JP3471188B2 - 光制御方法および光制御装置 - Google Patents

光制御方法および光制御装置

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JP3471188B2
JP3471188B2 JP06777497A JP6777497A JP3471188B2 JP 3471188 B2 JP3471188 B2 JP 3471188B2 JP 06777497 A JP06777497 A JP 06777497A JP 6777497 A JP6777497 A JP 6777497A JP 3471188 B2 JP3471188 B2 JP 3471188B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば光通信、光
情報処理などの光エレクトロニクスおよびフォトニクス
の分野において有用な、光応答性組成物からなる光学素
子を用いる光制御方法および光制御装置に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】超高速情報伝達・処理を目的として、光
の多重性、高密度性に着目した光エレクトロニクスおよ
びフォトニクスの分野において、光学材料または光学組
成物を加工して作成した光学素子に光を照射することで
引き起こされる透過率や屈折率の変化を利用して、電子
回路技術を用いずに、光の強度(振幅)または周波数
(波長)を変調しようとする光・光制御方法の研究開発
が盛んに進められている。また、光の特徴を活かして、
並列光論理演算や画像処理を行おうとする場合、光ビー
ムの断面に光強度分布変化など、何等かの変調を行うた
めの「空間光変調器」が極めて重要であり、ここへも光
・光制御方法の適用が期待される。
【0003】光・光制御方法への応用が期待される現象
としては可飽和吸収、非線形屈折、フォトリフラクティ
ブ効果などの非線形光学効果、およびフォトクロミック
現象が広く注目を集めている。
【0004】一方、第一の波長帯域の光で励起された分
子が、分子構造の変化を伴わずに、第一の波長帯域とは
異なる第二の波長帯域において新たに光吸収を起こす現
象も知られており、これを「励起状態吸収」または「誘
導吸収」、あるいは「過渡吸収」と呼ぶことができる。
【0005】励起状態吸収の応用を試みた例としては、
例えば、特開昭53−137884号公報にはポルフィ
リン系化合物と電子受容体を含んだ溶液または固体に対
して波長の異なる少なくとも二種類の光線を照射し、こ
の照射により一方の波長の光線が有する情報を他方の光
線の波長に移すような光変換方法が開示されている。ま
た、特開昭55−100503号公報および特開昭55
−108603号公報にはポルフィリン誘導体などの有
機化合物の基底状態と励起状態の間の分光スペクトルの
差を利用し、励起光の時間的な変化に対応して伝搬光を
選択するような機能性の液体コア型光ファイバーが開示
されている。また、特開昭61−129621号公報に
は、酸化ウラニウムをドープしたバリウムクラウンガラ
スからなるファイバーに、第一光子束を減衰しないよう
に導入し、第二光子束を導入することにより第一光子束
を減衰させると共に、ファイバーのエネルギーレベル2
をポピュレイトし、第一光子束の一部が吸収されてエネ
ルギーレベル3をポピュレイトし、エネルギーレベル3
の一部が再びエネルギーレベル2に戻って第一光子束を
更に減衰させる段階を含む放射エネルギー透過制御方法
が開示されている。また、特開昭63−89805号公
報には光によって励起された三重項状態から更に上位の
三重項状態への遷移に対応する吸収を有するポルフィリ
ン誘導体などの有機化合物をコア中に含有しているプラ
スチック光ファイバーが開示されている。また、特開昭
63−236013号公報にはクリプトシアニンなどの
シアニン色素の結晶に第一の波長の光を照射して分子を
光励起した後、第一の波長とは異なる第二の波長の光を
前記分子に照射し、第一の波長の光による光励起状態に
よって第二の波長の光の透過または反射をスイッチング
するような光機能素子が開示されている。また、特開昭
64−73326号公報にはポルフィリン誘導体などの
光誘起電子移動物質をマトリックス材料中に分散した光
変調媒体に第一および第二の波長の光を照射して、分子
の励起状態と基底状態の間の吸収スペクトルの差を利用
して光変調するような光信号変調媒体が開示されてい
る。
【0006】これら従来技術で用いられている光学装置
の構成としては、特開昭55−100503号公報、特
開昭55−108603号公報、および特開昭63−8
9805号公報には伝搬光の伝播する光ファイバーを励
起光の光源(例えばフラッシュランプ)の周囲に巻きつ
けるような装置構成が開示されており、特開昭53−1
37884号公報および特開昭64−73326号公報
には光応答性光学素子内部の信号光に相当する光の伝播
している部分全体に信号光の光路とは別の方向から制御
光に相当する光を収束させることなくむしろ投射レンズ
などの手段によって拡散させて照射するような装置構成
が開示されている。
【0007】更に、従来技術においては、熱効果による
屈折率分布を利用して光の変調を行う方法も検討されて
いる。特開昭59−68723号公報には、発熱抵抗体
へ入力電気信号を通電し、前記発熱手段からの熱を受け
屈折率分布を生じる液体媒体中の屈折率分布によって、
光束の波面を変形するような光変調素子が開示されてお
り、KHzのオーダー、すなわちミリ秒のオーダーで屈
折率分布形成から消滅までのサイクルを行うことができ
ると記載されている。また、特開昭60−130723
号公報には、近赤外線制御光を熱吸収層で熱エネルギー
に変換し、この熱を近赤外線反射膜層および可視光線反
射膜層を通じて熱効果媒体まで伝熱させ、熱効果媒体中
に発生する屈折率分布によって、可視光線反射膜層へ入
射する光束の波面を変換する方法が開示されている。こ
の方法は、熱効果を生ずるまでの熱の伝達経路が長く、
かつ、制御光ビーム断面積よりも温度上昇部分の面積が
拡大しながら伝達されるため伝達経路の体積、すなわち
熱容量が大きくなって、制御光から与えられるエネルギ
ーの利用効率が低く、また、高速応答も望めない。
【0008】以上のような従来技術においては、実用に
足りる大きさの透過率変化または屈折率変化を引き起こ
すためには非常に高密度の光パワーを必要としたり、光
照射に対する応答が遅かったり、光学系の微妙な調整が
必要で、かつ光学系の多少の変動で制御光出力が大きく
変動したりするため、実用に至るものは未だ得られてい
ないのが現状である。
【0009】本出願人は、上記従来技術の有する課題を
解消し、できる限り低い光パワーで充分な大きさおよび
速度の光応答を光応答性の光学素子から引き出すような
光制御方法および光制御装置に関する特許(特願平7−
25618号、8−151133号)および光応答性材
料に関する特許(特願平7−58413号、7−584
14号)を出願した。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記課題を
解決し、できる限り低い光パワーで充分な大きさおよび
速度の光応答を光応答性の光学素子から引き出すような
光制御方法および制御装置を提供することを目的とす
る。本発明は、更に、光学系の調整がし易く、かつ多少
の変動も許容できるようにした光制御方法および光制御
装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本願の請求項1記載の発明に係る光制御方法は、光
応答性組成物からなる光学素子に、互いに波長の異なる
制御光および信号光を照射し、前記制御光の波長は前記
光応答性組成物が吸収する波長帯域から選ばれるものと
し、前記光応答性組成物が前記制御光を吸収した領域お
よびその周辺領域に発生する温度上昇に起因する密度変
化の分布に基づいた熱レンズを可逆的に形成させ、前記
熱レンズを透過する信号光の強度変調および/または光
束密度変調を行う光制御方法において、前記制御光およ
び前記信号光を各々収束させて前記光学素子へ照射し、
かつ、前記制御光および前記信号光のそれぞれの焦点近
傍の光子密度が最も高い領域が前記光学素子中において
互いに重なり合うように、前記制御光および前記信号光
の光路をそれぞれ配置した光制御方法であり、更に、焦
点近傍の光子密度が最も高い領域における前記信号光の
ビーム断面積が、焦点近傍の光子密度が最も高い領域に
おける前記制御光のビーム断面積を越えないように前記
信号光および前記制御光のビーム断面の形状および大き
さおよび収束状態をそれぞれ設定することを特徴とす
る。
【0012】また、上記目的を達成するために、本願の
請求項2記載の発明に係る光制御方法は、請求項1記載
の光制御方法において、前記制御光および前記信号光を
前記光学素子中において実質的に同一光路で伝搬させる
ことを特徴とする。
【0013】また、上記目的を達成するために、本願の
請求項3記載の発明に係る光制御方法は、請求項1また
は請求項2に記載の光制御方法において、前記光学素子
を透過した後、発散していく信号光光線束を、前記信号
光光線束の発散角度よりも小さい角度範囲(開口角)で
取り出すことによって、強度変調および/または光束密
度変調を強く受けた領域の信号光光線束を分別して取り
出すことを特徴とする。
【0014】また、上記目的を達成するために、本願の
請求項4記載の発明に係る光制御装置は、光応答性組成
物からなる光学素子に、互いに波長の異なる制御光およ
び信号光を照射し、前記制御光の波長は前記光応答性組
成物が吸収する波長帯域から選ばれるものとし、前記光
応答性組成物が前記制御光を吸収した領域およびその周
辺領域に発生する温度上昇に起因する密度変化の分布に
基づいた熱レンズを可逆的に形成させ、前記熱レンズを
透過する信号光の強度変調および/または光束密度変調
を行う光制御方法に用いられる光制御装置であって、前
記制御光および前記信号光を各々収束させる収束手段を
有し、収束された前記制御光および前記信号光のそれぞ
れの焦点近傍の光子密度が最も高い領域が互いに重なり
合うように、前記制御光および前記信号光の光路をそれ
ぞれ配置し、かつ、前記光学素子は、収束された前記制
御光および前記信号光のそれぞれの焦点近傍の光子密度
が最も高い領域が互いに重なり合う位置に配置され、更
に、焦点近傍の光子密度が最も高い領域における前記信
号光のビーム断面積が、焦点近傍の光子密度が最も高い
領域における前記制御光のビーム断面積を越えないよう
に前記信号光および前記制御光のビーム断面の形状およ
び大きさおよび収束状態がそれぞれ設定されていること
を特徴とする。
【0015】また、上記目的を達成するために、本願の
請求項5記載の発明に係る光制御装置は、請求項4記載
の光制御装置において、更に、前記制御光および前記信
号光が前記光学素子中において実質的に同一光路で伝搬
するような光路配置を有することを特徴とする。
【0016】また、上記目的を達成するために、本願の
請求項6記載の発明に係る光制御装置は、請求項4また
は請求項5に記載の光制御装置において、強度変調およ
び/または光束密度変調を強く受けた領域の信号光光線
束を分別して取り出すための手段として、前記光学素子
を透過した後、発散していく信号光光線束を、前記信号
光光線束の発散角度よりも小さい角度範囲(開口角)で
取り出す手段を設けたことを特徴とする。
【0017】[光応答性組成物]本発明における光応答
性組成物としては、公知の種々のものを使用することが
できる。その例を具体的に挙げるならば、例えば、Ga
As、GaAsP、GaAlAs、InP、InSb、
InAs、PbTe、InGaAsP、ZnSeなどの
化合物半導体の単結晶、前記化合物半導体の微粒子をマ
トリックス材料中へ分散したもの、異種金属イオンをド
ープした金属ハロゲン化物(例えば、臭化カリウム、塩
化ナトリウムなど)の単結晶、前記金属ハロゲン化物
(例えば、臭化銅、塩化銅、塩化コバルトなど)の微粒
子をマトリックス材料中へ分散したもの、銅などの異種
金属イオンをドープしたCdS、CdSe、CdSe
S、CdSeTeなどのカドミウムカルコゲナイドの単
結晶、前記カドミウムカルコゲナイドの微粒子をマトリ
ックス材料中に分散したもの、シリコン、ゲルマニウ
ム、セレン、テルルなどの半導体単結晶薄膜、多結晶薄
膜ないし多孔質薄膜、シリコン、ゲルマニウム、セレ
ン、テルルなどの半導体微粒子をマトリックス材料中へ
分散したもの、ルビー、アレキサンドライト、ガーネッ
ト、Nd:YAG、サファイア、Ti:サファイア、N
d:YLFなど、金属イオンをドープした宝石に相当す
る単結晶(いわゆるレーザー結晶)、金属イオン(例え
ば、鉄イオン)をドープしたニオブ酸リチウム(LiN
bO3)、LiB35、LiTaO3、KTiOPO4、K
2PO4、KNbO3、BaB22などの強誘電性結晶、
金属イオン(例えば、ネオジウムイオン、エルビウムイ
オンなど)をドープした石英ガラス、ソーダガラス、ホ
ウケイ酸ガラス、その他のガラスなどのほか、マトリッ
クス材料中に色素を溶解または分散したものを好適に使
用することができる。
【0018】これらの中でも、マトリックス材料中に色
素を溶解または分散したものは、マトリックス材料およ
び色素の選択範囲が広く、かつ光学素子への加工も容易
であるため、本発明で特に好適に用いることができる。
【0019】本発明で用いることができる色素の具体例
としては、例えば、ローダミンB、ローダミン6G、エ
オシン、フロキシンBなどのキサンテン系色素、アクリ
ジンオレンジ、アクリジンレッドなどのアクリジン系色
素、エチルレッド、メチルレッドなどのアゾ色素、ポリ
フィリン系色素、フタロシアニン系色素、3、3’−ジ
エチルチアカルボシアニンヨージド、3、3’−ジエチ
ルオキサジカルボシアニンヨージドなどのシアニン色
素、エチル・バイオレット、ビクトリア・ブルーRなど
のトリアリールメタン系色素などを好適に使用すること
ができる。
【0020】本発明では、これらの色素を単独で、また
は、2種以上を混合して使用することができる。
【0021】本発明で用いることのできるマトリックス
材料は、(1)本発明の光制御領域で用いられる光の波
長領域で透過率が高いこと、(2)本発明で用いられる
色素または種々の微粒子を安定性良く溶解または分散で
きること、(3)光学素子としての形態を安定性良く保
つことができること、という条件を満足するものであれ
ば任意のものを使用することができる。
【0022】無機系のマトリックス材料としては、例え
ば金属ハロゲン化物の単結晶、金属酸化物の単結晶、金
属カルコゲナイドの単結晶、石英ガラス、ソーダガラ
ス、ホウケイ酸ガラスなどの他、いわゆるゾルゲル法で
作成された低融点ガラス材料などを使用することができ
る。
【0023】また、有機系のマトリックス材料として
は、例えば種々の有機高分子材料を使用することができ
る。
【0024】これらのマトリックス材料中へ色素を溶解
または分散させるには公知の方法を用いることができ
る。例えば、色素とマトリックス材料を共通の溶媒中へ
溶解して混合した後、溶媒を蒸発させて除去する方法、
ゾルゲル法で製造する無機系マトリックス材料の原料溶
液へ色素を溶解または分散させてからマトリックス材料
を形成する方法、有機高分子系マトリックス材料のモノ
マー中へ、必要に応じて溶媒を用いて、色素を溶解また
は分散させてから該モノマーを重合ないし重縮合させて
マトリックス材料を形成する方法、色素と有機高分子系
マトリックス材料を共通の溶媒中に溶解した溶液を、色
素および熱可塑性の有機高分子系マトリックス材料の両
方が不溶の溶剤中へ滴下し、生じた沈殿を濾別し乾燥し
てから加熱・溶融加工する方法などを好適に用いること
ができる。色素とマトリックス材料の組み合わせおよび
加工方法を工夫することで、色素分子を凝集させ、「H
会合体」や「J会合体」などと呼ばれる特殊な会合体を
形成させられることが知られているが、マトリックス材
料中の色素分子をこのような凝集状態もしくは会合状態
を形成する条件で使用しても良い。
【0025】また、これらのマトリックス材料中へ前記
の種々の微粒子を分散させるには公知の方法を用いるこ
とができる。例えば、前記微粒子をマトリックス材料の
溶液、または、マトリックス材料の前駆体の溶液に分散
した後、溶媒を除去する方法、有機高分子系マトリック
ス材料のモノマー中へ、必要に応じて溶媒を用いて、前
記微粒子を分散させてから該モノマーを重合ないし重縮
合させてマトリックス材料を形成する方法、微粒子の前
駆体として、例えば過塩素酸カドミウムや塩化金などの
金属塩を有機高分子系マトリックス材料中へ溶解または
分散した後、硫化水素ガスで処理して硫化カドミウムの
微粒子を、または、熱処理することで金の微粒子を、そ
れぞれマトリックス材料中に析出させる方法、化学的気
相成長法、スパッタリング法などを好適に用いることが
できる。
【0026】なお、本発明で用いられる光応答性組成物
は、その機能に支障をきたさない範囲において、加工性
を向上させたり、光学素子としての安定性・耐久性を向
上させるため、添加物として公知の酸化防止剤、紫外線
吸収剤、一重項酸素クエンチャー、分散助剤などを含有
しても良い。
【0027】[光学素子]本発明の光学素子の形態は薄
膜、厚膜、板状、ブロック状、円柱状、半円柱状、四角
柱状、三角柱状、凸レンズ状、凹レンズ状、マイクロレ
ンズアレイ状などの中から適宜選択することができる。
【0028】本発明の光学素子の作成方法は、光学素子
の形態および使用する光応答組成物の種類に応じて任意
に選定され、公知の方法を用いることができる。
【0029】例えば、薄膜状の光学素子を作成する場合
は、色素およびマトリックス材料を溶解した溶液を例え
ばガラス板上に塗布法、ブレードコート法、ロールコー
ト法、スピンコート法、ディッピング法、スプレー法な
どの塗工法で塗工するか、あるいは、平版、凸版、凹
版、孔版、スクリーン、転写などの印刷法で印刷すれば
良い。この場合、ゾルゲル法による無機系マトリックス
材料作成方法を利用することもできる。
【0030】有機高分子系マトリックス材料が熱可塑性
の場合、ホットプレス法(特開平4−99609号公
報)や延伸法を用いても薄膜状もしくは厚膜状の膜型光
学素子を作成することができる。
【0031】板状、ブロック状、円柱状、半円柱状、四
角柱状、三角柱状、凸レンズ状、凹レンズ状、マイクロ
レンズアレイ状の光学素子を作成する場合は、例えば有
機高分子系マトリックス材料の原料モノマーに色素を溶
解または分散させたものを用いてキャスティング法やリ
アクション・インジェクション・モールド法で成型する
ことができる。また、熱可塑性の有機高分子系マトリッ
クス材料を用いる場合には、色素を溶解または分散した
ペレットまたは粉末を加熱溶融させてから射出成形法で
加工しても良い。
【0032】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づき本発明の実施
形態について説明する。
【0033】〔実施形態1〕本発明の光制御方法は、前
記光応答性組成物からなる光学素子に制御光を照射し、
前記制御光とは異なる波長帯域にある信号光の透過率お
よび/あるいは屈折率を可逆的に変化させることにより
前記光学素子を透過する前記信号光の強度変調および/
あるいは光束密度変調を行う光制御方法において、前記
制御光および前記信号光を各々収束させて前記光学素子
へ照射し、かつ、前記制御光および前記信号光のそれぞ
れの焦点の近傍の光子密度が最も高い領域が前記光学素
子中において互いに重なり合うように前記制御光および
前記信号光の光路をそれぞれ配置すること、または、前
記制御光および前記信号光を前記光学素子中において実
質的に同一光路で伝播させることを特徴とする。従っ
て、本発明に係る光学素子を利用した光学装置は、この
特徴を充分に発揮できるような構成となっていなければ
ならない。図1には本実施形態の光制御装置の概略構成
が示されている。このような光学装置構成および配置
は、図1に例示するように膜型光学素子8を用いる場合
の他、板状、ブロック状、円柱状、半円柱状、四角柱
状、三角柱状、凸レンズ状、凹レンズ状、マイクロレン
ズアレイ状などの光学素子を用いる場合にも好適に用い
ることができる。
【0034】ここで、膜型光学素子8は例えば以下の手
順で作成することができる。すなわち、シアニン色素の
3、3’−ジエチルオキサジカルボシアニンヨージド
(慣用名DODCI、エキシトン社製):23.0mg
およびポリメタクリル酸2−ヒドロキシプロピル:19
77.0mgをアセトン:200mlに溶解し、n−ヘ
キサン:300ml中へかき混ぜながら加えて析出した
沈殿(色素およびポリマーの混合物)を濾別し、n−ヘ
キサンで洗浄してから減圧下乾燥し、粉砕した。得られ
た色素およびポリマーの混合粉末を10-5Pa未満の超
高真空下、100℃で2日間加熱を続け、残留溶媒等の
揮発成分を完全に除去して、光応答性組成物の粉末を得
た。この粉末20mgをスライドガラス(25mm×7
6mm×厚さ1.150mm)およびカバーガラス(1
8mm×18mm×厚さ0.150mm)の間に挟み、
真空下150℃に加熱し、2枚のガラス板を圧着する方
法(真空ホットプレス法)を用いてスライドガラス/カ
バーガラス間に色素/ポリマーの膜(膜厚20μm)を
作成した。なお、色素/ポリマー膜中の色素濃度は、色
素/ポリマー混合物の密度を1.06として計算する
と、2.5×10-2mol/lである。
【0035】以上のようにして作成した膜型光学素子の
透過率スペクトルを図2に示す。この膜の透過率は制御
光の波長(633nm)で38.0%、信号光の波長
(694nm)で90.5%であった。
【0036】図1に概要を例示する本発明の光制御装置
は、制御光の光源1、信号光の光源2、NDフィルター
3、シャッター4、半透過鏡5、光混合器6、集光レン
ズ7、膜型光学素子8、受光レンズ9、波長選択透過フ
ィルター20、絞り19、光検出器11および22、お
よびオシロスコープ100から構成される。これらの光
学素子ないし光学部品のうち、制御光の光源1、信号光
の光源2、光混合器6、集光レンズ7、膜型光学素子
8、受光レンズ9、および、波長選択透過フィルター2
0は、図1の装置構成で本発明の光制御方法を実施する
ために必須の装置構成要素である。なお、NDフィルタ
ー3、シャッター4、および半透過鏡5は必要に応じて
設けるものであり、また、光検出器11および22、お
よびオシロスコープ100は、本発明の光制御方法を実
施するためには必要ないが光制御の動作を確認するため
の電子装置として、必要に応じて用いられる。
【0037】次に、個々の構成要素の特徴ならびに動作
について説明する。
【0038】制御光の光源1にはレーザー装置が好適に
用いられる。その発振波長および出力は、本発明の光制
御方法が対象とする信号光の波長および使用する光応答
性組成物の応答特性に応じて適宜選択される。レーザー
発振の方式については特に制限はなく、発振波長帯域、
出力、および経済性などに応じて任意の形式のものを用
いることができる。また、レーザー光源の光を非線形光
学素子によって波長変換してから使用しても良い。具体
的には例えば、アルゴンイオンレーザー(発振波長45
7.9ないし514.5nm)、ヘリウム・ネオンレー
ザー(633nm)などの気体レーザー、ルビーレーザ
ーやNd:YAGレーザーなどの固体レーザー、色素レ
ーザー、半導体レーザーなどを好適に使用することがで
きる。信号光の光源2にはレーザー光源からのコヒーレ
ント光だけではなく非コヒーレント光を使用することも
できる。また、レーザー装置、発光ダイオード、ネオン
放電管など、単色光を与える光源の他、タングステン電
球、メタルハライドランプ、キセノン放電管などからの
連続スペクトル光を光フィルターやモノクロメーターで
単色化して用いても良い。
【0039】先に述べたように、本発明の光制御方法で
利用される光応答性組成物、信号光の波長帯域、および
制御光の波長帯域は、これらの組み合わせとして、使用
目的に応じて適切な組み合わせが選定され、用いられ
る。
【0040】本発明は、焦点近傍の光子密度が最も高い
領域における前記信号光のビーム断面積が、焦点近傍の
光子密度が最も高い領域における前記制御光のビーム断
面積を越えないように前記信号光および前記制御光のビ
ーム断面の形状および大きさおよび収束状態をそれぞれ
設定することを特徴とする。ビーム断面の形状について
は、上記条件を満たすものであれば、任意の形状のもの
を用いることができる。
【0041】以下、ビーム断面の電場の振幅分布、すな
わちエネルギー分布がガウス分布となっているガウスビ
ームの場合について述べる。なお、以下の説明では、ビ
ーム収束手段として集光レンズ(凸レンズ)を用いる場
合について説明するが、収束手段が凹面鏡や屈折率分散
型レンズであっても同様である。
【0042】ガウスビームを、集光レンズ7などで、開
き角2θで収束させたときの焦点Fc 近傍における光線
束および波面30の様子を図3に示す。ここで、波長λ
のガウスビームの直径2ωが最小になる位置を「ビーム
ウエスト」という。以下、ビームウエストの半径(ビー
ムウエスト径)をω0 で表すものとする。光の回折作用
のため、ω0 はゼロにはならず、有限の値を持つ。な
お、ビーム半径ωやω0の定義は、ガウスビームのビー
ム中心部分のエネルギーを基準として、エネルギーが1
/e2 (eは自然対数の底)になる位置をビーム中心か
ら測ったときの距離である。いうまでもなく、ビームウ
エストの中心において、光子密度は最も高い。
【0043】ガウスビームの場合、ビームウエストから
充分に遠方でのビーム広がり角θは波長λ及びビームウ
エスト径ω0 と、次の式で関係づけられる。
【0044】 π・θ・ω0 ≒ λ …(1式) ここで、πは円周率である。
【0045】「ビームウエストから充分に遠方」という
条件を満たす場合に限りこの式を用いて、集光レンズに
入射するビーム半径ω、集光レンズの開口数および焦点
距離からビームウエスト径ω0 を計算することができ
る。
【0046】更に一般的に、有効開口半径aおよび開口
数NAの集光レンズで、ビーム半径ωの平行ガウスビー
ム(波長λ)を収束させた場合の、ビームウエスト径ω
0 は、次の式で表すことができる。
【0047】 2ω0 ≒ k・λ/NA …(2式) ここで、係数kは、レンズ結像面での光強度分布につい
ての数値解析計算を行うことによって決定することがで
きる。
【0048】集光レンズに入射するビーム半径ωと集光
レンズの有効開口半径aの比率を変えて、数値解析計算
を行うと、2式の係数kの値は以下のように求まる。
【0049】 a/ω = 1 のとき k ≒ 0.92 a/ω = 2 のとき k ≒ 1.3 a/ω = 3 のとき k ≒ 1.9 a/ω = 4 のとき k ≒ 3 すなわち、集光レンズの有効開口半径aよりもビーム半
径ωが小さければ小さい程、ビームウエスト径ω0 は大
きくなってしまう。
【0050】例えば、集光レンズとして焦点距離5m
m、開口数0.65、有効開口半径約4mmのレンズを
用い、波長694nmの制御光を収束したとき、集光レ
ンズに入射するビーム半径ωが4mmであればa/ωは
約1で、ビームウエストの半径ω0 は0.49μm、ω
が1mmであればa/ωは約4でω0 は1.6μmと計
算される。同様にして波長633nmの信号光を収束し
たとき、ビーム半径ωが4mmであればa/ωは約1
で、ビームウエストの半径ω0 は0.45μm、ωが1
mmであればa/ωは約4でω0 は1.5μmと計算さ
れる。
【0051】この計算例から明らかなように、集光レン
ズの焦点近傍の光子密度が最も高い領域、すなわちビー
ムウエストにおける光ビームの断面積を最小にするに
は、集光レンズが受光可能な最大限まで、ビーム径を拡
大(ビームエキスパンド)すれば良い。また、集光レン
ズへ入射するビーム径が同一の場合、光の波長が短い
程、ビームウエスト径は小さくなることも判る。
【0052】本発明は、焦点近傍の光子密度が最も高い
領域における前記信号光のビーム断面積が、焦点近傍の
光子密度が最も高い領域における前記制御光のビーム断
面積を越えないように前記信号光および前記制御光のビ
ーム断面の形状および大きさをそれぞれ設定することを
特徴とする。信号光および制御光ともにガウスビームを
用いる場合であれば、以上の説明および計算式に従っ
て、集光レンズなどの収束手段で収束する前の平行ビー
ムの状態で、波長に応じて、信号光および制御光のビー
ム径を、必要に応じてビームエキスパンドするなどし
て、調節することによって、焦点近傍の光子密度が最も
高い領域における前記信号光のビーム断面積が、焦点近
傍の光子密度が最も高い領域における前記制御光のビー
ム断面積を越えないようにすることができる。ビームエ
キスパンドの手段としては、公知のもの、例えば2枚の
凸レンズからなるケプラー型の光学系を用いることがで
きる。
【0053】以下、信号光の光源2として半導体レーザ
ー(発振波長694nm、連続発振出力3mW)の出射
光をビーム整形して直径約8mmの平行ガウスビームと
して用い、一方、制御光の光源1としてヘリウム・ネオ
ンレーザー(発振波長633nm、ビーム直径約2mm
の平行ビーム、ビーム断面のエネルギー分布はガウス分
布)を用い、更に前記の光応答性組成物からなる膜型光
学素子8を用いた場合について実施形態を説明する。
【0054】NDフィルター3は必ずしも必要ではない
が、装置を構成する光学部品や光学素子へ必要以上に高
いパワーのレーザー光が入射することを避けるため、ま
た、本発明の光学素子の光応答性能を試験するに当た
り、制御光の光強度を増減するために有用である。この
実施形態では後者の目的で数種類のNDフィルターを交
換して使用した。
【0055】シャッター4は、制御光として連続発振レ
ーザーを用いた場合に、これをパルス状に明滅させるた
めに用いられるものであり、本発明の光制御方法を実施
する上で必須の装置構成要素ではない。すなわち、制御
光の光源1がパルス発振するレーザーであり、そのパル
ス幅および発振間隔を制御できる形式の光源である場合
や、適当な手段で予めパルス変調されたレーザー光を光
源1として用いる場合は、シャッター4を設けなくても
良い。
【0056】シャッター4を使用する場合、その形式と
しては任意のものを使用することができ、例えば、オプ
ティカルチョッパ、メカニカルシャッター、液晶シャッ
ター、光カー効果シャッター、ポッケルセルなどを、シ
ャッター自体の作動速度を勘案して適宜選択して使用す
ることができる。
【0057】半透過鏡5は、この実施形態において、本
発明の光制御方法の作用を試験するに当たり、制御光の
光強度を常時見積もるために用いるものであり、光分割
比は任意に設定可能である。
【0058】光検出器11および22は、本発明の光・
光制御による光強度の変化の様子を電気的に検出して検
証するため、また、本発明の光学素子の機能を試験する
ために用いられる。光検出器11および22の形式は任
意であり、検出器自体の応答速度を勘案して適宜選択し
て使用することができ、例えば、光電子増倍管やフォト
ダイオード、フォトトランジスターなどを使用すること
ができる。
【0059】前記光検出器11および22の受光信号は
オシロスコープ100などの他、AD変換器とコンピュ
ーターの組み合わせ(図示せず)によってモニターする
ことができる。
【0060】光混合器6は、前記光学素子中を伝播して
いく制御光および信号光の光路を調節するために用いる
ものであり、本発明の光制御方法および光制御装置を実
施するに当たり重要な装置構成要素の一つである。偏光
ビームスプリッター、非偏光ビームスプリッター、また
はダイクロイックミラーのいずれも使用することがで
き、光分割比についても任意に設定可能である。
【0061】集光レンズ7は、信号光および制御光に共
通の収束手段として、光路が同一になるように調節され
た信号光および制御光を収束させて前記光学素子へ照射
するためのものであり、本発明の光制御方法および光制
御装置の実施に必須な装置構成要素の一つである。集光
レンズの焦点距離、開口数、F値、レンズ構成、レンズ
表面コートなどの仕様については任意のものを適宜使用
することができる。
【0062】本実施形態では、以下、集光レンズ7とし
て、焦点距離5mm、開口数0.65、有効開口半径
4.28mmの顕微鏡用対物レンズを用いた場合につい
て述べる。
【0063】この場合の集光レンズの焦点近傍の光子密
度が最も高い領域、すなわちビームウエストにおける光
ビームの半径ω0 は、先に示した2式を用いた計算例の
通り、波長633nm、ビーム直径2mmの制御光につ
いて1.5μmと計算され、同様にして波長694n
m、ビーム直径8mmの信号光について0.49μmと
計算される。すなわち、本実施形態において、ビームウ
エストにおける制御光ビームと信号光ビームの大小関係
は、ビーム径として約3:1、ビーム断面積として約1
0:1の割合で、制御光の方が大きい。
【0064】光学素子中での制御光S1と信号光S2と
の関係を模式的に図4に示す。
【0065】このようにビームウエストにおける制御光
のビームサイズを信号光に比べて大きくすると、集光レ
ンズの焦点近傍における制御光収束ビームのエネルギー
密度が最も高い領域に、信号光収束ビームのエネルギー
密度が最も高い領域を重ね合わせるように光学系を調整
することが容易になり、かつ、光学系の諸要素の変動の
影響を受け難くなる。すなわち、焦点近傍において、制
御光および信号光の光軸中心を完全に一致させる必要は
なく、制御光および信号光のビーム位置が、ある程度変
動ないしドリフトしても、信号光収束ビームのエネルギ
ー密度が最も高い領域が制御光収束ビームのエネルギー
密度が最も高い領域から逸脱しないように調整すること
が可能である。
【0066】これに比較して、集光レンズの焦点近傍に
おける収束ビームのエネルギー密度が最も高い領域の大
きさが、制御光と信号光とで同一の場合、2つの領域を
重ね合わせることは極めてクリティカルであり、光学系
の調整は容易でなく、また、光学系の僅かな変動、例え
ば気温変化による装置の熱膨張・収縮の影響を受けやす
くなる。
【0067】一方、制御光の最小収束ビーム径を信号光
の最小収束ビーム径よりも小さくすると、制御光収束ビ
ームのエネルギー密度が最も高い領域の一部分について
のみ、信号光の収束ビームが透過することとなり、結果
的に、本実施形態の場合よりも著しく、光応答が小さく
なってしまう。
【0068】受光レンズ9は、収束されて光学素子8へ
照射され、透過してきた信号光および制御光を平行およ
び/または収束ビームに戻すための手段であるが、充分
な大きさの信号光を再現性良く得るためには、前記集光
レンズ7の開口数より小さい開口数のレンズを用いる。
この実施形態では受光レンズ9として、開口数0.4の
顕微鏡レンズを用いた。すなわち、集光レンズ7の開口
数より受光レンズ9の開口数を小さくすることにより、
信号光の光束のうち、強度変調および/または光束密度
変調を強く受けた領域の光束を分別して取り出すことが
可能となり、充分な大きさの信号光を再現性良く検出で
きるようになる。なお、レンズ開口数が大きくても、絞
り19を入れたり光検出器に光束の中心部分のみ入射さ
せて実質的に開口数を小さくすることもできるが、開口
数の小さい受光レンズを用いる方が経済的である。ま
た、集光レンズおよび受光レンズの代わりに凹面鏡を用
いることも可能である。
【0069】波長選択透過フィルター20は、図1の装
置構成で本発明の光制御方法を実施するために必須の装
置構成要素の一つであり、前記光学素子中の同一の光路
を伝播してきた信号光と制御光とから信号光のみを取り
出すための手段の一つとして用いられる。
【0070】波長の異なる信号光と制御光とを分離する
ための手段としては他に、プリズム、回折格子、ダイク
ロイックミラーなどを使用することができる。
【0071】図1の装置構成で用いられる波長選択透過
フィルター20としては、制御光の波長帯域の光を完全
に遮断し、一方、信号光の波長帯域の光を効率良く透過
することのできるような波長選択透過フィルターであれ
ば、公知の任意のものを使用することができる。例え
ば、色素で着色したプラスチックやガラス、表面に誘電
体多層蒸着膜を設けたガラスなどを用いることができ
る。
【0072】以上のような構成要素からなる図1の光学
装置において、光源1から出射された制御光の光ビーム
は、透過率を加減することによって透過光強度を調節す
るためのNDフィルター3を通過し、次いで制御光をパ
ルス状に明滅するためのシャッター4を通過して、半透
過鏡5によって分割される。
【0073】半透過鏡5によって分割された制御光の一
部は光検出器11によって受光される。ここで、光源2
を消灯、光源1を点灯し、シャッター4を開放した状態
において光学素子8への光ビーム照射位置における光強
度と光検出器11の信号強度との関係を予め測定して検
量線を作成しておけば、光検出器11の信号強度から、
光学素子8に入射する制御光の光強度を常時見積もるこ
とが可能になる。この実施形態では、NDフィルター3
によって、膜型光学素子8へ入射する制御光のパワーを
0.5mWないし25mWの範囲で調節した。
【0074】半透過鏡5で分割・反射された制御光は、
光混合器6および集光レンズ7を通って、光学素子8に
収束されて照射される。膜型光学素子8を通過した制御
光の光ビームは、受光レンズ9を通過した後、波長選択
透過フィルター20によって遮断される。
【0075】光源2から出射された信号光の光ビーム
は、前記光混合器6によって、制御光と同一光路を伝播
するよう混合され、集光レンズ7を経由して、膜型光学
素子8に収束・照射され、素子を通過した光は受光レン
ズ9および波長選択透過フィルター20を透過した後、
光検出器22にて受光される。
【0076】図1の光学装置を用いて光制御の実験を行
い、図5または図6に示すような光強度変化を観測し
た。図5および/または図6において、111は光検出
器11の受光信号、222および223は光検出器22
の受光信号である。光検出器22の受光信号222の得
られる場合と223の得られる場合の違いは、以下の通
りである。
【0077】図1の装置配置においては膜型光学素子8
に制御光と信号光とを収束して入射させているが、最小
収束ビーム径位置、すなわちビームウエスト(焦点)を
膜型光学素子8の集光レンズ7に近いところ(光の入射
側)に設定すると、前記光学素子を透過した前記信号光
が減少する方向の光応答222が観察される。一方、ビ
ームウエストを膜型光学素子8の受光レンズ9に近いと
ころ(光の出射側)に設定すると、前記光学素子を透過
した前記信号光の見かけの強度が増大する方向の光応答
223が観察される。
【0078】このような光応答が生じる機構は、次のよ
うに想定される。
【0079】光応答性組成物からなる光学素子に、前記
光応答性組成物が吸収する波長帯域から選ばれた波長の
制御光を、集光レンズ7によって収束させて照射する
と、制御光は前記光応答性組成物によって吸収され、吸
収された光エネルギーの一部分は熱エネルギーに変化
し、まず前記光応答組成物の制御光照射部分の温度が上
昇し、次いで熱伝導によって、前記光応答性組成物が前
記制御光を吸収した領域の周辺領域の温度も上昇する。
制御光としてガウスビームを用いたときの温度上昇の分
布は、ビーム中心部分が大きく、周辺にいくに従って小
さくなるガウス分布に類似すると推測される。このよう
な温度上昇およびその分布に起因して、前記光応答性組
成物中の制御光照射部分に熱膨張が起こり、その結果、
分布を持った密度変化および屈折率変化が起こる。この
ようにして生じた屈折率分布に基づく光学的作用を「熱
レンズ」と呼ぶことができる。熱レンズ形成のきっかけ
となった制御光の照射を止めると、光吸収による温度上
昇は止まり、密度変化および屈折率分布は解消し、熱レ
ンズは消滅する。すなわち、制御光の断続に対応して、
熱レンズは可逆的に形成され、消滅する。ここで、収束
されていない平行な制御光(ガウスビーム)が、比較的
薄い光吸収層を透過する場合に、光吸収によって形成さ
れる熱レンズを考えると、ビーム中心に近いほど温度上
昇が大きく、熱膨張が大きく、密度低下が大きくなり、
結果的に、中心部分に近いほど、屈折率が小さくなるよ
うな分布が形成され、その光学的作用は凹レンズに相当
すると推定される。しかるに、収束された制御光が、比
較的厚い光吸収層を透過していく場合に形成される熱レ
ンズの光学的作用は、光吸収の影響によって、ビーム断
面のエネルギー分布がガウス分布から乖離していくと推
測され、単純な凹レンズが形成されるとは限らない。
【0080】そこで、次に述べるようにして、膜型光学
素子を透過した信号光ビーム断面の光強度分布およびそ
の変化についての測定を行った。なお、以下の測定で収
束ビームのビームウエスト(焦点Fc )の位置を膜型光
学素子8内で移動するには、集光レンズ7および受光レ
ンズ9の間隔(d78+d89)を固定したまま、膜型光学
素子8を移動させて行った。すなわち、集光レンズ7お
よび受光レンズ9の間隔を固定したまま、膜型光学素子
8と集光レンズ7の距離を変化させ、同一の光路で収束
された制御光および信号光の焦点位置と膜型光学素子8
との位置関係を変化させた。
【0081】図1の装置において、受光レンズ9を集光
レンズ7の開口数(本実施形態の場合は0.65)より
も大きな開口数(例えば0.75)のものに変更し、光
検出器22の代わりに図7に示すようなスリットを設け
た光強度分布測定器を設置し、膜型光学素子8を透過し
た光線束の全てを受光レンズ9で受光・収束させて前記
光強度分布測定器の受光部31(有効直径4mm)へ入
射させ、信号光光線束断面の光強度分布を測定した。測
定結果を図8ないし10に示す。ここで、光強度分布測
定器は、図7に示すように、受光部31(有効直径4m
m)に対して幅1mmの第一のスリット32を設け、第
一のスリットの長さ方向、すなわち図7において点Xか
ら点Yの向きに、幅25μmの第二のスリット33を一
定速度で移動させて、2枚のスリットが作る1mm×2
5μmの長方形の窓を通過した光の強度を、前記窓の移
動位置に対応させて測定する装置である。前記窓の移動
位置に対応させて光強度を測定するには、例えば、第二
のスリット33の移動速度に同期させたストレージオシ
ロスコープ上に、前記窓を通過した光を受光した検出器
の出力を記録すれば良い。図8ないし10は、以上のよ
うにして、ストレージオシロスコープ上に記録された信
号光の光ビーム断面についての光強度分布を示すもので
あり、横軸(光ビーム断面内の位置)は図7の点Xから
点Yの方向の位置に対応し、縦軸は光強度を表す。
【0082】図8は、膜型光学素子8に制御光が入射せ
ず、信号光のみが入射した場合の前記信号光の光強度分
布である。この場合の光強度分布は、中心部分の強度が
強く、周辺にいくに従い強度が弱まる分布(ガウス分
布)である。
【0083】図9は、制御光および信号光のビームウエ
スト位置(焦点Fc )を膜型光学素子8の集光レンズ7
に近いところ(光の入射側)に設定し、制御光を照射し
たとき見かけの信号光強度が減少する向きの光応答22
2が観察される条件において、制御光を照射したときの
信号光ビーム断面の光強度分布である。この場合の光強
度分布は、中心部分の光強度が弱く、周辺で光強度が増
大する分布になっている。信号光ビーム断面の中心部の
光強度は、制御光強度および膜型光学素子8と焦点の位
置関係に依存して減少し、制御光強度が増すに従い、ゼ
ロに近づいていく。これは制御光の照射により照射され
た中心部分ほど屈折率が小さくなり、その部分の光がビ
ームの外周方向に曲げられるためと考えられる。従っ
て、この場合、信号光ビームの中心部分だけを取り出し
て、見かけの信号光強度を測定すると、制御光の断続に
対応して、信号光の強度が減少する向きの光応答222
を、充分な大きさで取り出すことができる。
【0084】図10は、制御光および信号光のビームウ
エスト位置(焦点Fc )を膜型光学素子8の受光レンズ
9に近いところ(光の出射側)に設定し、制御光を照射
したとき見かけの信号光強度が増大する向きの光応答2
23が観察される条件において、制御光を照射したとき
の信号光ビーム断面の光強度分布である。この場合は、
中心部分の光強度が、制御光を照射しない場合の中心部
分の光強度(図8)より強くなっている。ここで、信号
光ビーム断面の中心部の光強度は、制御光強度および膜
型光学素子8を焦点位置の関係に依存するが、制御光非
照射時の数倍にも達する。これは、この配置において
は、収束されて照射された制御光によって形成される熱
レンズの光学作用は、同じく収束されて照射される信号
光の収束点を、結果的に膜型光学素子8の外側に伸ばし
た状態にする(条件にもよるが、ほぼ無限遠に伸ばされ
た状態にもなる)ためと考えられる。従って、この場
合、信号光ビームの中心部分だけを取り出して、見かけ
の信号光強度を測定すると、制御光の断続に対応して、
信号光の強度が増大する向きの光応答223を充分な大
きさで取り出すことができる。
【0085】なお、受光レンズ9の開口数を集光レンズ
7の開口数よりも大きくし、光学素子を透過した信号光
を全て受光した場合には、上記のような光強度分布を持
った信号光を光検出器22に入射させても、光応答は小
さいかほとんどない。すなわち、制御光および信号光を
膜型光学素子8の集光レンズ側に収束して入射させた場
合でも、受光レンズ側に収束して入射させた場合でも、
光応答は小さいかほとんどない。これは、この実施形態
においては、膜型光学素子中の色素の励起状態からの吸
収は、事実上起きていないことを示唆している。
【0086】一方、本実施形態の図1のように受光レン
ズ9の開口数を集光レンズ7の開口数よりも小さくする
と、光検出器22に入射する信号光は外周部分が除外さ
れ、制御光および信号光を膜型光学素子8の集光レンズ
側(入射側)に収束して入射させた場合には光検出器2
2に入射する信号光は小さくなり、受光レンズ側(出射
側)に収束して入射させた場合には光検出器22に入射
する信号光は大きくなり、大きな光応答が得られること
になる。
【0087】図11ないし13は、集光レンズ7の開口
数を0.65、受光レンズ9の開口数を0.4にした場
合の信号光の強度分布である。図11は信号光のみが膜
型光学素子8に入射した場合、図12はビームウエスト
(焦点)を膜型光学素子8の集光レンズ7に近いところ
(光の入射側)に設定した場合、図13はビームウエス
ト(焦点)を膜型光学素子8の受光レンズ9に近いとこ
ろ(光の出射側)に設定した場合の前記信号光のそれぞ
れの光強度分布である。
【0088】図1の光学装置を用いて光制御の実験を行
い、図5または図6に示すような光強度変化を観測した
が、その詳細は以下に述べる通りである。
【0089】まず、制御光の光ビームと信号光の光ビー
ムとが、膜型光学素子8内部の同一領域で焦点Fc を結
ぶように、それぞれの光源からの光路、光混合器6、お
よび集光レンズ7を調節した。なお、前記膜型光学素子
8のカバーガラス側から信号光および制御光が入射し、
スライドガラス基板側から出射するような向きに光学素
子を配置した。次いで、波長選択フィルター20の機能
を点検した。すなわち、光源2を消灯した状態で、光源
1を点灯し、シャッター4を開閉した場合には光検出器
22に応答が全く生じないことを確認した。
【0090】まず、前記焦点Fc を膜型光学素子8の集
光レンズ側(入射側)に設置した場合について述べる。
【0091】シャッター4を閉じた状態で制御光の光源
1を点灯し、次いで、時刻t1 において光源2を点灯し
光学素子8へ信号光を照射すると、光検出器22の信号
強度はレベルCからレベルAへ増加した。
【0092】時刻t2 においてシャッター4を開放し、
光学素子8内部の信号光が伝播しているのと同一の光路
へ制御光を収束・照射すると光検出器22の信号強度は
レベルAからレベルBへ減少した。この変化の応答時間
は2マイクロ秒未満であった。
【0093】時刻t3 においてシャッター4を閉じ、光
学素子への制御光照射を止めると光検出器22の信号強
度はレベルBからレベルAへ復帰した。この変化の応答
時間は3マイクロ秒未満であった。
【0094】時刻t4 においてシャッター4を開放し、
次いで、時刻t5 において閉じると、光検出器22の信
号強度はレベルAからレベルBへ減少し、次いでレベル
Aへ復帰した。
【0095】時刻t6 において光源2を消灯すると光検
出器22の出力は低下し、レベルCへ戻った。
【0096】次いで、前記焦点Fc を膜型光学素子8の
受光レンズ側(光の出射側)に設置した場合について述
べる。
【0097】シャッター4を閉じた状態で制御光の光源
1を点灯し、次いで、時刻t1 において光源2を点灯し
光学素子8へ信号光を照射すると、光検出器22の信号
強度はレベルCからレベルAへ増加した。
【0098】時刻t2 においてシャッター4を開放し、
光学素子8内部の信号光が伝播しているのと同一の光路
へ制御光を収束・照射すると光検出器22の信号強度は
レベルAからレベルDへ増加した。この変化の応答時間
は2マイクロ秒未満であった。
【0099】時刻t3 においてシャッター4を閉じ、光
学素子への制御光照射を止めると光検出器22の信号強
度はレベルDからレベルAへ復帰した。この変化の応答
時間は3マイクロ秒未満であった。
【0100】時刻t4 においてシャッター4を開放し、
次いで、時刻t5 において閉じると、光検出器22の信
号強度はレベルAからレベルDへ増加し、次いでレベル
Aへ復帰した。
【0101】時刻t6 において光源2を消灯すると光検
出器22の出力は低下し、レベルCへ戻った。
【0102】以上まとめると、膜型光学素子8へ、制御
光を図5の111に示すような波形で表される光強度の
時間変化を与えて照射したところ、信号光の光強度をモ
ニターして示す光検出器22の出力波形は図5または図
6の222または223に示すように、制御光の光強度
の時間変化に対応して可逆的に変化した。すなわち、制
御光の光強度の増減または断続により信号光の透過を制
御すること、すなわち光で光を制御すること(光・光制
御)、または、光で光を変調すること(光・光変調)が
できることが確認された。
【0103】なお、制御光の断続に対応する信号光の光
強度の変化の程度は、前記の光検出器22の出力レベル
A、BおよびCを用いて次に定義される値ΔT[単位
%]または、A、CおよびDを用いて次に定義される値
ΔT’[単位%] ΔT =100[(A−B)/(A−C)] ΔT’=100[(D−A)/(A−C)] によって定量的に比較することができる。ここで、Aは
制御光を遮断した状態で信号光の光源2を点灯した場合
の光検出器22の出力レベル、BおよびDは信号光と制
御光を同時に照射した場合の光検出器22の出力レベ
ル、Cは信号光の光源2を消灯した状態の光検出器22
の出力レベルである。
【0104】上の例において、制御光の入射パワーを2
0mWとし、膜型光学素子8を移動して信号光の光応答
の向きと大きさを調べたところ、信号光強度が減少する
向きの応答の大きさΔTの最大値は80%、見かけの信
号光強度が増加する向きの応答の大きさΔT’の最大値
は40%であった。
【0105】〔実施形態2〕本発明の光制御方法および
光制御装置において光応答を大きくするためには前記制
御光および前記信号光を各々収束させて前記光学素子へ
照射し、かつ、前記制御光および前記信号光のそれぞれ
の焦点の近傍の光子密度が最も高い領域が前記光学素子
中において互いに重なり合うように前記制御光および前
記信号光の光路をそれぞれ配置し、更に、焦点近傍の光
子密度が最も高い領域における前記信号光のビーム断面
積が、焦点近傍の光子密度が最も高い領域における前記
制御光のビーム断面積を越えないように前記信号光およ
び前記制御光のビーム断面の形状および大きさおよび収
束状態をそれぞれ設定すれば良いが、そのためには信号
光および制御光を実質的に同一光路で伝播させることが
好ましい。
【0106】焦点近傍の光子密度が最も高い領域(ビー
ムウエスト)における前記信号光のビーム断面積が、焦
点近傍の光子密度が最も高い領域(ビームウエスト)に
おける前記制御光のビーム断面積を越えないという条件
において、信号光および制御光が「実質的に同一光路」
と看做すことができるのは、図14に示すように、次の
ような場合である。
【0107】1)信号光の波長が制御光よりも長い場合
であって、制御光と信号光の光軸が互いに平行であっ
て、信号光の光路、例えば断面L02(半径r2 )の中に
制御光の光路、例えば断面L+1、L01、またはL-1(半
径r1 ;r1 <r2 )が重なって伝搬する場合。
【0108】2)信号光の波長が制御光よりも短い場合
であって、制御光と信号光の光軸が互いに平行であっ
て、収束させる前の信号光と制御光のビーム径が同一の
場合。なお、信号光の波長が制御光よりも長い場合であ
って、制御光と信号光の光軸が互いに平行であって、制
御光の光路、例えば断面L02(半径r2 )の中に信号光
の光路、例えば断面L+1、L01、またはL-1(半径
1 ;r1 <r2 )が重なって伝搬する場合は、実施形
態1で述べた計算式から明らかなように、ビーム径の太
い制御光の方がレンズの開口を有効に利用することがで
き、ビーム径の細い信号光よりも、ビームウエスト径が
細くなってしまう。
【0109】表1のデータは、一例として、実施形態1
の装置において、集光レンズ7として、開口数0.65
の顕微鏡用対物レンズを用い、受光レンズ9として、開
口数0.4の顕微鏡用レンズを用い、ビームウエスト
(焦点)を膜型光学素子8の集光レンズ7に近いところ
(光の入射側)に設定し、前記光学素子を透過した前記
信号光が減少する方向の光応答222が観察される条件
下、信号光の光路を断面L02(直径8mm)に固定し、
断面L+1、L01、またはL-1(直径2mm)の制御光の
光路(光軸)を光軸間の距離l+1またはl-1として±
1.2mm平行移動した場合の、信号光・光応答の大き
さΔTの変化を示したものである。信号光および制御光
の光軸が完全に一致している場合の光応答が最大である
が、光軸間の距離l+1またはl-1が±0.6mm程度ず
れても、光応答の大きさΔTは7ポイントほど変化する
にすぎない。
【0110】すなわち、収束された信号光および制御光
のそれぞれの焦点の近傍の光子密度が最も高い領域(ビ
ームウエスト)が前記光学素子中において互いに重なり
合うように前記制御光および前記信号光の光路がそれぞ
れ配置され、焦点近傍の光子密度が最も高い領域(ビー
ムウエスト)における前記信号光のビーム断面積が、焦
点近傍の光子密度が最も高い領域(ビームウエスト)に
おける前記制御光のビーム断面積を越えないという条件
においてこれらの領域の重なり合いが最大になったと
き、すなわち、前記制御光および前記信号光の光軸が完
全に一致したとき前記光応答は最大になること、前記制
御光および前記信号光の光路が実質的に同一のとき、充
分大きな光応答が得られることが判った。
【0111】
【表1】
【0112】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明の
光制御方法および光制御装置によれば、例えば、可視領
域にあるレーザー光を制御光として、近赤外線領域にあ
る信号光を精度良く変調することが、極めて単純な光学
装置によって、電子回路などを一切用いることなく、実
用上充分な応答速度において実現可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を実施する際に用いられる装置構成を
例示した構成図である。
【図2】 膜型光学素子の透過率スペクトルである。
【図3】 集光レンズなどで収束されたガウスビームの
焦点近傍における様子を表した模式図である。
【図4】 膜型光学素子中での信号光と制御光との関係
を模式的に示した図である。
【図5】 最小収束ビーム径位置を膜型光学素子の集光
レンズに近いところに設定したときの制御光および信号
光の光強度時間変化を例示した図である。
【図6】 最小収束ビーム径位置を膜型光学素子の受光
レンズに近いところに設定したときの制御光および信号
光の光強度時間変化を例示した図である。
【図7】 光強度分布測定に用いたスリットと光ビーム
との関係を示す図である。
【図8】 信号光のビーム断面の光強度分布を表した図
である。
【図9】 信号光のビーム断面の光強度分布を表した図
である。
【図10】 信号光のビーム断面の光強度分布を表した
図である。
【図11】 信号光のビーム断面の光強度分布を表した
図である。
【図12】 信号光のビーム断面の光強度分布を表した
図である。
【図13】 信号光のビーム断面の光強度分布を表した
図である。
【図14】 制御光および信号光の光路(および光軸)
の関係を例示した図である。
【符号の説明】
1 制御光の光源、2 信号光の光源、3 NDフィル
ター、4 シャッター、5 半透過鏡、6 光混合器、
7 集光レンズ、8 膜型光学素子、9 受光レンズ、
11 光検出器、19 絞り、20 波長選択透過フィ
ルター(制御光遮断用)、22 光検出器(信号光の光
強度検出用)、100 オシロスコープ、111 光検
出器11からの信号(制御光の光強度時間変化曲線)、
222および223 光検出器22からの信号(信号光
の光強度時間変化曲線)、A 制御光を遮断した状態で
信号光の光源を点灯した場合の光検出器22の出力レベ
ル、B 焦点Fcが膜型光学素子8の集光レンズ側に設
定された場合で、かつ信号光の光源を点灯した状態で制
御光を照射した場合の光検出器22の出力レベル、C
信号光を消灯した状態の光検出器22の出力レベル、D
焦点Fcが膜型光学素子8の受光レンズ側に設定され
た場合で、かつ信号光の光源を点灯した状態で制御光を
照射した場合の光検出器22の出力レベル、d78
光レンズ7と光学素子8の距離、d89 光学素子8と受
光レンズ9の距離、Fc 焦点、L01、L+1、L-1およ
びL02 信号光または制御光の光ビーム断面、l+1およ
びl-1信号光または制御光の光軸の平行移動距離、r1
信号光または制御光の光ビーム断面L01、L+1または
-1の半径、r2 信号光または制御光の光ビーム断面
02の半径、S1 制御光、S2 信号光、t1 信号
光の光源を点灯した時刻、t2 制御光を遮断していた
シャッターを開放した時刻、t3 制御光をシャッター
で再び遮断した時刻、t4 制御光を遮断したシャッタ
ーを開放した時刻、t5 制御光をシャッターで再び遮
断した時刻、t6 信号光の光源を消灯した時刻、θ
集光レンズで収束させた光ビームの外周部が光軸となす
角度、ω0 集光レンズで収束させたガウスビームのビー
ムウエスト(焦点位置におけるビーム半径)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 辻田 公二 神奈川県横浜市神奈川区守屋町3丁目12 番地 日本ビクター株式会社内 (72)発明者 田中 教雄 東京都足立区堀之内1丁目9番4号 大 日精化工業株式会社 東京製造事業所内 (72)発明者 宝田 茂 東京都足立区堀之内1丁目9番4号 大 日精化工業株式会社 東京製造事業所内 (72)発明者 柳本 宏光 東京都足立区堀之内1丁目9番4号 大 日精化工業株式会社 東京製造事業所内 (56)参考文献 特開 平8−286220(JP,A) Appl.Spec.,1994年,Vo l48,No.12,1506−1512 Pure Appl.Opt.,1994 年,Vol.3,No.3,339−351 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02F 1/35 G02F 1/19 G02F 1/17 JICSTファイル(JOIS)

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 光応答性組成物からなる光学素子に、互
    いに波長の異なる制御光および信号光を照射し、前記制
    御光の波長は前記光応答性組成物が吸収する波長帯域か
    ら選ばれるものとし、前記光応答性組成物が前記制御光
    を吸収した領域およびその周辺領域に発生する温度上昇
    に起因する密度変化の分布に基づいた熱レンズを可逆的
    に形成させ、前記熱レンズを透過する信号光の強度変調
    および/または光束密度変調を行う光制御方法におい
    て、 前記制御光および前記信号光を各々収束させて前記光学
    素子へ照射し、かつ、前記制御光および前記信号光のそ
    れぞれの焦点近傍の光子密度が最も高い領域が前記光学
    素子中において互いに重なり合うように、前記制御光お
    よび前記信号光の光路をそれぞれ配置した光制御方法で
    あり、 更に、焦点近傍の光子密度が最も高い領域における前記
    信号光のビーム断面積が、焦点近傍の光子密度が最も高
    い領域における前記制御光のビーム断面積を越えないよ
    うに前記信号光および前記制御光のビーム断面の形状お
    よび大きさおよび収束状態をそれぞれ設定することを特
    徴とする光制御方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の光制御方法において、 前記制御光および前記信号光を前記光学素子中において
    実質的に同一光路で伝搬させることを特徴とする光制御
    方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2に記載の光制御
    方法において、 前記光学素子を透過した後、発散していく信号光光線束
    を、前記信号光光線束の発散角度よりも小さい角度範囲
    (開口角)で取り出すことによって、 強度変調および/または光束密度変調を強く受けた領域
    の信号光光線束を分別して取り出すことを特徴とする光
    制御方法。
  4. 【請求項4】 光応答性組成物からなる光学素子に、互
    いに波長の異なる制御光および信号光を照射し、前記制
    御光の波長は前記光応答性組成物が吸収する波長帯域か
    ら選ばれるものとし、前記光応答性組成物が前記制御光
    を吸収した領域およびその周辺領域に発生する温度上昇
    に起因する密度変化の分布に基づいた熱レンズを可逆的
    に形成させ、前記熱レンズを透過する信号光の強度変調
    および/または光束密度変調を行う光制御方法に用いら
    れる光制御装置であって、 前記制御光および前記信号光を各々収束させる収束手段
    を有し、収束された前記制御光および前記信号光のそれ
    ぞれの焦点近傍の光子密度が最も高い領域が互いに重な
    り合うように、前記制御光および前記信号光の光路をそ
    れぞれ配置し、 かつ、前記光学素子は、収束された前記制御光および前
    記信号光のそれぞれの焦点近傍の光子密度が最も高い領
    域が互いに重なり合う位置に配置され、 更に、焦点近傍の光子密度が最も高い領域における前記
    信号光のビーム断面積が、焦点近傍の光子密度が最も高
    い領域における前記制御光のビーム断面積を越えないよ
    うに前記信号光および前記制御光のビーム断面の形状お
    よび大きさおよび収束状態がそれぞれ設定されているこ
    とを特徴とする光制御装置。
  5. 【請求項5】 請求項4記載の光制御装置において、 更に、前記制御光および前記信号光が前記光学素子中に
    おいて実質的に同一光路で伝搬するような光路配置を有
    することを特徴とする光制御装置。
  6. 【請求項6】 請求項4または請求項5に記載の光制御
    装置において、 強度変調および/または光束密度変調を強く受けた領域
    の信号光光線束を分別して取り出すための手段として、
    前記光学素子を透過した後、発散していく信号光光線束
    を、前記信号光光線束の発散角度よりも小さい角度範囲
    (開口角)で取り出す手段を設けたことを特徴とする光
    制御装置。
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