JP3456224B2 - アルミニウム合金製部材の製造方法 - Google Patents
アルミニウム合金製部材の製造方法Info
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、アルミニウム合金製部
材の製造方法に関し、より詳しくはアルミニウム合金部
材の摺接部における耐摩耗性を向上させるものに関す
る。
材の製造方法に関し、より詳しくはアルミニウム合金部
材の摺接部における耐摩耗性を向上させるものに関す
る。
【0002】
【従来技術】部材の軽量化を図り得る素材としてアルミ
ニウム合金が知られてる。例えば、自動車用エンジンに
おいても、シリンダヘッドのアルミニウム合金化が実用
段階に入っている。
ニウム合金が知られてる。例えば、自動車用エンジンに
おいても、シリンダヘッドのアルミニウム合金化が実用
段階に入っている。
【0003】ところで、シリンダヘッドのバルブシー
ト、つまり吸気弁、排気弁等の機関弁が摺接する弁座部
は、バルブシート部材と呼ばれる別部品を用いて構成す
るのが一般的である。具体的に説明すると、一般車両に
あっては、鋳鉄あるいは鉄系焼結材で形成されたバルブ
シート部材を焼き嵌めすることによりシリンダヘッドに
対する組み付けが行われており、他方、レース用車両に
あっては、銅系合金からなるバルブシート部材を焼き嵌
めすることによりその組み付けが行われている。しかし
ながら、このような方法によれば、バルブシート部材が
別部品であるが故にその保持性を確実なものにすべく、
バルブシート部材を大きな形状にせざるを得ず、このた
めバルブ回りにおける設計上の自由度、例えばポート径
の拡大あるいは多弁化にかなりの制約を受けているのが
現状である。
ト、つまり吸気弁、排気弁等の機関弁が摺接する弁座部
は、バルブシート部材と呼ばれる別部品を用いて構成す
るのが一般的である。具体的に説明すると、一般車両に
あっては、鋳鉄あるいは鉄系焼結材で形成されたバルブ
シート部材を焼き嵌めすることによりシリンダヘッドに
対する組み付けが行われており、他方、レース用車両に
あっては、銅系合金からなるバルブシート部材を焼き嵌
めすることによりその組み付けが行われている。しかし
ながら、このような方法によれば、バルブシート部材が
別部品であるが故にその保持性を確実なものにすべく、
バルブシート部材を大きな形状にせざるを得ず、このた
めバルブ回りにおける設計上の自由度、例えばポート径
の拡大あるいは多弁化にかなりの制約を受けているのが
現状である。
【0004】このような問題を解決する手法として、特
公平2ー58444号公報に見られるように、シリンダ
ヘッドの弁座部に直接耐摩耗銅合金を肉盛りしてバルブ
シートを形成する方法が開発され、シートレスシリンダ
ヘッドと呼ばれて既に実用化されている。このシートレ
スシリンダヘッドによれば、銅合金からなるバルブシー
トとシリンダヘッドとが溶着しているため、バルブフェ
ース面と接触する必要最小限の部位だけバルブシート部
を形成すればよいという利点がある。
公平2ー58444号公報に見られるように、シリンダ
ヘッドの弁座部に直接耐摩耗銅合金を肉盛りしてバルブ
シートを形成する方法が開発され、シートレスシリンダ
ヘッドと呼ばれて既に実用化されている。このシートレ
スシリンダヘッドによれば、銅合金からなるバルブシー
トとシリンダヘッドとが溶着しているため、バルブフェ
ース面と接触する必要最小限の部位だけバルブシート部
を形成すればよいという利点がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、銅合金
は鉄系材料に比べて高硬度化しにくく、近時、エンジン
における高出力及び高回転化の要請に対して長時間耐摩
耗性を維持するのに問題を有している。
は鉄系材料に比べて高硬度化しにくく、近時、エンジン
における高出力及び高回転化の要請に対して長時間耐摩
耗性を維持するのに問題を有している。
【0006】そこで、本発明の目的は、肉盛層からなる
摺接部の耐摩耗性が向上されるアルミニウム合金製部材
を容易に製造できるアルミニウム合金製部材の製造方法
を提供することにある。
摺接部の耐摩耗性が向上されるアルミニウム合金製部材
を容易に製造できるアルミニウム合金製部材の製造方法
を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明(請求項1に係る発明)にあっては、アルミニ
ウム合金製基材上に、摺接部としてエンジンにおけるシ
リンダヘッドの機関弁用弁座部を形成するべく、摺接部
形成部位において銅合金層からなる第1肉盛層を形成し
た後、該第1肉盛層上に、肉盛層用粉末として、Cr3
C2粉末を約20重量%〜約30重量%用意するととも
に、Crを約10重量%〜約40重量%含む鉄合金粉末
を約80重量%〜約70重量%用意し、前記Cr3C2粉
末と前記鉄合金粉末の混合粉末に対して高密度エネルギ
源を照射して、鉄合金層からなる第2肉盛層を形成す
る、ことを特徴とするアルミニウム合金製部材の製造方
法とした構成としてある。この請求項1の好ましい態様
としては、請求項2に記載の通りとなる。
に本発明(請求項1に係る発明)にあっては、アルミニ
ウム合金製基材上に、摺接部としてエンジンにおけるシ
リンダヘッドの機関弁用弁座部を形成するべく、摺接部
形成部位において銅合金層からなる第1肉盛層を形成し
た後、該第1肉盛層上に、肉盛層用粉末として、Cr3
C2粉末を約20重量%〜約30重量%用意するととも
に、Crを約10重量%〜約40重量%含む鉄合金粉末
を約80重量%〜約70重量%用意し、前記Cr3C2粉
末と前記鉄合金粉末の混合粉末に対して高密度エネルギ
源を照射して、鉄合金層からなる第2肉盛層を形成す
る、ことを特徴とするアルミニウム合金製部材の製造方
法とした構成としてある。この請求項1の好ましい態様
としては、請求項2に記載の通りとなる。
【0008】
【発明の効果】請求項1に係る発明によれば、Cr3C2
粉末と共に用意した鉄合金粉末に所定割合のCrが含め
てあることから、肉盛処理時に、融点を低下させて肉盛
し易くする他に、Cr3C2中のCrが鉄合金中に溶解し
て該Cr3C2が減少することを防止することになり、第
2肉盛層中のCr3C2粒子を、当初通りCr3C2粉末割
合と同じく、約20重量%〜約30重量%の割合をもっ
て分散含有させておくことができることになる。これに
より、アルミニウム合金製部材として、アルミニウム合
金製基材上に摺接部が設けられ、前記摺接部が、前記基
材上に設けられる第1肉盛層と、該第1肉盛層上に設け
られる第2肉盛層とで構成され、前記第1肉盛層が銅合
金層からなり、前記第2肉盛層が、Cr3C2粒子を約2
0重量%〜約30重量%分散含有する鉄合金層からなる
ものを、容易に製造できることになり、この製造された
アルミニウム合金製部材においては、第1肉盛層に、ア
ルミニウム合金製基材、第2肉盛層としての鉄合金層の
両者に対して接合性の良い銅合金層が用いられることに
基づき、鉄合金層が銅合金層を介してアルミニウム合金
製基材に良好に接合される一方、最外層としての鉄合金
層は、その構成要素としての所定割合のCr3C2粒子に
より耐摩耗性が効果的に高められることになる。したが
って、当該製造方法を用いることによって、肉盛層から
なる摺接部の耐摩耗性が向上されるアルミニウム合金製
部材を容易に製造できることになる。しかも、この製造
方法に係るアルミニウム合金製部材にはCrが含有され
ることになることから、耐食性をも向上させたものとな
る。
粉末と共に用意した鉄合金粉末に所定割合のCrが含め
てあることから、肉盛処理時に、融点を低下させて肉盛
し易くする他に、Cr3C2中のCrが鉄合金中に溶解し
て該Cr3C2が減少することを防止することになり、第
2肉盛層中のCr3C2粒子を、当初通りCr3C2粉末割
合と同じく、約20重量%〜約30重量%の割合をもっ
て分散含有させておくことができることになる。これに
より、アルミニウム合金製部材として、アルミニウム合
金製基材上に摺接部が設けられ、前記摺接部が、前記基
材上に設けられる第1肉盛層と、該第1肉盛層上に設け
られる第2肉盛層とで構成され、前記第1肉盛層が銅合
金層からなり、前記第2肉盛層が、Cr3C2粒子を約2
0重量%〜約30重量%分散含有する鉄合金層からなる
ものを、容易に製造できることになり、この製造された
アルミニウム合金製部材においては、第1肉盛層に、ア
ルミニウム合金製基材、第2肉盛層としての鉄合金層の
両者に対して接合性の良い銅合金層が用いられることに
基づき、鉄合金層が銅合金層を介してアルミニウム合金
製基材に良好に接合される一方、最外層としての鉄合金
層は、その構成要素としての所定割合のCr3C2粒子に
より耐摩耗性が効果的に高められることになる。したが
って、当該製造方法を用いることによって、肉盛層から
なる摺接部の耐摩耗性が向上されるアルミニウム合金製
部材を容易に製造できることになる。しかも、この製造
方法に係るアルミニウム合金製部材にはCrが含有され
ることになることから、耐食性をも向上させたものとな
る。
【0009】請求項2に係る発明によれば、Cr3C2粉
末の粒径が100ミクロン以下であることから、肉盛処
理時に、Cr3C2粉末は適切に溶融することになる。こ
のため、肉盛処理を的確に行うことができることにな
る。
末の粒径が100ミクロン以下であることから、肉盛処
理時に、Cr3C2粉末は適切に溶融することになる。こ
のため、肉盛処理を的確に行うことができることにな
る。
【0010】
【実施例】以下に、具体的な実施例に基づいて本発明を
詳細に説明する。図1において、1はアルミニウム合金
製部材としてのシリンダヘッドで、そのシリンダヘッド
1の基材2は、アルミニウム合金、具体的には、JIS AC
4Dにより形成されている。このシリンダヘッド1の基材
2には、吸気ポートあるいは排気ポート3のシリンダブ
ロック側開口端において面取部4が形成されており、こ
の面取部4は、シリンダヘッドの基材2におけるブロッ
ク合わせ面5に対して傾斜角度45度、6mm幅となるよ
うに面取り加工されている。尚、図1中、9はバルブ孔
である。
詳細に説明する。図1において、1はアルミニウム合金
製部材としてのシリンダヘッドで、そのシリンダヘッド
1の基材2は、アルミニウム合金、具体的には、JIS AC
4Dにより形成されている。このシリンダヘッド1の基材
2には、吸気ポートあるいは排気ポート3のシリンダブ
ロック側開口端において面取部4が形成されており、こ
の面取部4は、シリンダヘッドの基材2におけるブロッ
ク合わせ面5に対して傾斜角度45度、6mm幅となるよ
うに面取り加工されている。尚、図1中、9はバルブ孔
である。
【0011】上記面取部4上には、第1肉盛層6と、該
第1肉盛層6上に配設される第2肉盛層7とが設けら
れ、これらにより、吸気弁あるいは排気弁(共に図示せ
ず)のバルブシ−ト部(摺接部)8が形成されている。
第1肉盛層6上に配設される第2肉盛層7とが設けら
れ、これらにより、吸気弁あるいは排気弁(共に図示せ
ず)のバルブシ−ト部(摺接部)8が形成されている。
【0012】上記第1肉盛層6は、0.5〜1.5 mm
の層厚もって銅合金層により形成されており、この銅合
金層には、NiとSiとが含有されている。
の層厚もって銅合金層により形成されており、この銅合
金層には、NiとSiとが含有されている。
【0013】上記Niは、肉盛処理時に融点を下げて肉
盛し易くすると共に、肉盛材の硬度を高めるために含有
されることになっており、本実施例においては、Ni量
は第1肉盛層6全体に対して10〜50重量%とされて
いる。これは、図2に示すように、Ni量を10重量%
未満とすると、良好に肉盛ができないと共に所定以上の
硬度(硬さ)を得られない一方、Ni量が50重量%を
越えると、基材2のアルミニウム合金と反応して脆弱な
金属間化合物を生成し、第1肉盛層6と基材2との界面
を脆くし、所定の接合強度を得られないからである。
尚、図2に示す接合強度比は次の関係式で定義される。 接合強度比=接合強度/ バルブシートの要求強度
盛し易くすると共に、肉盛材の硬度を高めるために含有
されることになっており、本実施例においては、Ni量
は第1肉盛層6全体に対して10〜50重量%とされて
いる。これは、図2に示すように、Ni量を10重量%
未満とすると、良好に肉盛ができないと共に所定以上の
硬度(硬さ)を得られない一方、Ni量が50重量%を
越えると、基材2のアルミニウム合金と反応して脆弱な
金属間化合物を生成し、第1肉盛層6と基材2との界面
を脆くし、所定の接合強度を得られないからである。
尚、図2に示す接合強度比は次の関係式で定義される。 接合強度比=接合強度/ バルブシートの要求強度
【0014】上記Siは、第1肉盛層6の肉盛処理時
に、溶融金属の湯流れを良好にし滑らかなビードを形成
し易くするために含有されることになっており、本実施
例においては、Si量は、上述した第1肉盛層6全体に
対して1.0重量%〜4.0重量%とされている。これ
は、Siを1.0重量%以上の含有とすることで、自溶
性を有しハンピングビード及び欠肉のない良好な肉盛り
が可能になるが、Si 量が4.0重量%を越えると肉盛
り材が脆弱になりクラックあるいは欠肉等の不都合が生
じるからである。
に、溶融金属の湯流れを良好にし滑らかなビードを形成
し易くするために含有されることになっており、本実施
例においては、Si量は、上述した第1肉盛層6全体に
対して1.0重量%〜4.0重量%とされている。これ
は、Siを1.0重量%以上の含有とすることで、自溶
性を有しハンピングビード及び欠肉のない良好な肉盛り
が可能になるが、Si 量が4.0重量%を越えると肉盛
り材が脆弱になりクラックあるいは欠肉等の不都合が生
じるからである。
【0015】上記第2肉盛層7は、前記第1肉盛層6と
同様の層厚もって鉄合金層により形成されており、この
鉄合金層には、Cr3C2粒子とCrとが含有されてい
る。
同様の層厚もって鉄合金層により形成されており、この
鉄合金層には、Cr3C2粒子とCrとが含有されてい
る。
【0016】上記Cr3C2は、バルブフェースとの接触
面の高い耐摩耗性を効果的に確保するために含有される
ことになっており、Cr3C2量は第2肉盛層全体に対し
て約20重量%〜約30重量%とされている。これは、
Cr3C2量が20重量%未満では、図3に示すように、
現行のバルブシート材の耐摩耗性よりも劣ることになる
一方、Cr3C2量が30重量%を越えたときには、自摩
耗は少ないが、図4に示すように、相手となるバルブ材
の摩耗が現行のバルブ材の摩耗よりも大きくなって好ま
しくないからである。尚、図3、図4に示す比摩耗量は
次の関係式で定義され、その比摩耗量が大きくなるほど
摩耗が大きくなることを示すことになっている。 比摩耗量=摩耗重量/ (密度・摺動長さ・接触面圧)
面の高い耐摩耗性を効果的に確保するために含有される
ことになっており、Cr3C2量は第2肉盛層全体に対し
て約20重量%〜約30重量%とされている。これは、
Cr3C2量が20重量%未満では、図3に示すように、
現行のバルブシート材の耐摩耗性よりも劣ることになる
一方、Cr3C2量が30重量%を越えたときには、自摩
耗は少ないが、図4に示すように、相手となるバルブ材
の摩耗が現行のバルブ材の摩耗よりも大きくなって好ま
しくないからである。尚、図3、図4に示す比摩耗量は
次の関係式で定義され、その比摩耗量が大きくなるほど
摩耗が大きくなることを示すことになっている。 比摩耗量=摩耗重量/ (密度・摺動長さ・接触面圧)
【0017】上記Cr は、第2肉盛層7の肉盛処理時
に、融点を低下させて肉盛をし易くすると共に、前述の
Cr3C2量を変化させないで、高い耐摩耗性を維持する
ようにし、さらには、耐食性を向上させるために含有さ
れることになっており、本実施例においては、前記Cr
3C2量の残部である、Cr と鉄合金との含有割合80重
量%〜70重量%のうち、Cr 量は10重量%〜40重
量%とされている(すなわち、Cr 量は第2肉盛層7全
体に対して7〜32重量%となる)。これは、Cr が4
0重量%を越えると、図5に示すように、それまで次第
に下がっていた融点が上昇に転じて肉盛がしにくくなる
一方、Cr 量が、図6に示すように、10重量%未満で
はCr3C2のCr が基材に溶融して、高い耐摩耗性を確
保することになるCr3C2が減少してしまからである。
に、融点を低下させて肉盛をし易くすると共に、前述の
Cr3C2量を変化させないで、高い耐摩耗性を維持する
ようにし、さらには、耐食性を向上させるために含有さ
れることになっており、本実施例においては、前記Cr
3C2量の残部である、Cr と鉄合金との含有割合80重
量%〜70重量%のうち、Cr 量は10重量%〜40重
量%とされている(すなわち、Cr 量は第2肉盛層7全
体に対して7〜32重量%となる)。これは、Cr が4
0重量%を越えると、図5に示すように、それまで次第
に下がっていた融点が上昇に転じて肉盛がしにくくなる
一方、Cr 量が、図6に示すように、10重量%未満で
はCr3C2のCr が基材に溶融して、高い耐摩耗性を確
保することになるCr3C2が減少してしまからである。
【0018】したがって、このようなシートレスシリン
ダヘッドにおけるバルブシ−ト部8において、高い耐摩
耗性を確保し、さらにはCr含有に基づいて耐食性を向
上させることができることになる。それを裏付けるため
上記シートレスシリンダヘッドをエンジンに組み込ん
で、特にバルブシ−ト部8の耐摩耗性を調べたところ、
バルブシ−ト部が銅合金肉盛層だけからなるものに比べ
て耐摩耗性が10倍向上した。
ダヘッドにおけるバルブシ−ト部8において、高い耐摩
耗性を確保し、さらにはCr含有に基づいて耐食性を向
上させることができることになる。それを裏付けるため
上記シートレスシリンダヘッドをエンジンに組み込ん
で、特にバルブシ−ト部8の耐摩耗性を調べたところ、
バルブシ−ト部が銅合金肉盛層だけからなるものに比べ
て耐摩耗性が10倍向上した。
【0019】次に、アルミニウム合金製部材としての上
記シートレスシリンダヘッドの製造方法について説明す
る。
記シートレスシリンダヘッドの製造方法について説明す
る。
【0020】先ず、前記シリンダヘッド1の基材2に前
記面取部4を形成した後、図7に示すように、その面取
部4上で、前記第1肉盛層6の形成のために肉盛処理を
行う。上記第1肉盛層6の形成のための肉盛処理は、面
取部4上に、第1肉盛層6用粉末として、Ni、Siを
含むCu合金粉末をおき、そのCu合金粉末に対して高
密度エネルギ源としてのレ−ザビ−ムを照射することに
より行われる。上記Ni、Siの含有割合は、前述のそ
の各存在理由を意義あらしめるべく、前記第1肉盛層6
内での含有割合となるように調整されるが、好ましく
は、Cu合金粉末全体に対して、Niを20重量%、S
i を3.0重量%を含む200メッシュアンダー(粒径
74ミクロン以下)のCu合金粉末を用いるのがよい。
上記レ−ザビ−ムの照射は、例えば、下記条件の下で行
われる。 レ−ザビ−ム径:6.0mm レ−ザ出力:4.0KW 溶融(肉盛り)速度:0.6m/min 粉末供給量:40g/min 上記肉盛処理の最後においては、層厚調整が行われるこ
とになっており、本実施例においては、第1肉盛層6の
層厚は1mmに調整される(図7中、一点鎖線参照)。
記面取部4を形成した後、図7に示すように、その面取
部4上で、前記第1肉盛層6の形成のために肉盛処理を
行う。上記第1肉盛層6の形成のための肉盛処理は、面
取部4上に、第1肉盛層6用粉末として、Ni、Siを
含むCu合金粉末をおき、そのCu合金粉末に対して高
密度エネルギ源としてのレ−ザビ−ムを照射することに
より行われる。上記Ni、Siの含有割合は、前述のそ
の各存在理由を意義あらしめるべく、前記第1肉盛層6
内での含有割合となるように調整されるが、好ましく
は、Cu合金粉末全体に対して、Niを20重量%、S
i を3.0重量%を含む200メッシュアンダー(粒径
74ミクロン以下)のCu合金粉末を用いるのがよい。
上記レ−ザビ−ムの照射は、例えば、下記条件の下で行
われる。 レ−ザビ−ム径:6.0mm レ−ザ出力:4.0KW 溶融(肉盛り)速度:0.6m/min 粉末供給量:40g/min 上記肉盛処理の最後においては、層厚調整が行われるこ
とになっており、本実施例においては、第1肉盛層6の
層厚は1mmに調整される(図7中、一点鎖線参照)。
【0021】次に、前記第1肉盛層6上において、前記
第2肉盛層7形成のための肉盛処理を行う。上記第2肉
盛層7形成のための肉盛処理は、第1肉盛層6上に、第
2肉盛層7用粉末として、前記第2肉盛層7内での含有
割合となるように、Cr3C2粉末を20重量%〜30重
量%、10重量%〜40重量%含有割合(Fe合金粉末
全体に対する含有割合)のCr を含むFe合金粉末を残
部とする混合粉末を用意し、その混合粉末に対して高密
度エネルギ源としてのレ−ザビ−ムを照射することによ
り行われる。上記混合粉末に対するCr3C2粉末の混合
割合は、前述の第2肉盛層7完成後の高い耐摩耗性を確
保する上で重要な意味を有するが、好ましくは、その混
合割合を25重量%とするのがよい。また、上記Cr3
C2粉末には、約100ミクロン以下、好ましくは20
0メッシュアンダー(粒径74ミクロン以下)の粒径の
ものを用いるのがよい。Cr3C2粉末の粒径が約100
ミクロン以下であれば、肉盛処理時に溶融し、小さな粒
子(粒径30ミクロン以下)として残存或いは析出する
が、100ミクロンを越えた粒径のときには、図4に示
すように、大きな粒子のままで残存して、この大きな粒
子が相手となるバルブ材(吸気弁等)を損傷することに
なり、円滑な肉盛処理とはならないからである。上記混
合粉末の残部となる上記Fe合金粉末については、前述
したように、その含有物であるCr が、第2肉盛層7の
肉盛処理時に、Cr3C2の分解を抑制して、該Cr3C2
に基づく第2肉盛層7完成後における高い耐摩耗性を確
保する点で、そのFe合金粉末に対するCrの含有割合
は重要な意味を有するが、このことは同時に、製造段階
において、第2肉盛層7中の含有割合をCr3C2粉末の
混合割合として決めることができることを意味し、第2
肉盛層7におけるCr3C2の含有割合を高い耐摩耗性を
確保できる範囲に容易に設定できることを意味する。こ
のFe合金粉末に対するCrの含有割合は、好ましくは
12.5重量%がよい。上記レ−ザビ−ムの照射は、前
記第1肉盛層6形成の肉盛処理の場合と同様の条件の下
で行われ、また、この後、やはり、第1肉盛層6の場合
同様、第2肉盛層7の層厚は、1mmに仕上げ加工され
る。
第2肉盛層7形成のための肉盛処理を行う。上記第2肉
盛層7形成のための肉盛処理は、第1肉盛層6上に、第
2肉盛層7用粉末として、前記第2肉盛層7内での含有
割合となるように、Cr3C2粉末を20重量%〜30重
量%、10重量%〜40重量%含有割合(Fe合金粉末
全体に対する含有割合)のCr を含むFe合金粉末を残
部とする混合粉末を用意し、その混合粉末に対して高密
度エネルギ源としてのレ−ザビ−ムを照射することによ
り行われる。上記混合粉末に対するCr3C2粉末の混合
割合は、前述の第2肉盛層7完成後の高い耐摩耗性を確
保する上で重要な意味を有するが、好ましくは、その混
合割合を25重量%とするのがよい。また、上記Cr3
C2粉末には、約100ミクロン以下、好ましくは20
0メッシュアンダー(粒径74ミクロン以下)の粒径の
ものを用いるのがよい。Cr3C2粉末の粒径が約100
ミクロン以下であれば、肉盛処理時に溶融し、小さな粒
子(粒径30ミクロン以下)として残存或いは析出する
が、100ミクロンを越えた粒径のときには、図4に示
すように、大きな粒子のままで残存して、この大きな粒
子が相手となるバルブ材(吸気弁等)を損傷することに
なり、円滑な肉盛処理とはならないからである。上記混
合粉末の残部となる上記Fe合金粉末については、前述
したように、その含有物であるCr が、第2肉盛層7の
肉盛処理時に、Cr3C2の分解を抑制して、該Cr3C2
に基づく第2肉盛層7完成後における高い耐摩耗性を確
保する点で、そのFe合金粉末に対するCrの含有割合
は重要な意味を有するが、このことは同時に、製造段階
において、第2肉盛層7中の含有割合をCr3C2粉末の
混合割合として決めることができることを意味し、第2
肉盛層7におけるCr3C2の含有割合を高い耐摩耗性を
確保できる範囲に容易に設定できることを意味する。こ
のFe合金粉末に対するCrの含有割合は、好ましくは
12.5重量%がよい。上記レ−ザビ−ムの照射は、前
記第1肉盛層6形成の肉盛処理の場合と同様の条件の下
で行われ、また、この後、やはり、第1肉盛層6の場合
同様、第2肉盛層7の層厚は、1mmに仕上げ加工され
る。
【0022】これにより、バルブシ−ト部8が、図1に
示すように得られることになる。
示すように得られることになる。
【0023】前記面取部4には、図8に示す肉盛処理開
始点10の部位付近において、図9あるいは図10に示
すように、深さ100〜500ミクロン、幅3〜6mm、
長さ3〜6mmに渡って段下げした段部11を設けるのが
好ましい。これにより、ポート2の周回りにおいて、図
8〜図10に示す矢印A方向に、第1肉盛層6形成のた
めの肉盛処理を行っても、1周して肉盛処理開始点10
とオーバラップするとき、給粉状態が開始点10の肉盛
り層に当たって乱されることが無くなり、給粉不良によ
る欠肉の発生を完全に防止できることになる。
始点10の部位付近において、図9あるいは図10に示
すように、深さ100〜500ミクロン、幅3〜6mm、
長さ3〜6mmに渡って段下げした段部11を設けるのが
好ましい。これにより、ポート2の周回りにおいて、図
8〜図10に示す矢印A方向に、第1肉盛層6形成のた
めの肉盛処理を行っても、1周して肉盛処理開始点10
とオーバラップするとき、給粉状態が開始点10の肉盛
り層に当たって乱されることが無くなり、給粉不良によ
る欠肉の発生を完全に防止できることになる。
【0024】また、上記肉盛処理開始点10は、図1
1、図12に示すように、シリンダヘッド1のボア部1
2における肉厚が薄くなる弁間付近13及び弁(ポート
2)とプラグホール14とで挟まれた部位を避ける部位
に設定するのが好ましい。換言すれば、熱容量の大きな
部位から肉盛処理を開始すればよい。これにより、ポー
ト2の周回りに肉盛処理を行うに際して、肉盛り開始と
終了とがオーバラップする部位付近での入熱過多を防
ぎ、肉盛り材が基材で希釈されて材料特性が変質、つま
り組成が変わるのを防止することができることになる。
1、図12に示すように、シリンダヘッド1のボア部1
2における肉厚が薄くなる弁間付近13及び弁(ポート
2)とプラグホール14とで挟まれた部位を避ける部位
に設定するのが好ましい。換言すれば、熱容量の大きな
部位から肉盛処理を開始すればよい。これにより、ポー
ト2の周回りに肉盛処理を行うに際して、肉盛り開始と
終了とがオーバラップする部位付近での入熱過多を防
ぎ、肉盛り材が基材で希釈されて材料特性が変質、つま
り組成が変わるのを防止することができることになる。
【図1】シリンダヘッドのポート開口端(面取部)に形
成されたバルブシート部としての第1、第2の肉盛層を
示す図。
成されたバルブシート部としての第1、第2の肉盛層を
示す図。
【図2】Fe 系合金に含まれるNi 添加量と、基材に対
する第1肉盛層の接合強度及び硬さとの関係を示す図。
する第1肉盛層の接合強度及び硬さとの関係を示す図。
【図3】第2肉盛層におけるCr3C2添加量とバルブシ
ート部の摩耗との関係を示す図。
ート部の摩耗との関係を示す図。
【図4】第2肉盛層におけるCr3C2添加量とバルブの
摩耗との関係を示す図。
摩耗との関係を示す図。
【図5】Fe-Cr 合金における状態図。
【図6】Fe-Cr 合金に含まれるCr 量と第2肉盛層に
おけるCr3C2量との関係を示す図。
おけるCr3C2量との関係を示す図。
【図7】シリンダヘッドのポート開口端(面取部)に肉
盛処理している状態を示す図。
盛処理している状態を示す図。
【図8】シリンダヘッドのポートを拡大して示す要部平
面図。
面図。
【図9】図8のB−B線断面図。
【図10】図9に対応し、その変形例を示す断面図。
【図11】2弁型エンジンにおける肉盛開始点の選定を
説明するシリンダヘッドの要部平面図。
説明するシリンダヘッドの要部平面図。
【図12】4弁型エンジンにおける肉盛開始点の選定を
説明するシリンダヘッドの要部平面図。
説明するシリンダヘッドの要部平面図。
1 アルミニウム合金製シリンダヘッド
2 基材
6 第1肉盛層
7 第2肉盛層
8 バルブシート部
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
F01L 3/02
B23K 9/04
C22C 1/10
Claims (2)
- 【請求項1】 アルミニウム合金製基材上に、摺接部と
してエンジンにおけるシリンダヘッドの機関弁用弁座部
を形成するべく、摺接部形成部位において銅合金層から
なる第1肉盛層を形成した後、該第1肉盛層上に、肉盛
層用粉末として、Cr 3 C 2 粉末を約20重量%〜約30
重量%用意するとともに、Crを約10重量%〜約40
重量%含む鉄合金粉末を約80重量%〜約70重量%用
意し、 前記Cr 3 C 2 粉末と前記鉄合金粉末の混合粉末に対して
高密度エネルギ源を照射して、鉄合金層からなる第2肉
盛層を形成する、 ことを特徴とするアルミニウム合金製部材の製造方法。 - 【請求項2】 請求項1において、Cr 3 C 2 粉末の粒径が100ミクロン以下である、 ことを特徴とするアルミニウム合金製部材の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP16648693A JP3456224B2 (ja) | 1993-06-11 | 1993-06-11 | アルミニウム合金製部材の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP16648693A JP3456224B2 (ja) | 1993-06-11 | 1993-06-11 | アルミニウム合金製部材の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH06346708A JPH06346708A (ja) | 1994-12-20 |
JP3456224B2 true JP3456224B2 (ja) | 2003-10-14 |
Family
ID=15832287
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP16648693A Expired - Fee Related JP3456224B2 (ja) | 1993-06-11 | 1993-06-11 | アルミニウム合金製部材の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3456224B2 (ja) |
Families Citing this family (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
RU2255845C1 (ru) * | 2003-12-02 | 2005-07-10 | Бабаев Андрей Александрович | Способ изготовления детали с наплавленным покрытием и деталь, изготовленная с использованием этого способа |
JP5616864B2 (ja) * | 2011-09-07 | 2014-10-29 | 株式会社キャステム | ハイブリッド金型の製造方法 |
CN108425032B (zh) * | 2018-03-30 | 2020-01-07 | 中国科学院金属研究所 | 具有弥散型复合凝固组织的Cu-Cr电触头合金的凝固制备方法 |
-
1993
- 1993-06-11 JP JP16648693A patent/JP3456224B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH06346708A (ja) | 1994-12-20 |
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Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |