JP3472794B2 - 生試料の迅速乾燥方法及び乾燥体の保存方法 - Google Patents

生試料の迅速乾燥方法及び乾燥体の保存方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、植物が持原色を
生かし、色鮮やかできれいな植物標本を、粒状のシリカ
ゲルと、電子レンジのマイクロ波を利府して、短時間に
作る方法と、作りたての植物標本が持植物本来の美しい
色を、退色しづらい植物標本として長期間保存できるよ
うに、安価かっ容易に作れる植物等の迅速乾燥方法、保
存方法に関する。また、乾燥した植物をお茶等に利用す
ることもできる植物等の迅速乾燥方法に関する。
【0002】
【従来の技術】 植物標本の製造方法としては、押し花
の製造方法として、重石処理法、間接的花ゲル乾環法、
直接的花ゲル乾燥法、セラミック利用法、遠赤外線利用
浅等があるが、基本的には上下もしくは、上下一方何個
に吸水部材を置き、植物を乾壊させるというものであ
る。また、最近では電子レンジの誘電加熱利用方法があ
るこのうち代表的な間接的花ゲル乾燥法を用いた押し花
の製造方法について説明する。
【0003】間接的花ゲル乾燥法による押し花の製造方
法。 押し花用乾集シートの上に、押し花用スポンジを置
き、更に、押し花用レーヨン紙を置く。 押し花にしやすいように下処理を施した生花を重な
らないように、の上に並べる。 の上に押し荘用レーヨン紙、押し花用スポンジ、
押し花用乾燥シートの順に重ねる。 〜でセットしたものを押し花用ビニールシート
に入れ、押し花用押し坂2枚で挟み、マジックテープで
圧力をかけて留める。 ビニールの中の空気を抜き、押し花用ビニールシー
トの口のチャックを閉じる。 1〜2日後、押し花用乾燥シートを取り替える。 3〜6日後、生花が乾集していたら、押し花の完成
である。 乾燥シートをこまめに取り替えないと、色鮮やかな押し
花を作ることが出来ない。
【0004】さらに、公開特許平成4−49202号公
報には、マイクロ波を照射して押し花を作る押し花の作
成方法が記載された。すなわち、セラミック板と吸水シ
ートとの間に多孔質の緩衝部剤を介在してなる一対の積
層板を設け、夫々の積層板の吸水シート面側にて、草花
を押圧挟持し、かかる状態にて誘電加熱による乾燥処理
を施したことを特徴とする押し花の作成方法が記載され
ている。この方法の最大の特徴は、公開特許平成4−4
9202号公報の第2ページ右上欄14行〜左下欄1行
に記載されているように、誘電加熱により加熱されたセ
ラミック板が、遠赤外線を放出するのを利用したもの
で、この遠赤外線と共に高周波あるいはマイクロ波によ
る誘電加熱で、草花の含有水分を均一に加熱し、水分を
蒸発させている。しかしこの方法は、セラミック板が加
熱されるまで時間がかかるうえ、遠赤外線は熱線である
から、含有水分を加熱して蒸発させるまでに時間がかか
り、草花の色は変色しやすくなる。とくに、草花の量が
多くなると必然的に水分量が多くなり、多孔質の緩衝部
剤が緩衝のみを目的としたスポンジ等であり、これ自体
が吸湿性を有さないことも手伝って、水分の蒸発が遅く
なり変色しやすい傾向が大きくなって、出来映えの悪い
押し花になる。本発明者は、このセラミックとレンジを
組み合わせた方法が、美しい押し花等の乾燥体の生産に
は向いていないことを確認している。
【0005】本発明の方法とセラミックとレンジを組み
合わせた方法と押し板を用いる方法とを比較した結果を
表1に示す。
【表1】 この表1からも明らかなように本発明の方法は、生試料
である植物を迅速に乾燥できるので、乾燥した植物は、
色が鮮やかであり、例えば標本にしたときには、その色
に退色が起きるまでの時間は、従来のものに比して格段
に長いことを確認している。上記のように押し花乾燥シ
ート法で植物標本を作った場合は1〜6日程の日数がか
かり、押し花用達赤外線利用法では7時間〜10時間、
押し花用のレンジとセラミックを組み合わせた方法では
1分30秒〜4分程の製作時間がかかる。
【0006】植物標本の劣化、退色の原因として、湿
気、酸素、紫外線があるが、従来の植物標本保存方法で
は、空気の流通を遮断して防湿気、防酸素の対策は取ら
れているが、紫外線防止対策は取られていない。こめ為
に、明るい室内で植物標本を展示した場合、植物の種類
にもよるが、ヒートフィルムで半年程、和紙や押し花用
フィルムで1年程、密閉された額では5年程で退色が始
まる。
【0007】額に入れる従来の保有方法の場合、額の裏
板の裏側にシリカゲルを粘着テープ等で固定させ、この
上に、裏板と同じ大きさの2重にしたアルミフォイルを
貼りつける。貼りつけ方は、裏板の縁の内側に接着剤を
ぐるりと1周、隙間の無いように多めに出して乗せ、こ
の上にアルミフォイルを置き、ストローや布等を用い
て、裏板とアルミフォイルの間に空気が残らないように
貼りつける。次に、裏板の表側に裏板と同じ大きさの不
織布もしくは、クッキングペーパーを2枚重ねて、縁だ
けを接着剤で貼る。上記の様に下処理を施した裏板の上
に、植物標本をピンセットを使い、好みの位置に置く。
植物標本の配置が終わったら、植物標本を並べたクッキ
ングペーパーの縁、総てに隙間が無いように接着剤を塗
り、裏板に乗せた植物標本の上にガラス板を乗せる。最
後にアルミテープで、重ね合わせた上記の物の縁を額に
入れた時、表からテープが見え無いように気を付けなが
ら、側面を囲むように貼る。また、ガラスの表面に紫外
線カット剤をコーティングして、アルミ箔と真空パック
を組み合わせる方注や、赤外線遮断性ヒートフィルムを
使う方法があるが、これらの製造方法で使われる道具類
や薬剤は、市販されていないことが多く、入手困難な上
にコストがかかるので、一般的に普及しやすいとは言い
難い。
【0008】植物標本は、シリカゲルを入れ密閉状態に
しにし、暗所で保有すれば、劣化や退色をかなり防ぐこ
とが出来るが、ただ保有しておくだけならば良いが、特
に博物館等で展示しながら観察したり、見て楽しんだり
する場合、製作し、展示ししてから1〜2年で退色して
しまうようでは、標本としての価値は半減してしまう。
【0009】退色しずらいように工夫された技術でも、
特殊な樹脂溶液等の材料を用いたり、真空状態を作り出
して保有する方法等があるが、一般的にこれらの資材は
入手が困難であったり、高価である場合が多い。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】一般的に、色鮮やかな
植物標本を作るには、なるべく短時間に植物の水分を吸
収し、乾燥させる必要があると言われている。本発明
は、短時間に生試料を乾燥させ、美しい色を残した押し
花や標本を製造する方法さらには、美しい自然の色と香
りを残したお茶やハーブを製造する方法に関する。ま
た、水の分子だけを共振させて加熱するマイクロ波を照
射し、発生する水分をできるだけ速やかに蒸発させ、原
の生試料がもつ、色や香りを残すことができる新しい生
試料の迅速乾燥方法を開発する。押し花用乾燥シート
法、押し花用遠赤外線利用法、押し花用セラミック法等
の植物標本製造法の場合、製作日数がかかり、植物をシ
リカゲルを入れた容器の中に埋めて、電子レンジで加熱
した場含は、シリカゲルが植物に付着したり、植物がよ
れてしまったり、植物の量が多いと水分が残って変色し
たりする事がある。しかも、これらの製造方法において
使用される道具類は、押し花.専用として販売されてい
るので、高価であったり、入手が困難である場合が多
い。
【0011】植物標本を色鮮やかかなまま長時間保てる
ように、外気に触れるのを防ぎ、紫外線を防ぐために、
UVカット効果を施す事で、植物標本の退色を遅らせ
る。本発明者は、従来の技術の問題に鑑み、これらの課
題を解決するために考案された技術は、植物本来の色を
生かし、簡易で短時間で作れる植物標本の製造方法と、
作りたての色鮮やかな植物標本を、美しい色のまま簡単
に長期間保てるようにした、保存方法を、身近にある素
材や、廃物を生かしリサイクルし、入手し易い市販され
ている製品を利用する事で、製造コストを低く押きえ、
教育現場等で使用し、普及させるのに最適な植物標本の
製造、保存方法を提供しようとするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明は、生試料の外表
面を吸湿性の多孔質柔軟シートで覆い、当該シートの外
周を生試料が含んでいる水分をすべて吸収できる量の吸
湿性粒状体で囲み、生試料の外表面と吸湿性の多孔質柔
軟シートと吸湿性粒状体とを密着させて、マイクロ波を
照射することにより、迅速に乾燥させることが出来るこ
とを見出した。吸湿性粒状体の外面を、さらに、吸湿性
の多孔質体例えば、ダンボール等で覆うのは、吸湿性粒
状体及び/又は粉体が吸収した水分をさらに外部に逃が
す働きをする。このようにして得られた乾燥試料は、お
茶やハーブの場合は、飲用に利用することも出来るし、
さらに標本として利用することができる。乾燥体の退色
を防止するには、UVカットのフィルムや酸素を断つ手
段や乾燥剤を併用することもできる。
【0013】
【発明の実施の形態】色鮮やかな植物標本を短時間で製
造するには、いかに早く生試料に含まれている水分を取
りだし乾韓させるかが重要である。こめ為に、吸水部材
は押し花用シリカゲルシートや、押し花用乾燥シートが
最適であると考えられるが、これらの吸水部材は入手が
困難な場合が多く、単にこれらの部材を利用した場合の
植物標本の製造日数は、1日から6日程もかかる。電子
レンジを利用する方法もあるが、植物の変形や、捩れが
生じることがある。これらの問題を総合的に検討した結
果、生試料を柔軟な多孔性のシートで包んで保護したう
え、その周りに吸水部材として、身近にある食品用の乾
燥剤として利用きれている粒状シリカゲルを置いて、電
子レンジのマイクロ波を用いると良いことを発見した。
【0014】一般的に、装飾性を持たせた植物標本を広
く普及させるには、手軽に小学生低学年でも製造するこ
とが出来、コスト的にも安くできるように、入手し易い
市販されている着具や、薬剤を選び、利用することが重
要であると考える。本発明で使用する道具類や、多孔質
柔軟シート、吸湿性粒状体等は、いずれも市販されてい
るので入手が容易である。多孔質柔軟シートとしては、
和紙やティシュペーパー、新聞紙等の紙類や木綿等の布
を用いることが出来る。吸湿性粒状体としては、代表的
には粒状シリカゲルを用いる。粒状シリカゲルは、ドラ
イフラワーの保存用に市販されているもでもよいし、菓
子等の食品保存用に封入きれているシリカゲルを集めた
ものでも良い。吸湿性の多孔質体としては、コルク、ダ
ンボール紙、穴をあけたダンボール紙、厚手の紙等があ
り、ダンボールを箱型にし、その中に乾燥剤を入れてお
くことも出来る。乾燥剤としては、塩化カルシウム、酸
化カルシウム(生石灰)、シリカゲル、ゼオライト等が
あり、また、吸水性高分子等も利用できる。また、この
他に、事務、文具用品等として市販されているUVカッ
ト透明フィルムや、手芸用品のUVカットアクリル樹脂
溶液や、シリコンノリ等を組み合わせて用いることがで
きる。
【0015】本発明で用いるマイクロ波の発生装置とし
ては、手軽には市販の家庭用電子レンジを利用する。工
業的に大量の乾燥体を作り出すには、大型のマイクロ波
の発生装置を用いる。マイクロ波を受けた生試料中の水
は、すぐに高温になり、水蒸気に変化する。その時、発
生した水蒸気は、多孔質柔軟シートを通して、瞬時にシ
リカゲルが吸収する。発生してくる水蒸気を吸湿性粒状
体に瞬時に吸収させ、生試料と水蒸気を迅速に分離させ
ることが本発明の最大のポイントである。したがって、
生試料から出た水分が凝縮して生試料と接触するような
ことがあってはならない。生試料から出た水分が凝縮し
て再び生試料に接触しないように、発生した水蒸気はた
だちに吸収する。多孔質柔軟シートの外周のシリカゲル
が吸収しきれなかった水蒸気は、さらに外周部にある吸
湿性の多孔質体で吸収することが必要である。シリカゲ
ルが水分を吸収したかどうかを確かめるためには、透喝
なシリカゲルに、塩化コバルトを添加したシルカゲルを
混入きせておくと便利である。塩化コバルトを添加した
シリカゲルは、乾燥時に青色を呈するが、水分を含むと
ピンク色に変化するので、水分を吸収しているか否かが
一目でわかる。吸湿性の多孔質体としては、紙類やコル
クが適しており、半紙を重ねたものや、ダンボール、コ
ルク板等のほか、これらに乾燥剤を保持させたものが望
ましい。また、吸湿性の多孔質体は、上から重石を置い
たときには、同時にクッションの役割をも果たす。大量
に水蒸気が発生することが予測される場合は、ダンボー
ルを箱型にし、その中にシリカゲルや塩化カルシウムを
入れておくと良い。生試料を多く扱う場合には、吸湿性
の多孔質体として、図3に示すように、小孔31をあけ
たダンボール箱体30に乾燥剤32を詰めたものを用い
ることが出来る。吸湿性の多孔質体の働きが充分でない
と、熱水や蒸気がこもるため、乾燥させた試料の色が悪
くなったり、変色や劣化が起きる。本発明の実施の形態
をまとめると、次ぎのとおりである。 (1) 生試料の外表面を吸湿性の多孔質柔軟シートで
覆い、当該シートの外周を生試料が含んでいる水分をす
べて吸収できる量の吸湿性粒状体で囲み、生試料の外表
面と吸湿性の多孔質柔軟シートと吸湿性粒状体とを密着
させて、マイクロ波を照射し、放冷することを特徴とす
る生試料の迅速乾燥方法。 (2) 加圧することにより、生試料の外表面と吸湿性
の多孔質柔軟シートと吸湿性粒状体とを密着させる上記
1に記載された生試料の迅速乾燥方法。 (3) 吸湿性粒状体の外周を、さらに吸湿性の多孔質
柔軟シートを介して又は介さず、吸湿性の多孔質体で覆
う上記1又は上記2に記載された生試料の迅速乾燥方
法。 (4) 吸湿性の粒状体がシリカゲルである上記1ない
し上記3のいずれかひとつに記載された生試料の迅速乾
燥方法。 (5) 吸湿性の多孔質体が吸湿性粉末及び/又は粒状
体を保有する上記1ないし上記4のいずれかひとつに記
載された生試料の迅速乾燥方法。 (6) 生試料が植物である上記1ないし上記5のいず
れかひとつに記載された生試料の迅速乾燥方法。 (7) 植物がお茶又はハーブである上記1ないし上記
6のいずれかひとつに記載された生試料の迅速乾燥方
法。 (8) 吸湿性の多孔質柔軟シートが紙であり、吸湿性
の多孔質体がダンボールである上記1ないし上記7のい
ずれかひとつに記載された生試料の迅速乾燥方法。 (9) 吸湿性の多孔質体が、シリカゲル、塩化カルシ
ウム及び/又は、生石灰等の乾燥剤を入れたダンボール
箱である上記1ないし上記8のいずれかひとつに記載さ
れた生試料の迅速乾燥方法。 (10) シリカゲルが吸水すると変色するシリカゲル
である上記1ないし上記9のいずれかひとつに記載され
た生試料の迅速乾燥方法。 (11) 変色したシリカゲルを再生して用いる上記1
ないし上記10のいずれかひとつに記載された生試料の
迅速乾燥方法。 (12) 上記1ないし上記11のいずれかひとつに記
載された迅速乾燥方法により得られた乾燥体を、UVカ
ット透明フィルムを用いた袋にそのまま、若しくは脱酸
素剤、乾燥剤のいずれか一つ以上と共に入れて保存する
方法。 (13) 上記1ないし上記11のいずれかひとつに記
載された迅速乾燥方法により得られた乾燥体を台紙に仮
止めし、全体をフィルムで覆い、必要に応じてフィルム
の一部をUVカット透明フィルムに置き換えて、密封保
存する方法。 (14) 表面のフィルムがUVカット透明フィルムで
ある上記13に記載の保存する方法。 (15) 裏面のフィルムが粘着性フィルムであり、剥
離層を介して粘着層を有する上記13又は上記14に記
載の保存する方法。 (16) 上記1ないし上記11のいずれかひとつに記
載された迅速乾燥方法により得られた乾燥体を、脱酸素
剤及び/又は乾燥剤を入れた空間に保存する方法。 (17) 上記1ないし上記11のいずれかひとつに記
載された迅速乾燥方法により得られた乾燥体を、少なく
とも1面はUVカット透明樹脂を用いた密封された空間
に固定し、さらにこの空間に脱酸素剤及び/又は乾燥剤
を入れて保存する方法。
【0016】
【実施例】まず、実際に行った迅速乾燥方法を具体的に
記載するが、本発明がこれにより限定されるものではな
い。概要を図1、図2により説明する。電子レンジの中
に入る大ききの、耐熱容器1を用意し、この中にダンボ
ール紙、もしくは厚さ2mm程度のコルク板3を2枚重
ねて敷く。その上に、半紙もしくはキッチンペーパー4
を、ダンボール紙もしくは厚さ2mm程度のコルク板3
の上に敷く。半紙もしくはキッチンペーパー4の上にシ
リカゲル5を約0.6〜1.5センチ位の高さになるま
で入れ、この上ティッシュペーパー6を数枚重ねて敷
く。テプシュペーパーの上に、余分な茎や葉を取り除く
下処理を施し洗浄し形を整えた生試料の植物7を重なり
合わないように並べる。これまでと逆の順序で、生試料
の植物7の上にテッシュペーパー6を数枚重ねて敷き、
次いでシリカゲル5を0.6〜1.5センチ位の高さに
なるまで入れ、その上に半紙もしくはキッチンペーパー
4を敷き、ダンボール紙、もしくは厚さ2mm程度のコ
ルク板3を2枚重ねて敷く。次いで軽く生試料である植
物に圧力がかかるように、容器のフタ2をひっくりかえ
して輪ゴムでフタを固定したり、厚い本等で重しをした
りして、市販の電子レンジに入れ加熱する。
【0017】実施例1 オオバナノエイレイソウ(学術名Trillium k
amtschaticum Pall)の葉1枚を迅速
乾燥方法により標本にする場合について示す。内寸で2
0cmX14.5cmの耐熱容器を使用し、600Wの
市販の家庭用電子レンジを使用した。使用するシリカゲ
ルの量は、生試料の植物の上下に分けて使うが、思考錯
誤の結果、シリカゲルが生試料である植物を被覆出来る
厚みになる量を考えると、シリカゲルの総量は250g
以上が良いことが分かった。そして、電子レンジの加熱
時間は、シリカゲルの粒の大きさや形状に関係無くシリ
カゲルの全重量が250gの場合は60秒、シリカゲル
の全重量が350gの時は50秒で迅速乾燥を行った結
果良い標本が得られた。さらにシリカゲルの全重量を、
400gの場合と450gの場合を実験してみたが、い
ずれも50秒で迅速乾燥を行った結果良い標本が得られ
た。この結果からシリカゲルの全体量が、350gが最
適であると考えられる。
【0018】形状の異なる2種類の顆粒状と粒状のシリ
カゲルを、上記と同じ容量の容器に敷き詰めた場合、顆
粒状のものだと150gで容器の厚みの6mmを覆うこ
とができ、顆粒状のシリカゲル200gで8mmの厚さ
となり、粒状のシリカゲルの場合は、150gでこの容
器の厚みの5mmを覆う事ができ、200gの場合7m
mの厚きで覆うことが出来た。上記の結果から、形状が
異なっても電子レンジの利用時間は同じであったが、形
状の違いから被覆厚さに差異が生じ、粒状シリカゲル3
50gを2分した場合の175gに相当する厚さは、6
mm〜7mmと考える。
【0019】加熱時間は容器め大きさや厚さと、生試料
である植物の厚きや故にもよるが、600W出力の市販
の家庭用電子レンジを使い、シリカゲル350g、容器
の内寸2cmX14.5cmで、実施例1と同じように
して、生試料である植物が重なり合わないように敷き詰
め、色鮮やかな乾燥体を得た。芝ザクラ(学術名 Ph
loxsubulate)とパンジー(学術名 Vio
lawittrockiana)について、条件をとそ
の結果を表2に示す。
【表2】 容書に入れる植物の固体数が少ない場合や、薄い植物等
は、上記の表2のように加熱時間、放置冷却時間を少な
くして調節することが出来る。
【0020】電子レンジで加熱した後放冷し、温度を下
げるが、これは素手で容器を持った場合、ヤケドをしな
いように冷ますと言う意味合いもあるが、同じ植物でも
部位によって厚みや水分量が異なるために、放冷するこ
とによって、生試料である植物の部位によって異なる水
分量を調製し、美しい色合いに仕上げるのが目的であ
る。
【0021】加熱時間と放冷時間の関係を表3に示す。
【表3】 上記の表から、従来の製造方法とは、比較にならない
程、短時間で色鮮やかな乾燥体を製造することが出来
た。しかし、アントシアン系の赤花は、植物の水分が抜
ける時に酸性度が変わるため、黒っぽく変色する。これ
は、クエン酸や酒石酸により、発色させる事が出来る
が、既に市販されている赤色還元処理剤を利用すると戻
すことができる。
【0022】ハーブを乾燥させる実施例 ラベンダーの花20輪、カモミールの花20輪、タイム
の葉80枚、パイナップルミントの葉30枚、サンショ
ウの葉60枚について本発明の迅速乾燥方法を適用し
た。その乾燥条件を表4に示す。
【表4】 なお、タイムとパイナップルミントについては、ティッ
シュに挟み、アイロンの中温で、10秒押さえてから、
乾燥に供した。日東紅茶ティバッグにカモミール2輪、
ミント2枚、ラベンダー36輪を各々使用して、2分間
おいて、比較した。その結果を表5に示す。
【表5】 色と香りが優れたものであった。ハーブについて、従来
の乾燥方法との比較を表6に示す。
【表6】
【0023】お茶の葉を乾燥させる実施例 お茶についても、若葉約10枚をハーブと同様に約50
〜80秒間、マイクロ波加熱し、約10分放冷した。そ
の結果を表7に示す。
【表7】 色が鮮やかで、香りが高いものであり、抹茶にして飲用
した。
【0024】植物標本の保有法の実施例 本発明の迅速乾燥方法で製造した乾燥体を、市販の開閉
出来るポリ袋等、空気を透きな透明な袋を利用すること
ができる。すなわち、ポリ袋の表面すべてに、事務用と
して市仮されているUVカット透明フィルムを貼って、
この中に乾燥体を入れれば良い。ポリ袋め大ききがハガ
キ程の場合、シリカゲル20g程と鉄粉末カイロ(脱酸
素剤)を入れ、なるべく空気を抜いてポリ袋を密閉し、
冷暗所に保管する。
【0025】植物標本をカードにし、保存する実施例 台紙に、本発明の迅速乾燥方法で製造した植物標本とす
る乾燥体をシリコンノリで仮止めをする。植物標本とす
る乾燥体を貼りつけた面に、台紙より大きめに切った粘
着UVカット透明フィルムを、気泡が入らないように貼
りつける。裏面も同様にフィルムを、台抵より大きめに
貼り、はみ出した表と裏側のフィルムを貼り合わせ、余
白が2〜3mm残る様にし、余分なフィルムは切り捨て
れば出来あがりである。
【0026】植物標本を額にし、保存する実施例 本発明の迅速乾燥方法で製造した植物標本とする乾燥体
を、額の中に入れ、ガラスの表面に粘着UVカット透明
フィルムを貼る。美しい自然の色合いのまま長期保存す
ることができた。さらに長期保存をしたいときは、上記
の方法で作成したカードの裏面に、両面粘着テープで脱
酸素剤(鉄粉末カイロ)と乾燥剤(シリカゲル)を貼り
つけ、そのカードをマスキングテープで粘着UVカット
透明フィルムを貼った額のガラス板に止め、マスキング
テープの上にシリコンノリを厚めに塗る。キッチン用ア
ルミホイルを大きめに切り、空気を抜きながら、アルミ
ホイルの艶のない面をシリコンノリ側に向けて貼り、ノ
リが落ち着いたら、はみ出た部分をハサミで切り取る。
さらに必要に応じて、アルミテープを裏面全体に貼って
補強し、周囲を囲み額に入れる。
【0027】貼りつけ植物標本を保存する実施例 手芸用の木製の板に、240番位の紙ヤスリをかけ、板
の表面を滑らかにし、好みのアクリルペイントを塗る。
アクリルペイントが乾いたら、板にシリコンノリを薄く
塗り、シリコンノリが乾かないうちに、植物標本をの
せ、ティッシュペーパーで軽く押さえる。シリコンノリ
が乾いたら植物標本の表にもシリコンノリ塗り、シリコ
ンノリが乾いたら、この上にフィキサチフをかけ、2〜
3分経ったらもう1度フィキサチフをかける。油性の樹
脂溶液を1回塗る。樹脂溶液が乾いたら、UVカット水
性アクリル樹脂溶液を塗り、ワックスをかけて完成だ
が、厚みが欲しい場合は、アクリル樹脂を縦横交互に塗
り、乾かしては塗る作業を集り返し、好みの厚みになる
まで塗り重ねる。好みの厚みまで塗り終えたら、仕上げ
用のアクリル樹脂溶液を塗り、シリコン入りワックスで
磨いて仕上げ、植物標本とする。
【0028】植物標本を立体的にし俣存する実施例 粘着UVカット透明フィルムの裏紙をはがし、粘着面に
各部位毎に分けた植物標本を置き、軽く指で押さえた
後、もう1枚の粘着甘UVカット透明フィルムで密封き
せる為に、植物の輪郭に沿って余白帯分をモデラ等でし
っかり押さえてフィルムを密著させ、撞勃標本より1〜
2mm大きくハサミで切り取る。各部位毎に作り分けた
植物標本を、板や小物等にシリコンノリを使って、立体
的に見えるように組み立てる。
【0029】植物標本を立体的にし保存し、脱酸素剤を
使用する実施例 両面テープの片側のリケイ紙をはがし、接着面に各パー
ツに分けた植物標本を貼り、植物標本の表面にシリコン
ノリを塗る。シリコンノリが乾いたら、フィキサチフを
かけ、2〜3分後もう1度フィキサチフをかけ、接着和
紙フィルムを、両面テープの粘着面と植物標本をはさむ
ようにのせる。両面テープのもう一方のリケイ紙をはが
し、和紙フィルムをのせ、あて布をして、中温のアイロ
ンで押きえ、接着させる。植物標本の表側に押し花用ク
ラフト液を塗り、乾いたらUVカットアクリル樹脂溶液
を塗り、乾燥後ワックスをかける。はさみで、1〜2m
mの縁を付けて切り取り、シリコンノリで立体的に貼り
つけて植物標本を作る。この標本を、額に入れ、額の裏
側に市販の鉄粉末カイロと乾燥剤を入れ、額の裏側をア
ルミホイールでシールする。
【0030】
【発明の効果】本発明の迅速乾燥方法により、得られた
乾燥体は、自然の色を長く保つことが出来るばかりか、
乾燥体からは自然の芳香が漂い、これまでの乾燥方法に
は見られない特徴を有する。乾燥体は食品や標本に利用
することが出来る。標本について言えば、簡単に作成出
来るため、学校教育や生涯学習に容易に普及きせられる
と考えられる。特に、拝観館等で展示をする場合には、
従来の方法とは異なり、あまり変色しないので、標本と
してめ価値があがる。また、家庭でも手軽に植物標本を
作り、美しい色合いのまま植物標本を保存し、室内装飾
品として活用出来るので、大切に育てた植物や、野に咲
く花等を観察し、採集することで、周囲の自然環境を自
分の目で確かめ、身定な自然に溢れている美しさを学
び、自ら学習しようとする意欲をかきたて、楽しみなが
ら自己啓発を高めることが出来る。
【0031】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明で用いた乾燥装置の断面図
【図2】 本発明の乾燥方法の説明図
【図3】 本発明で用いる吸湿性多孔質の見取り図
【符号の説明】 1 電子レンジにいれる耐熱容器 2 電子レンジ用耐熱容器の蓋 2‘ オモシ 3 吸湿性の多孔質体 4 吸湿性の多孔質柔軟シート 5 吸湿性粒状体 6 吸湿性の多孔質柔軟シート 7 生試料 30 ダンボール箱体 31 小孔 32 乾燥剤
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平7−25702(JP,A) 特開 昭60−169401(JP,A) 特開 平4−21601(JP,A) 特開 昭62−136683(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B44C 5/06

Claims (17)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 生試料の外表面を吸湿性の多孔質柔軟シ
    ートで覆い、当該シートの外周を生試料が含んでいる水
    分をすべて吸収できる量の吸湿性粒状体で囲み、生試料
    の外表面と吸湿性の多孔質柔軟シートと吸湿性粒状体と
    を密着させて、マイクロ波を照射し、生試料から発生し
    た水蒸気を多孔質柔軟シートを通して吸湿性粒状体に吸
    収させ生試料と水蒸気を迅速に分離した後に、放冷する
    ことを特徴とする生試料の迅速乾燥方法。
  2. 【請求項2】 生試料の外表面を吸湿性の多孔質柔軟シ
    ートで覆い、当該シートの外周を生試料が含んでいる水
    分をすべて吸収できる量の吸湿性粒状体で囲み、生試料
    の外表面と吸湿性の多孔質柔軟シートと吸湿性粒状体と
    を密着させて耐熱容器に入れ、該多孔質柔軟シートの一
    部を容器外部にさらした上で蓋をし、マイクロ波を照射
    し、放冷することを特徴とする請求項1記載の生試料の
    迅速乾燥方法。
  3. 【請求項3】 吸湿性の粒状体がシリカゲルである請求
    項1または2に記載された生試料の迅速乾燥方法。
  4. 【請求項4】 シリカゲルが吸水すると変色するシリカ
    ゲルである請求項に記載された生試料の迅速乾燥方
    法。
  5. 【請求項5】 変色したシリカゲルを再生して用いる請
    求項に記載された生試料の迅速乾燥方法。
  6. 【請求項6】 吸湿性粒状体の外周を、さらに吸湿性の
    多孔質柔軟シートを介して又は介さず、吸湿性の多孔質
    体で覆う請求項1〜5のいずれか1項に記載された生試
    料の迅速乾燥方法。
  7. 【請求項7】 吸湿性の多孔質体が吸湿性粉体及び/又
    は粒状体を保有する請求項に記載された生試料の迅速
    乾燥方法。
  8. 【請求項8】 吸湿性の多孔質体が、シリカゲル、塩化
    カルシウム及び/又は、生石灰等の乾燥剤を入れたダン
    ボール箱である請求項に記載された生試料の迅速乾燥
    方法。
  9. 【請求項9】 生試料がお茶又はハーブである請求項
    〜8のいずれか1項に記載された生試料の迅速乾燥方
    法。
  10. 【請求項10】 請求項1〜9のいずれか1に記載さ
    れた迅速乾燥方法により得られた乾燥体を、UVカット透
    明フィルムを用いた袋にそのまま、若しくは脱酸素剤、
    乾燥剤のいずれか一つ以上と共に入れて保存する方法。
  11. 【請求項11】 請求項1〜9のいずれか1に記載さ
    れた迅速乾燥方法により得られた乾燥体を台紙に仮止め
    し、全体をフィルムで覆い、必要に応じてフィルムの一
    部をUVカット透明フィルムに置き換えて、密封保存する
    方法。
  12. 【請求項12】 請求項1〜9のいずれか1に記載さ
    れた迅速乾燥方法により得られた乾燥体を、脱酸素剤及
    び/又は乾燥剤を入れた空間に保存する方法。
  13. 【請求項13】 請求項1〜9のいずれか1に記載さ
    れた迅速乾燥方法により得られた乾燥体を、少なくとも
    1面はUVカット透明樹脂を用いた密封された空間に固定
    し、さらにこの空間に脱酸素剤及び/又は乾燥剤を入れ
    て保存する方法。
  14. 【請求項14】 請求項1〜9のいずれか1項に記載さ
    れた迅速乾燥方法により得られた乾燥体の表面にUVカッ
    ト溶液を塗布することを含む、該乾燥体を保存する方
    法。
  15. 【請求項15】 自然状態における色および芳香を保
    ち、なおかつ変形が生じていない生試料乾燥体。
  16. 【請求項16】 表面にUVカット溶液を塗布した、請求
    項15記載の生試料乾燥体。
  17. 【請求項17】 少なくとも、乾燥させようとする生試
    料を覆う吸湿性の多孔質柔軟シート、生試料を覆った多
    孔質柔軟シートの上からさらに生試料を覆うシリカゲル
    および該多孔質柔軟シートおよびシリカゲルで覆われた
    生試料を収めるマイクロ波が透過し得る耐熱容器を含む
    生試料を迅速に乾燥させるためのキットであり、多孔質
    柔軟シートがその一部が耐熱容器から外部にでる大きさ
    である、生試料を迅速に乾燥させるためのキット。
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