JP3500177B2 - モスレムカレンダ - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明はアナログ時計用機械的モ
スレムカレンダに係わる。本発明は特に腕時計のムーブ
メントまたはクロックのムーブメントに使用される万年
モスレムカレンダに係わる。

【０００２】

【発明が解決しようとする課題】モスレム年は月周期に
基づき、約３５４太陽日からなる。年は１２カ月に、各
月は２９日及び３０日に、週は７日間、１日は２４時間
に順次分割される。奇数月は３０日間、偶数月は２９日
間、従って、年は３０日の月で始まり、２９日の月で終
る。

【０００３】実際には、モスレム年は３５４日間よりも
やや長い。この差を補正するため、３０年修正サイクル
のいくつかの年の最終月は２９日間ではなく３０日間で
ある。この３０年サイクルに亘って夫々が３５４日間か
らなる所謂普通年が１９年と夫々が３５５日間からなる
所謂閏年が１１年ある。実際には２つの３０年周期が使
用され、各サイクルが特定の国または地方に適用され
る。年１で始まり年３０で終る２つのサイクルは閏年だ
けを示す下記の表の通りである。

【０００４】サイクルＩ：２，５，７，10，13，15，1
8，21，24，26及び29 サイクルII：２，５，７，10，13，16，18，21，24，26
及び29 ２つのサイクルが互に異なるのは第１サイクルでは１５
番目の年が閏年であり、１６番目の年が普通年であるの
に対して、第２サイクルではこの順序が異なる点であ
る。

【０００５】こうした点を考慮して、本発明では、年間
の２９日の月と３０日の月の交替、及び３０年修正サイ
クルのいずれか一方に亘る普通年と閏年の順序を考慮に
入れながら月の日々を表示するモスレムカレンダを提供
することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】アナログ時計のムーブメ
ント用として本発明が提供するモスレムカレンダは、１
ポジションずつ進んで数字１，２，……２９，３０，
１，２，……を順次表示する３０ポジションの日付を示
すインジケータを具え、毎日の終りにムーブメントの回
転部とは独立に日付インジケータを１ステップだけ駆動
する第１機構と、第１機構と協働して偶数月の終りに日
インジケータを連続２ステップだけ駆動することにより
インジケータを２９日から翌月の１日へ瞬時に進める第
２機構と、他の２つの機構と協働し、３０年修正サイク
ルによって定められる閏年の終りに第２機構の作用を一
時的に無効化することにより日付を示すインジケータが
閏年の１２番目の且つ最終の月の最終日に３０を表示す
るように作用する第３機構とをもって課題の解決をしよ
うとするものである。

【０００７】

【実施例】本発明の特徴及び長所は、添付図面に沿った
このカレンダの実施例に関する以下の説明から明らかに
なるであろう。

【０００８】以下の説明では機械式または電子式腕時計
のアナログムーブメントの一部を形成する場合について
本発明のカレンダを考察するが、アナログ式の時計であ
れば如何なる時計にも応用できることは云うまでもな
い。

【０００９】図１には毎日の終りに日付を示すインジケ
ータ（以下日インジケータという）をワンステップだけ
進ませるカレンダ機構の各部を有するムーブメントを俯
瞰した平面図で示した。

【００１０】図１において、１はムーブメントの時針軸
と一体の回転部としてのピニオンである。このピニオン
はカレンダの歯車２と咬合して２４時間ごとに矢印３の
方向に１回転する。歯車２は、軸４を中心に枢動し、こ
の軸４には爪５も回転自在に取付けられている。歯車２
が矢印３の方向に回転する時には、その突隆舌部６の隆
起端が爪５を駆動し、時計の時間修正動作の過程で反対
方向に回転させる時には爪５を駆動することなく突隆舌
部６は爪５の下を通過する。この回転の途中で、爪５は
ムーブメントの軸９を中心に枢動する第１のレバー８と
一体をなす突出部７と咬合する。レバー８はばね１２の
作用下に枢動ハンマー１１の突出部１０と当接した静止
位置に保持される。レバー８は図１に示す移動開始位置
から爪５の作用下に弾性素子としてのばね１２の作用に
抗して矢印１３の方向に回転する。こはぜ１５はレバー
８と一体のピン１４によって制限される角度だけ枢動す
る。こはぜ１５は矢印１７の方向の最大角度だけ枢動し
た位置に、ばね１６によって保持され、一方の端部に２
つの突出部１８，１９を有する。

【００１１】日付用の歯車２０は３０個の歯２１を有
し、こはぜ１５の近傍で軸となるピン２２に枢動自在に
取付けられている。歯車２０には図示しないダイヤル窓
に順次現われる数字１ないし３０を記入したインジケー
タとしてのディスク２３（図９に示す）が、日インジケ
ータとして装着されている。歯２１と咬合するジャンパ
２４は歯車２０の位置ぎめをする一方、歯車２０が矢印
２５の方向に歯１個ずつ進み、１カ月に１回転するのを
妨げない。

【００１２】１日の終りに爪５の作用下に矢印１３の方
向にレバー８が枢動すると、こはぜ１５の突出部１８が
歯２１と咬合し、歯車２０を矢印２５の方向にゆっくり
ワンステップだけ進め、同時に日付を次の日の日付に変
える。突出部７が爪５の先端を通過すると、レバー８は
ばね１２の作用下に後退を始める。次いで、突出部１８
が歯車２０の歯に沿って摺動してこはぜ１５を枢動させ
ることにより、突出部１９を隣設の歯と対向させる。こ
の位置で、突出部１９は手動でレバー８を進め方向に枢
動させている時に歯車２０が回転するのを防止する安全
ストッパとして作用する。

【００１３】以上に述べた機構では表示する月が総て３
０日間であるから簡単なカレンダしか構成できない。日
を正確に表示するには、閏年の最終月の終りを除いて、
偶数月の終りに日インジケータを手動で１日だけ進める
必要がある。これは上述したハンマー１１と連動する図
示しない押しボタンを押すことによって公知の態様で行
なわれる。この操作に応答してハンマー１１がピン２６
を中心に枢動し、その突出部１０が爪５と同様にレバー
８を駆動することにより歯車２０をワンステップだけ回
転させる。

【００１４】図１は旺日インジケータ及び月インジケー
タをも示す。公知構成の旺日インジケータは旺日歯車３
０と一体にピン３１に枢動自在に取付けられ、７個の歯
を有する図示しない旺日ディスクを含む。歯車３０はレ
バー８に固定されたピン３３を中心に限られた角度だけ
枢動するこはぜ３２によって歯車２０と同様に２４時間
ごとに歯１個分だけ駆動される。歯車３０はジャンパ３
４によって回転位置ぎめされるが、旺日インジケータは
図示しない押しボタン操作修正位置によって日インジケ
ータとは独立に更新することができる。ただし、万年暦
の場合、工場で一旦セットされた日及び旺日の間にその
後ずれが起こることはないから、上記のような修正装置
は不要である。

【００１５】月インジケータはムーブメントの軸として
のピン４１に枢動自在に取付けられたレバー４０によっ
て毎月の終りに駆動される。レバーの一端は弾性素子と
してのばね４２の作用下に蝸牛形カム４３と当接する。
このカムは日歯車２０と一体であり、不連続的なフラン
ク４４を有する。レバー４０とフランク４４は３０番目
の日にレバーが矢印４５の方向へ急激に枢動し、その端
部が前記フランク４４に沿って摺動するように相対的に
構成されている。レバー４０の他端にはピン４６が固設
されていて、このピンにこはぜ４７がストッパによって
制限される角度だけ枢動できるように取付けられてい
る。こはぜ４７は矢印４５の方向とは反対の方向に最大
角度だけ枢動した位置までばね４８によって駆動され
る。１２個の歯を有する月歯車４９がこはぜ４７と対向
する位置に配置されている。ムーブメントの軸としての
ピン５０に枢動自在に取付けられた月歯車４９はジャン
パ５１によって回転位置ぎめされる。毎月の終りにレバ
ー４０が矢印４５の方向に一気に跳動すると、こはぜ４
７が歯車４９の歯と咬合して、同じく一気に歯車４９を
矢印５２の方向へ歯１個分だけ駆動し、１年間で１回転
させる。月インジケータは図９に示すようなディスク５
３であり、このディスクは歯車４９と一体であり、図示
しないダイヤル窓に順次現われる１２の月が記入されて
いる。図示しない押しボタンによって制御されるハンマ
ー５４は日歯車とは独立に月歯車を進めることを可能に
する。

【００１６】各偶数月の終りにカレンダを２９日から翌
月の１日へ漸進的に、ただし迅速に切換えると同時に旺
日歯車３０をワンステップだけ進める動作は、図２，
３，４及び図９に各部を示した機構によって達成され
る。カム４３と同様に不連続フランク６１を有する蝸牛
形カム６０を日歯車２０と一体にカム４３上に配置す
る。レバー８に固設したピン６３に枢動自在に取付けた
こはぜ６２の端部はばね６４の作用下にカム６０に圧接
する。日歯車２０の歯２１に対するカム６０の不連続フ
ランク６１の位置、こはぜ６２の長さ、及びレバー８の
枢動角度の関係から、毎月の２９日の終りにレバー８が
矢印１３の方向に回転を開始すると、こはぜ６２が不連
続フランク６１に陥ち込み咬合すると、歯車２０を最初
のワンステップだけ進める（図３）。即ち、レバー８が
枢動し続ける過程で、こはぜ６２が未だ不連続フランク
６１と当接している時に、こはぜ１５の突出部１８が歯
車２０の歯と咬合し、レバー８の枢動の最終段階におい
て、突出部１８とこはぜ６２が歯車２０に同じ方向に作
用し、歯車２０を第２のワンステップだけ進める。こは
ぜ６２の作用下に、レバー８の枢動に伴なって歯車２０
がこれらの連続した２ステップだけ回転して日インジケ
ータが短時間で２９日から翌月の１日へ切換わる一方
で、旺日歯車３０はこはぜ３２の作用下にワンステップ
だけ進む。月の最終日以外には不連続フランク６１はこ
はぜ６２の届かない位置にあり、従って、歯車２０をワ
ンステップだけ駆動するのは突出部１８であることはい
うまでもない。

【００１７】ただし、モスレムカレンダの場合、偶数月
には日歯車２０が連続する２ステップ進み、奇数月では
３０日を保持できるようにするため、ピン５０に枢動自
在に取付けられ而も６個の凹部６６と６個の突起６７を
有する月カム６５を月歯車４９に固定する。

【００１８】レバー８と一体のアームの一部を形成する
突出部６８がカム６５と当接する。レバー８の突出爪６
８が凹部６６に位置する時、レバー８の枢動角度は正常
であり、突出爪６８が突部６７上に位置する時、この枢
動角度は不足になる。偶数月の終りには突出爪６８が凹
部６６に位置して（図３）、日歯車２０が既に述べたよ
うに連続２ステップ進み、奇数月の終りには突出爪６８
は突部６７上に位置する（図４）。突出爪６８が突部６
７上に来た場合のレバー８の不足な枢動角度は、こはぜ
６２及びこはぜ１５の突出部１８が歯車２０をワンステ
ップだけ進めることにより日インジケータを３０日から
翌月の１日まで進めるように設定されており、この進み
は偶数月の終りにおける前記第２のステップに対応す
る。

【００１９】このように偶数月の終りに日インジケータ
が２９日から翌月の１日まで自動的に跳動する上記機構
は閏年の最終月が３０日であって他の偶数月のように２
９日ではないから、閏年の１２月の終りを除いて総ての
日付を正確に表示する半万年暦を構成する。従って、閏
年の最終月に別に１日を加えねばならない。即ち、日イ
ンジケータを新年の１日から前の月の３０日に戻さねば
ならない。この機構では、日インジケータは進めること
しかできないから、ハンマー１１とその押しボタンでこ
の修正を行なうことはできない。次の閏年まで日付を正
確に表示するには例えば２日を表示している日インジケ
ータを次の最初の奇数月の１日まで、即ち、２カ月だけ
進めねばならないことになる。

【００２０】この煩わしい操作を解消するため、本発明
は偶数月の終りに、こはぜ６２によって日インジケータ
を２９日から翌月の１日まで跳動させる上記機構と作用
を閏年の終りに自動的に無効化する機構を提供するもの
である。

【００２１】図５及び図９はこのカレンダ機構の各部を
総て示し、図６，７及び図８は、特にこはぜ６２に作用
してその作用を抑止する各部を種々の動作段階で示すも
のである。図中、７５はピン２２に枢動自在に取付けら
れた年カムであり、この年カム７５には３０個の歯を有
する歯車７６が固定されている。歯車７６の歯と当接す
るジャンパ７７（図５参照）は年カム７５を回転位置ぎ
めし、ムーブメントの軸としてのピン８０に枢動自在に
取付けた抑止レバー７９の端部の一部を形成する突爪７
８が前記年カム７５と対接する。年カム７５は１年に１
回転し、歯車７６の３０個の歯と咬合するフィンガ８２
により３０年に１回転の速度で矢印８１の方向に回転駆
動される。フィンガ８２は、月歯車４９と一体であり且
つ歯車８３と同数の歯を有する歯車８４と咬合する前記
歯車８３に固定されている。歯車４９は瞬時ステップで
進むから、年カム７５も１年に相当するワンステップず
つ瞬時跳動する。

【００２２】抑止レバー７９は一部に延設されたアーム
８５を有し、アーム８５の端部にはレバーの位置に応じ
て、こはぜ６２と係合したりこはぜ６２から離脱するピ
ン８６が固定されている。また、弾性素子としてのばね
８７が突出部７８をカム７５に向かって付勢する方向に
レバー７９に力を作用させる。

【００２３】この実施例では、日歯車２０が装着されて
いるピン２２を中心に年カム７５及び歯車７６は枢動す
る。なお、年カム７５が抑止レバー７９の突爪７８と係
合するという条件さえ満たされるなら、年ム７５と歯車
７６とがピン２２以外のピンを中心に回転する構成を採
用することも可能であり、その場合にはカムの形状を適
当に変更すればよい。図５に示すフィンガ８２及び歯車
８３は、ピン２２とピン５０とが遠隔の位置に設けられ
るために必要となる中間的な伝動素子に過ぎない。歯車
７６を月歯車４９のハンマー５４によって直接駆動する
か、適当な歯車列を介してムーブメントの他の回転部材
から駆動するように構成することも可能である。

【００２４】年カム７５は半径が変化するプロフィル９
０を有する。このプロフィルは上記３０年修正サイクル
を表わし、サイクルＩとサイクルIIではやや異なる。こ
の実施例の場合、プロフィル９０は１１の閏年に対応す
る１１個の切込み９１と、夫々の普通年に対応する突部
とを有し、これらの突部は全部で１１個の一定半径の個
別セクター９２を形成する。

【００２５】抑止レバー７９の枢動は、月歯車４９に固
定されているカム９５及び中心で軸となるピン９８によ
り枢動自在に取付けられている中間レバー９７によって
制御される。レバー９７の端部９９は、円形のプロフィ
ルが切込み９６を含むカム９５と当接し、レバー９７の
他端部１００は抑止レバー７９の他方のアーム１０１と
対向する位置を占める。

【００２６】図６はカレンダが閏年の終りを指示する時
の機構各部の位置を示す。年カム７５及びカム９５は突
爪７８が切込み９１の１つに進入し、中間レバー９７の
端部９９が切込み９６に進入するように角度調整してあ
る。この状態では、抑止レバー７９がばね８７の作用下
に矢印１０２の方向へ最大角度枢動して、中間レバー９
７の端部１００に対し圧力が加わらないようにアーム１
０１と接触させてある。この状態では、抑止レバー７９
のアーム８５は制御素子としてのピン８６がこはぜ６２
の先端をカム６０から不連続フランク６１に対し作用で
きなくなる角度だけ離脱させておく位置を占める。こう
して閏年の最終月の終りに、こはぜ６２がその作用を無
効化されると、日インジケータは既に述べた歯車２０に
対する突出部１８の作用下に、翌年の１月１日へ進む前
にディスク２３上の日インジケータが数字３０を表示す
ることになる。

【００２７】普通年の終りには、図７に示すように、突
爪７８が年カム７５の個別セクター９２と当接し、中間
レバー９７の端部９９は切込み９６に位置したままであ
る。この時、抑止レバー７９は中間レバー９７の他端部
１００がアーム１０１から離脱し、ピン８６が、もは
や、こはぜ６２と接触していない回転位置を占める。こ
はぜ６２には抑止作用が加わっていないから、こはぜ６
２は不連続フランク６１と咬合して、カム６０を上述の
ように連続２ステップだけ回転させることによってその
機能を行なうことができる。

【００２８】普通年であろうと、閏年であろうと、過程
で中間レバー９７の端部９９がカム９５の切込み９６以
外の外側に位置する円形部分と当接して中間レバー９７
を矢印１０３（図８に表示）の方向に枢動させる。中間
レバー９７の他端部１００は抑止レバー７９のアーム１
０１と衝合してこれを矢印１０２とは反対の方向に枢動
させることによって、突爪７８を年カム７５から離脱さ
せ、ピン８６をこはぜ６２から離脱させる。カレンダ各
部のこの位置を、突爪７８が切込み９１の１つに介入せ
ずに対向した位置を占める閏年の場合について図８に示
した。普通年の場合、突爪７８は個別セクター９２の１
つと対向するが介入することはない。ピン８６はこはぜ
６２から離れているから、こはぜ６２は普通年であって
も閏年であってもその機能を果たすことができる。

【００２９】中間レバー９７の端部９９がカム９５の切
込み９６内に位置している状態における中間レバー９７
の位置で、抑止レバー７９が毎年の終りに矢印１０２の
方向へ枢動して突爪７８を年カム７５に介入させること
もできる。突爪７８が個別セクター９２の外縁と接触す
るなら普通年であり、こはぜ６２は日インジケータを２
日だけ、即ち、２９日から１日へ進めることになる。も
し突爪７８が切込み９１の１つに進入するなら閏年であ
り、その場合にはこはぜ６２が一時的にその作用を無効
化されるから、日インジケータは突出部１８によって１
日だけ、即ち、３０日から１日へと進められる。１年の
経過中、中間レバー９７の端部９９がカム９５の外縁、
つまり切込み９６の外方に位置すれば、こはぜ６２は偶
数月の終りに日インジケータを２９日から１日に向けて
進める。

【００３０】上記機構は一方の３０年サイクルに現われ
る普通年と閏年のシーケンスに合わせたものであり、万
年モスレムカレンダを構成する。各サイクルごとに特定
の年カム７５が用いられる。従って、サイクルを変える
ためにはカム７５を交換する必要があり、そのため、カ
ム７５は着脱自在に取付けられている。特に難しい作業
ではないが、この交換は専門家によって行なわれねばな
らず、新しいカムをこの専門家に供給しなければならな
い。使用されていないカムが失われないようにするため
には両方のカムを例えばピン２２に重ね合わせて取付け
て、常時カレンダ機構内に存在するようにすればよい。
サイクルは突爪７８が所期のカムと当接できるように摺
動自在にピン８０に取付けてある抑止レバー７９を上下
方向に移動させることによって選択することができる。
この操作はおそらく腕時計の持主が外部的な操作手段を
使用して行なうことができるであろう。

【００３１】年カム７５の代りに、修正サイクルＩ及び
IIのいずれか一方に合わせて随意変更できるプロフィル
を有する汎用カムを使用する方式もある。汎用カムの１
例としてのカム１０５を図１０に平面図で示した。カム
１０５のプロフィルは略円形であり、直径は年カム７５
と同じであり、１０個の切込み１０６と１個の二重切込
み１０７を有する。切込み１０６は修正サイクルＩ及び
IIの双方に見られる１０回の閏年である２，５，７，１
０，１３，１８，２１，２４，２６及び２９と対応する
ように構成されており、二重切込み１０７はこの両サイ
クルの年１５及び１６に跨がり、最初の年は１、最後の
年は３０で表わされる。カムの直径に等しい長さを有
し、カムの中心周りに枢動するフィンガ１０８は、切込
み１０６と同じ幅を有するフィンガ先端が年１５または
年１６に対応する二重切込み１０７の一部を埋めるよう
に構成されている。フィンガ１０８が年１６に来ると、
カム１０５のプロフィルがサイクルＩと一致し、フィン
ガが年１５に来るとサイクルIIと一致する。

【００３２】従って、一方のサイクルから他方のサイク
ルへ切換えるためには、先端の尖った工具でフィンガ１
０８を一方の位置から他方の位置へ移動させるだけでよ
く、あとは弾性アーム１０９によってフィンガを夫々の
位置に保持させる。このためアーム１０９には２つの切
込み１１０，１１１を形成してあり、フィンガ１０８と
一体の突出先端１１２が何れか一方の切込みに嵌入す
る。図１１はカレンダ機構におけるカム１０５の位置を
も示し、突爪７８がこのカム１０５またはフィンガ１０
８と当接している状態を示してある。

【００３３】カレンダをセットするには日修正部と月修
正部だけで充分であり、既に述べたように旺日修正部は
不要である。しかし、完全な日セッティングを行なうに
は３０年修正サイクルインジケータが年カム７５または
カム１０５の位置をも示さねばならない。図示の実施例
では３０年間に亘る普通年と閏年の順序が記入されてい
る図示しないダイヤルの前でピン２２を中心に枢動し、
年カム７５，カム１０５と一体に設けられた（図９及び
図１１に示す）年針１１５によって上記表示が行なわれ
る。年針１１５は歯車７６の一部を形成するパイプ１１
６周りに嵌着され、この組立て体はムーブメントに固定
されたピン２２の軸線を中心とする心棒１１７に回転自
在に取付けられる。年カム７５，カム１０５もパイプ１
１６に嵌着されており、歯車２０はパイプ１１８を介し
て該歯車２０に装着された回転するディスク２３，蝸牛
形のカム４３及び同６０と共にパイプ１１６に枢動自在
に取付けられている。

【００３４】なお、以上に述べたカレンダは図示実施態
様と異なる態様で実施でき、当業者ならば本発明の範囲
を逸脱することなく多様な実施態様を考えることができ
るであろう。

【図面の簡単な説明】

【図１】毎日ワンステップだけ日インジケータを駆動す
る本発明の万年カレンダ部分を示す平面図である。

【図２】図１に示したカレンダ部分と共に偶数月の終り
に連続２ステップだけ日インジケータを駆動する部分を
も示す平面図である。

【図３】日インジケータの２ステップ移動を可能にする
カレンダ各部の動作を示す部分図である。

【図４】日インジケータの２ステップ移動の状態を示す
カレンダ各部の動作を示す部分図である。

【図５】万年カレンダの特徴を要部をもって示す平面図
である。

【図６】閏年の終りにおいて動作するカレンダ各部の状
態を示す部分図である。

【図７】普通年の終りにおいて動作するカレンダ各部の
状態を示す部分図である。

【図８】閏年の終り、普通年の終りに関係のない状態で
動作するカレンダ各部を示す部分図である。

【図９】日インジケータ及び月インジケータを支持する
軸を通る垂直面で縦断したカレンダの各部の断面図であ
る。

【図１０】修正サイクルＩまたは修正サイクルIIの双方
を達成する汎用年カムの平面図である。

【図１１】汎用年カムを組込んだ場合の日インジケータ
の軸線部分で縦断した各部の断面図である。

【符号の説明】

１ ピニオン ２ 歯車 ５ 爪 ７ 突出部 ８ レバー １０ 突出部 １１ ハンマー １５ こはぜ １８，１９ 突出部 ２０ 日歯車 ２３ ディスク ３０ 旺日歯車 ３２ こはぜ ４０ レバー ４３ 蝸牛形カム ４７ こはぜ ４９ 月歯車 ５４ ハンマー ６０ 蝸牛形カム ６２ こはぜ ６５ 月カム ６８ 突出爪 ７５ 年カム ７８ 突爪 ７９ 抑止レバー ８２ フィンガ ８６ ピン ９５ カム ９７ 中間レバー １０５ カム １０７ 二重切込み １０８ フィンガ

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) G09D 3/00 G04C 3/00 - 17/00

Claims (8)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 １ポジションずつ進んで数字１，２，…
   …２９，３０，１，２，……を順次表示する３０ポジシ
   ョンの日インジケータ２３を有するアナログ時計ムーブ
   メント用モスレムカレンダにおいて、 毎日の終りにムーブメントの回転部１とは独立に日イン
   ジケータ２３を１ステップだけ駆動する第１機構（歯車
   ２，爪５，レバー８，こはぜ１５，突出部１８，日歯車
   ２０，ジャンパ２４）と、 前記第１機構と協働して偶数月の終りに日インジケータ
   ２３を連続２ステップだけ駆動することによりインジケ
   ータ２３の表示を２９日から翌月の１日へ瞬時に進める
   第２機構（レバー４０，蝸牛形カム４３，こはぜ４７，
   月歯車４９，蝸牛形カム６０，こはぜ６２，月カム６
   ５，突出爪６８）と、 前記２つの機構と協働し、３０年修正サイクルによって
   定められる閏年の終りに前記第２機構の作用を一時的に
   無効化することにより日インジケータ２３が前記閏年の
   １２番目の且つ最終の月の最後の日に３０を表示するよ
   うに作用する第３機構（年カム７５，抑止レバー７９，
   アーム８５，ピン８６，カム９５，中間レバー９７）と
   からなることを特徴とする自動歩進性のモスレムカレン
   ダ。
2. 【請求項２】 前記第１機構が、 軸９を中心に所定角度だけ枢動でき、弾性素子１２によ
   って初期位置に維持される第１のレバー８と、 毎日の終りにムーブメントの前記回転部１と協働して前
   記レバー８を所定角度だけ枢動させる第１の駆動手段
   （歯車２，爪５，突隆舌部６）と、 軸２２を中心に枢動し、３０個の歯を有する日歯車２０
   と、 前記レバー８に設けられ、毎日の終りに日歯車２０をそ
   の歯１つだけ枢動させる第２の駆動手段（こはぜ１５，
   突出部１８，突出部１９）と、 前記日歯車２０と一体に形成され、前記日インジケータ
   ２３の一部を形成する表示素子とを含むことを特徴とす
   る請求項１記載のモスレムカレンダ。
3. 【請求項３】 前記第２機構が、 前記日歯車２０と一体に形成され、段状の不連続なフラ
   ンク４４を有する第１の蝸牛形カム４３と、 軸４１を中心に枢動自在に取付けられ、弾性素子４２に
   よって加えられる圧力の作用下に一端が前記カム４３と
   当接し、毎月の終りに前記一端が前記段状の不連続なフ
   ランク４４に相対すると所定角度だけ急激に回動する第
   ２のレバー４０と、 軸５０を中心に枢動自在に取付けられ、１２個の歯を有
   する月歯車４９と、 第２のレバー４０の他端に設けられ、毎月の終りに月歯
   車４９を歯１個だけ急激に枢動させる第３の駆動手段
   （こはぜ４７）と、 前記日歯車２０と一体に形成され、段状の不連続なフラ
   ンク６１を有する第２の蝸牛形カム６０と、 第１のレバー８に設けられ、毎月の終りに第１のレバー
   ８の枢動中第２の蝸牛形カム６０の前記フランク６１の
   作用下に前記第２の駆動手段と協働して、日歯車２０を
   連続２ステップだけ進め、日インジケータ２３の表示を
   ２９日から翌月の１日へ進める第４の駆動手段（こはぜ
   ６２）と、 前記月歯車４９と一体に形成され、その周縁に等間隔に
   配分された６個の凹部６６を有し、第１のレバー８の突
   出爪６８に対する支受部として作用し、偶数月の終りに
   前記突出爪６８が前記凹部６６の１つに介入することに
   より第１のレバー８が前記所定角度だけ枢動し、表示素
   子が日付１日を示す表示に向けて進む前に２９日を示す
   表示をなし、奇数月の終りに前記突出爪６８が前記凹部
   ６６に介入せずにその外側に位置することにより第１の
   レバー８が所定角度よりも小さい角度だけ枢動し、表示
   素子が１日の表示に向けて進む前に３０日を表示するよ
   うに構成された第３のカム（月カム６５）とを含むこと
   を特徴とする請求項２記載のモスレムカレンダ。
4. 【請求項４】 前記第３機構が、 ３０年で１回転するように構成され、その周縁に等間隔
   に配分された１１個の切込み９１を有し、各切込みが前
   記３０年修正サイクルの閏年に対応する第４のカム（年
   カム７５）と、 毎年の終りに前記年カム７５を一気にワンステップだけ
   枢動させて１年だけ進める第５の駆動手段（歯車７６，
   ジャンパ７７，フィンガ８２，歯車８３，歯車８４）
   と、 軸８０を中心に枢動自在に取付けられ、弾性素子８７の
   作用下に第４のカム（年カム７５）と圧接するように付
   勢される突爪７８及び前記第４の駆動手段（こはぜ６
   ２）と協働する制御素子８６を有し、閏年の終りに突爪
   ７８が前記切込み９１の１つに進入して制御素子８６
   を、前記第４の駆動手段（こはぜ６２）の作用を無効化
   するように作用させ、普通年の終りに前記突爪７８が前
   記切込み９１の外側で第４のカム（年カム７５）と対向
   し、その結果、制御素子８６が第３のレバー（抑止レバ
   ー７９）の枢動後、前記第４の駆動手段（こはぜ６２）
   が前記第２の蝸牛形カム６０に作用することを可能とし
   た前記第３のレバー（抑止レバー７９）と、 月歯車４９と一体に形成され、その周縁に切込み９６を
   有する第５のカム９５と、 軸９８を中心に枢動自在に取付けられ、２つの端部を有
   し、一方の端部９９が第５のカム９５と当接し、毎年の
   終りに切込み９６に進入し、他端部１００が第３のレバ
   ー（抑止レバー７９）のアーム１０１と対向する位置を
   占め、普通年または閏年の途中に前記一方の端部９９が
   前記切込み９６に進入すると、前記他端部１００が前記
   第３のレバー（抑止レバー７９）の前記アーム１０１の
   作動領域外に位置し、前記一方の端部９９が前記切込み
   ９６から後退すると、他端部１００が第３のレバー（抑
   止レバー７９）を枢動させることによって前記制御素子
   ８６を前記第４の駆動手段（こはぜ６２）が到達できな
   い位置へ移動させるように構成した第４のレバー（中間
   レバー９７）とを含むことを特徴とする請求項３記載の
   モスレムカレンダ。
5. 【請求項５】 前記第１のレバー８と連動する旺日歯車
   ３０と一体の旺日表示素子を含む日インジケータと、 前記第４のカム（年カム７５）と一体の年表示素子（年
   針１１５）を含む普通年及び閏年インジケータをも含む
   ことを特徴とする請求項４記載のモスレムカレンダ。
6. 【請求項６】 前記月インジケータを修正する手段（ハ
   ンマー５４）をも含むことを特徴とする請求項５記載の
   モスレムカレンダ。
7. 【請求項７】 前記日インジケータを修正する手段をも
   特徴とする請求項１から６記載のモスレムカレンダ。
8. 【請求項８】 前記第４のカム（年カム７５）が、 その周縁に配分され、最初の年が１、最後の年が３０で
   ある２つの３０年修正サイクルの閏年に対応する年２，
   ５，７，１０，１３，１８，２１，２４，２６及び２９
   を表わす１０個の切込み１０６、及び第１修正サイクル
   の閏年及び普通年と、第２修正サイクルの普通年及び閏
   年に夫々対応する年１５及び１６に跨がる二重切込み１
   ０７と、 第１及び第２位置間を移動でき、切込み１個の幅と殆ん
   ど等しい幅の端部を有し、第１位置において前記端部が
   前記二重切込み１０７の年１６に対応する部分を消すこ
   とによって前記第１修正サイクルに適したカムを画定
   し、第２位置において前記二重切込み１０７の年１５に
   対応する部分を消して前記第２サイクルに適したカムを
   画定するように構成された揺動フィンガ１０８とを具え
   た自在性のあるカム１０５であることを特徴とする請求
   項４記載のモスレムカレンダ。