JP3504418B2 - 光制御方法および光制御装置 - Google Patents

光制御方法および光制御装置

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JP3504418B2
JP3504418B2 JP02641996A JP2641996A JP3504418B2 JP 3504418 B2 JP3504418 B2 JP 3504418B2 JP 02641996 A JP02641996 A JP 02641996A JP 2641996 A JP2641996 A JP 2641996A JP 3504418 B2 JP3504418 B2 JP 3504418B2
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利記 河西
正勝 甲斐
一郎 上野
教雄 田中
茂 宝田
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Dainichiseika Color and Chemicals Mfg Co Ltd
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば光通信、光
情報処理などの光エレクトロニクスおよびフォトニクス
の分野において有用な、光応答性組成物から成る光学素
子を用いる光制御方法および光制御装置に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】超高速情報伝達・処理を目的として、光
の多重性、高密度性に着目した光エレクトロニクスおよ
びフォトニクスの分野において、光学材料または光学組
成物を加工して作成した光学素子に光を照射することで
引き起こされる透過率や屈折率の変化を利用して、電子
回路技術を用いずに、光の強度(振幅)または周波数
(波長)を変調しようとする光・光制御方法の研究開発
が盛んに進められている。また、光の特徴を活かして、
並列光論理演算や画像処理を行おうとする場合、光ビー
ムの断面に光強度分布変化など、何等かの変調を行うた
めの「空間光変調器」が極めて重要であり、ここへも光
・光制御方法の適用が期待される。
【0003】光・光制御方法への応用が期待される現象
としては可飽和吸収、非線形屈折、フォトリフラクティ
ブ効果などの非線形光学効果、およびフォトクロミック
現象が広く注目を集めている。
【0004】一方、第一の波長帯域の光で励起された分
子が、分子構造の変化を伴わずに、第一の波長帯域とは
異なる第二の波長帯域において新たに光吸収を起こす現
象も知られており、これを「励起状態吸収」または「誘
導吸収」、あるいは「過渡吸収」と呼ぶことができる。
【0005】励起状態吸収の応用を試みた例としては、
例えば、特開昭53−137884号公報にはポルフィ
リン系化合物と電子受容体を含んだ溶液または固体に対
して波長の異なる少なくとも二種類の光線を照射し、こ
の照射により一方の波長の光線が有する情報を他方の光
線の波長に移すような光変換方法が開示されている。ま
た、特開昭55−100503号公報および特開昭55
−108603号公報にはポルフィリン誘導体などの有
機化合物の基底状態と励起状態の間の分光スペクトルの
差を利用し、励起光の時間的な変化に対応して伝搬光を
選択するような機能性の液体コア型光ファイバーが開示
されている。また、特開昭63−89805号公報には
光によって励起された三重項状態から更に上位の三重項
状態への遷移に対応する吸収を有するポルフィリン誘導
体などの有機化合物をコア中に含有しているプラスチッ
ク光ファイバーが開示されている。また、特開昭63−
236013号公報にはクリプトシアニンなどのシアニ
ン色素の結晶に第一の波長の光を照射して分子を光励起
した後、第一の波長とは異なる第二の波長の光を前記分
子に照射し、第一の波長の光による光励起状態によって
第二の波長の光の透過または反射をスイッチングするよ
うな光機能素子が開示されている。また、特開昭64−
73326号公報にはポルフィリン誘導体などの光誘起
電子移動物質をマトリックス材料中に分散した光変調媒
体に第一および第二の波長の光を照射して、分子の励起
状態と基底状態の間の吸収スペクトルの差を利用して光
変調するような光信号変調媒体が開示されている。
【0006】これら従来技術で用いられている光学装置
の構成としては、特開昭55−100503号公報、特
開昭55−108603号公報、および特開昭63−8
9805号公報には伝搬光の伝播する光ファイバーを励
起光の光源(例えばフラッシュランプ)の周囲に巻きつ
けるような装置構成が開示されており、特開昭53−1
37884号公報および特開昭64−73326号公報
には光応答性光学素子内部の信号光に相当する光の伝播
している部分全体に信号光の光路とは別の方向から制御
光に相当する光を収束させることなくむしろ投射レンズ
などの手段によって拡散させて照射するような装置構成
が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、以上の
ような従来技術においては、実用に足りる大きさの透過
率変化または屈折率変化を引き起こすためには非常に高
密度の光パワーを必要としたり、光照射に対する応答が
遅かったりするため、実用に至るものは未だ得られてい
ないのが現状である。
【0008】本発明は、上記従来技術の有する課題を解
消し、できる限り低い光パワーで充分な大きさおよび速
度の光応答を光応答性の光学素子から引出すような光制
御方法および光制御装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】[本発明に係る光制御方
法] 上記目的を達成するために、本願の請求項1記載の発明
に係る光制御方法は、光応答性組成物から成る光学素子
に、前記光応答性組成物が感応する波長の制御光を照射
し、制御光とは異なる波長帯域にある信号光の透過率お
よび/または屈折率を可逆的に変化させることにより前
記光学素子を透過する前記信号光の強調変調および/ま
たは光束密度変調を行う光制御方法であって、前記制御
光および前記信号光を各々収束させて前記光学素子へ照
射し、かつ、前記制御光および前記信号光を前記光学素
子中において実質的に同一光路で伝搬させるように、ま
た、前記制御光および前記信号光の光路をそれぞれ配置
し、更に前記光学素子中の前記光応答性組成物を透過し
た後、発散していく信号光光線束を、凸レンズまたは凹
面鏡で受光することによって、前記強度変調および/ま
たは光束密度変調を強く受けた領域の信号光光線束を分
別して取り出すことを特徴とする。
【0010】
【0011】
【0012】請求項に係る光制御方法は、請求項1記
載の光制御方法において、前記光学素子として、色素を
含有した光応答性組成物から成るものを用いることを特
徴とする。
【0013】請求項に係る光制御方法は、請求項1
たは2記載の光制御方法において、前記光学素子とし
て、前記制御光の透過率が多くとも90%以下で、か
つ、前記制御光を照射しない状態での前記信号光の透過
率が少なくとも10%以上となるように調整されたもの
を用い、前記制御光の照射によって、前記光学素子を透
過した前記信号光の透過率が減少する方向の光応答を取
り出すことを特徴とする。
【0014】 [本発明に係る光制御装置] 上記目的を達成するために、本願の請求項4記載の発明
に係る光制御装置は、光応答性組成物から成る光学素子
に、前記光応答性組成物が感応する波長の制御光を照射
し、制御光とは異なる波長帯域にある信号光の透過率お
よび/または屈折率を可逆的に変化させることにより前
記光学素子を透過する前記信号光の強調変調および/ま
たは光束密度変調を行う光制御装置であって、前記制御
光および前記信号光を各々収束させて前記光学素子へ照
射し、かつ、前記制御光および前記信号光を前記光学素
子中において実質的に同一光路で伝搬させるように、ま
た、前記制御光および前記信号光の光路をそれぞれ配置
し、更に前記光学素子中の前記光応答性組成物を透過し
た後、発散していく信号光光線束を、凸レンズまたは凹
面鏡で受光することによって、前記強度変調および/ま
たは光束密度変調を強く受けた領域の信号光光線束を分
別して取り出すことを特徴とする。
【0015】
【0016】
【0017】請求項に係る光制御装置は、請求項
載の光制御装置において、前記光学素子は、色素を含有
した光応答性組成物から成ることを特徴とする。
【0018】請求項に係る光制御装置は、請求項4ま
たは5記載の光制御装置において、前記光学素子は、制
御光の透過率が多くとも90%以下で、かつ、制御光を
照射しない状態での信号光の透過率が少なくとも10%
以上となるように調整され、制御光の照射によって、信
号光の透過率が減少する方向の光応答を取り出すことを
特徴とする。
【0019】請求項に係る光制御装置は、請求項4か
ら6いずれか1つに記載の光制御装置において、前記光
学素子を透過してきた信号光と制御光の混合光を、信号
光と制御光とに分離する手段を有することを特徴とす
る。
【0020】[光応答性組成物]ここで、本発明におけ
る制御光を照射したとき、制御光とは異なる波長帯域に
ある信号光の透過率および/または屈折率を可逆的に可
変させるような光学素子に用いられる光応答性組成物と
しては、公知の種々のものを使用することができる。
【0021】その例を具体的に挙げるならば、例えば、
GaAs、GaAsP、GaAlAs、InP、InS
b、InAs、PbTe、InGaAsP、ZnSeな
どの化合物半導体の単結晶、前記化合物半導体の微粒子
をマトリックス材料中へ分散したもの、異種金属イオン
をドープした金属ハロゲン化物(例えば臭化カリウム、
塩化ナトリウムなど)の単結晶、前記金属ハロゲン化物
(例えば臭化銅、塩化銅、塩化コバルトなど)の微粒子
をマトリックス材料中へ分散したもの、銅などの異種金
属イオンをドープしたCdS、CdSe、CdSeS、
CdSeTeなどのカドミウムカルコゲナイドの単結
晶、前記カドミウムカルコゲナイドの微粒子をマトリッ
クス材料中へ分散したもの、シリコン、ゲルマニウム、
セレン、テルルなどの半導体単結晶薄膜、多結晶薄膜、
ないし多孔質薄膜、シリコン、ゲルマニウム、セレン、
テルルなどの半導体微粒子をマトリックス材料中へ分散
したもの、白金、金、パラジウムなどの貴金属微粒子を
マトリックス材料中へ分散したもの、ルビー、アレキサ
ンドライト、ガーネット、Nd:YAG、サファイア、
Ti:サファイア、Nd:YLFなど、金属イオンをド
ープした宝石に相当する単結晶(いわゆるレーザー結
晶)、金属イオン(例えば鉄イオン)をドープしたニオ
ブ酸リチウム(LiNbO3 )、LiB3 5 、LiT
aO3 、KTiOPO4 、KH2 PO4 、KNbO3
BaB2 2 などの強誘電性結晶、金属イオン(例えば
ネオジウムイオン、エルビウムイオンなど)をドープし
た石英ガラス、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラスその他
のガラスなどのほか、マトリックス材料中に色素を溶解
または分散したものを好適に使用することができる。
【0022】これらの中でも、マトリックス材料中に色
素を溶解または分散したものは、マトリックス材料およ
び色素の選択範囲が広く、かつ光学素子への加工も容易
であるため、本発明で特に好適に用いることができる。
【0023】本発明で用いることのできる色素の具体例
としては、例えば、ローダミンB、ローダミン6G、エ
オシン、フロキシンBなどのキサンテン系色素、アクリ
ジンオレンジ、アクリジンレッドなどのアクリジン系色
素、エチルレッド、メチルレッドなどのアゾ色素、ポル
フィリン系色素、フタロシアニン系色素、3、3’−ジ
エチルチアカルボシアニンヨージド、3、3’−ジエチ
ルオキサジカルボシアニンヨージドなどのシアニン色素
などを好適に使用することができる。
【0024】本発明では、これらの色素を単独で、また
は、2種類以上を混合して使用することができる。
【0025】本発明で用いることのできるマトリックス
材料は、(1)本発明の光制御方式で用いられる光の波
長領域で透過率が高いこと、(2)本発明で用いられる
色素または種々の微粒子を安定性良く溶解または分散で
きること、(3)光学素子としての形態を安定性良く保
つことができること、という条件を満足するものであれ
ば任意のものを使用することができる。
【0026】無機系のマトリックス材料としては、例え
ば金属ハロゲン化物の単結晶、金属酸化物の単結晶、金
属カルコゲナイドの単結晶、石英ガラス、ソーダガラ
ス、ホウケイ酸ガラスなどの他、いわゆるゾルゲル法で
作成される低融点ガラス材料などを使用することができ
る。
【0027】また、有機系のマトリックス材料として
は、例えば種々の有機高分子材料を使用することができ
る。有機高分子材料の具体例としては、ポリスチレン、
ポリ(α−メチルスチレン)、ポリインデン、ポリ(4
−メチル−1−ペンテン)、ポリビニルピリジン、ポリ
ビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニル
ブチラール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、
ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルメチ
ルエーテル、ポリビニルエチルエーテル、ポリビニルベ
ンジルエーテル、ポリビニルメチルケトン、ポリ(N−
ビニルカルバゾール)、ポリ(N−ビニルピロリド
ン)、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、
ポリアクリル酸、ポリアクリロニトリル、ポリメタクリ
ル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル
酸ブチル、ポリメタクリル酸ベンジル、ポリメタクリル
酸シクロヘキシル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル
酸アミド、ポリメタクリロニトリル、ポリアセトアルデ
ヒド、ポリクロラール、ポリエチレンオキシド、ポリプ
ロピレンオキシド、ポリエチレンテレフタレート、ポリ
ブチレンテレフタレート、ポリカーボネイト類(ビスフ
ェノール類+炭酸)、ポリ(ジエチレングリコール・ビ
スアリルカーボネイト)類、6−ナイロン、6、6−ナ
イロン、12−ナイロン、6、12−ナイロン、ポリア
スパラギン酸エチル、ポリグルタミン酸エチル、ポリリ
ジン、ポリプロリン、ポリ(γ−ベンジル−L−グルタ
メート)、メチルセルロース、エチルセルロース、ベン
ジルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロ
キシプロピルセルロース、アセチルセルロース、セルロ
ーストリアセテート、セルローストリブチレート、アル
キド樹脂 (無水フタル酸+グリセリン)、脂肪酸変性
アルキド樹脂(脂肪酸+無水フタル酸+グリセリン)、
不飽和ポリエステル樹脂(無水マレイン酸+無水フタル
酸+プロピレングリコール)、エポキシ樹脂(ビスフェ
ノール類+エピクロルヒドリン)、ポリウレタン樹脂、
フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹
脂、トルエン樹脂、グアナミン樹脂などの樹脂、ポリ
(フェニルメチルシラン)などの有機ポリシラン、有機
ポリゲルマン、およびこれらの共重合・共重縮合体が挙
げられる。また、二硫化炭素、四フッ化炭素、エチルベ
ンゼン、パーフルオロベンゼン、パーフルオロシクロヘ
キサン、トリメチルクロロシランなどの、通常では重合
性のない化合物をプラズマ重合して得た高分子化合物も
使用することができる。
【0028】また、これらの有機高分子化合物に有機色
素や光非線形効果を示す有機低分子化合物の残基をモノ
マー単位の側鎖として、あるいは架橋基として、共重合
モノマー単位として、または、重合開始末端として結合
させたものをマトリックス材料として使用することもで
きる。
【0029】一方、これらのマトリックス材料中へ色素
を溶解または分散させるには公知の方法を用いることが
できる。例えば、色素とマトリックス材料を共通の溶媒
中へ溶解して混合した後、溶媒を蒸発させて除去する方
法、ゾルゲル法で製造する無機系マトリックス材料の原
料溶液へ色素を溶解または分散させてからマトリックス
材料を形成する方法、有機高分子系マトリックス材料の
モノマー中へ、必要に応じて溶媒を用いて、色素を溶解
または分散させてから該モノマーを重合ないし重縮合さ
せてマトリックス材料を形成する方法、色素と有機高分
子系マトリックス材料を共通の溶媒中に溶解した溶液
を、色素および熱可塑性の有機高分子系マトリックス材
料の両方が不溶の溶剤中へ滴下し、生じた沈殿を濾別し
乾燥してから加熱・溶融加工する方法などを好適に用い
ることができる。色素とマトリックス材料の組合せおよ
び加工方法を工夫することで、色素分子を凝集させ、
「H会合体」や「J会合体」などと呼ばれる特殊な会合
体を形成させることができることが知られているが、マ
トリックス材料中の色素分子をこのような凝集状態もし
くは会合状態を形成する条件で使用しても良い。
【0030】また、これらのマトリックッス材料中へ前
記の種々の微粒子を分散させるには公知の方法を用いる
ことができる。例えば、前記微粒子をマトリックス材料
の溶液、または、マトリックス材料の前駆体の溶液に分
散した後、溶媒を除去する方法、有機高分子系マトリッ
クス材料のモノマー中へ、必要に応じて溶媒を用いて、
前記微粒子を分散させてから該モノマーを重合ないし重
縮合させてマトリックス材料を形成する方法、微粒子の
前駆体として、例えば過塩素酸カドミウムや塩化金など
の金属塩を有機高分子系マトリックス材料中に溶解また
は分散した後、硫化水素ガスで処理して硫化カドミウム
の微粒子を、または、熱処理することで金の微粒子を、
それぞれマトリックス材料中に析出させる方法、化学的
気相成長法、スパッタリング法などを好適に用いること
ができる。
【0031】なお、本発明で用いられる光応答性組成物
は、その機能に支障をきたさない範囲において、加工性
を向上させたり、光学素子としての安定性・耐久性を向
上させるため、副成分として公知の酸化防止剤、紫外線
吸収剤、一重項酸素クエンチャ−、分散助剤などを含有
しても良い。
【0032】[光応答性組成物、信号光の波長帯域、お
よび制御光の波長帯域の組合せ]本発明の光制御方法で
利用される光応答性組成物、信号光の波長帯域、および
制御光の波長帯域は、これらの組合わせとして、使用目
的に応じて適切な組合わせを選定し用いることができ
る。
【0033】具体的な設定手順としては、例えば、ま
ず、使用目的に応じて信号光の波長ないし波長帯域を決
定し、これを制御するのに最適な光応答性組成物と制御
光の波長の組合わせを選定すれば良い。または、使用目
的に応じて信号光と制御光の波長の組合わせを決定して
から、この組合わせに適した光応答性組成物を選定すれ
ば良い。
【0034】本発明で用いられる光応答性組成物の組
成、および前記光応答性組成物から成る光学素子中を伝
播する信号光および制御光の光路長については、これら
の組合わせとして、光学素子を透過する制御光および信
号光の透過率を基準にして設定することができる。例え
ば、まず、光応答性組成物の組成の内、少なくとも制御
光あるいは信号光を吸収する成分の濃度を決定し、次い
で、光学素子を透過する制御光および信号光の透過率が
特定の値になるよう光学素子中を伝播する信号光および
制御光の光路長を設定することができる。または、ま
ず、例えば装置設計上の必要に応じて、光路長を特定の
値に設定した後、光学素子を透過する制御光および信号
光の透過率が特定の値になるよう光応答性組成物の組成
を調整することができる。
【0035】本発明は、できる限り低い光パワーで充分
な大きさおよび速度の光応答を光応答性の光学素子から
引出すような光制御方法および光制御装置を提供するこ
とを目的としているが、この目的を達成するために最適
な、光学素子を透過する制御光および信号光の透過率の
値は、それぞれ、次に示す通りである。
【0036】本発明の光制御方法および光制御装置で
は、光学素子を伝播する制御光の透過率が多くとも90
%以下になるよう光応答性組成物中の光吸収成分の濃度
および存在状態の制御、光路長の設定を行うことが推奨
される。
【0037】ここで、制御光の照射によって信号光の透
過率が減少する方向の光応答を利用しようとする場合、
制御光を照射しない状態において、光学素子を伝播する
信号光の透過率が少なくとも10%以上になるよう光応
答性組成物中の光吸収成分の濃度および存在状態の制
御、光路長の設定を行うことが推奨される。
【0038】[光学素子]本発明で用いられる光学素子
の形態は、本発明の光制御装置の構成に応じて、薄膜、
厚膜、板状、ブロック状、円柱状、半円柱状、四角柱
状、三角柱状、凸レンズ状、凹レンズ状、マイクロレン
ズアレイ状、ファイバー状、マイクロチャンネルアレイ
状、および光導波路型などの中から適宜選択することが
できる。本発明で用いられる光学素子の作成方法は、光
学素子の形態および使用する光応答組成物の種類に応じ
て任意に選定され、公知の方法を用いることができる。
【0039】例えば、薄膜状の光学素子を例えば色素と
マトリックス材料から製造する場合、色素およびマトリ
ックス材料を溶解した溶液を例えばガラス板上に塗布
法、ブレードコート法、ロールコート法、スピンコート
法、ディッピング法、スプレー法などの塗工法で塗工す
るか、あるいは、平版、凸版、凹版、孔版、スクリー
ン、転写などの印刷法で印刷すれば良い。この場合、ゾ
ルゲル法による無機系マトリックス材料作成方法を利用
することもできる。
【0040】例えば、用いる有機高分子系マトリックス
材料が熱可塑性の場合、ホットプレス法(特開平4−9
9609号公報)や延伸法を用いても薄膜ないし厚膜状
の膜型光学素子を作成することができる。
【0041】板状、ブロック状、円柱状、半円柱状、四
角柱状、三角柱状、凸レンズ状、凹レンズ状、マイクロ
レンズアレイ状の光学素子を作成する場合は、例えば有
機高分子系マトリックス材料の原料モノマーに色素を溶
解または分散させたものを用いてキャスティング法やリ
アクション・インジェクション・モールド法で成型する
ことができる。また、熱可塑性の有機高分子系マトリッ
クス材料を用いる場合、色素を溶解または分散したペレ
ットまたは粉末を加熱溶融させてから射出成形法で加工
しても良い。
【0042】ファイバー状の光学素子は、例えば、金属
イオンをドープした石英ガラスを溶融延伸してファイバ
ー化する方法、ガラスキャピラリー管の中に有機高分子
系マトリックス材料の原料モノマーに色素を溶解または
分散させたものを流し込むか、または、毛管現象で吸い
上げたものを重合させる方法、または、色素を溶解また
は分散させた熱可塑性の有機高分子系マトリックス材料
の円柱、いわゆるプリフォームをガラス転移温度よりも
高い温度まで加熱、糸状に延伸してから、冷却する方法
などで作成することができる。
【0043】上記のようにして作成したファイバー状の
光学素子を多数束ねて接着ないし融着処理してから薄片
状ないし板状にスライスすることによりマイクロチャン
ネルアレイ型の光学素子を作成することもできる。
【0044】導波路型の光学素子は、例えば、基板上に
作成した溝の中に有機高分子系マトリックス材料の原料
モノマーに色素を溶解または分散させたものを流し込ん
でから重合させる方法、または、基板上に形成した薄膜
状光学素子をエッチングして「コア」パターンを形成
し、次いで、色素を含まないマトリックス材料で「クラ
ッド」を形成する方法によって作成することができる。
【0045】[作用]本発明の光制御方法および光制御
装置では、制御光および信号光をそれぞれ収束させ、か
つ、前記制御光および前記信号光のそれぞれの焦点の近
傍の光子密度が最も高い領域が光学素子中において互い
に重なり合うようにすることにより、前記光学素子の光
応答性組成物中の励起種(例えば色素分子、金属イオン
など)と前記制御光および前記信号光の光子の相互作用
効率を著しく向上させることが可能となり、その結果、
従来に比べ低い光パワーで充分な大きさおよび速度の光
応答を光応答性の光学素子から引出すことが可能にな
る。
【0046】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づき本発明の実施
の形態について説明する。
【0047】〔実施例1〕図1には本実施例の光制御装
置の概略構成が示されている。このような光学装置構成
および配置は、図1に例示するように膜型光学素子8を
用いる場合の他、図2に例示するようにファイバー型光
学素子12を用いる場合にも、光導波路型(図示せ
ず)、マイクロチャンネルアレイ型(図示せず)などの
光学素子を用いる場合にも好適に用いることができる。
【0048】ここで、膜型光学素子8は例えば以下の手
順で作成することができる。すなわち、シアニン色素の
3、3’−ジエチルオキサジカルボシアニンヨージド
(慣用名DODCI、エキシトン社製):23.0mg
およびポリメタクリル酸2−ヒドロキシプロピル:19
77.0mgをアセトン:200mlに溶解し、n−ヘ
キサン:300ml中へかき混ぜながら加えて析出した
沈殿(色素およびポリマーの混合物)を濾別し、n−ヘ
キサンで洗浄してから減圧下乾燥し、粉砕した。得られ
た色素およびポリマーの混合粉末を10-5Pa未満の超
高真空下、100℃で2日間加熱を続け、残留溶媒等の
揮発成分を完全に除去して、光応答性組成物の粉末を得
た。この粉末20mgをスライドガラス(25mm×7
6mm×厚さ1.150mm)およびカバーガラス(1
8mm×18mm×厚さ0.150mm)の間に挟み、
真空下150℃に加熱し、2枚のガラス板を圧着する方
法(真空ホットプレス法)を用いてスライドガラス/カ
バーガラス間に色素/ポリマーの膜(膜厚50μm)を
作成した。なお、色素/ポリマー膜中の色素濃度は、色
素/ポリマー混合物の密度を1.06として計算する
と、2.5×10-2mol/lである。
【0049】以上のようにして作成した膜型光学素子の
透過率スペクトルを図3に示す。この膜の透過率は制御
光の波長(633nm)で38.0%、信号光の波長
(694nm)で90.5%であった。
【0050】図1に概要を例示する本発明の光制御装置
は、制御光の光源1、信号光の光源2、NDフィルター
3、シャッター4、半透過鏡5、光混合器6、集光レン
ズ7、膜型光学素子8、受光レンズ9、波長選択透過フ
ィルター20、光検出器11および22、並びにオシロ
スコープ100から構成される。これらの光学素子ない
し光学部品の内、制御光の光源1、信号光の光源2、光
混合器6、集光レンズ7、膜型光学素子8、受光レンズ
9、および、波長選択透過フィルター20は、図1の装
置構成で本発明の光制御方法を実施するために必須の装
置構成要素である。なお、NDフィルター3、シャッタ
ー4、および半透過鏡5は必要に応じて設けるものであ
り、また、光検出器11および22、並びにオシロスコ
ープ100は、本発明の光制御方法を実施するためには
必要ないが光制御の動作を確認するための電子装置とし
て、必要に応じて用いられる。
【0051】次に、個々の構成要素の特徴ならびに動作
について説明する。
【0052】制御光の光源1にはレーザー装置が好適に
用いられる。その発振波長および出力は、本発明の光制
御方法が対象とする信号光の波長および使用する光応答
性組成物の応答特性に応じて適宜選択される。レーザー
発振の方式については特に制限はなく、発振波長帯域、
出力、および経済性などに応じて任意の形式のものを用
いることができる。また、レーザー光源の光を非線形光
学素子によって波長変換してから使用しても良い。具体
的には例えば、アルゴンイオンレーザー(発振波長45
7.9ないし514.5nm)、ヘリウム・ネオンレー
ザー(633nm)などの気体レーザー、ルビーレーザ
ーやNd:YAGレーザーなどの固体レーザー、色素レ
ーザー、半導体レーザーなどを好適に使用することがで
きる。信号光の光源2にはレーザー光源からのコヒーレ
ント光だけではなく非コヒーレント光を使用することも
できる。また、レーザー装置、発光ダイオード、ネオン
放電管など、単色光を与える光源の他、タングステン電
球、メタルハライドランプ、キセノン放電管などからの
連続スペクトル光を光フィルターやモノクロメーターで
単色化して用いても良い。
【0053】先に述べたように、本発明の光制御方法で
利用される光応答性組成物、信号光の波長帯域、および
制御光の波長帯域は、これらの組合わせとして、使用目
的に応じて適切な組合わせが選定され、用いられる。以
下、信号光の光源2として半導体レーザー(発振波長6
94nm、連続発振出力3mW、ビーム直径8mmのガ
ウスビーム)と、制御光の光源1としてヘリウム・ネオ
ンレーザー(発振波長633nm、ビーム直径1mmの
ガウスビーム)と、前記光応答性組成物からなる膜型光
学素子8と、を用いた場合についての実施例を説明す
る。
【0054】NDフィルター3は必ずしも必要ではない
が、装置を構成する光学部品や光学素子へ必要以上に高
いパワーのレーザー光が入射するのを避けるため、また
は、本発明の光学素子の光応答性能を試験するにあた
り、制御光の光強度を増減するために有用である。但
し、この実施例では後者の目的で数種類のNDフィルタ
ーを交換して使用することとしている。
【0055】シャッター4は、制御光として連続発振レ
ーザーを用いた場合に、これをパルス状に明滅させるた
めに用いられるものであり、本発明の光制御方法を実施
する上で必須の装置構成要素ではない。すなわち、制御
光の光源1がパルス発振するレーザーであり、そのパル
ス幅および発振間隔を制御できる形式の光源である場合
や、適当な手段で予めパルス変調されたレーザー光を光
源1として用いる場合は、シャッター4を設けなくても
良い。
【0056】シャッター4を使用する場合、その形式と
しては任意のものを使用することができ、例えば、オプ
ティカルチョッパ、メカニカルシャッター、液晶シャッ
ター、光カー効果シャッター、ポッケルセルなどを、シ
ャッター自体の作動速度を勘案して適時選択して使用す
ることができる。
【0057】半透過鏡5は、この実施例において、本発
明の光制御方法の作用を試験するにあたり、制御光の光
強度を常時見積もるために用いるものであり、光分割比
は任意に設定可能である。
【0058】光検出器11および22は、本発明の光・
光制御による光強度の変化の様子を電気的に検出して検
証するため、また、本発明の光学素子の機能を試験する
ために用いられる。光検出器11および22の形式は任
意であり、検出器自体の応答速度を勘案して適時選択し
て使用することができ、例えば、光電子増倍管やフォト
ダイオード、フォトトランジスターなどを使用すること
ができる。
【0059】前記光検出器11および22の受光信号は
オシロスコープ100などの他、AD変換器とコンピュ
ーターの組合わせ(図示せず)によってモニターするこ
とができる。
【0060】光混合器6は、前記光学素子中を伝播して
行く制御光および信号光の光路を調節するために用いる
ものであり、本発明の光制御方法および光制御装置を実
施するに当たり重要な装置構成要素の一つである。偏光
ビームスプリッター、非偏光ビームスプリッター、また
はダイクロイックミラーのいずれも使用することがで
き、光分割比についても任意に設定可能である。
【0061】集光レンズ7は、信号光および制御光に共
通の収束手段として、光路が同一になるように調節され
た信号光および制御光を収束させて前記光学素子へ照射
するためのものであり、本発明の光制御方法および光制
御装置の実施に必須な装置構成要素の一つである。な
お、集光レンズ以外の光収束手段については、後の実施
例で述べる。集光レンズの焦点距離、開口数、F値、レ
ンズ構成、レンズ表面コートなどの仕様については任意
のものを適宜使用することができる。
【0062】この実施例では集光レンズ7として、焦点
距離5mm、開口数0.65の顕微鏡用対物レンズを用
いた。
【0063】受光レンズ9は、収束されて光学素子8へ
照射され、透過してきた信号光および制御光を平行ビー
ムまたは収束ビームに戻すための手段であり、この目的
に適合するものであれば、任意の仕様のレンズを用いる
ことができる。また、集光レンズの代りに凹面鏡を用い
ることも可能である。
【0064】波長選択透過フィルター20は、図1の装
置構成で本発明の光制御方法を実施するために必須の装
置構成要素の一つであり、前記光学素子中の同一の光路
を伝播してきた信号光と制御光とから信号光のみを取り
出すための手段の一つとして用いられる。
【0065】波長の異なる信号光と制御光とを分離する
ための手段としては他に、プリズム、回折格子、ダイク
ロイックミラーなどを使用することができる。
【0066】図1の装置構成で用いられる波長選択透過
フィルター20としては、制御光の波長帯域の光を完全
に遮断し、一方、信号光の波長帯域の光を効率良く透過
することのできるような波長選択透過フィルターであれ
ば、公知の任意のものを使用することができる。例え
ば、色素で着色したプラスチックやガラス、表面に誘電
体多層蒸着膜を設けたガラスなどを用いることができ
る。
【0067】以上のような構成要素から成る図1の光学
装置において、光源1から出射された制御光の光ビーム
は、透過率を加減することによって透過光強度を調節す
るためのNDフィルター3を通過し、次いで制御光をパ
ルス状に明滅するためのシャッター4を通過して、半透
過鏡5によって分割される。
【0068】半透過鏡5によって分割された制御光の一
部は光検出器11によって受光される。ここで、光源2
を消灯、光源1を点灯し、シャッター4を開放した状態
において光学素子8への光ビーム照射位置における光強
度と光検出器11の信号強度との関係を予め測定して検
量線を作成しておけば、光検出器11の信号強度から、
光学素子8に入射する制御光の光強度を常時見積もるこ
とが可能になる。この実施例では、NDフィルター3に
よって、膜型光学素子8へ入射する制御光のパワーを
0.5mWないし25mWの範囲で調節した。
【0069】半透過鏡5で分割・反射された制御光は、
光混合器6および集光レンズ7を通って、収束された状
態で光学素子8に照射される。膜型光学素子8を通過し
た制御光の光ビームは、受光レンズ9を通過した後、波
長選択透過フィルター20によって遮断される。
【0070】光源2から出射された信号光の光ビーム
は、前記光混合器6によって、制御光と同一光路を伝播
するよう混合され、集光レンズ7を経由して、膜型光学
素子8に収束・照射され、素子を通過した光は受光レン
ズ9および波長選択透過フィルター20を透過した後、
光検出器22にて受光される。
【0071】図1の光学装置を用いて光・光制御の実験
を行った結果、図4に示すような光強度変化が観測され
た。実験の詳細は以下に述べる通りである。
【0072】まず、制御光の光ビームと信号光の光ビー
ムとが、膜型光学素子8内部の同一領域で焦点Fc を結
ぶように、それぞれの光源からの光路、光混合器6、お
よび集光レンズ7を調節した。なお、前記膜型光学素子
8のカバーガラス側から信号光および制御光が入射し、
スライドガラス基板側から出射するような向きに光学素
子を配置した。次いで、波長選択フィルター20の機能
を点検した。すなわち、光源2を消灯した状態で、光源
1を点灯し、シャッター4を開閉した場合には光検出器
22に応答が全く生じないことを確認した。
【0073】シャッター4を閉じた状態で制御光の光源
1を点灯し、次いで、時刻t1 において光源2を点灯し
光学素子8へ信号光を照射すると、光検出器22の信号
強度はレベルCからレベルAへ増加した。
【0074】時刻t2 においてシャッター4を開放し、
光学素子8内部の信号光が伝播しているのと同一の光路
へ制御光を収束・照射すると光検出器22の信号強度は
レベルAからレベルBへ減少した。この変化の応答時間
は2マイクロ秒未満であった。
【0075】時刻t3 においてシャッター4を閉じ、光
学素子への制御光照射を止めると光検出器22の信号強
度はレベルBからレベルAへ復帰した。この変化の応答
時間は3マイクロ秒未満であった。
【0076】時刻t4 においてシャッター4を開放し、
ついで、時刻t5 において閉じると、光検出器22の信
号強度はレベルAからレベルBへ減少し、次いでレベル
Aへ復帰した。
【0077】時刻t6 において光源2を消灯すると光検
出器22の出力は低下し、レベルCへ戻った。
【0078】以上まとめると、膜型光学素子8へ、入射
パワー0.5mWないし25mWの制御光を図4の11
1に示すような波形で表される光強度の時間変化を与え
て照射したところ、信号光の光強度をモニターして示す
光検出器22の出力波形は図4の222に示すように、
制御光の光強度の時間変化に対応して可逆的に変化し
た。すなわち、制御光の光強度の増減または断続により
信号光の透過を制御すること、すなわち光で光を制御す
ること(光・光制御)、または、光で光を変調すること
(光・光変調)ができることが確認された。
【0079】なお、制御の光の断続に対応する信号光の
光強度の変化の程度は、前記の光検出器22の出力レベ
ルA、BおよびCを用いて次に定義される値ΔT[単位
%]
【数1】ΔT=100[(A−B)/(A−C)] によって定量的に比較することができる。ここで、Aは
制御光を遮断した状態で信号光の光源2を点灯した場合
の光検出器22の出力レベル、Bは信号光と制御光を同
時に照射した場合の光検出器22の出力レベル、Cは信
号光の光源2を消灯した状態の光検出器22の出力レベ
ルである。例えば、光応答が最大の場合、レベルBはレ
ベルCと同一になり、ΔTは最大値100%になる。一
方、光応答が検出されない場合、レベルBはレベルAと
同一となり、ΔTは最小値0%となる。
【0080】膜型光学素子8への制御光入射パワーを
3.0mWから24mWの範囲で変化させて光応答ΔT
の大小を比較したところ表1に掲げるような結果が得ら
れた。すなわち、光源1から光学素子への入射パワーが
5.0mWという比較的小さい値のときでも、ΔT=3
6%という比較的大きな光応答を与えることが判った。
【0081】
【表1】 〔比較例1〕色素を用いずにポリメタクリル酸2−ヒド
ロキシプロピルのみを用いた他は実施例1と同様にして
マトリックス材料単独の薄膜(膜厚50μm)を作成
し、この薄膜について実施例1と同様にして光応答の評
価試験を行ったが、制御光(波長633nm)の光を断
続しても信号光(波長694nm)の光強度は全く変化
しなかった。即ち、マトリックス材料単独では光応答は
全く観測されないことが確認された。従って、実施例1
で観察された光応答は、前記光学素子中に存在する色素
に起因することは明らかである。
【0082】〔実施例2〕本発明の光制御方法および光
制御装置において光応答を大きくするためには前記制御
光および前記信号光を各々収束させて前記光学素子へ照
射し、かつ、前記制御光および前記信号光のそれぞれの
焦点の近傍の光子密度が最も高い領域が前記光学素子中
において互いに重なり合うように前記制御光および前記
信号光の光路をそれぞれ配置すれば良いが、そのために
は信号光および制御光を実質的に同一光路で伝播させる
ことが好ましい。なお、前記制御光および前記信号光の
電場の振幅分布がガウス分布となっているガウスビーム
の場合、集光レンズ7などで、開き角2θで収束させた
ときの焦点Fc 近傍におけるビームおよび波面30の様
子を図10に示す。ここで、波長λのガウスビームの直
径2ω0 が最小になる位置、すなわちビームウエストの
半径ω0 は次の式で表される。
【0083】
【数2】ω0 = λ/(π・θ) 例えば、実施例1で用いた集光レンズ(焦点距離5m
m、開口数0.65)で波長633nm、ビーム直径1
mmの制御光を収束したときのビームウエストの半径は
2.02μm、同様にして波長694nm、ビーム直径
8mmの信号光を収束したときのビームウエストの半径
は0.327μm(ほぼ回折限界)と計算される。
【0084】図5に示すように、信号光および制御光が
「実質的に同一光路」と看做すことができるのは次のよ
うな場合である: 1)制御光と信号光の光軸が互いに平行であって、制御
光の光路、例えば断面L02(半径r2 )の中に信号光の
光路、例えば断面L+1、L01、またはL-1(半径r1
1 ≦r2 )が重なって伝搬する場合、 2)制御光と信号光の光軸が互いに平行であって、信号
光の光路、例えば断面L02(半径r2 )の中に制御光の
光路、例えば断面L+1、L01、またはL-1(半径r1
1 ≦r2 )が重なって伝搬する場合、 3)制御光と信号光の光軸が互いに平行(光軸間の距離
+1、l-1、またはl+1+l-1)であって、制御光の光
路が断面L+1、L01、またはL-1のいずれか、信号光の
光路も断面L+1、L01、またはL-1のいずれかである場
合。
【0085】以下の表2のデータは、一例として、実施
例1の装置において、信号光の光路を断面L02(直径8
mm)に固定し、断面L+1、L01、またはL-1(直径1
mm)の制御光の光路(光軸)を光軸間の距離l+1また
はl-1として0.9ないし1.2mm平行移動した場合
の、信号光・光応答の大きさ△Tの変化を示したもので
ある。
【0086】
【表2】 信号光および制御光の光軸が完全に一致している場合の
光応答が最大であるが、光軸間の距離l+1またはl-1
±0.6mm程度ずれても、光応答の大きさ△Tは7ポ
イントほど変化するにすぎない。
【0087】即ち、収束された信号光および制御光のそ
れぞれの焦点の近傍の光子密度が最も高い領域(ビーム
ウエスト)が前記光学素子中において互いに重なり合う
ように前記制御光および前記信号光の光路がそれぞれ配
置され、これらの領域の重なりあいが最大になったと
き、すなわち、前記制御光および前記信号光の光軸が完
全に一致したとき前記光応答は最大になること、前記制
御光および前記信号光の光路が実質的に同一のとき、充
分大きな光応答が得られることが判った。
【0088】〔実施例3〕実施例1および2の装置配置
(図1)においては膜型光学素子8を透過した信号光の
ビームを受光レンズで平行ビームに戻して、信号光の光
束のすべてが光検出器22へ入射するよう調節してい
る。このような装置・光学部品配置においては前述のよ
うに、前記光学素子を透過した前記信号光強度が減少す
る方向の光応答222が観察される。
【0089】ここで、光応答性光学素子を透過した信号
光の光束の一部分、例えば、光束の中心部分(ビーム半
径の数割程度)のみを検出器22へ入射するように装置
を調整すると、以下に述べるように、前記制御光による
前記信号光の光束密度変調、特に、信号光の照射に対応
して信号光のみかけの強度が増大する方向の光応答22
3を取り出すことが可能になる。
【0090】光検出器22への入射光量を制限し、信号
光の一部分、例えば中心部分だけが入射するようにする
ためには、図6に示すように、次のような方法がある: 1)集光レンズ7と光応答性薄膜8の距離d78を変化さ
せる。
【0091】2)受光レンズ9と光応答性薄膜8の距離
89を変化させる。
【0092】3)絞り19を用いる。
【0093】制御光の照射によって、信号光の屈折率が
変化して、ビーム中心部分の光束密度が高まれば、検出
器22の信号強度は増大する。即ち、制御光の照射によ
って、「みかけの透過率」が増大する方向の光応答が観
測される。
【0094】例えば、実施例1の装置配置および諸条件
において、まず、受光レンズ9と膜型光学素子8との距
離d89を変えて、膜型光学素子8を透過した信号光の光
束の中心部分(ビーム半径の約30%)のみが光検出器
22へ入射するよう調節した。次いで、集光レンズ7お
よび受光レンズ9の間隔を固定したまま、膜型光学素子
8と集光レンズ7の距離d78を変化させ、同一の光路で
収束された制御光および信号光の焦点位置と膜型光学素
子8との位置関係を変化させたところ、膜型光学素子8
を、上記の透過率低下方向の光応答性が最も大きく観測
される位置を基準として、集光レンズ7側へ0.1mm
近づけた位置、および集光レンズ7側から1.2mm遠
ざけた位置で、信号光の強度が増大する方向の光応答が
観測された。なお、ここでは前記膜型光学素子8のカバ
ーガラス側から信号光および制御光が入射し、スライド
ガラス基板側から出射するような向きに光学素子を配置
した。
【0095】更にここで、同一の光路で収束された制御
光と信号光の焦点位置と光学素子の位置関係を変化させ
る方法としては、例えば精密ねじによる微動機構を設け
た架台、圧電素子アクチュエータを設けた架台、または
超音波アクチュエータを設けた架台などの上に膜型光学
素子8を取り付けて上記のように移動させる他、集光レ
ンズ7の材質に非線形屈折率効果の大きいものを用いて
制御光パルスのパワー密度を変えて焦点位置を変化させ
る方法、集光レンズ7の材質に熱膨張係数の大きいもの
を用いて加熱装置で温度を変えて焦点位置を変化させる
方法などを用いることができる。
【0096】〔実施例4〕図7には本実施例の光制御装
置の概略構成が示されている。このような光学装置構成
および配置は、図7に例示するような膜型光学素子8の
他に、ファイバー型、光導波路型、マイクロチャンネル
アレイ型などの光学素子を用いる場合にも好適に用いる
ことができる。
【0097】光源1および2、NDフィルター3、シャ
ッター4、光検出器11および22、膜型光学素子8、
波長選択フィルター20、およびオシロスコープ100
については実施例1(図1)と同様のものを同様にして
用いた。
【0098】図7に示すような配置でダイクロイックミ
ラー21を用いることで、制御光を分割して、その光強
度を光検出器11でモニターすると同時に、制御光と信
号光の光路を重ね合わせることができ、図1の配置で必
要な光混合器6を省略することができる。ただし、図7
の配置においては、ダイクロイックミラー21の波長選
択透過および反射を補完するために、信号光を完全に遮
断し制御光だけを透過させるような波長選択透過フィル
ター10を光検出器11の前に設けることが好ましい。
また、信号光および/または制御光が光源1および2へ
戻り、光源装置に悪影響を与えるのを避けるため、必要
に応じて、光アイソレーター13および14を、それぞ
れ光源1および2の前に設けても良い。
【0099】光路を一致させた信号光および制御光を一
緒に収束させて膜型光学素子8へ照射する際の光収束手
段として、集光レンズ7および受光レンズ9の代りに、
図7のような配置において凹面鏡15を用いることがで
きる。信号光と制御光に共通の収束手段としてレンズを
用いる場合、厳密には波長によって焦点距離が異なると
いう問題が生じるが、凹面鏡ではその心配がない。
【0100】図7に例示するような、本発明の光制御装
置において必須の装置構成要素は光源1および2、ダイ
クロイックミラー21、波長選択透過フィルター20、
凹面鏡15、および膜型光学素子8である。
【0101】なお、図7におけるダイクロイックミラー
21の代りに偏光または非偏光のビームスプリッターを
用いることもできる。
【0102】本発明の光制御方法を図7に示すような装
置で行う場合の手順として、まず、制御光(光源1)と
信号光(光源2)の光路が一致し、共通の焦点(ビーム
ウエスト)位置に光学素子8が配置されるよう調節を行
い、次いで、ダイクロイックミラー21ならびに波長選
択透過フィルター10および20の機能を点検するた
め、光源1と2を交互に点灯し、光源1のみ点灯(シャ
ッター4開放)したとき光検出器22に応答がないこ
と、および光源2のみを点灯したとき光検出器11に応
答がないことを確認した。
【0103】以下、実施例1の場合と同様にして、前記
膜型光学素子8を用いた光・光制御方法を実施し、実施
例1の場合と同等の実験結果を得た。
【0104】〔実施例5〕図8には本実施例の光制御装
置の概略概要が示されている。図1、図2、および図7
に例示した装置構成では、信号光と制御光を同じ方向か
ら光応答性光学素子へ照射させているのに比較して、図
8では信号光と制御光を反対方向から、光軸を一致させ
て同一の焦点で収束するように照射している点に特徴が
ある。
【0105】このような光学装置構成および配置は、図
8に例示するような膜型光学素子8の他に、ファイバー
型、光導波路型、マイクロチャンネルアレイ型などの光
学素子を用いる場合にも好適に用いることができる。
【0106】図8に例示する装置構成において光源1お
よび2、NDフィルター3、シャッター4、集光レンズ
7、膜型光学素子8、波長選択透過フィルター10およ
び20、光検出器11および22、光アイソレーター1
3および14、およびオシロスコープ100については
実施例1(図1)および/または実施例4(図7)と同
様のものを同様にして用いることができる。
【0107】図8に示すような配置で2枚のダイクロイ
ックミラー(23および24)を用いることで、信号光
と制御光を反対方向から、光軸を一致させて同一の焦点
で収束するように照射することができる。なお、2つの
集光レンズ7は、光学素子を透過してきた制御光および
信号光をそれぞれ平行ビームへ戻すための受光レンズ9
としての役割を兼ねている。
【0108】図8に例示するような、本発明の光制御装
置において必須の装置構成要素は光源1および2、2枚
のダイクロイックミラー(23および24)、波長選択
透過フィルター10および20、2つの集光レンズ7、
および膜型光学素子8である。
【0109】なお、図8におけるダイクロイックミラー
(23および24)の代りに偏光または非偏光ビームス
プリッターを用いることもできる。
【0110】本発明の光制御方法を図8に示すような装
置で行う場合の手順として、まず、制御光(光源1)と
信号光(光源2)の光路が一致し、共通の焦点位置に光
学素子8が配置されるよう調節を行い、次いで、波長選
択透過フィルター10および20の機能を点検するた
め、光源1と2を交互に点灯し、光源1のみ点灯(シャ
ッター4開放)したとき光検出器22に応答がないこ
と、および光源2のみを点灯したとき光検出器11に応
答がないことを確認した。
【0111】以下、実施例1の場合と同様にして、前記
膜型光学素子8を用いた光・光制御方法を実施し、実施
例1の場合と同等の実験結果を得た。
【0112】〔比較例2〕従来の技術に基づく比較実験
を行うため、特開昭53−137884号公報、特開昭
63−231424号公報、および特開昭64−733
26号公報の記述に従い、図9に概要を示すような構成
の装置を用い、光制御を試みた。すなわち、光路長1c
mの石英製溶液セル17に絞り19を通した信号光の光
源2からの半導体レーザー光(波長694nm)を照射
し、透過した光を波長選択透過フィルター20を経由し
て光検出器22で受光し、一方、溶液セル17を透過す
る信号光の光路全体に、信号光に直交する方向から制御
光を、投射レンズ16を用いて拡散させて照射した。図
9の装置構成において、信号光の光源1(波長633n
m)、NDフィルター3、シャッター4、半透過鏡5、
および、光検出器11の役割および仕様は実施例1の場
合と同様である。なお、波長選択透過フィルター20は
溶液セル17から散乱してくる制御光が光検出器22に
入射するのを防ぐものであり、実施例1で用いたのと同
様のものを用いることができる。
【0113】色素としては実施例1と同様にシアニン色
素DODCIを用い、まず、メタノール溶液を溶液セル
17に充填して試験した。色素濃度については、光路長
の相違、すなわち実施例1の場合の光路長50μmに対
して200倍の光路長1cmであることを勘案し、実施
例1の場合の200分の1の濃度(1.25×10-4
ol/l)に設定し、実効的な透過率が実施例1の場合
と同等になるよう調節した。実施例1の場合と同様に、
NDフィルター3によって、光学素子(溶液セル17)
へ入射する制御光のパワーを0.5mWないし25mW
の範囲で調節し、制御光をシャッター4を用いて明滅さ
せた。しかしながら、制御光のパワーを最大にしても光
検出器22へ入射する信号光の強度は全く変化しないと
いう結果が得られた。すなわち、制御光のパワーを0.
5mWないし25mWの範囲で調節した限りでは、図9
の装置構成・装置配置において光・光制御は実現できな
かった。
【0114】次いで、溶液試料の代りに、固体素子とし
て、シアニン色素DODCIを濃度1.25×10-4
ol/lでメタクリル酸2−ヒドロキシプロピル・モノ
マー中へ溶解し、モノマーを重合させて直方体型光学素
子(光路長1cm)に加工したものを溶液セル17の代
わりに置いて、溶液試料の場合と同様に試験した。その
結果、固体素子を用いた場合も、制御光のパワーを0.
5mWないし25mWの範囲で調節した限りでは、図9
の装置構成・装置配置において光・光制御は実現できな
いことが確認された。
【0115】〔実施例6〕実施例1の場合と同様に、図
1に例示するような装置構成、制御光の光源1としてヘ
リウム・ネオンレーザー(波長633nm)、信号光の
光源2として半導体レーザー(波長694nm)、集光
レンズ7として、焦点距離5mm、開口数0.65の顕
微鏡用対物レンズを用い、種々透過率を変えて作成した
膜型光学素子8を用いて、光学素子の透過率と光応答の
大きさΔTの関係を調べた。なお、制御光のパワーは1
0mWとし、制御光の照射によって信号光の透過率が減
少する方向の光応答の大きさを測定した。
【0116】膜型光学素子8の試料は実施例1に例示し
たのと同様な方法で作成した。ただし、色素としてDO
DCIのアニオン部分(I- )をテトラフルオロボラー
ト(BF4 - )に変えたものを用い、色素濃度は2.5
×10-2mol/lとし、色素/ポリマー膜の膜厚を2
0μmから100μmの範囲で変えて透過率の異なるも
のを作成して試料とした。
【0117】制御光および信号光それぞれの透過率、お
よび、信号光の透過率が減少する方向の光応答の大きさ
ΔTの測定結果は表3に掲げる通りであった。
【0118】
【表3】 いずれの試料においても信号光(694nm)の透過率
は90ないし91%であったが、制御光(633nm)
の透過率を18%ないし70%の範囲で変えた場合、制
御光の透過率が小さい程、すなわち制御光の波長におけ
る光吸収が大きい程、信号光の透過率が減少する方向の
光応答ΔTが大きくなることが確認された。
【0119】なお、試料の膜厚を更に薄くして、制御光
の透過率90%の場合について試験したが、光応答は僅
かに検出されるものの、定量的測定は困難であった。
【0120】〔実施例7〕実施例6の場合と同様にし
て、種々透過率を変えて作成した膜型光学素子8を用い
て、光学素子の透過率と光応答の大きさΔTの関係を調
べた。
【0121】但し、色素としてシアニン色素のクリプト
シアニン(東京化成製)を用い、色素/ポリマー膜の膜
厚は約50μmとし、色素濃度を1×10-3mol/l
ないし2.5×10-2mol/lの範囲で変えて透過率
の異なるものを作成して試料とした。また、信号光の光
源2として発振波長830nmの半導体レーザー(連続
発振出力2W、ビーム直径6mmのガウスビーム)を用
いた。
【0122】制御光および信号光それぞれの透過率、お
よび、信号光の透過率が減少する方向の光応答の大きさ
ΔTの測定結果は表4に掲げる通りであった。
【0123】
【表4】 いずれの試料においても制御光(633nm)の透過率
は0.02%以下であったが、信号光(830nm)の
透過率を6%ないし80%の範囲で変えた場合、信号光
の透過率が大きい程、すなわち信号光の波長における光
吸収が小さい程、信号光の透過率が減少する方向の光応
答ΔTが大きくなることが確認された。なお、信号光の
透過率6%の場合、光応答は検出限界未満であった。
【0124】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明の
光制御方法および光制御装置によれば、例えば、可視領
域にあるレーザー光を制御光として、近赤外線領域にあ
る信号光を効率良く変調することが、極めて単純な光学
装置によって、電子回路などを一切用いることなく、実
用上充分な応答速度において実現可能になる。
【0125】また、本発明の光制御方法および光制御装
置を用いた可視光線レーザーによる近赤外線レーザーの
直接変調は、例えば、ポリメチルメタクリレート系プラ
スチック光ファイバー中を伝搬させるのに適した可視光
線レーザーによって、空気中を伝搬させるのに適した近
赤外線レーザーを直接変調するような用途において極め
て有用である。また、例えば光コンピューティングの分
野において新しい光演算方式を開発する上で役立つと期
待される。
【0126】更に、本発明の光制御方法および光制御装
置によれば、光学素子として色素をマトリックス材料中
に溶解または分散させた光応答性組成物から成る光学素
子を用いることができ、前記光学素子に用いられる材料
の選択範囲を広げ、かつ光学素子への加工を容易にし、
産業界への利用の道を広く拓くことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を実施する際に用いられる装置構成を
例示した構成図である。
【図2】 本発明を実施する際に用いられる装置構成を
例示した構成図である。
【図3】 実施例1の膜型光学素子の透過率スペクトル
である。
【図4】 制御光および信号光の光強度時間変化を例示
した図である。
【図5】 制御光および信号光の光路(および光軸)の
関係を例示した図である。
【図6】 本発明を実施する際に用いられる装置構成を
例示した構成図である。
【図7】 本発明を実施する際に用いられる装置構成を
例示した構成図である。
【図8】 本発明を実施する際に用いられる装置構成を
例示した構成図である。
【図9】 従来技術で用いられている装置構成を例示し
た構成図である。
【図10】 集光レンズなどで収束されたガウスビーム
の焦点近傍における様子を表した模式図である。
【符号の説明】
1 制御光の光源、2 信号光の光源、3 NDフィル
ター、4 シャッター、5 半透過鏡、6 光混合器、
7 集光レンズ、8 膜型光学素子、9 受光レンズ、
10 波長選択透過フィルター(信号光遮断用)、11
光検出器、12 ファイバー型光学素子、13 光ア
イソレーター(制御光用)、14 光アイソレーター
(信号光用)、15 凹面鏡、16 投射レンズ、17
溶液セル(または固体素子)、19 絞り、20 波
長選択透過フィルター(制御光遮断用)、21 ダイク
ロイックミラー、22 光検出器(信号光の光強度検出
用)、23および24 ダイクロイックミラー、30
波面、100 オシロスコープ、111 光検出器11
からの信号(制御光の光強度時間変化曲線)、222お
よび223 光検出器22からの信号(信号光の光強度
時間変化曲線)、A制御光を遮断した状態で信号光の光
源を点灯した場合の光検出器22の出力レベル、B 信
号光の光源を点灯した状態で制御光を照射した場合の光
検出器22の出力レベル、C 信号光を消灯した状態の
光検出器22の出力レベル、d78 集光レンズ7と膜型
光学素子8の距離、d89 光制御素子8と受光レンズ9
の距離、Fc 焦点、L01,L+1,L-1およびL02
号光または制御光の光ビーム断面、l+1およびl-1
号光または制御光の光軸の平行移動距離、r1 信号光
または制御光の光ビーム断面L01,L+1またはL-1の半
径、r2 信号光または制御光の光ビーム断面L02の半
径、t1 信号光の光源を点灯した時刻、t2 制御光を
遮断していたシャッターを開放した時刻、t3 制御光
をシャッターで再び遮断した時刻、t4 制御光を遮断
したシャッターを開放した時刻、t5 制御光をシャッタ
ーで再び遮断した時刻、t6 信号光の光源を消灯した
時刻、θ 集光レンズで収束させた光ビームの外周部が
光軸となす角度、ω0 集光レンズで収束させたガウス
ビームのビームウエスト(焦点位置におけるビーム半
径)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 甲斐 正勝 神奈川県横浜市神奈川区守屋町3丁目12 番地 日本ビクター株式会社内 (72)発明者 上野 一郎 神奈川県横浜市神奈川区守屋町3丁目12 番地 日本ビクター株式会社内 (72)発明者 田中 教雄 東京都足立区堀之内1丁目9番4号 大 日精化工業株式会社 東京製造事業所内 (72)発明者 宝田 茂 東京都足立区堀之内1丁目9番4号 大 日精化工業株式会社 東京製造事業所内 (56)参考文献 特開 平6−118459(JP,A) 特開 昭61−129621(JP,A) Wuli Xuebao,1995年 3 月,Vol.44,No.3,419−426 Applied Spectrosc opy ,1994年,Vol.48,No. 12,1506−1512 Pure Applied Opti cs,1994年,No.3,339−351 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02F 1/35 G02F 1/19 G02F 1/17 JICSTファイル(JOIS)

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 光応答性組成物から成る光学素子に、前
    記光応答性組成物が感応する波長の制御光を照射し、制
    御光とは異なる波長帯域にある信号光の透過率および/
    または屈折率を可逆的に変化させることにより前記光学
    素子を透過する前記信号光の強調変調および/または光
    束密度変調を行う光制御方法であって、前記制御光およ
    び前記信号光を各々収束させて前記光学素子へ照射し、
    かつ、前記制御光および前記信号光を前記光学素子中に
    おいて実質的に同一光路で伝搬させるように、また、前
    記制御光および前記信号光の光路をそれぞれ配置し、 更に前記光学素子中の前記光応答性組成物を透過した
    後、発散していく信号光光線束を、凸レンズまたは凹面
    鏡で受光することによって、 前記強度変調および/または光束密度変調を強く受けた
    領域の信号光光線束を分別して取り出すことを特徴とす
    る光制御方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の光制御方法において、前
    記光学素子として、色素を含有した光応答性組成物から
    成るものを用いることを特徴とする光制御方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載の光制御方法にお
    いて、前記光学素子として、前記制御光の透過率が多く
    とも90%以下で、かつ、前記制御光を照射しない状態
    での前記信号光の透過率が少なくとも10%以上となる
    ように調整されたものを用い、前記制御光の照射によっ
    て、前記光学素子を透過した前記信号光の透過率が減少
    する方向の光応答を取り出すことを特徴とする光制御方
    法。
  4. 【請求項4】 光応答性組成物から成る光学素子に、前
    記光応答性組成物が感応する波長の制御光を照射し、制
    御光とは異なる波長帯域にある信号光の透過率および/
    または屈折率を可逆的に変化させることにより前記光学
    素子を透過する前記信号光の強調変調および/または光
    束密度変調を行う光制御装置であって、前記制御光およ
    び前記信号光を各々収束させて前記光学素子へ照射し、
    かつ、前記制御光および前記信号光を前記光学素子中に
    おいて実質的に同一光路で伝搬させるように、また、前
    記制御光および前記信号光の光路をそれぞれ配置し、 更に前記光学素子中の前記光応答性組成物を透過した
    後、発散していく信号光光線束を、凸レンズまたは凹面
    鏡で受光することによって、 前記強度変調および/または光束密度変調を強く受けた
    領域の信号光光線束を分別して取り出すことを特徴とす
    る光制御装置。
  5. 【請求項5】 請求項4記載の光制御装置において、前
    記光学素子は、色素を含有した光応答性組成物から成る
    ことを特徴とする光制御装置。
  6. 【請求項6】 請求項4または5記載の光制御装置にお
    いて、前記光学素子は、制御光の透過率が多くとも90
    %以下で、かつ、制御光を照射しない状態での信号光の
    透過率が少なくとも10%以上となるように調整され、
    制御光の照射によって、信号光の透過率が減少する方向
    の光応答を取り出すことを特徴とする光制御装置。
  7. 【請求項7】 請求項4から6いずれか1項に記載の光
    制御装置において、前記光学素子を透過してきた信号光
    と制御光の混合光を、信号光と制御光とに分離する手段
    を有することを特徴とする光制御装置。
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