JP3454368B2 - 歯科用寒天印象材 - Google Patents

歯科用寒天印象材

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JP3454368B2 JP28553693A JP28553693A JP3454368B2 JP 3454368 B2 JP3454368 B2 JP 3454368B2 JP 28553693 A JP28553693 A JP 28553693A JP 28553693 A JP28553693 A JP 28553693A JP 3454368 B2 JP3454368 B2 JP 3454368B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,目視して寒天印象材の
温度が容易に判別できる歯科用寒天印象材に関し、特
に,温度感応性変色剤を配合してあり,その有する温度
を目視して容易に判別できる歯科用寒天印象材に関す
る。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】歯科領
域などの医療分野で用いられる歯科印象材は,口の中の
温度のごとく生体温度かそれよりも低い温度でゲル化し
て,印象採得できるものでなければならない一方で,口
の中の組織をあまり刺激しない程度の比較的高い温度で
流動性のあるゾルにしてよく流入して必要な微細部を残
らず再現できるものでなくてはならない。寒天は,この
ような条件を満たすものとして,可逆的水性コロイド印
象材のベースとして利用されている。このように従来寒
天は,その熱可塑性である特性を生かして,型を取るた
めの印象材として用いられてその有利性が十分に認めら
れてきている。特に寒天は生体に対する毒性の心配がな
いことから,歯科領域をはじめとした医療分野で広く用
いられている。
【0003】このように一般に歯科技術分野では寒天に
よる印象採得が行なわれており,繁用されているのが実
情である。その歯科分野で印象を取得する場合の使用法
は,寒天を常温より100℃近辺まで昇温してその温度
において一定時間溶解し,その後降温して約55〜65
℃近辺でいつでも使用できる状態にして保存するという
ことが行なわれている。普通、寒天印象材はあらかじめ
印象用シリンジに充填されて使用され、また最近ではカ
ートリッジに充填したものをカートリッジ収納用シリン
ジに装填して使用されている。近年では上記のように温
度調製された寒天印象材を使用可能な状態に保つため
に,上記温度設定及び管理のできる器具あるいは器械を
用いることもなされるようになって来ていおり、それら
温度設定及び管理のできる恒温加熱保持装置(寒天コン
ディショナー)はコンピューター制御されている器械と
して開発されて来ている。寒天印象材を用いて歯科印象
を採る場合,印象採得者は,寒天コンディショナーより
寒天印象材収容シリンジ等を取り出し,一定温度に保存
された寒天をシリンジ先端から押出することにより印象
採取を行なっているが,術者の経験不足や予期せぬ出来
事等により,寒天をしばらくの時間室温中に放置してし
まい,その結果寒天の温度が下がってしまって印象採取
作業を適確にできず失敗してしまうことが多々生じる。
また,寒天印象材は上記シリンジ等を長時間冷却してし
まい軟化温度を超えて凝固温度に到達してしまうと,再
度加熱溶解工程を行なわなければ印象採取は行なえなく
なるが,その再度利用するにあたり溶解工程を行なって
いく場合にその寒天の温度がいかなる温度にあるかを判
断することが不可能であった。そのため,無理にそのよ
うな寒天を用いて再度歯科印象採取を行なっても失敗す
ることが多かった。さらに寒天のゲル化温度は37℃前
後であるが,正確なゲル化温度は寒天印象材中の寒天の
純度,分子量,ほかの成分の含有量に対する寒天含有量
の比などのいくつかの因子に支配され,決まった値のも
のを得ることは難しい。そして寒天にはいろいろな種類
があり,それぞれいくらかずつ異なった性質を有してい
るので,通常数種の寒天を配合するなどしてこのゲル化
温度を一定に保たせようとしているのであるが,実際に
は一緒に作ったもの以外はそれぞれのゲル化温度が異な
る場合があり,その寒天印象材の温度特性を正確に知る
ことが重要である。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者等は,歯科用寒
天印象材の使用至適温度を検知する手法を開発すべく種
々検討した結果,歯科用寒天印象材の温度を視覚的に検
知できれば,上記したような問題点は解決し得ることを
見出だし,本発明に到達した。したがって本発明は,温
度感応性変色剤を配合された歯科用寒天印象材を提供す
ることにある。本発明で用いられる温度感応性変色剤
は,温度の影響により寒天印象材に色変化を起こすもの
を好適に利用できる。その色の変化は,無色から有色へ
変化せしめる場合,有色から無色へ変化せしめる場合,
あるいはある色からそれとは異なる色へ変化せしめる場
合を包含するが,温度の変化につれて複数の色変化を起
こす場合も包含される。したがって本発明に従えば,そ
の印象材の変色温度点及び色の種類を様々に選択して,
その使用に適した形態にすることが包まれる。さらに変
色温度点も複数持たせることも可能な他,一定範囲の温
度では一定の色を示し,別の一定の範囲の温度では,そ
れとは別の色を示すようにすることができる。温度感応
性変色剤は,歯科用材料に配合されて用いられることか
ら,生体に対して無害であることが強く望まれる。した
がって,温度感応性変色剤はその使用形態下において無
害であるならば,広く公知のものあるいは市販されたも
ののうちから選んで用いることができる。温度感応性変
色剤としては,可逆性の色変化を起こすものが好ましく
使用できるが,ある場合においては不可逆的変化を起こ
すものも使用可能である。温度感応性変色剤としては,
単独の温度感応性変色化合物であってもよいし,複数の
化合物数が配合されたものであってもよい。温度感応性
変色剤のうちには,例えばコレステリック系液晶やCT
形有機化合物などのようにその結晶形の転移に伴って変
色するものであってもよいし,あるいは溶融などの物理
的状態の変化に伴って変色するものであってもよい。上
記有機系温度感応性変色剤のほか、公知の無機系温度感
応性変色剤も使用できる。
【0005】温度感応性変色剤としては,例えば(1)
電子供与性呈色性有機化合物,(2)フェノール性水酸
基を有する有機化合物及び(3)呈色性調整化合物から
なるものがあげられる。電子供与性呈色性有機化合物と
しては,フェノール性水酸基を有する有機化合物と反応
して,各種の色を呈するものがあげられ,例えば,青,
紫,緑,黄,橙,赤等あるいはそれらの中間色などを呈
するものがあげられ,さらにはこうして形成され色呈し
ている化合物を混合して含むことにより種々の色を呈す
るものがあげられる。温度感応性変色剤の呈する色は,
電子供与性呈色性有機化合物の種類でその色を選択し、
フェノール性水酸基を有する有機化合物によってその濃
度を選択することができる。電子供与性呈色性有機化合
物とフェノール性水酸基を有する有機化合物とで形成せ
しめられる色は,広範囲の温度範囲,例えば−80℃〜
200℃の間で変色するようにすることができ,またそ
の間の温度で様々な色に変色するようにすることもでき
る。上記電子供与性呈色性有機化合物としては,具体的
には例えばクリスタルバイオレットラクトン,マラカイ
トグリーンラクトン,ミヒラーヒドロール,クリスタル
バイオレットカービノール,マラカイトグリーンカービ
ノール,N−(2・3・ジクロロフェニルQロイコオー
ラミン,N−アセチルオーラミン,N−フェニルオーラ
ミン,N−ベンゾイルオーラミン,ローダミンBラクタ
ム,2−(フェニルイミノエタンジリデン)3.3−ジ
メチルインドリン),N−3・3・トリメチルインドリ
ノベンゾスピロピラン,3−ジエチルアミノ−6−メチ
ル−7−クロルフルオラン,3−ジエチルアミノ−7−
メトキシフルオラン,3−ジエチルアミノ−6−ベンジ
ルオキシフルオラン,1・2−ベンツ−6−ジエチルア
ミノフルオラン等がある。これらのうち,更に好ましい
ものにはクリスタルバイオレットラクトン,3−ジエチ
ルアミノ−6−メチル−7−クロルフルオラン,3−ジ
エチルアミノ−7−メトキシフルオラン,3−ジエチル
アミノ−6−ベンジルオキシフルオラン,1・2−ベン
ツ−6−ジエチルアミノフルオラン,N−(2・3・ジ
クロロフェニルQロイコオーラミン,ローダミンBラク
タム等があげられる。
【0006】上記フェノール性水酸基を有する有機化合
物は,電子供与性呈色性有機化合物と反応して,呈色物
質を形成する化合物の1成分であればよく,具体的には
例えばノニルフェノール,ドデシルフェノール,スチレ
ネーテイドフェノール,2.2−メチレンビス(4−メ
チル−6−ターシャリーブチルフェノール),4.4’
−メチレン−ビス−(4−メチル−6−ターシャリーブ
チルフェノール),2.4.6−トリクロルフェノー
ル,O−フェニルフェノール,P−フェニルフェノー
ル,P−(P−クロルフェニル)フェノール,P−オキ
シ安息香酸オクチル,P−オキシ安息香酸ドデシル,ビ
スフェノールA,1.2−ジオキシナフタレン,2.3
−ジヒドロキシナフタレン,フェノールフタレイン,O
−クレゾールフタレイン,プロカテキュー酸プロピル,
プロカテキュー酸ゾチル,プロカテキュー酸オクチル,
プロカテキュー酸ドデシル,2.3.4−トリオキシエ
チルベンゼン,没食子酸メチル,没食子酸エチル,没食
子酸プロピル,没食子酸ブチル,没食子酸ヘキシル,没
食子酸オクチル,没食子酸ドデシル,没食子酸セチル,
没食子酸ラウリル,没食子酸ステアリル,2.3.5−
トリオキシナフタレン,タンニン酸,フェノール樹脂初
期縮合物等があげられる。
【0007】また上記フェノール性水酸基を有する有機
化合物としては,不揮発生でかつ親水性のものであって
よく,例えば没食子酸,没食子酸メチル,没食子酸エチ
ル,没食子酸アンモニウム,タンニン酸,プロカテキュ
ー酸,プロカテキュー酸メチル,プロカテキュー酸エチ
ル,プロカテキュー酸アンモニウム,ジオキシナフタレ
ン,スルホン酸ナトリウム等があげられ得る。これらの
うち,更に具体的にビスフェノールA,フェノール樹脂
初期縮合物,P−オキシ安息香酸オクチル,ブチルヒド
ロキシアニゾール,没食子酸プロピル,没食子酸オクチ
ル,没食子酸ラウリル,没食子酸セチル,ノニルフェノ
ール,ターシャリーブチルカテコール,2.2’−メチ
レンビス(4−メチル−6−ターシャリーブチルフェノ
ール),4.4’−メチレン−ビス−(4−メチル−6
−ターシャリーブチルフェノール),P−オキシ安息香
酸メチル,P−オキシ安息香酸エチル,P−オキシ安息
香酸オクチル,2.3−ジヒドロキシナフタレン,β−
ナフトール等をあげることができる。
【0008】呈色性調整化合物としては,例えば呈色減
感化合物あるいは呈色増感化合物として知られたものが
あげられ,上記電子供与性呈色性有機化合物及びフェノ
ール性水酸基を有する有機化合物とからなる呈色物に配
合せしめられて,特定の変色温度あるいはある一定域の
変色温度範囲で,呈色化合物の色を減少又は増加させる
ものがあげられる。この呈色性調整化合物の種類又は配
合量を種々選択することにより変色温度あるいは変色温
度範囲を選ぶことができる。上記呈色性調整化合物とし
ては,具体的には例えばラウリルアルコール,ミリスチ
ルアルコール,ヒチルアルコール,ステアリルアルコー
ル,アイコシルアルコール,ドコシルアルコール,トリ
エチレングリコール,ポリエチレングリコール,(分子
量200,400,600,1500,4000,80
00,20000),トリメチロールプロパン,トリエ
タノールアミン、ジエタノールアミン,トリイソプロパ
ノールアミン,第4級アンモニウム,ポリオキシエチレ
ンアルキルアミン,ポリオキシエチレンアルキルエーテ
ル,ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル,ソ
ルビタン脂肪酸エステル,蔗糖エステル,フタル酸ジメ
チル,フタル酸ジエチル,ミリスチン酸ブチル,パルミ
チン酸ブチル,ステアリン酸メチル,ステアリン酸エチ
ル,ステアリン酸プロピル,ステアリン酸ブチル,ステ
アリン酸オクチル,オレイン酸ブチル,ポリビニルピロ
リドン,ヒドロキシプロピルセルロース等があげられ
る。また親水性の呈色性調整化合物には,例えばトリエ
チレングリコール,ポリエチレングリコール,(分子量
200,400,600,1500,4000,600
0,20000),ジプロピレングリコール,ジエチレ
ングリコール,モノブチルエーテル,トリエチレングリ
コールモノエチルエーテル,グリセリン,トリメチロー
ルプロパン,ヒドロキシプロピルセルロース,ジエタノ
ールアミン,トリエタノールアミン,トリイソプロパノ
ールアミン,第4級アンモニウム,ポリオキシエチレン
アルキルアミン,ポリオキシエチレンアルキルエーテ
ル,ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル,ソ
ルビタン脂肪酸エステル,蔗糖エステル、ポリビニルピ
ロリドン,ジエチレングリコールアセテート,ジエチレ
ングリコールモノブチルエーテルアセテート等があげら
れる。
【0009】これらのうち更に,ステアリン酸メチル,
ステアリン酸n−ブチル,ステアリン酸ラウリル,ミリ
スチルアルコール,セチルアルコール,ステアリルアル
コール,イソステアリルアルコール,n−ドコシルアル
コール,n−メシルアルコール,n−デシルアルコー
ル,エチレングリコールジブチルエーテル,安息香酸エ
チル,安息香酸n−ブチル,シクロヘキサン等が具体的
にあげられ,これらは単独又は併用して用いることがで
きる。また本発明の上記温度感応性変色剤における各成
分の組み合せの例としては,.クリスタルバイオレッ
トラクトン:ビスフェノールA:ステアリル酸n−ブチ
ル及びミリスチルアルコール,.3−ジエチルアミノ
−6−メチル−7−クロルフルオラン:ビスフェノール
A:ステアリル酸n−ブチル及びセチルアルコール,
.3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロルフル
オラン:ビスフェノールA:ステアリル酸n−ブチル及
びセチルアルコール,.クリスタルバイオレットラク
トン:ビスフェノールA:ステアリル酸n−ブチル,ミ
リスチルアルコール及びセチルアルコール,.3−ジ
エチルアミノ−6−メチル−7−クロルフルオラン:ビ
スフェノールA:ミリスチルアルコール,.3−ジエ
チルアミノ−5−メチル−7−クロルフルオラン:ビス
フェノールA:ステアリン酸ラウリル及びミリスチルア
ルコール,.3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−
クロルフルオラン:ビスフェノールA:ステアリン酸n
−ブチル及びステアリルアルコール,.クリスタルバ
イオレットラクトン:2.2’−メチレンビス(4−メ
チル−6−ターシャリーブチルフェノール):ミリスチ
ルアルコール,.3−ジエチルアミノ−6−メチル−
7−クロルフルオラン:ビスフェノールA:ステアリル
アルコール,10.ローダミンBラクタム:フェノール樹
脂初期縮合物:ステアリルアルコール,11.クリスタル
バイオレットラクトン:2.2’−メチレンビス(4−
メチル−6−ターシャリーブチルフェノール):セチル
アルコール,12.クリスタルバイオレットラクトン:没
食子酸オクチル:セチルアルコール,13.3−ジエチル
アミノ−6−ベンジルオキシフルオラン:没食子酸オク
チル:ミリスチルアルコール,14.クリスタルバイオレ
ットラクトン:没食子酸オクチル:ミリスチルアルコー
ル,15.クリスタルバイオレットラクトン:P−オキシ
安息香酸メチル:ステアリルアルコール,16.1・2−
ベンツ−6−ジエチルアミノフルオラン:P−オキシ安
息香酸エチル:セチルアルコール,17.ローダミンBラ
クタム:P−オキシ安息香酸エチル:ドコシルアルコー
ル、18.N−(2・3・ジクロロフェニルQロイコオー
ラミン:P−オキシ安息香酸メチル:ステアリルアルコ
ール及びステアリル酸ブチル,19.N−アセチルオーラ
ミン:P−オキシ安息香酸エチル:セチルアルコール,
20.3−ジエチルアミノ−7−メトキシフルオラン:没
食子酸ラウリル:ミリスチルアルコール,21.クリス
タルバイオレットラクトン:没食子酸ラウリル:セチル
アルコール等があげられる。また、これらの温度感応性
変色剤は,単色を有するものについて挙げたが,電子供
与性呈色性有機化合物を種々混合して,所望の色彩のも
のを作成することができる。
【0010】上記温度感応性変色剤における各成分の混
合割合は,電子供与性呈色性有機化合物1〜10重量部
に対して,フェノール性水酸基を有する有機化合物及び
呈色性調整化合物はそれぞれ2〜200重量部及び3〜
300重量部であることができ,好ましくは2〜50重
量部及び2〜150重量部である。上記温度感応性変色
剤は,各種の溶媒に溶解又は分散して用いることができ
る。具体的には例えば,水,メチルアルコール,エチル
アルコール,プロピルアルコール,ブチルアルコール,
ヘキシルアルコール,オクチルアルコール,酢酸メチ
ル,酢酸エチル,酢酸プロピル,酢酸ブチル,ジブチル
フタレート,ジオクチルフタレート,アセトン,メチル
エチルケトン,メチルイソブチルケトン,トルエン,キ
シレン,ジベンジルベンゼン誘導体,ベンジル化エチル
ベンゼン,ベンジルアルコール,トリエチレングリコー
ル,ヘキシレングリコール,エチレグリコールモノエチ
ルエーテル,エチレングリコールモノフェニルエーテ
ル,比較的高沸点の炭化水素油等があげられるが,これ
らは単独でもあるいは複数を混合して用いることもでき
る。本発明では,前記温度感応性変色剤を寒天印象材中
に均一に分散して用いてもよいし,不均一に分散して用
いてもよい。この分散にあたっては,寒天印象材中に温
度感応性変色剤を直接添加するか,又は温度感応性変色
剤をマイクロカプセルにして分散するのかのいずれかの
方法で行なうことができる。温度感応性変色剤をマイク
ロカプセルにして分散する場合は,マイクロカプセル化
技術が用いられ,カプセル構成物質として,尿素−ホル
ムアルデヒド重合体物質,アミン又はアミドとアルデヒ
ドとの重合体物質,フェノール−アルデヒド重合体物質
のうちから,毒性がないあるいは少ないものを選んで用
いられ得る。尿素−ホルムアルデヒド重合体物質は,広
い意味で使用され,アミノ樹脂を含むものであってもよ
い。該アミノ樹脂を構成するアミンの例としては,グア
ニジン,N−メチル尿素のごときN−アルキル尿素,チ
オ尿素,メラミン等であってよい。
【0011】この場合,カプセル構成物質の変性剤とし
て,適当なカルボキシル基を有する変性剤があげられ
る。例えば,エチレン−無水マレイン酸共重合体,メチ
ルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体等の無水マ
レイン酸共重合体の加水分解物及びポリアクリル酸等の
ポリアクリレートなどがあげられる。さらにエチレン−
無水マレイン酸共重合体は約1,000以上,の分子量
を有してよく,メチルビニルエーテル−無水マレイン酸
共重合体は約250,000以上及びポリアクリル酸は
約20,000以上の分子量を有していてよい。本発明
において,温度感応性変色剤をマイクロカプセルにする
方法は,水,カプセル構成物質及び変性剤を均一に分散
し,これにアルカリを加えてpHを1〜7,好ましくは
2.5〜5.0の範囲で,温度感応性変色剤を加えて乳
化することによっても行うことができる。乳化粒子を構
成するカプセル構成物質のカプセル壁が固化し,カプセ
ル製造反応が完了した時点で,該カプセルを濾過によっ
て前記反応系から分離し,水洗いした後,乾燥すること
ができる。乾燥は強制空気乾燥機を用いて行なうことが
簡便である。しかし前記反応系から得られたカプセル
は,そのまま所望の用途に用いてもよく,また分離,水
洗後,乾燥することなく,そのまま所望の用途に用いて
もよい。本発明によって製造される個々のカプセルは実
質上球状で1ミクロン以下から約100ミクロンの直
径,好ましくは1ミクロンから50ミクロンの範囲であ
り,これはカプセル中に含まれる芯物質の大きさに依存
することは言うまでもない。
【0012】本発明の温度感応性変色剤を含む寒天印象
材は,その性能を向上させるために種々の添加剤を加え
ることができ,例えば酸化防止剤,紫外線防止剤,熱安
定剤,滑剤等を用いることができる。本発明に係る原料
寒天印象材としては,当該分野で通常使用されているも
のあるいは市販されているものの中から選んで用いるこ
とができる。例えば,寒天印象材に含まれる材料として
は,寒天,ホウ酸塩,硝酸塩,ワックス(硬質),チク
ソトロピーを示す物質,水などがあげられるが,この他
にケイソウ土,粘土,シリカ,ゴムあるいはこれらに類
似した不活性粉末などを任意に加えられていてもよく,
さらには殺菌剤,可塑剤,香料,顔料など通常の添加剤
が加えられているものであってもよい。寒天の組成は,
種々の範囲で用いることができるが,例えば10〜25
%配合されていることもできる。また温度感応性変色剤
は,好ましくは寒天印象材の軟化点又はその近傍でその
色変化を起こすものであることが好ましい。さらに,温
度感応性変色剤は,寒天印象材の軟化点又はその近傍で
その色変化を起こす他に,少なくともそれ以外の温度で
色変化を起こすものであることが好ましい。また温度感
応性変色剤の配合せしめられた寒天印象材は,寒天の溶
解温度,保存温度,軟化温度,印象材の取外し温度,あ
るいは常温下において異なった色を示すようにされるこ
とができる。
【0013】
【実施例】以下,本発明を実施例によって説明するが,
これは本発明をよく理解するための一例であって,本発
明はこれに限定されることなく,様々な態様が包含され
得るものである。 実施例1 軟化点の温度47℃の寒天印象材に,47℃の変色温度
を有する温度感応性変色剤(フルオラン化合物とビスフ
ェノールAとステアリン酸n−ブチルとセチルアルコー
ルとの混合物)を加えて均一に混合した。図1に示すご
とく、こうして得られた歯科用寒天印象材1を印象用シ
リンジ2に充填し、それを図2に示す恒温加熱装置(寒
天コンディショナー)3の加熱保温孔3aに挿入し,印
象採得に使用するため常温より溶解温度(約98℃)に
までその温度を上昇させて,一定時間保持した。その時
点での歯科用寒天印象材1の色はオレンジ色であった。
次にこの印象材1を保存温度(約64℃)まで冷却し,
以後同保存温度にて保持した。この時の印象材1の色も
同様オレンジ色のままであった。患者の印象採得を行な
うため,寒天コンディショナー3よりシリンジ2を取り
出し、シリンジ2のシズルから寒天印象材1を押出して
印象部位の窩洞部へ供給し、印象採得を行なった。な
お、寒天コンディショナー3より取り出した時の寒天印
象材1の色はオレンジ色であった。歯科印象採得完了
後,歯科用寒天印象材の色を検査したところ緑色であっ
た。歯科印象採得は成功していることが確認された。比
較のため、同様に寒天コンディショナー3に保存してあ
ったシリンジ2を取り出して卓上に置き,そのまま冷却
させるにまかせておいた。寒天印象材1が緑色に変化し
た時点で歯科印象採得を行なったが,その結果は満足で
きるものではなかった。
【0014】実施例2 実施例1で使用したのと同じ47℃の軟化温度を有する
寒天印象材に,約90〜98℃では乳白色を示し,約5
5〜65℃では紫色を示し,約47℃で紫色からオレン
ジ色に変色し,約30〜35℃でオレンジ色から緑色に
変色し,約20〜27℃の常温では緑色を示す温度感応
性変色剤を混合した。こうして得られた寒天印象材1を
寒天コンディショナー3の加熱保温孔3aに挿入し,印
象採得に使用する為常温より溶解温度(約98℃)にま
でその温度を上昇させた。寒天印象材1は乳白色を呈し
た。その温度で一定時間保持したが,その間寒天印象材
の色は乳白色のままであった。次にこの印象材1を保存
温度(約64℃)にまで冷却した。寒天印象材1の色は
紫色に変化した。この寒天印象材1をこの保存温度にて
保持したが,寒天印象材1の色は紫色のままであった。
こうして保存された寒天印象材1を患者の印象採得を行
なうために,寒天コンディショナー3より取り出した。
取り出したシリンジ2(図2)の中の寒天印象材1の色
は紫色であったが,印象採得完了後の,歯科用寒天印象
材1の色はオレンジ色であった。歯科印象採得は成功し
ていることが確認された。比較のため、同様に寒天コン
ディショナー3に保存してあったシリンジ1を取り出し
て卓上に置き,そのまま冷却させるにまかせておいた。
寒天印象材1が緑色に変化した時点で歯科印象採得を行
なったが,その結果は満足できるものではなかった。
【0015】比較例1(従来例) 緑色着色料で着色された軟化点の温度47℃の寒天印象
材を図1に示すごとき歯科印象用シリンジ2に充填し、
それを図2に示す恒温加熱装置(寒天コンディショナ
ー)3の加熱保温孔3aに挿入し,印象採得に使用する
ため常温より溶解温度(約98℃)にまでその温度を上
昇させて,一定時間保持した。次にこの印象材を保存温
度(約64℃)まで冷却し,以後同保存温度にて保持し
た。患者の印象採得を行なうため,寒天コンディショナ
ー3よりシリンジ2を取り出し、しばし卓上に放置した
後、シリンジ2先端のノズルから寒天印象材を押出して
印象部位の窩洞部へ供給し、印象採得を行なった。な
お、歯科印象材の色は混入着色料のため終始緑色であっ
た。歯科印象採得の結果は失敗に値するものであった。
【0016】
【発明の効果】本発明の歯科用寒天印象材によれば,温
度感応性変色剤を用いて多岐にわたる色の設定,変色温
度の設定が行なえるため,歯科領域における印象採得の
各処理における温度設定条件毎,例えば歯科用寒天印象
材の軟化処理,保存処理,溶解処理,患者等からの取り
はずし処理など毎に色わけすることができ,さらにはそ
の変色温度も一定の幅を持たせることができるので,各
段階を目視で確認できて,操作ミスや,術者の不慣によ
る失敗を防ぐことができる。またたとえ,歯科用寒天印
象材を誤って長時間室温中において冷却してしまって
も,再加熱により歯科用寒天印象材自身が歯科印象採得
可能温度を色で表示するため,歯科印象採得の失敗を防
せぐことができる。さらに、歯科用寒天印象材が使用適
温であると思っていても、実際には冷却していて使用不
適な場合は,歯科用寒天印象材自身が歯科印象採得不可
能温度を色で表示するため,歯科印象採得の失敗を未然
に防せぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明実施例の歯科用印象材を収容した歯科用
寒天印象材を充填したシリンジの斜視図を示す。
【図2】寒天コンディショナーの斜視図を示す。
【符号の説明】
1:歯科用寒天印象材 2:印象用シリンジ 3:歯科用寒天恒温加熱装置(寒天コンディショナー) 3a:挿入孔
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61K 6/00 - 6/10 A61C 9/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 温度感応性変色剤を配合してなることを
    特徴とする歯科用寒天印象材。
  2. 【請求項2】 温度感応性変色剤が,(1)電子供与性
    呈色性有機化合物,(2)フェノール性水酸基を有する
    有機化合物及び(3)呈色性調整化合物からなるもので
    ある請求項1記載の歯科用寒天印象材。
  3. 【請求項3】 温度感応性変色剤が,寒天印象材の軟化
    点又はその近傍で色変化を起こすものである請求項1記
    載の歯科用寒天印象材。
  4. 【請求項4】 温度感応性変色剤が,寒天印象材の軟化
    点又はその近傍で色変化を起こす他に,少なくともそれ
    以外の温度で色変化を起こすものである請求項1又は2
    記載の歯科用寒天印象材。
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