの微生物セルロースをブレン
ダー,高圧ホモゲナイザー,ナノマイザー,超音波処理
等の物理的処理,酸処理,酵素処理により微粒子化処理
を行った。ブレンダー処理は、精製した培養物を乾燥重
量換算で5g/Lの濃度になるように水に懸濁し、ワー
リングブレンダー(商品名:34BL97)で目盛り5
の条件で5分間処理した。高圧ホモゲナイザー処理は、
上記のブレンダー処理物(乾燥重量換算で5g/Lの懸
濁液)をマントン・ゴーリン社製高圧ホモゲナイザー
(商品名:15MR−8TA)にて500Kg/cm2
の条件で40回通過させた。ナノマイザー処理は、上記
のブレンダー処理物(乾燥重量換算で5g/Lの懸濁
液)をナノマイザー社製の装置(商品名:ナノマイザー
LA31)にて1000Kg/cm2 の条件で3回通過
させた。超音波処理は、上記のブレンダー処理物(乾燥
重量換算で5g/Lの懸濁液)を日本精機製作所製の装
置(商品名:US300T)にて20KHz,300W
の条件で1時間処理した。
【0022】酸処理は、上記のブレンダー処理物(乾燥
重量換算で3g)を所定濃度の塩酸または硫酸溶液を加
えて懸濁液を調製し、121℃,15分間の処理を行っ
た。その後、遠心分離(6000rpm,15分間)を
行って沈澱を採取し、沈澱を水で十分に水洗し、使用し
た酸を除去した。酵素処理は、上記のブレンダー処理物
(乾燥重量換算で0.5g)を緩衝液に懸濁し、セルラ
ーゼ(商品名:セルラーゼ,和光純薬工業株式会社製,
力価980U/mg)を0.05%加え、50℃で30
分間の処理を行った。その後、反応液を更に50℃,6
0分間放置して酵素を失活させた後、遠心分離(600
0rpm,15分間)して固形物を回収し、水洗した。
上記の各試料は、濾過して水分量を90%に調整してス
ラリー状としたものを実験に供した。
【0023】各種スラリーの粒子径を堀場製作所製のレ
ーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−910で測
定した。通気攪拌培養で得た微生物セルロース及び静置
培養で得た微生物セルロースを微粒子化処理した結果を
第1表および図1〜5に示した。表中に比較例として、
微生物セルロースの代わりにパルプセルロースから製造
されたミクロフィブリル化セルロース(ダイセル化学株
式会社製,商品名:セリッシュFD−100F),微結
晶セルロース(旭化成工業株式会社製,商品名:アビセ
ルRC−591(乾燥粉末で、カルボキシルメチルセル
ロースナトリウムを11%含む),スラリー様微結晶セ
ルロース(旭化成工業株式会社製,商品名:セオラスク
リーム(スラリー物))の測定結果もそれぞれ図6,7
および8に示した。
【0024】なお、測定にあたっては、粒子の会合によ
って粒子径が見掛け上大きくなる傾向があったので、あ
らかじめ試料を超音波で処理して粒子を十分分散させた
後、フローセルで測定した。また、粘度は乾燥重量換算
で1.0%の濃度溶液を調製し、それをB型粘度計(株
式会社東機産業製,ローター回転数30rpm,測定温
度20℃)で測定した。粒度分布を比較すると、6N硫
酸で処理した場合は、2つの粒度分布のピークが認めら
れ、1μm以下の微粒子が多量に存在し、メジアン径は
10μm以下であった。一方、高圧ホモジナイザー等の
物理的処理を行った場合のメジアン径はすべて30μm
以上であり、1μm以下の微粒子は全く見られなかっ
た。
【0025】
【表1】第1表
【0026】実施例1 調製例1で調製した、通気攪拌培養で得た微生物セルロ
ースを微粒子化した各種の試料について、1%炭酸カル
シウム懸濁液および1%ココア懸濁液に添加した場合の
懸濁安定能を測定し、結果を第2表に示した。懸濁安定
性は、1%炭酸カルシウム懸濁液20mlを目盛り付き
試験管(直径2.0cm,長さ18cm)に取り、各種
の試料を種々の濃度で添加して上下に反転して一旦混合
した後、ペンシルミキサー(井内盛栄堂社製,6900
rpmで攪拌)で1分間よく攪拌した。攪拌後、試験管
を静置し、炭酸カルシウムの沈降の有無を観察し、静置
開始後30分間、粒子が沈澱せずに懸濁分散状態を保つ
のに必要な最低濃度(乾燥重量換算)の微生物セルロー
ス量を求めた。ココアの場合も、市販の粉末ココアを用
いて、同様に行った。なお、対照として、微生物セルロ
ースの代わりに植物セルロース製剤であるミクロフィブ
リル化セルロース(ダイセル化学株式会社製,商品名:
セリッシュFD−100F),微結晶セルロース(旭化
成工業株式会社製,商品名:アビセルRC−591(乾
燥粉末で、カルボキシルメチルセルロースナトリウムを
11%含む),スラリー様微結晶セルロース(旭化成工
業株式会社製,商品名:セオラスクリーム(スラリー
物))の結果も併せて示した。
【0027】
【表2】第2表
【0028】その結果、表から明らかなように、微生物
セルロース由来の微粒子化試料は植物セルロース製剤と
同程度か、それ以下の濃度で懸濁安定状態を維持するこ
とができた。特に、1%ココア懸濁液の安定化に有効で
あった。また、6N硫酸で処理したものが最も低濃度で
効果が認められた。なお、ブレンダー処理物は高粘度の
ために低い濃度で効果が認められた。
【0029】実施例2 調製例1で調製した試料のうち、静置培養および通気攪
拌培養で得た微生物セルロースを高圧ホモゲナイザー処
理したものと6N硫酸処理のものについて、実施例1と
同様の方法で懸濁安定効果を検討した。結果を第3表に
示した。なお、粘度は1%溶液について測定したもので
ある。表から明らかなように、静置培養および通気攪拌
培養のいずれでも同様の懸濁安定効果を示し、特に培養
法の違いによる差は見られなかった。静置培養で得られ
た微生物セルロースも高圧ホモゲナイザー処理したもの
より6N硫酸処理のものの方が懸濁安定効果が高かっ
た。
【0030】
【表3】第3表
【0031】実施例3 調製例1で調製した通気攪拌培養で得た微生物セルロー
スの6N硫酸処理のものについて、カルシウム強化牛乳
に添加した場合の分散安定性を検討した。カルシウム強
化牛乳は、牛乳500mlに対して炭酸カルシウム1.
2gを加えて攪拌した後、マントン・ゴーリン社製高圧
ホモゲナイザー(商品名:15MR−8TA)にて15
0Kg/cm2 の条件で1回通過させて調製した。この
際に種々の濃度で6N硫酸処理物を炭酸カルシウムと同
時に添加した。なお、対照として、微生物セルロースの
代わりに植物セルロース製剤であるミクロフィブリル化
セルロース(ダイセル化学株式会社製,商品名:セリッ
シュFD−100F),微結晶セルロース(旭化成工業
株式会社製,商品名:アビセルRC−591(乾燥粉末
で、カルボキシルメチルセルロースナトリウムを11%
含む),スラリー様微結晶セルロース(旭化成工業株式
会社製,商品名:セオラスクリーム(スラリー物))を
同様に添加して検討した。
【0032】炭酸カルシウムの分散安定性は、カルシウ
ム強化牛乳を1夜4℃で放置して沈降した炭酸カルシウ
ムが、容器を上下に反転して再度完全に分散するまでに
要した回数(再分散性)と、再分散したものを室温に放
置した際に、分散している炭酸カルシウムが沈降してく
るまでに要した時間(再分散後安定性)を測定して評価
した。また、調製したカルシウム強化牛乳の粘度につい
ても実施例1と同様に測定した。結果を第4表に示し
た。なお、表中の○は沈澱なし、△は容器底部に一部沈
澱あり、×は底部全面に沈澱ありの観察結果を示す。表
から明らかなように、無添加の場合は、再分散するのに
15回の反転を要するが、0.1%添加区で比較する
と、植物セルロース製剤はいずれも2回であるのに対
し、微生物セルロースは1回で再分散が可能であった。
再分散後安定性についても、植物セルロース製剤が最大
15分であるのに対し、微生物セルロースは60分間も
懸濁状態を維持した。また、再分散後15分間安定に炭
酸カルシウムを分散できる微生物セルロースの濃度は
0.025%であり、植物セルロース製剤の1/4量で
あり、微生物セルロース濃度が0.025%であるカル
シウム強化牛乳の粘度は、植物セルロース製剤を添加し
たものと同程度であり、官能的にも無添加のものと差が
なかった。
【0033】
【表4】第4表
【0034】実施例4 砂糖30g,インスタントコーヒー粉末7.5g,ショ
糖脂肪酸エステル1.5g,炭酸水素ナトリウム0.6
5gを85℃の温水100mlに溶解し、調製例1で調
製した通気攪拌培養で得た微生物セルロースの高圧ホモ
ゲナイザー処理物と6N硫酸処理物を乾燥重量換算で
0.1%加え、ワーリングブレンダー34BL97で目
盛り5の条件で15分間攪拌した。これに牛乳125g
を加え、さらに水を加えて全量を500mlにする。こ
の液を75℃に加熱して高圧ホモゲナイザー(マントン
・ゴーリン社製,商品名:15MR8TA)にて200
Kg/cm2 の条件で1回通過させて乳化し、さらに1
21℃で30分間の処理を行って殺菌した。
【0035】このようにして調製したコーヒー飲料を室
温に放置し、経日的にコーヒーなどに由来する油の乳化
不十分によるオイルリングの形成や固形物の分散不十分
による沈澱物の有無を観察した。比較例として、植物セ
ルロース製剤であるミクロフィブリル化セルロース(ダ
イセル化学株式会社製,商品名:セリッシュFD−10
0F),微結晶セルロース(旭化成工業株式会社製,商
品名:アビセルRC−N30(乾燥粉末で、キサンタン
ガムを5%,デキストリンを20%含む))をそれぞれ
0.2%,0.3%添加した試験区を設けた。結果を第
5表に示した。 その結果、高圧ホモゲナイザー処理し
た微生物セルロースとミクロフィブリル化セルロースで
はオイルリングの形成が促進されており、コーヒー飲料
に悪影響を与えていた。また、微結晶セルロースは無添
加区と同様の結果を示し、何ら添加効果が認められなか
った。これに対して、6N硫酸処理した微生物セルロー
スは、22日目でもオイルリングの形成が見られず、沈
澱が発生したのも12日目であり、顕著な乳化安定効果
と懸濁安定効果が認められた。
【0036】
【表5】第5表
【0037】実施例5 調製例1で調製した通気攪拌培養で得た微生物セルロー
スの高圧ホモゲナイザー処理物,1N硫酸処理物,6N
硫酸処理物,超音波処理物の各試料を乾燥重量換算で0.
1gを100mlの水に分散させ、液を60℃に加温す
る。この液をホモミキサー(特殊機化工業製,商品名:
ホモジェッター)で攪拌しながら、菜種油100mlを
徐々に加えた。全量を加えた後に、さらに9000rp
mの条件で10分間攪拌し、乳化させた。得られた乳化
液を250ml容量のメスシリンダーに移し、30分後
に水と油の分離を観察し、液上面から油層下部までの距
離を測定して、分離した油層の量を求めた。比較例とし
て、植物セルロース製剤であるミクロフィブリル化セル
ロース(ダイセル化学株式会社製,商品名:セリッシュ
FD−100F),微結晶セルロース(旭化成工業株式
会社製,商品名:アビセルRC−591」(乾燥粉末
で、カルボキシメチルセルロースナトリウムを11%含
む))も同様に添加した試験区を設けた。以上の結果を
第6表に示した。
【0038】
【表6】第6表
【0039】表から明らかなように、高圧ホモゲナイザ
ー処理物,1N硫酸処理物,超音波処理物では、すぐに
水と油の分離が起こり、乳化できなかった。ミクロフィ
ブリル化セルロース(商品名:セリッシュFD−100
F)と微結晶セルロース(商品名:アビセルRC−59
1)は、油の分離量は少ないが、完全に乳化しなかっ
た。これに対して、6N硫酸処理物だけは、油層の分離
が見られず、乳化安定効果が際立って優れていた。ま
た、静置培養で得た微生物セルロースの各処理物も同様
な結果が得られ、6N硫酸処理物で、優れた乳化安定効
果が示された。
【0040】
【発明の効果】本発明によれば、微生物セルロースに由
来し、低粘度で舌のざらつき感を与えず、また食感に影
響を及ぼさずに十分な分散安定効果を有する食品用のた
めの分散安定用組成物が提供され、カルシウム強化飲
料,ココア飲料,コーヒー飲料,ドレッシング,たれな
どの各種食品の分散性の安定に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 通気攪拌培養で得た微生物セルロースを高圧
ホモゲナイザー処理したものの粒度分布を示した図であ
る。
【図2】 通気攪拌培養で得た微生物セルロースを1N
硫酸で処理したものの粒度分布を示した図である。
【図3】 通気攪拌培養で得た微生物セルロースを6N
硫酸で処理したものの粒度分布を示した図である。
【図4】 静置培養で得た微生物セルロースを高圧ホモ
ゲナイザー処理したものの粒度分布を示した図である。
【図5】 静置培養で得た微生物セルロースを6N硫酸
で処理したものの粒度分布を示した図である。
【図6】 ミクロフィブリル化セルロースの粒度分布を
示した図である。
【図7】 微結晶セルロースの粒度分布を示した図であ
る。
【図8】 スラリー様微結晶セルロースの粒度分布を示
した図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 川村 吉也 愛知県江南市古知野町古渡132 (56)参考文献 特開 平3−163135(JP,A) 特開 平4−325060(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23L 1/04 - 1/09

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アセトバクター属細菌由来のセルロース
    4〜7Nの鉱酸で分解して得られ、平均粒子径が10
    μm以下で、かつ積算体積90%の粒子径が0.1μm
    以上である微粒子化微生物セルロースを含有することを
    特徴とする食品のための分散安定用組成物。
  2. 【請求項2】 鉱酸が硫酸である請求項1記載の組成
    物。
  3. 【請求項3】 アセトバクター属細菌由来のゲル状セル
    ロースを、4〜7Nの鉱酸で110〜130℃にて分解
    することを特徴とする請求項1記載の組成物の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 請求項1記載の微粒子化微生物セルロー
    スを含有する組成物を、食品に対して該微粒子化微生物
    セルロースを乾燥重量で0.01〜0.2%の割合で添
    加してなる分散安定性が改善された食品。
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