JP3466911B2 - 快削性低熱膨張鋳造合金およびその製造方法 - Google Patents
快削性低熱膨張鋳造合金およびその製造方法Info
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- JP3466911B2 JP3466911B2 JP10185498A JP10185498A JP3466911B2 JP 3466911 B2 JP3466911 B2 JP 3466911B2 JP 10185498 A JP10185498 A JP 10185498A JP 10185498 A JP10185498 A JP 10185498A JP 3466911 B2 JP3466911 B2 JP 3466911B2
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、精密機械部品等の
用途に適した快削性低熱膨張鋳造合金およびその製造方
法に関する。本発明の快削性低熱膨張鋳造合金は、
(1)半導体関連機器、(2)計測機器、(3)工作機
械、(4)光学機器、(5)金型等に好適であり、
(1)としては、例えばポリッシングマシンやステッパ
ー等の定盤やアーム、スライシングマシンのロールフレ
ーム、ドライ真空ポンプのローター、実装装置の認識部
アーム、ボンディングマシンのラック、描画装置のブロ
ックやフレーム、シリコンウエハの研削盤のベースやコ
ラム、検査装置のトレイ、その他露光装置のベースやフ
レーム等が挙げられ、(2)としては、例えば直角度測
定機のゲージ、非接触板厚測定器のCフレーム、薄膜厚
さ測定器のスピンドル、橋梁測定器の測定梁、超精密非
球面測定器のフレーム、光ジャイロのボビン、成分分析
装置のミラー台や光源台等が挙げられ、(3)として
は、例えば精密研削機のベース・コラム、センターレス
研磨機のスピンドルや検測機、切断機の刃物台、マシニ
ングセンターのスピンドルヘッド、円筒研削盤のマグネ
ットチャック、非球面加工機のテーブル、プリント基板
穴明け機のモーターケース、ワイヤー放電加工機の下ア
ーム、精密プレス機のコンロッド、ジグボーラーのコラ
ム等、(4)としては、例えば、測量望遠鏡の鏡筒、レ
ーザー発振機のベース、レーザー加工機のベースやフレ
ーム、天体望遠鏡のレンズ支持台、認識装置のハウジン
グ等が挙げられ、(5)としては、例えば、CFRP成
形型やGFRP成形型の金型、プレス成形型の位置決め
治具、プラスチック射出成形型のホットランナー等が挙
げられる。
用途に適した快削性低熱膨張鋳造合金およびその製造方
法に関する。本発明の快削性低熱膨張鋳造合金は、
(1)半導体関連機器、(2)計測機器、(3)工作機
械、(4)光学機器、(5)金型等に好適であり、
(1)としては、例えばポリッシングマシンやステッパ
ー等の定盤やアーム、スライシングマシンのロールフレ
ーム、ドライ真空ポンプのローター、実装装置の認識部
アーム、ボンディングマシンのラック、描画装置のブロ
ックやフレーム、シリコンウエハの研削盤のベースやコ
ラム、検査装置のトレイ、その他露光装置のベースやフ
レーム等が挙げられ、(2)としては、例えば直角度測
定機のゲージ、非接触板厚測定器のCフレーム、薄膜厚
さ測定器のスピンドル、橋梁測定器の測定梁、超精密非
球面測定器のフレーム、光ジャイロのボビン、成分分析
装置のミラー台や光源台等が挙げられ、(3)として
は、例えば精密研削機のベース・コラム、センターレス
研磨機のスピンドルや検測機、切断機の刃物台、マシニ
ングセンターのスピンドルヘッド、円筒研削盤のマグネ
ットチャック、非球面加工機のテーブル、プリント基板
穴明け機のモーターケース、ワイヤー放電加工機の下ア
ーム、精密プレス機のコンロッド、ジグボーラーのコラ
ム等、(4)としては、例えば、測量望遠鏡の鏡筒、レ
ーザー発振機のベース、レーザー加工機のベースやフレ
ーム、天体望遠鏡のレンズ支持台、認識装置のハウジン
グ等が挙げられ、(5)としては、例えば、CFRP成
形型やGFRP成形型の金型、プレス成形型の位置決め
治具、プラスチック射出成形型のホットランナー等が挙
げられる。
【0002】
【従来の技術】従来より、実用的な低熱膨張合金として
インバー(36%Ni−Fe合金)、スーパーインバー
(32%Ni−5%Co−Fe合金)等が知られてお
り、その中でもスーパーインバー合金は室温から100
℃の間の熱膨張係数が0〜1×10-6/℃と著しく低い
ため、精密機械部品等の寸法精度が要求される用途に適
用されている。また、より高温での使用を考慮した42
%Ni−Fe合金やコバール(29%Ni−17Co−
Fe合金)があり、例えばコバールでは室温から450
℃の間の熱膨張係数がインバーやスーパーインバーより
小さい特徴があり、高温での熱変形が小さいことを要求
される用途に適用されている。これら精密機械部品等に
は、製品形状に近い鋳型内で鋳造して形成される鋳造合
金が用いられ、鋳造合金によって製造された半製品を切
削加工して最終形状に仕上げている。
インバー(36%Ni−Fe合金)、スーパーインバー
(32%Ni−5%Co−Fe合金)等が知られてお
り、その中でもスーパーインバー合金は室温から100
℃の間の熱膨張係数が0〜1×10-6/℃と著しく低い
ため、精密機械部品等の寸法精度が要求される用途に適
用されている。また、より高温での使用を考慮した42
%Ni−Fe合金やコバール(29%Ni−17Co−
Fe合金)があり、例えばコバールでは室温から450
℃の間の熱膨張係数がインバーやスーパーインバーより
小さい特徴があり、高温での熱変形が小さいことを要求
される用途に適用されている。これら精密機械部品等に
は、製品形状に近い鋳型内で鋳造して形成される鋳造合
金が用いられ、鋳造合金によって製造された半製品を切
削加工して最終形状に仕上げている。
【0003】しかしながら、これらの低熱膨張合金は、
被削性が低く、素材を所望の形状に仕上げるために通常
行われている切削加工に多大の費用を要するため、これ
らの利用範囲が制限されている。
被削性が低く、素材を所望の形状に仕上げるために通常
行われている切削加工に多大の費用を要するため、これ
らの利用範囲が制限されている。
【0004】一方、特開平3−90541号公報に見ら
れるように、組織中にグラファイトを分布させた材料
は、インバーやスーパーインバー等に匹敵する低熱膨張
性を有し、しかも被削性が大幅に改善されている。しか
しながら、最近、短納期、低コストを実現するため、な
お一層の被削性の改善が要望されている。
れるように、組織中にグラファイトを分布させた材料
は、インバーやスーパーインバー等に匹敵する低熱膨張
性を有し、しかも被削性が大幅に改善されている。しか
しながら、最近、短納期、低コストを実現するため、な
お一層の被削性の改善が要望されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明はかかる事情に
鑑みてなされたものであって、切削加工に多大の費用を
要することがない、快削性低熱膨張鋳造合金およびその
製造方法を提供することを目的とする。
鑑みてなされたものであって、切削加工に多大の費用を
要することがない、快削性低熱膨張鋳造合金およびその
製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記課題を
解決すべく鋭意検討を重ねた結果、上記特開平3−90
541号公報に開示された合金組成を基本として、Sお
よび/またはSeとMn、Caとを一定の範囲で添加す
ることにより、低熱膨張性を満足しつつ切削性が高い鋳
造合金が得られることを見出した。また、このような合
金を700〜900℃から水冷することにより熱膨張係
数がさらに低下することを見出した。
解決すべく鋭意検討を重ねた結果、上記特開平3−90
541号公報に開示された合金組成を基本として、Sお
よび/またはSeとMn、Caとを一定の範囲で添加す
ることにより、低熱膨張性を満足しつつ切削性が高い鋳
造合金が得られることを見出した。また、このような合
金を700〜900℃から水冷することにより熱膨張係
数がさらに低下することを見出した。
【0007】本発明は、このような知見に基づいてなさ
れたものであり、質量%にて、C:0.5〜1.5%、
Si:1%以下、Ni:25〜43.5%、Co:20
%以下の範囲で含有する低熱膨張鋳造合金において、さ
らに、SおよびSeのうち1種または2種を0.04%
≦S+0.4Se≦0.12%の範囲で含有し、Mnを
1≧Mn≧2.3(S+0.4Se)+0.2の範囲で
含有し、かつ、34.5%≦Ni+0.8Co≦43.
5%を満たし、残部実質的にFeからなることを特徴と
する、快削性低熱膨張鋳造合金を提供するものである。
れたものであり、質量%にて、C:0.5〜1.5%、
Si:1%以下、Ni:25〜43.5%、Co:20
%以下の範囲で含有する低熱膨張鋳造合金において、さ
らに、SおよびSeのうち1種または2種を0.04%
≦S+0.4Se≦0.12%の範囲で含有し、Mnを
1≧Mn≧2.3(S+0.4Se)+0.2の範囲で
含有し、かつ、34.5%≦Ni+0.8Co≦43.
5%を満たし、残部実質的にFeからなることを特徴と
する、快削性低熱膨張鋳造合金を提供するものである。
【0008】また、本発明は、質量%にて、C:0.5
〜1.5%、Si:1%以下、Mn:1%以下、Ni:
25〜43.5%、Co:20%以下の範囲で含有し、
さらに、SおよびSeのうち1種または2種を0.04
%≦S+0.4Se≦0.12%の範囲で含有し、Ca
をCa≧3.8(S+0.4Se)の範囲で添加し、か
つ、34.5%≦Ni+0.8Co≦43.5%を満た
し、残部実質的にFeからなることを特徴とする、快削
性低熱膨張鋳造合金を提供するものである。
〜1.5%、Si:1%以下、Mn:1%以下、Ni:
25〜43.5%、Co:20%以下の範囲で含有し、
さらに、SおよびSeのうち1種または2種を0.04
%≦S+0.4Se≦0.12%の範囲で含有し、Ca
をCa≧3.8(S+0.4Se)の範囲で添加し、か
つ、34.5%≦Ni+0.8Co≦43.5%を満た
し、残部実質的にFeからなることを特徴とする、快削
性低熱膨張鋳造合金を提供するものである。
【0009】さらにまた、本発明は、上記いずれかの組
成を有する素材を、700℃以上900℃以下の温度か
ら水冷することを特徴とする、快削性低熱膨張鋳造合金
の製造方法を提供するものである。
成を有する素材を、700℃以上900℃以下の温度か
ら水冷することを特徴とする、快削性低熱膨張鋳造合金
の製造方法を提供するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明について具体的に説
明する。本発明の合金の基本組成は、質量%にて、C:
0.5〜1.5%、Si:1%以下、Ni:25〜4
3.5%、Co:20%以下、34.5%≦Ni+0.
8Co≦43.5%であり、かつSおよびSeのうち1
種または2種を0.04%≦S+0.4Se≦0.12
%、Mnを1≧Mn≧2.3(S+0.4Se)+0.
2であるか、またはC:0.5〜1.5%、Si:1%
以下、Mn:1%以下、Ni:25〜43.5%、C
o:20%以下、34.5%≦Ni+0.8Co≦4
3.5%であり、かつSおよびSeのうち1種または2
種を0.04%≦S+0.4Se≦0.12%、Ca≧
3.8(S+0.4Se)であり、残部実質的にFeで
ある。
明する。本発明の合金の基本組成は、質量%にて、C:
0.5〜1.5%、Si:1%以下、Ni:25〜4
3.5%、Co:20%以下、34.5%≦Ni+0.
8Co≦43.5%であり、かつSおよびSeのうち1
種または2種を0.04%≦S+0.4Se≦0.12
%、Mnを1≧Mn≧2.3(S+0.4Se)+0.
2であるか、またはC:0.5〜1.5%、Si:1%
以下、Mn:1%以下、Ni:25〜43.5%、C
o:20%以下、34.5%≦Ni+0.8Co≦4
3.5%であり、かつSおよびSeのうち1種または2
種を0.04%≦S+0.4Se≦0.12%、Ca≧
3.8(S+0.4Se)であり、残部実質的にFeで
ある。
【0011】C:0.5〜1.5%
Cはオーステナイト基地中に固溶すると熱膨張係数の著
しい増大を招くが、黒鉛として析出させることにより、
黒鉛を含まない鋳鋼に比べて切削性、鋳造性を改善する
ことができる。しかし、C量が0.5%未満では黒鉛量
が少なく、切削性の改善効果が見られず、また溶解温度
の上昇により鋳造性が低下する。一方、1.5%を超え
ると所望の低熱膨張性が得られなくなる。したがって、
C含有量を0.5〜1.5%の範囲とする。
しい増大を招くが、黒鉛として析出させることにより、
黒鉛を含まない鋳鋼に比べて切削性、鋳造性を改善する
ことができる。しかし、C量が0.5%未満では黒鉛量
が少なく、切削性の改善効果が見られず、また溶解温度
の上昇により鋳造性が低下する。一方、1.5%を超え
ると所望の低熱膨張性が得られなくなる。したがって、
C含有量を0.5〜1.5%の範囲とする。
【0012】Si:1%以下
Siは脱酸剤として添加される元素であるが、1%を超
えると熱膨張係数の増加の影響が大きい。したがって、
Si量を1%以下とする。ただし、鋳造性を良好にする
観点からは、0.5%以上含有していることが好まし
い。
えると熱膨張係数の増加の影響が大きい。したがって、
Si量を1%以下とする。ただし、鋳造性を良好にする
観点からは、0.5%以上含有していることが好まし
い。
【0013】Mn:1%以下
脱酸のためおよびSを固定して加工性を向上させるため
に有効な元素であるが、1%を超えると熱膨張係数が増
大する。したがって、Mn量を1%以下とする。
に有効な元素であるが、1%を超えると熱膨張係数が増
大する。したがって、Mn量を1%以下とする。
【0014】Ni:25〜43.5%
Niは、以下のCoとともに熱膨張の低下に必要な元素
である。Ni量が25%未満ではCo量を調節しても所
望の低熱膨張性が得られず、43.5%を超える場合に
も低熱膨張性が得られないので、Ni量を25〜43.
5%の範囲とする。
である。Ni量が25%未満ではCo量を調節しても所
望の低熱膨張性が得られず、43.5%を超える場合に
も低熱膨張性が得られないので、Ni量を25〜43.
5%の範囲とする。
【0015】Co:20%以下
Coは、上述のNiとの組合せにより熱膨張係数の低下
を実現するために添加する元素であるが、20%超では
熱膨張係数が高くなるため、20%以下とする。
を実現するために添加する元素であるが、20%超では
熱膨張係数が高くなるため、20%以下とする。
【0016】
34.5%≦Ni+0.8Co≦43.5%
Ni+0.8CoはNi当量であり、NiおよびCoが
上記範囲を満足しても、Ni当量が34.5%未満およ
び43.5%超の場合には低い熱膨張係数が得られな
い。したがって、Ni当量を34.5〜43.5%の範
囲とする。
上記範囲を満足しても、Ni当量が34.5%未満およ
び43.5%超の場合には低い熱膨張係数が得られな
い。したがって、Ni当量を34.5〜43.5%の範
囲とする。
【0017】なお、これらNi、Co、Ni当量は、低
熱膨張が要求される温度範囲に応じて好ましい範囲が異
なる。すなわち、20〜150℃の範囲での熱膨張係数
を4×10-6/℃以下とするためには、Ni:27〜3
7.5%、Co:11%以下、Ni当量:34.5〜3
7.5%が好ましい。また、20〜300℃の範囲での
熱膨張係数を6×10-6/℃以下とするためには、N
i:26〜40.5%、Co:17%以下、Ni当量:
37.5〜40.5%が好ましい。さらに、20〜45
0℃の範囲での熱膨張係数を8×10-6/℃以下とする
ためには、Ni:25〜43.5%、Co:20%以
下、Ni当量:40.5〜43.5%が好ましい。
熱膨張が要求される温度範囲に応じて好ましい範囲が異
なる。すなわち、20〜150℃の範囲での熱膨張係数
を4×10-6/℃以下とするためには、Ni:27〜3
7.5%、Co:11%以下、Ni当量:34.5〜3
7.5%が好ましい。また、20〜300℃の範囲での
熱膨張係数を6×10-6/℃以下とするためには、N
i:26〜40.5%、Co:17%以下、Ni当量:
37.5〜40.5%が好ましい。さらに、20〜45
0℃の範囲での熱膨張係数を8×10-6/℃以下とする
ためには、Ni:25〜43.5%、Co:20%以
下、Ni当量:40.5〜43.5%が好ましい。
【0018】本発明では、以上に加えて、さらにSおよ
びSeのうち1種または2種を0.04%≦S+0.4
Se≦0.12%の範囲で含有し、Mnを1≧Mn≧
2.3(S+0.4Se)+0.2の範囲で含有する
か、または、SおよびSeのうち1種または2種を0.
04%≦S+0.4Se≦0.12%の範囲で含有し、
かつCaをCa≧3.8(S+0.4Se)の範囲で添
加する。
びSeのうち1種または2種を0.04%≦S+0.4
Se≦0.12%の範囲で含有し、Mnを1≧Mn≧
2.3(S+0.4Se)+0.2の範囲で含有する
か、または、SおよびSeのうち1種または2種を0.
04%≦S+0.4Se≦0.12%の範囲で含有し、
かつCaをCa≧3.8(S+0.4Se)の範囲で添
加する。
【0019】SおよびSeは、サルファイドおよびセレ
ナイドを形成し、切削抵抗を減少させ、かつ工具寿命を
延長させて被削性の向上に寄与する元素であり、上記黒
鉛成分との相乗効果により極めて良好な被削性をえるも
のである。S+0.4Seの値が0.04%よりも少な
ければ被削性向上効果が得られず、また0.12%を超
えると後述のMnまたはCaの併用によっても延性が回
復しない。したがって、S+0.4Seの値を0.04
〜0.12%の範囲とする。
ナイドを形成し、切削抵抗を減少させ、かつ工具寿命を
延長させて被削性の向上に寄与する元素であり、上記黒
鉛成分との相乗効果により極めて良好な被削性をえるも
のである。S+0.4Seの値が0.04%よりも少な
ければ被削性向上効果が得られず、また0.12%を超
えると後述のMnまたはCaの併用によっても延性が回
復しない。したがって、S+0.4Seの値を0.04
〜0.12%の範囲とする。
【0020】MnまたはCaは、SおよびSeと結びつ
いてサルファイドおよびセレナイドの形態を改善し、延
性の低下を抑える作用があり、被削性向上に必要なSお
よびSeを含有させることができる。その効果を発揮す
るためには、S+0.4Seとの関係で規定する必要が
あり、Mnは2.3(S+0.4Se)+0.2以上、
Caは3.8(S+0.4Se)以上であることが必要
である。
いてサルファイドおよびセレナイドの形態を改善し、延
性の低下を抑える作用があり、被削性向上に必要なSお
よびSeを含有させることができる。その効果を発揮す
るためには、S+0.4Seとの関係で規定する必要が
あり、Mnは2.3(S+0.4Se)+0.2以上、
Caは3.8(S+0.4Se)以上であることが必要
である。
【0021】本発明の合金は、鋳型に鋳込んで製造する
鋳造合金を対象とするが、その製造条件に関しては、特
に限定されるものではない。
鋳造合金を対象とするが、その製造条件に関しては、特
に限定されるものではない。
【0022】ただし、本発明においては、所定の形状に
製造した素材を、700〜900℃の範囲の温度から急
冷することが好ましい。これにより、NiやCoのミク
ロ偏析が緩和され、熱膨張係数を一層低下させることが
できる。なお、急冷の方法は水冷が好ましいが、空冷ま
たは油冷であってもよい。
製造した素材を、700〜900℃の範囲の温度から急
冷することが好ましい。これにより、NiやCoのミク
ロ偏析が緩和され、熱膨張係数を一層低下させることが
できる。なお、急冷の方法は水冷が好ましいが、空冷ま
たは油冷であってもよい。
【0023】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。高
周波誘導溶解炉により、表1、表2に示す化学組成の合
金を溶解、鋳造し、φ35mm×L220mmの丸棒、
およびφ100mm×L400mmの丸棒を得た。な
お、表1中、No.1〜28は本発明材で、No.1〜
9が低温用、No.10〜18が中温用、No.19〜
28が高温用である。また、表2中、No.29〜35
は低温用合金の比較材、No.38〜44は中温用合金
の比較材、No.47〜53は高温用合金の比較材、N
o.56〜59はNi、Co、Ni当量のいずれかが外
れる比較材である。さらに表2のNo.36,37は低
温用合金の従来材、No.45,46は中温用合金の従
来材、No.54,55は高温用合金の従来材である。
周波誘導溶解炉により、表1、表2に示す化学組成の合
金を溶解、鋳造し、φ35mm×L220mmの丸棒、
およびφ100mm×L400mmの丸棒を得た。な
お、表1中、No.1〜28は本発明材で、No.1〜
9が低温用、No.10〜18が中温用、No.19〜
28が高温用である。また、表2中、No.29〜35
は低温用合金の比較材、No.38〜44は中温用合金
の比較材、No.47〜53は高温用合金の比較材、N
o.56〜59はNi、Co、Ni当量のいずれかが外
れる比較材である。さらに表2のNo.36,37は低
温用合金の従来材、No.45,46は中温用合金の従
来材、No.54,55は高温用合金の従来材である。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】上記φ35mm×L220mmの丸棒を用
いて熱膨張係数を測定した。熱膨張係数は、低温用合金
では20〜150℃、中温用合金では20〜300℃、
高温用合金では20〜450℃の範囲で測定した。ま
た、φ100mm×L400mmを用いて被削性を評価
した。被削性は、低温用ではNo.36、中温用ではN
o.45、高温用ではNo.54の工具寿命をそれぞれ
1とした工具寿命比と、切削抵抗とで評価した。これら
の結果を表3、表4に示す。なお、これら被削性の試験
は、切削工具として超硬工具用い、切削速度を100m
/分、切り込み2.0mm、送り0.2mm/rev.
の条件で旋盤加工により行った。
いて熱膨張係数を測定した。熱膨張係数は、低温用合金
では20〜150℃、中温用合金では20〜300℃、
高温用合金では20〜450℃の範囲で測定した。ま
た、φ100mm×L400mmを用いて被削性を評価
した。被削性は、低温用ではNo.36、中温用ではN
o.45、高温用ではNo.54の工具寿命をそれぞれ
1とした工具寿命比と、切削抵抗とで評価した。これら
の結果を表3、表4に示す。なお、これら被削性の試験
は、切削工具として超硬工具用い、切削速度を100m
/分、切り込み2.0mm、送り0.2mm/rev.
の条件で旋盤加工により行った。
【0027】
【表3】
【0028】
【表4】
【0029】表3に示すように、本発明例では所望の低
熱膨張性を維持しつつ、従来材よりも良好な切削性が得
られることが確認された。
熱膨張性を維持しつつ、従来材よりも良好な切削性が得
られることが確認された。
【0030】これに対して、表4に示すように、Ni、
Co量またはNi当量が本発明の範囲から外れる比較例
のNo.56〜59は、いずれの温度でも熱膨張係数が
大きく低熱膨張材としては不適当であった。また、C量
が少ないNo.29,38,47は被削性が悪かった。
C、Si、Mn量が多いNo.30〜32,39〜4
1,48〜50は熱膨張係数が大きい値を示した。さら
に、S+0.4Seが少ないNo.33,42,51
は、被削性が悪く、S+0.4Seが多かったり、S+
0.4Seに対してMnが少ないNo.34,35,4
3,44,52,53は伸びが低かった。
Co量またはNi当量が本発明の範囲から外れる比較例
のNo.56〜59は、いずれの温度でも熱膨張係数が
大きく低熱膨張材としては不適当であった。また、C量
が少ないNo.29,38,47は被削性が悪かった。
C、Si、Mn量が多いNo.30〜32,39〜4
1,48〜50は熱膨張係数が大きい値を示した。さら
に、S+0.4Seが少ないNo.33,42,51
は、被削性が悪く、S+0.4Seが多かったり、S+
0.4Seに対してMnが少ないNo.34,35,4
3,44,52,53は伸びが低かった。
【0031】次に、上記No.1,2,10,11,1
9,20の組成のφ35mm×L220mm丸棒サンプ
ルを用いて、鋳造まま、および850℃から水冷した状
態の熱膨張係数を測定した。低温用のNo.1,2は2
0〜150℃、中温用のNo.10,11は20〜30
0℃、高温用のNo.19,20は20〜450℃で測
定した。その結果を表5に示す。
9,20の組成のφ35mm×L220mm丸棒サンプ
ルを用いて、鋳造まま、および850℃から水冷した状
態の熱膨張係数を測定した。低温用のNo.1,2は2
0〜150℃、中温用のNo.10,11は20〜30
0℃、高温用のNo.19,20は20〜450℃で測
定した。その結果を表5に示す。
【0032】
【表5】
【0033】表5に示すように、水冷することにより、
鋳造ままよりも熱膨張係数がさらに低下することが確認
された。
鋳造ままよりも熱膨張係数がさらに低下することが確認
された。
【0034】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
快削性を有する低熱膨張鋳造合金を得ることができる。
したがって、切削加工に多大の費用を要することがな
い。
快削性を有する低熱膨張鋳造合金を得ることができる。
したがって、切削加工に多大の費用を要することがな
い。
Claims (3)
- 【請求項1】 質量%にて、 C:0.5〜1.5%、 Si:1%以下、 Ni:25〜43.5%、 Co:20%以下の範囲で含有する低熱膨張鋳造合金に
おいて、 さらに、SおよびSeのうち1種または2種を0.04
%≦S+0.4Se≦0.12%の範囲で含有し、 Mnを1≧Mn≧2.3(S+0.4Se)+0.2の
範囲で含有し、 かつ、34.5%≦Ni+0.8Co≦43.5%を満
たし、 残部実質的にFeからなることを特徴とする、快削性低
熱膨張鋳造合金。 - 【請求項2】 質量%にて、 C:0.5〜1.5%、 Si:1%以下、 Mn:1%以下、 Ni:25〜43.5%、 Co:20%以下の範囲で含有し、 さらに、SおよびSeのうち1種または2種を0.04
%≦S+0.4Se≦0.12%の範囲で含有し、 CaをCa≧3.8(S+0.4Se)の範囲で添加
し、 かつ、34.5%≦Ni+0.8Co≦43.5%を満
たし、 残部実質的にFeからなることを特徴とする、快削性低
熱膨張鋳造合金。 - 【請求項3】 請求項1または請求項2に記載の組成を
有する素材を、700℃以上900℃以下の温度から水
冷することを特徴とする、快削性低熱膨張鋳造合金の製
造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10185498A JP3466911B2 (ja) | 1998-03-31 | 1998-03-31 | 快削性低熱膨張鋳造合金およびその製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP10185498A JP3466911B2 (ja) | 1998-03-31 | 1998-03-31 | 快削性低熱膨張鋳造合金およびその製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH11286751A JPH11286751A (ja) | 1999-10-19 |
JP3466911B2 true JP3466911B2 (ja) | 2003-11-17 |
Family
ID=14311629
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP10185498A Expired - Fee Related JP3466911B2 (ja) | 1998-03-31 | 1998-03-31 | 快削性低熱膨張鋳造合金およびその製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3466911B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US20030118468A1 (en) * | 2001-07-26 | 2003-06-26 | Lin Li | Free-machining Fe-Ni-Co alloy |
-
1998
- 1998-03-31 JP JP10185498A patent/JP3466911B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH11286751A (ja) | 1999-10-19 |
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