JP3492127B2 - 鋳鉄管の内面防食塗装方法 - Google Patents

鋳鉄管の内面防食塗装方法

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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】この発明は、鋳鉄管の内面防食塗
装方法に関する。 【0002】 【従来の技術】一般に鋳鉄管内面には水質衛生面に優
れ、かつ防食性、外観の良好なライニングが施される。 【0003】この鋳鉄管の内面防食ライニングとして
は、セメントモルタルライニング、樹脂粉体塗装、液状
樹脂塗装などがある。これらの内、衛生面、防食性能に
最も優れるのが樹脂粉体塗装であるが、これによる防食
塗装を行うには下地が平滑面とされている必要がある。 【0004】ところが、鋳鉄管は大径管となるほど内面
に鋳物独特のシワ、凹凸が発生し、これを研磨工程で完
全に除去するには多大な労力と時間とを必要とし、実用
はほとんど不可能となる問題があった。 【0005】一方、上記シワ、凹凸はセメントライニン
グ層の場合は容易に被覆でき、結果的に管内面を平滑な
表面とできる。従って、セメントライニング層上に上述
の樹脂粉体塗料によるライニング層を設ければ互いの利
点と欠点とが補われ、防食効果に優れる複合ライニング
層が設けられると考えられる。 【0006】しかし、樹脂粉体塗料による塗装には、下
地を180 〜220 °C の高温に加熱する必要がある。従っ
て、この予備加熱時にセメントライニング層が著しく熱
劣化し、クラックや剥離などを生じてせっかくのセメン
トライニングを施した意味がなくなってしまう問題があ
った。 【0007】そこで、本願出願人は、セメントライニン
グの熱影響を避けてその表面に粉体樹脂塗装を施す手段
として、セメントライニング表面に樹脂などの樹脂粉体
塗料を溶射ガンにより吹きつけて塗装する方法を提案し
た。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】上記手段によりセメン
トライニングと樹脂粉体塗装との欠点を互いに補い両者
の利点を生かした相乗効果が得られるに至ったのである
が、溶融した樹脂粉体塗料が、セメントライニング表面
に付着した瞬間、常温まで急冷されるので、樹脂塗料の
種類によっては硬化不良を起こす場合があった。 【0009】従って、上記方法により内面防食塗装を行
う場合、樹脂の種類、配合について留意しなければなら
ない問題が生じた。この発明は上記問題点を解消するこ
とを目的としてなされたものであって、内面のしわや凹
凸をそのままにして樹脂の種類を問わず溶射ガンによる
粉体塗装を可能とすることを目的としてなされたもので
ある。 【0010】 【課題を解決するための手段】すなわち、この発明の
鉄管の内面防食塗装方法は、遠心力鋳造時、内面にし
わ、凹凸の発生が著しくなる大径の鋳鉄管の内面にセメ
ントライニング層を施すことによって前記しわ、凹凸を
覆い隠し、次いで内面にセメントライニングを施した鋳
鉄管のセメントライニング層の表面のみを表面温度が80
〜90°Cとなるようにバーナで加熱し、その直後層表面
に樹脂粉体塗料を溶射ガンの炎中で溶融させつつ噴射塗
装することを特徴とするものである。 【0011】 【作用】この発明において、セメントライニング層の厚
さは、鋳鉄管表面に特有にあらわれるシワ、凹凸を隠し
表面が均一になる程度で良く、これらを隠蔽できる厚さ
であれば薄くても十分である。 【0012】従って、このセメントライニングによって
鋳鉄管表面は、研磨処理することなく平滑とされ、樹脂
粉体塗料に適した下地面となる。一方、樹脂粉体塗料を
塗布するには下地を加熱する必要があるが、樹脂粉体塗
料を溶射ガンの炎中で溶融させつつ噴射塗装するため、
下地加熱温度は通常の樹脂粉体塗装に比べはるかに低い
80〜90°C程度で十分である。 【0013】この温度範囲とする理由は、80°Cより低
いと、溶融樹脂の急冷による不利が生じ始め、90°Cよ
り高くすると樹脂硬化反応には好都合であるが、セメン
トライニングへの熱劣化の弊害が生じる。 【0014】従って、粉体樹脂の硬化反応に支障がな
く、しかもセメントライニングの熱劣化を生じない範囲
として上記範囲が最も好適であることによる。また、こ
の加熱はセメトライニングの表面のみで良く、層厚全体
にわたる温度とする必要はない。 【0015】また、加熱をバーナによるものとするの
は、ライニング層表面を局部的に加熱するためであっ
て、温水加熱やオーブンによるキュア加熱などのライニ
ング層全体又は管全体の総合的加熱を除く趣旨である。 【0016】次に、樹脂粉体塗料を噴射する溶射ガンと
は、図3に示すように粉体塗料7を噴射する中心孔5A
と、これを同心円状に囲む空気噴出環5B、燃焼ガス噴
出環5Cとからなる噴射ノズルの一種で、粉体塗料7を
空気5Eと燃焼ガス炎5Dの噴射雰囲気の中心から噴射
し、被塗物に付着する時点で粉体塗料を必要な溶融温度
にまで加熱するようにした塗装装置をいう。 【0017】従って、樹脂粉体塗料は、塗装装置による
噴射の時点で加熱溶融され、これが表面加熱された被塗
物表面に付着するので、急冷されることなく被塗物表面
に強靱な塗膜を形成する。 【0018】なお、上記樹脂粉体塗料には、エポキシ樹
脂粉体塗料のような熱硬化型樹脂粉体塗料の他、例えば
ポリエチレン樹脂粉末塗料、フッソ樹脂粉末塗料などの
熱可塑性樹脂粉体塗料なども使用可能である。 【0019】 【実施例】次にこの発明の実施例を説明する。 [実施例1]内径600mm の鋳鉄管1の内面を下地処理し
た後、該管1を回転させつつ内面にセメントモルタルを
供給し、遠心力によって厚さ約10mmの均一な層として硬
化させ、その後硬化したセメントモルタル層2表面を研
磨処理してレータンスを除去した。 【0020】次いで、図1に示すように張り出したアー
ム3Aの先端にプロパンバーナー4と溶射ガン5を配置
した移動台車3を用い、ローラ6、6により支持されて
回転する内面セメントライニング鋳鉄管1にアーム3A
を挿入することにより管内面を加熱すると共に粒径40μ
と150 μのエポキシ樹脂粉体塗料を使用して塗装を行っ
た。 【0021】上記溶射ガン5の溶射条件及び塗装処理条
件は表1、表2の通りであった。 【0022】 【表1】溶射ガンの溶射条件 プロパン圧力 2.0kgf/cm2 酸 素 圧力 3.0kgf/cm2 溶射ガンの表面距離 15 cm 【0023】 【表2】塗装処理条件 管回転数 7.4rpm 台車速度 7.1cm/分 バーナー種類 プロパンバーナー バーナーの表面距離 10cm 塗料吐出量 110g/分 目標塗膜厚 500μ 上記塗装時におけるセメントライニング層表面温度を測
定したところ最低80°C、最高90°C 平均で85°C であ
った。 【0024】この塗装の結果、セメントモルタル層2表
面に図2に示すようにエポキシ樹脂塗料による塗膜7が
形成された。 [実施例2]エポキシ樹脂粉体塗料に代えて熱可塑性の
ポリエチレン樹脂粉体塗料を用いた他は実施例1と同様
に鋳鉄管1内面の塗装を行った。 【0025】この塗装の結果、セメントモルタル層2表
面にポリエチレン樹脂塗料による塗膜7が形成された。 [実施例3]エポキシ樹脂粉体塗料に代えて熱可塑性の
ポリエステル樹脂粉体塗料を用いた他は実施例1と同様
に鋳鉄管1内面の塗装を行った。 【0026】この塗装の結果、セメントモルタル層2表
面にポリエステル樹脂塗料による塗膜7が形成された。 [比較例1]実施例1と同じ内径1,000mm のセメントラ
イニング鋳鉄管1の内面に、プロパンバーナーによる加
熱を行うことなく直接樹脂を溶射ガン5で噴射すること
によって内面ライニングを終了した。 [比較例2]実施例1 と同じ内径1,000mm のセメントラ
イニング鋳鉄管1の内面に、プロパンバーナーにより80
°C 以下の表面温度となるように加熱した他は実施例1
と同様溶射ガン5で噴射することによって内面ライニン
グを終了した。 [比較例3]実施例1 と同じ内径1,000mm のセメントラ
イニング鋳鉄管1の内面に、プロパンバーナーにより10
0 °C 以上の表面温度となるように加熱した他は実施例
1と同様溶射ガン5で噴射することによって内面ライニ
ングを終了した。 [比較例4]実施例1と同じ内径1,000mm の鋳鉄管の内
面を下地処理した後、該管を回転させつつ内面にセメン
トモルタルを供給し遠心力によって厚さ10mmの均一な層
として硬化させ、その後硬化したセメントモルタル層表
面を研磨処理してレータンスを除去した。 【0027】その後、管全体を220 °C に加熱し、ポリ
エチレン樹脂よりなる粉体塗料を散布供給し遠心力によ
って平均層とし、鋳鉄管の内面ライニングを終了した。
実施例1〜3及び比較例1〜4について、ライニング層
の密着力試験、外観比較をしたところ表3の結果となっ
た。 【0028】なお、密着力はライニング層表面にエルコ
メーター社製引張端子をエポキシ径接着剤で接着し、試
験機にて引張ることにより測定した。 【0029】 【表3】 密着強度 外観比較 実施例1 22.5Kgf/cm2以上 良 好 実施例2 同 上 同 上 実施例3 同 上 同 上 比較例1 11.8Kgf/cm2 表面艶無し 比較例2 15.0 kgf/cm2 表面艶無し 比較例3 18.2Kgf/cm2 良 好 比較例4 0.5 kgf/cm2 良 好 表3における密着強度試験では実施例1〜3ではセメン
トライニング層が破壊し、また実施例1で粒径40μと15
0 μのエポキシ樹脂粉体塗料ではいずれも密着強度の点
では遜色なかった。ただし、外観の点では粒径40μのほ
うが滑らかな外観となった。 【0030】比較例1の密着強度試験では塗膜が破壊し
た。表3より明らかなように、密着強度はセメントライ
ニング層表面に常温(比較例1)〜低温加熱(比較例
2)下で粉体樹脂塗料を噴射した場合、または高温(比
較例3、4)下で粉体樹脂塗料を噴射した場合より実施
例1〜3の密着強度はかなり優れることが判明した。 【0031】なお、比較例4の密着強度が非常に悪いの
は、セメントモルタル層が予備加熱により熱劣化したた
めと考えられる。 【0032】 【発明の効果】以上説明したように、この発明は鋳鉄管
内面にできるシワや凹凸を表面研磨することなくセメン
トライニングで被覆し、その上にセメントライニング層
を設けこのセメントライニング層が熱影響を受けない温
度に加熱して樹脂粉体塗料を溶射ガンの炎中で溶融させ
つつ噴射塗装するため、樹脂粉体塗料の硬化反応がモル
タルライニング表面上でも十分に行われ、もって、セメ
ントライニング層の下地処理と樹脂粉体塗装による遮蔽
効果によって耐水性の良い信頼度の高い防食層を設ける
ことができるのである。 【0033】なお、粉体塗料としてエポキシ樹脂粉体塗
料はセメントライニング層との接着性が高いので、より
信頼性に優れた防食層とすることができる。
【図面の簡単な説明】 【図1】実施例の一部破断側面図である。 【図2】実施例の要部拡大断面図である。 【図3】溶射ガンの説明断面図である。 【符号の説明】 1…鋳鉄管 2…セメントモルタル層 3…移動台車 3A…アーム 4…プロパンバーナー 5…溶射ガン 6…ローラ 7…樹脂塗膜
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭51−11832(JP,A) 特開 昭59−120275(JP,A) 特開 昭59−120274(JP,A) 特開 平4−363163(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16L 57/00 - 58/18 B05D 1/10

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】遠心力鋳造時、内面にしわ、凹凸の発生が
    著しくなる大径の鋳鉄管の内面にセメントライニングを
    施すことによって前記しわ、凹凸を覆い隠し、次いで
    面にセメントライニングを施した鋳鉄管のセメントライ
    ニング層の表面のみを表面温度が80〜90°Cとなるよう
    バーナで加熱し、その直後層表面に樹脂粉体塗料を溶
    射ガンの炎中で溶融させつつ噴射塗装することを特徴と
    する鋳鉄管の内面防食塗装方法。
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