JP3464173B2 - 新規な梅酒の製造方法 - Google Patents

新規な梅酒の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、優れた風味の梅酒
及びその高濃度調製品を、濃縮脱塩梅酢及びその副生蒸
留水を配合して製造する、新規な梅酒とその製造方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】梅酒の製造方法は、洗浄後の青梅を容器
内に一定量の梅の果実と、一定量の糖分(砂糖)と、一
定量のアルコール(焼酎、または、ホワイトリカー)を
配合して、長期間(最低3カ月程度)熟成することによ
って得られる。そして、ここで用いられるアルコールは
通常アルコール分(濃度)が20〜50%程度の蒸留酒
(焼酎)が用いられる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来のような梅酒の製
造方法では、梅を収穫する時期が限定されるため、梅酒
の製造時期も限定され、更に、梅干し等の梅製品の製造
時期とも重なって、生産量やコスト面でも不利となって
いた。また、熟成後に梅酒を分離すると、その後にはア
ルコール分を含む梅果実が残り、これらは一部が食用に
回されるだけで、その他の大部分は廃棄され、その処分
に対策を要していた。
【0004】梅干しの生産に伴って大量の梅酢が副生す
る。和歌山の紀州地方のみでも年間約1万6千トンに達
する梅酢が生成し、その大部分が河川に廃棄されて環境
汚染問題を起こしている。しかしながら、梅酢は塩漬け
された生梅から浸出した梅自体の果汁であるから、例え
高濃度の食塩を含んでいても、その加工に工夫を加えて
梅酒の原料に使用できれば、季節に限定されずに安価に
良質の梅酒を生産できると推察される。梅資源の高度利
用だけに留まらず、さらには伴う環境汚染問題の解決に
も貢献できる。
【0005】一方、梅酢を通常(従来)の単純濃縮作
業、つまり、梅酢を沸騰させて水分等を蒸発させる濃縮
を行うと、塩分が高い為にわずかの濃縮でも析出した食
塩のスラリーの沈降が起こり、濃縮装置の缶壁にも固着
して濃縮継続を困難にする。また缶壁で著しい焦げ付き
を起こして褐変や異臭を生ずる。さらには腐食の原因と
なり、また、発泡と突沸も起こりやすいために、濃縮が
殆ど行われていなかった。したがって、品質の良い濃縮
物を得るのは困難で、食品関係への利用が開けなかっ
た。
【0006】また、前記電気透析による脱塩について
は、高塩分濃度の梅酢を電気透析のみで実施すると非常
に費用と時間がかかり、しかも除去した食塩は溶液の形
で分離されるので全量廃棄せざるを得なかった。また、
梅酢は従来加工が困難であった為に極めて一部の量がそ
のまま芝漬などに利用されているに過ぎなかった。そこ
で本発明は、余剰梅酢から新資源として利用価値の高い
濃縮脱塩梅酢を製造し、かつ、環境への廃棄を防止しよ
うとし、この濃縮脱塩梅酢にアルコールやその他の糖分
や香料や着色料等を配合して新規な梅酒及びその高濃度
調製品を提供しようとする。
【0007】濃縮脱塩梅酢とは、梅酢を、回転コイル加
熱装置を持つ減圧濃縮機によって、減圧下、30〜90
℃、好ましくは、40〜60℃で濃縮し、析出塩分を分
離後、電気透析装置によって濃縮梅酢濾液をさらに脱塩
して得た、酸度2〜16%、塩分1〜13%の液体であ
って、使用する原料梅酢の組成によってその固形分は異
なってくる。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明の解決しようとす
る課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するた
めの手段を説明する。即ち、梅酢を回転コイル加熱装置
を持つ減圧加熱型濃縮機により、減圧下、30〜90℃
で濃縮し、析出塩分を分離後、濃縮梅酢濾液をさらに電
気透析して脱塩して得る濃縮脱塩梅酢にアルコール及び
濃縮時に副生する梅の芳香を含む蒸留水を配合して梅酒
を得た。
【0009】
【発明の実施の形態】原料の梅酢は一般に15〜23%
の食塩と2〜5%の酸度の有機酸を含む梅固有の風味を
持つ梅の浸出液で、そのpHは1.5〜2.5である。
普通酸度はアルカリ規定液で中性まで滴定して得られる
当量数で示されるが、梅酢の場合は含まれる酸成分が大
部分クエン酸であるので、当量数をクエン酸量に換算し
て全量に対する重量%で示した。濃縮脱塩の方法は図1
にその大要を示すが、原料の品質や濃度の偏倚によって
は適宜多少の調節が望ましい。梅酢は変質を伴う事無く
酸度で2〜10倍に濃縮される。約4倍濃縮が望まし
く、後述するように大部分の析出した梅塩が分離され、
引き続き実施される残留塩分の電気透析脱塩も効果的と
なる。即ち濃縮によって大部分の食塩が除かれる為、酸
度に対する塩分の比率が著しく低下しているので短時間
で、容易に、しかも完全脱塩も可能である。
【0010】以下に具体的な内容を説明する。梅固有の
風味や成分を損う事無く、しかも安価なコストで梅酢を
濃縮脱塩する為に、本発明では低温で減圧濃縮すること
によって析出する大部分の食塩を分離回収し、濃縮液区
分をさらに電気透析することによって脱塩し、濃縮脱塩
梅酢を得ている。
【0011】本来、梅酢は高濃度の食塩を含む為に、通
常の方法で濃縮を始めると直ちに晶出が起こってスラリ
ー化し、突沸や缶壁への強固な付着による加熱で変性劣
化を起こし、着色と異臭を生ずるなどの問題点がある。
これら問題点を克服できる濃縮装置および濃縮法を探索
検討した結果、図1に示すような工程とすることによ
り、殆ど完全な再利用が可能となった。
【0012】まず、原料となる梅酢を、回転コイル加熱
装置を持つ減圧加熱型濃縮機(グローバル濃縮機)1に
投入して、減圧低温濃縮を行う。この時の濃縮温度は3
0〜90℃、好ましくは40〜60℃であり、濃縮圧力
は40〜600mmHgであり、好ましくは、70〜300
mmHgとしている。本発明で使用するこの減圧加熱型濃縮
機1は、コイル状の蒸気加熱部が濃縮缶中で横向きに回
転しながら攪拌と加熱を同時に行う構造になっている。
この攪拌によって、析出した食塩スラリーの沈降を防
ぎ、しかも加熱面が液によって常に濡らされる為に固着
加熱が起こらず、良好な攪拌効果によって発泡や突沸も
抑えられるので、多少の粘性があっても減圧下低温で高
能率の濃縮が実施できるなどの好ましい適性を有してい
る。なお、梅酢は通常pH1.8〜2.0であるが、本
発明では極めて僅かのアルカリあるいは弱酸塩を使用し
てpH2.5〜3.0まで高めており、梅酢の強い酸性
による機材の腐食はこの予備処理によって防止してい
る。
【0013】そして、この減圧加熱型濃縮機1により水
分を蒸発させて濃縮後、固液分離装置2によって約10
%の母液を含む食塩(梅塩と称する)を吸引濾過あるい
は遠心分離して梅酢濃縮液を得ている。なお、前記固液
分離装置2は周知の遠心分離機や減圧濾過機(吸引濾過
機)などよりなる。例えば、典型的な原料梅酢では約2
0%の食塩と約4%の酸度を含み、これを濃縮すると、
例えば、1kgから濃縮液330g、梅塩120g、およ
び蒸留水550gが得られる。この梅塩に含まれる濃縮
母液の酸分は原料梅酢で洗浄する事によって大幅に低下
させる事が出来る。洗浄液は回収して濃縮に回す。こう
して大部分の食塩が除去された濃縮液は、さらに電気透
析装置3によって残った塩分が脱塩され、略完全に塩分
が除去された濃縮脱塩梅酢となる。
【0014】この処理法によって得られた濃縮脱塩梅酢
および梅塩はそれぞれ食品分野で有用性の高い製品とな
る。また、副生する蒸留水は洗浄や後述する希釈等の用
途に貴重であって、殆ど完全な再利用ができる。そし
て、この蒸留水には梅の芳香が含まれている。
【0015】濃縮脱塩梅酢の組成の概略は、0.5〜
5.0%の食塩、8〜16%の酸分(主としてクエン
酸)、6〜10%の有機成分(糖類及びアミノ酸)及び
鉄、カルシウム、マグネシウム、燐酸等のミネラル分、
少量のフラボン系などのポリフェノール類などを含む。
本発明においては、上記の濃縮脱塩梅酢に任意の比率で
アルコール分、例えば、醸造アルコール或いはホワイト
リカー、糖類、例えば、蔗糖、果糖、異性化糖、オリゴ
糖等、及び梅の芳香を含む副生蒸留水を配合して、必要
に応じて熟成期間を取り、従来の方法で製造された梅酒
と比較して何ら遜色のない梅酒を製造することができ
た。更に、その配合比を変えることによって、従来の方
法では不可能であった高濃度梅酒も得られる。この高濃
度梅酒には濃縮脱塩梅酢にアルコール濃度が約30〜8
0%になるようにアルコールが配合される。この高濃度
梅酒は輸送性及び保存性に優れている。配合に際しては
調味料、着色料、香料などで風味を調製することもでき
る。以下その実施例を示すが、その組成は必要に応じて
可変であり、例示の配合に拘束されるものではない。
【0016】
【実施例】以下にその具体的な実施例を示す。〔実施例
1〕高濃度梅酒調製品 4倍濃縮脱塩梅酢20部、果糖10部、および90%醸
造アルコール70部を配合溶解し、室温に10日以上静
置して熟成させる。例えば、約4倍以上の氷水で割って
飲用に供する。 〔実施例2〕梅酒調製品 6倍濃縮脱塩梅酢10部、蔗糖30部、90%醸造要ア
ルコール40部、副生蒸留水30部を配合して70℃、
10分加熱溶解し、室温に1週間静置して熟成させる。 〔実施例3〕梅酒(ドリンク) 8倍濃縮脱塩梅酢1.2部、異性化糖シロップ(果糖8
0%)12部、副生蒸留水50部、赤紫蘇抽出液0.2
部、ホワイトリカー8部を配合し、殺菌水道水を添加し
て100部とする。充填に際し、瞬間殺菌或いは炭酸ガ
ス封入を施すのが望ましい。
【0017】
【発明の効果】本発明は次のような効果を奏する。請求
項1の如く、梅酢を回転コイル加熱装置を持つ減圧加熱
型濃縮機により、減圧低温濃縮を行い、その後固液分離
装置により塩分を分離し、さらに電気透析によって脱塩
して得る濃縮脱塩梅酢と、アルコールと、糖類とを配合
して梅酒が得られるので、梅干し製造時に生成される梅
酢を廃棄することなく、資源を無駄にせず環境汚染を防
止して有効利用することが可能である。そして、効率的
で新規な製造工程によって、季節に影響されることもな
く、安価に、従来法の梅酒と同等な風味に優れた梅酒が
得られる。その濃度及び配合比も任意に変化できる。
【0018】また、請求項2の如く、新規な梅酒の製造
方法において、梅酢を製造する工程で副生する梅の芳香
を含む蒸留水を希釈液として再利用する事によって、風
味の優れた梅酒を提供できる。
【0019】また、新規な梅酒の製造方法において、ア
ルコール濃度が30〜80%に調製した新規な高濃度の
梅酒調製品も得られ、搬送にかかるコスト及び保管費を
減少できて経済性に優れている。また、好みやドリンク
剤等の目的に応じた濃度に薄めて飲用したり、希釈調製
品を製造して販売することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の新規な梅酒の製造装置のブロック図で
ある。
【符号の説明】
1 濃縮機 2 固液分離装置(遠心分離機) 3 電気透析装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C12G 1/00 - 3/12 JICSTファイル(JOIS)

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 梅酢を回転コイル加熱装置を持つ減圧
    型濃縮機により、減圧下、30〜90℃で減圧低温濃
    縮を行い、その後固液分離装置により塩分を分離し、さ
    らに電気透析によって脱塩して得る濃縮脱塩梅酢と、ア
    ルコールと、糖類とを配合して得る新規な梅酒の製造方
    法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の新規な梅酒の製造方法に
    おいて、梅酢の減圧濃縮中に得られる梅の芳香を含む蒸
    留水を配合水とした新規な梅酒の製造方法。
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