JP3491312B2 - 薬剤徐放性多層体 - Google Patents

薬剤徐放性多層体

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JP3491312B2 JP00479394A JP479394A JP3491312B2 JP 3491312 B2 JP3491312 B2 JP 3491312B2 JP 00479394 A JP00479394 A JP 00479394A JP 479394 A JP479394 A JP 479394A JP 3491312 B2 JP3491312 B2 JP 3491312B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は薬剤徐放性多層体に関す
る。さらに詳しくは、薬剤を長期間放出することのでき
る薬剤徐放性多層体に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より薬剤徐放体として、ろ紙や粘着
剤層に薬剤を含有保持せしめた徐放体が知られている
が、これらの徐放体は初期の徐放量が大きく、特に揮発
性の高い薬剤を徐放させようとする場合、短期間のうち
に薬剤が放出されてしまい、薬剤の効果を奏するのに適
した量の徐放を長期に渡って持続させることができない
と言う問題点があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、薬剤の
効果を奏するのに適した量の徐放を長期に渡って持続す
ることのできる薬剤徐放体を見出すべく鋭意検討を続け
てきた。その結果、薬剤を粘着剤に混入させて薬剤を含
有した粘着剤層を形成させ、その少なくとも片方の面に
多孔質体を積層して多層体と成し、さらにできた多層体
の最外層として薬剤を透過させないバリヤー層を表裏両
面に積層することにより、粘着剤に含まれた薬剤が多孔
質層の側面のみから放出され、非常に長期間にわたって
薬剤の放出が持続することを見出し、本発明に至った。
【0004】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、薬剤
を含有した少なくとも一つの粘着剤層と、該粘着剤層の
少なくとも一方の面に接して設けられた多孔質層を有し
た多層体であり、かつ該薬剤を透過させないバリヤー層
が該多層体の最外層として設けられており、該薬剤が多
孔質層の側面より放出されることを特徴とする薬剤徐放
性多層体を提供するものである。
【0005】本発明で用いられる薬剤は、含有する化合
物や活性成分の蒸気圧相当の徐放量があれば使用場面に
より薬効や活性を発揮できるものであればよく、とくに
限定されないが、防虫剤、防黴剤、忌避剤、殺菌剤、芳
香剤、防錆剤、植物から得られた精油等が例示され、こ
れらの薬剤のなかから任意に選択して、1種単独でまた
は2種以上を混合して用いることができる。次に本発明
において用いられる薬剤の具体例を例示する。防虫剤と
しては、エンペントリン等の揮発性の高い薬剤が挙げら
れる。防黴剤としては、デヒドロ酢酸、4−イソプロピ
ル−m−クレゾール、イソチオシアン酸アリル等が挙げ
られる。殺菌剤としては、クレゾール、レゾルシン、ヒ
ノキチオール等が挙げられる。植物の精油としては、ヒ
ノキ精油、ヒバ精油、月桃精油、カラシ抽出油、ワサビ
抽出油等が挙げられる。
【0006】本発明で用いられる粘着剤層を形成する粘
着剤としては、薬剤との混合が可能なものであれば特に
限定されることなく任意に選択して用いることができる
が、具体的には、例えば、アクリル樹脂系やシリコーン
樹脂系の粘着剤のほか、天然ゴム、ポリウレタン、ポリ
ブタジエン等のゴム系粘着剤、ポリビニルピロリドン、
ポリ酢酸ビニル等のビニル系粘着剤、エチルセルロー
ス、メチルセルロース等のセルロース系粘着剤が用いら
れる。
【0007】薬剤を含有した粘着剤層を形成する方法と
しては、例えば薬剤、粘着剤の両方に対し溶解性を有す
る溶剤に薬剤と粘着剤の両者を溶解させてバリヤー層ま
たは多孔質層に塗布した後に溶剤を除去する方法等が用
いられる。粘着剤層の厚みとしては、必要な薬剤量など
により適宜調整することができるが、通常、5〜200
μmが適当である。
【0008】発明の目的に適した多孔質層として、熱
可塑性樹脂100重量部と充填剤50〜400重量部、
あるいは必要により分散剤を含む樹脂組成物を押出し成
形した後に一軸または二軸方向に延伸することによって
得られた公知の多孔質フィルムまたはシートを挙げるこ
とができる。熱可塑性樹脂としては例えば、低密度ポリ
エチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ
ブテン等のα−オレフィンホモポリマー、線状低密度ポ
リエチレンに代表される炭素数3〜18のα−オレフィ
ン類から選ばれた少なくとも一種のα−オレフィンとエ
チレンとの共重合体、プロピレンとエチレンおよび/ま
たはブテン−1との共重合体、エチレンと酢酸ビニルお
よび/またはアクリル酸エステル・メタアクリル酸エス
テル類などエチレン性不飽和結合を有する有機カルボン
酸誘導体との共重合体などのポリオレフィン系樹脂が挙
げられる。これらは単独あるいは2種類以上用いること
ができる。
【0009】本発明のバリヤー層は、薬剤に対してバリ
ヤー性を有するものであればよく、特に限定されない
が、通常ポリエステル、ナイロン、ポリカーボネート、
ポリメタクリル酸メチル等の樹脂フィルムまたはシート
や、アルミニウム箔等の金属箔、アルミニウム等の金属
を蒸着した紙、アルミニウム等の金属を蒸着した樹脂フ
ィルム等が用いられる。
【0010】多孔質層の側面から薬剤を放出させるた
め、一般に、多孔質層があまりに薄すぎると薬剤の放出
が遅すぎて必要な薬効が得られず、また、多孔質層があ
まりに厚すぎると薬剤を長期間放出することができなく
なるため、通常30μm〜10mm程度の厚みである。
さらに、本発明の薬剤徐放性多層体のディメンジョンに
関しては、薬剤を放出する層の厚みすなわち多層体の、
バリヤー層を除いた厚みと、表面積の関係が、一定の条
件を満足するとき、特に薬剤の望ましい徐放が長期にわ
たって持続される。例えば、多層体が直方体状の場合、
第1図に示すように、表裏両面の表面積をSb(c
2 )、表面または裏面の周囲長さをL(cm)、バリ
ヤー層を除いた多層体の厚み及び側面における露出面積
をそれぞれD(cm)及びSa(cm 2 )とするとき、
D/L≦0.1および、Sa/Sb≦1であるように薬
剤徐放性多層体のディメンジョンを定めるのが望まし
い。
【0011】本発明における薬剤徐放性多層体の例を図
1の(A)、(B)と(C)に示す。(B)において
は、多孔質層2とバリヤー層3が薬剤を含有した粘着剤
層1により接着されている。(C)においては、2つの
多孔質層2は薬剤を含有した粘着剤層1により接着され
ており、また、それぞれの多孔質層2とバリヤー層3も
薬剤を含有した粘着剤層1によって接着されている。薬
剤徐放性多層体(C)は、合計3つの薬剤含有粘着剤層
1を有しており、それぞれの層に異なる薬剤を含有させ
ることも可能である。
【0012】
【発明の効果】薬剤徐放性多層体からの薬剤の徐放が長
期間にわたって持続する。
【0013】
【実施例】以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、
本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではな
い。 実施例1 イソチオシアン酸アリル(ミドリ十字(株)製、商品
名:ワサオーロ)とアクリル樹脂粘着剤をクロロホルム
に溶かし、アルミニウムを蒸着した紙のアルミニウム側
に均一に塗布し、クロロホルムを蒸発させて厚さ20μ
mの粘着剤層を得た。この粘着剤層中のイソチオシアン
酸アリルの含有量は3300mg/m2 であった。別
に、線状低密度ポリエチレン(住友化学工業(株)製、
商品名:スミカセンL FA201−0)100重量部
と炭酸カルシウム(白石カルシウム製、商品名:ホワイ
トンSSB(赤))120重量部を混練、押出しにより
シート成形した後、一軸方向に4倍に延伸することによ
り厚さ700μmの多孔質層を得た。多孔質層の両面に
上記の粘着剤を塗布したアルミニウム蒸着の紙を張り付
け、薬剤徐放性多層体を得た。 (Sa=1.4cm2 ,Sb=50cm2,Sa/Sb=
0.028,L=20cm,D=0.07cm,D/L
=0.0035) この多層体を5cm×5cmの大きさに裁断し、23℃
の室内に吊り下げてイソチオシアン酸アリルを放出さ
せ、経時毎に多層体をアセトン環流中で抽出して、残存
するイソイオシアン酸アリルの量をガスクロマトグラフ
ィーにて測定した。図2に示すとおり、多層体のなかに
250時間経過後も約45%のイソチオシアン酸アリ
ルが残存しており、多層体中からのイソチオシアン酸ア
リルの放出が長時間にわたって続いていることがわかっ
た。
【0014】実施例2 多孔質層として、実施例1の多孔質層と同様にして作製
した厚さ35μmのフィルムを用いたこと以外は実施例
と同様にして薬剤徐放性多層体を得た。 (Sa=0.07cm2 ,Sb=50cm2,Sa/Sb
=0.0014,L=20cm,D=0.0035c
m,D/L=1.75×10-4) この多層体からのイソチオシアン酸アリルの放出は図2
に示すとおり、長時間にわたって続いており、250時
間経過後も約68%のイソチオシアン酸アリルが残存し
ていた。
【0015】比較例1 多孔質層として5cm×5cm角、厚さ0.07cmの
濾紙(東洋ろ紙(株)製、No.526 ペーパークロマト用
ろ紙) に180mg のイソチオシアン酸アリル(ミドリ十字
(株)製、商品名:ワサオーロ)を短時間の浸漬により
含浸せしめ、得られた薬剤徐放体を実施例1と同一の条
件下で揮散したイソチオシアン酸アリルの量を測定した
ところ、図3に示す様に、15時間でほぼ薬剤が消失し
てしまった。
【0016】比較例2 多孔質層として厚さ350μmの厚紙を使用したこと以
外は実施例1と同様にして薬剤徐放性多層体を得た。 (Sa=0.7cm 2 ,Sb=50cm 2 ,Sa/Sb=
0.014,L=20cm,D=0.035cm,D/
L=1.75×10 -3 この多層体からのイソチオシアン酸アリルの放出は図2
に示すとおりであり、250時間経過後のイソチオシア
ン酸アリル残存率は約8%であった。
【0017】比較例3 多孔質層として厚さ1mmのパルプシートを用いたこと
以外は実施例1と同様にして薬剤徐放性多層体を得た。 (Sa=2cm 2 ,Sb=50cm 2 ,Sa/Sb=0.
04,L=20cm,D=0.1cm,D/L=5×1
-3 この多層体からのイソチオシアン酸アリルの放出は図2
に示すとおりあり、約115時間経過後のイソチオシア
ン酸アリル残存率は0%であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)は薬剤徐放性多層体の斜視図を表す。 (B)は薬剤徐放性多層体の断面図を表す。 (C)は薬剤徐放性多層体の断面図を表し、該薬剤徐放
性多層体においては、2つの多孔質層が薬剤を含有する
粘着剤層により接着されており、また、二つの多孔質層
とバリヤー層が薬剤を含有する粘着剤層によって接着さ
れ、合計3つの薬剤含有粘着剤層が有り、それぞれの薬
剤含有粘着剤層に異なる薬剤を含有させることも可能で
ある。
【図2】実施例1〜2および比較例2〜3の薬剤徐放性
多層体からのイソチオシアン酸アリルの徐放経過を表す
グラフを示す。
【図3】比較例1の薬剤徐放体からのイソチオシアン酸
アリルの徐放経過を表すグラフを示す。
【符号の説明】
1は薬剤を含有する粘着剤層を示し、2は多孔質層を示
し、3はバリヤー層を示す。Sbは表裏両面の面積の和
を表し、Dはバリヤー層を除く薬剤徐放性多層体の厚さ
を表し、Sa( =S1 +S2)はバリヤー層を除く薬剤徐
放性多層体の側面の面積を表す。L( =L1 +L2)は薬
剤徐放性多層体の表面または裏面の周囲の長さを表す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI B32B 27/18 B32B 27/18 C09J 7/02 C09J 7/02 (56)参考文献 特開 昭62−158672(JP,A) 特開 昭61−227031(JP,A) 特開 昭59−59734(JP,A) 特開 昭58−11145(JP,A) 特開 昭58−11134(JP,A) 特開 平3−178902(JP,A) 特開 平1−185337(JP,A) 特開 平1−144432(JP,A) 実開 昭61−55001(JP,U) 実開 平5−41773(JP,U) 国際公開93/009196(WO,A1) 国際公開90/000472(WO,A1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B32B 1/00 - 35/00 A01N 1/00 - 65/02 C09J 7/00 - 7/04

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】薬剤を含有した少なくとも一つの粘着剤層
    と、該粘着剤層の少なくとも一方の面に接して設けられ
    た多孔質層を有した多層体であり、該多孔質層が、熱可
    塑性樹脂100重量部と充填剤50〜400重量部を含
    む樹脂組成物を一軸または二軸に1.1〜10倍に延伸
    して得られる延伸多孔質体からなる層であり、かつ該薬
    剤を透過させないバリヤー層が該多層体の最外層として
    設けられており、該薬剤が多孔質層の側面より放出され
    ることを特徴とする薬剤徐放性多層体。
  2. 【請求項2】表裏両面の面積を和をSb(cm 2 )、表
    面または裏面の周囲長さをL(cm)、バリヤー層を除
    いた多層体の厚み及び側面における露出面積をそれぞれ
    D(cm)及びSa(cm 2 )とするとき、D/L≦
    0.1であり、Sa/Sb≦1であることを特徴とする
    請求項1に記載の薬剤徐放性多層体。
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