JP3451869B2 - 電気自動車用駆動制御装置 - Google Patents

電気自動車用駆動制御装置

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JP3451869B2
JP3451869B2 JP00869397A JP869397A JP3451869B2 JP 3451869 B2 JP3451869 B2 JP 3451869B2 JP 00869397 A JP00869397 A JP 00869397A JP 869397 A JP869397 A JP 869397A JP 3451869 B2 JP3451869 B2 JP 3451869B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、左右各駆動輪に対
応してモータを設けた電気自動車に搭載され、当該電気
自動車の走行安定性が高まるよう各モータを制御する駆
動制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】在来エンジン車に関しては、加減速、旋
回、レーンチェンジ等をスムーズに実行できるという性
能即ち走行安定性の達成及び改善のために、いわゆる四
輪操舵(4WS)が開発されている。しかし、現状の4
WSでは、ステアリングに関わる機構やそれを制御する
ための電子制御系(場合によっては更に油圧制御系)が
若干大規模かつ複雑であり、そのため、大きな実装スペ
ースを必要とする、応答が若干遅い、故障が発生しやす
い等の問題が存している。他方、車載のモータにて推進
される車両である電気自動車に対しても、走行安定性が
要求される。在来エンジン車用の4WSを電気自動車に
搭載することも考えられるが、その場合も、上述の各問
題を避け得ない。また、特に、車両の推進力源としては
モータしか搭載していない純粋な電気自動車では、在来
エンジン車のそれよりはるかに大きなバッテリを搭載す
るのが一般的であり、従って実装スペースの問題は更に
顕著になる。
【0003】このような事情があるため、電気自動車に
搭載実装できる走行安定性制御手段乃至方法が、各種検
討されている。例えば特開平1―298903号、特開
平1―298904号、特開平1―298905号及び
特開平5―176418号には、左右の各駆動輪を各々
独立に回転駆動できるよう複数のモータを配置したタイ
プの電気自動車即ち左右駆動輪独立駆動型電気自動車に
関し、左右各駆動輪の走行軌跡差に応じたモータトルク
制御又は速度制御を行う手法が、開示されている。左右
駆動輪独立駆動型電気自動車では、左右各駆動輪におい
て相互に異なるトルクを発生させることができるため、
在来ガソリン車における4WSと類似の効果を、4WS
のような大規模かつ複雑な機構及び制御系なしで、達成
できる。なお、上記各公報に記載の制御を実施可能なタ
イプの典型例としては、車両走行用のモータを左右各駆
動輪に埋め込んだ或いは一体化したタイプの電気自動車
即ちホイルインモータ型電気自動車がある。ホイルイン
モータ型電気自動車は、駆動輪毎にモータを設けている
ためディファレンシャルギア等の分配機構が不要で従っ
て低伝達ロス低エネルギ消費であるから車載バッテリを
小型化できる、対応する駆動輪のみを駆動できればよい
ため通常のいわゆるワンモータ型電気自動車に比べモー
タを小さくできる、モータが駆動輪にビルトインされて
いるため集積性が高く車室空間が広がる等の利点を有し
ている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、左右各駆動輪
の走行軌跡差のみでは、重心回りでの車体の回転運動、
横方向への車体の運動、駆動輪のすべり等に十分対処で
きず、走行安定性を十分に達成できない。例えば、旋回
のため操舵を行うと車体にヨーレイト、横加速度、すべ
り角度等の諸量が発生する。これらは、コーナリングフ
ォース、横方向の力、路面摩擦係数等に加え車体速度や
車輪速度等に応じその値が定まる量であり、その値を走
行軌跡差から一意に推定し得べきものではない。
【0005】本発明の第1の目的は、ホイルインモータ
型電気自動車に代表される左右駆動輪独立駆動型電気自
動車において、実ヨーレイト又は実すべり角度の応答を
その目標応答に一致させる目標ヨーレイト又は目標すべ
り角度適合制御を実現することにより、回転運動、横運
動、すべり等に対処可能で従ってより確実かつ的確に車
両の走行安定性を達成及び改善できるようにすることに
ある。本発明の第2の目的は、左右各駆動輪に対応する
個々のモータに対し個別に指令を与えることができると
いう左右駆動輪独立駆動型電気自動車の特質を利用する
こと、より詳細にはモータへの指令を舵角に応じて補正
することにより、従来の左右駆動輪独立駆動型電気自動
車にハードウエア的乃至機構的な実質的改変を施すこと
なしに従って低コストに、目標ヨーレイト又は目標すべ
り角度適合制御を実現することにある。
【0006】本発明の第3の目的は、舵角の検出値を利
用して目標ヨーレイト又は目標すべり角度適合制御を実
現することにより、制御の応答性を高め、車両操縦者が
ブレーキング操作等を行わずとも、常に的確なタイミン
グで目標ヨーレイト又は目標すべり角度適合制御を実行
できるようにすることにある。本発明の第4の目的は、
ヨーレイトの検出やすべり角度の演算なしで目標ヨーレ
イト又は目標すべり角度適合制御を実現することによ
り、高い応答性と低コストとを達成することにある。本
発明の第5の目的は、舵角及び路面摩擦係数を指令補正
係数と対応づけるマップを構築及び利用することによ
り、各モータへの指令の補正を迅速に実行可能にすると
共に、目標ヨーレイト又は目標すべり角度適合制御を実
行しているときの制御領域を力行及び回生双方の領域に
またがる領域とし、それによって高いエネルギ効率を実
現することにある。
【0007】本発明の第6の目的は、操舵中は目標ヨー
レイト又は目標すべり角度適合制御を、そうでないとき
には在来エンジン車におけるTRC(Truction Control)
又はABS (Antilock Break System)に相当する制御
を、というように制御動作を切り換えることにより、舵
角の如何によらず車両の走行安定性を維持達成できるよ
うにすることにある。本発明の第7の目的は、舵角の検
出値に応じてTRC/ABS相当制御を起動することに
より、高い応答性と低コスト性とを有するTRC/AB
S相当制御を実現することにある。本発明の第8の目的
は、駆動輪の角加速度に基づきスリップ判定を実行し角
速度に応じて判定しきい値を変える、という特開平8―
182119号開示の発明を、更にABS相当制御にも
拡張しTRC/ABS相当制御を実現することにより、
前述の舵角判定によるTRC/ABS相当制御起動と併
せ、構内走行等に限定されない広い利用範囲や高い応答
性を実現することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】このような目的を達成す
べく、本発明は、電気自動車の左右各駆動輪を個別に駆
動するための複数のモータ各々に対し、その出力に関す
る指令を与えることにより、車両の走行を制御する駆動
制御装置において、車両操縦者からの加速又は減速要求
に基づき上記指令を仮確定する指令仮確定手段と、舵角
に対する車体のヨーレイト又はすべり角度の応答がその
目標応答と一致するよう定めた指令決定論理に従い、モ
ータに与えるのに先立ちかつ各モータ毎に、仮確定され
た指令を補正する目標適合制御手段と、を備えることを
特徴とする。このように、目標ヨーレイト又は目標すべ
り角度適合制御を実行しているため、本発明において
は、左右の走行軌跡差では十分に制御に反映し得なかっ
た車体の回転運動、横運動、すべり等が、モータの制御
ひいては車両の駆動制御に反映する。従って、従来より
もより確実かつ的確に車両の走行安定性を実現できる。
また、本発明における目標ヨーレイト又はすべり角度適
合制御は、左右各駆動輪に対応する個々のモータに対し
個別に指令を与えることができるという左右駆動輪独立
駆動型電気自動車の特質を利用して、より詳細にはモー
タへの指令を舵角に応じて補正することにより、実現さ
れている。従って、従来の左右駆動輪独立駆動型電気自
動車に制御論理上の、或いはソフトウエア的な改変を施
すのみで実現できるため、ハードウエア的乃至機構的な
実質的改変は不要であり、従って低コストに実施でき
る。
【0009】本発明に係る駆動制御装置は、舵角を検出
する手段を備え、目標適合制御手段が、舵角の検出値に
基づき上記補正を実行するよう、構成される。即ち、ヨ
ーレイトやすべり角度を検出又は演算しその結果に応じ
各モータに対する指令を補正することも考えられるけれ
ども、ヨーレイト検出値やすべり角度演算値ではなく舵
角検出値を利用するのが好ましい。舵角の検出値は制御
タイミング上比較的早期に得られる値であり、また舵角
センサはヨーレイトセンサ等に比べ安価であるから、本
発明における目標ヨーレイト又は目標すべり角度適合制
御は高い応答性及び低いコストにて実現できる。この高
い応答性の結果、例えば、旋回に際して車両操縦者がア
クセルからブレーキへとペダルを踏みかえる等の操作が
不要になる。
【0010】また、従来の電気自動車でも車両操縦者か
らの加速又は減速要求に応じてモータに対する指令を決
定する処理が採用されており、本発明でも同様の処理に
てモータに対する指令を仮確定している。この処理に際
しては、加速要求に応ずるためのものと減速要求に応ず
るためのものとに分けて、指令決定(従来)或いは仮確
定(本発明)用のマップを準備するのが好ましい。しか
しながら、目標ヨーレイト又は目標すべり角度適合制御
に際しては、加速要求が生じているときに回生側に制御
する必要や減速要求が生じているときに力行側に制御す
る必要が生じうる。そこで、本発明に係る駆動制御装置
は、好ましくは、路面摩擦係数を検出する手段を備え、
目標適合制御手段が、舵角及び路面摩擦係数双方の検出
値に基づき上記補正を実行するよう、構成する。このよ
うに、舵角及び路面摩擦係数双方の検出値に基づき指令
の補正を実行するようにすれば、加速要求か減速要求か
という区別にとらわれることなく、走行安定制御に必要
な出力(トルク等)を各モータから得ることが可能にな
る。言い換えれば、目標ヨーレイト又は目標すべり角度
適合制御を実行しているときの各モータの制御領域が、
力行及び回生双方の領域にまたがる領域に広がるから、
高いエネルギ(回収)効率が実現される。更に好ましく
は、本発明に係る駆動制御装置は、舵角及び路面摩擦係
数と指令補正係数とを対応づける指令補正用マップを備
え、目標適合制御手段が、舵角及び路面摩擦係数双方の
検出値をキーとして上記指令補正用マップを参照し、そ
れによって得られた指令補正係数を用いてかつ上記指令
決定論理に従い上記補正を実行するよう、構成する。か
かるマップを構築及び利用することにより、指令の補正
が迅速化される。
【0011】本発明に係る駆動制御装置は、好ましく
は、駆動輪のスリップ又はその傾向が抑制されるよう、
モータに与えるのに先立ちかつ各モータ毎に、仮確定さ
れた指令を駆動輪の角加速度及び角速度に応じて補正す
るTRC/ABS相当制御手段と、舵角の検出値が所定
値を上回る絶対値を有するときには目標適合制御手段に
て補正された指令を、また上記所定値を下回る絶対値を
有するときにはTRC/ABS相当制御手段にて補正さ
れた指令を、各モータに与える制御切換手段と、を備え
るよう、構成する。このように、舵角の検出値に応じて
制御モード乃至方式を切り換えることにより、舵角の如
何によらず車両の走行安定性を維持達成でき、かつ、駆
動輪のスリップ率の検出値ではなく舵角の検出値に応じ
てTRC/ABS相当制御を起動しているため、高い応
答性と低コストとが得られる。更に、TRC/ABS相
当制御手段は、駆動輪の角加速度及び角速度の検出値に
基づき補正した指令を各モータに与えている。従って、
特開平8―182119号におけるTRC相当制御と同
様の作用、例えば構内走行等に限定されない広い利用範
囲や高い応答性が、更にABS相当制御にも拡張される
ことになる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施形態に
関し図面に基づき説明する。
【0013】(1)システム構成 図1に、本発明を実施するのに適する電気自動車のシス
テム構成を示す。この電気自動車は後輪駆動であり、右
後輪10RR及び左後輪10RLが駆動輪、右前輪10
FR及び左前輪10FLが従動輪である。但し、本発明
は前輪駆動車や四輪駆動車にも適用できる。
【0014】また、図1の電気自動車はホイルインモー
タ型である。即ち、図中右側の車両走行用モータ12R
は右後輪10RRの内部に、左側の車両走行用モータ1
2Lは左後輪10RLの内部に、各々組み込まれてい
る。図2に、右後輪10RRを例として、組込方の例を
示す。この図では、タイヤ14と一体に回転できるよう
ホイル16の内側にロータ18を固定する一方で、モー
タ軸20を介しリアアクスル22にステータ24を固定
し、ベアリング等を介してステータ24をロータ18と
継合している。更に、ロータ18の内壁面にステータ2
4と微小間隙を以て対向するようロータマグネット(永
久磁石)26を固定する一方で、ステータ24にはステ
ータ巻線28を捲回しており、ステータ巻線28に電流
を流すためのケーブル30をモータ軸20内を介してス
テータ巻線28に接続している。このような構造におい
て、ケーブル30を介しステータ巻線28に交流電流を
供給することにより、ロータ18は回転し、車両の推進
力を生む。なお、本発明の実施に際しては、他種の構造
を用いても構わないし、また、左右各駆動輪に対応して
モータが設けられている他種の構造を用いてもよい。
【0015】図1に示されるバッテリ32は、モータ1
2R及び12Lへの駆動電力供給源であり、その放電出
力はインバータ34Rを介してモータ12Rに、またイ
ンバータ34Lを介してモータ12Lに、各々供給され
ている。インバータ34R及び34Lは、電力変換器の
一種である。即ち、インバータ34Rはモータ制御部3
6Rの制御の下にバッテリ32の放電出力(直流)をモ
ータ12Rに適する電力形式(この図では三相交流)に
変換し、インバータ34Lはモータ制御部36Lの制御
の下にバッテリ32の放電出力をモータ12Lに適する
電力形式に変換する。モータ制御部36Rは、車両制御
部38からのトルク指令TRに応じてインバータ34R
を制御することにより、トルク指令TRに相当するトル
クをモータ12Rから出力させる。同様に、モータ制御
部36Lは、車両制御部38からのトルク指令TLに応
じてインバータ34Lを制御することにより、トルク指
令TLに相当するトルクをモータ12Lから出力させ
る。モータ制御部36R及び36Lは、この他、インバ
ータ34R及び34Lのうち対応するものと車両制御部
38との間を絶縁分離する機能等を併有している。ま
た、モータ制御部36R及び36Lによるインバータ3
4R及び34Lの制御は、図示しない電流センサから得
たモータ12R及び12Lの各相電流検出値に基づき、
或いはロータ角度位置等から求めたモータ12R及び1
2Lの各相電流推定値に基づき行う。なお、本発明は、
純粋な電気自動車のみならずいわゆるハイブリッド車に
も適用できる。
【0016】車両制御部38は、モータ12R及び12
Lの出力トルクの制御、車載各コンポーネントの状態監
視・制御、車両乗員への車両状態の報知その他の機能を
担う制御部材であり、従来から用いられている電子制御
ユニット(ECU)の主にソフトウエア的な改変にて実
現できる。車両制御部38には車両各部に設けたセンサ
類の出力が入力され、車両制御部38はセンサ類の出力
をモータ出力制御や車両状態監視に利用する。
【0017】例えば、右後輪10RRのホイル(図2で
は16)に設けられている車輪速センサ40RR(例え
ばレゾルバ)は、右後輪10RRの車輪速VRRを示す
信号(例えば微小角度位置変位毎のパルス信号)を生成
し、また左後輪10RLのホイルに設けられている車輪
速センサ40RLは、左後輪10RLの車輪速VRLを
示す信号を生成する。また、アクセルセンサ42は、ア
クセルペダル(図示せず)の踏込量即ちアクセル開度V
Aを示す信号を、ブレーキセンサ44は、ブレーキペダ
ル56の踏込量即ちブレーキ力FBを示す信号を、シフ
トポジションスイッチ46は、シフトレバー(図示せ
ず)の投入レンジ(及びエンジンブレーキレンジ等では
当該レンジ内でのシフトレバー位置)即ちシフトポジシ
ョンを示す信号を、それぞれ発生させる。更に、舵角セ
ンサ48はステアリングホイル(図示せず)の操作に応
じて変化する舵角δtを示す信号を、発生させる。これ
らのセンサの出力は、各々、車両制御部38に入力され
るに当たって車両制御部38にて処理可能な形式のデー
タに変換される。車両制御部38は、変換後のデータを
用いて、トルク指令TR及びTLの決定、制御方法の切
換等を実行する。
【0018】また、図1では、前輪を油圧制動し、後輪
を回生制動する制動システムが用いられている。即ち、
ブレーキペダル56が踏まれると、これに応じてマスタ
シリンダ58にて発生した油圧が左右のホイルシリンダ
60R及び60Lに伝達され、左右のブレーキホイル6
2R及び62Lに作用し、左右前輪に制動トルクが付与
される一方で、ブレーキセンサ44を用いて検出された
ブレーキ力(例えばマスタシリンダ58の油圧)FBに
応じ車両制御部38が回生に係るトルク指令TR及びT
Lを発生させる。従って、図1の車両における制動力配
分は、図3に示されるようにブレーキ力FB(横軸の
“ペダル入力”)の増大に伴い油圧回生双方が増大する
配分となる。このように油圧系統と回生系統がブレーキ
センサ44以降は分離しているため、油圧及び回生のい
ずれか一方がフェイルしたとしても他方にて車両を退避
させることができる。また、油圧系統にバルブやポンプ
等の機構やその駆動・制御のための電気系統を設けてい
ないため、例えば、回生にてまかなえる間は油圧を遮断
するシステム等に比べて、システム構成が簡素になる。
なお、油圧系統にバルブやポンプ等の機構やその駆動・
制御のための電気系統を設ける必要がない理由の一つ
は、後述のようにモータ12R及び12Lの出力トルク
の制御を利用して走行安定性制御を行うという、本実施
形態の特徴的構成にある。
【0019】(2)車両制御部の全体機能 図4に、本実施形態における車両制御部38の機能構成
を示す。なお、本発明は、ハードロジックによってもま
たソフトウエアによっても実施することが可能である
が、以下の説明では機能構成の明示のためブロック図を
使用している。車両制御部38は、トルク指令仮確定部
100、TRC/ABS相当制御部200、目標ヨーレ
イト適合制御部300、制御切換部400及び切換制御
部500を有している。トルク指令仮確定部100は、
車両操縦者からの要求を示す情報としてアクセルセンサ
42、ブレーキセンサ44、シフトポジションスイッチ
46等の出力を取り込む一方で、制御対象たるモータ1
2R及び12Lの回転数NR及びNLに関する情報を車
輪速センサ40RR及び40RLから取り込み、車両操
縦者からの加速、減速等の要求に応じた出力を現在のモ
ータ回転数下で発生させるために必要なトルクを、これ
らの情報に基づき左右各駆動輪10RR及び10RLそ
れぞれについて求め、求めたトルクをトルク指令TR及
びTLとする。但し、この段階では、トルク指令TR及
びTLは最終的に確定したわけではなく、まだ「仮確
定」しただけである。
【0020】TRC/ABS相当制御部200は、仮確
定したトルク指令TR及びTLに特定の条件下で補正を
施すことにより、在来エンジン車におけるTRC/AB
Sに相当する効果を奏する動作を実行する。目標ヨーレ
イト適合制御部300は、舵角δtに対するヨーレイト
γの応答がその目標応答γ*に適合するよう(即ち実質
的に一致乃至追従するよう)、仮確定されたトルク指令
TR及びTLに補正を施すことによって、車体にその重
心回りのモーメントMを発生させ、操舵中に走行が不安
定になることを防ぐ。TRC/ABS相当制御部200
及び目標ヨーレイト適合制御部300は、いずれも、左
右のモータ12R及び12Lに対して個々別々にトルク
指令を与えられるという左右輪独立駆動型電気自動車の
特質を利用して、かかる動作を実行している。従って、
本実施形態では、油圧制御系や複雑な電子制御系なし
で、在来エンジン車におけるTRC/ABSに相当する
機能を含め、車両の走行安定性に資する機能を提供でき
る。また、かかる機能を実現するため、TRC/ABS
相当制御部200は、駆動輪12R及び12Lの車輪速
VRR及びVRLに関する情報を車輪速センサ40RR
及び40RLから得ると共に、TRC相当の機能とAB
S相当の機能との切換実行等のためアクセルセンサ42
やブレーキセンサ44も利用する。目標ヨーレイト適合
制御部300は、舵角δtの検出値を与える舵角センサ
48の他、車輪速センサ40RR及び40RLも利用す
る。
【0021】制御切換部400及び切換制御部500
は、車両状態又は運転状態に応じて、制御論理を選択的
に切り換える。制御切換部400はトルク指令仮確定部
100の後段に配されており、切換制御部500は制御
切換部400に制御信号を与える。即ち、トルク指令仮
確定部100にて仮確定されたトルク指令TR及びTL
をそのまま出力させるのか、TRC/ABS相当制御部
200にて補正されたトルク指令TR及びTLを出力さ
せるのか、それとも目標ヨーレイト適合制御部300に
て補正されたトルク指令TR及びTLを出力させるのか
が、切換制御部500からの制御信号により制御切換部
400にて決定される。切換制御部500は、この制御
信号を発生させるため、舵角δtの検出値を与える舵角
センサ48の他、車輪速センサ40RR及び40RLも
利用する。本実施形態においては、舵角δtの検出値
が、このように車両制御部38における制御動作の切換
のための判定に供される他、後述の目標ヨーレイト適合
制御等にも利用される。
【0022】(3)トルク指令仮確定部の機能 図5に示すように、トルク指令仮確定部100は、アク
セルペダルが踏まれたか否かをアクセルセンサ42の出
力に基づき判定するオン/オフ判定部102を有してい
る。オン/オフ判定部102にてアクセルオン即ちアク
セルペダルが踏まれていると判定されたときには、アク
セル開度演算部104がアクセルセンサ42の出力に基
づきアクセル開度VAを演算し、アクセルオフ即ちアク
セルペダルが踏まれていないと判定されたときには、ブ
レーキ力演算部106がブレーキセンサ44の出力に基
づきブレーキ力(踏力)FBを演算する。その際、シフ
トポジションスイッチにて設定されるシフトポジション
がアクセル開度演算部104及びブレーキ力演算部10
6によって参照され、そのときのシフトポジションに応
じてアクセル開度VAやブレーキ力FBが演算決定され
る。演算決定されたアクセル開度VAは左右の力行トル
ク演算部108及び110に供給され、ブレーキ力FB
は左右の回生トルク演算部112及び114に供給され
る。
【0023】他方、車輪速演算部120は、車輪速セン
サ40RRからの信号例えばパルス信号を車輪速VRR
を示すデータに変換し、車輪速演算部122は、車輪速
センサ40RLからの信号を車輪速VRLを示すデータ
に変換する。車輪速演算部120の後段に配されている
回転数演算部124は、60/(2πR)を乗ずること
により車輪速VRRを回転数NRに変換する。車輪速演
算部122の後段に配されている回転数演算部126
は、60/(2πR)を乗ずることにより車輪速VRL
を回転数NLに変換する。尚、ここでは、回転数をrp
m単位で、車輪速をm/sec単位で表している。ま
た、Rは車輪半径である。このようにして得られる回転
数情報のうち、右側のモータ12Rの回転数NRは力行
トルク演算部108及び回生トルク演算部112に、ま
た左側のモータ12Lの回転数NLは力行トルク演算部
110及び回生トルク演算部114に入力される。
【0024】右側の力行トルク演算部108は、右側の
モータ12Rの回転数NRをキーとして力行トルクマッ
プ128を参照することにより、そのときの回転数NR
において右側のモータ12Rから出力可能な最大力行ト
ルクを求め、この最大力行トルクをアクセル開度VAに
て案分することにより、右側のモータ12Rに対するト
ルク指令TRを決定する。ここで用いている力行トルク
マップ128は、図6に示すように、力行領域(回転数
>0かつトルク>0の領域)における回転数対最大トル
ク特性を保持する手段であり、これを上述のように回転
数NRをキーとして参照することにより、その回転数N
Rにおける最大力行トルク(図6中のVA=100%の
カーブ上の点)が得られる。更に、そのときのアクセル
開度VAがx%であるとするならば、求めた最大力行ト
ルクにx/100を乗ずる案分処理によって、出力すべ
き力行トルク即ちそのときのアクセル開度VA及び回転
数NRに即したトルク指令TR(図6中のVA=x%の
カーブ上の点)を得ることができる。左側の力行トルク
演算部110も、同様の手順にて、出力すべき力行トル
ク即ちそのときのアクセル開度VA及び回転数NLに即
したトルク指令TLを求める。
【0025】右側の回生トルク演算部112は、右側の
モータ12Rの回転数NRをキーとして回生トルクマッ
プ130を参照することにより、そのときの回転数NR
において右側のモータ12Rから出力可能な最大回生ト
ルクを求め、この最大回生トルクをブレーキ力FBにて
案分することにより、右側のモータ12Rに対するトル
ク指令TRを決定する。ここで用いている回生トルクマ
ップ130は、図7に示すように、回生領域(回転数>
0かつトルク<0の領域)における回転数対最大トルク
特性を保持する手段であり、これを上述のように回転数
NRをキーとして参照することにより、その回転数NR
における最大回生トルク(図7中のFB=100%のカ
ーブ上の点)が得られる。更に、そのときのブレーキ力
FBがx%であるとするならば、求めた最大回生トルク
にx/100を乗ずる案分処理によって、出力すべき回
生トルク即ちそのときのブレーキ力FB及び回転数NR
に即したトルク指令TR(図7中のFB=x%のカーブ
上の点)を得ることができる。左側の回生トルク演算部
114も、同様の手順にて、出力すべき回生トルク即ち
そのときのブレーキ力FB及び回転数NLに即したトル
ク指令TLを求める。
【0026】力行/回生切換部116は、オン/オフ判
定部102の出力に応じ、力行トルクを指令するのかそ
れとも回生トルクを指令するのかを切り換える。即ち、
力行トルク演算部108及び110にて決定されたトル
ク指令TR及びTLを後段に供給するのか、それとも回
生トルク演算部112及び114にて決定されたトルク
指令TR及びTLを後段に供給するのかを、アクセルの
オン/オフに応じて切り換える。以下、説明の便宜のた
め、トルク指令仮確定部100にて決定されたトルク指
令TR及びTLを、“仮確定された”トルク指令TR及
びTLと呼ぶ。
【0027】なお、図5では左右で力行トルクマップ1
28及び回生トルクマップ130を共有しているが、こ
れは、左右のモータ12R及び12Lが同一特性の場合
の例であり、同一特性でない場合等には左右で個別のマ
ップを利用する。また、図6及び図7の例では最大力行
トルク又は最大回生トルクのみをマップ化しているが、
アクセル開度VA又はブレーキ力FBをパラメタとして
多数のトルク曲線をマップ化しておくようにしてもよ
い。そのようなマップ化が行われていれば、回転数とア
クセル開度又はブレーキ力との対にてマップを参照する
ことによりトルク指令を求められるから、力行又は回生
トルク演算部108〜114にて案分処理を実行する必
要がなくなる。反面、回転数対最大トルク特性のみをマ
ップ化する方が、マップ保持のための記憶空間を節約で
きる。更に、トルク指令TR及びTLの演算を左右個別
の機能・演算部材によって同時並行的に実行するのでは
なく、単一の演算部にて時分割で実行する方が、簡素な
構成になる。そのような構成を採るには、例えば、左側
の駆動輪に関する演算の実行タイミング及び右側の駆動
輪に関する演算の実行タイミングを交互に与えるタイミ
ングクロックを発生させ、これに同期した演算を実行す
るようにすればよい。この点は、後述する各種の係数や
補正量の演算に関しても同様である。
【0028】(4)切換制御部の機能 仮確定されたトルク指令TR及びTLは、所定の条件を
満たす場合にのみそのまま、モータ制御部36R及び3
6Lに出力される。言い換えれば、舵角δtや車輪角加
速度が所定条件を満たす場合には、TRC/ABS相当
制御部200又は目標ヨーレイト適合制御部300にて
補正が施されたトルク指令TR及びTLが、仮確定され
たトルク指令TR及びTLに代えて、モータ制御部36
R及び36Lに出力される。先に図4に示した制御切換
部400は、具体的には、仮確定されたトルク指令TR
及びTLを、そのままモータ制御部36R及び36Lに
出力するのかそれともTRC/ABS相当制御部200
又は目標ヨーレイト適合制御部300による補正に供す
るのかを、切り換える。制御切換部400は、補正に供
する場合には、更に、TRC/ABS相当制御部200
及び目標ヨーレイト適合制御部300のいずれによる補
正に供するのかを、切り換える。この切換は、切換制御
部500から供給される制御切換信号に応じて実行され
る。
【0029】
【表1】 切換制御部500にて採用されている制御切換信号生成
論理を、表1に示す。この表に示すように、舵角δtの
絶対値がしきい値δth未満のときには、切換制御部5
00は、仮確定されたトルク指令TR及びTL又はTR
C/ABS相当制御部200にて補正されたトルク指令
TR及びTLがモータ制御部36R及び36Lに出力さ
れるよう、制御切換信号を発生させる。逆に、舵角δt
の絶対値がしきい値δth以上のときには、切換制御部
500は、仮確定されたトルク指令TR及びTL又は目
標ヨーレイト適合制御部300にて補正されたトルク指
令TR及びTLがモータ制御部36R及び36Lに出力
されるよう、制御切換信号を発生させる。ここで用いて
いる舵角δtは、舵角センサ48を用いて得た値であ
る。舵角δtの変化は車両操縦者によるステアリングホ
イルの操作に伴い生じる現象であり、従って、舵角セン
サ48の出力の変化は、車両の挙動を検出する他種のセ
ンサの出力に操舵に伴う変化が現れるのに先立って、現
れる。そのため、本実施形態においては、例えば、ステ
アリングホイルが操作され始めるのに応じて直ちに目標
ヨーレイト適合制御部300の出力を利用し始めること
ができ、従って“操舵中に車体が不安定化しそうになっ
たためアクセルペダルからブレーキペダル56に踏みか
える”といったペダル操作が不要になる。また、スリッ
プが発生しているときに、舵角δtが0になるのに応じ
て直ちにTRC/ABS相当制御部200の出力を利用
し始めることが可能になる。このような効果、即ち操舵
の開始/終了に伴う制御切換に関し高い応答性を得るこ
とができるという効果は、電気信号のみにて実行できる
というモータ出力制御の特性に基づくものであり、在来
エンジン車におけるVSCやABS等のように油圧を利
用する制御では達成できない。
【0030】また、|δt|<δthであるときには、
切換制御部500は、右後輪10RRの角加速度dωR
/dt及び左後輪10RLの角加速度dωL/dtのい
ずれかでも所定のしきい値TH以上になったら、少なく
とも左右いずれかの駆動輪にスリップ又はその傾向が生
じていると見なし、TRC/ABS相当制御部200に
て補正されたトルク指令TR及びTLがモータ制御部3
6R及び36Lに出力されるよう、制御切換信号を発生
させる。|δt|<δthでありかつ角加速度dωR/
dt及びdωL/dtがいずれもしきい値THを下回っ
ているときには、切換制御部500は、仮確定されたト
ルク指令TR及びTLがモータ制御部36R及び36L
に出力されるよう、制御切換信号を発生させる。本実施
形態では、従って、在来エンジン車におけるTRCやA
BSに相当する機能を、舵角δtや車輪速VRR及びV
RLの検出からモータ制御部36R及び36Lへのトル
ク指令出力に至る電気情報処理にて実現できるため、油
圧を制御する機構等は不要である。
【0031】更に、|δt|≧δthであるときには、
切換制御部500は、目標ヨーレイト適合制御部300
にて補正されたトルク指令TR及びTLがモータ制御部
36R及び36Lに出力されるよう、制御切換信号を発
生させる。但し、右後輪10RRの角加速度dωR/d
t及び左後輪10RLの角加速度dωL/dtのいずれ
かでも所定のしきい値TH以上になったら、少なくとも
左右いずれかの駆動輪にスリップ又はその傾向が生じて
いると見なし、TRC/ABS相当制御部200にて補
正されたトルク指令TR及びTLがモータ制御部36R
及び36Lに出力されるよう、制御切換信号を発生させ
る。後述のように目標ヨーレイト適合制御部300では
舵角δt等を利用して目標ヨーレイト適合制御を実行し
ているため、本実施形態によれば、ヨーレイトセンサ、
前後加速度センサ、横加速度センサ等、比較的高価のセ
ンサを利用する必要がなく低コスト化を達成できるこ
と、比較的早期にかつ正確に検出できる舵角δtを利用
でき従って応答性が向上すること、すべり角度の演算が
不要で従って演算負担の軽減やそれによる高速化を達成
できること等、各種の効果が生じる。また、スリップ又
はその傾向が生じたときに、TRC/ABS相当制御部
200にて補正されたトルク指令TR及びTLを用いる
こととしているため、目標ヨーレイト適合制御部300
にて補正されたトルク指令TR及びTLを用いることに
より却ってスリップ又はその傾向が著しくなることを防
ぐことができる。
【0032】上述の制御切換論理を実現するには、例え
ば、舵角δtを検出及び判定する手段、角加速度dωR
/dt及びdωL/dtを検出及び判定する手段、並び
にこれらの判定の結果に基づき且つ表1の論理に従い制
御切換信号を発生させる手段があればよい。これらの手
段を備えた切換制御部500の一例を、図8に示す。こ
の図では、舵角センサ48の出力信号が舵角演算部50
2にて舵角δtを示すデータに変換され、舵角判定部5
04にて舵角δtが|δt|<δthを満たすか否かの
判定が行われている。また、車輪加速度演算部506は
車輪速演算部120にて検出された右後輪10RRの車
輪速VRRを微分することにより右後輪10RRの加速
度dVRR/dtを求め、角加速度演算部510は加速
度dVRR/dtを車輪半径Rにて除すことにより右後
輪10RRの角加速度dωR/dtを求め、スリップ判
定部514は角加速度dωR/dtをしきい値THと比
較している。同様に、車輪加速度演算部508は車輪速
演算部122にて検出された車輪速VRLを微分するこ
とにより左後輪10RLの加速度dVRL/dtを求
め、角加速度演算部512は加速度dVRL/dtを車
輪半径Rにて除すことにより左後輪10RLの角加速度
dωL/dtを求め、スリップ判定部516は角加速度
dωL/dtをしきい値THと比較している。制御動作
選択部518は、舵角判定部504並びにスリップ判定
部514及び516における判定結果に基づきかつ表1
の論理に従い、制御切換信号を生成する。このような構
成により、前述の論理に従う制御切換が実現される。
【0033】なお、しきい値δthは、実質的には0と
みなしうる微小値に設定すればよい。また、切換制御部
500は図4では車輪速センサ40RR及び40RLの
出力を取り込んでいるのに対し図8では車輪速演算部1
20及び122の出力を取り込んでおり、表記が形式上
一致していないが、いずれも車輪速VRR及びVRLの
入力を意味しているから、形式上の表記不一致によって
当業者の理解が妨げられるものでないことは明らかであ
ろう。以下の説明及び図面でも、機能説明の省略及び明
瞭化のため、制御の実質に着目し同様の表記を採用して
いる。
【0034】(5)TRC/ABS相当制御部の機能
【表2】 TRC/ABS相当制御部200は、角加速度dωR/
dt及びdωL/dtに基づき右後輪10RRに係るフ
ィードバックトルクΔTR及び左後輪10RLに係るフ
ィードバックトルクΔTLを表2の論理に従い求め、仮
確定されたトルク指令TRからフィードバックトルクΔ
TRを、また仮確定されたトルク指令TLからフィード
バックトルクΔTLを減ずる。表2の左半分に現れてい
るしきい値THω1〜THω3や、右半分に現れている
ゲインG1及びG2並びに補正項S1及びS2は、モー
タ12R及び12Lの状態に応じ且つ特性に従い、TR
C/ABS相当制御部200が設定する。しきい値TH
ω1〜THω3、ゲインG1及びG2並びに補正項S1
及びS2をモータ12R及び12Lの状態及び特性に従
属させることにより、本実施形態においては、モータ1
2R及び12Lの出力トルクが広範囲に亘って変化する
例えば市街地走行向けの車両であっても、好適なタイミ
ングでTRC/ABS相当制御を起動できまたTRC/
ABS相当制御に適するトルクを発生させることができ
る。即ち、特開平2―299402号公報や特開平3―
27701号公報に記載のフォークリフト等に比べ、ス
リップを好適に抑制乃至解消可能な電気自動車が得られ
る。更に、車体速を求める必要がないから前輪10FR
及び10FLの車輪速を検出する必要もない。なお、T
RC/ABS相当制御部200の機能、作用及び効果に
関しては、本願と同じ出願人に係る特開平8―1821
19号公報をも参照されたい。本実施形態におけるTR
C/ABS相当制御部200は、当該公報にて開示され
ているTRC相当制御と、当該TRC相当制御を制動に
変形応用したABS相当制御とを実行する。従って、T
RC/ABS相当制御部200によって、TRC相当部
分に関しては特開平8―182119号と同様の作用効
果が得られ、かつABS相当部分に関してもそれと類似
した作用効果が得られる。また、TRC相当制御の手順
とABS相当制御の手順との間で共通する部分について
は、機能部分乃至情報を共有できる。
【0035】図9に、TRC/ABS相当制御部200
の一例構成を示す。図中、右の角加速度判定部202
は、角加速度dωR/dtをしきい値THω1〜THω
3(但しTHω1>THω2>0>THω3)と比較す
ることにより、角加速度dωR/dtが、THω1超、
THω1以下THω2超、THω2以下THω3超、及
びTHω3以下のうち、どの領域に属しているかを判定
する。フィードバックトルク演算部204は角加速度d
ωR/dtがTHω1超の領域に属しているときに、フ
ィードバックトルク演算部206は角加速度dωR/d
tがTHω1以下THω2超の領域に属しているとき
に、フィードバックトルク演算部208は角加速度dω
R/dtがTHω2以下THω3超の領域に属している
ときに、フィードバックトルク演算部210は角加速度
dωR/dtがTHω3以下の領域に属しているとき
に、それぞれ、右後輪10RRに係るフォードバックト
ルクΔTRを演算する。フィードバックトルク演算部2
04〜210にて使用される演算式は、それぞれ、表2
の右半分の上から1番目、2番目、3番目及び4番目の
式である(符号同順)。加算器212は、仮確定された
トルク指令TRからフォードバックトルクΔTRを減ず
ることにより、補正されたトルク指令TRを生成し、こ
れをモータ制御部36Rに出力する。
【0036】同様に、図中、左の角加速度判定部214
は、角加速度dωL/dtをしきい値THω1〜THω
3と比較することにより、角加速度dωL/dtが、T
Hω1超、THω1以下THω2超、THω2以下TH
ω3超、及びTHω3以下のうち、どの領域に属してい
るかを判定する。フィードバックトルク演算部216は
角加速度dωL/dtがTHω1超の領域に属している
ときに、フィードバックトルク演算部218は角加速度
dωL/dtがTHω1以下THω2超の領域に属して
いるときに、フィードバックトルク演算部220は角加
速度dωL/dtがTHω2以下THω3超の領域に属
しているときに、フィードバックトルク演算部222は
角加速度dωL/dtがTHω3以下の領域に属してい
るときに、それぞれ、左後輪10RLに係るフォードバ
ックトルクΔTLを演算する。フィードバックトルク演
算部216〜222にて使用される演算式は、それぞ
れ、表2の右半分の上から5番目、6番目、7番目及び
8番目の式である(符号同順)。加算器224は、仮確
定されたトルク指令TLからフォードバックトルクΔT
Lを減ずることにより、補正されたトルク指令TLを生
成し、これをモータ制御部36Lに出力する。
【0037】しきい値THω1〜THω3、ゲインG1
及びG2並びに補正項S1及びS2を決定しているの
は、回転数判定部226及び228、係数決定部230
及び232並びにしきい値演算部234及び236であ
る。また、その際には係数決定用マップ238が使用さ
れる。これらのうち回転数判定部226は、回転数演算
部124にて演算されたモータ12Rの回転数NRをベ
ース回転数NBと比較する。ここでいうベース回転数N
Bは、図6、図7及び図10に示されるように、モータ
12R(及び12L)のトルクが定トルク線により制約
される定トルク領域と、モータ12R(及び12L)の
トルクが定パワー線により制約される定パワー領域との
境を示す回転数である。係数決定部230は、アクセル
がオンしているかオフしているかに関する情報をオン/
オフ判定部102から入力すると共に、回転数NRがベ
ース回転数NBを上回っているか否かに関する情報を回
転数判定部226から入力し、これらの入力に基づき、
現在のモータ12Rの動作点が図10中の領域1〜4の
うちどの領域に属しているかを判定する。領域1は定ト
ルク力行領域、2は定パワー力行領域、3は定トルク回
生領域、4は定パワー回生領域である。同様に、回転数
判定部228は、回転数演算部126にて演算されたモ
ータ12Lの回転数NLをベース回転数NBと比較す
る。係数決定部232は、アクセルがオンしているかオ
フしているかに関する情報をオン/オフ判定部102か
ら入力すると共に、回転数NLがベース回転数NBを上
回っているか否かに関する情報を回転数判定部228か
ら入力し、これらの入力に基づき、現在のモータ12L
の動作点が領域1〜4のうちどの領域に属しているかを
判定する。
【0038】係数決定部230は、モータ12Rの動作
点が現在所属している領域にて用いるべき係数値を、係
数決定用マップ238から獲得する。係数決定部232
は、モータ12Lの動作点が現在所属している領域にて
用いるべき係数値を、係数決定用マップ238から獲得
する。係数決定用マップ238は、各種の係数をモータ
動作点の所属領域に対応づけて記憶している。より具体
的には、係数決定用マップ238上では、図10に示さ
れるように、しきい値THω1〜THω3を決定するた
めの係数a1〜a3、b1〜b3、c1〜c3及びd1
〜d3並びにフィードバックゲインG1及びG2を決定
するための係数A1、A2、B1、B2、C1、C2、
D1及びD2が、各領域毎に一般に異なる値に設定され
る。また、補正項S1及びS2は力行か回生かに応じ一
般に異なる値に設定される。右のしきい値演算部234
は、決定された係数を用いて
【数1】(アクセルオン時) THω1=a1×exp(b1×VA+c1×VRR+
d1×VA×VRR) THω2=a2×exp(b2×VA+c2×VRR+
d2×VA×VRR) THω3=a3×exp(b3×VA+c3×VRR+
d3×VA×VRR) G1 =A1×exp(B1×VA+C1×VRR+
D1×VA×VRR) G2 =A2×exp(B2×VA+C2×VRR+
D2×VA×VRR) (アクセルオフ時) THω1=a1×exp(b1×FB+c1×VRR+
d1×FB×VRR) THω2=a2×exp(b2×FB+c2×VRR+
d2×FB×VRR) THω3=a3×exp(b3×FB+c3×VRR+
d3×FB×VRR) G1 =A1×exp(B1×FB+C1×VRR+
D1×FB×VRR) G2 =A2×exp(B2×FB+C2×VRR+
D2×FB×VRR) の演算を実行することにより、しきい値THω1〜TH
ω3及びフィードバックゲインG1及びG2を決定す
る。同様に、左のしきい値演算部236は、次の式中の
VRRに代えてVRLを用いた式にて、しきい値THω
1〜THω3及びフィードバックゲインG1及びG2を
決定する。尚、VRRは車輪速演算部120から、VR
Lは車輪速演算部122から、VAはアクセル開度演算
部104から、FBはブレーキ力演算部106から入力
する。
【0039】このように、モータ12R及び12Lの特
性に従い決定したしきい値、フィードバックゲイン及び
補正項を用いてフィードバックトルクΔTR及びΔTL
を決定しているため、モータ12R及び12Lの特性を
広い領域に亘って使用する用途でも、モータ12R及び
12Lの状態や車両操縦者の要求に応じた適切なフィー
ドバックトルクΔTR及びΔTLを発生させることがで
きる。また、このフィードバックトルクΔTR及びΔT
Lを用いて補正したトルク指令TR及びTLを、前述の
ように|δt|<δthであり且つ角加速度dωR/d
t及びdωL/dtのうち少なくとも一方がしきい値T
H以上であるときにモータ制御部36R及び36Lに出
力するようにしているため、スリップ又はその傾向を好
適に防止又は抑制できる。なお、本実施形態では左右の
モータ12R及び12Lが同一特性であることを仮定し
ているため、左右で係数決定用マップ238を共用して
いるが、同一特性でない場合等には、別々のマップとし
てもよい。
【0040】図11に、本実施形態におけるアクセルオ
ン時のスリップ路面挙動を、右後輪10RRを例として
示す。図中、時刻t0は右後輪10RRがスリップ路面
に入った時点を表している。また、(c)は角加速度d
ωR/dtの挙動を示しており、(b)はそのうち特に
時刻t0近傍の挙動を拡大して示しており、(a)はモ
ータ12Rの実出力トルクの挙動を(b)と共通の時間
軸で示している。
【0041】まず、時刻t0においてスリップ路面に入
ると右後輪10RRの角加速度dωR/dtは上昇の傾
向を示す。角加速度dωR/dtがしきい値THω1を
上回るに至ると、ゲインG1及び補正項S1を用いた式
によるフィードバックトルクΔTRが生成され、モータ
制御部36Rへのトルク指令TRにフィードバックが施
されることとなるため、トルク指令TRが低下しそれに
応じモータ12Rの実出力トルクも低下する。すると、
これに応じ角加速度dωR/dtも小さくなりしきい値
THω1以下になる。これに応じてフィードバックトル
クΔTRが0になるとトルク指令TRが再び増大しこれ
に応じ角加速度dωR/dtは再度増大する。回転数N
Rが十分低くなっていなければ、このときの仮確定終了
段階でのトルク指令TRもスリップ路面に適する値とは
ならない。従って、実出力トルク及び角加速度dωR/
dtは同様の挙動を繰り返す。何度かの繰返しの後、回
転数NRが十分低くなり仮確定終了段階でのトルク指令
TRがスリップ路面に適する値になると、角加速度dω
R/dtがしきい値THω1以下になった状態からフィ
ードバックトルクΔTRを0にしても角加速度dωR/
dtは上昇しなくなる。角加速度dωR/dtがしきい
値THω2以下まで減ると、ゲインG2及び補正項S2
を用いた式によるフィードバックトルクΔTRが生成さ
れ、モータ制御部36Rへのトルク指令TRにフィード
バックが施されることとなるため、フィードバックトル
クΔTRは更に減り、0近傍まで下がる。この時点で
は、右後輪10RRは路面を好適にグリップしている。
その後スリップ路面から右後輪10RRが脱すると、角
加速度dωR/dtが低下する。角加速度dωR/dt
がしきい値THω3以下まで低下すると、フィードバッ
クトルクΔTRは0になり、トルク指令TRが増大し、
更に角加速度dωR/dtが増大する。増大の結果角加
速度dωR/dtは一般にしきい値THω2に至るけれ
ども、その結果フィードバックトルクΔTRが生じるた
めに角加速度dωR/dtは増大を抑制され、最終的に
はしきい値THω2程度で安定する。この時点では、右
後輪10RRは路面を好適にグリップしている。尚、左
後輪10RLでも、またアクセルオフ時でも、同様の結
果となる。
【0042】図12に、アクセル開度VA=100%で
車体速及び車輪速の初速が所定値aの場合(A)、アク
セル開度VA=100%で車体速及び車輪速の初速が0
の場合(B)、アクセル開度VA=20%で車体速及び
車輪速の初速が所定値aの場合(C)、アクセル開度V
A=20%で車体速及び車輪速の初速が0の場合(D)
に関し、車体速及び車輪速の挙動を示す。これらの図に
示されているいずれの場合においても、本実施形態で
は、車体側と車輪速の差を5%以内に抑えることができ
ている。
【0043】なお、本実施形態では、角加速度dωR/
dt及びdωL/dtをしきい値判定しているが、スリ
ップ率=|(駆動輪の車輪速−車体速)/(駆動輪の車
輪速)|をしきい値判定してもよい。但し、TRC/A
BS相当制御への切換を実行する実施形態においては、
TRC/ABS相当制御において駆動輪の角加速度を使
用するから、演算負担軽減等の点では駆動輪の角加速度
の方が好ましい。なお、車輪速は、左右の従動輪の車輪
速を検出しその平均値を求めることにより得ることがで
きる。
【0044】(6)目標ヨーレイト適合制御部の機能 目標ヨーレイト適合制御部300は、舵角δtの変化に
対するヨーレイトγの応答が目標応答γ*に一致乃至実
質的に一致するよう、舵角δtに基づいてトルク指令T
R及びTLを補正する機能を有している。この機能を実
現するため、目標ヨーレイト適合制御部300は、例え
ば図13に示すごとき構成を採る。図13中の路面摩擦
係数演算部302は車輪加速度演算部506から右後輪
10RRの加速度dVRR/dtを入力し、これに基づ
き右後輪10RRが走行している部位の路面摩擦係数μ
Rを求める。路面摩擦係数演算部304は車輪加速度演
算部508から左後輪10RLの加速度dVRL/dt
を入力し、これに基づき左後輪10RLが走行している
部位の路面摩擦係数μLを求める。路面摩擦係数μR及
びμLを求めるに際しては、路面摩擦係数演算部302
及び304は、駆動輪加速度と路面摩擦係数とを対応づ
ける関数Fを記憶するμマップ306を参照する。図1
4に、μマップ306にて保持される関数Fの一例を示
す。
【0045】路面摩擦係数演算部302にて得られた路
面摩擦係数μRは指令補正係数演算部308に、路面摩
擦係数演算部304にて得られた路面摩擦係数μLは指
令補正係数演算部310に、各々供給される。これら指
令補正係数決定部308及び310は、更に、舵角演算
部502から舵角δtをも入力する。指令補正係数決定
部308は、入力した路面摩擦係数μR及び舵角δtを
キーとしてkマップ312〜318のいずれかを参照す
ることにより、指令補正係数kRを決定する。同様に、
指令補正係数決定部310は、入力した路面摩擦係数μ
L及び舵角δtをキーとしてkマップ312〜318の
いずれかを参照することにより、指令補正係数kLを決
定する。kマップ312〜318の内容は、いずれも、
【数2】kR=G(μR,δt) kL=G(μL,δt) の如く、関数Gで表すことができる(図15参照)。関
数Gとしては、例えば
【数3】G(μ,δt)=1−P×exp(p1×|δ
t|+p2×μ) なる形を例示できる。
【0046】kマップ312〜318相互の相違点は、
この式中のパラメタP,p1,p2の値にある。例えば
kマップ312はパラメタP=P0,p1=p01,p
2=p02のマップであり、kマップ314はパラメタ
P=P1,p1=p11,p2=p12のマップであ
り、kマップ316はパラメタP=P2,p1=p2
1,p2=p22のマップであり、kマップ318はパ
ラメタP=P3,p1=p31,p2=p32のマップ
である。これらのパラメタは、目標ヨーレイト適合制御
部300の目的機能たるヨーレイト応答の目標応答への
適合が達せられるよう、決めておく。kマップ切換部3
20は、車両状態が前進・後退加速・定速走行のいずれ
かなのかそれとも減速走行なのか、舵角δtは正か負
か、及び操舵方向は右か左かという判別を行い、その結
果に応じてkマップ312〜318の中から使用すべき
マップを選ぶ。選択論理は、具体的には次の表の通りで
ある。
【0047】
【表3】 なお、車両状態が前進・後退加速・定速走行のいずれか
なのかそれとも減速走行なのかについては、シフトポジ
ションスイッチ46やオン/オフ判定部102の出力に
基づき、舵角δtは正か負かについては舵角演算部50
2の出力に基づき、また操舵方向は右か左かについては
舵角演算部502の出力を微分する舵角微分演算部32
2の出力dδt/dtに基づき、判定できる。
【0048】決定された指令補正係数kRはトルク指令
補正部324に入力され、トルク指令補正部324は仮
確定されたトルク指令TRにこの指令補正係数kRを乗
ずることにより、モータ制御部36Rに出力するトルク
指令TRを生成する。同様に、決定された補正指令係数
kLはトルク指令補正部326に入力され、トルク指令
補正部326は仮確定されたトルク指令TLにこの指令
補正係数kLを乗ずることにより、モータ制御部36L
に出力するトルク指令TLを生成する。従って、目標ヨ
ーレイト適合制御部300から出力されるトルク指令T
R及びTLは、kマップ312〜318のいずれかを用
いて決定された指令補正係数kR及びkLにて、仮確定
されたトルク指令TR及びTLを補正した値となるか
ら、kマップ312〜318の内容設計やその選択論理
を後述の原理に基づき設計した本実施形態においては、
ヨーレイトγの検出・利用や車体すべり角度βの演算等
を行わずとも、操舵中の走行不安定性を解消乃至低減で
き、制御の面で低コスト、高応答性、短い処理時間、高
信頼性等の利点がある。また、この補正に当たって利用
しているkマップ312〜318は、任意の値の指令補
正係数kR及びkLを与えうるよう設計でき、そのよう
に設計した場合には、補正によって、力行時であっても
トルク指令TR及びTLを回生領域に持ち込むことがで
き、また回生時であっても力行領域に持ち込むことがで
きる。即ち、図16に示されるように、モータ12R及
び12Lの実トルク出力可能領域は、力行回生双方の領
域に亘る広い領域とすることができるから、走行不安定
性の解消低減に必要なトルクを好適に実現することがで
きると共に、制動エネルギの回生効率が高まりエネルギ
効率のよい車両を実現できる。なお、図16に示されて
いるのはkマップ312〜318それ自体の内容ではな
くkマップ312〜318を利用した目標ヨーレイト適
合制御を実行したときの出力特性である。kマップ31
2〜318自体は図15に示す如き内容であり、前述し
た力行トルクマップ128と回生トルクマップ130と
を単に結合させたものではない点に留意されたい。
【0049】(7)目標ヨーレイト適合制御の原理、作
用及び効果 目標ヨーレイト適合制御部300は、上述のように左右
のトルク指令TR及びTLに互いに異なる補正を施す処
理を通じて、操舵中における車体の走行不安定性の抑制
乃至解消を、達成している。即ち、左右後輪10RL及
び10RRに互いに異なるトルクを付与することにより
車体にヨー方向のモーメントMを発生させることができ
ることと、ヨーレイトγの応答が舵角δt及びモーメン
トMにて定まることとを、利用し、それによって、すべ
り角度βの演算やヨーレイトγの検出なしで、舵角δt
の変化に対するヨーレイトγの応答を目標応答γ*に一
致乃至実質的に一致させている(目標ヨーレイト適合制
御)。更に、この制御は、本実施形態では、kマップ3
12〜318の内容やその選択利用により、実現されて
いる。
【0050】ここでは、まず、ヨーレイトγの応答が舵
角δt及びモーメントMにて定まることに関し、車体の
基礎運動方程式に基づいて説明する。車輪に左右差がな
く、コーナリングフォースにも左右差がないと考える
と、車体の基礎運動方程式は、
【数4】 m・V・(dβ/dt+γ)=2・(YF+YR) …車体の横方向の運動 但し、YF=YFR+YFL、YR=YRR+YRL I・dγ/dt=2・(LF・YF−LR・YR)+M …車体の重心回りでのヨー方向の運動 となる。変数名とその意味に関しては、図17を参照さ
れたい。他方、各車輪の回転の運動方程式は、車輪に左
右差がなく、また指令したトルクがそのまま正確に実出
力になると仮定すると、
【数5】 となる。変数名とその意味に関しては、図18を参照さ
れたい。更に、コーナリングフォースは、
【数6】 YF=−KF・{β+(LF/VS)・γ−δt} YR=−KR・{β+(LR/VS)・γ} と表される。従って、数5及び数6を数4に代入して整
理すると、
【数7】s・β(s)=A11・β(s)+A12・γ
(s)+B11・δt(s)+C11・M(s) s・γ(s)=A21・β(s)+A22・γ(s)+
B21・δt(s)+C21・M(s) 但し、A11=−2・(KF+KR)/(m・VS) A12=−1−2・(LF・KF−LR・KR)/(m
・VS2 ) B11=2・KF/(m・VS) C11=0 A21=−2・(LF・KF−LR・KR)/I A22=−2・(LF2 ・KF+LR2 ・KR)/(I
・VS) B21=2・LF・KF/I C21=1/I という連立微分方程式が得られる。式中、sはラプラス
演算子である。
【0051】数7はすべり角度β、ヨーレイトγ、舵角
δt及びモーメントMの関係を表している。いま、数7
からβ(s)を消去し、更にγ(s)について解くと、
【数8】γ(s)={Hδ(s)・δt(s)+HM・
M(s)}/Hγ(s) 但し、Hγ(s)=s2 +(A11+A22)・s+A
12・A21−A11・A22 Hδ(s)=B21・s−A11・B21−A21・B
11 HM(s)=C21・s−A11・C21−A21・C
11 なる式が得られる。数8は、ヨーレイトγが舵角δt及
びモーメントMによって定まることを表している。従っ
て、ヨーレイトγをその目標たるγ*に一致させたいの
であれば、上式中のヨーレイトγを目標ヨーレイトγ*
に置き換えた式をモーメントMについて解き、その結果
得られる式
【数9】M(s)={Hγ(s)・γ*(s)−Hδ
(s)・δt(s)}/HM(s) の中の目標ヨーレイトγ*(s)に適宜所望の応答を代
入すればよい。例えば、舵角δt(s)に対して一次遅
れの応答を目標ヨーレイトγ*(s)とするのであれ
ば、
【数10】 γ*(s)={Gγ/(1+Tγ)}・δt(s) 但し、Gγ、Tγ:定数 を数9に代入する。そのようにして得られる式は、
【数11】M(s)={Gγ/(1+Tγ)・Hγ
(s)−Hδ(s)}/HM(s)・δt(s) である。数11の右辺には舵角δtが現れておりヨーレ
イトγやすべり角度β等は現れていないから、ヨーレイ
トγを目標ヨーレイトγ*に一致適合させるためのモー
メントM即ち操舵中の車体の走行不安定性を解消するの
に必要なモーメントMは、専ら舵角δtによって定める
ことができる。なお、上述の一次遅れ系は一例であり、
より一般には、その右辺に変数としては舵角δtのみが
含まれるように目標ヨーレイトγ*の式を定めてあれ
ば、やはり、モーメントMを舵角δtにて決定できる。
【0052】他方、モーメントMは、図17にて定義さ
れているトレッドTDR及びTDL並びに車輪前後力F
XRR及びFXRLを用い、
【数12】 M(s)=TDR・FXRR−TDL・FXRL と表すことができる。更に、前述の車輪の回転の運動方
程式から
【数13】 FXRR=(TR−It・s・ωR)/R FXRL=(TL−It・s・ωL)/R なる式を導くことができる。従って、
【数14】M(s)=(TDR・TR−TDL・TL)
/R−It・s・(ωR−ωL)/R が成り立つ。数14の右辺は、トルク指令TR及びTL
と角速度ωR及びωLとによってモーメントMが定まる
ことを示している。従って、数10の目標ヨーレイトγ
*を用いる例でいえば、数11の右辺と数14の右辺と
を等しいとおくことにより、
【数15】TDR・TR−TDL・TL=It・s・
(ωR−ωL)+R・{Gγ/(1+Tγ)・Hδ−H
δ}/HM・δt なる式が得られる。ここに、δt=0とおいたとき、数
15は
【数16】TDR・TR−TDL・TL=It・s・
(ωR−ωL) となる。この式中のTR及びTLをいまTR’及びT
L’とおくこととすると、数15は
【数17】TDR・(TR−TR’)−TDL・(TL
−TL’)=R・{Gγ/(1+Tγ)・Hγ−Hδ}
/HM・δt となる。
【0053】これら数16及び数17は、右後輪10R
Rに要求される角加速度s・ωRに応じてトルク指令T
RをひとまずTR’と仮確定しまた左後輪10RLに要
求される角加速度s・ωLに応じてトルク指令TLをひ
とまずTL’と仮確定しておいて(数16)、その上で
舵角δtに基づく補正を施せば(数17)、ヨーレイト
γを目標ヨーレイトγ*に一致させるのに必要なモーメ
ントMを生成できる、という可制御性を、表している。
特に、数16は、要求される加速乃至減速に応じてトル
ク指令TR及びTLをTR’及びTL’と仮確定すれば
よいことを表している。前述のトルク指令仮確定部10
0では、この原理に従い、アクセル開度VA、ブレーキ
力FB、シフトポジション等に応じてトルク指令仮確定
を実行している。また、数17の右辺は、仮確定したト
ルク指令TR’及びTL’に舵角δtに基づく補正を施
せば目標ヨーレイト適合制御を実現できることを表して
いる。前述の目標ヨーレイト適合制御部300では、こ
の原理に従い、舵角δtに応じて指令補正係数kR及び
kLを決定している。即ち、舵角δtに応じて指令補正
係数(kR及びkL)を可変設定するkマップ312〜
318を用い、またkマップ312〜318を舵角δt
の正負や操舵方向(即ちdδt/dtの正負)に応じて
切り換えている。更に、数17右辺中のHγ、HΔ及び
HMは数7及び数8の但書きからわかるように車体速V
Sに依存しており、また数17左辺中のトルク指令T
R’及びTL’は図16からわかるように角速度ωR及
びωLに依存している。指令補正係数kR及びkLを決
定する際に、車体速と車輪速の関係に関わる要素たる路
面摩擦係数(μR及びμL)に応じて指令補正係数(k
R及びkL)を可変設定するkマップ312〜318
を、用いている。なお、その右辺に変数としては舵角δ
tのみが含まれるように目標ヨーレイトγ*の式を定め
てあれば、数17と同じく可制御性を示す類似した式が
得られる。
【0054】図19及び図20に、前述の実施形態にお
ける目標ヨーレイト適合制御の効果を示す。図20に示
されているのは、図19に示すような操舵(レーンチェ
ンジ)を実行したときの舵角δtの挙動、その時間変化
dδt/dtの挙動、左右後輪10RL及び10RRの
実出力トルクの挙動、並びに車体の軌跡である。(A)
と(B)との比較から明らかなように、本実施形態に係
る目標ヨーレイト適合制御を実行したときには、実行し
ない場合に比べて、好適なレーンチェンジ軌跡が得られ
ている。
【0055】(8)目標すべり角度適合制御 前述の実施形態では、操舵中の走行安定性を維持達成す
るため、目標ヨーレイト適合制御を実行しているが、こ
れに代えて目標すべり角度適合制御を実行してもよい。
ここでいう目標すべり角度適合制御とは、舵角δtの変
化に対するすべり角度βの応答が目標応答β*と一致乃
至実質的に一致するよう、舵角δtに応じて左右後輪1
0RL及び10RRに対するトルク指令TR及びTLを
補正することにより、操舵中の走行安定性を維持達成す
る制御である。通常、すべり角度βに関しては0である
ことが要請されるため、目標すべり角度適合制御は、実
際には、車体すべり角度零制御として実行する。
【0056】ここに、数7に示した連立微分方程式に
て、すべり角度β、ヨーレイトγ、舵角δt及びモーメ
ントMの関係が与えられている。数7からγ(s)を消
去しβ(s)について解くと、
【数18】β(s)={Gδ(s)・δt(s)+GM
(s)・M(s)}/Gβ(s) 但し、Gβ(s)=s2 −(A11+A22)・s+A
11・A22−A12・A21 Gδ(s)=B11・s+A12・B21−A22・B
11 GM(s)=C11・s+A12・C21−A22・C
11 なる式が得られるから、この式中のすべり角度βを目標
すべり角度β*に置き換えた式をモーメントMについて
解き、その結果得られる式
【数19】M(s)={Gβ(s)・β*(s)−Gδ
(s)・δt(s)}/GM(s) の中の目標すべり角度β*(s)に適宜所望の応答を代
入すれば、目標すべり角度制御時におけるモーメントM
と舵角δtの関係がわかる。一例として、車体すべり角
度零制御即ちβ*(s)=0を仮定すると、この関係
は、
【数20】 M(s)={−Gδ(s)/GM(s)}・δt(s) となる。数20の右辺には舵角δtが現れておりヨーレ
イトγやすべり角度β等は現れていないから、車体すべ
り速度零制御実行時(より一般には目標すべり角度制御
実行時)も、操舵中の車体の走行不安定性を解消するの
に必要なモーメントMは専ら舵角δtによって定めるこ
とができる。
【0057】このようにして得た数20の右辺と前述の
数14の右辺とを等しいとおくことにより、
【数21】TDR・TR−TDL・TL=It・s・
(ωR−ωL)−R・{Gδ/GM}・δt なる式が得られる。δt=0とおいたとき、数21は数
16と同様の式となるから、車体すべり角度零制御にお
いては
【数22】TDR・(TR−TR’)−TDL・(TL
−TL’)=−R・{Gδ/GM}・δt となる。数21及び数22から明らかなように、車体す
べり角度零制御においても、右後輪10RRに要求され
る角加速度s・ωRに応じてトルク指令TRをひとまず
TR’と仮確定しまた左後輪10RLに要求される角加
速度s・ωLに応じてトルク指令TLをひとまずTL’
と仮確定しておいて、その上で舵角δtに基づく補正を
施せば、すべり角度βを目標ヨーレイトβ*たる0に一
致させるのに必要なモーメントMを生成できる。従っ
て、車体すべり角度零制御(より一般には目標すべり角
度適合制御)も、前述の実施形態と基本的に同一の入
力、手法及び機能ブロックにて実現でき、同一の効果を
奏することができる。
【0058】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
車両操縦者からの加速又は減速要求に基づき左右各駆動
輪に係るモータへの指令を仮確定し、舵角に対する車体
のヨーレイト又はすべり角度の応答がその目標応答と一
致するよう定めた指令決定論理に従い、モータに与える
のに先立ちかつ各モータ毎に、仮確定された指令を補正
するようにしたため(目標ヨーレイト又は目標すべり角
度適合制御)、左右の走行軌跡差では十分に制御に反映
し得なかった車体の回転運動、横運動、すべり等をモー
タの制御ひいては車両の駆動制御に反映させることがで
き、従来よりもより確実かつ的確に車両の走行安定性を
実現できる。また、本発明における目標ヨーレイト又は
すべり角度適合制御は、従来の左右駆動輪独立駆動型電
気自動車に制御論理上の或いはソフトウエア的な改変を
施すのみで実現できハードウエア的乃至機構的な実質的
改変は不要であるため、低コストに実施できる。
【0059】特に、舵角の検出値に基づき上記補正を実
行するようにしているため、目標ヨーレイト又は目標す
べり角度適合制御に関し、高応答性及び低コスト化を達
成でき、更には高い操作性も実現できる。また、舵角及
び路面摩擦係数双方の検出値に基づき指令を補正するよ
うにした場合、目標ヨーレイト又は目標すべり角度適合
制御を実行しているときの各モータの制御領域が力行及
び回生双方の領域にまたがる領域に広がるから、高いエ
ネルギ(回収)効率が実現される。更に、舵角及び路面
摩擦係数と指令補正係数とを対応づける指令補正用マッ
プを利用して指令補正係数を獲得し、これに基づきかつ
上記指令決定論理に従い指令の補正を実行するようにし
た場合、指令の補正、ひいては制御を迅速化できる。
【0060】また、舵角の検出値が実質的に非零である
ときには目標適合制御手段にて補正された指令を、また
実質的に零であるときにはTRC/ABS相当制御手段
にて補正された指令を、各モータに与えるようにすれ
ば、舵角の如何によらず車両の走行安定性を維持達成で
き、かつ高い応答性と低コストとを実現できる。更に、
TRC/ABS相当制御手段として、駆動輪の角加速度
及び角速度に応じて補正した指令を各モータに与えるT
RC/ABS相当制御手段を設けることにより、構内走
行等に限定されない広い利用範囲や高い応答性をTRC
相当制御のみならずABS相当制御でも拡張実現でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を実施するのに適する電気自動車のシ
ステム構成を示すブロック図である。
【図2】 ホイルインモータの構造の一例を示す断面図
であり、図中右上の円内は一部拡大図である。
【図3】 図1のシステムにおける制動力配分を示す図
である。
【図4】 車両制御部の機能構成を示すブロック図であ
る。
【図5】 トルク指令仮確定部の機能構成を示すブロッ
ク図である。
【図6】 力行トルクマップの内容を示す図である。
【図7】 回生トルクマップの内容を示す図である。
【図8】 切換制御部の機能構成を示すブロック図であ
る。
【図9】 TRC/ABS相当制御部の機能構成を示す
ブロック図である。
【図10】 係数決定用マップの内容を示す図である。
【図11】 アクセルオン時におけるTRC/ABS相
当制御の作用効果を示す図であり、特に(a)は通常路
面からスリップ路面に入ったときの右後輪実出力トルク
の挙動を、(b)は通常路面からスリップ路面に入った
ときの右後輪角加速度の挙動を、(c)は通常路面から
スリップ路面に入り更に通常路面に脱したときの右後輪
角加速度の挙動を、それぞれ示すタイムチャートであ
る。
【図12】 アクセルオン時に通常路面からスリップ路
面に入り更に通常路面に脱したときのTRC/ABS相
当制御の作用効果を示す図であり、特に(A)はアクセ
ル開度100%で車輪速度車体速度共に初速が所定値a
のときの挙動を、(B)はアクセル開度100%で車輪
速度車体速度共に初速が0のときの挙動を、(C)はア
クセル開度20%で車輪速度車体速度共に初速が所定値
aのときの挙動を、(D)はアクセル開度20%で車輪
速度車体速度共に初速が0のときの挙動を、それぞれ示
すタイムチャートである。
【図13】 目標ヨーレイト適合制御部の機能構成を示
すブロック図である。
【図14】 μマップの内容を示す図である。
【図15】 kマップの内容を示す図である。
【図16】 目標ヨーレイト適合制御時の実トルク出力
可能範囲を示す図である。
【図17】 車体の運動を既述するための所定数及び変
数を定義する平面的概念図である。
【図18】 車輪の回転運動を既述するための所定数及
び変数を定義する概念図である。
【図19】 レーンチェンジ時の車両の挙動を示す平面
図である。
【図20】 目標ヨーレイト適合制御の作用効果を、目
標ヨーレイト適合制御を行っていないときのレーンチェ
ンジ時の車両の挙動(A)と行っているときのレーンチ
ェンジ時の車両の挙動(B)との比較対照により示す図
であり、特に(1)は舵角の挙動を示すタイミングチャ
ート、(2)は舵角の時間変化を示すタイミングチャー
ト、(3)はトルクを示すタイミングチャート、(4)
は軌跡を示す平面図である。
【符号の説明】
10RR 右後輪、10RL 左後輪、12R,12L
モータ、34R,34L インバータ、36R,36
L モータ制御部、38 車両制御部、40RR,40
RL 車輪速センサ、42 アクセルセンサ、44 ブ
レーキセンサ、46 シフトポジションスイッチ、48
舵角センサ、100 トルク指令仮確定部、200
TRC/ABS相当制御部、202,214 角加速度
判定部、204,206,208,210,216,2
18,220,222 フィードバックトルク演算部、
212,224 加算器、226,228 回転数判定
部、230,232 係数決定部、234,236 し
きい値演算部、238 係数決定用マップ、300 目
標ヨーレイト適合制御部、302,304 路面摩擦係
数演算部、306 μマップ、308,310 指令補
正係数決定部、312,314,316,318 kマ
ップ、320 kマップ切換部、322 舵角微分演算
部、324,326 トルク指令補正部、400 制御
切換部、500 切換制御部、502 舵角演算部、5
04 舵角判定部、506,508車輪加速度演算部、
510,512 角加速度演算部、514,516 ス
リップ判定部、518 制御動作選択部、a1〜a3,
b1〜b3,c1〜c3,d1〜d3 しきい値決定用
の係数、kR,kL 指令補正係数、m 車体質量、p
01〜p32,P1〜P3 指令補正係数決定用のパラ
メタ、A1,A2,B1,B2,C1,C2,D1,D
2 ゲイン決定用の係数、FB ブレーキ力、FXF
R,FXFL,FXRR,FXRL 車輪前後力、I
ヨー慣性モーメント、KFR,KFL,KRR,KRL
コーナリングパワー、L,LF,LRホイルベース、
NB ベース回転数、R 車輪半径、S1,S2 補正
項、TD,TDR,TDL トレッド、TH,THω1
〜THω3 しきい値、TR,TL トルク指令、VA
アクセル開度、VRR 右後輪の車輪速、VRL 左
後輪の車輪速、VS 車体速、YFR,YFL,YR
R,YRL コーナリングフォース、β 車体すべり角
度、γ ヨーレイト、δt 舵角、μR 右後輪の路面
摩擦係数、μL 左後輪の路面摩擦係数、ωR 右後輪
の角速度、ωL 左後輪の角速度、ΔTR,ΔTL フ
ィードバックトルク。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−176418(JP,A) 特開 平6−335115(JP,A) 特開 平7−298418(JP,A) 特開 平5−328542(JP,A) 特開 平7−117645(JP,A) 特開 平7−223526(JP,A) 特開 平2−262472(JP,A) 特開 平2−283555(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B60L 15/00 - 15/38

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電気自動車の左右各駆動輪を個別に駆動
    するための複数のモータ各々に対し、その出力に関する
    指令を与えることにより、車両の走行を制御する駆動制
    御装置において、車両操縦者からの加速又は減速要求に
    基づき上記指令を仮確定する指令仮確定手段と、舵角に
    対する車体のヨーレイト又はすべり角度の応答がその目
    標応答と一致するよう定めた指令決定論理に従い、モー
    タに与えるのに先立ちかつ各モータ毎に、仮確定された
    指令を補正する目標適合制御手段と、舵角を検出する手
    段と、路面摩擦係数を検出する手段とを備え、目標適合
    制御手段が、舵角及び路面摩擦係数双方の検出値に基づ
    き上記補正を実行することを特徴とする駆動制御装置。
  2. 【請求項2】 請求項記載の駆動制御装置において、
    舵角及び路面摩擦係数と指令補正係数とを対応づける指
    令補正用マップを備え、目標適合制御手段が、舵角及び
    路面摩擦係数双方の検出値をキーとして上記指令補正用
    マップを参照し、それによって得られた指令補正係数を
    用いてかつ上記指令決定論理に従い上記補正を実行する
    ことを特徴とする駆動制御装置。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2記載の駆動制御装置にお
    いて、駆動輪のスリップ又はその傾向が抑制されるよ
    う、モータに与えるのに先立ちかつ各モータ毎に、仮確
    定された指令を駆動輪の角加速度及び角速度に応じて補
    正するTRC/ABS相当制御手段と、舵角の検出値が
    所定値を上回る絶対値を有するときには目標適合制御手
    段にて補正された指令を、また上記所定値を下回る絶対
    値を有するときにはTRC/ABS相当制御手段にて補
    正された指令を、各モータに与える制御切換手段と、を
    備えることを特徴とする駆動制御装置。
  4. 【請求項4】 電気自動車の左右各駆動輪を個別に駆動
    するための複数のモータ各々に対し、その出力に関する
    指令を与えることにより、車両の走行を制御する駆動制
    御装置において、車両操縦者からの加速又は減速要求に
    基づき上記指令を仮確定する指令仮確定手段と、舵角を
    検出する手段と、舵角に対する車体のヨーレイト又はす
    べり角度の応答がその目標応答と一致するよう定めた指
    令決定論理に従い、モータに与えるのに先立ちかつ各モ
    ータ毎に、かつ舵角の検出値に基づき、仮確定された指
    令を補正する目標適合制御手段と、駆動輪のスリップ又
    はその傾向が抑制されるよう、モータに与えるのに先立
    ちかつ各モータ毎に、仮確定された指令を駆動輪の角加
    速度及び角速度に応じて補正するTRC/ABS相当制
    御手段と、舵角の検出値が所定値を上回る絶対値を有す
    るときには目標適合制御手段にて補正された指令を、ま
    た上記所定値を下回る絶対値を有するときにはTRC/
    ABS相当制御手段にて補正された指令を、各モータに
    与える制御切換手段と、を備えることを特徴とする駆動
    制御装置。
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