JP3506182B2 - 磁気記録媒体の製造方法 - Google Patents
磁気記録媒体の製造方法Info
- Publication number
- JP3506182B2 JP3506182B2 JP31655593A JP31655593A JP3506182B2 JP 3506182 B2 JP3506182 B2 JP 3506182B2 JP 31655593 A JP31655593 A JP 31655593A JP 31655593 A JP31655593 A JP 31655593A JP 3506182 B2 JP3506182 B2 JP 3506182B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- substrate
- magnetic
- recording medium
- magnetic recording
- disk
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Lifetime
Links
Landscapes
- Manufacturing Of Magnetic Record Carriers (AREA)
Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は磁気記録媒体の製造方法
に関するものである。詳しくは、基板上の表面加工処理
を短時間で行なうことで、表面特性を改善し、浮上特
性、潤滑性、及び耐摩耗性に優れた磁気記録媒体を製造
する方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】近年、コンピュータ等の情報処理技術の
発達に伴い、その外部記憶装置として磁気ディスク等の
磁気記録媒体が用いられている。従来、磁気記録媒体と
してはアルミニウム合金基板にアルマイト処理やNi−
Pメッキ等の非磁性メッキ処理を施した後に、Cr等の
下地層を被覆し、次いでCo系合金の磁性薄膜層を被覆
し、更に炭素質の保護膜が被覆されたものが使用されて
いる。 【0003】上記磁気記録媒体(磁気ディスク)の高密
度化に伴ない、磁気ディスクと磁気ヘッドとの間隔、即
ち浮上量は益々小さくなっており、最近では0.15μ
m以下程度になっている。このように磁気ヘッドの浮上
量が著しく小さいため、磁気ディスク面に突起があると
ヘッドクラッシュを招き、ディスク表面を傷つけること
がある。また、ヘッドクラッシュに至らないような微小
な突起でも情報の読み書きの際の種々のエラーの原因と
なりやすい。 【0004】一方、磁気ディスクは大容量化、高密度化
と並行して小型化も進められており、スピンドル回転用
のモーター等も益々小さくなっている。このため、モー
ターのトルクが不足し、磁気ヘッドが磁気ディスク面に
固着したまま浮上しないという現象が生じやすい。この
磁気ヘッドの固着を、磁気ヘッドと磁気ディスク表面と
の接触を小さくすることにより防止する手段として、磁
気ディスクの基板表面に微細な溝を形成する、テクスチ
ャ加工と称する表面加工を施す処理が行なわれている。
また、特開平4−95221号には、テクスチャ加工を
行い、洗浄後、ケミカルエッチングを施すことが提案さ
れている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記テ
クスチャ加工処理のみを用いた場合には、磁気ディスク
の浮上特性の改善は見られるものの、十分であるとは言
いがたい。また、特開平4−95221号に記載されて
いるケミカルエッチングによる方法では、エッチング条
件の選択による加工表面状態の制御がしにくく、また、
エッチング状態が不均一になりやすく、局部的な腐食が
発生しやすいことから、未だ満足できる表面状態のもの
が得られておらず、さらに磁気ディスクの浮上特性を改
善することが望まれている。 【0006】本発明者等は先に、上記した磁気ディスク
における浮上特性を改善すべく鋭意検討し、基板上にテ
クスチャ加工を施した後、該基板表面を酸性の電解液中
で電解処理することにより、基板表面特性が改善され、
上記目的が達成されることを見出し、出願(特願平4−
331665号)した。しかしながら、該方法では磁気
ディスクの浮上特性及び耐摩耗性(CSS特性)等の基
板表面特性が改善されてはいるが、基板表面にピット
(孔食)の発生が見られるという問題点があることが判
明した。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記した
基板表面を酸性溶液中で電解処理する際、基板表面に発
生するピットの生成を抑制すべく鋭意検討を重ねた結
果、基板表面を電解処理する際、該基板に電流が特定の
波形となるように電圧を印加して行なうことにより、上
記問題点が解決できることを見出し、本発明を完成する
に至った。 【0008】すなわち、本発明の要旨は、非磁性基板に
テクスチャ加工を施し、この表面上に下地層及び磁性層
を順次形成する磁気記録媒体の製造方法において、テク
スチャ加工を施した基板表面を、酸性溶液の電解液中
で、該基板に電流が交番波形となるように電圧を印加し
ながら電解処理したのち、下地層及び磁性層を形成する
ことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法に存する。 【0009】以下、本発明につき更に詳細に説明する。
本発明における磁気記録媒体の非磁性基板としては、一
般にアルミニウム合金からなるディスク状基板を所定の
厚さに加工した後、その表面を鏡面加工してから非磁性
金属、例えばNi−P合金、又はNi−Cu−P合金等
を無電解メッキ処理等により約5〜20μmの膜厚の表
面層として形成させたものが用いられる。上記基板の表
面層上にポリッシュ加工を施したものにテクスチャ加工
を施すのが一般的である。ポリッシュ加工は例えば、表
面に遊離砥粒を付着してしみ込ませたポリッシュパッド
の間に基板をはさみこみ、界面活性剤水溶液等の研磨液
を補給しながらポリッシュ加工を行ない、通常2〜5μ
m程度ポリッシュしてその表面を平均表面粗さRaが5
0Å以下、望ましくは30Å以下に鏡面仕上げする。遊
離砥粒としては、代表的には、アルミナ系スラリーのポ
リプラ700やポリプラ103(共に(株)フジミイン
コーポレーテッドの登録商標)、ダイヤモンド系スラリ
ー、SiC系スラリー等が用いられる。ポリッシュパッ
ドとしては、代表的には、Surfin100やSur
finXXX−5(共に(株)フジミインコーポレーテ
ッドの登録商標)等の発泡ウレタン等が用いられる。 【0010】また、テクスチャ加工としては例えば、2
500〜6000#程度のアルミナ砥粒を担持した研磨
テープを加工ローラで上記ポリッシュ加工を施した基板
面に押圧して該基板の円周方向に平均表面粗さRaが2
0Å以上、望ましくは30〜300Å、さらに望ましく
は30〜150Åの範囲の微細な溝もしくは凹凸を精度
よく加工するものであり、このテクスチャ加工により、
磁気ヘッドと磁気記録媒体の吸着が防止でき、且つCS
S特性が改善され、さらに磁気異方性が良好となる。 【0011】本発明においては、テクスチャ加工を施し
た基板表面を、酸性溶液の電解液中で、該基板に電流が
特定の波形となるように電圧を印加しながら電解処理す
る。上記電解液としては、例えば硫酸、硝酸、塩酸、ク
ロム酸、リン酸、シュウ酸、酢酸等の一種又は二種以上
を組合せた0.5〜40重量%、望ましくは1〜30重
量%の範囲の濃度の水溶液が用いられ、特にリン酸が好
適である。電解処理条件としては、液温10〜70℃、
電流密度50mA/cm2 以下、好ましくは0.1〜5
0mA/cm2 、更に好ましくは0.5〜45mA/c
m2 、電解時間1〜400秒、好ましくは2〜200
秒、電気量(電流密度と電解時間の積)10〜1000
mA・秒/cm2 、好ましくは50〜600mA・秒/
cm2 の範囲内で実施される。 【0012】本発明において使用される交番波形電流と
しては、正負の極性、すなわち陽極、陰極の極性を交互
に交換(変換)させて得られる交番波形電流、例えば正
弦波の単相交流、正弦波の三相交流、矩形波、三角波、
台形波等の波形電流が挙げられる。第1図に本発明に用
いられる交番波形電流の一例を示す。第1図Aは正弦
波、Bは矩形波、Cは台形波、Dは三角波を示す。該交
番波形電流の周波数としては、好ましくは0.1〜50
0Hz未満、更に好ましくは0.1〜300Hzの範囲
内で実施される。該交番波形電流を用いた場合における
陽極時電気量(QA)と陰極時電気量(QC)との比
(QA/QC)としては0〜2.0、好ましくは0.8
〜1.5、更に好ましくは0.9〜1.1の範囲であ
る。 【0013】本発明においては、上記した電解処理によ
って、テクスチャ加工後の基板表面のピットの発生を抑
制しつつ、且つ基板表面の突起やバリ等がエッチングに
より除去され、基板表面がなめらかな表面状態となり、
ヘッドの浮上特性やCSS特性が大幅に改善され、且
つ、保磁力等の磁気特性も向上する。また、電解エッチ
ング処理終了後、必要に応じて、下地層及び磁性層積層
に先立って、遊離砥粒をセルロース製不織布等の基材表
面に付着してしみ込ませたもの、あるいはアルミナ等の
砥粒の比較的細かいものを担持したテープ等を基板面に
押圧して再度テクスチャ処理を施す仕上げ処理を行って
もよい。 【0014】上記電解処理を施した基板表面上に第2次
下地層としてクロムをスパッタリングにより形成する。
該クロム下地層の膜厚としては通常50〜2000Åの
範囲である。このような基板のCr下地層上に形成され
る金属磁性薄膜層としては、Co−Cr、Co−Ni、
Co−Cr−X、Co−Ni−X、Co−W−X等で表
わされるCo系合金の磁性薄膜層が好適である。ここで
XとしてはLi,Si,Ca,Ti,V,Cr,Ni,
As,Y,Zr,Nb,Mo,Ru,Rh,Ag,S
b,Hf,Ta,W,Re,Os,Ir,Pt,Au,
La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm、及び、Euより
なる群から選ばれた1種又は2種以上の元素が挙げられ
る。このようなCo系合金からなる金属磁性薄膜層は、
通常スパッタリング等の手段によって基板の下地層上に
被着形成される。該金属磁性薄膜層の膜厚としては、通
常100〜1000Åの範囲とされる。 【0015】上記金属磁性薄膜層上に形成される保護薄
膜層としては炭素質膜が好ましく、炭素質保護薄膜層
は、通常、アルゴン、He等の希ガスの雰囲気下又は少
量の水素の存在下で、カーボンをターゲットとしてスパ
ッタリングによりアモルファス状カーボン膜や水素化カ
ーボン膜等が被着形成される。該保護薄膜層の膜厚は、
通常50〜500Åの範囲とされる。また、保護薄膜層
上に、摩擦係数を小さくするために、更に潤滑膜を形成
させてもよい。 【0016】 【作用】直流電解では基板は常に陽極であり、基板表面
はNi−Pの溶出反応と同時に陽極酸化反応が起こる。
一方、基板に交番波形電流を印加して電解処理する場合
には、基板は電力波形に応じて交互に陽極、陰極を繰り
返す。陽極時の基板表面はNi−Pの溶出反応と同時に
陽極酸化反応が起こり、陰極時の基板表面はH2ガスの
発生反応が起こる。すなわち、交番波形電流電解では陰
極時に基板表面で発生する水素により陽極時に基板表面
で発生する酸素が消費され、直流電解に比べ基板表面が
酸化しにくい。また、陰極時に発生するH2 ガスによる
バブリングによって基板表面近傍の粘性層(Niりん酸
塩の飽和溶液と推測される)の撹拌が行われることか
ら、基板表面のエッチングレートの面内均一化を促進
し、さらにバブリングによる基板表面の洗浄効果が期待
できる。 【0017】 【実施例】次に、実施例により本発明を更に具体的に説
明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施
例によって限定されるものではない。 実施例1〜6 無電解メッキ法によりNi−Pメッキを15μm程度の
厚みで施したアルミニウム合金ディスク状基板の表面
を、ポリッシュ加工により表面平均粗さ(Ra)が約2
0〜30Åの膜面とし、次いで研磨テープを用いたテク
スチャ加工により微細な溝を形成し、更にそのディスク
に遊離砥粒を用いたテクスチャ加工を施す処理を行い、
表面平均粗さ(Ra)約60Å程度の大きさで仕上げ
た。次に10wt.%りん酸水溶液中で、該ディスク基
板に電流が図1矩形波(B)に示す交番波形となるよう
電圧を印加しながら、液温20℃、表1に示した条件下
で電解処理を行った。得られたディスクの表面平均粗さ
は61〜70Åの範囲内であった。次いで該基板の表面
層上に一般的なCr下地膜、Co−Cr−Ta合金から
成る磁性層及びカーボン膜から成る保護膜を、順次スパ
ッタリング被膜して、磁気ディスクを製造した。得られ
たディスクについての表面形状、ピット数、グライド浮
上特性、及び保磁力を下記方法で評価した。その結果を
表2に示す。 【0018】評価方法 表面形状(表面平均粗さ(Ra)、ピークカウント
(Pc)及びSEM評価):先端が0.5μm円錐の触
針を有する表面粗さ計(小坂研究所製「ET−30H
K」)により、計測長250μmで測定した。測定方法
としては基板上の円周部任意の直線上の表面について半
径方向に測定し、表面平均粗さRaを求めた。また、粗
さ曲線の中心線の上側200Åに中心線に平行なカウン
トレベルを設け、計測長250μmでのピークカウント
を測定し、これをPc200とした。 【0019】さらに、走査型電子顕微鏡SEM(日本電
子製JSM−5400)を使用し、拡大倍率5000倍
及び10000倍にて写真撮影し、表面形状を目視観察
した。その際、バリが完全に除去されているものをA、
バリの除去はされているが不完全であり毛羽立ったよう
な表面を呈しているものをB、バリが除去されず多数存
在しているものをCとして評価した。 【0020】基板表面のピット数:ディスクの表面を
走査型電子顕微鏡SEM(日本電子製JSM−540
0)を用いて拡大倍率5000倍及び10000倍にて
観察し、ピットを直径で次に示すように3つに分類し、
それぞれの数の分布によりピットの発生状況を評価し
た。すなわち、電解処理により発生したピットを S;直径が0.1μm未満のピット M;直径が0.1μm以上0.2μm未満の範囲のピッ
ト L;直径が0.2μm以上のピット の3つに分類した。 【0021】グライド浮上特性:日立DECO製RG
550を用いてPZT素子によりヘッドとディスクの突
起の衝突を検出し、外界ヘッド浮上高さとして評価し
た。 保磁力の測定:B−Hメーター(グローリー工業製G
MZ−2)を用いて、ディスク中心からの距離33mm
の位置の保磁力を測定した。 【0022】比較例1〜3 直流電位を用い、表1に示した条件下で電解処理を行っ
たこと以外は、実施例1と同様にして磁気ディスクを製
造し、各特性の評価を行った。結果を表2に示す。 【0023】比較例4 電圧の印加を行わず、リン酸水溶液に5分間浸漬したこ
と以外は、実施例1〜6及び比較例1〜3と同様にして
磁気ディスクを製造し、各特性の評価を行った。結果を
表2に示す。 【0024】比較例5 リン酸水溶液への浸漬処理を行わなかったこと以外は、
比較例4と同様にして磁気ディスクを製造し、各特性の
評価を行った。結果を表2に示す。 【0025】 【表1】 【0026】 【表2】【0027】表2に示された結果により、交流電圧を印
加した実施例1〜6においては、直流電圧を印加した比
較例1〜3に比べて、ピットの発生が著しく抑制されて
おり、電解処理を行わない比較例4及び5に比べて、グ
ライド浮上特性が改善され、また、ディスク表面の異常
突起の大部分が除去されていることがわかる。また、同
一周波数(50Hz)を用いた実施例2〜4を見ると、
電流密度の小さい値を用いたほうが、得られる保磁力の
値が大きくなるという傾向があることがわかる。 【0028】 【発明の効果】本発明の方法で基板の表面処理を行うこ
とにより、浮上特性、潤滑性及び耐摩耗性に優れ、且
つ、基板表面のピット(孔食)の発生が抑制された磁気
記録媒体を提供することができるため、工業的な利用価
値が高い。
に関するものである。詳しくは、基板上の表面加工処理
を短時間で行なうことで、表面特性を改善し、浮上特
性、潤滑性、及び耐摩耗性に優れた磁気記録媒体を製造
する方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】近年、コンピュータ等の情報処理技術の
発達に伴い、その外部記憶装置として磁気ディスク等の
磁気記録媒体が用いられている。従来、磁気記録媒体と
してはアルミニウム合金基板にアルマイト処理やNi−
Pメッキ等の非磁性メッキ処理を施した後に、Cr等の
下地層を被覆し、次いでCo系合金の磁性薄膜層を被覆
し、更に炭素質の保護膜が被覆されたものが使用されて
いる。 【0003】上記磁気記録媒体(磁気ディスク)の高密
度化に伴ない、磁気ディスクと磁気ヘッドとの間隔、即
ち浮上量は益々小さくなっており、最近では0.15μ
m以下程度になっている。このように磁気ヘッドの浮上
量が著しく小さいため、磁気ディスク面に突起があると
ヘッドクラッシュを招き、ディスク表面を傷つけること
がある。また、ヘッドクラッシュに至らないような微小
な突起でも情報の読み書きの際の種々のエラーの原因と
なりやすい。 【0004】一方、磁気ディスクは大容量化、高密度化
と並行して小型化も進められており、スピンドル回転用
のモーター等も益々小さくなっている。このため、モー
ターのトルクが不足し、磁気ヘッドが磁気ディスク面に
固着したまま浮上しないという現象が生じやすい。この
磁気ヘッドの固着を、磁気ヘッドと磁気ディスク表面と
の接触を小さくすることにより防止する手段として、磁
気ディスクの基板表面に微細な溝を形成する、テクスチ
ャ加工と称する表面加工を施す処理が行なわれている。
また、特開平4−95221号には、テクスチャ加工を
行い、洗浄後、ケミカルエッチングを施すことが提案さ
れている。 【0005】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記テ
クスチャ加工処理のみを用いた場合には、磁気ディスク
の浮上特性の改善は見られるものの、十分であるとは言
いがたい。また、特開平4−95221号に記載されて
いるケミカルエッチングによる方法では、エッチング条
件の選択による加工表面状態の制御がしにくく、また、
エッチング状態が不均一になりやすく、局部的な腐食が
発生しやすいことから、未だ満足できる表面状態のもの
が得られておらず、さらに磁気ディスクの浮上特性を改
善することが望まれている。 【0006】本発明者等は先に、上記した磁気ディスク
における浮上特性を改善すべく鋭意検討し、基板上にテ
クスチャ加工を施した後、該基板表面を酸性の電解液中
で電解処理することにより、基板表面特性が改善され、
上記目的が達成されることを見出し、出願(特願平4−
331665号)した。しかしながら、該方法では磁気
ディスクの浮上特性及び耐摩耗性(CSS特性)等の基
板表面特性が改善されてはいるが、基板表面にピット
(孔食)の発生が見られるという問題点があることが判
明した。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記した
基板表面を酸性溶液中で電解処理する際、基板表面に発
生するピットの生成を抑制すべく鋭意検討を重ねた結
果、基板表面を電解処理する際、該基板に電流が特定の
波形となるように電圧を印加して行なうことにより、上
記問題点が解決できることを見出し、本発明を完成する
に至った。 【0008】すなわち、本発明の要旨は、非磁性基板に
テクスチャ加工を施し、この表面上に下地層及び磁性層
を順次形成する磁気記録媒体の製造方法において、テク
スチャ加工を施した基板表面を、酸性溶液の電解液中
で、該基板に電流が交番波形となるように電圧を印加し
ながら電解処理したのち、下地層及び磁性層を形成する
ことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法に存する。 【0009】以下、本発明につき更に詳細に説明する。
本発明における磁気記録媒体の非磁性基板としては、一
般にアルミニウム合金からなるディスク状基板を所定の
厚さに加工した後、その表面を鏡面加工してから非磁性
金属、例えばNi−P合金、又はNi−Cu−P合金等
を無電解メッキ処理等により約5〜20μmの膜厚の表
面層として形成させたものが用いられる。上記基板の表
面層上にポリッシュ加工を施したものにテクスチャ加工
を施すのが一般的である。ポリッシュ加工は例えば、表
面に遊離砥粒を付着してしみ込ませたポリッシュパッド
の間に基板をはさみこみ、界面活性剤水溶液等の研磨液
を補給しながらポリッシュ加工を行ない、通常2〜5μ
m程度ポリッシュしてその表面を平均表面粗さRaが5
0Å以下、望ましくは30Å以下に鏡面仕上げする。遊
離砥粒としては、代表的には、アルミナ系スラリーのポ
リプラ700やポリプラ103(共に(株)フジミイン
コーポレーテッドの登録商標)、ダイヤモンド系スラリ
ー、SiC系スラリー等が用いられる。ポリッシュパッ
ドとしては、代表的には、Surfin100やSur
finXXX−5(共に(株)フジミインコーポレーテ
ッドの登録商標)等の発泡ウレタン等が用いられる。 【0010】また、テクスチャ加工としては例えば、2
500〜6000#程度のアルミナ砥粒を担持した研磨
テープを加工ローラで上記ポリッシュ加工を施した基板
面に押圧して該基板の円周方向に平均表面粗さRaが2
0Å以上、望ましくは30〜300Å、さらに望ましく
は30〜150Åの範囲の微細な溝もしくは凹凸を精度
よく加工するものであり、このテクスチャ加工により、
磁気ヘッドと磁気記録媒体の吸着が防止でき、且つCS
S特性が改善され、さらに磁気異方性が良好となる。 【0011】本発明においては、テクスチャ加工を施し
た基板表面を、酸性溶液の電解液中で、該基板に電流が
特定の波形となるように電圧を印加しながら電解処理す
る。上記電解液としては、例えば硫酸、硝酸、塩酸、ク
ロム酸、リン酸、シュウ酸、酢酸等の一種又は二種以上
を組合せた0.5〜40重量%、望ましくは1〜30重
量%の範囲の濃度の水溶液が用いられ、特にリン酸が好
適である。電解処理条件としては、液温10〜70℃、
電流密度50mA/cm2 以下、好ましくは0.1〜5
0mA/cm2 、更に好ましくは0.5〜45mA/c
m2 、電解時間1〜400秒、好ましくは2〜200
秒、電気量(電流密度と電解時間の積)10〜1000
mA・秒/cm2 、好ましくは50〜600mA・秒/
cm2 の範囲内で実施される。 【0012】本発明において使用される交番波形電流と
しては、正負の極性、すなわち陽極、陰極の極性を交互
に交換(変換)させて得られる交番波形電流、例えば正
弦波の単相交流、正弦波の三相交流、矩形波、三角波、
台形波等の波形電流が挙げられる。第1図に本発明に用
いられる交番波形電流の一例を示す。第1図Aは正弦
波、Bは矩形波、Cは台形波、Dは三角波を示す。該交
番波形電流の周波数としては、好ましくは0.1〜50
0Hz未満、更に好ましくは0.1〜300Hzの範囲
内で実施される。該交番波形電流を用いた場合における
陽極時電気量(QA)と陰極時電気量(QC)との比
(QA/QC)としては0〜2.0、好ましくは0.8
〜1.5、更に好ましくは0.9〜1.1の範囲であ
る。 【0013】本発明においては、上記した電解処理によ
って、テクスチャ加工後の基板表面のピットの発生を抑
制しつつ、且つ基板表面の突起やバリ等がエッチングに
より除去され、基板表面がなめらかな表面状態となり、
ヘッドの浮上特性やCSS特性が大幅に改善され、且
つ、保磁力等の磁気特性も向上する。また、電解エッチ
ング処理終了後、必要に応じて、下地層及び磁性層積層
に先立って、遊離砥粒をセルロース製不織布等の基材表
面に付着してしみ込ませたもの、あるいはアルミナ等の
砥粒の比較的細かいものを担持したテープ等を基板面に
押圧して再度テクスチャ処理を施す仕上げ処理を行って
もよい。 【0014】上記電解処理を施した基板表面上に第2次
下地層としてクロムをスパッタリングにより形成する。
該クロム下地層の膜厚としては通常50〜2000Åの
範囲である。このような基板のCr下地層上に形成され
る金属磁性薄膜層としては、Co−Cr、Co−Ni、
Co−Cr−X、Co−Ni−X、Co−W−X等で表
わされるCo系合金の磁性薄膜層が好適である。ここで
XとしてはLi,Si,Ca,Ti,V,Cr,Ni,
As,Y,Zr,Nb,Mo,Ru,Rh,Ag,S
b,Hf,Ta,W,Re,Os,Ir,Pt,Au,
La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm、及び、Euより
なる群から選ばれた1種又は2種以上の元素が挙げられ
る。このようなCo系合金からなる金属磁性薄膜層は、
通常スパッタリング等の手段によって基板の下地層上に
被着形成される。該金属磁性薄膜層の膜厚としては、通
常100〜1000Åの範囲とされる。 【0015】上記金属磁性薄膜層上に形成される保護薄
膜層としては炭素質膜が好ましく、炭素質保護薄膜層
は、通常、アルゴン、He等の希ガスの雰囲気下又は少
量の水素の存在下で、カーボンをターゲットとしてスパ
ッタリングによりアモルファス状カーボン膜や水素化カ
ーボン膜等が被着形成される。該保護薄膜層の膜厚は、
通常50〜500Åの範囲とされる。また、保護薄膜層
上に、摩擦係数を小さくするために、更に潤滑膜を形成
させてもよい。 【0016】 【作用】直流電解では基板は常に陽極であり、基板表面
はNi−Pの溶出反応と同時に陽極酸化反応が起こる。
一方、基板に交番波形電流を印加して電解処理する場合
には、基板は電力波形に応じて交互に陽極、陰極を繰り
返す。陽極時の基板表面はNi−Pの溶出反応と同時に
陽極酸化反応が起こり、陰極時の基板表面はH2ガスの
発生反応が起こる。すなわち、交番波形電流電解では陰
極時に基板表面で発生する水素により陽極時に基板表面
で発生する酸素が消費され、直流電解に比べ基板表面が
酸化しにくい。また、陰極時に発生するH2 ガスによる
バブリングによって基板表面近傍の粘性層(Niりん酸
塩の飽和溶液と推測される)の撹拌が行われることか
ら、基板表面のエッチングレートの面内均一化を促進
し、さらにバブリングによる基板表面の洗浄効果が期待
できる。 【0017】 【実施例】次に、実施例により本発明を更に具体的に説
明するが、本発明はその要旨を越えない限り以下の実施
例によって限定されるものではない。 実施例1〜6 無電解メッキ法によりNi−Pメッキを15μm程度の
厚みで施したアルミニウム合金ディスク状基板の表面
を、ポリッシュ加工により表面平均粗さ(Ra)が約2
0〜30Åの膜面とし、次いで研磨テープを用いたテク
スチャ加工により微細な溝を形成し、更にそのディスク
に遊離砥粒を用いたテクスチャ加工を施す処理を行い、
表面平均粗さ(Ra)約60Å程度の大きさで仕上げ
た。次に10wt.%りん酸水溶液中で、該ディスク基
板に電流が図1矩形波(B)に示す交番波形となるよう
電圧を印加しながら、液温20℃、表1に示した条件下
で電解処理を行った。得られたディスクの表面平均粗さ
は61〜70Åの範囲内であった。次いで該基板の表面
層上に一般的なCr下地膜、Co−Cr−Ta合金から
成る磁性層及びカーボン膜から成る保護膜を、順次スパ
ッタリング被膜して、磁気ディスクを製造した。得られ
たディスクについての表面形状、ピット数、グライド浮
上特性、及び保磁力を下記方法で評価した。その結果を
表2に示す。 【0018】評価方法 表面形状(表面平均粗さ(Ra)、ピークカウント
(Pc)及びSEM評価):先端が0.5μm円錐の触
針を有する表面粗さ計(小坂研究所製「ET−30H
K」)により、計測長250μmで測定した。測定方法
としては基板上の円周部任意の直線上の表面について半
径方向に測定し、表面平均粗さRaを求めた。また、粗
さ曲線の中心線の上側200Åに中心線に平行なカウン
トレベルを設け、計測長250μmでのピークカウント
を測定し、これをPc200とした。 【0019】さらに、走査型電子顕微鏡SEM(日本電
子製JSM−5400)を使用し、拡大倍率5000倍
及び10000倍にて写真撮影し、表面形状を目視観察
した。その際、バリが完全に除去されているものをA、
バリの除去はされているが不完全であり毛羽立ったよう
な表面を呈しているものをB、バリが除去されず多数存
在しているものをCとして評価した。 【0020】基板表面のピット数:ディスクの表面を
走査型電子顕微鏡SEM(日本電子製JSM−540
0)を用いて拡大倍率5000倍及び10000倍にて
観察し、ピットを直径で次に示すように3つに分類し、
それぞれの数の分布によりピットの発生状況を評価し
た。すなわち、電解処理により発生したピットを S;直径が0.1μm未満のピット M;直径が0.1μm以上0.2μm未満の範囲のピッ
ト L;直径が0.2μm以上のピット の3つに分類した。 【0021】グライド浮上特性:日立DECO製RG
550を用いてPZT素子によりヘッドとディスクの突
起の衝突を検出し、外界ヘッド浮上高さとして評価し
た。 保磁力の測定:B−Hメーター(グローリー工業製G
MZ−2)を用いて、ディスク中心からの距離33mm
の位置の保磁力を測定した。 【0022】比較例1〜3 直流電位を用い、表1に示した条件下で電解処理を行っ
たこと以外は、実施例1と同様にして磁気ディスクを製
造し、各特性の評価を行った。結果を表2に示す。 【0023】比較例4 電圧の印加を行わず、リン酸水溶液に5分間浸漬したこ
と以外は、実施例1〜6及び比較例1〜3と同様にして
磁気ディスクを製造し、各特性の評価を行った。結果を
表2に示す。 【0024】比較例5 リン酸水溶液への浸漬処理を行わなかったこと以外は、
比較例4と同様にして磁気ディスクを製造し、各特性の
評価を行った。結果を表2に示す。 【0025】 【表1】 【0026】 【表2】【0027】表2に示された結果により、交流電圧を印
加した実施例1〜6においては、直流電圧を印加した比
較例1〜3に比べて、ピットの発生が著しく抑制されて
おり、電解処理を行わない比較例4及び5に比べて、グ
ライド浮上特性が改善され、また、ディスク表面の異常
突起の大部分が除去されていることがわかる。また、同
一周波数(50Hz)を用いた実施例2〜4を見ると、
電流密度の小さい値を用いたほうが、得られる保磁力の
値が大きくなるという傾向があることがわかる。 【0028】 【発明の効果】本発明の方法で基板の表面処理を行うこ
とにより、浮上特性、潤滑性及び耐摩耗性に優れ、且
つ、基板表面のピット(孔食)の発生が抑制された磁気
記録媒体を提供することができるため、工業的な利用価
値が高い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で用いられる交番波形電流を示し、Aは
正弦波、Bは矩形波、Cは台形波、Dは三角波を示す。
正弦波、Bは矩形波、Cは台形波、Dは三角波を示す。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(56)参考文献 特開 平5−128506(JP,A)
特開 昭54−101729(JP,A)
特開 平6−231453(JP,A)
特開 平5−2745(JP,A)
特開 平3−5917(JP,A)
特開 平3−120399(JP,A)
特開 平3−82800(JP,A)
特開 昭57−124418(JP,A)
特公 昭55−19191(JP,B2)
特公 昭54−43177(JP,B2)
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 非磁性基板にテクスチャ加工を施し、こ
の表面上に下地層及び磁性層を順次形成する磁気記録媒
体の製造方法において、テクスチャ加工を施した基板表
面を、酸性溶液の電解液中で、該基板に電流が周波数
0.1Hz以上500Hz未満の交番波形電流となるよ
うに電圧を印加しながら電解処理したのち、下地層及び
磁性層を形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造
方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP31655593A JP3506182B2 (ja) | 1993-12-16 | 1993-12-16 | 磁気記録媒体の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP31655593A JP3506182B2 (ja) | 1993-12-16 | 1993-12-16 | 磁気記録媒体の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH07169049A JPH07169049A (ja) | 1995-07-04 |
JP3506182B2 true JP3506182B2 (ja) | 2004-03-15 |
Family
ID=18078408
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP31655593A Expired - Lifetime JP3506182B2 (ja) | 1993-12-16 | 1993-12-16 | 磁気記録媒体の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3506182B2 (ja) |
-
1993
- 1993-12-16 JP JP31655593A patent/JP3506182B2/ja not_active Expired - Lifetime
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH07169049A (ja) | 1995-07-04 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2004133997A (ja) | 磁気テープ | |
JP2006063438A (ja) | ガラス基体へのめっき方法、そのめっき方法を用いる磁気記録媒体用ディスク基板の製造方法及び垂直磁気記録媒体の製造方法 | |
JP2009140584A (ja) | 垂直磁気記録媒体用基板、およびそれを用いた垂直磁気記録媒体 | |
JP2006092721A (ja) | 垂直磁気記録媒体用基板、その製造方法、および垂直磁気記録媒体 | |
US5437779A (en) | Method of making a magnetic record medium | |
JP3506182B2 (ja) | 磁気記録媒体の製造方法 | |
JP5032758B2 (ja) | 磁気ディスク用ガラス基板の製造方法及び磁気ディスクの製造方法 | |
JPH05166176A (ja) | 磁気ディスクの製造方法 | |
JP3386909B2 (ja) | 磁気記録媒体の製造方法 | |
JPH06231453A (ja) | 磁気記録媒体の製造方法 | |
JPH07220268A (ja) | 磁気記録媒体の製造方法 | |
JPH07272265A (ja) | 磁気記録媒体の製造方法 | |
JPH07169050A (ja) | 磁気記録媒体の製造方法 | |
JPH087264A (ja) | 磁気記録媒体及びその製造方法 | |
JP2003173517A (ja) | 磁気記録媒体、その製造方法および媒体基板 | |
JP2004310851A (ja) | 磁気記録媒体、磁気記録再生装置及び情報処理装置 | |
JPH10134346A (ja) | 磁気記録媒体の製造方法 | |
JPH09231561A (ja) | 磁気記録媒体の製造方法 | |
JPH11219520A (ja) | 磁気記録媒体の製造方法 | |
JPH11175968A (ja) | 磁気記録媒体の製造方法 | |
JPH11259857A (ja) | 磁気記録媒体の製造方法 | |
JPH11203672A (ja) | 磁気記録媒体の製造方法 | |
JPH0823935B2 (ja) | 薄膜磁気記録媒体 | |
JPH11175969A (ja) | 磁気記録媒体の製造方法 | |
JPH11296844A (ja) | 磁気ディスク用基板およびその製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20031210 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091226 Year of fee payment: 6 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121226 Year of fee payment: 9 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121226 Year of fee payment: 9 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131226 Year of fee payment: 10 |
|
EXPY | Cancellation because of completion of term |