JP3504091B2 - 光制御方法および光制御装置 - Google Patents

光制御方法および光制御装置

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JP3504091B2
JP3504091B2 JP30669296A JP30669296A JP3504091B2 JP 3504091 B2 JP3504091 B2 JP 3504091B2 JP 30669296 A JP30669296 A JP 30669296A JP 30669296 A JP30669296 A JP 30669296A JP 3504091 B2 JP3504091 B2 JP 3504091B2
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公二 辻田
一郎 上野
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば光通信、光情報
処理などの光エレクトロニクスおよびフォトニクスの分
野において有用な、光応答性組成物から成る光学素子を
用いる光制御方法および光制御装置に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】超高速情報伝達・処理を目的として、光
の多重性、高密度性に着目した光エレクトロニクスおよ
びフォトニクスの分野において、光学材料または光学組
成物を加工して作成した光学素子に光を照射することで
引き起こされる透過率や屈折率の変化を利用して、電子
回路技術を用いずに、光の強度(振幅)または周波数
(波長)を変調しようとする光・光制御方法の研究開発
が盛んに進められている。また、光の特徴を活かして、
並列光論理演算や画像処理を行おうとする場合、光ビー
ム(光線束)の断面に光強度分布変化など、何等かの変
調を行うための「空間光変調器」が極めて重要であり、
ここへも光・光制御方法の適用が期待される。
【0003】光・光制御方法への応用が期待される現象
としては可飽和吸収、非線形屈折、フォトリフラクティ
ブ効果などの非線形光学効果、およびフォトクロミック
現象が広く注目を集めている。
【0004】一方、第一の波長帯域の光で励起された分
子が、分子構造の変化を伴わずに、第一の波長帯域とは
異なる第二の波長帯域において新たに光吸収を起こす現
象も知られており、これを「励起状態吸収」または「誘
導吸収」、あるいは「過渡吸収」と呼ぶことができる。
【0005】励起状態吸収の応用を試みた例としては、
例えば、特開昭53−137884号公報にはポルフィ
リン系化合物と電子受容体を含んだ溶液または固体に対
して波長の異なる少なくとも2種類の光線を照射し、こ
の照射により一方の波長の光線が有する情報を他方の光
線の波長に移すような光変換方法が開示されている。ま
た、特開昭55−100503号公報および特開昭55
−108603号公報にはポルフィリン誘導体などの有
機化合物の基底状態と励起状態の間の分光スペクトルの
差を利用し、励起光の時間的な変化に対応して伝搬光を
選択するような機能性の液体コア型光ファイバーが開示
されている。また、特開昭63−89805号公報には
光によって励起された三重項状態から更に上位の三重項
状態への遷移に対応する吸収を有するポルフィリン誘導
体などの有機化合物をコア中に含有しているプラスチッ
ク光ファイバーが開示されている。また、特開昭63−
236013号公報にはクリプトシアニンなどのシアニ
ン色素の結晶に第一の波長の光を照射して分子を光励起
した後、第一の波長とは異なる第二の波長の光を前記分
子に照射し、第一の波長の光による光励起状態によって
第二の波長の光の透過または反射をスイッチングするよ
うな光機能素子が開示されている。また、特開昭64−
73326号公報にはポルフィリン誘導体などの光誘起
電子移動物質をマトリックス材料中に分散した光変調媒
体に第一および第二の波長の光を照射して、分子の励起
状態と基底状態の間の吸収スペクトルの差を利用して光
変調するような光信号変調媒体が開示されている。
【0006】これら従来技術で用いられている光学装置
の構成としては、特開昭55−100503号公報、特
開昭55−108603号公報、および特開昭63−8
9805号公報には伝搬光の伝播する光ファイバーを励
起光の光源(例えばフラッシュランプ)の周囲に巻きつ
けるような装置構成が開示されており、特開昭53−1
37884号公報および特開昭64−73326号公報
には光応答性光学素子内部の信号光に相当する光の伝播
している部分全体に信号光の光路とは別の方向から制御
光に相当する光を収束させることなくむしろ投射レンズ
などの手段によって発散させて照射するような装置構成
が開示されている。
【0007】しかしながら、以上のような従来技術にお
いては、実用に足りる大きさの透過率変化または屈折率
変化(光応答)を引き起こすためには非常に高密度の光
パワーを必要としたり、光照射に対する応答が遅かった
り、光応答材料の耐久性が低かったりするため、実用に
至るものは未だ得られていないのが現状である。
【0008】本出願人は、上記従来技術の有する課題を
解消し、できる限り低い光パワーで充分な大きさおよび
速度の光応答を光応答性の光学素子から引き出すような
光制御方法および光制御装置に関する特許(特願平7−
25618、8−151133、8−239314)お
よび光応答性材料に関する特許(特願平7−5841
3、7−58414)を出願した。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記課題を
解決し、光応答を充分な大きさで再現性良く得るための
光制御方法および光制御装置を提供することを目的とす
る。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本願の請求項1記載の発明に係る光制御方法は、光
応答性組成物から成る光学素子に、前記光学素子が感応
する波長の制御光を照射し、制御光とは異なる波長帯域
にある信号光の透過率および/または屈折率を可逆的に
変化させることにより前記光学素子を透過する前記信号
光の強度変調および/または光束密度変調を行う光制御
方法において、前記制御光および前記信号光を各々収束
させて前記光学素子へ照射し、かつ、前記制御光および
前記信号光のそれぞれの焦点近傍の光子密度が最も高い
領域が前記光学素子中において互いに重なり合うよう
に、前記制御光および前記信号光の光路をそれぞれ配置
した光制御方法であり、更に、前記光学素子が、下記の
式[1]から[4]のいずれかで表されるナフトキノン
誘導体および/または下記の式[5]で表されるアント
ラキノン誘導体の少なくとも1種類を含有する光応答性
組成物から成ることを特徴とする。
【0011】
【化6】 (式[1]中において、RN1ないしRN6は、各々、水素
原子、第IV族元素(C,Si,Ge,Sn,Pb)の
化合物、第V族元素(N,P,As,Sb,Bi)の化
合物、第VI族元素(O,S,Se,Te,Po)の化
合物、または、第VII族元素(F,Cl,Br,I)
から導かれる1価の置換基を表し、これらの置換基は互
いに相異なる場合、また、隣接する2個の置換基が互い
に結合して環を形成する場合を含む。)
【化7】 (式[2]中において、RN7ないしRN12は、式[1]
におけるRN1ないしRN6と同義である。)
【化8】 (式[3]中において、RN13ないしRN18は、式[1]
におけるRN1ないしRN6と同義である。)
【化9】 (式[4]中において、RN19ないしRN24は、式[1]
におけるRN1ないしRN6と同義である。)
【化10】 (式[5]中において、RA1ないしRA8は、式[1]に
おけるRN1ないしRN6と同義である。) 前記の式[1]ないし[5]において、第IV族元素
(C,Si,Ge,Sn,Pb)の化合物から導かれる
1価の置換基(RN1ないしRN24、RA1ないしRA 8)の
具体例は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、
イソプロピル基、シクロプロピル基、n−ブチル基、t
ert−ブチル基、n−ペンチル基、シクロペンチル
基、シクロヘキシル基、n−ヘキシル基、n−へプチル
基、ネオペンチル基、n−オクチル基、イソオクチル
基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、
n−ドデシル基、n−オクタデシル基、ビニル基、2−
プロペニル基、ベンジル基、フェニル基、ビフェニル
基、ナフチル基、アントリル基、2,4−ジメトキシフ
ェニル基、ピリジル基、メトキシ基、エトキシ基、n−
ブトキシ基、n−ペントキシ基、n−ヘキシルオキシ
基、n−ヘプトキシ基、n−オクチルオキシ基、n−ノ
ニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオ
キシ基、n−ドデシルオキシ基、n−オクタデシルオキ
シ基、ベンジルオキシ基、フェノキシ基、アセチル基、
メトキシカルボニル基、ベンゾイル基、カルボキシル基
(−COOH)、カルバモイル基(−CONH2)、シ
アノ基、トリメチルシリル基、ジメチルフェニルシリル
基、トリメチルシロキシ基、トリメチルゲルミル基、メ
チルジフェニルゲルミル基、トリメチル錫基、トリエチ
ル鉛基などの他、芳香族炭化水素または複素環化合物か
ら導かれる1価の基などである。これらのうち、カルボ
キシル基は金属塩を形成していても良く、更に、他の金
属塩と錯体を形成しても良い。
【0012】前記の式[1]ないし[5]において、第
V族元素(N,P,As,Sb,Bi)の化合物から導
かれる1価の置換基(RN1ないしRN24、RA1ないしR
A8)の具体例は、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、
エチルアミノ基、プロピルアミノ基、ブチルアミノ基、
ベンジルアミノ基、フェニルアミノ基、4−フェニルア
ゾフェニルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミ
ノ基、メチルプロピルアミノ基、ジフェニルアミノ基、
ジベンジルアミノ基、エチルフェニルアミノ基、4−
(ジメチルアミノ)ブチル基、6−(ジエチルアミノ)
ヘキシルオキシ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミ
ノ基、N−メチルアセチルアミノ基、シクロヘキシルア
ミノ基、ピリジル基、ピペリジノ基、ピペリジル基、モ
ルホリノ基、ジフェニルフォスフィニル基、ジフェニル
アルシニル基、ジフェニルスチビニル基、ジフェニルビ
スムチニル基などである。これらのうち、置換および非
置換のアミノ基は酸と塩を形成していても良い。
【0013】前記の式[1]ないし[5]において、第
VI族元素(O,S,Se,Te,Po)の化合物から
導かれる1価の置換基(RN1ないしRN24、RA1ないし
A8)の具体例は、例えば、水酸基(ヒドロキシ基)、
メトキシ基、エトキシ基、n−ブトキシ基、n−ペント
キシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプトキシ基、n
−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシル
オキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキ
シ基、n−オクタデシルオキシ基、ベンジルオキシ基、
フェノキシ基、メルカプト基、メチルチオ基、エチルチ
オ基、フェニルチオ基、ベンジルチオ基、2−フリル
基、2−チオフェニル基、2−セレノフェニル基、2−
テルロフェニル基、ベンジルスルフィニル基(C65
2SO−)、フェニルスルフォニル基(C65SO
2−)、スルフェン酸基(−SOH)、スルフィン酸基
(−SO2H)、スルホン酸基(−SO3H)、セレノン
酸基(−SeO3H)などである。これらのうち、フェ
ノール性水酸基や酸の残基は金属塩を形成していても良
く、更に、他の金属塩と錯体を形成しても良い。また、
酸の残基はアミン塩またはアンモニウム塩を形成しても
良い。
【0014】 また、上記目的を達成するため、本願の
請求項記載の発明に係る光制御方法は、更に、前記制
御光および前記信号光を前記光学素子中において実質的
に同一光路で伝搬させることを特徴とする。
【0015】 また、上記目的を達成するため、本願の
請求項記載の発明に係る光制御方法は、更に、前記光
学素子を透過した後、発散していく信号光光線束のう
ち、前記強度変調および/または光束密度変調を強く受
けた領域の信号光光線束を分別して取り出すことを特徴
とする。
【0016】この場合、通常、信号光光線束の中心部分
が特に変調を受けやすいので、発散する信号光光線束を
収束するために受光レンズを用いるときには信号光光線
束の中心軸に受光レンズの中心軸を一致させることが好
適である。
【0017】 また、上記目的を達成するため、本願の
請求項記載の発明に係る光制御方法は、更に、前記光
学素子を透過した後、発散していく信号光光線束を、前
記信号光光線束の発散角度よりも小さい角度範囲(開口
角)のレンズまたは凹面鏡で取り出すことによって、前
記強度変調および/または光束密度変調を強く受けた領
域の信号光光線束を分別して取り出すことを特徴とす
る。
【0018】 また、上記目的を達成するため、本願の
請求項記載の発明に係る光制御方法は、請求項1記
の光制御方法において、前記制御光および前記信号光の
それぞれの焦点位置と前記光学素子との位置関係を変化
させることにより、前記制御光の照射によって、前記光
学素子を透過した前記信号光の見かけの強度が減少する
方向の光応答と、前記信号光の見かけの強度が増大する
光応答との、どちらか一方を選択して取り出すことを特
徴とする。
【0019】 また、上記目的を達成するため、本願の
請求項記載の発明に係る光制御方法は、請求項1また
は請求項2に記載の光制御方法において、前記光応答性
組成物が液体であり、かつ、前記液状光応答性組成物を
充填した光学セルを前記光学素子として用いることを特
徴とする。
【0020】 また、上記目的を達成するため、本願の
請求項記載の発明に係る光制御方法は、請求項記載
の光制御方法であって、前記液状光応答性組成物が揮発
性溶剤を含有することを特徴とする。
【0021】 また、上記目的を達成するため、本願の
請求項記載の発明に係る光制御装置は、光応答性組成
物から成る光学素子に、前記光学素子が感応する波長の
制御光を照射し、制御光とは異なる波長帯域にある信号
光の透過率および/または屈折率を可逆的に増減させる
ことにより前記光学素子を透過する前記信号光の強度変
調および/または光束密度変調を行う光制御方法に用い
られる光制御装置であって、前記制御光および前記信号
光を各々収束させる収束手段を有し、収束された前記制
御光および前記信号光のそれぞれの焦点近傍の光子密度
が最も高い領域が互いに重なり合うように、前記制御光
および前記信号光の光路をそれぞれ配置し、かつ、前記
光学素子は、収束された前記制御光および前記信号光の
それぞれの焦点近傍の光子密度が最も高い領域が互いに
重なり合う位置に配置され、更に、前記光学素子が、前
記の式[1]から[4]のいずれかで表されるナフトキ
ノン誘導体および/または前記の式[5]で表されるア
ントラキノン誘導体の少なくとも1種類を含有する光応
答性組成物から成ることを特徴とする。
【0022】 また、上記目的を達成するため、本願の
請求項記載の発明に係る光制御装置は、更に、前記制
御光および前記信号光が前記光学素子中において実質的
に同一光路で伝搬するような光路配置を有することを特
徴とする。
【0023】 また、上記目的を達成するため、本願の
請求項記載の発明に係る光制御装置は、更に、前記光
学素子を透過した後、発散していく信号光光線束のう
ち、前記強度変調および/または光束密度変調を強く受
けた領域の信号光光線束を分別して取り出す手段を有す
ることを特徴とする。
【0024】 また、上記目的を達成するため、本願の
請求項記載の発明に係る光制御装置は、更に、前記強
度変調および/または光束密度変調を強く受けた領域の
信号光光線束を分別して取り出す手段として、前記光学
素子へ前記信号光を収束させて入射させる際に用いた収
束手段の開口数よりも小さい開口数のレンズまたは凹面
を用いることを特徴とする。
【0025】
【0026】 また、上記目的を達成するため、本願の
請求項記載の発明に係る光制御装置は、請求項記載
の光制御装置において、前記制御光および前記信号光の
それぞれの焦点位置と前記光学素子との位置関係を変化
させる移動手段を有し、前記移動手段を用いることによ
って、前記制御光および前記信号光のそれぞれの焦点位
置と前記光学素子との位置関係を変化させることによ
り、前記制御光の照射によって前記光学素子を透過した
前記信号光の見かけの強度が減少する方向の光応答と、
前記信号光の見かけの強度が増大する光応答との、どち
らか一方を選択して取り出すことを特徴とする。
【0027】 また、上記目的を達成するため、本願の
請求項記載の発明に係る光制御装置は、請求項5また
は請求項6に記載の光制御装置において、前記光学素子
を透過してきた信号光と制御光の混合光を、信号光と制
御光とに分離する手段を有することを特徴とする。
【0028】 また、上記目的を達成するため、本願の
請求項記載の発明に係る光制御装置は、請求項から
請求項7のいずれか1項に記載の光制御装置において、
前記光応答性組成物が液体であり、かつ、前記液状の光
応答性組成物を充填した光学セルを前記光学素子として
用いることを特徴とする。
【0029】 また、上記目的を達成するため、本願の
請求項記載の発明に係る光制御装置は、請求項記載
の光制御装置において、前記液状光応答性組成物が揮発
性溶剤を含有することを特徴とする。
【0030】 また、上記目標を達成するため、本願の
請求項10記載の発明に係る光制御装置は、請求項
請求項9のいずれか1項に記載の光制御装置におい
て、前記制御光および前記信号光を各々収束させる前記
収束手段、および/または、前記光学素子中の前記光応
答性組成物を透過した後、発散していく信号光光線束の
うち、前記強度変調および/または光束密度変調を強く
受けた領域の信号光光線束を分別して取り出す手段、お
よび/または、前記光学素子中の前記光応答性組成物を
透過してきた信号光と制御光の混合光を、信号光と制御
光とに分離する手段が、前記光学素子に組み込まれた構
造を有することを特徴とする。
【0031】[光応答性組成物、信号光の波長帯域、お
よび制御光の波長帯域の組み合わせ]本発明の光制御方
法で利用される光応答性組成物、信号光の波長帯域、お
よび制御光の波長帯域は、これらの組み合わせとして、
使用目的に応じて適切な組み合わせを選定し用いること
ができる。
【0032】具体的な設定手順としては、例えば、ま
ず、使用目的に応じて信号光の波長ないし波長帯域を決
定し、これを制御するのに最適な光応答性組成物と制御
光の波長の組み合わせを選定すれば良い。または、使用
目的に応じて信号光と制御光の波長の組み合わせを決定
してから、この組み合わせに適した光応答性組成物を選
定すれば良い。
【0033】本発明で用いられる光応答性組成物の組
成、および前記光応答性組成物から成る光学素子中を伝
播する信号光および制御光の光路長については、これら
の組み合わせとして、光学素子を透過する制御光および
信号光の透過率を基準にして設定することができる。例
えば、まず、光応答性組成物の組成のうち、少なくとも
制御光あるいは信号光を吸収する成分の濃度を決定し、
次いで、光学素子を透過する制御光および信号光の透過
率が特定の値になるよう光学素子中を伝播する信号光お
よび制御光の光路長を設定することができる。または、
まず、例えば装置設計上の必要に応じて、光路長を特定
の値に設定した後、光学素子を透過する制御光および信
号光の透過率が特定の値になるよう光応答性組成物の組
成を調整することができる。
【0034】本発明は、できる限り低い光パワーで充分
な大きさおよび速度の光応答を光応答性の光学素子から
引き出すような光制御方法および光制御装置を提供する
ことを目的としているが、この目的を達成するために最
適な、光学素子を透過する制御光および信号光の透過率
の値は、それぞれ、次に示す通りである。
【0035】本発明の光制御方法および光制御装置で
は、光学素子を伝播する制御光の透過率が多くとも90
%以下になるよう光応答性組成物中の光吸収成分の濃度
および存在状態の制御、光路長の設定を行うことが推奨
される。
【0036】ここで、制御光の照射によって信号光の透
過率が減少する方向の光応答を利用しようとする場合、
制御光を照射しない状態において、光学素子を伝播する
信号光の透過率が少なくとも10%以上になるよう光応
答性組成物中の光吸収成分の濃度および存在状態の制
御、光路長の設定を行うことが推奨される。
【0037】[ナフトキノンまたはアントラキノン誘導
体]本発明で用いられる光学素子は、ナフトキノンまた
はアントラキノン誘導体をマトリックス材料中に溶解ま
たは分散させた光応答性組成物から成る。
【0038】ナフトキノンまたはアントラキノン誘導体
としては、分散染料、建て染め染料、酸性染料または顔
料などの色素として公知のものを使用することができ
る。
【0039】前記ナフトキノンまたはアントラキノン誘
導体の具体例を化学式として図1から図60に例示す
る。すなわち、前記の式[1]で表される1,4−ナフ
トキノン誘導体の具体例を図1ないし15に、前記の式
[2]で表される1,2−ナフトキノン誘導体の具体例
を図16に、前記の式[3]で表される1,5−ナフト
キノン誘導体の具体例を図17に、前記の式[4]で表
される2,6−ナフトキノン誘導体の具体例を図18
に、また、前記の式[5]で表される9,10−アント
ラキノン誘導体の具体例を図19ないし60に、化学式
として例示する。
【0040】本発明では、これらのナフトキノンまたは
アントラキノン誘導体を単独で、または、2種類以上を
混合して使用することができる。
【0041】[光応答性組成物]本発明では、前記光応
答性組成物として、使用温度領域において、固体、ガラ
ス状態ないしゴム状態のもの、および、液体状態のもの
を使用することができる。
【0042】なお、本発明で用いられる光応答性組成物
は、その機能に支障をきたさない範囲において、加工性
を向上させたり、光学素子としての安定性・耐久性を向
上させるため、副成分として公知の酸化防止剤、紫外線
吸収剤、一重項酸素クエンチャ−、分散助剤などを含有
しても良い。
【0043】[固体、ガラス状態ないしゴム状態の光応
答性組成物]本発明では、固体、ガラス状態ないしゴム
状態の光応答性組成物として、前記のナフトキノンまた
はアントラキノン誘導体を、固体、ガラス状態ないしゴ
ム状態のマトリックス材料中に溶解または分散したもの
を用いることができる。
【0044】本発明で用いることのできる固体、ガラス
状態ないしゴム状態のマトリックス材料は、(1)本発
明の光制御方式で用いられる光の波長領域で透過率が高
いこと、(2)本発明で用いられるナフトキノンまたは
アントラキノン誘導体を安定性良く溶解または分散でき
ること、(3)光学素子としての形態を安定性良く保つ
ことができること、という条件を満足するものであれば
任意のものを使用することができる。
【0045】無機系のマトリックス材料としては、例え
ば、いわゆるゾルゲル法で作成される低融点ガラス材料
などを使用することができる。
【0046】また、有機系のマトリックス材料として
は、種々の有機高分子材料を使用することができる。そ
の具体例としては、ポリスチレン、ポリ(α−メチルス
チレン)、ポリインデン、ポリ(4−メチル−1−ペン
テン)、ポリビニルピリジン、ポリビニルホルマール、
ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラール、ポリ酢
酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポ
リ塩化ビニリデン、ポリビニルメチルエーテル、ポリビ
ニルエチルエーテル、ポリビニルベンジルエーテル、ポ
リビニルメチルケトン、ポリ(N−ビニルカルバゾー
ル)、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリアクリル酸
メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸、ポリ
アクリロニトリル、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタ
クリル酸エチル、ポリメタクリル酸ブチル、ポリメタク
リル酸ベンジル、ポリメタクリル酸シクロヘキシル、ポ
リメタクリル酸、ポリメタクリル酸アミド、ポリメタク
リロニトリル、ポリアセトアルデヒド、ポリクロラー
ル、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレ
ート、ポリカーボネイト類(ビスフェノール類+炭
酸)、ポリ(ジエチレングリコール・ビスアリルカーボ
ネイト)類、6−ナイロン、6,6−ナイロン、12−
ナイロン、6,12−ナイロン、ポリアスパラギン酸エ
チル、ポリグルタミン酸エチル、ポリリジン、ポリプロ
リン、ポリ(γ−ベンジル−L−グルタメート)、メチ
ルセルロース、エチルセルロース、ベンジルセルロー
ス、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピル
セルロース、アセチルセルロース、セルローストリアセ
テート、セルローストリブチレート、アルキド樹脂(無
水フタル酸+グリセリン)、脂肪酸変性アルキド樹脂
(脂肪酸+無水フタル酸+グリセリン)、不飽和ポリエ
ステル樹脂(無水マレイン酸+無水フタル酸+プロピレ
ングリコール)、エポキシ樹脂(ビスフェノール類+エ
ピクロルヒドリン)、ポリウレタン樹脂、フェノール樹
脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、トルエン
樹脂、グアナミン樹脂などの樹脂、ポリ(フェニルメチ
ルシラン)などの有機ポリシラン、有機ポリゲルマンお
よびこれらの共重合・共重縮合体が挙げられる。また、
二硫化炭素、四フッ化炭素、エチルベンゼン、パーフル
オロベンゼン、パーフルオロシクロヘキサンまたはトリ
メチルクロロシラン等、通常では重合性のない化合物を
プラズマ重合して得た高分子化合物などを使用すること
ができる。
【0047】更に、これらの有機高分子化合物に前記ナ
フトキノンまたはアントラキノン誘導体の残基をモノマ
ー単位の側鎖として、もしくは架橋基として、共重合モ
ノマー単位として、または重合開始末端として結合させ
たものをマトリックス材料として使用することもでき
る。
【0048】これらのマトリックス材料中へナフトキノ
ンまたはアントラキノン誘導体を溶解または分散させる
には公知の方法を用いることができる。例えば、ナフト
キノンまたはアントラキノン誘導体とマトリックス材料
を共通の溶媒中へ溶解して混合した後、溶媒を蒸発させ
て除去する方法、ゾルゲル法で製造する無機系マトリッ
クス材料の原料溶液へナフトキノンまたはアントラキノ
ン誘導体を溶解または分散させてからマトリックス材料
を形成する方法、有機高分子系マトリックス材料のモノ
マー中へ、必要に応じて溶媒を用いて、ナフトキノンま
たはアントラキノン誘導体を溶解または分散させてから
該モノマーを重合ないし重縮合させてマトリックス材料
を形成する方法、ナフトキノンまたはアントラキノン誘
導体と有機高分子系マトリックス材料を共通の溶媒中に
溶解した溶液を、ナフトキノンまたはアントラキノン誘
導体および熱可塑性の有機高分子系マトリックス材料の
両方が不溶の溶剤中へ滴下し、生じた沈殿を濾別し乾燥
してから加熱・溶融加工する方法、化学的気相成長法、
スパッタリング法などを好適に用いることができる。一
般に、色素とマトリックス材料の組み合わせおよび加工
方法を工夫することで、色素分子を凝集させ、「H会合
体」や「J会合体」などと呼ばれる特殊な会合体を形成
させることができることが知られているが、マトリック
ス材料中のナフトキノンまたはアントラキノン誘導体分
子をこのような凝集状態もしくは会合状態を形成する条
件で使用しても良い。
【0049】[液状の光応答性組成物]本発明では、液
状の光応答性組成物として、前記のナフトキノンまたは
アントラキノン誘導体を、液状のマトリックス材料中に
溶解またはコロイド分散したものを用いることができ
る。
【0050】本発明で用いることのできる液状のマトリ
ックス材料は、(1)使用温度および/または圧力領域
において液体であること、(2)本発明の光制御方式で
用いられる光の波長領域で透過率が高いこと、(3)本
発明で用いられるナフトキノンまたはアントラキノン誘
導体などを安定性良く溶解またはコロイド分散できるこ
と、(4)光応答性組成物としての組成を安定性良く保
つことができること、という条件を満足するものであれ
ば任意のものを使用することができる。
【0051】無機系の液状マトリックス材料としては、
例えば、水、水ガラス(アルカリケイ酸塩の濃厚水溶
液)、アンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化
カリウム水溶液、塩酸、硫酸、硝酸、王水、クロルスル
ホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホ
ン酸、ポリリン酸などを使用することができる。
【0052】また、有機系の液状マトリックス材料とし
ては、各種有機溶剤、および、液状の有機高分子材料を
使用することができる。
【0053】揮発性の有機溶剤としては、具体的には、
メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n
−ブタノール、アミルアルコール、シクロヘキサノー
ル、ベンジルアルコールなどのアルコール類、エチレン
グリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどの
多価アルコール類、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸
アミル、酢酸イソプロピルなどのエステル類、アセト
ン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シ
クロヘキサノンなどのケトン類、ジエチルエーテル、ジ
ブチルエーテル、メトキシエタノール、エトキシエタノ
ール、ブトキシエタノール、カルビトールなどのエーテ
ル類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,
3−ジオキソラン、などの環状エーテル類、ジクロロメ
タン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエ
タン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクレン、ブ
ロモホルム、ジブロモメタン、ジヨードメタン、などの
ハロゲン化炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレ
ン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ニトロベ
ンゼン、アニソール、α−クロロナフタレンなどの芳香
族炭化水素類、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプ
タン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、N,N
−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミ
ド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドなどのアミド
類、N−メチルピロリドンなどの環状アミド類、テトラ
メチル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン
などの尿素誘導体類、ジメチルスルホキシドなどのスル
ホキシド類、炭酸エチレン、炭酸プロピレンなどの炭酸
エステル類、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベン
ゾニトリルなどのニトリル類、ピリジン、キノリンなど
の含窒素複素環化合物類、トリエチルアミン、トリエタ
ノールアミン、ジエチルアミノアルコール、アニリンな
どのアミン類、クロル酢酸、トリクロル酢酸、トリフル
オロ酢酸、酢酸などの有機酸の他、ニトロメタン、二硫
化炭素、スルホランなどの溶剤を用いることができる。
【0054】これらの溶剤は、また、複数の種類のもの
を混合して用いても良い。
【0055】これらの液状のマトリックス材料中へナフ
トキノンまたはアントラキノン誘導体を溶解またはコロ
イド分散させるには公知の方法を用いることができる。
例えば、ナフトキノンまたはアントラキノン誘導体を有
機溶剤や水ガラスに溶解する方法、ナフトキノンまたは
アントラキノン誘導体と不揮発性で液状のマトリックス
材料を共通の揮発性溶媒中へ溶解して混合した後、溶媒
を蒸発させて除去する方法、液状の有機高分子系マトリ
ックス材料の原料モノマー中へ、必要に応じて溶媒を用
いて、ナフトキノンまたはアントラキノン誘導体を溶解
または分散させてから該モノマーを重合ないし重縮合さ
せて液状のマトリックス材料を形成する方法、ナフトキ
ノンまたはアントラキノン誘導体の超微粒子を液状のマ
トリックス材料中で形成させる方法、化学的気相成長
法、スパッタリング法、不活性ガス中蒸発法などの気相
法で製造した超微粒子を、必要に応じて分散剤を用い
て、液状のマトリックス材料中へ捕集する方法などを好
適に用いることができる。一般に、色素と液状のマトリ
ックス材料の組み合わせおよび加工方法を工夫すること
で、色素分子を凝集させ、「H会合体」や「J会合体」
などと呼ばれる特殊な会合体を形成させることができる
ことが知られているが、液状のマトリックス材料中のナ
フトキノンまたはアントラキノン誘導体分子をこのよう
な凝集状態もしくは会合状態を形成する条件で使用して
も良い。
【0056】[光学素子]本発明において、固体、ガラ
ス状態ないしゴム状態の光応答性組成物は、適当な形態
の光学素子に加工され、使用される。その際、光学ガラ
ス、石英ガラス、有機ガラスなどの光学材料と組み合わ
せて使用しても良い。
【0057】本発明で用いられる光学素子の形態は、本
発明の光制御装置の構成に応じて、薄膜、厚膜、板状、
ブロック状、円柱状、半円柱状、四角柱状、三角柱状、
凸レンズ状、凹レンズ状、マイクロレンズアレイ状、フ
ァイバー状、マイクロチャンネルアレイ状、および光導
波路型などの中から適宜選択することができる。本発明
で用いられる光学素子の作成方法は、光学素子の形態お
よび使用する光応答性組成物の種類に応じて任意に選定
され、公知の方法を用いることができる。
【0058】例えば、薄膜状の光学素子を例えば固体、
ガラス状態ないしゴム状態の光応答性組成物から製造す
る場合、ナフトキノンまたはアントラキノン誘導体およ
び固体、ガラス状態ないしゴム状態のマトリックス材料
を溶解した溶液を例えばガラス板上に塗布法、ブレード
コート法、ロールコート法、スピンコート法、ディッピ
ング法、スプレー法などの塗工法で塗工するか、あるい
は、平版、凸版、凹版、孔版、スクリーン、転写などの
印刷法で印刷すれば良い。この場合、ゾルゲル法による
無機系マトリックス材料作成方法を利用することもでき
る。
【0059】例えば、用いる有機高分子系マトリックス
材料が熱可塑性の場合、ホットプレス法(特開平4−9
9609号公報)や延伸法を用いても薄膜ないし厚膜状
の膜型光学素子を作成することができる。
【0060】板状、ブロック状、円柱状、半円柱状、四
角柱状、三角柱状、凸レンズ状、凹レンズ状、マイクロ
レンズアレイ状の光学素子を作成する場合は、例えば有
機高分子系マトリックス材料の原料モノマーにナフトキ
ノンまたはアントラキノン誘導体を溶解または分散させ
たものを用いてキャスティング法やリアクション・イン
ジェクション・モールド法で成形することができる。ま
た、熱可塑性の有機高分子系マトリックス材料を用いる
場合、ナフトキノンまたはアントラキノン誘導体を溶解
または分散したペレットまたは粉末を加熱溶融させてか
ら射出成形法で加工しても良い。
【0061】ファイバー状の光学素子は、例えば、金属
イオンをドープした石英ガラスを溶融延伸してファイバ
ー化する方法、ガラスキャピラリー管の中に有機高分子
系マトリックス材料の原料モノマーにナフトキノンまた
はアントラキノン誘導体を溶解または分散させたものを
流し込むか、または、毛管現象で吸い上げたものを重合
させる方法、または、ナフトキノンまたはアントラキノ
ン誘導体を溶解または分散させた熱可塑性の有機高分子
系マトリックス材料の円柱、いわゆるプリフォームをガ
ラス転移温度よりも高い温度まで加熱、糸状に延伸して
から、冷却する方法などで作成することができる。
【0062】上記のようにして作成したファイバー状の
光学素子を多数束ねて接着ないし融着処理してから薄片
状ないし板状にスライスすることによりマイクロチャン
ネルアレイ型の光学素子を作成することもできる。
【0063】導波路型の光学素子は、例えば、基板上に
作成した溝の中に有機高分子系マトリックス材料の原料
モノマーにナフトキノンまたはアントラキノン誘導体を
溶解または分散させたものを流し込んでから重合させる
方法、または、基板上に形成した薄膜状光学素子をエッ
チングして「コア」パターンを形成し、次いで、ナフト
キノンまたはアントラキノン誘導体を含まないマトリッ
クス材料で「クラッド」を形成する方法によって作成す
ることができる。
【0064】本発明では、前記制御光および前記信号光
を収束させるための収束手段、および/または、前記光
学素子中の前記光応答性組成物を透過した後、発散して
いく信号光光線束のうち、前記強度変調および/または
光束密度変調を強く受けた領域の信号光光線束を分別し
て取り出す手段、および/または、前記光学素子中の前
記光応答性組成物を透過してきた信号光と制御光の混合
光を信号光と制御光とに分離する手段を、前記光学素子
に組み込んだ一体構造の光学素子を用いることができ
る。
【0065】[光学セル]本発明において、前記光応答
性組成物が液体の場合、前記液状光応答性組成物を充填
した光学セルを前記光学素子として使用する。
【0066】本発明で用いられる光学セルは、液状の光
応答性組成物を保持する機能、および液状の光応答性組
成物に実効的に形態を付与する機能を有し、更に、収束
されて照射される信号光および制御光を受光して前記光
応答性組成物へ前記信号光および前記制御光を伝搬させ
る機能、および前記光応答性組成物を透過した後、発散
していく前記信号光を伝搬させて出射する機能を有する
ものである。
【0067】本発明で用いられる光学セルの形態は外部
形態と内部形態に大別される。
【0068】光学セルの外部形態は、本発明の光制御装
置の構成に応じて、板状、直方体状、円柱状、半円柱
状、四角柱状、三角柱状、などの形状のものが用いられ
る。
【0069】光学セルの内部形態とは、すなわち、光応
答性組成物を充填するための空洞の形態であり、液状の
光応答性組成物に、実効的に形態を付与するものであ
る。本発明の光制御装置の構成に応じて、光学セルの内
部形態は具体的には、例えば、薄膜、厚膜、板状、直方
体状、円柱状、半円柱状、四角柱状、三角柱状、凸レン
ズ状、凹レンズ状、などの中から適宜選択することがで
きる。
【0070】光学セルの構成および材質は、下記の要件
を満たすものであれば任意のものを使用することができ
る。
【0071】(1)上記のような外部形態および内部形
態を使用条件において精密に維持できること。
【0072】(2)光応答性組成物に対して不活性であ
ること。
【0073】(3)光応答性組成物を構成する諸成分の
放散・透過・浸透による組成変化を防止できること。
【0074】(4)光応答性組成物が、酸素や水など使
用環境に存在する化合物と反応することによって劣化す
ることを妨げることができること。
【0075】なお、上記要件のうち、光応答性組成物の
組成変化や劣化を防止する機能は、光学素子としての設
計寿命の範囲内に限り発揮できれば良い。
【0076】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づき本発明の実施
形態について説明する。
【0077】〔実施形態1〕図61には本実施形態の光
制御装置の概略構成が示されている。このような光学装
置構成および配置は、図61に例示するように膜型光学
素子8を用いる場合の他、ファイバー型光学素子(図示
せず)を用いる場合、光導波路型(図示せず)、マイク
ロチャンネルアレイ型(図示せず)などの光学素子を用
いる場合、および、液状の光応答性組成物を充填した光
学セルを用いる場合(実施形態3参照)にも好適に用い
ることができる。
【0078】ここで、膜型光学素子8は例えば以下の手
順で作成することができる。すなわち、下記の式[6]
で表されるアントラキノン誘導体(慣用名ソルベントブ
ルー35)
【化11】 :3.31mgおよびポリメタクリル酸2−ヒドロキシ
プロピル:1996.7mgをアセトン:200mlに
溶解し、水:1000ml中へかき混ぜながら加えて析
出した沈殿(アントラキノン色素およびポリマーの混合
物)を濾別し、水で洗浄してから減圧下乾燥し、粉砕し
た。得られたアントラキノン色素およびポリマーの混合
粉末を10-5Pa未満の超高真空下、40℃で2日間加
熱を続け、残留溶媒等の揮発成分を完全に除去して、光
応答性組成物の粉末を得た。この粉末20mgをスライ
ドガラス(25mm×76mm×厚さ1.150mm)
およびカバーガラス(18mm×18mm×厚さ0.1
50mm)の間に挟み、真空下150℃に加熱し、2枚
のガラス板を圧着する方法(真空ホットプレス法)を用
いてスライドガラス/カバーガラス間にアントラキノン
色素/ポリマーの膜(膜厚120μm)を作成した。な
お、アントラキノン色素/ポリマー膜中の色素濃度は、
色素/ポリマー混合物の密度を1.06として計算する
と、5.0×10-3mol/lである。
【0079】この膜の透過率は制御光の波長(633n
m)で0.8%、信号光の波長(780nm)で84%
であった。
【0080】図61に概要を例示する本発明の光制御装
置は、制御光の光源1、信号光の光源2、NDフィルタ
ー3、シャッター4、半透過鏡5、光混合器6、集光レ
ンズ7、膜型光学素子8、受光レンズ9、波長選択透過
フィルター20、絞り19、光検出器11および22、
およびオシロスコープ100から構成される。これらの
光学素子ないし光学部品のうち、制御光の光源1、信号
光の光源2、光混合器6、集光レンズ7、膜型光学素子
8、受光レンズ9、および、波長選択透過フィルター2
0は、図61の装置構成で本発明の光制御方法を実施す
るために必須の装置構成要素である。なお、NDフィル
ター3、シャッター4、半透過鏡5、および絞り19は
必要に応じて設けるものであり、また、光検出器11お
よび22、およびオシロスコープ100は、本発明の光
制御方法を実施するためには必要ないが光制御の動作を
確認するための電子装置として、必要に応じて用いられ
る。
【0081】次に、個々の構成要素の特徴ならびに動作
について説明する。
【0082】制御光の光源1にはレーザー装置が好適に
用いられる。その発振波長および出力は、本発明の光制
御方法が対象とする信号光の波長および使用する光応答
性組成物の応答特性に応じて適宜選択される。レーザー
発振の方式については特に制限はなく、発振波長帯域、
出力、および経済性などに応じて任意の形式のものを用
いることができる。また、レーザー光源の光を非線形光
学素子によって波長変換してから使用しても良い。具体
的には例えば、アルゴンイオンレーザー(発振波長45
7.9ないし514.5nm)、ヘリウム・ネオンレー
ザー(633nm)などの気体レーザー、ルビーレーザ
ーやNd:YAGレーザーなどの固体レーザー、色素レ
ーザー、半導体レーザーなどを好適に使用することがで
きる。信号光の光源2にはレーザー光源からのコヒーレ
ント光だけではなく非コヒーレント光を使用することも
できる。また、レーザー装置、発光ダイオード、ネオン
放電管など、単色光を与える光源の他、タングステン電
球、メタルハライドランプ、キセノン放電管などからの
連続スペクトル光を光フィルターやモノクロメーターで
波長選択して用いても良い。
【0083】本発明の光制御方法で利用される光応答性
組成物、信号光の波長帯域、および制御光の波長帯域
は、これらの組み合わせとして、使用目的に応じて適切
な組み合わせが選定され、用いられる。以下、信号光の
光源2として半導体レーザー(発振波長780nm、連
続発振出力6mW、ビーム整形後の直径約8mmのガウ
スビーム)、制御光の光源1としてヘリウム・ネオンレ
ーザー(発振波長633nm、ビーム直径2mmのガウ
スビーム)、および前記の光応答性組成物から成る膜型
光学素子8の組み合わせを用いた場合について実施形態
を説明する。
【0084】NDフィルター3は必ずしも必要ではない
が、装置を構成する光学部品や光学素子へ必要以上に高
いパワーのレーザー光が入射することを避けるため、ま
た、本発明で用いられる光学素子の光応答性能を試験す
るにあたり、制御光の光強度を増減するために有用であ
る。この実施形態では後者の目的で数種類のNDフィル
ターを交換して使用した。
【0085】シャッター4は、制御光として連続発振レ
ーザーを用いた場合に、これをパルス状に明滅させるた
めに用いられるものであり、本発明の光制御方法を実施
する上で必須の装置構成要素ではない。すなわち、制御
光の光源1がパルス発振するレーザーであり、そのパル
ス幅および発振間隔を制御できる形式の光源である場合
や、適当な手段であらかじめパルス変調されたレーザー
光を光源1として用いる場合は、シャッター4を設けな
くても良い。
【0086】シャッター4を使用する場合、その形式と
しては任意のものを使用することができ、例えば、オプ
ティカルチョッパ、メカニカルシャッター、液晶シャッ
ター、光カー効果シャッター、ポッケルセル、音響光学
(AO)変調器などを、シャッター自体の作動速度を勘
案して適時選択して使用することができる。
【0087】半透過鏡5は、この実施形態において、本
発明の光制御方法の作用を試験するにあたり、制御光の
光強度を常時見積もるために用いるものであり、光分割
比は任意に設定可能である。
【0088】光検出器11および22は、本発明の光・
光制御による光強度の変化の様子を電気的に検出して検
証するため、また、本発明の光学素子の機能を試験する
ために用いられる。光検出器11および22の形式は任
意であり、検出器自体の応答速度を勘案して適時選択し
て使用することができ、例えば、光電子増倍管やフォト
ダイオード、フォトトランジスターなどを使用すること
ができる。
【0089】前記光検出器11および22の受光信号は
オシロスコープ100などの他、AD変換器とコンピュ
ーターの組み合わせ(図示せず)によってモニターする
ことができる。
【0090】光混合器6は、前記光学素子中を伝播して
いく制御光および信号光の光路を調節するために用いる
ものであり、本発明の光制御方法および光制御装置を実
施するにあたり重要な装置構成要素の一つである。偏光
ビームスプリッター、非偏光ビームスプリッター、また
はダイクロイックミラーのいずれも使用することがで
き、光分割比についても任意に設定可能である。
【0091】集光レンズ7は、信号光および制御光に共
通の収束手段として、光路が同一になるように調節され
た信号光および制御光を収束させて前記光学素子へ照射
するためのものであり、本発明の光制御方法および光制
御装置の実施に必須な装置構成要素の一つである。集光
レンズの焦点距離、開口数、F値、レンズ構成、レンズ
表面コートなどの仕様については任意のものを適宜使用
することができる。
【0092】この実施形態では集光レンズ7として、倍
率40倍、焦点距離5mm、開口数0.65の顕微鏡用
対物レンズを用いた。
【0093】受光レンズ9は、収束されて光学素子8へ
照射され、透過してきた信号光および制御光を平行およ
び/または収束ビームに戻すための手段であるが、本実
施形態に示すように、前記集光レンズ7の開口数より小
さい開口数のレンズを用いることによって、充分な大き
さで強度変調および/または光束密度変調された信号光
を再現性良く分別して取り出すことができる。本実施形
態では受光レンズ9として、例えば、倍率20倍、開口
数0.4の顕微鏡レンズを用いた。すなわち、集光レン
ズ7の開口数より受光レンズ9の開口数を小さくするこ
とにより、信号光の光束のうち、強度変調および/また
は光束密度変調を強く受けた領域の光束を分別して取り
出すことが可能となり、充分な大きさで変調を受けた信
号光を再現性良く検出できるようになる。もちろん、レ
ンズ開口数が大きくても、絞り19を入れたり、光検出
器22に光束の中心部分のみ入射させて実質的に開口数
を小さくしても良いことはいうまでもない。また、後で
述べるように、集光レンズ7および受光レンズ9の代わ
りに凹面鏡を用いることも可能である(実施形態4参
照)。
【0094】波長選択透過フィルター20は、図61の
装置構成で本発明の光制御方法を実施するために必須の
装置構成要素の一つであり、前記光学素子中の同一の光
路を伝播してきた信号光と制御光の混合光から信号光の
みを取り出すための手段の一つとして用いられる。
【0095】波長の異なる信号光と制御光とを分離する
ための手段としては他に、プリズム、回折格子、ダイク
ロイックミラーなどを使用することができる。
【0096】図61の装置構成で用いられる波長選択透
過フィルター20としては、制御光の波長帯域の光を完
全に遮断し、一方、信号光の波長帯域の光を効率良く透
過することのできるような波長選択透過フィルターであ
れば、公知の任意のものを使用することができる。例え
ば、色素で着色したプラスチックやガラス、表面に誘電
体多層蒸着膜を設けたガラスなどを用いることができ
る。
【0097】以上のような構成要素から成る図61の光
学装置において、光源1から出射された制御光の光ビー
ムは、透過率を加減することによって透過光強度を調節
するためのNDフィルター3を通過し、次いで制御光を
パルス状に明滅するためのシャッター4を通過して、半
透過鏡5によって分割される。
【0098】半透過鏡5によって分割された制御光の一
部は光検出器11によって受光される。ここで、光源2
を消灯、光源1を点灯し、シャッター4を開放した状態
において光学素子8への光ビーム照射位置における光強
度と光検出器11の信号強度との関係をあらかじめ測定
して検量線を作成しておけば、光検出器11の信号強度
から、光学素子8に入射する制御光の光強度を常時見積
もることが可能になる。この実施形態では、NDフィル
ター3によって、膜型光学素子8へ入射する制御光のパ
ワーを0.5mWないし25mWの範囲で調節した。
【0099】半透過鏡5で分割・反射された制御光は、
光混合器6および集光レンズ7を通って、光学素子8に
収束されて照射される。膜型光学素子8を通過した制御
光の光ビームは、受光レンズ9を通過した後、波長選択
透過フィルター20によって遮断される。
【0100】光源2から出射された信号光の光ビーム
は、前記光混合器6によって、制御光と同一光路を伝播
するよう混合され、集光レンズ7を経由して、膜型光学
素子8に収束・照射され、素子を通過した光は受光レン
ズ9および波長選択透過フィルター20を透過した後、
必要に応じて設けられる絞り19を通過した後、光検出
器22にて受光される。
【0101】図61の光学装置を用いて本発明の光制御
方法を実施し、図62および図63に示すような光強度
変化を観測した。図62および図63において、111
は光検出器11の受光信号、222および223は光検
出器22の受光信号である。光検出器22の受光信号2
22の得られる場合と223の得られる場合の違いは、
以下の通りである。
【0102】図61の装置配置においては膜型光学素子
8に制御光と信号光とを収束して入射させているが、収
束ビーム径が最小となる位置(焦点Fc )を膜型光学素
子8の集光レンズ7に近い所(光の入射側)に設定する
と、前記光学素子8を透過した前記信号光の見かけの強
度が減少する方向の光応答222が観察される。一方、
収束ビーム径が最小となる位置(焦点Fc )を膜型光学
素子8の受光レンズ9に近い所(光の出射側)に設定す
ると、前記光学素子8を透過した前記信号光の見かけの
強度が増大する方向の光応答223が観察される。
【0103】このような光応答が生じる機構の詳細につ
いては未解明であり、現在、鋭意検討中であるが、制御
光の照射により光応答性組成物の透過率や屈折率等が変
化することに起因するものと推測される。
【0104】ここで、同一の光路で収束された制御光と
信号光の焦点位置と光学素子の位置関係を変化させる方
法としては、例えば精密ネジによる微動機構を設けた架
台、圧電素子アクチュエータを設けた架台、または超音
波アクチュエータを設けた架台などの上に膜型光学素子
8を取り付けて上記のように移動させる他、集光レンズ
7の材質に非線形屈折率効果の大きいものを用いて制御
光パルスのパワー密度を変えて焦点位置を変化させる方
法、集光レンズ7の材質に熱膨張係数の大きいものを用
いて加熱装置で温度を変えて焦点位置を変化させる方法
などを用いることができる。
【0105】図61の光学装置を用いて本発明の光制御
方法を実施し、図62および図63に示すような光強度
変化を観測した。その詳細は以下に述べる通りである。
【0106】まず、制御光の光ビームと信号光の光ビー
ムとが、膜型光学素子8内部または近傍の同一領域で焦
点Fc を結ぶように、それぞれの光源からの光路、光混
合器6、および集光レンズ7を調節した。なお、前記膜
型光学素子8のカバーガラス側から信号光および制御光
が入射し、スライドガラス基板側から出射するような向
きに光学素子を配置した。次いで、波長選択透過フィル
ター20の機能を点検した。すなわち、光源2を消灯し
た状態で、光源1を点灯し、シャッター4を開閉した場
合には光検出器22に応答が全く生じないことを確認し
た。
【0107】なお、収束ビーム径最小位置(焦点Fc )
と膜型光学素子8の位置関係を変化させるにあたって
は、以下に示す方法を用いた。すなわち、集光レンズ7
および受光レンズ9の間隔(d78+d89)を固定したま
ま、精密ネジによる微動機構を設けた架台に取り付けた
膜型光学素子8の位置を光軸方向に移動し、膜型光学素
子8と集光レンズ7の距離を変化させ、同一の光路で収
束された制御光および信号光の焦点位置と膜型光学素子
8との位置関係を変化させた。
【0108】まず前記焦点Fc を膜型光学素子8の集光
レンズ7側に設置した場合について述べる。この場合
の、制御光の波形111に対する信号光の応答波形22
2を図62に示す。
【0109】シャッター4を閉じた状態で制御光の光源
1を点灯し、次いで、時刻t1 において光源2を点灯し
光学素子8へ信号光を照射すると、光検出器22の信号
強度はレベルCからレベルAへ増加した。
【0110】時刻t2 においてシャッター4を開放し、
光学素子8内部の信号光が伝播しているのと同一の光路
へ制御光を収束・照射すると光検出器22の信号強度は
レベルAからレベルBへ減少した。すなわち、信号光の
見かけの強度が減少する方向の光応答が観察された。こ
の変化の応答時間は2マイクロ秒未満であった。
【0111】時刻t3 においてシャッター4を閉じ、光
学素子8への制御光照射を止めると光検出器22の信号
強度はレベルBからレベルAへ復帰した。この変化の応
答時間は3マイクロ秒未満であった。
【0112】時刻t4 においてシャッター4を開放し、
次いで、時刻t5 において閉じると、光検出器22の信
号強度はレベルAからレベルBへ減少し、次いでレベル
Aへ復帰した。
【0113】時刻t6 において光源2を消灯すると光検
出器22の出力は低下し、レベルCへ戻った。
【0114】次いで、前記焦点Fc を膜型光学素子8の
受光レンズ9側に設置した場合について述べる。この場
合の、制御光の波形111に対する信号光の応答波形2
23を図63に示す。
【0115】シャッター4を閉じた状態で制御光の光源
1を点灯し、次いで、時刻t1 において光源2を点灯し
光学素子8へ信号光を照射すると、光検出器22の信号
強度はレベルCからレベルAへ増加した。
【0116】時刻t2 においてシャッター4を開放し、
光学素子8内部の信号光が伝播しているのと同一の光路
へ制御光を収束・照射すると光検出器22の信号強度は
レベルAからレベルDへ増加した。すなわち、信号光の
見かけの強度が増大する方向の光応答が観察された。こ
の変化の応答時間は2マイクロ秒未満であった。
【0117】時刻t3 においてシャッター4を閉じ、光
学素子8への制御光照射を止めると光検出器22の信号
強度はレベルDからレベルAへ復帰した。この変化の応
答時間は3マイクロ秒未満であった。
【0118】時刻t4 においてシャッター4を開放し、
次いで、時刻t5 において閉じると、光検出器22の信
号強度はレベルAからレベルDへ増加し、次いでレベル
Aへ復帰した。
【0119】時刻t6 において光源2を消灯すると光検
出器22の出力は低下し、レベルCへ戻った。
【0120】以上まとめると、膜型光学素子8へ、制御
光を図62または図63の111に示すような波形で表
される光強度の時間変化を与えて照射したところ、信号
光の光強度をモニターして示す光検出器22の出力波形
は図62の222または図63の223に示すように、
制御光の光強度の時間変化に対応して可逆的に変化し
た。すなわち、制御光の光強度の増減または断続により
信号光の透過を制御すること、すなわち光で光を制御す
ること(光・光制御)、または、光で光を変調すること
(光・光変調)ができることが確認された。
【0121】なお、制御の光の断続に対応する信号光の
光強度の変化の程度は、前記の光検出器22の出力レベ
ルA、BおよびCを用いて次に定義される値ΔT[単位
%]または、A、CおよびDを用いて次に定義される値
ΔT’[単位%]
【数1】ΔT =100[(A−B)/(A−C)] ΔT’=100[(D−A)/(A−C)] によって定量的に比較することができる。ここで、Aは
制御光を遮断した状態で信号光の光源2を点灯した場合
の光検出器22の出力レベル、BおよびDは信号光と制
御光を同時に照射した場合の光検出器22の出力レベ
ル、Cは信号光の光源2を消灯した状態の光検出器22
の出力レベルである。
【0122】上の例において、制御光の入射パワーを2
0mWとし、膜型光学素子8を移動して信号光の光応答
の向きと大きさを調べたところ、信号光強度が減少する
向きの応答の大きさΔTの最大値は84%、見かけの信
号光強度が増加する向きの応答の大きさΔT’の最大値
は35%であった。
【0123】上記のように収束ビーム径が最小となる位
置(焦点Fc )と膜型光学素子8の位置関係を変えるこ
とによって、信号光の光応答の向きを逆転させ、信号光
の見かけの強度が減少する方向、または、増加する方向
の応答を得ることができる。このような光応答変化の生
じる機構を調べるため、光制御を行った場合に起こる信
号光ビーム断面における光強度分布の変化の測定を行っ
た。すなわち、図61の装置において、受光レンズ9を
集光レンズ7の開口数(本実施形態の場合は0.65)
よりも大きな開口数(例えば0.75)のものに変更
し、絞り19を取り外し、光検出器22の代わりに光強
度分布測定器(図64)を設置し、膜型光学素子8を透
過した光線束のすべてを受光レンズ9で受光・収束させ
て前記光強度分布測定器の受光部31(有効直径4m
m)へ入射させ、信号光光線束断面の光強度分布を測定
した。測定結果を図65、66および67に示す。ここ
で、光強度分布測定器は、図64に示すように、受光部
31(有効直径4mm)に対して幅1mmの第一のスリ
ット32を設け、第一のスリットの長さ方向、すなわち
図64において点Xから点Yの向きに、幅25μmの第
二のスリット33を一定速度で移動させて、2枚のスリ
ットが作る1mm×25μmの長方形の窓を通過した光
の強度を、前記窓の移動位置に対応させて測定する装置
である。前記窓の移動位置に対応させて光強度を測定す
るには、例えば、第二のスリット33の移動速度に同期
させたストレージオシロスコープ上に、前記窓を通過し
た光を受光した検出器の出力を記録すれば良い。図6
5、66および67は、以上のようにして、ストレージ
オシロスコープ上に記録された信号光の光ビーム断面に
ついての光強度分布を示すものであり、横軸(光ビーム
断面内の位置)は図64の点Xから点Yの方向の位置に
対応し、縦軸は光強度を表す。
【0124】図65は、膜型光学素子8に制御光が入射
せず、信号光のみが入射した場合の前記信号光ビーム断
面の光強度分布である。この場合の光強度分布は、中心
部分の強度が強く、周辺に行くに従い強度が弱まる分布
(おおむね「ガウス分布」)である。
【0125】図66は、収束ビーム径が最小となる位置
(焦点Fc )を膜型光学素子8の集光レンズ7に近い所
(光の入射側)に設定し、制御光を照射したとき見かけ
の信号光強度が減少する向きの光応答222が観察され
る条件において、制御光を照射したときの信号光ビーム
断面の光強度分布である。この場合の光強度分布は、中
心部分の光強度が弱く、周辺で光強度が増大する分布に
なっている。信号光ビーム断面の中心部の光強度は、制
御光強度および膜型光学素子8と焦点の位置関係に依存
して減少し、制御光強度が増すに従い、ゼロに近づいて
いく。したがって、この場合、信号光ビームの中心部分
だけを取り出して、見かけの信号光強度を測定すると、
制御光の断続に対応して、信号光の強度が減少する向き
の光応答222を、充分な大きさで取り出すことができ
る。
【0126】図67は、収束ビーム径が最小となる位置
(焦点Fc )を膜型光学素子8の受光レンズ9に近い所
(光の出射側)に設定し、制御光を照射したとき見かけ
の信号光強度が増大する向きの光応答223が観察され
る条件において、制御光を照射したときの信号光ビーム
断面の光強度分布である。この場合は、中心部分の光強
度が、制御光を照射しない場合の中心部分の光強度(図
65)より強くなっている。この場合、信号光ビーム断
面の中心部の光強度は、制御光強度および膜型光学素子
8を焦点位置の関係に依存するが、制御光非照射時の数
倍にも達する。したがって、この場合、信号光ビームの
中心部分だけを取り出して、見かけの信号光強度を測定
すると、制御光の断続に対応して、信号光の強度が増大
する向きの光応答223を充分な大きさで取り出すこと
ができる。
【0127】以上の実験から、制御光の断続による信号
光の光強度変調(光応答)は、信号光ビーム(光束)断
面の中心部で、特に大きく起きていることが判る。した
がって、本発明の主旨とは逆に、受光レンズ9の開口数
を集光レンズ7の開口数よりも大きくして、光学素子8
を透過した信号光をすべて補足し、光検出器で受光した
場合、検出される光応答は、本発明の場合に比べて著し
く小さくなってしまう。また、光検出器に、制御光によ
る光変調を受けた部分以外のノイズ成分が取り込まれて
しまい、S/N比が著しく悪くなってしまう。
【0128】〔比較例1〕前記の式[6]で表されるア
ントラキノン色素を用いずにポリメタクリル酸2−ヒド
ロキシプロピルのみを用いた他は実施形態1と同様にし
てマトリックス材料単独の薄膜(膜厚120μm)を作
成し、この薄膜について実施形態1と同様にして光応答
の評価試験を行ったが、制御光(波長633nm)の光
を断続しても信号光(波長780nm)の光強度は全く
変化しなかった。すなわち、マトリックス材料単独では
光応答は全く観測されないことが確認された。したがっ
て、実施形態1で観察された光応答は、前記光学素子中
に存在する前記アントラキノン色素に起因することは明
らかである。
【0129】〔実施形態2〕本発明の光制御方法および
光制御装置において光応答を大きくするためには前記制
御光および前記信号光を各々収束させて前記光学素子へ
照射し、かつ、前記制御光および前記信号光のそれぞれ
の焦点の近傍の光子密度が最も高い領域が前記光学素子
中において互いに重なり合うように前記制御光および前
記信号光の光路をそれぞれ配置すれば良いが、そのため
には信号光および制御光を実質的に同一光路で伝播させ
ることが好ましい。なお、前記制御光および前記信号光
の電場の振幅分布がガウス分布となっているガウスビー
ムの場合、集光レンズ7などで、開き角2θで収束させ
たときの焦点Fc 近傍における光線束および波面30の
様子を図68に示す。ここで、波長λのガウスビームの
直径2ω0 が最小になる位置、すなわちビームウエスト
の半径ω0 は次の式で表される。
【0130】
【数2】ω0 = λ/(π・θ) 例えば、実施形態1で用いた集光レンズ(焦点距離5m
m、開口数0.65)で波長633nm、ビーム直径2
mmの制御光を収束したときのビームウエストの半径ω
0 は1.02μm、同様にして波長780nm、ビーム
直径8mmの信号光を収束したときのビームウエストの
半径ω0 は0.368μm(ほぼ回折限界)と計算され
る。
【0131】図69に示すように、信号光および制御光
が「実質的に同一光路」とみなすことができるのは次の
ような場合である: 1)制御光と信号光の光軸が互いに平行であって、制御
光の光路、例えば断面L02(半径r2 )の中に信号光の
光路、例えば断面L+1、L01、またはL-1(半径r1
1 ≦r2 )が重なって伝搬する場合、 2)制御光と信号光の光軸が互いに平行であって、信号
光の光路、例えば断面L02(半径r2 )の中に制御光の
光路、例えば断面L+1、L01、またはL-1(半径r1
1 ≦r2 )が重なって伝搬する場合、 3)制御光と信号光の光軸が互いに平行(光軸間の距離
+1、l-1、またはl+1+l-1)であって、制御光の光
路が断面L+1、L01、またはL-1のいずれか、信号光の
光路も断面L+1、L01、またはL-1のいずれかである場
合。
【0132】表1のデータは、一例として、実施形態1
の装置において、集光レンズ7として、開口数0.65
の顕微鏡用対物レンズを用い、受光レンズ9として、開
口数0.4の顕微鏡用レンズを用い、収束ビーム径が最
小となる位置(焦点)を膜型光学素子8の集光レンズ7
に近い所(光の入射側)に設定し、前記光学素子を透過
した前記信号光が減少する方向の光応答222が観察さ
れる条件下、信号光の光路を断面L02(直径8mm)に
固定し、断面L+1、L01、またはL-1(直径2mm)の
制御光の光路(光軸)を光軸間の距離l+1またはl-1
して±1.2mm平行移動した場合の、信号光・光応答
の大きさΔTの変化を示したものである。信号光および
制御光の光軸が完全に一致している場合の光応答が最大
であるが、光軸間の距離l+1またはl-1が±0.6mm
程度ずれても、光応答の大きさΔTは8ポイントほど変
化するにすぎない。
【0133】すなわち、収束された信号光および制御光
のそれぞれの焦点の近傍の光子密度が最も高い領域(ビ
ームウエスト)が前記光学素子中において互いに重なり
合うように前記制御光および前記信号光の光路がそれぞ
れ配置され、これらの領域の重なり合いが最大になった
とき、すなわち、前記制御光および前記信号光の光軸が
完全に一致したとき前記光応答は最大になること、前記
制御光および前記信号光の光路が実質的に同一のとき、
充分大きな光応答が得られることが判った。
【0134】
【表1】 〔実施形態3〕図61に概略構成を示すような実施形態
1の光制御装置において、実施形態1における膜型の光
学素子8の代わりに、内部形態が薄膜型の光学セル80
0または810に液状の光応答性組成物を充填して用い
る場合について以下に説明する。なお、図61のような
光学装置構成および配置は、内部形態が薄膜型の光学セ
ルを用いる場合の他、外部および内部形態が板状、直方
体状、円柱状、半円柱状、四角柱状などの光学セルを用
いる場合にも好適に用いることができる。
【0135】ここで、内部形態が薄膜型の光学セルは例
えば以下のような構成のものである。
【0136】(1)光学ガラスまたは石英ガラス製セル
800(図70)。
【0137】(2)2枚の板ガラスをスペーサーおよび
ゴムパッキンを挟んで重ね合わせ、固定用の金属枠で保
持した構成の組立式光学セル810(図71)。
【0138】図70に示すような光学ガラスまたは石英
ガラス製セル800は入射・出射面ガラス801および
802、側面ガラス803および804、および、底面
ガラス805によって、液状光応答性組成物充填部80
8を形成したものである。ガラス材質としては石英ガラ
スのほか、ソーダガラス、ホウケイ酸ガラスなどの光学
ガラスを使用することができ、公知のガラス加工技術に
よって製造することができる。光学セルとしての精度を
獲得するためには、ガラス加工時に、入射・出射面ガラ
ス801および802の平面性および平行度を高度に維
持する必要がある。液状の光応答性組成物は導入口80
7から導入管806を通じて充填される。導入口807
に例えばポリ四フッ化エチレン製栓(図示せず)を挿入
すること、あるいは、導入口807をガラス加工で封じ
ることによって、充填した液状光応答性組成物を光学セ
ル中に封印し、前記の光学セルの機能要件を満たすこと
ができる。光学ガラスまたは石英ガラス製セル800
は、ガラスを腐食する溶液、例えば強アルカリ性の液
体、フッ化水素酸、またはホウフッ化水素酸などを用い
る場合を除き、大多数の有機および無機マトリックス材
料を用いた液状光応答性組成物を充填する際に、広く使
用することができる。特に、マトリックス材料として、
塩酸、硫酸、硝酸、王水、クロルスルホン酸、メタンス
ルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、クロル酢
酸、トリクロル酢酸、トリフルオロ酢酸、酢酸などの酸
を用いる場合に有用である。
【0139】図70に示すガラス製光学セル800と同
じような形態を、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレ
ン、ポリカーボネイトなどの透明プラスチック(有機ガ
ラス)で製造し、光学セルとして使用することもでき
る。ただし、この場合は、マトリックス材料が該プラス
チックを溶解したり侵したりしないよう、材料選択・組
み合わせに留意する必要がある。
【0140】図71に示すような組立式光学セル810
は、液状光応答性組成物充填部818を設けたスペーサ
ー814を2枚の板状の入射・出射面ガラス813およ
び815で挟み、これをゴムパッキン812および81
6を介して固定枠811および817で挟み、固定ネジ
穴824および825にネジ(図示せず)を用いて固定
するものである。固定枠817に取り付けた導入管82
2および823は、固定枠817に設けた導入孔82
1、ゴムパッキン816に設けた導入孔820、次いで
入射・出射面ガラス815に設けた導入孔819に通じ
ており、これらの導入経路を通して液状の光応答性組成
物を充填部818へ導入することができる。充填部81
8の厚さ、すなわち、信号光および/または制御光が垂
直に入射したとき光応答性組成物中を伝播する光路長
は、組立時のスペーサー818の厚さによって決定され
る。スペーサー814、入射・出射面ガラス813およ
び815、ゴムパッキン812および815、および、
固定枠811および817は、すべて液状の光応答性組
成物に接触するので、液状のマトリックス材料の溶解
性、浸透性、透過性、および/または腐食性に耐える材
質である必要がある。具体的には、スペーサー814の
材質は光学ガラス、石英ガラス、ポリ四フッ化エチレ
ン、ブチルゴム、シリコンゴム、エチレン・プロピレン
ゴムなどが好ましい。特に、前記光路長の精度維持と液
のシール性維持を両立させるためには、ポリ四フッ化エ
チレンなどのフッ素系高分子材料が好適に用いられる。
入射・出射面ガラス813および815としては、石英
ガラスのほか、合成サファイア、ソーダガラス、ホウケ
イ酸ガラスなどの光学ガラスを使用することができる。
また、前記マトリックス材料が無機ガラスを腐食する液
体の場合、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン、ポ
リカーボネイトなどの有機ガラスを用いることもでき
る。ゴムパッキン812および816の材質としては、
ブチルゴム、シリコンゴム、エチレン・プロピレンゴ
ム、放射線照射架橋したフッ素樹脂系ゴムなどを用いる
ことができる。固定枠811および817はステンレ
ス、金メッキした真鍮などの金属製のものを好適に用い
ることができる。
【0141】以下、光学素子8として、液状光応答性組
成物の膜厚(垂直入射した場合の光路長)が100μm
になるように調製された石英ガラス製セル800に前記
の式[6]で表されるアントラキノン誘導体のジクロロ
メタン溶液(濃度5×10-3mol/l)を液状の光応
答性組成物として充填したものを用いた場合について説
明する。この場合の光学素子8の透過率スペクトルを図
72に示す。この光学素子8の透過率は制御光の波長
(633nm)で16%、信号光の波長(780nm)
で91%であった。
【0142】この光学素子8(薄膜型光学セル800)
を実施形態1の場合と同様な光制御装置(図61)に取
り付け、制御光および信号光の収束ビーム径が最小とな
る位置(焦点Fc )と膜型光学素子8の位置関係を変え
ながら、制御光の断続に対応した信号光の光応答の向き
および大きさを実施形態1の場合と同様にして調べた。
すなわち、信号光の光源2として半導体レーザー(発振
波長780nm、連続発振出力6mW、ビーム整形後の
直径約8mmのガウスビーム)を、制御光の光源1とし
てヘリウム・ネオンレーザー(発振波長633nm、ビ
ーム直径2mmのガウスビーム)を、集光レンズ7とし
て倍率20倍、開口数0.4の顕微鏡用レンズを、受光
レンズ9として倍率10倍、開口数0.3の顕微鏡用対
物レンズを用い、集光レンズ7および受光レンズ9の間
隔(d78+d89)を固定したまま、光学素子8としての
光学セル800と集光レンズ7の距離を変化させ、同一
の光路で収束された制御光および信号光の焦点位置と薄
膜型光学セル800との位置関係を変化させて実施し
た。
【0143】制御光の入射パワー10mWのとき、信号
光強度が減少する向きの応答の大きさΔTの最大値は9
5%、見かけの信号光強度が増加する向きの応答の大き
さΔT’の最大値は30%であった。なお、制御光の焦
点位置を光学セル内の光応答性組成物の入射側近傍に置
き、制御光を1ミリ秒よりも長いパルス幅で照射した場
合、制御光のパワーを10mWよりも大きくすると、制
御光の焦点位置において、溶剤のジクロロメタンが沸騰
を始めた。溶剤の沸騰は極めて局部的に起こるため、光
学セル内部の圧力上昇は極めて軽微であった。また、制
御光を遮断すると、直ちに沸騰は停止した。
【0144】〔比較例2〕従来の技術に基づく比較実験
を行うため、特開昭53−137884号公報、特開昭
63−231424号公報、および特開昭64−733
26号公報の記述に従い、図73に概要を示すような構
成の装置を用い、光制御を試みた。すなわち、光路長1
cmの石英製溶液セル27に絞り19を通した信号光の
光源2からの半導体レーザー光(波長780nm)を照
射し、透過した光を波長選択透過フィルター20を経由
して光検出器22で受光し、一方、溶液セル27を透過
する信号光の光路全体に、信号光に直交する方向から制
御光を、投射レンズ26を用いて拡散させて照射した。
図73の装置構成において、信号光の光源1(波長63
3nm)、NDフィルター3、シャッター4、半透過鏡
5、および、光検出器11の役割および仕様は実施形態
1または3の場合と同様である。なお、波長選択透過フ
ィルター20は溶液セル27から散乱してくる制御光が
光検出器22に入射するのを防ぐものであり、実施形態
1または3で用いたのと同様のものを用いることができ
る。
【0145】色素としては実施形態3と同様に前記の式
[6]で表されるアントラキノン誘導体を用い、ジクロ
ロメタン溶液を溶液セル27に充填して試験した。色素
濃度については、光路長の相違、すなわち実施形態3の
場合の光路長100μmに対して100倍の光路長1c
mであることを勘案し、実施形態3の場合の100分の
1の濃度(5.0×10-5mol/l)に設定し、実効
的な透過率が実施形態3の場合と同等になるよう調節し
た。実施形態3の場合と同様に、NDフィルター3によ
って、光学素子(溶液セル27)へ入射する制御光のパ
ワーを0.5mWないし25mWの範囲で調節し、制御
光をシャッター4を用いて明滅させた。しかしながら、
制御光のパワーを最大にしても光検出器22へ入射する
信号光の強度は全く変化しないという結果が得られた。
すなわち、制御光のパワーを0.5mWないし25mW
の範囲で調節した限りでは、図73の装置構成・装置配
置において光・光制御は実現できなかった。
【0146】〔実施形態4〕図74には本実施形態の光
制御装置の概略構成が示されている。このような光学装
置構成および配置は、図74に例示するような膜型光学
素子8の他に、ファイバー型、光導波路型、マイクロチ
ャンネルアレイ型などの光学素子を用いる場合、およ
び、液状の光応答性組成物を充填した光学セルを用いる
場合にも好適に用いることができる。
【0147】光源1および2、NDフィルター3、シャ
ッター4、光検出器11および22、膜型光学素子8、
波長選択透過フィルター20、およびオシロスコープ1
00については実施形態1(図61)と同様のものを同
様にして用いた。
【0148】図74に示すような配置でダイクロイック
ミラー21を用いることで、制御光を分割して、その光
強度を光検出器11でモニターすると同時に、制御光と
信号光の光路を重ね合わせることができ、図61の配置
で必要な光混合器6を省略することができる。ただし、
図74の配置においては、ダイクロイックミラー21の
波長選択透過および反射を補完するために、信号光を完
全に遮断し制御光だけを透過させるような波長選択透過
フィルター10を光検出器11の前に設けることが好ま
しい。また、信号光および/または制御光が光源1およ
び2へ戻り、光源装置に悪影響を与えるのを避けるた
め、必要に応じて、光アイソレーター13および14
を、それぞれ光源1および2の前に設けても良い。
【0149】光路を一致させた信号光および制御光を一
緒に収束させて膜型光学素子8へ照射する際の光収束手
段として、集光レンズ7および受光レンズ9の代わり
に、図74のような配置において凹面鏡15および16
を用いることができる。信号光と制御光に共通の収束手
段としてレンズを用いる場合、厳密には波長によって焦
点距離が異なるという問題が生じるが、凹面鏡ではその
心配がない。
【0150】図74に例示するような、本発明の光制御
装置において前記光学素子を透過した後、発散していく
信号光光線束のうち、前記強度変調および/または光束
密度変調を強く受けた領域の信号光光線束を分別して取
り出すには、次のような方法を採用することができる。
【0151】(1)光検出器22の手前に絞り19を設
ける方法。
【0152】(2)照射側の凹面鏡15の開口角よりも
受光側の凹面鏡16の開口角を小さくする方法。
【0153】(3)照射側の凹面鏡15の開口角よりも
受光側の凹面鏡16の開口角を小さくし、更に、光検出
器22の手前に絞り19を設ける方法。
【0154】図74に例示するような、本発明の光制御
装置において必須の装置構成要素は光源1および2、ダ
イクロイックミラー21、波長選択透過フィルター2
0、凹面鏡15、16、および膜型光学素子8である。
なお、図74におけるダイクロイックミラー21の代わ
りに偏光または非偏光のビームスプリッターを用いるこ
ともできる。
【0155】本発明の光制御方法を図74に示すような
装置で行う場合の手順として、まず、制御光(光源1)
と信号光(光源2)の光路が一致し、共通の焦点Fc
(ビームウエスト)位置に光学素子8が配置されるよう
調節を行い、次いで、ダイクロイックミラー21ならび
に波長選択透過フィルター10および20の機能を点検
するため、光源1と2を交互に点灯し、光源1のみ点灯
(シャッター4開放)したとき光検出器22に応答がな
いこと、および光源2のみを点灯したとき光検出器11
に応答がないことを確認した。
【0156】以下、実施形態1の場合と同様にして、前
記膜型光学素子8を用いた光・光制御方法を実施し、実
施形態1の場合と同等の実験結果を得た。
【0157】〔実施形態5〕図75には本実施形態の光
制御装置の概略構成が示されている。図61および図7
4に例示した装置構成では、信号光と制御光を同じ方向
から光応答性光学素子へ照射させているのに比較して、
図75では信号光と制御光を反対方向から、光軸を一致
させて同一の焦点で収束するように照射している点に特
徴がある。
【0158】このような光学装置構成および配置は、図
75に例示するような膜型光学素子8の他に、ファイバ
ー型、光導波路型、マイクロチャンネルアレイ型などの
光学素子を用いる場合、および、液状の光応答性組成物
を充填した光学セルを用いる場合にも好適に用いること
ができる。
【0159】図75に例示する装置構成において光源1
および2、NDフィルター3、シャッター4、集光レン
ズ7、膜型光学素子8、波長選択透過フィルター10お
よび20、光検出器11および22、光アイソレーター
13および14、およびオシロスコープ100について
は実施形態1(図61)および/または実施形態4(図
74)の場合と同様のものを同様にして用いることがで
きる。
【0160】図75に示すような配置で2枚のダイクロ
イックミラー(23および24)を用いることで、信号
光と制御光を反対方向から、光軸を一致させて同一の焦
点で収束するように照射することができる。なお、2つ
の集光レンズ7は、光学素子を透過してきた制御光およ
び信号光をそれぞれ平行ビームへ戻すための受光レンズ
9としての役割を兼ねている。
【0161】図75に例示するような、本発明の光制御
装置において必須の装置構成要素は光源1および2、2
枚のダイクロイックミラー(23および24)、波長選
択透過フィルター10および20、2つの集光レンズ
7、および膜型光学素子8である。
【0162】なお、図75におけるダイクロイックミラ
ー(23および24)の代わりに偏光または非偏光ビー
ムスプリッターを用いることもできる。
【0163】本発明の光制御方法を図75に示すような
装置で行う場合の手順として、まず、制御光(光源1)
と信号光(光源2)の光路が一致し、共通の焦点位置に
光学素子8が配置されるよう調節を行い、次いで、波長
選択透過フィルター10および20の機能を点検するた
め、光源1と2を交互に点灯し、光源1のみ点灯(シャ
ッター4開放)したとき光検出器22に応答がないこ
と、および光源2のみを点灯したとき光検出器11に応
答がないことを確認した。
【0164】以下、実施形態1の場合と同様にして、前
記膜型光学素子8を用いた光・光制御方法を実施し、実
施形態1の場合と同等の実験結果を得た。
【0165】〔実施形態6〕実施形態3における前記の
式[6]で表されるアントラキノン誘導体の代わりに、
色素として、下記の式[7]で表されるアントラキノン
誘導体(慣用名ソルベントグリーン3)
【化12】 を用い、その他は実施形態3に記載の方法と同様にし
て、アントラキノン誘導体のジクロロメタン溶液(濃度
5×10-3mol/l)を液状の光応答性組成物として
前記の石英ガラス製セル800(光路長100μm)に
充填したものを膜型光学素子として用いて、本発明の光
制御方法を実施した。
【0166】なお、この膜型光学素子の透過率スペクト
ルは図76に示す通りであり、透過率は制御光の波長
(633nm)で9.5%、信号光の波長(780n
m)で85%であった。
【0167】実施形態3の場合と同様にして本発明の光
制御方法を実施したところ、制御光の入射パワー5mW
のとき、信号光強度が減少する向きの応答の大きさΔT
の最大値は85%、見かけの信号光強度が増加する向き
の応答の大きさΔT’の最大値は23%であった。な
お、制御光の焦点位置を光学セル内の光応答性組成物の
入射側近傍に置き、制御光を1ミリ秒よりも長いパルス
幅で照射した場合、制御光のパワーを7mWよりも大き
くすると、制御光の焦点位置において、溶剤のジクロロ
メタンが沸騰を始めた。溶剤の沸騰は極めて局部的に起
こるため、光学セル内部の圧力上昇は極めて軽微であっ
た。また、制御光を遮断すると、直ちに沸騰は停止し
た。
【0168】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明の
光制御方法および光制御装置によれば、例えば、可視領
域にあるレーザー光を制御光として、近赤外線領域にあ
る信号光を効率良く変調することが、極めて単純な光学
装置によって、電子回路などを一切用いることなく、実
用上充分な応答速度において実現可能になる。
【0169】また、本発明の光制御方法および光制御装
置を用いた可視光線レーザーによる近赤外線レーザーの
直接変調は、例えば、ポリメチルメタクリレート系プラ
スチック光ファイバー中を伝搬させるのに適した可視光
線レーザーによって、空気中を伝搬させるのに適した近
赤外線レーザーを直接変調するような用途において極め
て有用である。また、例えば光コンピューティングの分
野において新しい光演算方式を開発する上で役立つと期
待される。
【0170】更に、本発明の光制御方法および光制御装
置によれば、光学素子としてナフトキノンまたはアント
ラキノン誘導体をマトリックス材料中に溶解または分散
させた光応答性組成物から成る光学素子を用いることが
でき、前記光学素子に用いられる材料の選択範囲を広
げ、かつ光学素子への加工を容易にし、産業界への利用
の道を広く拓くことができる。
【0171】更に、液状の光応答性組成物を光学素子に
充填して使用することにより、光学散乱を小さくするこ
とができ、できる限り小さいパワーで大きな光応答を示
す光学装置を提供することができる。また、光学素子中
の光応答性組成物の交換を、簡便に実施することができ
る。また、光応答性組成物中に照射された制御光の焦点
近傍の色素が劣化しても、拡散による物質移動によっ
て、光応答性組成物が液状でない場合に比べて長期間、
機能を発揮させることができる。
【0172】更に、揮発性の溶剤を用いて液状光応答性
組成物を作成することによって、過大パワーの制御光が
入射した場合は、前記溶剤が沸騰して泡を発生し、その
結果制御光を遮断し、光学素子が損傷を受けることを防
ぐようにすることができる。
【0173】光学素子に制御光および信号光を各々収束
させる前記収束手段、および/または、光学素子中の光
応答性組成物を透過した後、発散していく信号光光線束
のうち、強度変調および/または光束密度変調を強く受
けた領域の信号光光線束を分別して取り出す手段、およ
び/または、光学素子中の前記光応答性組成物を透過し
てきた信号光と制御光の混合光を、信号光と制御光とに
分離する手段を組み込むことによって、極めてシンプル
かつコンパクトな光制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に用いられるナフトキノン誘導体の構
造を例示した図である。
【図2】 本発明に用いられるナフトキノン誘導体の構
造を例示した図である。
【図3】 本発明に用いられるナフトキノン誘導体の構
造を例示した図である。
【図4】 本発明に用いられるナフトキノン誘導体の構
造を例示した図である。
【図5】 本発明に用いられるナフトキノン誘導体の構
造を例示した図である。
【図6】 本発明に用いられるナフトキノン誘導体の構
造を例示した図である。
【図7】 本発明に用いられるナフトキノン誘導体の構
造を例示した図である。
【図8】 本発明に用いられるナフトキノン誘導体の構
造を例示した図である。
【図9】 本発明に用いられるナフトキノン誘導体の構
造を例示した図である。
【図10】 本発明に用いられるナフトキノン誘導体の
構造を例示した図である。
【図11】 本発明に用いられるナフトキノン誘導体の
構造を例示した図である。
【図12】 本発明に用いられるナフトキノン誘導体の
構造を例示した図である。
【図13】 本発明に用いられるナフトキノン誘導体の
構造を例示した図である。
【図14】 本発明に用いられるナフトキノン誘導体の
構造を例示した図である。
【図15】 本発明に用いられるナフトキノン誘導体の
構造を例示した図である。
【図16】 本発明に用いられるナフトキノン誘導体の
構造を例示した図である。
【図17】 本発明に用いられるナフトキノン誘導体の
構造を例示した図である。
【図18】 本発明に用いられるナフトキノン誘導体の
構造を例示した図である。
【図19】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図20】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図21】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図22】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図23】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図24】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図25】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図26】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図27】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図28】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図29】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図30】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図31】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図32】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図33】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図34】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図35】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図36】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図37】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図38】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図39】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図40】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図41】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図42】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図43】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図44】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図45】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図46】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図47】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図48】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図49】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図50】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図51】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図52】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図53】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図54】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図55】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図56】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図57】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図58】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図59】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図60】 本発明に用いられるアントラキノン誘導体
の構造を例示した図である。
【図61】 本発明を実施する際に用いられる装置構成
を例示した実施形態1の構成図である。
【図62】 制御光および信号光の光強度時間変化を例
示した図である。
【図63】 制御光および信号光の光強度時間変化を例
示した図である。
【図64】 光強度分布測定に用いたスリットと光ビー
ムとの関係を示す図である。
【図65】 信号光のビーム断面の光強度分布を表した
図である。
【図66】 信号光のビーム断面の光強度分布を表した
図である。
【図67】 信号光のビーム断面の光強度分布を表した
図である。
【図68】 集光レンズなどで収束されたガウスビーム
の焦点近傍における様子を表した模式図である。
【図69】 制御光および信号光の光路(および光軸)
の関係を例示した図である。
【図70】 光学ガラスまたは石英ガラス製光学セルを
例示した模式図である。
【図71】 組立式光学セルの構成部品を例示した模式
図である。
【図72】 実施形態3の膜型光学素子(薄膜型光学セ
ル)の透過率スペクトルである。
【図73】 従来技術で用いられている装置構成を例示
した構成図である。
【図74】 本発明を実施する際に用いられる装置構成
を例示した実施形態4の構成図である。
【図75】 本発明を実施する際に用いられる装置構成
を例示した実施形態5の構成図である。
【図76】 実施形態6の膜型光学素子(薄膜型光学セ
ル)の透過率スペクトルである。
【符号の説明】 1 制御光の光源、2 信号光の光源、3 NDフィル
ター、4 シャッター、5 半透過鏡、6 光混合器、
7 集光レンズ、8 光応答性組成物から成る光学素
子、9 受光レンズ、10 波長選択透過フィルター
(信号光遮断用)、11 光検出器、13 光アイソレ
ーター(制御光用)、14 光アイソレーター(信号光
用)、15 凹面鏡、16 凹面鏡、19 絞り、20
波長選択透過フィルター(制御光遮断用)、21 ダ
イクロイックミラー、22 光検出器(信号光の光強度
検出用)、23 ダイクロイックミラー、24 ダイク
ロイックミラー、26 投射レンズ、27 石英製溶液
セル(光路長1cm)、30波面、31 光強度分布測
定器の受光部(有効直径4mm)、32 第一のスリッ
ト(幅1mm)、33 第二のスリット(幅25μ
m)、100 オシロスコープ、111 光検出器11
からの信号(制御光の光強度時間変化曲線)、222お
よび223 光検出器22からの信号(信号光の光強度
時間変化曲線)、800 ガラス製光学セル、801
入射・出射面ガラス、802 入射・出射面ガラス、8
03 側面ガラス、804 側面ガラス、805 底面
ガラス、806 導入管、807 導入口、808 光
応答性組成物充填部、810 組立式光学セル、811
固定枠、812 ゴムパッキン、813 入射・出射
面ガラス、814 スペーサー、815 入射・出射面
ガラス(導入孔付)、816ゴムパッキン(導入孔
付)、817 固定枠(導入管付)、818 光応答性
組成物充填部、819 導入孔、820 導入孔、82
1 導入孔、822 導入管、823 導入管、824
固定ネジ穴、825 固定ネジ穴、A 制御光を遮断
した状態で信号光の光源を点灯した場合の光検出器22
の出力レベル、B焦点Fc が光学素子8の集光レンズ側
に設定された場合で、かつ信号光の光源を点灯した状態
で制御光を照射した場合の光検出器22の出力レベル、
C 信号光を消灯した状態の光検出器22の出力レベ
ル、D 焦点Fc が光学素子8の受光レンズ側に設定さ
れた場合で、かつ信号光の光源を点灯した状態で制御光
を照射した場合の光検出器22の出力レベル、d78
集光レンズ7と光学素子8の距離、d89 光学素子8と
受光レンズ9の距離、Fc 焦点、L01、L+1、L-1
よびL02 信号光または制御光の光ビーム断面、l+1
よびl-1 信号光または制御光の光軸の平行移動距離、
1 信号光または制御光の光ビーム断面L01、L+1
たはL-1の半径、r2 信号光または制御光の光ビーム
断面L02の半径、t1 信号光の光源を点灯した時刻、
2 制御光を遮断していたシャッターを開放した時
刻、t3 制御光をシャッターで再び遮断した時刻、t
4 制御光を遮断したシャッターを開放した時刻、t5
制御光をシャッターで再び遮断した時刻、t6 信号
光の光源を消灯した時刻、θ 集光レンズで収束させた
光ビームの外周部が光軸となす角度、ω0 集光レンズ
で収束させたガウスビームのビームウエスト(焦点位置
におけるビーム半径)。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 宝田 茂 東京都足立区堀之内1丁目9番4号 大 日精化工業株式会社 東京製造事業所内 (72)発明者 柳本 宏光 東京都足立区堀之内1丁目9番4号 大 日精化工業株式会社 東京製造事業所内 (72)発明者 辻田 公二 神奈川県横浜市神奈川区守屋町3丁目12 番地 日本ビクター株式会社内 (72)発明者 上野 一郎 神奈川県横浜市神奈川区守屋町3丁目12 番地 日本ビクター株式会社内 (56)参考文献 特開 平8−286220(JP,A) Appl.Phys.B,1996年 3 月,Vol.62,No.3,293−297 Analytical Chemis try,1989年,Vol.61,No. 8,883−888 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G02F 1/35 G02F 1/19 G02F 1/17 CA(STN) JICSTファイル(JOIS)

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 光応答性組成物から成る光学素子に、前
    記光学素子が感応する波長の制御光を照射し、制御光と
    は異なる波長帯域にある信号光の透過率および/または
    屈折率を可逆的に変化させることにより前記光学素子を
    透過する前記信号光の強度変調および/または光束密度
    変調を行う光制御方法において、 前記制御光および前記信号光を各々収束させて前記光学
    素子へ照射し、かつ、前記制御光および前記信号光のそ
    れぞれの焦点近傍の光子密度が最も高い領域が前記光学
    素子中において互いに重なり合うように、前記制御光お
    よび前記信号光の光路をそれぞれ配置した光制御方法で
    あり、 更に、前記光学素子が、下記の式[1]から[4]のい
    ずれかで表されるナフトキノン誘導体および/または下
    記の式[5]で表されるアントラキノン誘導体の少なく
    とも1種類を含有する光応答性組成物から成り、 【化1】 (式[1]中において、RN1ないしRN6は、各々、水素
    原子、第IV族元素(C,Si,Ge,Sn,Pb)の
    化合物、第V族元素(N,P,As,Sb,Bi)の化
    合物、第VI族元素(O,S,Se,Te,Po)の化
    合物、または、第VII族元素(F,Cl,Br,I)
    から導かれる1価の置換基を表し、これらの置換基は互
    いに相異なる場合、また、隣接する2個の置換基が互い
    に結合して環を形成する場合を含む。) 【化2】 (式[2]中において、RN7ないしRN12は、式[1]
    におけるRN1ないしRN6と同義である。) 【化3】 (式[3]中において、RN13ないしRN18は、式[1]
    におけるRN1ないしRN6と同義である。) 【化4】 (式[4]中において、RN19ないしRN24は、式[1]
    におけるRN1ないしRN6と同義である。) 【化5】 (式[5]中において、RA1ないしRA8は、式[1]に
    おけるRN1ないしRN6と同義である。)前記制御光およ
    び前記信号光を前記光学素子中において実質的に同一光
    路で伝搬させ、 前記光学素子を透過した後、発散していく信号光光線束
    を、前記信号光光線束の発散角度よりも小さい角度範囲
    (開口角)のレンズまたは凹面鏡で取り出すことによっ
    て、前記強度変調および/または光束密度変調を強く受
    けた領域の信号光光線束を分別して取り出す ことを特徴
    とする光制御方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の光制御方法において、 前記制御光および前記信号光のそれぞれの焦点位置と前
    記光学素子との位置関係を変化させることにより、 前記制御光の照射によって、前記光学素子を透過した前
    記信号光の見かけの強度が減少する方向の光応答と、前
    記信号光の見かけの強度が増大する光応答との、どちら
    か一方を選択して取り出すことを特徴とする光制御方
    法。
  3. 【請求項3】 請求項1または請求項2に記載の光制御
    方法において、 前記光応答性組成物が液体であり、かつ、前記液状光応
    答性組成物を充填した光学セルを前記光学素子として用
    いることを特徴とする光制御方法。
  4. 【請求項4】 請求項記載の光制御方法であって、 前記液状光応答性組成物が揮発性溶剤を含有することを
    特徴とする光制御方法。
  5. 【請求項5】 光応答性組成物から成る光学素子に、前
    記光学素子が感応する波長の制御光を照射し、制御光と
    は異なる波長帯域にある信号光の透過率および/または
    屈折率を可逆的に増減させることにより前記光学素子を
    透過する前記信号光の強度変調および/または光束密度
    変調を行う光制御方法に用いられる光制御装置であっ
    て、 前記制御光および前記信号光を各々収束させる収束手段
    を有し、収束された前記制御光および前記信号光のそれ
    ぞれの焦点近傍の光子密度が最も高い領域が互いに重な
    り合うように、前記制御光および前記信号光の光路をそ
    れぞれ配置し、かつ、前記光学素子は、収束された前記
    制御光および前記信号光のそれぞれの焦点近傍の光子密
    度が最も高い領域が互いに重なり合う位置に配置され、 更に、前記光学素子が、前記の式[1]から[4]のい
    ずれかで表されるナフトキノン誘導体および/または前
    記の式[5]で表されるアントラキノン誘導体の少なく
    とも1種類を含有する光応答性組成物から成り、 更に、前記制御光および前記信号光が前記光学素子中に
    おいて実質的に同一光路で伝搬するような光路配置を有
    し、 前記光学素子を透過した後、発散していく信号光光線束
    のうち、前記強度変調および/または光束密度変調を強
    く受けた領域の信号光光線束を分別して取り出す手段を
    有し、 前記強度変調および/または光束密度変調を強く受けた
    領域の信号光光線束を分別して取り出す手段として、 前記光学素子へ前記信号光を収束させて入射させる際に
    用いた収束手段の開口数よりも小さい開口数のレンズま
    たは凹面鏡を用いる ことを特徴とする光制御装置。
  6. 【請求項6】 請求項記載の光制御装置において、 前記制御光および前記信号光のそれぞれの焦点位置と前
    記光学素子との位置関係を変化させる移動手段を有し、 前記移動手段を用いることによって、前記制御光および
    前記信号光のそれぞれの焦点位置と前記光学素子との位
    置関係を変化させることにより、前記制御光の照射によ
    って前記光学素子を透過した前記信号光の見かけの強度
    が減少する方向の光応答と、前記信号光の見かけの強度
    が増大する光応答との、どちらか一方を選択して取り出
    すことを特徴とする光制御装置。
  7. 【請求項7】 請求項5または請求項6に記載の光制御
    装置において、 前記光学素子を透過してきた信号光と制御光の混合光
    を、信号光と制御光とに分離する手段を有することを特
    徴とする光制御装置。
  8. 【請求項8】 請求項から請求項7のいずれか1項に
    記載の光制御装置において、 前記光応答性組成物が液体であり、かつ、前記液状の光
    応答性組成物を充填した光学セルを前記光学素子として
    用いることを特徴とする光制御装置。
  9. 【請求項9】 請求項記載の光制御装置において、 前記液状光応答性組成物が揮発性溶剤を含有することを
    特徴とする光制御装置。
  10. 【請求項10】 請求項から請求項9のいずれか1項
    記載の光制御装置において、 前記制御光および前記信号光を各々収束させる前記収束
    手段、および/または、前記光学素子中の前記光応答性
    組成物を透過した後、発散していく信号光光線束のう
    ち、前記強度変調および/または光束密度変調を強く受
    けた領域の信号光光線束を分別して取り出す手段、およ
    び/または、前記光学素子中の前記光応答性組成物を透
    過してきた信号光と制御光の混合光を、信号光と制御光
    とに分離する手段が、前記光学素子に組み込まれた構造
    を有することを特徴とする光制御装置。
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