JP3468623B2 - X線回折装置の光学系切換装置 - Google Patents

X線回折装置の光学系切換装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、X線ビームを単
色化かつ平行化するためのチャンネルカット結晶をX線
回折装置の光学系に選択的に挿入できるようにした光学
系切換装置に関する。
【0002】
【従来の技術】図4はX線回折装置の入射X線ビームの
コリメーションを切り換えるための従来の光学系切換装
置の平面図である。図4(a)において、2個のチャン
ネルカット結晶10、12は退避位置にあり、入射X線
ビーム14は二つのスリット16、18を通過すること
によりコリメーションされて、試料20に入射する。図
4(b)は、2個のチャンネルカット結晶10、12を
X線光路に挿入して、4結晶モノクロメータのコリメー
ション配置にしている。すなわち、チャンネルカット結
晶10、12を支持している移動台22、24を矢印2
6、28に示すようにX線光路に垂直な方向に移動させ
て、チャンネルカット結晶10、12を光路に挿入す
る。また、チャンネルカット結晶10、12とX線ビー
ムとの間の角度調整は、チャンネルカット結晶10、1
2の一方の反射表面11、13上に位置させた回転中心
の回りに移動台22、24を回転させることで実施す
る。さらに、一方のチャンネルカット結晶10だけを図
4(b)のようにX線光路に挿入して、他方のチャンネ
ルカット結晶12を図4(a)の退避位置に残しておけ
ば、1個のチャンネルカット結晶からなるモノクロメー
タによるコリメーションとなる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】図4に示すような従来
の光学系切換装置では、チャンネルカット結晶を光路に
垂直な方向に移動させているので、チャンネルカット結
晶を移動させるための機構が大きな空間を占領してお
り、X線回折装置の大型化を招いていた。また、このよ
うな従来機構を採用すると、チャンネルカット結晶を光
路に選択的に挿入するための並進駆動機構と、チャンネ
ルカット結晶をX線ビームに対して角度調整するための
回転駆動機構とが別個に必要であった。
【0004】この発明は上述の問題点を解決するために
なされたものであり、その目的は、チャンネルカット結
晶をX線光路に選択的に挿入するための駆動機構を小型
化すると共に、この駆動機構を角度調整機構とも兼用に
して構造の簡素化を図った光学系切換装置を提供するこ
とにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】この発明のチャンネルカ
ット結晶は、X線回折装置のX線源と試料との間に、X
線ビームの発散角を制限するスリット装置と、2個のチ
ャンネルカット結晶とを配置して、試料に入射するX線
ビームのコリメーションを、スリット装置によるコリメ
ーションと、1個のチャンネルカット結晶からなるモノ
クロメータによるコリメーションと、2個のチャンネル
カット結晶からなる4結晶モノクロメータによるコリメ
ーションとの間で切り換え可能にした光学系切換装置に
おいて、前記2個のチャンネルカット結晶のそれぞれ
は、回転中心の回りを回転することによって、X線ビー
ムに触れない退避位置と、二つの反射表面で順にX線ビ
ームが回折する回折位置との間で選択的に切り換え可能
であることを特徴としている。
【0006】前記回転中心は、前記3種類のコリメーシ
ョンの切り換えに際して静止していて、X線源と試料の
照射点とを結ぶ光路から外れて位置している。前記退避
位置としては、チャンネルカット結晶の二つの反射表面
の間をX線ビームが通り抜けるような通過位置を選択で
きる。前記チャンネルカット結晶の二つの反射表面は互
いに平行にすることができ、その場合、前記二つの反射
表面がX線源と試料の照射点とを結ぶ光路に平行になっ
ている状態では、前記二つの反射表面とその延長面で挟
まれる領域の外側に前記回転中心を位置させるのが好ま
しい。
【0007】チャンネルカット結晶を退避位置と回折位
置の間で切り換えるには、回転中心の回りにチャンネル
カット結晶を回転させるだけで足り、光学系の切り換え
のための機構が小型化する。さらに、この回転駆動機構
は、チャンネルカット結晶の角度調整にも兼用できるの
で、チャンネルカット結晶の駆動機構が簡素化する。
【0008】
【発明の実施の形態】図1は、この発明の実施の一形態
を示す平面図である。この実施形態はX線回折装置のX
線源から試料に至るまでの光学系を切り換えるものであ
る。図1(a)はスリット・コリメーションの状態、図
1(b)はチャンネルカット・モノクロメータ・コリメ
ーションの状態、図1(c)は4結晶モノクロメータ・
コリメーションの状態を示している。図1(a)におい
て、X線源と試料30の間には互いの間隔をあけて配置
した1対のスリット32、34が配置されている。これ
らのスリット32、34の間には、互いに鏡面対称の関
係にある2個のチャンネルカット結晶36、38が配置
されている。チャンネルカット結晶36、38は、それ
ぞれ、対向する二つの平行な反射表面を備えている。そ
して、これらのチャンネルカット結晶36、38は、そ
れぞれ、回転中心40、42の回りを回転できる。図1
(a)の状態では、チャンネルカット結晶36、38
は、その反射表面が入射X線ビーム44に平行になって
おり、入射X線ビーム44は、チャンネルカット結晶3
6、38の二つの反射表面の間を通り抜ける。チャンネ
ルカット結晶36、38のこのような状態を「通過位
置」と呼ぶことにする。この通過位置は、チャンネルカ
ット結晶36、38が入射X線ビーム44に触れない位
置(退避位置)の一つの状態である。
【0009】このようなスリット・コリメーションを用
いる場合、受光側にはパラレルスリット(縦ソーラスリ
ット)を用いるのが一般的である。
【0010】図1(b)では、第1のチャンネルカット
結晶36が回転中心40の回りに所定角度だけ時計回り
に回転して、入射X線ビーム44がチャンネルカット結
晶36の二つの反射表面で順に回折するような状態にあ
る。チャンネルカット結晶36のこのような状態を「回
折位置」と呼ぶことにする。そして、チャンネルカット
結晶36と入射X線ビーム44とが所定の角度関係にな
るように調整するには、回転中心40の回りの回転を利
用する。この角度調整は、入射X線ビーム44を使って
反射X線46の強度を測定することによって実施され
る。
【0011】図1(b)において、第2のチャンネルカ
ット結晶38は、回転中心42の回りに時計回りに約9
0°だけ回転して、入射X線ビームの光路から大きく外
れている。チャンネルカット結晶38のこのような状態
も「退避位置」の別の状態である。第2のチャンネルカ
ット結晶38をこのように退避させるのは、図1(a)
の状態のままにしておくと、第1のチャンネルカット結
晶36を回折してきたX線ビーム46が第2のチャンネ
ルカット結晶38にぶつかる恐れがあるからである。な
お、第1のチャンネルカット結晶36で回折したX線ビ
ーム46は、元のX線光路48に対して平行移動するの
で、試料30に近い側のスリット34と、試料30を搭
載しているゴニオメータも平行移動させる必要がある。
【0012】図1(c)では、二つのチャンネルカット
結晶36、38が回転中心40、42の回りに互いに逆
方向に所定角度だけ回転して、どちらも「回折位置」の
状態にある。第1のチャンネルカット結晶36を通過し
たX線ビーム46は、第2のチャンネルカット結晶38
でさらに回折して、出てきたX線ビーム50は、入射X
線ビーム44と同一直線上にある。したがって、試料3
0側のスリット34と、試料30を搭載しているゴニオ
メータは、図1(a)のスリット・コリメーションの場
合と同じ位置でよい。
【0013】図2(a)は図1で使っているチャンネル
カット結晶36の平面図である。各部の寸法は次の通り
である。反射表面51、52を備える二つの直立部分に
ついて、その長さはL1=9mm、L2=23mm、厚
さは共にH=4mm、後退量J=5mmである。反射表
面51、52間の距離D=5mmである。反射表面5
1、52が入射X線ビーム44と平行になった状態での
一方の反射表面51と入射X線ビーム44との距離G=
1mmである。このチャンネルカット結晶の回転中心4
0は、反射表面51、52が入射X線ビーム44と平行
になった状態において、入射X線ビーム44から距離E
=2.5mmのところにあり、チャンネルカット結晶の
端面から距離F=2.5mmのところにある。したがっ
て、この実施例では、回転中心40は平面図で見るとチ
ャンネルカット結晶の外形線の内側に位置している。図
1では回転中心40、42はチャンネルカット結晶3
6、38の外形線の外側に位置するように描かれている
が、これは図面を見易くするためのものであり、実際は
図2(a)に示す位置にある。このチャンネルカット結
晶はゲルマニウムの単結晶で作られており、反射表面5
1、52はGe(110)面に平行になるようにカット
されている。そして、Ge(220)面とGe(44
0)面を回折面として利用している。Ge(220)面
でX線ビームを回折させるときはX線ビームに対してG
e(220)面がθ=22.6°(2θ=45.2°)
になるようにチャンネルカット結晶の回転角度を調整す
る。また、Ge(440)面で回折させるときはX線ビ
ームに対してGe(440)面がθ=50.2°(2θ
=100.4°)になるようにチャンネルカット結晶の
回転角度を調整する。
【0014】ところで、回転中心40の位置を上述のよ
うにE=2.5mm、F=2.5mmの位置に定めたの
は次のような理由による。図2(b)はチャンネルカッ
ト結晶36をGe(220)反射の「回折位置」にした
状態を示す。また、図2(b)はチャンネルカット結晶
36をGe(440)反射の「回折位置」にした状態を
示す。このチャンネルカット結晶36はこのように二つ
の回折位置をとることができ、回折位置をどちらの状態
にしても、入射X線ビーム44が最初の反射表面51に
当たる位置があまり変化しないように、回転中心40の
位置を定めている。
【0015】次に、図1に示す3種類のビーム・コリメ
ーションの特徴について説明する。ビーム・コリメーシ
ョンの性能としては、そのコリメーションを通過して出
てきたX線ビームの有する波長、ビームの平行性、ビー
ムの強度の3点が挙げられる。図1(a)に示すスリッ
ト・コリメーションは、波長が非制限(どの波長でも通
過する)であり、平行性はある程度期待でき(ビームの
発散角度にして数ミリ・ラジアン程度)、得られる強度
は大きい。図1(b)に示すチャンネルカット・モノク
ロメータ・コリメーションは、波長が単色化され(例え
ばCuKαのX線源を利用する場合、波長の分散はΔλ
/λ=3.8×10マイナス4乗)、平行性が優れ(発
散角度は0.1ミリ・ラジアン程度)、強度は小さくな
る(スリット・コリメーションの100分の1程度)。
図1(c)に示す4結晶モノクロメータ・コリメーショ
ンは、波長の単色化が非常に優れ(例えばCuKαのX
線ビームをGe(440)面で回折させる場合、波長の
分散はΔλ/λ=2.3×10マイナス5乗)、平行性
も非常に優れ(発散角度は0.01ミリ・ラジアン程
度)、強度は非常に小さくなる(チャンネルカット・モ
ノクロメータ・コリメーションのさらに10分の1から
100分の1程度)。したがって、コリメーションの選
択に当たっては、波長を単色化するか否か、強度を重視
するか、平行性や単色化を重視するかによって、測定内
容に応じた最適なコリメーションを選択することにな
る。
【0016】次に、上述の3種類のビーム・コリメーシ
ョンの代表的な用途について説明する。図1(a)に示
すスリット・コリメーションは、一般的に多結晶試料の
X線回折に利用され、試料の同定、極点図測定、応力測
定等に利用される。図1(b)に示すチャンネルカット
・モノクロメータ・コリメーションは、超格子の周期測
定、薄膜の厚さ測定、表面界面の粗さ測定等に利用され
る。図1(c)に示す4結晶モノクロメータ・コリメー
ションは、典型的には、完全性の高い単結晶試料のX線
回折に利用され、混晶の格子定数のミスマッチ量(格子
定数の不整合量)の測定、単結晶の格子定数の絶対値測
定、単結晶の完全性評価等に利用される。
【0017】図3は受光側に配置したチャンネルカット
結晶を示す平面図である。すなわち、受光スリット54
とX線検出器58の間にチャンネルカット結晶60を配
置している。図3(a)の状態ではチャンネルカット結
晶60が「通過位置」にあり、試料30で回折したX線
ビーム56はチャンネルカット結晶60の二つの反射表
面の間を通り抜ける。図3(b)の状態では、チャンネ
ルカット結晶60が回転中心62の回りに半時計方向に
回転して「回折位置」の状態にある。このとき、回折X
線ビーム56はチャンネルカット結晶60の二つの反射
表面で順に反射して、X線検出器58に入る。この場
合、回折X線ビーム56はチャンネルカット結晶60を
出て来ると平行移動しているので、X線検出器58を光
軸に垂直な方向にシフトさせる必要がある。ところで、
このように受光側に挿入したチャンネルカット結晶はア
ナライザ結晶と呼ばれる。
【0018】アナライザ結晶は、受光側での2θ分解能
を向上させるためのものであり、例えば、Ge(22
0)面を使うときを例にとると、受け入れ可能な2θ幅
(2θ分解能)を12秒程度と非常に狭くすることがで
きる。このアナライザ結晶は、一般的に、入射側のチャ
ンネルカット・モノクロメータ・コリメーションまたは
4結晶モノクロメータ・コリメーションと組み合わせて
利用される。
【0019】チャンネルカット結晶の材質としては、ゲ
ルマニウムやシリコンが代表的であり、反射面として
は、Ge(220)面、Ge(440)面、Si(40
0)面、Si(220)面、Si(111)面、Si
(333)面などが使われる。
【0020】
【発明の効果】この発明の光学系切換装置は、スリット
・コリメーションと、チャンネルカット・モノクロメー
タ・コリメーションと、4結晶モノクロメータ・コリメ
ーションとの切り換えを、チャンネルカット結晶を回転
させるだけで実施しており、光学系の切り換えのための
駆動機構が小型化する。さらに、この回転駆動機構は、
チャンネルカット結晶の角度調整にも兼用できるので、
チャンネルカット結晶の駆動機構が簡素化する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の一形態を示す平面図である。
【図2】チャンネルカット結晶の平面図である。
【図3】この発明の別の実施形態の正面図である。
【図4】従来の光学系切換装置の平面図である。
【符号の説明】
30 試料 32、34 スリット 36、38 チャンネルカット結晶 40、42 回転中心 44 入射X線ビーム 46 反射X線ビーム 48 元のX線光路 50 出射X線ビーム 51、52 反射表面
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 23/00 - 23/227 G21K 1/06

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 X線回折装置のX線源と試料との間に、
    X線ビームの発散角を制限するスリット装置と、2個の
    チャンネルカット結晶とを配置して、試料に入射するX
    線ビームのコリメーションを、スリット装置によるコリ
    メーションと、1個のチャンネルカット結晶からなるモ
    ノクロメータによるコリメーションと、2個のチャンネ
    ルカット結晶からなる4結晶モノクロメータによるコリ
    メーションとの間で切り換え可能にした光学系切換装置
    において、 前記2個のチャンネルカット結晶のそれぞれは、回転中
    心の回りを回転することによって、X線ビームに触れな
    い退避位置と、二つの反射表面で順にX線ビームが回折
    する回折位置との間で選択的に切り換え可能であること
    を特徴とする光学系切換装置。
  2. 【請求項2】 前記回転中心は、前記3種類のコリメー
    ションの切り換えに際して静止していて、X線源と試料
    の照射点とを結ぶ光路から外れて位置していることを特
    徴とする請求項1記載の光学系切換装置。
  3. 【請求項3】 前記退避位置として、前記チャンネルカ
    ット結晶の二つの反射表面の間をX線ビームが通り抜け
    るような通過位置を選択できることを特徴とする請求項
    2記載の光学系切換装置。
  4. 【請求項4】 前記チャンネルカット結晶の二つの反射
    表面は互いに平行であり、前記二つの反射表面がX線源
    と試料の照射点とを結ぶ光路に平行になっている状態で
    は、前記二つの反射表面とその延長面で挟まれる領域の
    外側に前記回転中心が位置することを特徴とする請求項
    3記載の光学系切換装置。
  5. 【請求項5】 X線回折装置の光学系の途中にチャンネ
    ルカット結晶を配置して、このチャンネルカット結晶の
    位置を変更することによりX線ビームの経路を切り換え
    可能にした光学系切換装置において、 前記チャンネルカット結晶は、回転中心の回りを回転す
    ることによって、X線ビームに触れない退避位置と、チ
    ャンネルカット結晶の二つの反射表面で順にX線ビーム
    が回折する回折位置との間で選択的に切り換え可能であ
    ることを特徴とする光学系切換装置。
  6. 【請求項6】 前記退避位置として、前記チャンネルカ
    ットの二つの反射表面の間をX線ビームが通り抜けるよ
    うな通過位置を選択できることを特徴とする請求項5記
    載の光学系切換装置。
  7. 【請求項7】 前記チャンネルカット結晶は、試料とX
    線検出装置との間に配置されていることを特徴とする請
    求項5または6に記載の光学系切換装置。
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