JP3463500B2 - 延性に優れたフェライト系ステンレス鋼およびその製造方法 - Google Patents
延性に優れたフェライト系ステンレス鋼およびその製造方法Info
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- JP3463500B2 JP3463500B2 JP03996197A JP3996197A JP3463500B2 JP 3463500 B2 JP3463500 B2 JP 3463500B2 JP 03996197 A JP03996197 A JP 03996197A JP 3996197 A JP3996197 A JP 3996197A JP 3463500 B2 JP3463500 B2 JP 3463500B2
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はフェライト系ステン
レス鋼およびその製造方法に係り、特に自動車、家電、
厨房、あるいは建材などに使用される延性が優れ、張り
出し成形などの成形加工に適したフェライト系ステンレ
ス鋼およびその製造方法に関する。
レス鋼およびその製造方法に係り、特に自動車、家電、
厨房、あるいは建材などに使用される延性が優れ、張り
出し成形などの成形加工に適したフェライト系ステンレ
ス鋼およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】自動車、家電、厨房、あるいは建材など
に使用されるステンレス鋼は張出成形などの加工性が良
いことが要求される。そのために多くの研究がなされ、
たとえば特開平3−2355号公報にみられるように鋼
の高純度化によってその目的を達することが提案され、
現実に使用されている。この技術はC、Nなどの侵入型
の元素を低減し、塑性変形時の転移の運動を容易にする
ことにより加工性を改善するものであるが、高度の脱
炭、脱窒を必要とするため製造コストが高いという欠点
がある。
に使用されるステンレス鋼は張出成形などの加工性が良
いことが要求される。そのために多くの研究がなされ、
たとえば特開平3−2355号公報にみられるように鋼
の高純度化によってその目的を達することが提案され、
現実に使用されている。この技術はC、Nなどの侵入型
の元素を低減し、塑性変形時の転移の運動を容易にする
ことにより加工性を改善するものであるが、高度の脱
炭、脱窒を必要とするため製造コストが高いという欠点
がある。
【0003】一方、SUS304に規定されるオーステ
ナイト系ステンレス鋼や残留オーステナイト相を含有す
る低合金鋼では、たとえば日本金属学会報第27巻第8
号(1998)第623頁以下に記載されているように
いわゆるTRIP(変態誘起塑性)現象を利用して延性
を向上することが行われている。これはオーステナイト
相を含む鋼に塑性加工を加えると、塑性歪みが加わった
部分ではオーステナイト相がマルテンサイ相に変態し硬
化するため、その後の加工においてその部分の変形が抑
制され、その結果、局所歪みが発生しがたくなり、一様
延びが大きくなり、ひいては破断伸びが向上する現象を
利用するものであるが、フェライト相を主たる構成組織
とするステンレス鋼においては、オーステナイト相とフ
ェライト相を共存させることが困難であるため実用化さ
れていなかった。
ナイト系ステンレス鋼や残留オーステナイト相を含有す
る低合金鋼では、たとえば日本金属学会報第27巻第8
号(1998)第623頁以下に記載されているように
いわゆるTRIP(変態誘起塑性)現象を利用して延性
を向上することが行われている。これはオーステナイト
相を含む鋼に塑性加工を加えると、塑性歪みが加わった
部分ではオーステナイト相がマルテンサイ相に変態し硬
化するため、その後の加工においてその部分の変形が抑
制され、その結果、局所歪みが発生しがたくなり、一様
延びが大きくなり、ひいては破断伸びが向上する現象を
利用するものであるが、フェライト相を主たる構成組織
とするステンレス鋼においては、オーステナイト相とフ
ェライト相を共存させることが困難であるため実用化さ
れていなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明はフェライト系
ステンレス鋼の延性の向上を従来のようなコストの高い
鋼の高純化によらず、比較的安価な手段を用いて行うこ
とを目的とし、特に塑性加工時においてTRIP効果を
極めて有効に利用できるフェライト相を主たる構成組織
とするステンレス鋼およびその製造方法を提供するもの
であり、引張破断伸びが30%以上の特性を有するフェ
ライト系ステンレス鋼およびその製造方法を提供するこ
とを目的とする。
ステンレス鋼の延性の向上を従来のようなコストの高い
鋼の高純化によらず、比較的安価な手段を用いて行うこ
とを目的とし、特に塑性加工時においてTRIP効果を
極めて有効に利用できるフェライト相を主たる構成組織
とするステンレス鋼およびその製造方法を提供するもの
であり、引張破断伸びが30%以上の特性を有するフェ
ライト系ステンレス鋼およびその製造方法を提供するこ
とを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者等はフェライト
相を主たる構成組織とするステンレス鋼において、オー
ステナイト相を5〜20%残留させ、かつ、マルテンサ
イト相を5%以下に制限すればTRIP現象を有効に利
用することができ、高い延性が得られることを見いだし
て本発明を完成したものである。具体的には、フェライ
ト相を主たる構成相とするフェライト系ステンレス鋼の
組成を、質量比でC:0.10%以下、Si:1.0%
以下、Mn:1.5%以下、Cr:16.0%以上、2
5.0%以下、N:0.020%以上、0.070%以
下、残部鉄および不可避的不純物からなり、かつ、Cr
当量:17.5%以上、24.5%以下、Ni当量:
2.0%以上、6.0%以下をそれぞれ満足するととも
に、鋼の組織を室温においてフェライト相を主たる構成
相としながら、残留オーステナイト相を5%以上、20
%以下含有するとともにマルテンサイト相を5%以下に
制限してなるものとするものである。ここに、 Cr当量=Cr%+Mo%+1.5Si%、 Ni当量=Ni%+30C%+30N%+0.5Mn% と定義される。
相を主たる構成組織とするステンレス鋼において、オー
ステナイト相を5〜20%残留させ、かつ、マルテンサ
イト相を5%以下に制限すればTRIP現象を有効に利
用することができ、高い延性が得られることを見いだし
て本発明を完成したものである。具体的には、フェライ
ト相を主たる構成相とするフェライト系ステンレス鋼の
組成を、質量比でC:0.10%以下、Si:1.0%
以下、Mn:1.5%以下、Cr:16.0%以上、2
5.0%以下、N:0.020%以上、0.070%以
下、残部鉄および不可避的不純物からなり、かつ、Cr
当量:17.5%以上、24.5%以下、Ni当量:
2.0%以上、6.0%以下をそれぞれ満足するととも
に、鋼の組織を室温においてフェライト相を主たる構成
相としながら、残留オーステナイト相を5%以上、20
%以下含有するとともにマルテンサイト相を5%以下に
制限してなるものとするものである。ここに、 Cr当量=Cr%+Mo%+1.5Si%、 Ni当量=Ni%+30C%+30N%+0.5Mn% と定義される。
【0006】また、本発明は前記鋼の組成において、さ
らにCu:1.0%以下、Ni:3.0%以下の1種ま
たは2種、あるいはAl:1.0%以下、Mo:1.0
%以下の1種または2種、あるいはこれらの双方を含有
させるものである。
らにCu:1.0%以下、Ni:3.0%以下の1種ま
たは2種、あるいはAl:1.0%以下、Mo:1.0
%以下の1種または2種、あるいはこれらの双方を含有
させるものである。
【0007】さらに本発明は上記フェライト系ステンレ
ス鋼の製造方法として、熱間圧延および冷間圧延を行っ
て得た冷延鋼板の最終焼鈍工程において、加熱温度をフ
ェライト相とオーステナイト相からなる2相域から高温
のフェライト相単相に変態完了する温度Tαと(Tα−
100)℃の間の温度範囲とし、かつ、その後の冷却速
度を800℃まで平均冷却速度、5℃/s以上とする焼
鈍方法を採用するものである。
ス鋼の製造方法として、熱間圧延および冷間圧延を行っ
て得た冷延鋼板の最終焼鈍工程において、加熱温度をフ
ェライト相とオーステナイト相からなる2相域から高温
のフェライト相単相に変態完了する温度Tαと(Tα−
100)℃の間の温度範囲とし、かつ、その後の冷却速
度を800℃まで平均冷却速度、5℃/s以上とする焼
鈍方法を採用するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】まず本発明のフェライト系ステン
レス鋼の組成について説明する。 C:0.10%以下 Cはオーステナイト生成元素であり、しかも拡散係数な
らびにオーステナイト相への平衡分配係数が比較的大き
いために高温の2相域の状態でオーステナイト相へより
多く平衡分配され、オーステナイト相の確保ならびに安
定化に有効である。したがって、オーステナイト相の安
定生成のための必須添加元素であるが、0.10%を越
えて含有すると炭化物を多く析出し、耐食性を阻害する
ため上限を0.1%に制限する。
レス鋼の組成について説明する。 C:0.10%以下 Cはオーステナイト生成元素であり、しかも拡散係数な
らびにオーステナイト相への平衡分配係数が比較的大き
いために高温の2相域の状態でオーステナイト相へより
多く平衡分配され、オーステナイト相の確保ならびに安
定化に有効である。したがって、オーステナイト相の安
定生成のための必須添加元素であるが、0.10%を越
えて含有すると炭化物を多く析出し、耐食性を阻害する
ため上限を0.1%に制限する。
【0009】Si:1.0%以下
Siは脱酸剤として有効であるが、1.0%を越えると
鋼を脆化させるので上限を1.0%として脱酸に必要な
範囲において添加する。
鋼を脆化させるので上限を1.0%として脱酸に必要な
範囲において添加する。
【0010】Mn:1.5%以下
Mnはオーステナイト生成元素であり、また、Sの無害
化のため有効であるが、過剰に添加すると鋼を脆化させ
るため、上限を1.5%として適宜添加する。
化のため有効であるが、過剰に添加すると鋼を脆化させ
るため、上限を1.5%として適宜添加する。
【0011】Cr:16%以上、25%以下
Crはフェライト生成元素であり、また不動態皮膜の構
成元素であり、耐食性の確保のためフェライト系ステン
レス鋼の必須添加元素である。これらの機能の発揮のた
めには、16.0%以上の添加が必要であるが、25.
0%を越えると鋼の脆化をもたらすので、上限を25.
0%に限定する。なお、後に示すようにCr当量を満足
することが必要である。
成元素であり、耐食性の確保のためフェライト系ステン
レス鋼の必須添加元素である。これらの機能の発揮のた
めには、16.0%以上の添加が必要であるが、25.
0%を越えると鋼の脆化をもたらすので、上限を25.
0%に限定する。なお、後に示すようにCr当量を満足
することが必要である。
【0012】N:0.020%以上、0.070%以下
Nはオーステナイト生成元素であり、しかも拡散係数な
らびにオーステナイト相への平衡分配係数が極めて大き
い元素なので、高温の2相域の状態でオーステナイト相
へより多く平衡分配され、オーステナイト相の確保なら
びに安定化に極めて有効である。したがって、0.02
0%以上添加する。しかし、過剰に添加すると窒化物を
多く析出し、かえって延性を劣化するので0.070%
以下の範囲でとする。
らびにオーステナイト相への平衡分配係数が極めて大き
い元素なので、高温の2相域の状態でオーステナイト相
へより多く平衡分配され、オーステナイト相の確保なら
びに安定化に極めて有効である。したがって、0.02
0%以上添加する。しかし、過剰に添加すると窒化物を
多く析出し、かえって延性を劣化するので0.070%
以下の範囲でとする。
【0013】本発明に係る鋼の基本組成は、上記成分を
含有し、残部が鉄および不可避的不純物、たとえばP、
Sなどであるが、さらに以下に示す成分を選択的に加え
ることができる。 Cu:1.0%以下、Ni:3.0%以下 これらの元素はいずれもオーステナイト生成元素であ
り、オーステナイト相の確保に有効である。従って鋼の
合金コストをいたずらに上昇させない範囲で、適宜添加
するのがよい。具体的には、それぞれ1.0%以下、
3.0%以下の範囲で1種または2種を添加するのがよ
い。
含有し、残部が鉄および不可避的不純物、たとえばP、
Sなどであるが、さらに以下に示す成分を選択的に加え
ることができる。 Cu:1.0%以下、Ni:3.0%以下 これらの元素はいずれもオーステナイト生成元素であ
り、オーステナイト相の確保に有効である。従って鋼の
合金コストをいたずらに上昇させない範囲で、適宜添加
するのがよい。具体的には、それぞれ1.0%以下、
3.0%以下の範囲で1種または2種を添加するのがよ
い。
【0014】Al:1.0%以下、Mo:1.0%以下
これらの元素はフェライト生成元素であり、フェライト
相の確保に有効である。また、Alは不働態皮膜の形成
元素でもあり、耐食性の向上に有効である。一方、Mo
は耐孔食性の向上に有効である。しかしながらこれらの
元素は過剰に添加すると鋼の脆化を惹き起こすので、い
ずれも上限を1.0%として1種又は2種を添加する。
なお、鋼の所要特性に応じ、上記フェライト生成元素と
前記オーステナイト生成元素を併用することもできる。
相の確保に有効である。また、Alは不働態皮膜の形成
元素でもあり、耐食性の向上に有効である。一方、Mo
は耐孔食性の向上に有効である。しかしながらこれらの
元素は過剰に添加すると鋼の脆化を惹き起こすので、い
ずれも上限を1.0%として1種又は2種を添加する。
なお、鋼の所要特性に応じ、上記フェライト生成元素と
前記オーステナイト生成元素を併用することもできる。
【0015】Cr当量:17.5%以上、24.5%以
下 本発明では後に示すように適量のオーステナイト相を残
留させ、かつマルテンサイト相を極力形成させないよう
にしなければならないが、かかる組織にするには単に上
記のように組成範囲を限定するだけでは不十分である。
鋼の組成全体のバランスにより鋼を構成する相分率が決
定されることに留意しなければならない。特に、Cr当
量およびNi当量に留意しなければならない。Cr当量
は、 Cr当量=Cr%+Mo%+1.5Si% により規定されるが、この値が17.5%未満ではオー
ステナイト相が不安定になり、マルテンサイト相が生じ
やすくなり、本発明において必要な組織構成が得られな
くなる。一方、24.5%を越えると高温でのオーステ
ナイト相の確保が困難になる。したがってCr当量は1
7.5%以上、24.5%以下に限定される。
下 本発明では後に示すように適量のオーステナイト相を残
留させ、かつマルテンサイト相を極力形成させないよう
にしなければならないが、かかる組織にするには単に上
記のように組成範囲を限定するだけでは不十分である。
鋼の組成全体のバランスにより鋼を構成する相分率が決
定されることに留意しなければならない。特に、Cr当
量およびNi当量に留意しなければならない。Cr当量
は、 Cr当量=Cr%+Mo%+1.5Si% により規定されるが、この値が17.5%未満ではオー
ステナイト相が不安定になり、マルテンサイト相が生じ
やすくなり、本発明において必要な組織構成が得られな
くなる。一方、24.5%を越えると高温でのオーステ
ナイト相の確保が困難になる。したがってCr当量は1
7.5%以上、24.5%以下に限定される。
【0016】Ni当量は
Ni%+30C%+30N%+0.5Mn%
により規定されるが、この値が2.0%未満では高温の
オーステナイト相の確保が困難であり、一方、6.0%
を越えるとオーステナイト相分率が過剰になり、いずれ
も本発明において必要な組織を得ることができなくな
る。したがってNi当量は2.0%以上、6.0%以下
とする。
オーステナイト相の確保が困難であり、一方、6.0%
を越えるとオーステナイト相分率が過剰になり、いずれ
も本発明において必要な組織を得ることができなくな
る。したがってNi当量は2.0%以上、6.0%以下
とする。
【0017】本発明においてはフェライト相を主たる構
成相としながらTRIP現象によって優れた延性を保有
させるが、そのためには鋼の組織中に5ないし20%の
オーステナイト相を残留させなければならない。オース
テナイト相が5%未満では、塑性変形の進行する部分で
の強度上昇効果が小さいため、塑性変形の際の局部伸び
を抑制することができず、TRIP現象の特徴である大
きな一様伸びを得ることができない。一方、残留オース
テナイト相が20%を越えて存在してもTRIP現象に
よる伸び上昇効果は飽和し、合金添加コストの上昇を招
くだけであるので、残留オーステナイト相の上限は20
%とする。
成相としながらTRIP現象によって優れた延性を保有
させるが、そのためには鋼の組織中に5ないし20%の
オーステナイト相を残留させなければならない。オース
テナイト相が5%未満では、塑性変形の進行する部分で
の強度上昇効果が小さいため、塑性変形の際の局部伸び
を抑制することができず、TRIP現象の特徴である大
きな一様伸びを得ることができない。一方、残留オース
テナイト相が20%を越えて存在してもTRIP現象に
よる伸び上昇効果は飽和し、合金添加コストの上昇を招
くだけであるので、残留オーステナイト相の上限は20
%とする。
【0018】しかしながらオーステナイト相が上記のよ
うに5%以上、20%以下であっても、マルテンサイト
相が多量に存在するときには、もはやオーステナイト相
のマルテンサイト相への変態によるTRIP現象による
効果は期待できない。したがってマルテンサイト相は5
%以下に制限しなければならない。このことはオーステ
ナイトが残留する鋼組成においては特に注意すべきであ
り、製造上は次に示す熱処理条件の選択によって解決が
図られる。なお、マルテンサイト相は上記観点から特に
好ましくは、3%以下とするのがよい。
うに5%以上、20%以下であっても、マルテンサイト
相が多量に存在するときには、もはやオーステナイト相
のマルテンサイト相への変態によるTRIP現象による
効果は期待できない。したがってマルテンサイト相は5
%以下に制限しなければならない。このことはオーステ
ナイトが残留する鋼組成においては特に注意すべきであ
り、製造上は次に示す熱処理条件の選択によって解決が
図られる。なお、マルテンサイト相は上記観点から特に
好ましくは、3%以下とするのがよい。
【0019】上記組成および組織にかかる条件を満たせ
ば、塑性加工の際、TRIP現象による一様伸びが得ら
れ、本発明の目的が達せられるが、かかる組織を得るた
めには以下に示す熱処理を施すのがよい。まず、冷延鋼
帯を最終焼鈍する際、フェライトおよびオーステナイト
の2相組織領域に加熱するのである。この2相領域にお
いては、高温であるほどNがオーステナイト相に多く分
配され、オーステナイト相が安定化し、TRIP現象に
よる延性向上効果が顕著に現れる。そこで加熱温度はフ
ェライトおよびオーステナイトの2相域から高温のフェ
ライト単相領域に変態完了する温度Tαを基準とし、こ
の温度から100℃以内に加熱することとする。すなわ
ち、加熱温度範囲は、 Tα以下、Tα−100℃以上 とする。なお、上記加熱温度は通常のフェライト系ステ
ンレス鋼の焼鈍が比較的低温のα単相領域(例えば85
0℃)で行われるのに比較すると高温側にある。
ば、塑性加工の際、TRIP現象による一様伸びが得ら
れ、本発明の目的が達せられるが、かかる組織を得るた
めには以下に示す熱処理を施すのがよい。まず、冷延鋼
帯を最終焼鈍する際、フェライトおよびオーステナイト
の2相組織領域に加熱するのである。この2相領域にお
いては、高温であるほどNがオーステナイト相に多く分
配され、オーステナイト相が安定化し、TRIP現象に
よる延性向上効果が顕著に現れる。そこで加熱温度はフ
ェライトおよびオーステナイトの2相域から高温のフェ
ライト単相領域に変態完了する温度Tαを基準とし、こ
の温度から100℃以内に加熱することとする。すなわ
ち、加熱温度範囲は、 Tα以下、Tα−100℃以上 とする。なお、上記加熱温度は通常のフェライト系ステ
ンレス鋼の焼鈍が比較的低温のα単相領域(例えば85
0℃)で行われるのに比較すると高温側にある。
【0020】上記の条件により2相域に加熱された鋼板
はその後冷却されるが、その際冷却速度を大きく取るこ
とが重要である。すなわち、一旦高温の2相域において
N等のオーステナイト安定化元素の多く分配した相が形
成されても、その後温度が低下するとオーステナイト相
中のこれら元素の含有量(分配比)が低下し、そのため
オーステナイト相の安定度が低下し、最終的に残留オー
ステナイト相分率の低下あるいはマルテンサイト相の過
剰な生成をもたらす。このような悪影響は、冷却速度が
5℃/sより小さいと顕著になる。従って、2相域から
の冷却速度は5℃/s以上とする。なお、この場合にお
いて鋼板の温度が800℃より低下した温度範囲におい
ては、もはや冷却速度の影響は現れないので、冷却速度
の制御範囲は上記加熱温度から800℃までの範囲とす
る。
はその後冷却されるが、その際冷却速度を大きく取るこ
とが重要である。すなわち、一旦高温の2相域において
N等のオーステナイト安定化元素の多く分配した相が形
成されても、その後温度が低下するとオーステナイト相
中のこれら元素の含有量(分配比)が低下し、そのため
オーステナイト相の安定度が低下し、最終的に残留オー
ステナイト相分率の低下あるいはマルテンサイト相の過
剰な生成をもたらす。このような悪影響は、冷却速度が
5℃/sより小さいと顕著になる。従って、2相域から
の冷却速度は5℃/s以上とする。なお、この場合にお
いて鋼板の温度が800℃より低下した温度範囲におい
ては、もはや冷却速度の影響は現れないので、冷却速度
の制御範囲は上記加熱温度から800℃までの範囲とす
る。
【0021】
【実施例】以下、本発明の実施例を比較例とともに示
す。表1に示す組成を有する鋼を溶製し、スラブとした
後熱間圧延、冷間圧延を行って板厚0.7mmのフェラ
イト系ステンレス鋼板を製造した。鋼AないしEは本発
明に規定する組成範囲を満足する鋼であるが、Fないし
Jは本発明の範囲を逸脱する鋼である。すなわち、鋼F
はCr含有量およびCr当量が低すぎ、鋼GはCrおよ
びCr当量が高すぎる鋼である。鋼HはN含有量が高す
ぎ、一方、鋼IはN含有量が低すぎる鋼である。鋼Jは
Niを多く含有し、そのためNi当量が高すぎる鋼であ
る。
す。表1に示す組成を有する鋼を溶製し、スラブとした
後熱間圧延、冷間圧延を行って板厚0.7mmのフェラ
イト系ステンレス鋼板を製造した。鋼AないしEは本発
明に規定する組成範囲を満足する鋼であるが、Fないし
Jは本発明の範囲を逸脱する鋼である。すなわち、鋼F
はCr含有量およびCr当量が低すぎ、鋼GはCrおよ
びCr当量が高すぎる鋼である。鋼HはN含有量が高す
ぎ、一方、鋼IはN含有量が低すぎる鋼である。鋼Jは
Niを多く含有し、そのためNi当量が高すぎる鋼であ
る。
【0022】これらの成分を有するフェライト系冷延鋼
板に対して、表2に示す条件で焼鈍を行ない、焼鈍後の
鋼板にの残留オーステナイト量、マルテンサイト量の測
定、および引張破断試験による引張破断伸びの測定を行
った。引張破断試験は鋼板からJIS Z 2201−
13B引張試験片(板状引張試験片:板厚0.7mm、
標点間距離50mm、平行部幅12.5mm)を切りだ
し、JIS Z 2241に準拠して室温で引張試験を
実施したものである。得られた測定結果は、焼鈍条件と
併せて表2に示す。
板に対して、表2に示す条件で焼鈍を行ない、焼鈍後の
鋼板にの残留オーステナイト量、マルテンサイト量の測
定、および引張破断試験による引張破断伸びの測定を行
った。引張破断試験は鋼板からJIS Z 2201−
13B引張試験片(板状引張試験片:板厚0.7mm、
標点間距離50mm、平行部幅12.5mm)を切りだ
し、JIS Z 2241に準拠して室温で引張試験を
実施したものである。得られた測定結果は、焼鈍条件と
併せて表2に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】これらの結果から本発明に規定する組成お
よび組織条件(残留オーステナイト量およびマルテンサ
イト量)を満足するものが、高い引張破断伸び、すなわ
ち高い延性を示し、一方、組成条件、焼鈍条件等を満足
しない理由により組織条件が満たされなかった鋼は、い
ずれも引張破断伸びが低い。なお、表2に示す試験番号
13(鋼J)はNiが高いものであり、残留オーステナ
イト量、マルテンサイト量など組織条件は満たしてお
り、引張破断伸びも高いが、高価であるため、本発明の
適用範囲から除外されるものである。
よび組織条件(残留オーステナイト量およびマルテンサ
イト量)を満足するものが、高い引張破断伸び、すなわ
ち高い延性を示し、一方、組成条件、焼鈍条件等を満足
しない理由により組織条件が満たされなかった鋼は、い
ずれも引張破断伸びが低い。なお、表2に示す試験番号
13(鋼J)はNiが高いものであり、残留オーステナ
イト量、マルテンサイト量など組織条件は満たしてお
り、引張破断伸びも高いが、高価であるため、本発明の
適用範囲から除外されるものである。
【0026】
【発明の効果】本発明によりフェライト系ステンレス鋼
でありながら、引張試験破断伸びに代表される延性が極
めて高いステンレス鋼を製造することができ、自動車、
家電、厨房、建材などをステンレス鋼により冷間で製造
することが極めて容易になった。
でありながら、引張試験破断伸びに代表される延性が極
めて高いステンレス鋼を製造することができ、自動車、
家電、厨房、建材などをステンレス鋼により冷間で製造
することが極めて容易になった。
Claims (5)
- 【請求項1】 鋼組成が、質量比でC:0.10%以
下、Si:1.0%以下、Mn:1.5%以下、Cr:
16.0%以上、25.0%以下、N:0.020%以
上、0.070%以下、を含有し、残部が鉄および不可
避的不純物からなり、かつCr当量:17.5%以上、
24.5%以下、Ni当量:2.0%以上、6.0%以
下をそれぞれ満足するとともに、 室温における組織が、 フェライト相を主構成相とし、かつ、残留オーステナイ
ト相を5%以上、20%以下含有するとともに、マルテ
ンサイト相を5%以下に制限してなることを特徴とする
延性に優れたフェライト系ステンレス鋼。ここに、 Cr当量=Cr%+Mo%+1.5Si%、 Ni当量=Ni%+30C%+30N%+0.5Mn% - 【請求項2】 鋼組成が、質量比でC :0.10%以
下、Si:1.0%以下、Mn:1.5%以下、Cr:
16.0%以上、25.0%以下、N:0.020%以
上、0.070%以下、および、Cu:1.0%以下、
Ni:3.0%以下、の1種又は2種を含有し、残部が
鉄および不可避的不純物からなり、かつCr当量:1
7.5%以上、24.5%以下、Ni当量:2.0%以
上、6.0%以下をそれぞれ満足することを特徴とする
請求項1記載の延性に優れたフェライト系ステンレス
鋼。 - 【請求項3】 鋼組成が、質量比でC :0.10%以
下、Si:1.0%以下、Mn:1.5%以下、Cr:
16.0%以上、25.0%以下、N:0.020%以
上、0.070%以下、および、Al:1.0%以下、
Mo:1.0%以下、の1種又は2種を含有し、残部が
鉄および不可避的不純物からなり、かつCr当量:1
7.5%以上、24.5%以下、Ni当量:2.0%以
上、6.0%以下をそれぞれ満足することを特徴とする
請求項1記載の延性に優れたフェライト系ステンレス
鋼。 - 【請求項4】 鋼組成が、質量比でC :0.10%以
下、Si:1.0%以下、Mn:1.5%以下、Cr:
16.0%以上、25.0%以下、N:0.020%以
上、0.070%以下、およびCu:1.0%以下、N
i:3.0%以下、の1種または2種ならびにAl:
1.0%以下、Mo:1.0%以下、の1種又は2種を
含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり、かつ
Cr当量:17.5%以上、24.5%以下、Ni当
量:2.0%以上、6.0%以下をそれぞれ満足するこ
とを特徴とする請求項1記載の延性に優れたフェライト
系ステンレス鋼。 - 【請求項5】 熱間圧延および冷間圧延を行って得た冷
延板に対する最終焼鈍工程において、フェライト相とオ
ーステナイト相からなる2相域から高温のフェライト相
単相に変態完了する温度Tαと(Tα−100)℃の間
の温度範囲に加熱し、その後800℃までの平均冷却速
度を5℃/s以上として冷却することを特徴とする請求
項1ないし4のいずれかに記載の延性に優れたフェライ
ト系ステンレス鋼の製造方法。
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