JP3483768B2 - マレイミド配合ジエン系ゴム架橋組成物を用いた粘着剤もしくは粘着テープまたは粘着シート - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、ジエン系ゴムのマ
レイミド架橋組成物を用いた粘着剤、粘着テープおよび
シートに係るものであり、特に、反応速度が早く、か
つ、硫黄を含有しない架橋系を用いたジエン系ゴムのマ
レイミド架橋組成物を用いた粘着剤、粘着テープ及び粘
着シートに係るものである。

【０００２】

【従来の技術】ジエン系ゴムの架橋剤としてＮ，Ｎ’−
ｍ−フェニレンジマレイミドを用いる場合、通常、架橋
促進剤としてジベンゾチアジルジスルフィドが併用され
ることが多い。ジベンゾチアジルジスルフィドを架橋促
進剤として添加することにより、マレイミドによるジエ
ン系ゴムの反応速度架橋は、無添加の場合よりも、若干
速くはなるが、期待したほどではない。また、この架橋
促進剤（ジベンゾチアジルジスルフィド）は、分子内に
硫黄を含有するため、これを配合した組成物は、焼却
時、亜硫酸ガス（二酸化硫黄）を発生し、公害上でも問
題があった。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
従来技術の有していた問題点を改良するもので、ジエン
系ゴムのマレイミド架橋において、硫黄を含有しない架
橋促進剤を用い、かつ、高い反応速度で架橋反応を起こ
させ、それによって、焼却時に亜硫酸ガスを発生するこ
とがないマレイミド配合ジエン系ゴム架橋組成物を用い
た粘着剤もしくは粘着テープまたは粘着シートを提供す
ることにある。

【０００４】

【課題を解決するための手段】上記の課題は、ジエン系
ゴムのマレイミド架橋において、架橋促進剤としてサリ
チル酸を架橋反応系に配合することにより解決できる。

【０００５】本発明者は、架橋剤Ｎ，Ｎ’−ｍ−フェニ
レンジマレイミドと架橋促進剤サリチル酸との組成比の
異なる混合物について、ＤＳＣ（示差走査熱量測定）に
よって融点を測定した。その結果、表１に示すように、
マレイミド／サリチル酸混合物の融点は、組成比が４／
６〜７／３の場合、１４２℃であり、マレイミド単独の
場合よりも６０℃も低くなることが分かった。

【０００６】

【表１】

【０００７】また、この組成範囲では、組成物が１つの
融点を示したのに対して、マレイミド／サリチル酸混合
物の組成比が１／９〜３／７、８／２〜９／１の範囲で
は、組成物は２つの融点を示した。このことは、組成比
が４／６〜７／３の範囲では、マレイミド／サリチル酸
混合物は共融混合物を形成しているのに対して、他の組
成比では、マレイミド／サリチル酸混合物は共融しきら
ない状態にあると考えられる。このように共融しきらな
い状態にあるマレイミド／サリチル酸混合物において
は、マレイミドとサリチル酸との混合が不十分となって
いるので、サリチル酸の架橋促進剤としての効果が十分
には発揮されない。したがって、架橋促進剤としてのマ
レイミド／サリチル酸混合物の組成比は４／６〜７／３
の範囲内にあることが好ましい。

【０００８】また、実際に、天然ゴムを組成比４／６〜
７／３のマレイミド／サリチル酸混合物で架橋した場
合、架橋に要する時間は、マレイミド単独での架橋時間
の半分となり、反応速度の向上が認められた。

【０００９】さらに、このマレイミド／サリチル酸混合
物を用いてジエン系ゴムを架橋した組成物を粘着剤に適
用したところ、耐溶剤性に優れた架橋型粘着剤が得られ
た。

【００１０】この架橋系は、分子内に硫黄を含有しない
ため、この粘着剤を塗工した粘着テープを燃焼しても、
環境負荷の高い亜硫酸ガスを大気中に放出することがな
い。

【００１１】

【発明の実施の形態】以下に、発明の実施の形態を挙
げ、本発明の内容について、さらに具体的に説明する。

【００１２】（実施の形態１）天然ゴム１００重量部、
Ｎ，Ｎ’−ｍ−フェニレンジマレイミド３重量部、サリ
チル酸０．５〜３重量部（変量）からなる組成物をミキ
シングロールを用いて混練し、混練物（試料番号１〜
４）を作製した。

【００１３】（比較例１）天然ゴム１００重量部、Ｎ，
Ｎ’−ｍ−フェニレンジマレイミド３重量部からなる組
成物をミキシングロールを用いて混練し、混練物（試料
番号５）を作製した。

【００１４】得られた混練物（試料番号１〜５）につい
て、下記の方法によって物性（ムーニースコーチ）を測
定した。その結果を表２に示す。

【００１５】（ムーニースコーチ測定方法）ＪＩＳ−Ｋ
−６３００未架硫ゴム物理試験法 ７．ムーニースコー
チ試験に準じて試験温度１００℃にて測定する。

【００１６】この試験法において、架橋速度の評価に用
いたｔ₅、ｔ₃₅、Δｔについて説明する。

【００１７】まず、ムーニー粘度と時間との関係を表す
ムーニー粘度−時間曲線を作る。

【００１８】この曲線におけるムーニー粘度の最低値を
Ｖｍとする。試験を開始してからムーニー粘度の読みが
Ｖｍより 5M（ M はムーニー粘度単位を表す）上昇する
までに経過した時間をｔ₅（単位は分）とし、これをム
ーニースコーチ時間という。同様に、ムーニー粘度の読
みがＶｍより 35M 上昇するまでに経過した時間をｔ₃₅
（単位は分）とする。そして、次の式で定義されるΔｔ
（単位は分）を架橋指数という。

【００１９】Δｔ＝（ｔ₃₅−ｔ₅） このΔｔは架橋速度の度合いを表す。ｔ₃₅、ｔ₅、Δｔ
が短いほど架橋速度は大きいことになる。

【００２０】

【表２】

【００２１】表２に示した結果から、サリチル酸を添加
することで、反応時間(ｔ₃₅、ｔ₅、Δｔ)が短くなり、
架橋反応が速くなっていることが確認できた。

【００２２】（実施の形態２）天然ゴム１００重量部、
粘着付与樹脂１００重量部、プロセスオイル５０重量
部、炭酸カルシウム２００重量部、Ｎ，Ｎ’−ｍ−フェ
ニレンジマレイミド１重量部、サリチル酸０．３〜０．
７重量部（変量）、亜鉛華５重量部からなる組成物を密
閉型ニーダーを用いて２０分間混練し、粘着剤（試料番
号６〜８）を作製した。この工程において、混練に伴う
発熱によって、架橋反応が起こっている。次に、片面に
剥離剤層を設けた基材の他方の面に上記粘着剤を塗工
し、粘着テープを作製した。

【００２３】（比較例２）天然ゴム１００重量部、粘着
付与樹脂１００重量部、プロセスオイル５０重量部、炭
酸カルシウム２００重量部、Ｎ，Ｎ’−ｍ−フェニレン
ジマレイミド１重量部、亜鉛華５重量部からなる組成物
を密閉型ニーダーを用いて２０分間混練し、粘着剤（試
料番号９）を作製した。次に、片面に剥離剤層を設けた
基材の他方の面に上記粘着剤を塗工し、粘着テープを作
製した。

【００２４】得られた粘着テープ（実施の形態２と比較
例２）について、２４時間トルエン中に浸漬することに
より、粘着テープの耐溶剤性を調べた。その結果を表３
に示す。

【００２５】

【表３】

【００２６】表３の結果から、サリチル酸無添加の場合
（比較例２）には、耐溶剤性が悪く、トルエンに溶解し
てしまったが、サリチル酸添加の場合（実施の形態２）
には、耐溶剤性が良好で、トルエンには溶解しなかっ
た。

【００２７】上記の実施の形態においては、ジエン系ゴ
ムの一例として、天然ゴムを挙げたが、本架橋系は、合
成 cis-1,4-イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレ
ン−ブタジエンゴム、アクリルニトリル−ブタジエンゴ
ム等のジエン系ゴムにも適用できることは言うまでもな
い。

【００２８】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の実施によ
り、ジエン系ゴムを効率良くマレイミド架橋し、これに
よって、焼却時に亜硫酸ガスを発生することがない粘着
剤もしくは粘着テープまたは粘着シートを製造し、提供
することが可能なる。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) C08L 9/00 - 9/10 C09J 109/00 - 109/10

Claims (4)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】Ｎ，Ｎ´−ｍ−フェニレンジマレイミドお
   よびサリチル酸の添加によって架橋したジエン系ゴムを
   含有することを特徴とする粘着剤。
2. 【請求項２】上記ジエン系ゴムが天然ゴム、合成ｃｉｓ
   −１，４−ポリイソプレン、ブタジエンゴム、スチレン
   −ブタジエンゴム、アクリルニトリル−ブタジエンゴム
   の少なくとも１種類を含有することを特徴とする請求項
   １記載の粘着剤。
3. 【請求項３】Ｎ，Ｎ´−ｍ−フェニレンジマレイミドお
   よびサリチル酸の添加によって架橋したジエン系ゴムを
   含有する粘着剤層を有することを特徴とする粘着テープ
   または粘着シート。
4. 【請求項４】上記ジエン系ゴムが、天然ゴム、合成ｃｉ
   ｓ−１，４−ポリイソプレン、ブタジエンゴム、スチレ
   ン−ブタジエンゴム、アクリルニトリル−ブタジエンゴ
   ムの少なくとも１種類を含有することを特徴とする請求
   項３記載の粘着テープまたは粘着シート。