JP3463983B2 - 核燃料棒輸送方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、原子炉に使用され
る核燃料棒の輸送に係り、特に燃料集合体に組み立てら
れていない状態の核燃料棒を、既存の燃料輸送容器に収
納して輸送する核燃料棒輸送方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】原子力発電所において、核燃料は、二酸
化ウランの小円柱状の焼結体であるペレットを金属製の
長尺な被覆管に封じ込めて核燃料棒とし、これら核燃料
棒を多数束ねた燃料集合体の形で使用されている。

【０００３】一例として、沸騰水型原子炉用の燃料集合
体は、全長約４ｍ、直径約１ｃｍの複数の核燃料棒をス
ペーサと呼ばれる格子状の弾性部材を介して結束し、そ
れら核燃料棒の両端部にタイプレートと呼ばれる結合部
材を取り付けることにより組み立てられている。

【０００４】燃料集合体の全長は約４．５ｍ、外形幅は
約１４ｃｍ、重量は約３００ｋｇの長尺重量物であり、
当然のことながら、全長は燃料棒の全長より大きくなっ
ている。また、外形幅も燃料体１体分の全燃料棒を密に
束ねたものより大きくなっている。

【０００５】このような長尺重量物となるペレットの製
造から燃料集合体への加工、組み立ては、一般には同一
の核燃料工場で行なわれる。核燃料工場で加工・組み立
てられた燃料集合体は、原子力発電所へ輸送されるが、
その際、法規制に適合する密封性、輸送中の耐衝撃性や
未臨界（核分裂反応が単発的反応におわること）等を担
保する輸送容器が用いられている。

【０００６】法規制に適合する密封性や耐衝撃性等を担
保する輸送容器は、例えば特開平７−１２０５９０号公
報や特開平８−６２３８９号公報等で公表されている。

【０００７】

【発明が解決しようとする課題】従来、核燃料輸送物
は、上述のように、燃料集合体の形態で原子力発電所へ
輸送されている。しかし、ペレットおよび核燃料棒の製
造工場と燃料集合体の組み立て工場が異なる場合や、従
来の核燃料工場で製造した核燃料棒を将来新たに建設さ
れる別の核燃料棒製造工場に輸送する場合、燃料集合体
の形態ではなく、核燃料棒のまま輸送できることが望ま
しい。

【０００８】しかし、核燃料棒を目的地に輸送する場
合、従来の輸送容器をそのまま適用するには、以下に示
すいくつかの問題点がある。

【０００９】（１）耐衝撃性の観点 燃料集合体用燃料輸送容器は、一般に燃料集合体を収納
する内容器と外容器で構成され、内容器と外容器の間ま
たは外容器の外側に、落下衝撃時の衝撃を吸収するため
の衝撃吸収部材が設置されている。また、内容器の内寸
は燃料集合体の長さと外形幅にほぼ一致しており、燃料
集合体は長手方向、横方向ともに隙間がない状態で内容
器に収納される。すなわち、燃料集合体は内容器と一体
化されており、このため落下衝撃時には、内容器の外側
の衝撃吸収部材が効率良く燃料集合体と内容器の衝撃エ
ネルギを吸収することができる。

【００１０】前述したように、核燃料棒は燃料集合体に
較べて全長が短かいので、燃料集合体用輸送容器の内容
器に収納した場合、上下方向に空間が生じてしまう。こ
のような収納状況で輸送容器が、例えば縦状態で落下す
る事故が起こった場合、輸送容器が落下面と衝突して衝
撃吸収部材が変形する時刻に対し、若干の時間遅れを伴
って核燃料棒が内容器の内面に激突する。

【００１１】よってこの場合、衝撃吸収部材は、内容器
のエネルギは吸収するものの核燃料棒のエネルギを効率
良く吸収することができない。したがって、核燃料棒に
印加する落下衝撃力は大きくなり、核燃料棒が破損する
危険性が大きくなってしまう。

【００１２】さらに、核燃料棒端部の端栓は細長く先端
が尖った形状をしているため、落下衝撃によって核燃料
棒が内容器に突き刺さったり、突き破ったりし、それに
伴い燃料棒が曲げ変形し破損するおそれも考えられる。
核燃料棒の端栓が一般的な木材あるいは衝撃吸収用木材
等に衝突した場合も同様な現象が生じると考えられる。

【００１３】一方、燃料集合体の形態で輸送される場合
には、核燃料棒を上下に拘束している前記タイプレート
が全燃料棒を支えているため、端栓が突き刺さるという
問題は発生しないうえに、タイプレート自身が衝撃時に
変形することにより核燃料棒に印加する落下衝撃力を緩
衝する。

【００１４】以上説明したように、燃料棒輸送に燃料集
合体用の燃料輸送容器を用いようとした場合、燃料棒と
内容器間に空間が生じるため、内容器の外側にある緩衝
部材が核燃料棒のエネルギを効率良く吸収することがで
きないこと、端栓が内容器等に突き刺さり、それに伴い
燃料棒が曲げ変形し破損するおそれがあること、燃料集
合体の落下衝撃では効果の大きいタイプレートの緩衝効
果がここでは期待できないこと等々、耐衝撃性に関する
解決すべき課題が山積している。

【００１５】（２）核燃料棒の健全性 核燃料棒同士が接触した状態で輸送容器内に収容される
と、輸送中の振動により核燃料棒の表面に擦過傷が発生
する恐れがある。物理的な接触による表面傷（フレッテ
ィング磨耗）は、核燃料棒が原子炉内に装荷され運転さ
れると燃料破損の一因となる可能性があり、核燃料棒同
士の接触防止を図る必要がある。

【００１６】（３）核燃料棒の臨界防止 核燃料棒同士が近接かつ集積された状態では、燃料集合
体に較べて、臨界（核分裂連鎖反応が持続する状態）防
止上厳しい状態となる。輸送効率を考慮すると、多数の
核燃料棒を一括収納して輸送することが望まれるが、臨
界防止上の制約から収納本数が制限される可能性があ
る。

【００１７】したがって、従来の燃料集合体の輸送容器
に、単に核燃料棒を集積して収容した状態では、安全か
つ効率的な核燃料棒の輸送が難しい。

【００１８】本発明は、上記の点に鑑みてなされたもの
であり、核燃料棒を燃料集合体用輸送容器で輸送する場
合の、耐衝撃性の課題を解決し、落下衝撃事故時の核燃
料棒の破損を防ぐ衝撃吸収部材等を備え、核燃料棒に大
きな振動を与えないようにし、核燃料棒の健全性を確保
し、臨界を防止し、多数の核燃料棒を同時に輸送できる
核燃料棒輸送方法を提供することを目的とする。

【００１９】

【課題を解決するための手段】本発明に係る核燃料棒輸
送方法は、上記目的を達成するために、請求項１に記載
したように、燃料集合体に組み立てられて原子力発電所
で使用される複数の核燃料棒を１つの核燃料棒梱包体に
形成する燃料棒梱包工程と、この核燃料棒梱包体を燃料
輸送容器の内容器に装荷する燃料棒梱包体装荷工程と、
装荷された核燃料棒を核燃料施設から別の核燃料施設に
移送する移送工程から成る核燃料棒輸送方法において、
前記燃料棒梱包工程は、前記複数の核燃料棒を、全長外
寸が前記燃料輸送容器の内容器内寸法にほぼ等しい梱包
容器に箱詰めするとともに、少なくとも前記梱包容器内
壁と全ての前記核燃料棒上下端との隙間に核燃料棒上下
端が突き刺さり難い硬質部材である松材または金属材か
ら成るスペーサを挿入し、前記核燃料棒上下端と前記梱
包容器内壁間の隙間を無くした状態で核燃料棒梱包体を
形成する工程を含む方法である。

【００２０】請求項１記載の核燃料棒輸送方法によれ
ば、松材または金属材から成るスペーサを用いるので、
核燃料棒がスペーサに突き刺さることがなくスペーサを
通して核燃料棒の荷重が内容器に直接伝達し、その時の
衝撃荷重はもともと内容器の外側に設置されている核燃
料棒輸送容器の固有の衝撃吸収部材により吸収・軽減さ
れるので、輸送中の落下衝撃に対し核燃料棒の破損を防
止できる。

【００２１】本発明に係る核燃料棒輸送方法は、上記目
的を達成するために、請求項２に記載したように、燃料
集合体に組み立てられて原子力発電所で使用される複数
の核燃料棒を断面がＵ字型のガイド部材に重積し、この
ガイド部材に重積した核燃料棒を固縛部材で縛り、しか
る後に前記ガイド部材を取り外すことにより、断面が正
方形状あるいは長方形状の核燃料棒梱包体を形成する燃
料棒梱包工程と、前記固縛部材で縛られた前記核燃料棒
梱包体を燃料輸送容器の内容器に装荷する燃料棒梱包体
装荷工程と、装荷された前記核燃料棒梱包体を核燃料施
設から別の核燃料施設に移送する移送工程とを含み、前
記燃料棒梱包体装荷工程は、前記核燃料棒梱包体を前記
核燃料輸送容器の内容器に装荷するとともに、少なくと
も前記内容器内壁と全ての前記核燃料棒上下端との隙間
に核燃料棒上下端が突き刺さり難い硬質部材である松材
または金属材から成るスペーサを挿入し、前記燃料棒梱
包体上下端の隙間を無くした状態で装荷する工程を含む
方法である。

【００２２】

【００２３】本発明に係る核燃料棒輸送方法は、上記目
的を達成するために、請求項３に記載したように、前記
松材または金属材の前記内容器内壁側に隙間を無くした
状態で圧縮変形部材を配置した方法である。

【００２４】本発明に係る核燃料棒輸送方法は、上記目
的を達成するために、請求項４に記載したように、圧縮
変形部材が、高分子材料、木材、ハニカム材あるいはア
ルミニウム等の軟金属のなかから選択される少なくとも
１つを含有することを特徴とする方法である。

【００２５】

【００２６】本発明に係る核燃料棒輸送方法は、上記目
的を達成するために、請求項５に記載したように、燃料
集合体に組み立てられて原子力発電所で使用される複数
の核燃料棒を１つの核燃料棒梱包体に形成する燃料棒梱
包工程と、この核燃料棒梱包体を燃料輸送容器の内容器
に装荷する燃料棒梱包体装荷工程と、装荷された核燃料
棒を核燃料施設から別の核燃料施設に移送する移送工程
から成る核燃料棒輸送方法において、前記燃料棒梱包工
程は、核燃料棒の端栓を挿入できる端栓用孔付部材を核
燃料棒上下端全てに介挿し、全長外寸が前記燃料輸送容
器の内容器内寸法にほぼ等しい梱包容器に箱詰めすると
ともに、少なくとも前記梱包容器内壁と端栓用孔付部材
との隙間にスペーサを挿入し、前記核燃料棒上下端と前
記梱包容器内壁間の隙間を無くした状態で核燃料棒梱包
体を形成する工程を含む方法である。

【００２７】本発明に係る核燃料棒輸送方法は、上記目
的を達成するために、請求項６に記載したように、燃料
棒梱包工程が、ウラン燃料棒（ＵＯ２ペレット入り燃料
棒）とともに、ガドリニア入りウラン燃料棒（ＵＯ２＋
Ｇｄ２Ｏ３ペレット入り燃料棒）、劣化ウランペレット
入り燃料棒、鉛ペレット入り燃料棒のうち少なくとも一
種類を混在させて梱包した方法である。

【００２８】本発明に係る核燃料棒輸送方法は、上記目
的を達成するために、請求項７に記載したように、燃料
棒梱包工程で梱包される前記複数の核燃料棒は、ウラン
燃料棒とそれ以外の燃料棒を識別するための識別マーキ
ングを、ウラン燃料棒またはそれ以外の燃料棒のうち少
なくとも一方の上部端栓または下部端栓に付した核燃料
棒であることを特徴とする。

【００２９】本発明に係る核燃料棒輸送方法は、上記目
的を達成するために、請求項８に記載したように、識別
マーキングが、核燃料棒の端栓に施すマーキングおよび
レーザ照射によるマーキングのうち少なくともひとつの
方法によることを特徴とする。

【００３０】

【発明の実施の形態】以下、本発明に係る核燃料棒輸送
方法の実施形態を図面を参照して説明する。

【００３１】図１は、本発明に係る核燃料棒輸送方法の
第１実施形態を実施するための核燃料棒輸送容器を示す
概略横断面図である。

【００３２】核燃料棒輸送容器３０は、燃料集合体を収
容するための内容器２とこの内容器２を収容するための
外容器３から構成されており、一般には内容器２と外容
器３との間に、落下事故時の内容器２ならびにその内蔵
物の衝撃エネルギを吸収するための衝撃吸収部材８が設
置されている。

【００３３】また、核燃料棒梱包体４０は、複数の核燃
料棒１が、燃料棒梱包工程で図示しない何らかの手段に
より束ねられて一体化された構造になっている。例え
ば、複数の核燃料棒１を束ねるか箱詰めするなどして１
つの核燃料棒梱包体４０を形成することとする。なお、
各核燃料棒１の両端には先端が尖った端栓５，６が設置
されている。

【００３４】このような核燃料棒梱包体４０を燃料集合
体として内容器２に収容すると、核燃料棒１の全長が燃
料集合体の全長より短いため、上下端に隙間ができる。

【００３５】本実施形態は、図１に示すように、燃料棒
梱包体を装荷する際に、核燃料棒梱包体４０を輸送容器
３０の内容器２に装荷するとともに、内容器２の内壁と
核燃料棒梱包体４０の上下端との隙間に、硬質部材から
成るスペーサ７を挿入し、核燃料棒梱包体４０の上下端
の隙間を無くした状態で装荷する。

【００３６】次に本実施形態の作用効果を、スペーサ７
として硬質部材を用いた場合につき以下に説明する。

【００３７】ここで、硬質部材とは、松材等の硬質木材
や金属材等の端栓が突き刺さり難い部材のことである。
図１で、−Ｘ方向（図中の下向き、つまりＸ方向と逆方
向）の落下事故を想定すると、核燃料棒１の端栓５，６
は硬質部材から成るスペーサ７と接触しているので端栓
５，６がスペーサ７に突き刺さる事態を防止することが
できる。したがって、端栓５，６が相手材に突き刺さる
ことによる核燃料棒１や端栓５，６の曲げ破損を防止す
ることができる。さらに、スペーサ７の存在により、核
燃料棒梱包体４０の上下端の隙間が無い状態になるの
で、核燃料棒梱包体４０は内容器２と一体化され、落下
事故時には核燃料棒梱包体４０と内容器２が同一の挙動
をする。したがって、内容器２の外側に存在する核燃料
棒輸送容器３０の固有の衝撃吸収部材８が、内容器２の
衝撃エネルギを吸収するのみならず、核燃料棒梱包体４
０の衝撃エネルギも効率良く吸収することができるか
ら、輸送容器固有の衝撃吸収効果を有効に活用すること
ができる。

【００３８】なお、図１において、核燃料棒梱包体４０
の横方向に隙間ができる場合、この部分では端栓６が突
き刺さる心配がないので、通常の柔らかい緩衝材２３で
この隙間を埋めるよう設置するのが好適である。

【００３９】以上説明したように、本実施形態に係る核
燃料棒輸送方法によれば、核燃料棒梱包体４０の上下端
と内容器２の隙間に硬質部材から成るスペーサ７を挿入
し隙間を無くした状態にしたので、輸送容器固有の緩衝
効果を有効に活用でき、輸送中の落下衝撃に対し核燃料
棒を保護し核燃料棒の破損を防止することができる。

【００４０】次に、本発明に係る核燃料棒輸送方法の第
２実施形態を図２を参照して説明する。なお、図２は、
本実施形態における核燃料棒輸送容器と核燃料棒梱包体
を示す概略横断面図である。また、図１と同一部分に
は、同一符号を付す。

【００４１】核燃料棒輸送容器３０の構成は先に説明し
た図１と同じであるため説明は省略する。

【００４２】本実施形態では、核燃料棒を梱包する際
に、複数の核燃料棒１を、全長外寸法が核燃料棒輸送容
器３０の内容器２の内寸法にほぼ等しい梱包容器９に箱
詰めするとともに、少なくとも梱包容器９の内壁と核燃
料棒１の上下端との隙間に硬質部材から成るスペーサ７
を挿入し、核燃料棒１の上下端と梱包容器９の隙間を無
くした状態で核燃料棒梱包体４０を形成する。

【００４３】燃料棒梱包工程において、このように形成
された梱包容器９を含む核燃料棒梱包体４０は、図２に
示されるように、上下端に隙間がない状態で核燃料棒輸
送容器３０の内容器２に収容される。また、核燃料棒梱
包体４０の横方向の隙間は通常の柔らかい緩衝材２３で
埋められる。

【００４４】本実施形態によれば、第１実施形態の図１
と同様に、核燃料棒１の上下端と梱包容器９の隙間に硬
質部材から成るスペーサ７を挿入し隙間を無くした状態
にするとともに、梱包容器９の上下端と核燃料棒輸送容
器３０の内容器２間の隙間も無くした状態にできるの
で、第１実施形態で説明した作用効果と全く同様の作用
効果を発揮することができる。したがって、本実施形態
により、核燃料棒輸送容器固有の緩衝効果を有効に活用
でき、輸送中の落下衝撃に対し核燃料棒１を保護し、核
燃料棒１の破損を防止することができる。

【００４５】次に、本発明に係る核燃料棒輸送方法の第
３実施形態を図３を参照して説明する。なお、図３は、
本実施形態における核燃料棒輸送容器と核燃料棒梱包体
を示す概略横断面図である。また、図１と同一部分に
は、同一符号を付す。

【００４６】先に説明した第１実施形態の図１や、第２
実施形態の図２において、スペーサ７として独自の衝撃
吸収部材を用いる場合には、端栓６の突き刺さり防止対
策を施さねばならない。本実施形態はこのような事情に
よりなされたものであり、図３には、梱包容器９に複数
の核燃料棒１を収容して核燃料棒梱包体４０とする例を
示した。核燃料棒１の端部に挿入するスペーサ７は硬質
部材１０と圧縮変形部材１１で構成され、硬質部材１０
側が端栓６側となるように挿入されて核燃料棒１の端部
の隙間を埋める。

【００４７】ここで、圧縮変形部材１１は、一般にショ
ックアブソーバー材（衝撃吸収材）として使われるバル
サ材等の木材、高分子材料、ハニカム材あるいはアルミ
ニウム等の軟金属のうちのいずれか、若しくはこれらの
合成物を用いるのが好適である。

【００４８】本発明によれば、図中で−Ｘ方向の落下事
故を想定すると、落下衝撃により端栓６が上述した材料
からなる圧縮変形部材１１に突き刺さる事態を硬質部材
１０が防止しており、端栓６の突き刺さりによる核燃料
棒１あるいは端栓６の曲げ破損を防止することができ
る。落下衝撃時の核燃焼１からの衝撃力は端栓６から硬
質部材１０に伝わり圧縮変形部材１１を圧縮変形させ
る。この圧縮変形部材１１の圧縮変形により、核燃料棒
１の衝撃エネルギを吸収でき、衝撃力を緩和することが
できる。

【００４９】よって、本実施形態によれば、核燃料棒梱
包体４０の上下端に挿入するスペーサ７として硬質部材
１０と圧縮変形部材１１を使用するので、輸送容器固有
の緩衝効果を有効に活用できる上に独自の緩衝効果を生
み出すことができ、輸送中の落下衝撃に対し核燃料棒を
保護し核燃料棒の破損を防止することができる。

【００５０】次に、本発明に係る核燃料棒輸送方法の第
４実施形態を図４を参照して説明する。なお、図４は、
本実施形態における核燃料棒輸送容器と核燃料棒梱包体
を示す概略横断面図である。また、図１と同一部分に
は、同一符号を付す。

【００５１】本実施形態では、燃料棒を梱包する際に、
断面がＵ字型のガイド部材１３とバンド等の固縛部材１
２とを燃料棒軸方向に交互に並べておき、複数の核燃料
体１をガイド部材１３に重積し、断面が正方形状あるい
は長方形状に重積された燃料体群をその断面形状を保ち
つつ固縛部材１２で縛り核燃料棒梱包体４０を形成し、
しかる後にガイド部材１３を取り外すこととする。

【００５２】本実施形態により、断面が正方形状あるい
は長方形状の核燃料棒梱包体４０を容易に形成すること
ができ、核燃料棒輸送容器の内容器への収容作業あるい
は梱包容器への収容作業が容易になる。また、ガイド部
材１３として図５に示されるような薄板のガイド部材を
使用すれば、上記の核燃料棒梱包工程を輸送容器の内容
器内で行うこともでき、燃料棒梱包工程と燃料棒梱包体
装荷工程を連続して行うことができるので、これらの工
程における省力化が図れる。さらに、核燃料棒１はバン
ド等の固縛部材１２で縛られているので、移送工程にお
ける振動に対して核燃料棒１同士の擦れに伴う摩耗や傷
の発生を防止することができる。

【００５３】よって、本実施形態によれば、断面がＵ字
型のガイド部材１３を利用しバンド等の固縛部材１２に
より多数の核燃料棒を縛り断面が正方形状あるいは長方
形状の核燃料棒梱包体４０を形成するので、梱包工程や
装荷工程での省力化が図れ、また移送中の核燃料棒の摩
耗や傷の発生を防止することができる。

【００５４】次に、本発明に係る核燃料棒輸送方法の第
５実施形態を図６および図７を参照して説明する。な
お、図６は、本実施形態における核燃料棒梱包体を示す
一部切欠き概略横断面図であり、図７は図６のＢ−Ｂ矢
視方向切断断面図である。

【００５５】本実施形態は、燃料棒梱包工程において、
核燃料棒１の端栓５を挿入できる端栓用孔付部材１５を
介挿して核燃料棒梱包体４０を形成するものである。図
では、核燃料棒１をスペーサガイド１６で整列させ、端
栓５に端栓用孔付部材１５を介挿して梱包容器９に収容
し、さらに端栓用孔付部材１５の先の隙間に硬質部材あ
るいは衝撃吸収部材から成るスペーサ７を挿入し、核燃
料棒梱包体４０を形成した例を示している。また輸送さ
れる核燃料棒１の端栓５の長さは、核燃料棒１の種類に
よって異なる場合があり、本図においては、端栓長さの
異なる核燃料棒を１つの核燃料棒梱包体４０に形成した
例を示している。

【００５６】本実施形態によれば、図７の左方向への落
下事故時に、端栓５のテーパ部２２で核燃料棒１の衝撃
力が端栓用孔付部材１５によって支えられる。したがっ
て、端栓５の長短に拘らず、全ての核燃料棒１を一体化
した核燃料棒梱包体４０を形成することができる。

【００５７】よって、本実施形態によれば、核燃料棒１
の端栓５を挿入できる端栓用孔付部材１５を介挿して核
燃料棒梱包体４０を形成して輸送するので、端栓５の長
さの異なる核燃料棒１の輸送においても、輸送中の落下
衝撃に対し、核燃料棒を保護し、核燃料棒１の破損を防
止することができる。

【００５８】次に、本発明に係る核燃料棒輸送方法の第
６実施形態を図８を参照して説明する。なお、図８は、
本実施形態における核燃料棒梱包体を示す概略横断面図
である。また、図１と同一部分には同一符号を付す。

【００５９】本実施形態は、燃料棒梱包工程において核
燃料棒１８をウラン核燃料棒１８（ＵＯ２ペレット入り
燃料棒）にガドリニア入りウラン燃料棒（ＵＯ２＋Ｇｄ
２Ｏ３ペレット入り燃料棒）、劣化ウランペレット入り
燃料棒、鉛ペレット入り燃料棒等のうち、少なくとも一
種以上の他種核燃料棒１９（以下、他種核燃料棒と記
す）と混在させ核燃料棒梱包体４０を形成するものであ
る。

【００６０】また、本実施形態は、ウラン核燃料棒１８
および他種核燃料棒１９のうち、いずれか一方の核燃料
棒の端栓５に識別マーキング２０を付すか、あるいは核
燃料棒の他の端栓６にくびれ部２１を形成するものであ
る。識別マーキング部２０は、端栓５に機械加工または
レーザマーキングにより行なわれる。

【００６１】この構成により、本実施形態は、核燃料棒
１としてウラン核燃料棒１８と他種核燃料棒１９とを混
在させて核燃料棒梱包体４０を形成し、輸送容器に装荷
し、目的地に輸送するので、核燃料棒の臨界防止を図る
ことができ、またウラン核燃料棒１８および他種核燃料
棒１９のうち、いずれか一方の核燃料棒の端栓５に識別
マーキング部２０を付し、他の端栓６にくびれ部２１を
形成して輸送するので、核燃料棒の目視確認または自動
読み取りを容易に行なうことができる。よって、本実施
の形態により核燃料棒輸送方法を実施する過程で核燃料
棒の種類を誤認することを防止することができる。

【００６２】

【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る核燃
料棒輸送方法によれば、燃料棒梱包工程において、複数
の核燃料棒を縛るか箱詰めにし固縛し、かつ形状の鋭い
燃料棒端栓部に端部処理を施し、あるいは独自の衝撃吸
収部材を設置した燃料棒梱包体を形成し、燃料棒梱包体
の輸送容器への装荷工程において、燃料棒梱包体を輸送
容器の内容器に収容するとともに燃料棒梱包体の上下の
隙間に硬質部材あるいは衝撃吸収部材から成るスペーサ
を挿入し隙間を無くした状態にするので、移送中の落下
衝撃事故に対し、輸送容器固有の緩衝効果を有効に活用
でき、あるいはさらに独自の衝撃吸収部材の緩衝効果を
活用でき、さらに移送中の振動で核燃料棒同士が摩耗す
る事態を防止でき、核燃料棒を保護し核燃料棒の破損を
防止できる核燃料棒輸送方法を実現することができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る核燃料棒輸送方法の第１実施形態
を実施するための核燃料棒輸送容器と燃料棒梱包体を示
す概略横断面図。

【図２】本発明に係る核燃料棒輸送方法の第２実施形態
を実施するための核燃料棒輸送容器と燃料棒梱包体を示
す概略横断面図。

【図３】本発明に係る核燃料棒輸送方法の第３実施形態
を実施するための核燃料棒梱包体を示す一部切欠き概略
横断面図。

【図４】本発明に係る核燃料棒輸送方法の第４実施形態
を実施するための核燃料棒梱包体を示す概略横断面図。

【図５】図４のＡ−Ａ矢視方向切断断面図。

【図６】本発明に係る核燃料棒輸送方法の第５実施形態
を実施するための核燃料棒梱包体を示す一部切欠き概略
横断面図。

【図７】図６のＢ−Ｂ矢視方向切断断面図。

【図８】本発明に係る核燃料棒輸送方法の第６実施形態
を実施するための核燃料棒梱包体を示す概略横断面図。

【符号の説明】

１…核燃料棒、２…内容器、３…外容器、４…被覆管、
５…端栓、６…端栓、７…スペーサ、８…衝撃吸収部
材、９…梱包容器、１０…硬質部材、１１…圧縮変形部
材、１２…固縛部材、１３…ガイド板、１５…端栓用孔
付部材、１８…核燃料棒、１９…他種核燃料棒、２０…
識別マーキング部、２１…くびれ部、２２…テーパ部、
２３…緩衝材、３０…核燃料棒輸送容器、４０…核燃料
棒梱包体。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 尾沢 保 神奈川県横浜市磯子区新杉田町８番地 株式会社東芝 横浜事業所内 (56)参考文献 特開 平４−152294（ＪＰ，Ａ) 特開 平10−268081（ＪＰ，Ａ) 特開 平８−244827（ＪＰ，Ａ) 特開 昭60−183592（ＪＰ，Ａ) 特開 平10−206582（ＪＰ，Ａ) 特開 平10−170674（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−237389（ＪＰ，Ａ) 特開 平５−134091（ＪＰ，Ａ) 特開 平２−248896（ＪＰ，Ａ) 特開 平３−72296（ＪＰ，Ａ) 実開 昭60−126375（ＪＰ，Ｕ) 実開 昭59−129776（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) G21F 5/00 G21C 21/00 G21F 9/36

Claims (8)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】燃料集合体に組み立てられて原子力発電所
   で使用される複数の核燃料棒を１つの核燃料棒梱包体に
   形成する燃料棒梱包工程と、この核燃料棒梱包体を燃料
   輸送容器の内容器に装荷する燃料棒梱包体装荷工程と、
   装荷された核燃料棒を核燃料施設から別の核燃料施設に
   移送する移送工程から成る核燃料棒輸送方法において、
   前記燃料棒梱包工程は、前記複数の核燃料棒を、全長外
   寸が前記燃料輸送容器の内容器内寸法にほぼ等しい梱包
   容器に箱詰めするとともに、少なくとも前記梱包容器内
   壁と全ての前記核燃料棒上下端との隙間に核燃料棒上下
   端が突き刺さり難い硬質部材である松材または金属材か
   ら成るスペーサを挿入し、前記核燃料棒上下端と前記梱
   包容器内壁間の隙間を無くした状態で核燃料棒梱包体を
   形成する工程を含むことを特徴とする核燃料棒輸送方
   法。
2. 【請求項２】燃料集合体に組み立てられて原子力発電所
   で使用される複数の核燃料棒を断面がＵ字型のガイド部
   材に重積しこのガイド部材に重積した核燃料棒を固縛部
   材で縛りしかる後に前記ガイド部材を取り外すことによ
   り断面が正方形状あるいは長方形状の核燃料棒梱包体を
   形成する燃料棒梱包工程と、前記固縛部材で縛られた前
   記核燃料棒梱包体を燃料輸送容器の内容器に装荷する燃
   料棒梱包体装荷工程と、装荷された前記核燃料棒梱包体
   を核燃料施設から別の核燃料施設に移送する移送工程と
   を含み、前記燃料棒梱包体装荷工程は、前記核燃料棒梱
   包体を前記核燃料輸送容器の内容器に装荷するととも
   に、少なくとも前記内容器内壁と全ての前記核燃料棒上
   下端との隙間に核燃料棒上下端が突き刺さり難い硬質部
   材である松材または金属材から成るスペーサを挿入し、
   前記燃料棒梱包体上下端の隙間を無くした状態で装荷す
   る工程を含むことを特徴とする核燃料棒輸送方法。
3. 【請求項３】前記松材または金属材の前記内容器内壁側
   に隙間を無くした状態で圧縮変形部材を配置したことを
   特徴とする請求項１または２記載の核燃料棒輸送方法。
4. 【請求項４】前記圧縮変形部材が、高分子材料、木材、
   ハニカム材あるいはアルミニウム等の軟金属のなかから
   選択される少なくとも１つを含有することを特徴とする
   請求項３記載の核燃料棒輸送方法。
5. 【請求項５】燃料集合体に組み立てられて原子力発電所
   で使用される複数の核燃料棒を１つの核燃料棒梱包体に
   形成する燃料棒梱包工程と、この核燃料棒梱包体を燃料
   輸送容器の内容器に装荷する燃料棒梱包体装荷工程と、
   装荷された核燃料棒を核燃料施設から別の核燃料施設に
   移送する移送工程から成る核燃料棒輸送方法において、
   前記燃料棒梱包工程は、核燃料棒の端栓を挿入できる端
   栓用孔付部材を核燃料棒上下端全てに介挿し、全長外寸
   が前記燃料輸送容器の内容器内寸法にほぼ等しい梱包容
   器に箱詰めするとともに、少なくとも前記梱包容器内壁
   と端栓用孔付部材との隙間にスペーサを挿入し、前記核
   燃料棒上下端と前記梱包容器内壁間の隙間を無くした状
   態で核燃料棒梱包体を形成する工程を含み、ことを特徴
   とする核燃料棒輸送方法。
6. 【請求項６】前記燃料棒梱包工程が、ウラン燃料棒（Ｕ
   Ｏ２ペレット入り燃料棒）とともに、ガドリニア入りウ
   ラン燃料棒（ＵＯ２＋Ｇｄ２Ｏ３ペレット入り燃料
   棒）、劣化ウランペレット入り燃料棒、鉛ペレット入り
   燃料棒のうち少なくとも一種類を混在させて梱包したこ
   とを特徴とする請求項１記載の核燃料棒輸送方法。
7. 【請求項７】前記燃料棒梱包工程で梱包される前記複数
   の核燃料棒は、ウラン燃料棒とそれ以外の燃料棒を識別
   するための識別マーキングを、ウラン燃料棒またはそれ
   以外の燃料棒のうち少なくとも一方の上部端栓または下
   部端栓に付した核燃料棒であることを特徴とする請求項
   ６記載の核燃料棒輸送方法。
8. 【請求項８】前記識別マーキングが、核燃料棒の端栓に
   施すマーキングおよびレーザ照射によるマーキングのう
   ち少なくともひとつの方法によることを特徴とする請求
   項７記載の核燃料棒輸送方法。