JP3468488B2 - オフセット印刷用ブランケット - Google Patents

オフセット印刷用ブランケット

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はオフセット印刷用ブラン
ケット、更に詳細にはガラス基板への各種回路パター
ン、LCD用カラーフィルター印刷に使用する精密印刷
に、主に使用するオフセット印刷用ブランケットに関す
る。
【0002】
【従来技術】従来、この種のオフセット印刷用のブラン
ケットは、図5に示すように基本的にインキの受理転移
を行うシリコーンゴム又はシリコーン樹脂製の受理転移
層1とこの下層に設けられた強度および圧縮性を保持す
るための基布層2を有しており、さらにその下部にはブ
ランケットの圧縮性を保持するためのスポンジ層3およ
び基布層を有する構造になっている。
【0003】
【発明が解決する問題点】上述のような印刷用ブランケ
ットにおいては、
【0004】(1)寿命が短い、(2)印刷枚数を重ね
るごとに受理転移性が変化し印刷膜厚が変動する、
(3)パターン形状に乱れが生じる(画素の変形)、
(4)パターンエリアの版に対する印刷エリアの位置精
度の印刷誤差を発生する、等の欠点があった。
【0005】上記の欠点のうち、(3)、(4)の欠点
を解消するために、表面受理転移層と基布層の間に前記
基布よりも圧縮弾性および伸び弾性の大きなフィルムを
介在させて、基布層の伸びを抑制し、圧縮応力を均一化
することによって解決することが見いだされた。
【0006】シリコーン受理転移層が100%の転移性
を示すのはWFBL効果によることで公知である。この
インキ転移の時に受理転移層に付着したインキ、有機金
属ペースト成分中の高沸点溶剤や各種モノマーは極めて
微量ではあるが、受理転移層から下層に拡散することが
知られている。
【0007】しかしながら、フィルムが存在している
と、前述のようなインキなどは受理転移層から下層に拡
散することができずに、受理転移層に留まることにな
る。このようにインキなどが受理転移層に拡散して増加
するほど転移性は悪化し、受理転移層の表面にインキ、
有機金属ペーストが残存する(パイリング現象)ことに
なり、ブランケットとして使用できなくなる欠点があっ
た。
【0008】本発明は上述の点に鑑みなされたものであ
り、パターン形状が乱れず、パターンエリアの版に対す
る印刷エリアの位置精度の印刷誤差のなく、さらにはパ
イリング現象が生じにくい印刷用ブランケットを提供す
ることを目的とする。
【0009】
【問題点を解決するための手段】上記問題点を解決する
ため、本発明によるオフセット印刷用ブランケットは、
シリコーンゴム又はシリコーン樹脂製の受理転移層とそ
の下に設けられた基布層とを有するオフセット印刷用ブ
ランケットにおいて、前記受理転移層とその直下の基布
層の間に微細貫通孔を有するフィルムを設けたことを特
徴とする。
【0010】本発明によれば、基布層と受理転移層間に
フィルムを設けるとともに、前記フィルムに微細貫通孔
を設けたためパターン形状が乱れず、パターンエリアの
版に対する印刷エイリアの位置精度の印刷誤差のなく、
さらにはパイリング現象が生じにくい印刷用ブランケッ
トを提供することが可能になる。
【0011】本発明を更に詳しく説明する。
【0012】本発明においては、図1に示すように基本
的にインキの受理転移を行うシリコーンゴム又はシリコ
ーン樹脂製の受理転移層1とこの下層に設けられた強度
を保持するための基布層2を有しており、さらにその下
部にはブランケットの圧縮性を保持するためのスポンジ
層3および基布層2を有する構造になっている。そして
上述のような考察の結果、前記受理転移層1とその直下
の基布層21間にフィルム4が設けられた構造になって
いる。このフィルム4の下には高速拡散層5が設けられ
ており、この高速拡散層5の下に基布層2を介してスポ
ンジ層3が設けられた構造になっている。
【0013】このフィルム4は前述のように直下の基布
21の伸び、うねりを抑制することによって、画素形状
の乱れ、パターンエリアの位置精度の誤差をなくす作用
を営むものであるが、前述のようにインクなどを表面受
理転移層1に溶剤、インキ樹脂モノマーなどを残存せし
めないように微細貫通孔41が設けられている。
【0014】このような微細貫通孔41の直径は好まし
くは10〜200μmであるのがよい。10μm未満で
あると、下層への溶剤、インキ樹脂モノマーなどの拡散
が不十分である恐れがあり、200μmを越えると、印
刷画素の形状悪化につながる恐れがある。
【0015】また、フィルム単位面積あたり(1c
2)の微細貫通孔は5〜50%であるのがよい。5%
未満であると、拡散が不十分である恐れがあり、一方5
0%を越えると、フィルム自体の引張強度が低下する恐
れがある。
【0016】このようなフィルムは、圧縮応力の均一化
(画素の変形防止)、パターンエリアの位置精度向上の
面からは、圧縮弾性および伸び弾性が大きなファクター
になる。
【0017】すなわち、圧縮弾性は前述の直下の基布2
1より大きければ応力分布の均一化を図ることができ基
本的に、画素の変形を防止できる。このような圧縮弾性
としては、一般に基布の圧縮弾性が0.01〜0.05
kgf・mm-2であることから、0.05〜0.20k
gf・mm-2であるのがよい。0.05kgf・mm-2
未満であると、圧縮応力の均一化を図れない恐れがあ
り、一方0.20kgf・mm-2を越えると、曲げに対
する剛性が高くなり、印刷シリンダーへの装着が困難に
なる。
【0018】また、パターンエリアの位置精度向上には
伸び特性が重要なパラメータとなり、基本的に基布21
よりも高い伸び弾性率であればよい。特に、0.2〜
0.8%モジュラス100〜500kgf・m-1である
ことが望ましい。100kgf・m-1未満であると、位
置精度向上が十分でない恐れがあり、一方500kgf
・m-1を越えると、やはり曲げに対する剛性が高くな
り、印刷シリンダーへの装着が困難になる。
【0019】フィルムの厚さは100〜150μmであ
るのがよい。100μm未満であると、基布のうねりが
カバーできず、150μmを越えると、曲げ剛性が強く
なって印刷機に装着するときに困難を伴う恐れを生じ
る。
【0020】上述のようなフィルムとしては、ポリエス
テルフィルム、PEN、PPS、ポリイミドなどの合成
樹脂フィルムのほか、ステンレス、アルミニウム、銅な
どの金属フィルムを使用することができる。
【0021】本発明においては、前述のフィルムの下に
溶剤、インキ樹脂モノマーなどの高速拡散層を設けるこ
とができる。このような高速拡散層5は表面受理転移層
1から拡散してきた溶剤、インキ樹脂モノマーなどを下
層方向に良好に拡散させるための層であり、好ましくは
0.08mg・cm-2・sec-1以上の拡散性を有して
いることが望ましい。0.08mg・cm-2・sec-1
未満であると受理転移層からの拡散が不十分であり、高
速印刷において転移不良を生じる恐れがある。
【0022】このような高速拡散層としては、高速拡散
層を構成するゴムなどの配合物が受理転移層に、反対に
拡散しないようにシリコーンゴムまたはシリコーン樹脂
であるのが好ましい。このような拡散を生じると、離型
性などを損なう恐れがある。またスポンジ層も同様な理
由でシリコーンゴムまたはシリコーン樹脂であるのがよ
い。
【0023】上述の理由で高速拡散層は、重合度100
0〜10000のシリコーンゴムまたはシリコーン樹脂
であるのがよい。架橋方法は過酸化物架橋、付加架橋、
縮重合のいずれでもよいが、受理転移層が付加架橋のも
のが好ましいために、同様に付加架橋であるのがよい。
このようなシリコーンゴムまたはシリコーン樹脂に対
し、疎水処理を施したシリカを20〜50重量部添加
し、拡散速度を向上せしめる。シリカの量が20重量部
未満であると、前述のような0.08mg・cm-2・s
ec-1以上の拡散性が得られない恐れがあり、一方50
重量部を超えると、物性が低下して印刷性を損なう恐れ
がある。疎水処理をしたシリカは、たとえばモノメチル
トリクロロシランあるいはジメチルジクロロシランなど
で処理したものを使用する。
【0024】一方、受理転移層としては、同様に重合度
1000〜10000のシリコーンゴムまたはシリコー
ン樹脂を用いることができる。この場合には、フィラー
を添加していないものを使用するのが、印刷特性を保持
するうえから好ましい。
【0025】以下本発明の実施例を説明する。
【0026】
【実施例】受理転移層1として重合度2000のフィラ
ーを含まない付加重合型シリコーンゴムを使用し、この
直下に125μの厚さのポリエステルフィルム(東レ
製;商標名ミラーS56)を設けた。このポリエステル
フィルムには平均直径50μmの微細貫通孔が単位面積
あたり30%設けられていた。高速拡散層としては重合
度1000のシリコーンゴムを使用した。このシリコー
ンゴムには50重量部の疎水処理が行なわれたシリカが
添加されており、拡散速度は0.10mg・cm-2・s
ec-1であった。
【0027】上述のフィルムは、図2、図3に示すよう
な圧縮歪みに対する応力(圧縮弾性)、引っ張り歪みに
対する応力(伸び弾性)を示している。図中、A、B、
Cはそれぞれポリエステルフィルム、綿布1、綿布2を
示している。これらの図より明らかなように、本発明に
使用するフィルムは基布層を構成する綿布より大きな圧
縮弾性および伸び弾性率を示すことが明らかになった。
【0028】図4は拡散性を示すための経時的な膨潤率
を示した図であり、図中、■はこの実施例の受理移転
層、▲は高速拡散層の膨潤率を示したものである。な
お、○は比較例として、一般の受理転移層の膨潤率を示
した。膨潤率はサンプルの断面積S、初期重量W0を測
定した後、有機金属ペースト中に主として配合されるジ
エチレングリコールモノブチルエーテルアセテートを湿
潤させた不織布上に前記サンプルを置き、時間経過後の
重量Wtを測定して、単位時間あたりのジエチレングリ
コールモノブチルエーテルアセテートの拡散量を測定す
ることにより行った((Wt−W0)/S/秒)。
【0029】上述のような構造において、印刷試験をし
た結果、従来のものと比較して印刷画素形状も向上し、
1000ショットの印刷においてもパイリング現象は見
られなかった。
【0030】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によるオフ
セット印刷用ブランケットによれば、パイリング現象が
見られず、パターン形状が乱れず、更には、パターンエ
リアの版に対する印刷エイリアの位置精度の印刷誤差が
ないという利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるオフセット印刷用ブランケットの
断面図。
【図2】圧縮歪みによる応力の変化を示した図。
【図3】引っ張り歪みによる応力変化を示した図。
【図4】経時的な膨潤率の測定結果を示した図。
【図5】従来のオフセット印刷用ブランケットの断面
図。
【符号の説明】
1 受理転移層 2 基布層 21 直下の基布層 3 スポンジ層 4 フィルム 41 微細貫通孔 5 接着剤層

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】シリコーンゴム又はシリコーン樹脂製の受
    理転移層とその下に設けられた基布層とを有するオフセ
    ット印刷用ブランケットにおいて、前記受理転移層とそ
    の直下の基布層の間に微細貫通孔を有するフィルムを設
    けたことを特徴とするオフセット印刷用ブランケット。
  2. 【請求項2】前記フィルムの圧縮弾性は、0.05〜
    0.20kgf・mm-2であることを特徴とする請求項
    1記載のオフセット印刷用ブランケット。
  3. 【請求項3】前記フィルムの伸び弾性は、0.2〜0.
    8%モジュラス100〜500kgf・m-1であること
    ことを特徴とする請求項1または2記載のオフセット印
    刷用ブランケット。
  4. 【請求項4】前記フィルムのフィルムの厚さは100〜
    150μmであることことを特徴とする請求項1から3
    記載のいずれかのオフセット印刷用ブランケット。
  5. 【請求項5】前記微細貫通孔のサイズは直径10〜20
    0μm、フィルム単位面積あたりに存在する微細貫通孔
    の面積率は5〜50%であることを特徴とする請求項1
    から4記載のいずれかのオフセット印刷用ブランケッ
    ト。
  6. 【請求項6】前記フィルムはポリエステルフィルム、P
    EN、PPS、ポリイミドフィルム、ステンレスフィル
    ム、アルミニウムフィルム、または、銅フィルムである
    ことを特徴とする請求項1から5記載のいずれかのオフ
    セット印刷用ブランケット。
  7. 【請求項7】前記フィルムの下に少なくとも1層のイン
    キ、インキ樹脂モノマーを速やかに拡散する高速拡散層
    を設けたことを特徴とする請求項1から6記載のいずれ
    かのオフセット印刷用ブランケット。
  8. 【請求項8】前記高速拡散層は0.08mg・cm-2
    sec-1以上の拡散速度を有していることを特徴とする
    請求項7記載のオフセット印刷用ブランケット。
  9. 【請求項9】前記高速拡散層はシリコーンゴムまたはシ
    リコーン樹脂であり、疎水処理を行ったシリカを20〜
    50重量部含むことを特徴とする請求項7または8記載
    のオフセット印刷用ブランケット。
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