JP3465766B2 - レーザー感熱記録用インキ組成物 - Google Patents

レーザー感熱記録用インキ組成物

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JP3465766B2
JP3465766B2 JP18095195A JP18095195A JP3465766B2 JP 3465766 B2 JP3465766 B2 JP 3465766B2 JP 18095195 A JP18095195 A JP 18095195A JP 18095195 A JP18095195 A JP 18095195A JP 3465766 B2 JP3465766 B2 JP 3465766B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、レーザー光の加熱によ
り鮮明な印刷記録を行うことができるレーザー感熱記録
体用インキ組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】現在、支持体上に電子供与性の無色染料
前駆体と電子受容性の顕色剤を主成分とする感熱発色層
を設けた感熱記録材料を、サーマルヘッドを備えたプリ
ンター上を密着走査させ、熱エネルギーを感熱発色層に
直接または保護層を介して引加することにより発色画像
を記録する感熱記録手段は広く普及しており、例えばフ
ァクシミリ、プリペイドカード、プリンター等に実用さ
れている。
【0003】上記の感熱記録方式は、装置構造が比較的
簡単で保守が容易であり、騒音の発生が少ないという利
点はあるが、記録体をサーマルヘッド上に直接接触させ
て走査させるため、サーマルヘッドが磨耗したり、サー
マルヘッド表面へ感熱記録材料のカスが付着する現象が
発生し易い。このため、記録画像が正しく得られないケ
ースばかりでなく、サーマルヘッドに高熱が発生して破
壊されるといった問題が起こる欠点がある。そのうえ、
サーマルヘッドの構造上から発熱素子の加熱冷却の高速
制御や発熱素子密度を大きくする上で制約があり、高速
記録や高密度、高画質記録には限界がある。
【0004】このような接触記録方式に対して、インク
粒子の飛行を圧力や電場により制御しながら非接触状態
で記録するインクジェット方式も開発され上市されてい
る。この方式は、高速記録には適した記録方式である
が、高速性を重視するためにインキ乾燥性を高めると、
微小径ノズル部にインキの乾燥物による目詰まり現象が
生じ易い。したがって、高密度、高画質記録に限度があ
り、ひいては作業時のメンテナンスに多大の労力を課さ
ねばならない構造的な欠点がある。
【0005】上記のサーマルヘッドを用いる接触型感熱
記録方式や、非接触ではあるがノズルの目詰まりを生じ
やすいインクジェット方式に代わる記録方式として、レ
ーザーヒートモードを用いて支持体に対し非接触でかつ
高速、高密度で熱記録を行うレーザー感熱記録手段が開
発され、これまで多くの提案がなされている(特開昭50
−23617 号公報、特開昭54−121140号公報、特開昭58−
56890 号公報、特開昭58−94494 号公報、特開昭58−13
4791号公報、特開昭58−145493号公報、特開昭59−8919
2 号公報、特開昭60−205182号公報、特開昭62−56195
号公報等)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従来の感熱記録用イン
キは、一般に一種以上の塩基性染料前駆体、顕色剤、増
感剤を含有し、バインダーとしてポリビニルアルコール
等の水溶性樹脂やスチレンブタジエン共重合体エマルジ
ョンなどに分散して塗液が調製されている。この種のイ
ンキが水系の塗液として調製される理由は、アルコール
系、エステル系、ケトン系などの極性有機溶剤中に塩基
性染料前駆体と顕色剤を共存させると、成分系の溶解性
が高い関係で瞬時に反応して発色してしまうからであ
る。これに対し、非極性の芳香族系溶剤や脂肪族系有機
溶剤などのいわゆる弱溶剤を用いた場合には、成分の溶
解性が低いために塗液中に塩基性染料前駆体と顕色剤を
共存させても反応が進行せず、発色しない感熱発色イン
キを得ることができる(特公昭62−16986 号公報)。
【0007】しかしながら、印刷塗膜がレーザー加熱に
より容易に軟化もしくは分解するような有機高分子化合
物で構成されていると、レーザーのエネルギーに対する
塗膜の耐熱性が低いため、印字部が溶融して文字の中央
部が欠落する中抜け現象が発生する。この中抜け現象を
防止する対策としては、耐熱性を高める成分として例え
ば無定型微粉シリカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、ク
レー、タルクなどの白色系無機化合物を併用することが
行われているが、中抜け現象を完全に防止するためには
添加する無機化合物の量を極限まで高くしない限り十分
な効果を期待することができない。ところが、無機化合
物の添加量を高めると相対的にバインダー量が減少して
支持体面への塗膜の結着性が低下する。このため、見か
けの耐熱性は向上するものの、充填する無機化合物の粒
子間には化学的結合は介在せず、また粒子間の凝集力も
弱くなって、レーザー印字段階における照射部の粒子剥
落が防止できなくなる。したがって、中抜け現象は改善
されず、基材への密着性も劣るようになる。
【0008】本発明者らは、このような従来技術の問題
点を解消するため、レーザーの熱エネルギーで容易に溶
融せず、かつ熱による中抜け現象が生じない高い塗膜の
凝集力を与えるレーザー感熱記録用インキの成分組成に
つき鋭意研究を重ねた結果、溶剤型グラビア印刷インキ
を構成する発色剤が二分子以上の塩基性染料前駆体の会
合体であり、バインダーがシリカ系またはアルミナ系の
無機質結合剤である成分系を選択すると前記の課題に対
し優れた改善効果が発現することを確認した。
【0009】本発明は前記の知見に基づいて完成された
もので、その目的とするところは、レーザー印字時に印
刷面の中抜け現象を起こすことなく、常に高濃度の鮮明
な印刷記録を現出することができるレーザー感熱記録用
インキ組成物を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明によるレーザー感熱記録用インキ組成物は、
非吸収性の支持体にレーザーヒートモードを利用して高
速印刷する溶剤型グラビア印刷インキにおいて、発色剤
が二分子以上の塩基性染料前駆体の会合体、バインダー
がシリカ系またはアルミナ系の無機質結合剤であり、顕
色剤およびレーザー増感剤を含有することを構成上の特
徴とする。
【0011】本発明のインキ組成は、発色剤として二分
子以上の塩基性染料前駆体の会合体が選択的に用いられ
る。二分子以上の塩基性染料前駆体の会合体を発色剤と
する理由は、バインダーとして用いるシリカ系またはア
ルミナ系の無機質結合剤と共用する際の発色現象を抑止
するためである。例えば、従来用いられているフタリド
系染料前駆体、フルオラン系染料前駆体、スピロピラン
系染料前駆体、ラクタム系染料前駆体等とシリカ系また
はアルミナ系バインダーを組合せ、顕色剤とともに有機
溶剤中に溶解分散すると瞬時に発色が生じ、印刷後に乾
燥したものは全く記録体として使用することができな
い。また、顕色剤がなくても、酸性を呈しているシリカ
系バインダーは前記の染料前駆体と反応して発色してし
まうため、従来の染料前駆体は使用が不可能となる。
【0012】塩基性染料前駆体を二分子以上会合させた
会合型塩基性染料前駆体は、溶剤に溶解しないため、顕
色剤を同時に有機溶剤中に分散させても、また酸性を呈
するシリカ系バインダーを共用しても全く発色すること
がない。したがって、印刷後の低温乾燥後も十分な白色
を呈する塗膜を形成することができ、また印刷物に炭酸
ガスレーザーを照射すると、印字部に中抜け現象がない
極めてシャープな印刷記録を発現することができる。
【0013】二分子以上の塩基性染料前駆体が会合した
発色剤としては、下記の化2で示される一般式を有する
2,2−ビス{4−〔6′−(N−シクロヘキシル−N
−メチルアミノ)−3′−メチルスピロ [フタリド−
3,9′−キサンテン] −2′−イルアミノ〕フェニ
ル}プロパンからなるロイコ染料が本発明の目的に好適
に使用される。
【0014】
【化2】
【0015】本発明の印刷インキに用いられるシリカ系
の無機質結合剤としては、オルガノシリカゾル(粒径;
10〜100nm 、pH;2〜6、溶剤系;メタノール、IP
A、MEK、エチレングリコールモノプロピルエーテ
ル、メチルイソブチルケトンのうち1種) またはコロイ
ダルシリカ(粒径;7〜90nm、pH;9〜11) 等の無水
珪酸ゾルが好ましく、またアルミナ系の無機質結合剤と
してはアルミナゾル(粒径;5〜200nm 、pH;2〜
6)が好適に用いられる。これらのバインダーは1種も
しくは2種以上を混合して使用することができ、組成成
分に対し10〜80重量部、好ましくは20〜50重量
部の範囲で配合される。
【0016】これらのシリカゾルやアルミナゾルのう
ち、水分散系のゾルを使用する場合には、インキ調製時
に水可溶のアルコールやケトン系の溶剤を用いて組成中
の水分含有率を20%以下、好ましくは10%以下に調
整することにより乾燥性の高い塗液を作製することが可
能となる。また、有機溶剤中に分散したオルガノシリカ
ゾルを用いると水分を全く含まない、きわめて乾燥性の
高いグラビアインキを調製することができる。したがっ
て、例えばポリ塩化ビニルシート、ポリエステルフィル
ム、ポリプロピレンフィルムまた樹脂塗工紙や蒸着紙な
ど非吸収性の支持体に対し、低温乾燥でかつ高速で印刷
することができる。
【0017】しかし、表面の濡れ張力が低い材質の支持
体にあっては密着性が悪い状態が発生することがある。
この場合には、塗膜中の5%以下、好ましくは2%以下
に相当する範囲で有機系バインダーを併用することが好
ましい。併用し得る有機系バインダーは支持体の材質に
よって適宜に選択でき、例えばセルロース樹脂系、ポリ
ウレタン樹脂系、ポリビニルブチラール樹脂系、ポリビ
ニルピロリドン樹脂系、塩素化オレフィン樹脂系、アク
リル樹脂系、アルキッド樹脂系、ポリアミド樹脂系、レ
ゾールフェノール樹脂系、ノボラックフェノール樹脂
系、酢酸ビニル樹脂系、メラミン樹脂系、ロジン、セラ
ック、ダンマー樹脂系などの樹脂成分の1種ものくは2
種以上を組み合わせて用いることができる。
【0018】本発明において、会合型塩基性染料前駆体
とともに使用する顕色剤は融点付近で溶解し、反応を進
行させるために機能する成分となる。したがって、顕色
剤の融点は発色開始温度と深い係わりがあり、低温発色
させたい場合は融点の低い顕色剤が、高温発色させたい
場合は高融点の顕色剤が適宜に使い分けられる。使用可
能な顕色剤を融点範囲ごとに挙げると以下のようにな
る。
【0019】融点90〜100℃の顕色剤としては、
4,4′(1−メチルヘキシリデン)ビスフェノール、
4,4′−プロピリデンビス(2−メチルフェノール)
、4,4′−ヘプチリデンビス(2−メチルフェノー
ル) 、2,2′−ビス(4−t−ブチルフェノール) ス
ルフィド、1,5′−(4−ヒドロキシフェニルチオ)
−3−オキサペンタン、2−フェニルハイドロキノン、
2−(2−クロロフェニル) ハイドロキノン、2−(3
−フェニルプロピル) ハイドロキノン、p−ハイドロオ
キシ安息香酸イソプロピルエステル、2−ヒドロキシイ
ソフタル酸ジフェニルエステル、4−ヒドロキシイソフ
タル酸ジメチルエステル、ジ(o−ジクロロベンジル)
アジペート等が挙げられる。
【0020】融点100〜110℃の顕色剤としては、
4,4′−エチリデンビス(2−メチルフェノール) 、
2,2′ビス(4−t−アミルフェノール) スルフィ
ド、2−(1−メチル−1−フェニルエチル) ハイドロ
キノン、2−ベンジルハイドロキノン、p−ハイドロオ
キシ安息香酸ベンジルエステル、5−ヒドロキシフタル
酸ジエチルエステル、4−ヒドロキシフタル酸ジメチル
エステル、4,4′メチレンビス(2−t−ブチル−6
−メチルフェノール) 、ビス(3−i−プロピル−4−
ヒドロキシフェニル) スルフィド等が挙げられる。
【0021】融点110〜120℃の顕色剤としては、
2,2′−ビス(3−t−ブチル−4−ヒドロキシフェ
ニル) プロパン、2,2′−ビス(4−t−アミルフェ
ノール) スルホン、2−(2−フェニルエチル) ハイド
ロキノン、p−ハイドロオキシ安息香酸−m−メチルベ
ンジルエステル、2,2′−メチレンビス(4−メチル
−6−t−ブチルフェノール) 、2,2′−メチレンビ
ス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール) 、p
−ハイドロオキシ安息香酸(3−メチルベンジル) エス
テル、2−ヒドロキシイソフタル酸ジエチルエステル、
4−ヒドソキシ−3−メチル−5−ブロモベンゼンスル
ホン酸エチル、フェニル酢酸−4−ヒドロキシフェニル
チオールエステル、6−(1−メチルエチル)−2−ナ
フタレノール、α、α' −(3−メチル−4−ヒドロキ
シフェニル)−m−ジイトプロピルベンゼン、ビス(3
−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル) スルフィ
ド等が挙げられる。
【0022】融点120〜130℃の顕色剤としては、
2,2′−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチル
フェノール) 、4,4′−(1−メチルプロピリデン)
ビスフェノール、4,4′−i−ペンチリデンビス(2
−メチルフェノール) 、2,2′−ビス(4−t−アミ
ルフェノール) スルホキシド、p−ハイドロオキシ安息
香酸メチルエステル、4−ヒドロキシ−4′−イソプロ
ポキシジフェニルスルホン、2,5−ビス(1,1−ジ
メチルブチル) ハイドロキノン、2,4−ビス(1−メ
チル−1−フェニルエチル) フェノール、3−メチル−
4,6− (α、α−ジメチルベンジル) フェノール、4
−メチル−2,6−(α、α- ジメチルベンジル) フェ
ノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメ
チロールフェノール) プロパン等が挙げられる。
【0023】融点130〜140℃の顕色剤としては、
4,4−ブチリデンビス(2−メチルフェノール) 、
2,2′−ビス(4−t−ブチルフェノール) スルホ
ン、2,2′−ビス(4−t−オクチルフェノール) ス
ルフィド、p−ハイドロオキシ安息香酸−o−クロロベ
ンジルエステル、4−ヒドロキシヒドロキシジフェニル
スルホン等が挙げられる。
【0024】融点140〜150℃の顕色剤としては、
2,2′−ビス(4−t−オクチルフェノール) スルホ
ン、p−ヒドロキシ安息香酸(2−メチルベンジル) エ
ステル、4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモベンゼンス
ルホン酸エチル、4−ヒドロキシ−4′−メチルジメチ
ルスルホン、4−ヒドロキシ−4′−クロロジフェニル
スルホン、4,4′− [1,3-フェニレンビス (1-メチル
エチリデン)]ビスフェノール、2,4,6−トリ( α,
α- ジメチルベンジル) フェノール等が挙げられる。
【0025】融点150〜160℃の顕色剤としては、
4,4′−(1−メチルベンチリデン) ビスフェノー
ル、ビス(2−メチル−5−イソプロピル−4−ヒドロ
キシフェニル) スルフィド、、p−ヒドロキシ安息香酸
フェニルエステル、4,4′−メチレンビス(2,6−
ジブチルフェノール) 、4−ヒドロキシ−4′−フルオ
ロジフェニルスルホン、2,2′−メチレンビス(4−
t−ブチルフェノール)等が挙げられる。
【0026】融点160〜170℃の顕色剤としては、
4,4′−オキシビスフェノール、4,4′− [1,4-フ
ェニレンビス (1-メチルエチリデン)]ビス(2,6−ジ
メチルフェノール) 、4,4′−(フェニルメチル) ビ
スフェノール、4,4′−(1−メチルエチリデン) ビ
ス2,6−ジメチルフェノール、4,4′−(p−フェ
ニレンジイソプロピリデン) ビス(2,6−キシレノー
ル) 、4,4′−シクロペンチリデンビスフェノール、
4,4′−シクロヘキシリデンビス(2−シクロヘキシ
ルフェノール) 、4,4′−(1−メチルエチリデン)
ビス(2−シクロヘキシルフェノール) 、4−ベンジロ
キシフェニル−4′−ヒドロキシフェニルスルホン、
4,4′−シクロヘキシリデンビス(2−t−ブチルフ
ェノール)、5,5′−(1,1−シクロヘキシリデン)
ビス(1,1−ビフェニル)−2−オール、2,2′
− [ (2-ヒドロキシフェニル) メチレン] ビス(3,5
−ジメチルフェノール) 等が挙げられる。
【0027】融点170〜180℃の顕色剤としては、
2,2′−ビス(4−t−オクチルフェノール) スルホ
キシド、4,4′−(ジメチルシリレン) ビスフェノー
ル、4,4′−メチレンビス(2,6−ジメチルフェノ
ール) 等が挙げられる。
【0028】融点180〜190℃の顕色剤としては、
3,4′−ジヒドロキシ−4′−メチルジフェニルスル
ホン、4,4′−シクロヘキシリデンビスフェノール、
ビス(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル) ス
ルフィド、4,4′−(1−フェニルエチリデン) ビス
フェノール、α, α',α"-トリス(4−ヒドロキシフェ
ニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、4,
4′、4″−エチリデントリス(2−メチルフェノー
ル) 、p−アミノフェノール、4,4′−(α−メチル
ベンジリデン) ビスフェノール等が挙げられる。
【0029】融点190〜200℃の顕色剤としては、
4,4′−シクロヘキシデンビス(3−メチルフェノー
ル) 、4,4′−(p−フェニレンジイソプロピリデ
ン) ビスフェノール、3,3′−ジフルオロ[1,1'-ビフ
ェニル] −4,4′−ジオール、4、4′− [ (3-ヒド
ロキシフェニル) メチレン] ビス [2,6-ジメチルフェノ
ール] 、3,3′,4,4′− [1,4-フェニレンビス
(1-メチルエチリデン)]ビスベンゼンジオール等が挙げ
られる。
【0030】融点が200〜250℃の顕色剤として
は、2,2′− [ (4-ヒドロキシフェニル) メチレン]
ビス [3,5-ジメチルフェノール] 、4,4′− [ (2-ヒ
ドロキシフェニル) メチレン] ビス[ 2-シクロヘキシル
-5- メチルフェノール] 、4,4′−(3,4−ジヒド
ロキシベンジリデン) ビス−2,6−ジメチルフェノー
ル、4,4′−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,
4′、4″−メチリデンビスフェノール等を挙げること
ができる。
【0031】更に、印字するレーザーとして炭酸ガスレ
ーザーを用いる場合は、塗液中に10μ付近に吸収を示
すレーザー増感剤が併用される。この種の材料として
は、例えばClO4 - 、SO4 2 - 、PO4 3 - 、SiO4 4
- 、BO5 5 - などのイオンを含む結晶があることが知ら
れている〔「固体構造化学」桐山良一著[ 共立全書] 、
p102(1978.2)〕。したがって、これらのアニオン種と、
Li、Na、Kなどのアルカリ金属イオン、Mg、C
a、Sr、Baなどのアルカリ土類金属イオン、他のカ
チオン種としてH、B、Al、Ga、Fe、Co、N
i、Zn、Cu、Ti、Zrなどのイオンの1種もしく
は2種以上を含む塩はいづれも増感剤として使用でき
る。
【0032】このほか、Zn−ジメチルジチオカーバメ
ート、Cu−ジメチルジチオカーバメート、テトラメチ
ルチウラムジスルフィドなども増感効果がある。中でも
酸化セリウムは優れた増感作用を発揮し、そのうえ紫外
線吸収性も高いため耐光性の向上にも優れた効果があ
る。したがって、これらのレーザー増感剤を発色剤、顕
色剤とともにインキ中に分散することにより、極めてレ
ーザー感度の高い感熱記録用インキを得ることができ
る。
【0033】上記した各成分の配合比率は、発色剤とな
る塩基性染料前駆体100重量部に対し、バインダーは
100〜700重量部、好ましくは200〜400重量
部、顕色剤は50〜500重量部、好ましくは100〜
200重量部、レーザー増感剤は1〜200重量部、好
ましくは2〜50重量部の範囲に設定する。このほか、
感熱インキの隠蔽性、発色文字の視認性を向上させる目
的で、酸化チタン、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、硫酸バ
リウムなどの白色無機顔料を300重量部以下、好まし
くは50〜200重量部の範囲で添加することができ
る。
【0034】また、必要に応じて常温で固体のパラフィ
ンワックス、カルナバワックス、マイクロクリスタリン
ワックス、アマイドワックス、フルオロシリコンなどの
ワックス類、シリコンオイル、フッ化オイルなどのオイ
ル類などを補助剤として添加してもよい。
【0035】溶剤型グラビア印刷インキの調製は、上記
の組成成分を混合したミルベースを固形分が50%程度
になるように酢酸エチルやメタノールを混合し、十分に
撹拌したのちボールミル、サンドミル、アトライター、
ダイノミル、パールミルなどのメディアを用いた分散機
を用いて分散処理することによって行われる。
【0036】本発明に係るレーザー感熱記録用インキ
は、プラスチックフィルム、繊維シート、紙、蒸着紙な
ど非吸収性の支持体面に、例えばグラビアコーター、ロ
ールコーター、ダイコーター、ナイフコーター等の公知
の方法により塗布して感熱層となる塗膜を形成する。レ
ーザーマーキング用途に使用する場合は、パターン印刷
できるグラビア印刷が最も適している。この際、形成し
た感熱層を保護するため、感熱層の上面にトップコート
ニスで保護層を設けることが好ましい。この保護層に使
用する樹脂成分としては、ニトロセルロース系樹脂、ア
クリル系樹脂、ビニルトルエン系樹脂、スチレン樹脂、
環状ゴム、エチルセルロースなどが挙げられる。保護層
に用いられるビヒクルの溶剤には、一般的なエステル
系、ケトン系、アルコール系、芳香族系などから1種も
しくは2種以上を組合せて使用する。
【0037】感熱記録用インキおよびトップコートニス
の粘度は、0.5〜10ポイズの範囲に調整することが
好ましい。また、感熱塗膜層は乾燥重量で通常0.5〜
10g/m2の皮膜として、またトップコートニスは通常
0.1〜5g/m2の皮膜として形成される。
【0038】このような方法で種々の支持体面にコーテ
ィングまたはパターン印刷された印刷物は多様の用途に
応用することができる。例えば、製造年月日等を記載し
なければならない食品容器に貼付するラベルにレーザー
マーキングを応用することがすでに知られている(特開
平5−58031 号公報)。このような製造年月日を記載す
る義務のある食品包装フィルムの場合、一般的なグラビ
アインキを印刷した部分にレーザーマーキングするとイ
ンキ部が劣化するのと同時にフィルムも破壊されるが、
本発明の感熱記録用インキは耐熱性が高いので、数十ミ
クロンの透明フィルムに印刷を施したものは、レーザー
照射し印字してもフィルムを破壊することなく、明瞭な
印字を発現することができる。接着性の低いフィルムに
印刷する場合は、適宜に数%の接着用樹脂を併用するこ
とができ、表面のスクラッチ強度や耐磨耗性などを向上
させるためには保護層を印刷したり、他のフィルムをラ
ミネートすることができる。
【0039】また、ビール瓶用ラベル等に適用する場合
にはアルカリ洗瓶性が必要となるが、本発明の感熱記録
用インキで形成される印刷ラベルはアルカリ溶液中で容
易に溶解または膨潤劣化して剥離するため、洗瓶性が極
めて良好である。
【0040】本発明の感熱記録用インキ組成物の発色に
使用されるレーザー光源としては、可視から赤外線波長
に発光スペクトルを有するものの中から選択でき、前述
の炭酸ガスレーザー、一酸化炭素レーザー、窒素レーザ
ー、イオンレーザー、He−Neレーザー、He−Xe
レーザー、エキシマレーザー、放電励起分子レーザーな
どのガスレーザー、YAGレーザー、ルビーレーザー、
ガラスレーザー等の固体レーザーのほか、半導体レーザ
ー、化学レーザー、色素レーザー等を使用することがで
きる。中でも、波長域が0.7〜30μm の範囲にある
赤外線を発振するレーザーが好ましい。
【0041】赤外線を発振するレーザーとしては、Al
GaAsレーザー(0.65 〜1.0 μm)、GaAsPレーザ
ー(0.7〜1.0 μm)、色素レーザー (〜1 μm)、CdSn
P2レーザー(1.01 μm)、GaSbレーザー(1.53 μ
m)、YAGレーザー(1.06 μm)、Ndガラスレーザー
(1.06 μm)、He−Neレーザー(1.15 μm 、3.39μ
m)、InGaAsレーザー(1.0〜3.5 μm)、InAsP
レーザー(1.0〜3.5 μm)、Cd3P2レーザー(2.12 μ
m)、水素−フッ素レーザー(2.6〜3.0 μm)、Teレーザ
ー(3.7μm)、(Hg,Cd) レーザー(3.9〜4.1 μm)、InA
sSbレーザー(3.1〜5.4 μm)、PbCdSレーザー
(2.5〜4.0 μm)、PbSレーザー(4.3μm)、PbSSe
レーザー(4.0〜8.5 μm)、一酸化炭素レーザー(5.0μ
m)、InSbレーザー(5.2μm)、PbSnTeレーザー
(6.3〜32μm)、PbTeレーザー(6.5μm)、PbSeレ
ーザー(8.5μm)、PbSnSeレーザー(8.5〜34μm)、
炭酸ガスレーザー(10.6 μm)などが挙げられる。
【0042】用いられるレーザーは、出力が0.1J/cm
2 パルス以上のエネルギーをもつパルス型レーザーや、
0.1J/cm2 以上のエネルギーを有する走査型レーザー
であればよい。
【0043】
【作用】本発明に係るレーザー感熱記録用インキ組成物
は、発色体を構成する染料前駆体が二分子以上の塩基性
染料前駆体の会合体であり、バインダーがシリカ系また
はアルミナ系の無機質結合剤であり、これに顕色剤およ
びレーザー増感剤を含有させた成分系に特徴づけられ、
この組成によりレーザー感熱時に印字の中抜け現象が発
生せず、常に濃度の高い鮮明な印刷状態を発現する。
【0044】特にバインダーとして選択使用するシリカ
系またはアルミナ系の無機質結合剤は、レーザー印字エ
ネルギーに対する耐熱性を向上させ、同時に塗膜の凝集
力を高める作用によって中抜け現象を効果的に防止する
ために機能する。例えば、数10〜数100nmに微分散
した無水珪酸ゾルをバインダーとして用いると、印刷後
に100℃程度の乾燥条件で塗膜がシリカゲル状とな
り、粒子間は水素結合または水分子を介在した共有結合
を形成するので、加熱による軟化が起こり難くなる。そ
のうえ、印字のためにレーザー照射することにより、シ
リカゲルに含まれる水分子が解離し、シリカゲル塗膜が
より耐熱性の高い珪酸ポリマーを形成するため中抜け現
象はより効果的に防止される。アルミナゾルを用いた場
合は、乾燥後の塗膜は凝集力の高い擬ベーマイト構造を
形成し、熱による劣化が生じないうえ、とくに炭酸ガス
レーザーの波長域に極めて強い吸収を有することから、
増感作用が著しく向上する。
【0045】
【実施例】以下、本発明の実施例を比較例と対比して具
体的に説明する。
【0046】実施例1 化1の一般式を有する2,2−ビス{4− [6′−(シ
クロヘキシル−N−メチルアミノ)−3′−メチルスピ
ロ [フタリド−3,9′−キサンテン] −2′−イルア
ミノ] フェニル}プロパン(会合型塩基性染料前駆体)
10重量%、3,4−ジヒドロキシ−4′−メチルジフ
ェニルスルフォン(融点 180〜190 ℃の顕色剤)20重
量部、シリカゾル〔バインダー;日産化学 (株)製メタ
ノールシリカゾル〕30重量部、酸化チタン10重量
部、酸化セリウム〔増感剤;多木化学 (株)製“ニード
ラールw100”〕3重量部を配合してミルベースを調製
し、サンドミルを用いて1時間分散した。分散したベー
スインキに、硝化綿ワニス(20%) 4重量部、イソプロピ
ルアルコール10重量部および酢酸エチル10重量部を
配合してレットダウンを行い、レーザー感熱記録用イン
キを得た。
【0047】得られたレーザー感熱記録用インキを用
い、ヘリオ版 (60線)にて蒸着紙にグラビア印刷した。
さらに硝化綿系OPニス(消化綿ワニス:40重量部、
ポリエチレンワックス:2重量部、イソプロピルアルコ
ール:20重量部、トルエン:18重量部、酢酸エチ
ル:20重量部)をヘリオ版(135線)にてグラビア印刷
した。ついで、印刷面にTEA型炭酸ガスレーザーを照
射してレーザーマーキングテストを行った。照射エネル
ギー量は、0.1〜2.0J/cm2 に設定した。このよう
にして形成した印刷物につき、次の試験方法により発色
の状態、耐水性、洗瓶性および保存性を評価し、その結
果を表1に示した。また、印刷インキの発色特性を測定
し、その結果を図1および図2に示した。
【0048】発色状態の測定;印刷物の発色の状態をド
ットアナライザーで測定し、発色濃度が1.0以上のも
のを合格(○)、0.5以下のものおよび文字の中央部
が溶融劣化して中抜け現象を起こしているものを不合格
(×)とした。 耐水性の測定;印刷物をガラス板に貼着し、その試験片
を水道水に7日間浸漬放置した。ついで、印刷面を水で
湿らせたガーゼで拭き、印刷面の状態に変化がないもの
を合格(○)、印刷面が剥落したものを不合格(×)と
した。 洗瓶性の測定;印刷物はビール瓶用ラベルに用いられる
こともあるため、瓶回収時のアルカリ洗瓶テストを行っ
た。試験条件は、印刷物を硝子板に貼着したものを70
℃に加温したカセイソーダ5%水溶液中に浸漬した。浸
漬した印刷部が剥離する時間を測定し、1分以内に剥離
したものを合格(○)、3分以上かかるものを不合格
(×)として判定評価した。 保存性の特定;レーザーマーキングにて発色させた発色
面に消ゴム〔トンボ鉛筆(株)製、モノ〕を圧着させ(2
00g/cm2)100時間経過した後の発色濃度を測定した。
発色濃度に変化がないものを合格(○)、発色濃度が褪
色したものを不合格(×)とした。
【0049】発色特性の評価;印刷物をヒートバーおよ
びレーザーエネルギーで加熱して感熱蒸着紙を黒色に発
色し、発色濃度をマクベス反射濃度計およびドットアナ
ライザーを用いて測定した。ヒートバーによる加熱温度
と発色との関係グラフを図1に、レーザーエネルギーと
発色との関係グラフを図2に示した。
【0050】実施例2 2,2−ビス{4− [6′−(シクロヘキシル−N−メ
チルアミノ)−3′−メチルスピロ [フタリド−3,
9′−キサンテン] −2′−イルアミノフェニル}プロ
パン(会合型塩基性染料前駆体)10重量部、α,
α′,α″−トリス(4−ヒドロキシフェニル)1,
3,5−トリイソプロピルベンゼン(融点180 〜190 ℃
の顕色剤)20重量部、酸化セリウム〔レーザー増感
剤;多木化学 (株)製“ニードラールw-15”〕10重量
部、ポリビニルピロリドン1重量部、メタノール10重
量部およびイソプロピルアルコール10重量部を配合し
てミルベースを調製し、サンドミルを用いて1時間分散
した。分散したベースインキに、アルミナゾル〔バイン
ダー;日産化学(株)製、アルミナゾル200 〕30重量
部およびメタノール9重量部を配合してレットダウンを
行い、レーザー感熱記録用インキを得た。得られたレー
ザー感熱記録用インキを用い、実施例1と同様にして蒸
着紙にグラビア印刷し、同様に発色状態、耐水性、洗瓶
性および保存性を評価した結果を表1に併載した。ま
た、印刷インキの発色特性を測定し、その結果を図1お
よび図2に併せて示した。
【0051】比較例1 3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオ
ラン〔染料前駆体;山本化成 (株)製、ODB〕10重
量部、p−ハイドロオキシ安息香酸イソプロピルエステ
ル(顕色剤)20重量部、炭酸カルシウム10重量部、
アクリル樹脂(バインダー;三菱レーヨン(株)製“ダ
イヤナールBR102 ”〕10重量部、トルエン15重量部
およびメチルシクロヘキサン10重量部を配合してミル
ベースを調製し、サンドミルを用いて1時間分散した。
分散したベースインキに、アクリル樹脂〔三菱レーヨン
(株)製“ダイヤナールBR118 ”〕10重量部およびト
ルエン20重量部を配合してレットダウンを行い、レー
ザー感熱記録用インキを得た。
【0052】この一液型感熱インキを蒸着紙にグラビア
印刷方式にて乾燥状態で約3g/m2となるように塗布した
後、フィルムの感熱層面にトップコートニスを塗布し
た。なお、本例の組成は溶剤発色を起こすため、トップ
コートニスにはアクリル樹脂〔三菱レーヨン (株)製
“ダイヤナールBR80”〕10重量部、ポリエチレンワッ
クス2重量部、トルエン68重量部およびシクロヘキサ
ン20重量部からなるトップコートニスをグラビア印刷
した。この印刷物につき、実施例1と同様にして発色状
態、耐水性、洗瓶性および保存性を評価した結果を表1
に併載した。また、印刷インキの発色特性を測定し、そ
の結果を図1および図2に併せて示した。
【0053】
【表1】
【0054】
【発明の効果】以上のとおり、本発明の組成を有するレ
ーザー感熱記録用インキを用いてパターン印刷された印
刷物は、レーザー光の照射により印刷面の中抜け現象が
なく、常に高度の発色濃度で鮮明な印刷精度の記録を得
ることができる。そのうえ、耐水性、洗瓶性、保存性等
に優れた性能を発揮するから、種々の食品包装材料に対
するレーザー感熱記録用として極めて有用性が期待でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例および比較例のレーザー感熱記録用イン
キ組成物を用いた際のヒートバーの加熱温度と発色の関
係を示したグラフである。
【図2】実施例および比較例のレーザー感熱記録用イン
キ組成物を用いた際のレーザーエネルギーと発色の関係
を示したグラフである。
【化1】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−57463(JP,A) 特開 平8−2106(JP,A) 特開 平7−228057(JP,A) 特開 昭63−315290(JP,A) 特開 平5−294065(JP,A) 特開 平5−254251(JP,A) 特開 平2−286287(JP,A) 特開 平4−64484(JP,A) 特開 平6−64324(JP,A) 特開 平8−187942(JP,A) 特開 昭62−121769(JP,A) 特開 平7−96673(JP,A) 特開 平5−24342(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B41M 5/28 - 5/34

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 非吸収性の支持体にレーザーヒートモー
    ドを利用して高速印刷する溶剤型グラビア印刷インキに
    おいて、発色剤が二分子以上の塩基性染料前駆体の会合
    体、バインダーがシリカ系またはアルミナ系の無機質結
    合剤であり、顕色剤およびレーザー増感剤を含有するこ
    とを特徴とするレーザー感熱記録用インキ組成物。
  2. 【請求項2】 溶剤型グラビア印刷インキのバインダー
    が、無水珪酸ゾルである請求項1記載のレーザー感熱記
    録用インキ組成物。
  3. 【請求項3】 溶剤型グラビア印刷インキのバインダー
    が、擬ベーマイト構造を形成するアルミナゾルである請
    求項1記載のレーザー感熱記録用インキ組成物。
  4. 【請求項4】 レーザー増感剤が、酸化セリウムである
    請求項1記載のレーザー感熱記録用インキ組成物。
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