JP3503402B2 - セメント原料焼成装置 - Google Patents

セメント原料焼成装置

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JP3503402B2
JP3503402B2 JP06115697A JP6115697A JP3503402B2 JP 3503402 B2 JP3503402 B2 JP 3503402B2 JP 06115697 A JP06115697 A JP 06115697A JP 6115697 A JP6115697 A JP 6115697A JP 3503402 B2 JP3503402 B2 JP 3503402B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、セメント原料焼成
系内における塩化アルカリ等の揮発性成分の存在量を低
減させるために、セメントキルン排ガスの一部を抽気し
て処理する装置を備えたセメント原料焼成装置に関す
る。
【0002】
【従来の技術】近年セメント産業では、セメント原料の
一部として産業廃棄物の利用が進められているが、産業
廃棄物にはナトリウム、カリウム等のアルカリや塩素、
硫黄等、種々の揮発性の不純物が含まれており、SPキ
ルン(サスペンションプレヒータ方式)やNSPキルン
(仮焼炉付きサスペンションプレヒータ方式)等のセメ
ントキルンに利用すると、揮発性の低融点化合物である
塩化アルカリ等が生成する。セメント原料や燃料からS
Pキルン、NSPキルン等セメント原料焼成系内に持ち
込まれた揮発性の不純物は、高温となっているキルン内
では気化しているが、キルン内より低温であるプレヒー
タ内では低融点化合物となって再度キルン内に持ち込ま
れることで系内を循環し、次第に濃縮されて揮発性成分
の濃度も高くなる。揮発性成分は必然的にクリンカ中に
取り込まれてセメントの品質低下を招くだけでなく、低
融点化合物、主として塩化アルカリがプレヒータ等セメ
ント原料焼成系内に付着していわゆるコーチングを発生
・成長させて経路の閉塞を起こすため、運転停止等を余
儀なくされる原因となっている。これらの問題点を解決
する方法として、従来セメント原料焼成系内から揮発性
成分を含むセメントキルン排ガスの一部を抽気、処理し
て主にアルカリ塩化物を除去することにより焼成系内の
塩化アルカリを低減させる所謂塩素バイパスまたはアル
カリバイパスと呼ばれている方法が、例えば、特公平5
−50458号、同平6−76237号、特開昭63−
265847号の各公報等に開示されている。
【0003】この塩素バイパス法の原理は、抽気ガスを
バイパス経路内で冷却し、含まれる揮発性成分を液化ま
たは固化して捕集・除去するものであるが、ボール、鎖
等の固体冷媒を使用する一部のものを除いて、冷却空気
または水散布で冷却し、抽気ガスに同伴するセメント原
料ダスト上に揮発性成分の大部分を固定化して捕集・除
去する方式が採用されている。即ち、塩素バイパス法で
は抽気ガスにセメント原料が同伴するのは不可避であ
り、また、抽気される揮発性成分がその表面に冷却固定
化される媒体としての働きを有しており、塩素バイパス
の主流である空気または水冷却方式においては、装置の
運転上、不可欠の成分となっている。しかし、抽気ガス
にセメント原料が同伴することによる原料ロス及び、高
温のキルン排ガスの一部を抽気することによる熱エネル
ギーのロスは不可避であり、また、多量のセメント原料
の同伴はバイパス経路内での閉塞の原因となり、処理装
置の安定運転に支障を来す虞がある。従って、従来技術
の多くが、抽気後の工程、すなわち、バイパス経路内に
おける、抽気ガスに同伴するセメント原料の回収および
/または熱エネルギーの回収効率の向上、および/また
は、バイパス経路内での閉塞の抑制を目的とするもので
ある。
【0004】一方、セメントキルン排ガス中において、
セメント原料濃度は均一に分布しているのではなく、抽
気排ガス量が同じであっても、抽気ガス中に含まれるセ
メント原料濃度は、抽気口の設定位置によって変わる。
従って、適当な位置に抽気口を設ければ、少ない同伴セ
メント原料量で、焼成装置系内を循環する揮発性成分の
低減を達成できる事が考えられる。更に、同伴セメント
原料濃度を低くすると、サイクロン等セメント原料と固
化した揮発性成分の分離装置が不要となるためバイパス
装置の構造が簡単になるだけでなく、バイパス経路内で
の閉塞も抑制され、装置の長期安定運転が可能となる。
【0005】従来技術では、抽気口は、特公平7−96
464号公報の仮焼炉後流側に設けたものを除いて、予
熱装置の前流側すなわちセメント原料予熱装置とロータ
リーキルン(以下キルンと称す)とを連結するダクトの
曲がり部(以下インレットフッドと称す)またはセメン
ト原料予熱装置のインレットフッドから上方に延びてい
るキルン排ガスの立ち上がりダクト(以下ライジングダ
クトと称す)部に設定されている。これは、排ガスの温
度を考慮すると当然の選択であるが、インレットフッド
またはライジングダクト部内における効果的な抽気口設
定位置について言及しているものは少ない。その内の一
つである、特開平2−116649号公報には、インレ
ットフッド中心部を流れるキルン排ガス中において塩素
濃度(すなわち、塩化アルカリ濃度)が高いとして、少
ない抽気量で効率的に除塩素を行なうために抽気管先端
をインレットフッドのほヾ中心部に設定することが記載
されている。また、特公昭56−40097号公報で
は、ダストの同伴量を減らしバイパス経路内での閉塞を
防止するため、インレットフッド曲がり部の内側すなわ
ちキルン側を流れる排ガス流中のダスト濃度が低いとし
て、内側側面に抽気口を設定する方法が記載されてい
る。前者では、抽気装置の構造が複雑になるだけでな
く、キルン排ガスのセメント原料濃度の高い部分からの
抽気となり、抽気排ガス処理工程で閉塞その他の問題が
生じる。後者では、抽気ガス量に同伴するセメント原料
量を低減するにはある程度の効果があるか、抽気ガス量
が増えると、抽気口から離れた、セメント原料濃度が高
い部分のキルン排ガスが抽気ガスに混入するため、多量
のセメント原料が同伴することにより生起する問題の根
本的な解決にはならない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、セメント原
料焼成装置系内からの揮発性成分の低減は勿論のこと、
抽気ガス処理装置自体の長期安定運転および処理装置の
簡素化を可能にする、抽気した排ガス中に含まれるセメ
ント原料濃度の低い抽気装置を具備したセメント原料焼
成装置の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】発明者等は、インレット
フッドまたはライジングダクト内の特定の位置において
キルン排ガス中のセメント原料濃度が低くなること、お
よび、インレットフッドまたはライジングダクトの形状
の工夫により、キルン排ガス中のセメント原料濃度の低
くなる部分の形成が可能なことを見出した。更に、抽気
口の向きが重要であり、キルン排ガス中セメント原料濃
度の低い部分の奥行が深くなる方向に抽気口を向けるこ
とすなわち、インレットフッドまたはライジングダクト
のキルン側から見た側面に抽気口を設定することによ
り、セメント原料濃度の高い部分のキルン排ガスの抽気
ガスへの混入が低減できることも見出した。この様な位
置に抽気口を設定することにより、抽気ガスに同伴する
セメント原料濃度の大幅な低減が可能となり、上記課題
を解決する抽気排ガス処理装置を具備したセメント原料
焼成装置が得られることを知り、本発明を完成した。す
なわち、本発明は、セメントキルン排ガスの一部を抽気
する抽気管と該排ガスから揮発性成分を除去する処理装
置とを備えたセメント原料焼成装置において、セメント
原料予熱装置とロータリーキルンとを連結するダクトの
曲がり部の位置であって、キルン長手方向側から見てイ
ンレットフッドの側面で、且つ、インレットフッドの前
面の壁内面から該抽気管の直径に500mmを加えた長
さの幅と、キルン最上部よりキルン径の1/3下方の位
置からインレットフッド上端までの高さとで囲まれた範
囲の位置に、該抽気管が、該抽気管抽気口面積の8割以
上が位置するように接続されていることを特徴とするセ
メント原料焼成装置に関する。
【0008】また、本発明は、セメントキルン排ガスの
一部を抽気する抽気管と該排ガスから揮発性成分を除去
する処理装置とを備えたセメント原料焼成装置におい
て、セメント原料予熱装置とキルンとを連結するインレ
ットフッドの位置であって、キルン長手方向側から見て
インレットフッドの側面で、且つ、インレットフッドの
前面の壁内面から該抽気管の直径に500mmを加えた
長さの幅と、キルン最上部よりキルン径の1/3下方の
位置からインレットフッド上端までの高さで囲まれた範
囲の位置に、膨らみ部の面積の1/2以上が位置する膨
らみ部を有し、該膨らみ部に該抽気管が接続されている
ことを特徴とするセメント原料焼成装置に関する。以下
に、本発明を説明する。
【0009】本発明者らは先ず、小規模のセメントキル
ン排ガス処理用テスト装置による実験を行った。これに
より、抽気位置によって抽気排ガスに同伴するセメント
原料量は大きく異なるが、揮発性成分の除去量すなわ
ち、焼成系からの揮発性アルカリ塩化物除去効果はほと
んど変わらないことを知った。また、ここで得られた実
験結果を基に、揮発性成分について状態平衡計算を行な
ったところ、セメント焼成系内を循環する揮発性成分の
8割近くが窯尻では気体で存在し、キルン排ガス中のセ
メント原料に付着固定化された状態で存在するものは少
ないという知見を得た。更に、抽気排ガスに同伴するセ
メント原料濃度がテスト装置内のコーチング成長速度に
影響を及ぼし、この濃度が高いとコーチング成長が速い
ことが確かめられた。小規模テスト装置で得られたこれ
等の結果を総合すると、セメント原料焼成系からの塩化
アルカリの除去は、セメント原料同伴量が成るべく少な
くなるように抽気する方が好ましいことを示唆してい
る。
【0010】抽気ガスに同伴するセメント原料量を少な
くするには、キルン排ガス流中に含まれるセメント原料
濃度の低い位置から抽気することが必要となるが、計算
機実験及び実機実験を重ね、インレットフッド及びライ
ジングダクト内の特定の位置においてセメント原料濃度
が低く、この位置に抽気口を設定すれば良いという知見
を得た。計算機実験では、この位置ではキルン排ガスの
流速が3m/秒以下、好ましいところでは1m/秒以下
と小さく、流れが澱みとなっている箇所であることが分
かった。また、インレットフッド及びライジングダクト
部に膨らみを設けたり、差し込みダンパーを設定するこ
とにより人為的にキルン排ガス流れの澱みを形成させる
ことが可能なことも確かめることができた。
【0011】小規模のテスト装置に代え、実装置と同規
模の実験装置で行なった結果でも、小規模テスト装置で
得られた結果を再確認することができた。すなわち、小
規模テスト装置を用いての実験で確かめられた、インレ
ットフッド,ライジングダクト部内のキルン排ガス流れ
が弱く澱みを形成している位置に抽気口を設置すること
により、ほとんどセメント原料を含まないキルン排ガス
が抽気され、また、この方法で、セメント原料焼成系内
を循環する揮発性の塩化アルカリを十分低減できること
が確かめられた。また、抽気ガス中にセメント原料をほ
とんど含まないことから、従来の装置で必要であったサ
イクロン等の、セメント原料と揮発性成分との分離装置
や、セメント原料の排出という複雑な操作が不要とな
り、更には、バイパス経路内でのコ−チング成長を抑制
できることから、装置の長期安定運転が可能な事が確か
められた。それに対し、抽気位置が前述の範囲を外れる
と、多量のセメント原料が抽気ガスに同伴し、バイパス
経路内で、セメント原料表面に付着した揮発性成分が糊
剤として働きセメント原料同士が塊となる所謂コ−チン
グの成長が速く、排ガス処理装置そのものの長期間の運
転が困難となることが分かった。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施例を示す図
面を用いて、本発明の抽気排ガス処理装置を備えたセメ
ント原料焼成装置の詳細を説明する。尚、図1〜図8に
おいて、同一部分においては同一符号が付されている。
また、揮発性成分はそのほとんどが塩化アルカリとして
存在しているので、揮発性成分濃度への言及が必要な場
合には、揮発性成分濃度に代えて塩素濃度で表わすこと
にする。
【0013】図1は、本発明のセメント原料焼成装置の
構成を示す概略図である。ここでは、プレヒータの最下
部であるインレットフッド1A部のキルン側から見て側
面に抽気管2を接続した例を示す。一般に、プレヒータ
のインレットフッド1Aとライジングダクト1Bとは熱
膨張吸収用のエキスパンションによって接続されてお
り、その境界は通常、キルン1の最上端から、その上方
にキルン径の1/2離れた範囲にある。
【0014】図2は、セメント原料焼成装置中の、抽気
排ガス処理工程を示す該略図である。インレットフッド
1Aには、キルン排ガスの一部を抽気するための抽気管
2が挿入・接続されており、インレットフッド1Aから
約1100℃の排ガスが、抽気管2を経由して冷却室3
に導かれる。冷却室3に導入された排ガスは、冷却室3
内において、冷却用空気ファン4によって入口3Aから
冷却室の接線方向に向かって吹き込まれた空気の旋回流
によって350℃以下、好ましくは約280℃にまで冷
却される。尚、冷却室へ吹き込まれた冷却用空気の旋回
流の一部は、抽気管2内壁に沿って抽気口方向へ逆流し
てエアカーテンを形成し抽気管2内壁におけるコーチン
グ発生を抑制出来ることから、抽気ガス流速を、エアカ
ーテンが抽気管先端まで到達可能であり、且つ、経済的
な流速である8〜15m/秒の範囲に設定して、抽気管
2の内壁におけるコーチング発生を完全に防止すること
により、抽気排ガス処理装置の稼動を更に円滑にするこ
とができる。抽気排ガス中の揮発性化合物は、冷却室
3、チャンバ5を経由する間に十分冷却されてヒューム
となり、排気ファンに吸引されて集塵機6で捕集・除去
されるが、本発明においては、キルン排ガス中のセメン
ト原料量が低くなっている位置から抽気しているため抽
気ガスに同伴するセメント原料濃度は低く、抽気排ガス
処理経路内にサイクロン等を設けてセメント原料を塩化
アルカリから分離する必要はない。
【0015】図3には、コンピュータシミュレーション
により求めた、キルン、インレットフッド、ライジング
ダクト部におけるキルン排ガスの流れの概略を示す。図
中、(a)、(b)、(c)は各々、a−a,b−b,
c−c断面における流線の概略を示す。インレットフッ
ド、ライジングダクト内でのキルン排ガスの流れは均一
でなく、澱みが発生している場所があることが分かる。
【0016】図4〜図8には、本発明を利用した抽気排
ガス処理装置実施例の抽気部概略図を示す。図4は、イ
ンレットフッド1Aのキルン側から見て側面で、インレ
ットフッド1Aのキルン1側前面の壁内面から500m
m、詳細には壁内面から、壁内面に付着するコーチング
層の厚み約300mmに、抽気管先端部の耐火物の厚み
に遊びを加えた200mmを加えた500mmに、抽気
管2の直径を加えた長さの幅と、キルン1最上部よりキ
ルン径の1/3だけ下方の位置からインレットフッド1
A上端までの高さとで囲まれた範囲に抽気管2を接続し
た例である。抽気管2を接続したこの範囲は、図3に示
すように、窯尻部テーパーの存在とインレットフッド1
Aの急激な曲がりによって、キルン排ガスの流れの弱い
部分すなわち澱みが発生する部分である。この部分に
は、セメント原料濃度が低いキルン排ガス(ダスト濃度
30〜50g/Nm3 )が流れており、この部分に抽気
口面積の8割以上が位置するように抽気管2を接続する
ことにより、抽気ガス量の8割以上をこのセメント原料
濃度が低い部分から抽気することが可能となる。残りの
2割のガスが、澱み周辺のセメント原料濃度の相対的に
高い部分(ダスト濃度約130g/Nm3 )から抽気さ
れるものであっても、集塵機6で捕集されるダスト中の
塩素濃度は通常、25重量%以上、最低でも15重量%
であり、セメント原料焼成系内の揮発性アルカリ化合物
の、目標とする濃度への低減は十分達せられる。
【0017】限られた範囲内に抽気口面積の8割以上が
存在する様に抽気口を設定するためには、抽気口の大き
さすなわち抽気管径が問題となるが、抽気管径は、セメ
ント原料焼成装置の形態、能力、抽気率、抽気ガス流速
等に対応して決めることになる。また、前述の、冷却空
気のエアカーテンが抽気管先端まで到達可能であり、且
つ、経済的な流速である8〜15m/秒の範囲に設定し
て、抽気管2の内壁におけるコーチング発生を完全に防
止することも考慮に入れる必要がある。このガス流速を
維持し、且つ、抽気口面積が、限られた範囲内に8割以
上が存在するためには、抽気管径は200〜1000m
mの範囲内で、セメント原料焼成装置の形態、能力、抽
気率に応じて決定することになる。
【0018】図5は、キルン1側から見てインレットフ
ッド1Aの側面で、インレットフッド1A前面の壁内面
から抽気管の直径に500mmを加えた長さの幅と、キ
ルン1最上部よりキルン径の1/3だけ下方の位置から
インレットフッド1A上端までの高さで囲まれた範囲内
に開口部面積の1/2以上が位置する膨らみ部1Cを設
け、該膨らみ部に抽気管2を接続した例である。適当な
サイズの膨らみ部を設定することによりキルン排ガス流
の澱みが形成され、その部分においてはキルン排ガス流
(ダスト濃度130g/Nm3 )に乗って移動するセメ
ント原料の一部がガス流から分離されるため、その濃度
がほヾ半減(ダスト濃度約65g/Nm3 )した部分
が、前記した、セメント原料を主成分とするダスト濃度
が30〜50g/Nm3 と低くなった部分の周辺に発生
する。従って、この膨らみ部に抽気口を設定すれば、抽
気ガスに同伴するセメント原料濃度を更に低減すること
が出来る。また、抽気率を上げると、相対的にセメント
原料濃度の高い周辺部分からの取り込みが多くなる場合
があるが、その場合もこの構造の抽気部は大きな効果を
発揮する。例えば、前記セメント原料濃度の低いキルン
排ガス(ダスト濃度30〜50g/Nm3 )に、膨らみ
部のダスト濃度約65g/Nm3 のガスが50%混合し
ても、集塵機6で捕集されるダスト中の塩素濃度は、通
常22重量%以上、最低でも16重量%と高く、セメン
ト原料焼成系内の揮発性アルカリ化合物の、目標とする
濃度への低減は十分達せられる。
【0019】膨らみ部1Cの開口部の面積が小さすぎる
と抽気管2の長さを延長したものと同等になり、また大
きすぎると膨らみ部1Cへの排ガスの流れ込みが容易に
なるため、結果として何れの場合にもキルン排ガス流の
澱み発生を抑制するように働き、膨らみ部を設けた効果
が低減する。また、張り出しが深すぎる場合、または浅
すぎる場合にも、澱みを発生する効果は小さくなり、膨
らみ部を設けた効果が低減する。膨らみ部1Cは、抽気
管抽気口面積の1.5〜10倍、好ましくは3〜5倍の
開口部面積を有し、インレットフッド1Aの外側方向に
抽気管2の直径の0.5〜3倍、好ましくは直径程度張
り出す様にするのが良い。また、その縦断面の形状は四
角、半円、その他多角形でも良い。
【0020】図6は、プレヒータライジングダクト1B
の下部が、キルン1側に張り出した構造となっており、
この張り出し部分の、キルン側から見て側面に当たる箇
所に抽気管2を接続した例である。計算機シミュレーシ
ョンの結果、この張り出し部においても、図3に示すの
と同じようなキルン排ガス流れの弱い澱みが発生してお
り、この部分における排ガス中のセメント原料濃度は低
くなっていることが予想されるが、実際に、この部分に
おける排ガス中に含まれるセメント原料濃度は低くなっ
ている(ダスト濃度30〜50g/Nm3 )。この部分
に抽気口面積の8割以上が位置するように抽気管2を設
定すれば、抽気量の8割以上をこのセメント原料濃度の
低い排ガス部分から抽気することができる。この場合に
も、残りの2割のガスが、澱み周辺のセメント原料濃度
の相対的に高い部分(ダスト濃度約130g/Nm3
から抽気されるものであっても、集塵機6で捕集される
ダスト中の塩素濃度は通常、25重量%以上、最低でも
19重量%であり、セメント原料焼成系内の揮発性アル
カリ化合物の、目標とする値への低減は十分達せられ
る。
【0021】図7も、本発明の一実施例を示すが、プレ
ヒータのライジングダクト1Bにキルン1側から部分的
に差し込まれた差し込みダンパー1Dが、結果的に、前
述の、ライジングダクト1Bの下部がキルン側へ張り出
したのと同様の効果をキルン排ガス流れに対して与える
構造になっている。抽気管2は、この張り出し部に相当
する部分のキルン1側から見て側面に、膨らみ部開口部
面積の1/2以上が位置する様に膨らみ部1Cを設け、
この膨らみ部に接続する。適当なサイズの膨らみ部を設
定することによりキルン排ガス流の澱みが形成され、そ
の部分においてはキルン排ガス流からセメント原料が分
離されるため、その濃度がほヾ半減することは前述し
た。従って、この場合にも、抽気ガスに同伴するセメン
ト原料濃度を更に低減することが出来る。例えば、前記
セメント原料濃度の低いキルン排ガス(ダスト濃度30
〜50g/Nm3 )に、膨らみ部のダスト濃度約65g
/Nm3 のガスが50%混合しても、セメント原料濃度
の低いキルン排ガス(ダスト濃度30〜50g/N
3 )が50%混合しても、集塵機6で捕集されるダス
ト中に含まれる塩素濃度は、通常24重量%以上、最低
でも17重量%と高く、セメント原料焼成系内からの揮
発性アルカリ化合物の、目標とする値への低減は十分達
せられる。
【0022】 図8は、参考例であり、ライジングダク
ト1Bのキルン1側から見て前面に膨らみ部1Cを設
け、膨らみ部上方の内壁にひさし1Eを設けた例であ
る。抽気管2は、該膨らみ部1C内でひさし1Eの下方
に接続される。膨らみ部では図3に示す通り、キルン排
ガスの逆流が生じており、セメント原料の一部が壁面に
沿って上から下へ流れる。この部分の内壁に、ひさしと
して張り出し部を設けると、逆流に乗って流れるセメン
ト原料は抽気管2の上方で、排ガス流れの強い主流に戻
され、抽気管2から抽気されるセメント原料の量を低減
することが可能となる。ひさし1Eは、小さすぎると逆
流に乗ってくるセメント原料を主流側に押し戻す効果が
十分でなく、また、大きすぎるとダクト内における排ガ
ス全体の流れを妨害するため、セメント原料焼成装置全
体の運転状況が悪化するので好ましくない。そのため、
ひさし1Eの幅は、抽気管直径の1.5〜5倍、好まし
くは2〜3倍とし、煙道内での出っ張り長さは同じく抽
気管直径の1/3〜2倍、好ましくは1/2〜1.5倍
とする。ひさし1Eを取り付けることにより、ほヾセメ
ント原料濃度の低いガス(ダスト濃度10〜50g/N
)のみよりなるガスの抽気が可能となり、集塵機6
で捕集されるダスト中の塩素濃度は、通常30重量%、
最低でも15重量%と高く、セメント原料焼成系内の揮
発性アルカリ化合物の、目標とする値への低減は十分達
せられる。
【0023】
【発明の効果】本発明の方法によると、抽気ガスに同伴
するセメント原料の含有量を低減した状態での抽気が可
能となる。従って、本発明の方法によると、セメント原
料焼成系内でのコーチングトラブルやクリンカーの品質
低下を招く揮発性成分を効率的に除去できセメント原料
焼成装置の安定運転が可能となることは勿論、抽気ガス
に同伴してセメント原料焼成系外に排出されるセメント
原料量が低いため、熱効率及び生産性が向上する。ま
た、抽気ガスを処理する後工程で、セメント原料と揮発
性成分を分離する工程が不要となるため装置の簡略化が
可能となるだけでなく、抽気管を含めた抽気経路内での
コーチングが発生し難く抽気装置の長期安定運転も可能
となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を利用したセメント原料焼成装置構成の
概略図。
【図2】セメントキルンの排ガス処理工程の概略図。
【図3】コンピュータシミュレーションによるキルン、
プレヒータ内の排ガス流れ図。
【図4】本発明の抽気部一実施例の概略図。
【図5】本発明の抽気部一実施例の概略図。
【図6】本発明の抽気部一実施例の概略図。
【図7】本発明の抽気部一実施例の概略図。
【図8】本発明の抽気部一実施例の概略図。
【符号の説明】
1 キルン 1A インレットフッド 1B ライジングダクト 1C 膨らみ部 1D 差し込みダンパー 1E ひさし 2 抽気管 3 冷却室 3A 冷却空気採入口 4 ファン 5 チャンバ 6 集塵機
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭54−54131(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C04B 7/36 - 7/60

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】セメントキルン排ガスの一部を抽気する抽
    気管と該排ガスから揮発性成分を除去する処理装置とを
    備えたセメント原料焼成装置において、セメント原料予
    熱装置とロータリーキルン(以下キルンと称す)とを連
    結するダクトの曲がり部(以下インレットフッドと称
    す)の位置であって、キルン長手方向側から見てインレ
    ットフッドの側面で、且つ、インレットフッドの前面の
    壁内面から該抽気管の直径に500mmを加えた長さの
    幅と、キルン最上部よりキルン径の1/3下方の位置か
    らインレットフッド上端までの高さとで囲まれた範囲の
    位置に、該抽気管が、該抽気管抽気口面積の8割以上が
    位置するように接続されていることを特徴とするセメン
    ト原料焼成装置。
  2. 【請求項2】セメントキルン排ガスの一部を抽気する抽
    気管と該排ガスから揮発性成分を除去する処理装置とを
    備えたセメント原料焼成装置において、セメント原料予
    熱装置とキルンとを連結するインレットフッドの位置で
    あって、キルン長手方向側から見てインレットフッドの
    側面で、且つ、インレットフッドの前面の壁内面から該
    抽気管の直径に500mmを加えた長さの幅と、キルン
    最上部よりキルン径の1/3下方の位置からインレット
    フッド上端までの高さとで囲まれた範囲の位置に、膨ら
    み部の面積の1/2以上が位置する膨らみ部を有し、該
    膨らみ部に該抽気管が接続されていることを特徴とする
    セメント原料焼成装置。
  3. 【請求項3】セメントキルン排ガスの一部を抽気する抽
    気管と該排ガスから揮発性成分を除去する処理装置とを
    備えたセメント原料焼成装置において、セメント原料予
    熱装置のインレットフッドから上方に延びているキルン
    排ガスの立ち上がりダクト(以下ライジングダクトと称
    す)の下部がキルン側に張り出した構造で、該張り出し
    部のキルン長手方向側から見て側面に、該抽気管が、該
    抽気管抽気口面積の8割以上が位置するように接続され
    ていることを特徴とするセメント原料焼成装置。
  4. 【請求項4】セメントキルン排ガスの一部を抽気する抽
    気管と該排ガスから揮発性成分を除去する処理装置とを
    備えたセメント原料焼成装置において、セメント原料予
    熱装置のライジングダクトの下部がキルン側に張り出し
    た構造で、該張り出し部のキルン長手方向側から見て側
    面に、膨らみ部の面積の1/2以上が位置する膨らみ部
    を有し、該膨らみ部に該抽気管が接続されていることを
    特徴とするセメント原料焼成装置。
  5. 【請求項5】セメントキルン排ガスの一部を抽気する抽
    気管が取り付けられているインレットフッド又はライジ
    ングダクト内の抽気口から、抽気管直径の1/2〜3倍
    上方の位置に、ひさしを設けた上記請求項1から請求項
    までの何れかに記載のセメント原料焼成装置。
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