JP3494302B2 - Co−Cr−Pt系磁気記録媒体用ターゲット - Google Patents

Co−Cr−Pt系磁気記録媒体用ターゲット

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、面内記録型のハードデ
ィスク媒体製造に利用されるCo-Cr-Pt系磁気記録媒
体用ターゲットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、情報量の急激な増加に伴い、これ
らの情報を高密度に記録し、かつ正確に再生することが
要求されている。特にコンピュータの大容量外部メモリ
ーとして使用されているハードディスクにおいては、高
密度記録特性や記録の信頼性が強く要求され、ハードデ
ィスクの改善が急速に進みつつある。これらの発展は、
用いられる記録体、ヘッド、ドライブなどのトータルシ
ステムの改良により達成されてきた。この記録体には図
1に示すようにNi-Pメッキ2を施したAl基板1等の非
磁性基板状にスパッタリング法により、純Cr膜3、磁
性合金膜である記録媒体4を形成した後、ヘッドとの潤
滑を目的として保護膜であるカーボン膜5を形成する。
前記磁性合金膜としては、Crを7〜20at%を含有するCo
-Cr、Co-Cr-Ni、Co-Cr-Ta等のCo-Cr系合金が
主として用いられている。前記磁性合金膜の形成に用い
られるスパッタリング用ターゲット材の製造方法として
は、従来から真空溶解したCo-Cr系合金を鋳造し、熱
間加工により製造するのが一般的である。
【0003】しかしながら、さらなる記録密度の向上、
信頼性の向上を目的として前記磁性合金膜の高保磁力
化、および耐候性向上が強く求められている。この要求
を満たす手段については、近年種々報告されているが、
Ptを5〜20at%添加したCo-Cr-Pt合金が注目されてい
る(IEEE TRANSACTIONS ON MAGNETICS,Vol.26 No.5 (199
0),P2271-2776)。これはCoへPtを添加するとCoの磁
気異方性が増し、それにともなって磁性膜の保磁力が増
大すること、および磁性合金膜のマトリクスを電気化学
的に貴にすることで耐候性の向上をねらったものであ
る。しかし、Co-Cr系合金へPtを5〜20at%も添加した
場合、合金は機械的に非常に脆くなる。このため、Co-
Cr-Pt系の磁性合金膜の成膜に用いるスパッタリング
用ターゲットは、熱間加工をせずに真空溶解、鋳造まま
で製造されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述のスパッタリング
用ターゲットは、鋳造ままであるため、ターゲット材の
内部に微小な気孔や引け巣などの鋳造欠陥を含んでい
る。現在高速成膜型のスパッタ方式として広く採用され
ているマグネトロンスパッタでは、ターゲット材の裏面
に磁石を配置し、ターゲット表面からの漏洩磁界により
ターゲット表面のプラズマの発生効率を高くしている。
【0005】マグネトロンスパッタでは、ターゲット表
面上に引け巣などの鋳造欠陥が露出すると、欠陥部に磁
界が集中してしまい、スポット的にプラズマの発生が過
大となるような異常放電現象を生じ易くなる。スパッタ
装置の場合、このような異常放電から電気回路を保護す
るため定電圧、定電流制御を行なっているが、異常放電
を生ずるたびにターゲット材に入力する電力が変動する
ため、安定したスパッタ速度が得られないという問題点
がある。さらに上記スパッタリングターゲットは脆いた
めに、スパッタ放電中にクラックが生じ易く、これも上
述の異常放電の原因となっているという問題点もあっ
た。本発明の目的は、異常放電の発生が少なく、しかも
高靭性を有するCo-Cr-Pt系磁気記録媒体用ターゲッ
トを提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、Pt粉末なら
びにCrとCoそれぞれの粉末またはこの両者からなる合
金粉末またはこれらの混合粉末を焼結した組織を有する
ことを特徴とするCo-Cr-Pt系磁気記録媒体用ターゲ
ットである。また、本発明は焼結組織中にPt粒子が分
散していることを特徴とするCo-Cr-Pt系磁気記録媒
体用ターゲットである。ここでこれらの混合粉末とは、
Cr粉とCo-Cr合金粉、CoとCo-Cr合金粉あるいはC
r粉とCo粉とCr-Co合金粉の混合物を意味する。本発
明において、焼結組織としたのはPtがPt粒子の状態で
分散して存在することになるため、PtがCo-Crと合金
化した状態になっているターゲットに比べて脆性が著し
く改善される。また、本発明では焼結組織としたために
鋳造品で発生する鋳造欠陥に起因する異常放電は発生し
なくなる。
【0007】本発明のCo-Cr-Pt系磁気記録媒体用タ
ーゲットは、たとえばPt粉をCo粉およびCr粉あるい
はCo-Cr合金粉と混合し、焼結することにより得るこ
とができる。この場合、スパッタリング用のターゲット
として適する高密度の焼結体を得るためには加圧焼結を
行なうことが好ましい。加圧焼結としては、ホットプレ
スあるいは熱間静水圧プレス(以下HIPと称する)等
が使用できる。Ptは細粒の方が均一分散性がよく、ス
パッタ時の均一膜生成にも有利であるが、工業的な実用
性を考慮して500μm以下であれば十分である。また、本
発明のCo-Cr-Pt系磁気記録媒体用ターゲットとして
は、原子%でCr 7〜20%、Pt 5〜30%および残部がCo
の組成を有することが好ましい。
【0008】
【作用】ここで、Cr含有量を原子%でCr 7〜20%とし
たのは、CrはCo基合金膜の耐食性向上に有用である
が、含有量7%以下ではその効果が小さいこと。Cr含有
量が20%を越えると耐食性の向上は飽和する上、記録の
読み取り感度と密接な相関を有するCoを基とする合金
の飽和磁束密度が低下してしまうためである。Pt含有
量を原子%で5〜30%としたのは、Coを基とする合金の磁
気異方性は、Ptが5〜30原子%の範囲内で極大を示す。
このため、Pt含有量が5%以下でも30%を越えて添加した
場合においてもCo基合金の保磁力向上に対する寄与は
小さくなるためである。
【0009】
【実施例】表1に示す原料粉末を、表1に示す配合組成
になるように秤量・配合し、V型ブレンダーを用いて混
合して混合粉を得た。この時の各々の粉末の粒径は200
μm以下である。得られた混合粉を軟鋼製カプセルに充
填し、温度 400℃、真空度 10マイナス4乗torrで4時間
加熱して脱気処理を行なった後、封止してHIP処理を
行なった。HIP条件は温度 1150℃、圧力 1200kg/c
m2、保持時間 2時間である。HIP処理を行なって得ら
れた焼結体は、旋盤を用いてφ200×4t(mm)の寸法を有
するターゲットに加工した。また、表1の比較例として
示す配合組成の合金を、溶解温度 1600℃で真空溶解し
て鋳造することにより得た後、φ200×4t(mm)のターゲ
ットとした場合を比較例とした。
【0010】
【表1】
【0011】得られたターゲットのスパッタリングにお
ける特性を評価するため、直流スパッタ装置にこれらの
ターゲットを装着し、4×10マイナス4乗torrまで真空引
後、Arガスを導入して5×10マイナス3乗torrとし、そ
の後ターゲット単位面積当り10W/cm2の直流電力を印加
してスパッタリングを行なった。スパッタ評価について
は、連続10時間スパッタした後の単位時間当りの異常放
電回数をカウントし、さらにスパッタ後のターゲット表
面を観察してクラックの有無を調査することで良否判定
を行なった。表2に結果を示す。比較例の真空溶解−鋳
造により作成したターゲットの異常放電回数が46回/hr
と多いのに対し、本発明品は4回/hr以下と非常に少な
い。また、このような異常放電の原因の一つとなるター
ゲットの靭性の低さに起因するクラックについて比較例
では認められたが、本発明のターゲットには認められ
ず、スパッタリングに十分に耐えられる靭性が得られた
ことがわかる。
【0012】
【表2】
【0013】
【発明の効果】本発明によれば、靭性の高いCo-Cr-P
t系磁気記録媒体用ターゲットを提供できるため、スパ
ッタリング中にクラックが発生せず、しかも異常放電の
発生が極めて少ないものとなる。これにより高保磁力の
Co-Cr-Ptの薄膜が安定してできることになり、工業
上極めて有効である。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁気ディスクの断面の説明図である。
【符号の説明】
1 Al基板 2 NiPメッキ 3 純Cr 4 磁気記録体 5 カーボン膜
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI G11B 5/851 G11B 5/851 H01F 10/16 H01F 10/16 (56)参考文献 特開 平4−295625(JP,A) 特開 平2−73510(JP,A) 特開 昭63−187414(JP,A) 特開 平4−134719(JP,A) 特開 平4−134718(JP,A) 特開 平1−256017(JP,A) 特開 平4−276070(JP,A) 特開 昭63−285737(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 14/00 - 14/58 G11B 5/706 G11B 5/851

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 焼結組織中にPt粒子が分散している
    とを特徴とするCo−Cr−Pt系磁気記録媒体用ター
    ゲット。
  2. 【請求項2】 Pt粉末ならびにCrとCoそれぞれの
    粉末またはこの両者からなる合金粉末またはこれらの混
    合粉末を焼結した組織を有することを特徴とする請求項
    1に記載のCo−Cr−Pt系磁気記録媒体用ターゲッ
    ト。
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