JP3502911B2 - 平行な磁場中に配置された永久磁石を有する振り子を用いた無定位回転型振動検出器 - Google Patents

平行な磁場中に配置された永久磁石を有する振り子を用いた無定位回転型振動検出器

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JP3502911B2
JP3502911B2 JP2001165488A JP2001165488A JP3502911B2 JP 3502911 B2 JP3502911 B2 JP 3502911B2 JP 2001165488 A JP2001165488 A JP 2001165488A JP 2001165488 A JP2001165488 A JP 2001165488A JP 3502911 B2 JP3502911 B2 JP 3502911B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は地動検出器に関する
もので、詳しくは平行磁場中に配置された永久磁石によ
る無定位回転型振り子と、磁気バネとを使用する地動検
出器に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より地震計は振り子を用いて慣性不
動点を作り、震動する地面とこの慣性不動点との間の変
位を測定して振動を検出していた。地震計を高感度・広
帯域化し、特に地震特有の低周波領域の測定のために
は、地震計に関し長い自然周期を得ることが必要であ
り、どのようにして長い自然周期を得るかが一つの問題
であった。その理由は、日本の反対側の地球上で発生し
た遠地地震の小さな波形を正確に捕らえる必要があるこ
とや、地震計を使って地球の内部トモグラフィー等を得
るために必要だからである。
【0003】従来、かかる問題に応えて長周期を得るた
めに、例えば、非常に重い錘で大型化した地震計や、錘
にかかる重力を機械式のバネの復元力で打ち消し弱いバ
ネ定数を実現するための倒立振り子タイプの地震計、さ
らに図10に示すようなラコステ重力計で使用されてい
るゼロ長バネ48のリーフスプリング等が考案されてき
た。これらの方法は最初の地震計を除いて、例えば図1
0に示すように支持点49に支持部材50を介して回転
可能に取付けられた錘47にかかる重力(矢印)をバネ
48の復元力で打ち消し、変位測定に必要な範囲で常に
平衡を保つことにより、ほぼ無定位な振り子を形成する
ものである。また、かかる構造にさらに他のバネを追加
することにより、弱い力を加えて長周期化した振動検出
器が実現化されている。
【0004】しかし、以上のような方法で重力を打ち消
して弱いバネを実現することは可能であっても、その具
体的機構としては長い間、基本的に機械的なスプリング
コイルや板バネが使用されてきた。このため、重い錘を
用いた振動検出器のバネの材料は弾性係数を大きくする
必要があり、重い錘にかかる強い重力と、それを打ち消
すためのバネの材料の弾性の僅かな調整のずれが、大き
な自然周期を有する振動検出器の特性変化をもたらすと
いう問題点を有していた。
【0005】例えば、リーフスプリングで錘にかかる重
力を打ち消して弱いバネ定数を実現する広帯域・高感度
を図ったSTS(速度計)の場合には、板バネのXヒン
ジで支えた水平振り子において錘をヒンジより少し持ち
上げ、その角度を調整して倒立ポテンシャルを加えるこ
とでヒンジの強い復元力を重力で打ち消している。
【0006】その結果、僅かな角度調整のずれが大きな
特性(例えば振り子の自然周期など)の変化をもたらす
ことになる。また、温度や経年によるバネ常数の変化も
打ち消し誤差の原因になり、特性の変化や測定値のドリ
フト等に直結する。加えて、以上のような機構はバネの
設計と工作において非常に特殊技術を必要とし、この工
作技術の困難さと上記ドリフトの問題は、地震計が広帯
域化そして高感度化するほどより深刻であった。
【0007】高感度化、長周期化を図り、さらにバネ常
数等の変動を低く押さえるためには、なるべく弱いバネ
を使用することが重要であると考えられる。バネ常数の
変動はそれが持っている弾性常数に対する比率で決まる
ので、変動の絶対値を低くするには柔らかいバネが必要
である。例えば、20×10×0.1mmの恒弾性板バ
ネを使用する場合でヤング率が18500kg/mm2
とすると、復元力が56.6N/mmである。変動率が
約10-5/°Cで一定であるとすると、56.6×10
-5/°C N/mmの変動になる。バネの復元力を落と
せば、その割合で変動の絶対値も低くできる。
【0008】しかし、柔らかい金属バネでは錘にかかる
重力を支えられない。そこで、上に述べた金属バネとは
異なった方法により錘に働く重力を打ち消し、自然周期
が無限大に近い振り子を作ることが必要となる。そして
その錘に、弱いバネ常数の金属によりまたは別の方法を
用いてバネ機構を付けることにより、長周期振り子の形
成が可能となる。
【0009】かかる錘の浮上方法を採用する場合、特に
地震計のように地理的に広範囲でかつ多くの観測地点に
設置する必要のある機器においては、それ自身の重量や
消費電力の低減化の問題が本質的なので、重量が小さく
電力を消費しない永久磁石による磁気浮上構造の採用が
好適であると判断される。
【0010】永久磁石は近年、希土類のものが発展して
0.5T程度の磁場を発生でき、その大きさについても
一辺が50cm以上ある直方体のものが形成可能になっ
ている。また磁気浮上方式を採用する場合、かかる永久
磁石を使用し、10kgの錘を3次元空間内の1軸を板
バネ等で拘束することにより、安定に浮上できる能力の
ある事が明らかになっている。なお、アンショウの定理
により、強磁場を使い浮上体として反磁性物質を使用し
ない限り1軸拘束が必要である。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】通常、垂直動の振動計
は、錘を単に磁気浮上させるだけでは磁場が強く自然周
期の短いバネしか実現できない。そのため、以上の議論
に加えて、どのようにして重力ポテンシャルを打ち消
し、長い自然周期を得るかが一つの問題となる。その具
体例としては前述したゼロ長バネがある。ゼロ長バネ
は、重力ポテンシャルに近い形のバネのポテンシャルに
より、重力を打ち消すものである。
【0012】ゼロ長バネを使用した方法は、ポテンシャ
ルエネルギーの関数が重力に近いという利点を有する。
しかし欠点として、上に述べたように、温度に依存した
バネ常数の変動等により振動の検出誤差が生じることは
避けられない。またこのゼロ長バネにも様々な寄生振動
が存在し、ゼロ長バネを利用した地動検出器のノイズ発
生につながるという問題点がある。
【0013】さらに、今まで述べた重力打ち消し用バネ
のポテンシャルの特性は、錘の位置の一部分でしか重力
ポテンシャルの特性と同一ではない。そのため、全ての
錘の位置で重力を打ち消すことはできず、線形の広いダ
イナミックレンジを得ることは難しい。
【0014】新たに既存の地震計の性能を越える高感度
・広帯域地震計を設計する場合は、このような重力の影
響を好適に打ち消すことがより重要である。そして原理
的に広い範囲で無定位な振り子を形成可能とすること
が、動作のダイナミックレンジを広げ、地震計の性能向
上につながると考えられる。そのためには、振り子にか
かる重力のポテンシャルエネルギーの関数と、バネポテ
ンシャルの形が同じで、増減方向が逆でなければならな
い。さらに、打ち消す方法がバネを使用する方法による
ものでないならば、寄生振動や、温度に依存するバネ常
数の変化には影響されることがない。
【0015】従って、本発明は、上記従来の種々の問題
点に鑑みてなされたもので、バネを使用せずに平行磁場
内に配置された永久磁石の回転モーメントにより、錘を
含む振り子にかかる重力による振り子の回転モーメント
を打ち消すものである。本発明は、かかる方法により無
定位な振り子を形成し、自然周期を可変できる磁気バ
ネ、例えばソレノイドコイル中の磁場軸に平行に円形棒
磁石を挿入しバネポテンシャルを実現する機構等、で弱
い復元力を加え、長周期の垂直または水平動を検出可能
な地震計を実現する手法を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明は、平行磁場内の
永久磁石の回転モーメントにより、重力による振り子の
回転モーメントを打ち消すように形成した無定位回転型
の振り子である。より具体的には、図1の垂直振り子の
例に示すように、平行磁場B内に、磁場の外部において
その回転中心を例えばXヒンジで固定した円柱型永久磁
石1を挿入することにより、重力による振り子の回転モ
ーメントを打ち消すものである。
【0017】かかる構成により、永久磁石1には磁場軸
とその長軸が平行のとき(永久磁石1の長軸が垂直に位
置する場合)以外は回転モーメントが生じる。この回転
モーメントを打ち消すように永久磁石1の片側に錘3を
付け、重力で回転モーメントを加える。永久磁石に働く
回転モーメントに関しては、錘にかかる重力によるもの
と磁場によるものとが互いに打ち消し合うようにするこ
とができる。そして、永久磁石1の長軸と磁場軸との角
度がどの状態であっても、合成された回転モーメントが
常に零となり、永久磁石の角度とは無関係に、永久磁石
に回転力が働かないいわゆる無定位な状態を実現でき
る。
【0018】かかる構成の振り子は、錘にかかる重力の
ポテンシャルエネルギーの関数と磁場中の永久磁石にか
かる磁力の関数とが同形でその向きが逆であり、無定位
にできる範囲が広い。かかる振り子に例えば弱い機械式
バネや、ソレノイドコイル内に永久棒磁石を挿入するよ
うにして構成した磁気バネを用いて弱い力を加え、長周
期の振動検出器を実現することが可能となる。なお、磁
気バネを採用した場合は、振り子の復元力をコイル電流
により自由に変更できる。
【0019】同じ原理を用いて、錘が水平方向に振動す
る水平振り子も可能で、錘と永久磁石および平行磁場と
の位置関係は異なるものの、回転モーメントの打ち消し
等は上記垂直振り子と同じである。
【0020】即ち本発明は、平行な磁場を生成する手段
と、前記平行な磁場中に回転可能に配置された振り子
と、ここで前記振り子は第1の永久磁石とこの永久磁石
に結合された錘とを有し、前記錘の位置を検出する手段
とを含み、前記第1の永久磁石にかかる磁力による回転
モーメントと前記振り子にかかる重力による回転モーメ
ントが互いに打ち消されるように形成される振動検出器
である。
【0021】また本発明は、さらに、前記磁場を生成す
る手段は、第2の永久磁石によって磁場を生成する振動
検出器であり、前記第1の永久磁石は縦長の形状を有
し、この永久磁石の中心が振り子の回転中心に一致する
振動検出器であり、前記錘は前記縦長の形状の第1の永
久磁石の一方の端部と結合されていることを特徴とする
振動検出器であり、そして、前記錘は前記縦長の形状の
第1の永久磁石の長軸に対し垂直方向に延在するように
結合されている振動検出器である。
【0022】また本発明は、前記振り子は振り子の振動
を制御する手段を含む振動検出器であり、前記振り子は
磁気バネによりその振動が制御される振動検出器であ
り、前記磁気バネは静止して配置されたソレノイドコイ
ルと、前記錘に結合され前記ソレノイドコイル内に移動
可能に配置された第3の永久磁石を含む振動検出器であ
る。
【0023】また本発明は、前記振り子が、前記錘の位
置を検出する位置検出器と、この位置検出器からの検出
信号に基づき、錘の移動を制御して錘を所定の静止位置
に留めるように制御電流を流す制御回路を含むフィード
バック手段によりその振動が制御される振動検出器であ
り、前記磁場を生成する手段は窓枠形の形状を有し、そ
の中空部分に平行な磁場が形成される振動検出器であ
り、前記振り子は前記平行な磁場の外部においてその回
転中心がXヒンジで固定されるように構成される振動検
出器である。
【0024】
【発明の実施の形態】本発明について以下に図面を参照
して説明する。以下の説明は本発明に関する一実施の形
態を記載するものであり、本発明の一般的原理を図解す
ることを目的とするものである。したがって、本発明を
この実施の形態の欄および添付図面に具体的に記載され
た構成のみに限定するものではない。以下の詳細な説明
および図面の記載において、同様の要素は同様の参照番
号により表される。
【0025】まず、本発明において用いる平行磁場が永
久棒滋石に対して働く力により振り子にかかる重力を打
ち消す原理について説明する。
【0026】図1は、垂直動の無定位回転振り子の原理
を示す概略図である。垂直方向の平行磁場B内に、円柱
型の永久磁石1が配置されている。永久磁石1の中心を
何らかの方法で回転可能に固定すると、磁場Bと永久磁
石1の長軸が平行のとき(図示せず)以外、永久磁石1
には回転モーメントが生じる。図1(a)は永久磁石1
が傾いて位置している場合であり、図1(b)は永久磁
石1が水平に、即ち磁場Bに対し垂直に位置している場
合でである。なお、図1においては便宜上永久磁石1の
左側がS極、右側がN極としてある。なお、図1(b)
において示すように垂直方向の平行磁場Bはソレノイド
コイル4により生成される。図1(a)においては図示
が省略されている。
【0027】この永久磁石1と磁界Bの作用により生ず
る回転モーメントを打ち消すように、永久磁石1の片
側、図1においてはS極側、に錘3を設けることにより
重力による回転モーメントを加える。このようにして、
永久磁石1に働く磁場による回転モーメントは、錘3に
係る重力による回転モーメントにより打ち消すことが可
能となる。この場合、永久磁石1の長軸と磁場軸の角度
がどのような状態であっても、回転モーメントが磁石に
は働かない状態を実現できる。この条件を式で表すと、 Fgcosθ×L1−FB1cosθ×L1−FB2cosθ×L2=0 1) となり、Fgは錘にかかる重力で、錘3の質量をmとす
るとFg=mg、L1は錘3の重心(磁極Sの位置に等
しい)と軸2との距離、θは振り子の磁場軸に対する角
度であって、重力の方向と錘3の回転方向との角度およ
び磁界の方向と各磁極の回転方向であり、FB1は磁界B
により永久磁石1のS極が受ける磁力、FB2は磁界B
により永久磁石1のN極が受ける磁力、L2は磁極Sと
軸2との距離である。
【0028】図2は、振り子の磁場軸に対する角度θ
[rad]に対する、重力による回転モーメントFg co
sθ×L1、および磁場Bによる回転モーメント(FB1
cosθ×L1+FB2cosθ×L2)の変化を示す。
左端が錘3の位置が最上位にある場合であり、右端が最
低位置にある場合を示す。また上部曲線が重力による振
り子に対する力即ち回転モーメントを示し、下部曲線が
磁場による永久磁石に対する力即ち磁場の基づく回転モ
ーメントを示す。双方の回転モーメントによる力の和を
ゼロとすることができるが、この条件を満たすのは1つ
の磁場値だけであり、図2はこの条件を満足する場合を
示す。
【0029】図3に同様の原理の水平振り子の例を示
す。錘3が腕部5を介して軸2に回転可能に取付けられ
ている構造を有している。図1と同様に、平行磁場B内
での永久磁石1の回転モーメントが、重力により錘3へ
生ずる回転モーメントを打ち消すものである。錘3と永
久磁石1および平行磁場Bとの位置関係は異なるもの
の、回転モーメントや位置エネルギーの関係は図1の垂
直振子と同じである。図3(a)は永久磁石1が傾いて
いる場合であり、図3(b)は永久磁石1が水平の場合
を示している。
【0030】回転モーメントが永久磁石1に働かない条
件は、 Fgcosθ×L3−FB1cosθ×L4−FB2cosθ×L4=0 2) であり、L3は錘3の重心と軸2との距離、L4は磁極
Sおよび磁極Nと軸2との間の距離である。
【0031】上記原理を用いて振動検出器を形成する場
合、実際には、錘3にかかる重力を打ち消すための磁
場、および回転振り子の本体を構成する例えば円柱型の
永久磁石1の磁場強度は設計上の制限があり、自由に選
ぶことが困難である。
【0032】その理由を述べると、地震観測のような野
外での観測を主とする検出器の場合は可搬型にする必要
があり小型化が要求される。さらに、設置が予想される
観測場所の電源状況の悪い場合が多く、電源としては電
池しか使えない場合が多い。
【0033】この場合、電磁石を使用することは消費電
力や発熱などのために難しく、永久磁石を用いて錘にか
かる重力を打ち消すための磁場を作る必要がある。した
がって、磁場強度Bは使用する磁場形成用永久磁石の保
持力により固定されてしまい、この条件により自然周期
等の振り子の基本特性が決まってしまう。このため、振
動検出器としての性能が磁場形成用永久磁石の特性によ
り左右されることになる。かかる理由から、実際に使え
る磁場形成用永久磁石の磁場強度に対応してどの程度の
重さを有する錘が無定位にできるかが定まる。
【0034】実際の地動検出器内に形成された磁場中
で、シーソーのような無定位の振り子運動をさせる場
合、磁場の平行性および均一性が問題となる。磁場に不
均一な成分があると、回転振り子である円柱型永久磁石
1に回転モーメント以外の力や式1)および式2)の関
数からずれた力が働くからである。一般に永久磁石はそ
の端部の形状が平面による四角の形状であり、このため
着磁が均一に行なわれたとしても、エッジ等の形状効果
によりその平面の直上で均一な磁場が形成できるとは限
らない。
【0035】図4に上記問題を解決し均一な磁場を形成
するための構造の一例を示す。永久磁石6に鉄の磁気回
路であるヨーク7を付加して窓枠型の磁石8を形成し、
図4のAで示した空間の磁場を均一化する方法である。
磁場の向は矢印で示してある。この例では左右に直方体
の例えばネオジウムコバルトからなる永久磁石6が配置
されている。左右の磁石6の極性の配置は同一方向で、
図4においては両方とも上がN極である。永久磁石5の
上部および下部に純鉄のヨーク7が配置されている。磁
場Bは図4において矢印のように流れ、Aの空間におい
ては平行かつ均一にすることができる。
【0036】図4において、窓枠の入り口においてエッ
ジを有する磁石6を使用する場合であっても、使用領域
Aで10-3以下の磁場の均一性が実現できることがわか
った。さらに、磁石6のエッジ等を丸く形成すればこれ
以上の均一性が可能である。この空間Aの中央部に例え
ば円柱型の永久磁石(一例として、直径10mmφ、長
さ30mm)を挿入して安定な無定位回転型振り子を実
現することができる。
【0037】次に本発明において採用する磁気バネの作
用について述べる。磁気バネは地動測定装置を基準とし
た場合における錘の運動を制御するために使用するもの
である。
【0038】図5に磁気バネ9の基本的動作を説明する
ための概略図を示す。磁気バネ9はソレノイドコイル1
0中にその磁場軸と平行にそれと同じ長さの円柱型永久
磁石11を挿入した構造を有する。ソレノイドコイル1
0の磁極と永久磁石11の磁極は、その磁気特性が互い
に逆になるように配置されている。このため永久磁石1
1はソレノイドコイル10中で安定な位置を有すること
ができ、永久磁石11がこの位置から移動しようとする
場合、永久磁石11にその復元力を加算又は減少させる
力が働く。
【0039】この機構により、永久磁石11がソレノイ
ドコイル10内にある場合が最も安定で、ソレノイドコ
イル10の外に出ると復元力や反発力が働く磁気バネ9
が実現できる。ソレノイドコイル10の電流を変えれば
振り子の自然周期も変えられ、さらに弱い復元力も実現
できる。この場合のソレノイドコイル10内の永久磁石
11の運動方程式を下記の式3)に示す。
【0040】
【数1】 3)
【0041】ここで、左辺のtは時間、mは永久磁石1
0の質量、Yはその変位、μは空気や人工的な減衰項
(粘性)、MGp は永久磁石の磁荷、nはソレノイドコ
イルの巻き数、Iはその電流である。右辺は外力項であ
る。
【0042】式3)による計算によると、地動検出器に
磁気バネを付属させることにより、100秒以上の自然
周期も可能となることがわかった。実験によると、通常
のサーボ型(負帰還制御方式)地震計のように錘に関す
るフィードバック回路を使用することなく、また水平の
設置精度を気にしなくとも、少なくとも27秒以上の自
然周期が得られることが確認されている。
【0043】図6に以上の原理に基づく本発明による一
実施形態である地動検出器すなわち垂直動振動検出器の
構造の概略を示す。
【0044】図6の右側に地動検出器の錘にかかる重力
を打ち消すための磁場Bを発生する磁場形成用磁石13
が示され、そして、この磁場B内に挿入された振り子本
体を構成する縦長の形状の永久磁石即ち円柱型の永久磁
石14が示されている。なお磁場形成用磁石としては電
力の供給が不要な永久磁石を使用するのが望ましいが、
永久磁石に限定するものではなく必要な場合には例えば
電磁石を用いることもできる。磁場形成用磁石13は均
一で平行な磁場を形成できるものであればその構成およ
び形状は問わない。振り子本体である永久磁石14の形
状は円柱型に限るものではなく、例えば、四角柱であっ
ても良い。磁場形成用磁石13は検出器12のハウジン
グ(図示せず)に固定され、永久磁石14はその中心軸
15の回りで回転可能となるような方法で、検出器12
のハウジングの所定の位置に取り付けられる。
【0045】円柱型の永久磁石14の端部18から永久
磁石の長軸と平行に延在する腕部16を介して、慣性不
動点を形成するための錘17が永久磁石14と接続され
ている。従って、永久磁石14とともに振り子本体を形
成するこの錘17は永久磁石14の回転中心の回りを永
久磁石14と共に回転する。図6において錘17は簡単
化のため球状で示されているが、球状に限定されるもの
ではない。
【0046】また、錘17は上下に分岐した腕部19を
介して、コイル20、23と共に磁気バネ21またはフ
ィードバック手段24のいずれかを構成する永久磁石2
2、25と結合する。コイル20、23および永久磁石
22、25を磁気バネとして使用する場合には、制御回
路27が磁気バネを構成するコイル20、23に流れる
電流を所定の値に制御する。また、コイル20、23お
よび永久磁石22、25をフィードッバック手段24と
して使用する場合には、制御回路27は錘17の位置を
検出する例えば静電容量検出器のような位置検出器26
からの検出信号に基づき、錘の垂直移動を制御して錘を
所定の静止位置に留めるような制御電流をコイル20、
23に流す。なお、この制御電流は錘を移動させようと
する力に対応するので、その波形は地面の震動に対応す
ることになる。図6においては磁気バネ21またはフィ
ードッバック手段24のいずれかを含む構成が示されて
いるが、本発明は磁気バネ21またはフィードッバック
手段24の両方を含まなくとも良い。フィードッバック
手段24を含まない場合は錘17の位置が位置検出器2
6によって検出され記録または表示される。
【0047】図7は、錘と永久磁石との組合わせ部分に
関する他の実施の形態を示すものである。錘17の側部
から伸びた一対の梁28が、それぞれの端部部分30、
31において振り子の回転軸20と一致するように延伸
する構造を有する。このため永久磁石14の中心部には
何の加工を施すこともなく錘17と永久磁石14を回転
軸20の回りで回転可能に配置することができる。
【0048】図8は、本発明による地動検出器の他の実
施の形態を示すもので、実際に試作した検出器を示すも
のである。(a)は側面図、(b)は平面図、(c)は
背面図、(d)は正面図である。
【0049】図8(a)において、向かって左側に、磁
気バネ用コイル32およびフィードッバック用コイル3
3が配置されている。これらコイル内部には上下に分岐
する腕部34に結合された永久磁石(図示されていな
い)がそれぞれ挿入されている。
【0050】そして、右側に重力打ち消し用磁場を発生
するための永久磁石35と、振り子の本体を構成する円
柱型永久磁石36(図示されていない)が配置されてい
る。
【0051】中央に上記永久磁石36と共に振り子を構
成する板形状の錘37が配置されている。図8(b)で
わかるように、錘37は永久磁石35の部分の空間が四
角に抜かれて、この空間を半ば取り巻いている構造を有
する。錘平板35の両側ではXヒンジ38により、永久
磁石36の回転中心39と同じになるように固定されて
いる。
【0052】円柱永久磁石36は、振り子を構成する板
状部37から延在する棒部材40を介して振り子の板状
部37と結合し、窓枠型の磁場発生用永久磁石35のボ
ーア41内に配置されている。
【0053】錘37の位置検出器26として、例えば2
0nm以下の変移が検出可能な静電容量位置検出器(示
されていない)が、磁気バネ32とフィードバックコイ
ル33が取り付けられている板の裏側に錘の位置を測定
するように取り付けられる。
【0054】上記振動検出器の構成要素の材質は、コイ
ル32、33のボビンや永久磁石36の保持部材で非磁
性の必要がある部分はマコールが望ましく、他の構成部
分は硬質アルミが望ましい。また、セラミックとアルミ
の融合材の使用も考えられる。この材料は比重がアルミ
に近く、線膨張率がセラミックに近い10-6程度であ
り、振動の減衰時間もステンレスの数分の1である。構
造体の熱膨張を少なくし余分な寄生振動を防止するの
に、効果がある。
【0055】図9は、図8に示した地動検出器の、重力
打ち消し用磁場を発生する永久磁石35と、振り子の本
体を構成する円柱型永久磁石36、および中央に永久磁
石36と共に振り子を構成する板形状の錘37の部分を
示す斜視図である。図9において、Xヒンジ38は薄い
板バネにより形成され、磁場発生用永久磁石35は中央
に穴部41を有する窓枠状に形成されている。錘37に
取付けられ錘のモーメントを変更可能にするネジ42、
円柱型永久磁石36の位置を調節するために錘部分に取
り付けられた位置変更機構43、窓枠型磁石35の位置
を調節するX−Y−Zステージ44、基板46の高さを
調節する調節ネジ45、そして支持部材47が設けられ
ている。
【0056】以上、平行磁場による永久磁石の回転モー
メントにより、重力による振り子の回転モーメントを打
ち消す構造、そして磁気バネおよびフィードバック制御
手段を有する振動検出器の説明を行った。予備的な実験
において、図8で示した振動検出器は、その動作におい
て10秒程度の自然周期を確認し、それ以上の自然周期
を達成することも期待できる。更に、ヒンジの復元力に
磁気バネの電流を変えることで力を加えバネを強くした
り、逆に倒立的な力を加え弱くすることもできることが
わかった。
【0057】この装置の用途に関しては、地震等の振動
検出器の他に、長周期の慣性不動点が得られる特徴から
防振システムへの応用も考えられる。
【0058】以上説明した、本発明の実施例は単なる一
例であり、本発明は上記実施形態に限定されるものでは
なく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で種々に
変形することが可能である。更に、上記実施形態には種
々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成
要件における適宜な組合わせにより種々の発明が抽出さ
れ得る。例えば実施形態に示される全構成要件から幾つ
かの構成要件が削除されても、発明が解決しようとする
課題の欄で述べた課題の少なくとも1つが解決でき、発
明の効果の欄で述べられている効果の少なくとも1つが
得られる場合には、この構成要件が削除された効果が発
明として抽出され得る。
【0059】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば永
久磁石の長軸と磁場軸の角度がどのような状態であって
も、回転モーメントが磁石に働かない無定位な状態を実
現できる。このため、この振り子は従来のものよりも無
定位にできる範囲をより広くすることができ、そして自
然周期を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の垂直動の無定位回転振り子の原理を示
す概略図であり、図1(a)は永久磁石1が傾いて位置
している場合、図1(b)は永久磁石1が水平に、即ち
磁場Bに対し垂直に位置している場合である。
【図2】図1の無定位回転振り子の磁場軸に対する角度
と、重力による回転モーメントおよび磁場による回転モ
ーメントとの関係を示す図である。
【図3】図1と同様の原理による、水平振り子の例を示
す図である。
【図4】磁場不均一性の問題を解決するための一方法で
ある窓枠型磁石を示す図である。
【図5】磁気バネの基本的動作を説明するための概略図
である。
【図6】本発明による地動検出器構造の概略を示す図面
である。
【図7】錘と永久磁石との組合わせ部分に関する他の実
施の形態を示す図である。
【図8】本発明による地動検出器の他の実施の形態を示
すもので、実際に試作した検出器を示すものである。
【図9】図8に示す地動検出器の、無定位型振り子の主
要部分を示す斜視図である。
【図10】従来のラコステ加速時計を示す図面。
【符号の説明】
1 … 永久磁石 2 … 中心軸 3 … 錘 4 … ソレノイドコイル 5 … 腕部 6 … 永久磁石 7 … ヨーク 8 … 窓枠型の磁石 9 … 磁気バネ 10 … ソレノイドコイル 11 … 永久磁石 12 … 垂直動振動検出器 13 … 磁場形成用磁石 14 … 永久磁石 15 … 中心軸 16 … 腕部 17 … 錘 18 … 端部 19 … 腕部 20 … コイル 21 … 磁気バネ 22 … 永久磁石 23 … コイル 24 … フィードッバック手段 25 … 永久磁石 26 … 位置検出器 27 … 制御回路 28 … 梁 29 … 回転軸 30、31 … 端部部分 32 … 磁気バネ用コイル 33 … フィードッバック用コイル 34 … 腕部 35 … 磁場発生用永久磁石 36 … 永久磁石 37 … 板形状の錘 38 … Xヒンジ 39 … 回転中心 40 … 棒部材 41 … ボーア 42 … ネジ 43 … 位置変更機構 44 … X−Y−Zステージ 45 … 調節ネジ 46 … 基板 47 … 錘 48 … バネ 49 … 支持点 50 … 支持部材
フロントページの続き (56)参考文献 特開2000−244319(JP,A) 特開 平6−50754(JP,A) 特開 平10−38672(JP,A) 特開 平9−21696(JP,A) 特開 平9−325067(JP,A) 実開 昭55−122126(JP,U) 特公 昭61−13168(JP,B2) 特公 平4−78128(JP,B2) 特公 昭58−608(JP,B2) 大竹雄次、辻信行,“ディジタルPI Dフィードバックコントローラーの高 速・高ダイナミックレンジ化の提案”, 東京大学地震研究所技術報告,日本,東 京大学地震研究所,1999年12月24日,第 5号,p.23−28 山田功夫,“最近の地震観測”,地 震,日本,地震学会,1991年 9月10 日,第2輯、第44巻、特集号,p.3− 14 森田裕一,“ディジタルフィードバッ ク地震計(DFS)の実用化の可能性に ついて”,地球惑星科学関連学会合同大 会予稿集,日本,1998年 5月26日, 1998年、Sb−008,p.284 E. Wielandt and G. Streckeisen,”Th e Leaf−Spring Seis mometer Design and Performance”, Bul letin of the Seism ological Society o f America,米国,1982年12 月,第72巻、第6号,p.2349−2367 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01V 1/00 - 1/52 G01H 1/00 - 1/16 JICSTファイル(JOIS)

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 平行な磁場を生成する手段と、 前記平行な磁場中に回転可能に配置された振り子と、こ
    こで前記振り子は縦長の形状の第1の永久磁石とこの
    1の永久磁石に結合された錘とを有し、前記第1の永久
    磁石の中心は前記振り子の回転中心と一致しており、そ
    して 前記錘の位置を検出する手段とを含み、前記磁場により 前記第1の永久磁石に生ずる回転モーメ
    ントと前記振り子にかかる重力による回転モーメント
    が互いに打ち消されるように形成されることを特徴とす
    る振動検出器。
  2. 【請求項2】 前記磁場を生成する手段は、第2の永久
    磁石によって磁場を生成することを特徴とする請求項1
    記載の振動検出器。
  3. 【請求項3】 前記錘は前記縦長の形状の第1の永久磁
    石の一方の端部と結合されていることを特徴とする請求
    記載の振動検出器。
  4. 【請求項4】 前記錘は前記縦長の形状の第1の永久磁
    石の長軸に対し垂直方向に延在するように結合されてい
    ることを特徴とする請求項記載の振動検出器。
  5. 【請求項5】 前記振り子は振り子の振動を制御する手
    段を含むことを特徴とする請求項1からのいずれか1
    項記載の振動検出器。
  6. 【請求項6】 前記振り子は磁気バネによりその振動が
    制御されることを特徴とする請求項記載の振動検出
    器。
  7. 【請求項7】 前記磁気バネは静止して配置されたソレ
    ノイドコイルと、前記錘に結合され前記ソレノイドコイ
    ル内に移動可能に配置された第3の永久磁石を含むこと
    を特徴とする請求項記載の振動検出器。
  8. 【請求項8】 前記振り子は、前記錘の位置を検出する
    位置検出器と、この位置検出器からの検出信号に基づ
    き、錘の移動を制御して錘を所定の静止位置に留めるよ
    うに制御電流を流す制御回路を含むフィードバック手段
    によりその振動が制御されることを特徴とする請求項
    記載の振動検出器。
  9. 【請求項9】 前記磁場を生成する手段は窓枠形の形状
    を有し、その中空部分に平行な磁場が形成されることを
    特徴とする請求項1からのいずれか1項記載の振動検
    出器。
  10. 【請求項10】 前記振り子は前記平行な磁場の外部に
    おいてその回転中心がXヒンジで固定されるように構成
    されることを特徴とする請求項1からのいずれか1項
    記載の振動検出器。
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